JP2016107642A - 多層多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents

多層多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータ Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、電池の捲回時のハンドリング性と接着性を両立しつつ、リチウムイオン透過性に優れた多層多孔膜、前記多層多孔膜から成る蓄電デバイス用セパレータ、及び前記蓄電デバイス用セパレータを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。【解決手段】多層多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有し、前記熱可塑性ポリマー被覆層には、平均粒径が500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが分散して存在し、かつ前記最外表面には、前記粒状熱可塑性ポリマーを含む部分と前記粒状熱可塑性ポリマーを含まない部分とを含む海島構造が形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、多層多孔膜及びそれを用いた蓄電デバイス用セパレータに関する。
近年、リチウムイオン電池により代表される非水電解液電池の開発が、活発に行われていた。通常、非水電解液電池には、微多孔膜(セパレータ)が正負極間に設けられている。このようなセパレータは、正負極間の直接的な接触を防ぎ、かつ微多孔中に保持した電解液を通じイオンを透過させる機能を有する。
非水電解液電池のサイクル特性又は安全性を向上するために、セパレータの改良が検討されている。例えば、特許文献1では、放電特性及び安全性に優れた二次電池を提供することを目的として、多孔質膜上に反応性ポリマーを塗布して乾燥することにより得られる接着剤担持多孔質フィルムが、提案されている。
近年、ポータブル機器の小型化及び薄型化により、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスにも小型化及び薄型化が求められていた。一方で、ポータブル機器を長時間携帯することを可能にするために、体積エネルギー密度を向上させることによる蓄電デバイスの高容量化も図られている。
ここで、セパレータには、異常加熱した場合には速やかに電池反応が停止される特性(ヒューズ特性)、高温になっても形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する性能(ショート特性)等、従来から求められている安全性に関する性能に加え、充放電電流の均一化及びリチウムデンドライト抑制の観点から、電極との接着性の向上が求められている。
セパレータと電池電極との密接性を良くすることにより、充放電電流の不均一化が起こり難くなり、また、リチウムデンドライトが析出し難くなるため、結果として充放電サイクル寿命を長くすることが可能となる。
このような事情のもと、セパレータに接着性を持たせる試みとして、ポリオレフィン微多孔膜に、接着性のポリマーを塗工する試みが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
特開平11−0260341号公報 特開2007−059271号公報 特開2011−054502号公報 国際公開第03/012896号 特表2006−525624号公報 特表2011−512005号公報 国際公開第2014/017651号 国際公開第2011/040562号
特許文献1のセパレータでは、多孔膜に架橋ポリマーを塗工して、電極との接着性を発現することを提案している。
しかしながら、接着性を向上させるためには接着層の厚みを上げるが、べたつき性が悪化してハンドリング時に不具合を生じてしまう。接着層の厚みを下げると、ハンドリング性は向上するが、必要な接着強度が得られない。
特許文献2のセパレータでは、セパレータ上に反応性の架橋ポリマーを塗工して、電極に貼付して、電池を組み立てた後、電解液中に架橋開始剤を添加してポリマーの架橋反応を進めて接着性を高めることが提案されている。
しかしながら、反応性ポリマーと多孔膜との接着性が十分ではなく、電池組立時に必要な接着性が不足して、組立に不具合を生じることがある。また、電解液に添加した架橋剤の反応を均一に行うことが困難であり、電池内で接着性の不足する部分が発生する可能性がある。
特許文献3のセパレータでは、感熱接着特性を有するポリマーを多孔膜に塗工して、貼付前の取扱時ではべたつきがなく、かつ加熱接着時に高接着性が得られることが記述されている。
しかしながら、セパレータが異常加熱した場合には、セパレータの形状が変化して電池機能が停止するような特性を有しているので、組立工程内でセパレータを加熱することは品質を低下させる可能性がある。
特許文献1〜3に記載された微多孔膜はいずれも、電池を捲回する際のハンドリング性又は接着性を両立できず、改善の余地を有する。
特許文献4では、ポリマーが溶解していないポリマー分散液を多孔膜上に塗工して、多孔膜上に部分的に接着層を存在させることが提案されている。特許文献5では、グラビア印刷ロールを用いて、規則的な形状で接着剤塗工部分と接着剤非塗工部分を存在させることが提案されている。特許文献6では、多孔膜上の無機膜の表面に、規定のドットパターンを持つ接着層を塗工することが提案されている。特許文献4〜6に記載の技術を用いることにより、電池を捲回する際のハンドリング性と接着性の両立が可能となる。
特許文献7では、多孔膜上の接着樹脂層が20℃以上と20℃未満の2つのガラス転移温度ピークを持ち、かつドットパターンの海島構造を取ることが提案されている。特許文献8では、数平均粒径が0.4μm以上10μm未満で、かつガラス転移点が65℃以上のポリマー粒子A、及び数平均粒径が0.04μm以上0.3μm未満で、かつガラス転移点が15℃以下のポリマー粒子Bを含む二次電池用多孔膜が開示されている。
しかしながら、特許文献4〜8に記載の接着層を用いたセパレータでは、樹脂が塗工された部分のリチウムイオン透過性が著しく低下して、電池の充放電の性能が低下してしまう。
そこで、本発明は、電池の捲回時のハンドリング性と接着性を両立しつつ、リチウムイオン透過性に優れた多層多孔膜、前記多層多孔膜から成る蓄電デバイス用セパレータ、及び前記蓄電デバイス用セパレータを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面に、平均粒径500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーを分散して存在させて、海島構造を含む熱可塑性ポリマー被覆層を設けることにより、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有する多層多孔膜であって、
前記熱可塑性ポリマー被覆層には、平均粒径が500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが分散して存在し、
前記最外表面には、前記粒状熱可塑性ポリマーを含む部分と前記粒状熱可塑性ポリマーを含まない部分とを含む海島構造が形成されている、
多層多孔膜。
[2] 前記粒状熱可塑性ポリマーが、シード粒子の製造後、さらにシード重合を行うことにより得られる、[1]に記載の多層多孔膜。
[3] 前記粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径が、1000nm以上2000nm以下である、[1]又は[2]に記載の多層多孔膜。
[4] 前記粒状熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)が、20℃以下である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[5] 下記式(1):
{式中、「ボロノイ多角形面積」は、前記多層多孔膜の視野において、前記粒状熱可塑性ポリマーをボロノイ分割に供して得られる個々の多角形の面積であり、かつ「視野中のボロノイ多角形面積の平均値」は、前記視野において得られる全てのボロノイ多角形面積の平均値である。}
で表される規格化面積の最低値が、0.3以上である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[6] 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度25℃及び圧力5MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、8gf/cm以下である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[7] 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度80℃及び圧力10MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、10gf/cm以上である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[8] 前記ポリオレフィン微多孔膜と前記熱可塑性ポリマー被覆層との90°剥離強度が、6gf/mm以上である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[9] 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、95%以下である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[10] 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、50%以下である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[11] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の多層多孔膜から成る蓄電デバイス用セパレータ。
[12] [11]に記載の蓄電デバイス用セパレータと電極とが積層した、積層体。
本発明によれば、電極との接着性とハンドリング性とを両立して、かつ蓄電デバイス用セパレータとして使用して蓄電デバイスを形成したときに蓄電デバイスのサイクル及び/又はレート特性が優れる多層多孔膜、前記多層多孔膜から成る蓄電デバイス用セパレータ、及び前記蓄電デバイス用セパレータを用いた蓄電デバイスを提供することができる。
図1は、ポリマー層の表面を観察した写真の一例を示す。 図2は、図1の観察視野に含まれる熱可塑性ポリマーを、画像処理ソフトウェアを用いて自動的に特定した結果の一例を示す。 図3は、図2で特定された複数の粒子をボロノイ分割に供してボロノイ多角形を得た結果の一例を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[多層多孔膜]
本実施形態に係る多層多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜と、該ポリオレフィン多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有する。所望により、多層多孔膜は、フィラー多孔層をさらに有してよい。
本実施形態に係る多層多孔膜では、熱可塑性ポリマー被覆層に、平均粒径が500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが分散して存在する。
本実施形態に係る多層多孔膜では、ポリオレフィン多孔膜の少なくとも1つの最外表面に、粒状熱可塑性ポリマーを含む部分と粒状熱可塑性ポリマーを含まない部分とを含む海島構造が、形成されている。多層多孔膜は、少なくとも1つの最外表面に海島構造を有することにより、ハンドリング性、接着性又はリチウムイオン透過性に優れる傾向にある。
熱可塑性ポリマー被覆層、ポリオレフィン微多孔膜及びフィラー多孔層について以下に説明する。
[熱可塑性ポリマー被覆層]
本実施形態に係る多層多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部、特に、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層を有する。
(熱可塑性ポリマー被覆層の構造)
熱可塑性ポリマー被覆層は、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部に平均粒径500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが均一に分散して存在する層である。
(熱可塑性ポリマーの含有量)
本実施形態における熱可塑性ポリマーの含有量は、ポリオレフィン微多孔膜との接着力を向上させる一方で、ポリオレフィン微多孔膜の孔の目詰まりによるサイクル特性(透過性)の低下を抑制する観点から、0.05g/m以上1.0g/m以下が好ましく、より好ましくは0.07g/m以上0.8g/m以下であり、さらに好ましくは0.1g/m以上0.7g/m以下である。熱可塑性ポリマーの含有量は、塗工液のポリマー濃度又はポリマー溶液の塗布量を変更することにより調整されることができる。
熱可塑性ポリマーは2つ以上のガラス転移温度を有することが好ましい。例えば、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドする方法や、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーを使用する方法によって達成できるが、これらの方法に限定されない。コアシェル構造とは、中心部分に属するポリマーと、外殻部分に属するポリマーが異なる組成から成る、二重構造の形態をしたポリマーである。
特に、ポリマーブレンドやコアシェル構造は、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移温度を制御できる。また、熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与できる。例えば、ブレンドの場合は、特にガラス転移温度を20℃以上の領域に持つポリマーと、ガラス転移温度を20℃未満の領域に持つポリマーを2種類以上ブレンドすることで、耐ベタツキ性とポリオレフィン微多孔膜への接着性を両立することができる。ブレンドする場合の混合比としてはガラス転移温度を20℃以上の領域に持つポリマーと、ガラス転移温度を20℃未満の領域に持つポリマーとの比が0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、5:95〜95:5であり、さらに好ましくは50:50〜95:5であり、よりさらに好ましくは60:40〜90:10である。コアシェル構造の場合は、外殻ポリマーを変えることによりポリオレフィン微多孔膜などの他の材料に対する接着性や相溶性の調整ができ、中心部分に属するポリマーを調整することで、例えば熱プレス後の電極への接着性を高めたポリマーに調整することができる。また、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせて粘弾性の制御をすることもできる。
本実施形態では、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが20℃以上の領域に存在することにより、セパレータと電極との接着性及びハンドリング性に優れるという効果を奏する。用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが20℃以上120℃以下の領域に存在することが好ましく、より好ましくは50℃以上120℃以下である。上記範囲にガラス転移温度が存在することで、良好なハンドリング性を付与できる。さらに、電池作製時の加圧により発現する電極とセパレータ間の接着性を高めることができる。
本実施形態では、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが20℃未満の領域に存在することにより、微多孔膜との密着性に優れ、その結果、セパレータと電極との密着性に優れるという効果を奏する。用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが15℃以下の領域に存在することが好ましく、より好ましくは−30℃以上15℃以下の領域に存在する。
(粒状熱可塑性ポリマー)
本実施形態における熱可塑性ポリマーの構造としては、多層多孔膜のハンドリング性、接着性及びリチウムイオン透過性の観点から、粒状が好ましい。
粒状熱可塑性ポリマーの中でも、コアシェル構造を備える粒状熱可塑性ポリマーがより好ましい。シェル側のポリマー及びコア側のポリマーは、特に限定されないが、シェル側のポリマーのガラス転移温度は、コア側のポリマーのガラス転移温度よりも低く、かつ20℃以下であることがより好ましい。シェル側のポリマーのガラス転移温度は、−30℃以上15℃以下であることが更に好ましい。
また、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドする場合は、シェル側のガラス転移温度が20℃以上の粒状熱可塑性ポリマーであってもよい。
ここで、熱可塑性ポリマーの「粒状」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定において、個々の熱可塑性ポリマーが輪郭を持った状態のことを指し、例えば、扁平形状であっても、球状であっても、多角形状等であってもよい。
(粒状熱可塑性ポリマーの平均粒子径)
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径は、多層多孔膜のハンドリング性、接着性及びリチウムイオン透過性の観点から、500nm以上2000nm以下であることが好ましく、1000nm以上2000nm以下であることがより好ましい。
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径を500nm以上に調整する方法、つまり、大粒径を有する粒状熱可塑性ポリマーの形成方法として、例えば、シード粒子の製造後、さらにシード重合を行うことによる粒径成長が挙げられる。具体的には、ラテックス粒子(シード粒子)を含む乳化液中にモノマーを滴下し、ラテックス粒子を核としたモノマーの重合を誘導する。シード重合では、重合反応を繰り返すことができる(多段階重合を行うことができる)ので、所望の大粒径のラテックス粒子を得ることができる。
(粒状熱可塑性ポリマーの面積割合)
本実施形態において、多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積に対する粒状熱可塑性ポリマーの面積割合は、特に限定されないが、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、又は75%以下であることが好ましく、また、この面積割合は、10%以上、15%以上、又は20%以上であることが好ましい。より好ましくは、この面積割合は、10%以上95%以下である。多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積に対する粒状熱可塑性ポリマーの面積割合Sは、以下の式:
S(%)=粒状熱可塑性ポリマーの面積÷多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積
から算出される。
ここで、多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積及び粒状熱可塑性ポリマーの面積は、実施例において後述する通り、多層多孔膜の最表面をSEM(倍率30000倍)で観察することによって測定される。
(粒状熱可塑性ポリマーの規格化面積)
本実施形態では、粒状熱可塑性ポリマーの凝集度を評価するために、下記式(1):
{式中、「ボロノイ多角形面積」は、多層多孔膜の視野において、粒状熱可塑性ポリマーをボロノイ分割に供して得られる個々の多角形の面積であり、かつ「視野中のボロノイ多角形面積の平均値」は、前記視野において得られる全てのボロノイ多角形面積の平均値である。}
で表される規格化面積を算出することができる。
本実施形態に係る多層多孔膜では、多層多孔膜と電極との剥離強度、及び多孔膜を含む電池のサイクル特性の観点から、規格化面積の最低値が、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上であることが好ましい。式(1)におけるボロノイ多角形面積、視野中のボロノイ多角形面積の平均値、及び規格化面積は、実施例において後述する通り、多層多孔膜の特定の視野をボロノイ分割に供することにより算出されることができる。
〔熱可塑性ポリマー〕
本実施形態で使用される熱可塑性ポリマーは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、α−ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー又はこれらを含むコポリマー;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンをモノマー単位として含むジエン系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどをモノマー単位として含むアクリル系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂:並びにこれらの混合物等が挙げられる。
上記熱可塑性ポリマーのうち、ジエン系ポリマー、アクリル系ポリマー又はフッ素系ポリマーは、電極活物質との結着性、強度、及び柔軟性に優れるので好ましい。
(ジエン系ポリマー)
ジエン系ポリマーは、特に限定されないが、例えば、ブタジエン、イソプレン等の、共役の二重結合を2つ有する共役ジエンモノマーを重合することにより得られるモノマー単位を含むポリマーである。
共役ジエンモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどが挙げられる。これらは単独で重合しても共重合してもよい。
ジエン系ポリマー中の共役ジエンを重合することにより得られるモノマー単位の割合は、特に限定されないが、例えば、全ジエン系ポリマーの質量を基準として、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。
上記ジエン系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエンのホモポリマー及び共役ジエンと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。
共役ジエンと共重合可能なモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、後述の(メタ)アクリレートモノマー、又は下記のモノマー(以下、「その他のモノマー」ともいう。)が挙げられる。
「その他のモノマー」
その他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル化合物;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基含有化合物;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系モノマーなどが挙げられる。
これらの内の1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(アクリル系ポリマー)
アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリレートモノマーを重合することにより得られるモノマー単位を含むポリマーである。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を示し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を示す。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート;アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマーを重合することにより得られるモノマー単位の割合は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーの全質量を基準として、例えば40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマー、又は(メタ)アクリレートモノマーと、該(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なモノマーとしては、上記ジエン系ポリマーの項目で列挙した「その他のモノマー」が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(フッ素系ポリマー)
フッ素系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマー、及びフッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。フッ素系ポリマーは、電気化学的安定性の観点から好ましい。
フッ化ビニリデンを重合することにより得られるモノマー単位の割合は、特に限定されないが、フッ素系ポリマーの全質量を基準として、例えば、40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアクリル酸、パーフルオロメタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキルエステル等のフッ素含有エチレン性不飽和化合物;シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル等のフッ素非含有エチレン性不飽和化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のフッ素非含有ジエン化合物等が挙げられる。
フッ素系ポリマーのうち、フッ化ビニリデンのホモポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー等が好ましい。より好ましいフッ素系ポリマーは、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーであり、そのモノマー組成は、通常、フッ化ビニリデン30〜90質量%、テトラフルオロエチレン50〜9質量%、及びヘキサフルオロプロピレン20〜1質量%である。
フッ素系ポリマーは、粒子の形態でよい。その場合、フッ素樹脂粒子は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
(熱可塑性ポリマーの合成)
熱可塑性ポリマーを合成する際に使用するモノマーとして、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アミド基及びシアノ基から成る群から選択される少なくとも1つの基を有するモノマーを使用してもよい。
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンテンオール等のビニル系モノマーを挙げることができる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のエチレン性二重結合を有する不飽和カルボン酸、ペンテン酸等のビニル系モノマーが挙げられる。
アミノ基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸2−アミノエチル等が挙げられる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリススルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等が挙げられる。
アミド基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
シアノ基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート等が挙げられる。
本実施形態で用いる熱可塑性ポリマーは、ポリマーを単独で又は2種類以上混合して使用してもよいが、ポリマーを2種類以上含むことが好ましい。
(熱可塑性ポリマーのガラス転移点)
本実施形態で用いる熱可塑性ポリマーは、セパレータと電極との接着性の点から、少なくとも1つのガラス転移温度が、20℃未満の領域に存在するという熱特性を有することが好ましい。ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定される。なお、本明細書では、ガラス転移温度を「Tg」と表現する場合もある。
具体的には、Tgは、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定される。より詳細には、実施例に記載の方法を参照することができる。
ここで、「ガラス転移」はDSCにおいて試験片であるポリマーの状態変化に伴う熱量変化が吸熱側に生じたものを指す。このような熱量変化はDSC曲線において階段状変化形状又は階段状変化とピークとが組み合わさった形状として観測される。
「階段状変化」とは、DSC曲線において、曲線がそれまでのベースラインから離れ、新たなベースラインに移行するまでの部分を示す。なお、階段状変化は、ピーク及び階段状変化の組み合わさった形状も含む。
「変曲点」とは、階段状変化部分のDSC曲線のこう配が最大になるような点を示す。また、階段状変化部分において上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点と表現することもできる。
「ピーク」とは、DSC曲線において、曲線がベースラインから離れてから、再度ベースラインに戻るまでの部分を示す。
「ベースライン」とは、試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線のことを示す。
本実施形態では、使用される熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも1つが20℃未満の領域に存在することにより、セパレータと電極との接着性に優れるという効果を奏する。使用される熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも1つが15℃以下の領域に存在することが好ましく、−30℃以上15℃以下の領域に存在することがより好ましい。
本実施形態では、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、熱可塑性ポリマーを製造するのに用いるモノマー成分及び各モノマーの投入比を変更することにより適宜調整できる。すなわち、熱可塑性ポリマーの製造に用いられる各モノマーについて、対応するホモポリマーの一般に示されているTg(例えば、「ポリマーハンドブック」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION)に記載されているTg)及び各モノマーの配合割合から、熱可塑性ポリマーのTgを概ね推定することができる。
例えば、約100℃のTgのポリマーを与えるスチレン、メチルメタクリレ−ト、及びアクリルニトリルなどのモノマーを高比率で配合したコポリマーは、高いTgを有することができる。例えば、約−80℃のTgのポリマーを与えるブタジエン、約−50℃のTgのポリマーを与えるn−ブチルアクリレ−ト及び2−エチルヘキシルアクリレ−ト等のモノマーを高い比率で配合したコポリマーは、低いTgを有することができる。
また、一般に、ポリマーのTgはFOXの式(下記式(2)):
1/Tg=W/Tg+W/Tg+‥‥+W/Tg+‥‥W/Tg (2)
{式中、Tg(K)は、コポリマーのガラス転移温度(Tg)であり、Tg(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgであり、かつWは、各モノマーの質量分率である}
より概算することもできる。ただし、FOXの式により得られるTgは、あくまでも概算値であるため、本願明細書では、特に言及しない限り、熱可塑性ポリマーのTgとしては、上記DSCを用いた方法により測定したTgを採用する。
(熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度)
本実施形態における熱可塑性ポリマーは、サイクル特性等の電池特性の点から、電解液に対する膨潤性を有することが好ましい。熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度は、5倍以下が好ましく、4.5倍以下がより好ましく、4倍以下がさらに好ましい。また、この膨潤度は、1倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度は、実施例において後述する方法により測定される。
本実施形態における熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度は、例えば、重合するモノマー成分及び各モノマーの投入比を変更することにより調整することができる。
(熱可塑性ポリマーのゲル分率)
本実施形態において、熱可塑性ポリマーのゲル分率は、特に限定されないが、電解液中への溶解の抑制や電池内部での熱可塑性ポリマーの強度維持の観点から80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。ここで、ゲル分率は、実施例において後述する通り、トルエン不溶分の測定により求められる。
ゲル分率は、重合するモノマー成分及び各モノマーの投入比、重合条件を変更することにより調整することができる。
[ポリオレフィン微多孔膜]
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂組成物から構成される多孔膜が挙げられ、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜であることが好ましい。本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂の含有量は特に限定されないが、蓄電デバイス用セパレータとして用いた場合のシャットダウン性能などの観点から、多孔膜を構成する全成分の質量分率の50%以上100%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物から成る多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂が占める割合は60%以上100%以下がより好ましく、70%以上100%以下であることが更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、特に限定されないが、通常の押出、射出、インフレーション、及びブロー成形等に使用するポリオレフィン樹脂でよく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のホモポリマー及びコポリマー、多段ポリマー等を使用することができる。また、これらのホモポリマー及びコポリマー、多段ポリマーから成る群から選ばれるポリオレフィンを単独で、又は混合して使用することもできる。
ポリオレフィン樹脂の代表例としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
本実施形態の多層多孔膜を蓄電デバイス用セパレータとして使用する場合には、低融点であり、かつ高強度であることから、特に高密度ポリエチレンを主成分とする樹脂を使用することが好ましい。
また、ポリオレフィン微多孔膜の耐熱性を向上させるために、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物から成る多孔膜を用いることがより好ましい。
ここで、ポリプロピレンの立体構造は、限定されるものではなく、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン及びアタクティックポリプロピレンのいずれでもよい。
ポリオレフィン樹脂組成物中の総ポリオレフィンに対するポリプロピレンの割合は、特に限定されないが、耐熱性と良好なシャットダウン機能の両立の観点から、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは4〜10質量%である。
この場合、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、限定されるものではなく、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン炭化水素のホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。具体的には、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜の孔が熱溶融により閉塞するシャットダウン特性の観点から、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレンを用いることが好ましい。これらの中でも、強度の観点から、JIS K 7112に従って測定した密度が0.93g/cm以上であるポリエチレンを使用することがより好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されないが、3万以上1,200万以下であることが好ましく、より好ましくは5万以上200万未満、さらに好ましくは10万以上100万未満である。粘度平均分子量が3万以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が良好になると共に、ポリマー同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が1,200万以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。さらに、粘度平均分子量が100万未満であると、温度上昇時に孔を閉塞し易く、良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。
例えば、粘度平均分子量100万未満のポリオレフィンを単独で使用する代わりに、粘度平均分子量200万のポリオレフィンと粘度平均分子量27万のポリオレフィンの混合物であって、その粘度平均分子量が100万未満の混合物を用いてもよい。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜は、任意の添加剤を含有することができる。このような添加剤は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン以外のポリマー;無機粒子;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。
これらの添加剤の合計含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
(ポリオレフィン微多孔膜の物性)
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は、特に限定されないが、好ましくは200g/20μm以上、より好ましくは300g/20μm以上であり、好ましくは2000g/20μm以下、より好ましくは1000g/20μm以下である。突刺強度が200g/20μm以上であることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点、及び充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制する観点からも好ましい。一方、突刺強度が2000g/20μm以下であることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。ここで、突刺強度は、後記の実施例の記載の方法により測定される。
なお、上記突刺強度は、ポリオレフィン微多孔膜の延伸倍率及び/又は延伸温度等を調整することにより調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは90%以下、好ましくは80%以下である。気孔率を20%以上とすることは、セパレータの透過性を確保する観点から好ましい。一方、気孔率を90%以下とすることは、突刺強度を確保する観点から好ましい。ここで、気孔率は後記の実施例の記載の方法により測定される。
なお、気孔率は、ポリオレフィン微多孔膜の延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。この膜厚を2μm以上とすることは、機械強度を向上させる観点から好ましい。一方、この膜厚を100μm以下とすることは、電池におけるセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の透気度は、特に限定されないが、好ましくは10sec/100cc以上、より好ましくは50sec/100cc以上であり、好ましくは1000sec/100cc以下、より好ましくは500sec/100cc以下である。透気度を10sec/100cc以上とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制する観点から好ましい。一方、透気度を1000sec/100cc以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。ここで、透気度は後記の実施例の記載の方法により測定される。
なお、上記透気度は、ポリオレフィン微多孔膜の延伸温度及び/又は延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の平均孔径は、好ましくは0.15μm以下、より好ましくは0.1μm以下であり、下限として好ましくは0.01μm以上である。平均孔径を0.15μm以下とすることは、蓄電デバイス用セパレータとする場合に、蓄電デバイスの自己放電を抑制し、容量低下を抑制する観点から好適である。平均孔径は、ポリオレフィン微多孔膜を製造する際の延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の耐熱性の指標であるショート温度は、好ましくは140℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは160℃以上である。ショート温度を140℃以上とすることは、蓄電デバイス用セパレータとする場合に、蓄電デバイスの安全性の観点から好ましい。
熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆されるポリオレフィン微多孔膜の面積割合は、ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、95%以下、85%以下、80%以下、70%以下、60%以下、又は50%以下であることが好ましく、この面積割合は、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、又は20%以上であることが好ましい。この面積割合は、多層多孔膜の最表面をSEM(倍率30000倍)で観察することにより測定される。
(ポリオレフィン微多孔膜の製造方法)
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜を製造する方法は、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状に成形後、場合により延伸した後、可塑剤を抽出することにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法等が挙げられる。
以下、微多孔膜を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状に成形後、可塑剤を抽出する方法について説明する。
まず、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を、押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入して混練する方法が挙げられる。この際、ポリオレフィン樹脂、その他の添加剤及び可塑剤を樹脂混練装置に投入する前に、予めヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練しておくことが好ましい。より好ましくは、事前混練において可塑剤の一部のみを投入し、残りの可塑剤を樹脂混練装置サイドフィードしながら混練することである。このようにすることにより、可塑剤の分散性を高め、後の工程で樹脂組成物と可塑剤の溶融混練合物のシート状成形体を延伸する際に、破膜することなく高倍率で延伸することができる。
可塑剤としては、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒を用いることができる。このような不揮発性溶媒の具体例として、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。これらの中で、流動パラフィンは、ポリエチレンやポリプロピレンとの相溶性が高く、溶融混練物を延伸しても樹脂と可塑剤の界面剥離が起こりにくいので、均一な延伸が実施し易くなる傾向にあるため好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば特に限定はない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とからなる組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%である。可塑剤の質量分率が80質量%以下であると、溶融成形時のメルトテンションが不足しにくく成形性が向上する傾向にある。一方、質量分率が30質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合物を高倍率で延伸してもポリオレフィン鎖の切断が起こらず、均一かつ微細な孔構造を形成し強度も増加し易い。
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、あるいは可塑剤自身等が使用できるが、金属製のロールが熱伝導の効率が高いため好ましい。この際、金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むと、熱伝導の効率がさらに高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上するためより好ましい。Tダイよりシート状に押出す際のダイリップ間隔は400μm以上3000μm以下であることが好ましく、500μm以上2500μm以下であることがさらに好ましい。ダイリップ間隔が400μm以上であると、メヤニ等が低減され、スジや欠点など膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程において膜破断などを防ぐことができる傾向にある。一方、ダイリップ間隔が3000μm以下であると、冷却速度が速く冷却ムラを防げると共に、シートの厚み安定性を維持できる傾向にある。
このようにして得たシート状成形体を延伸することが好ましい。延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られる多孔膜の強度等の観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる多孔膜が裂けにくくなり高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができ、突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点から同時二軸延伸が好ましい。
なお、ここで、同時二軸延伸とは、MD方向(微多孔膜の機械方向)の延伸とTD方向(微多孔膜のMDを90°の角度で横切る方向)の延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、MD方向、又はTD方向の延伸が独立して施される延伸方法をいい、MD方向又はTD方向に延伸がなされている際は、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。
延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上50倍以下の範囲であることがさらに好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MD方向に4倍以上10倍以下、TD方向に4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MD方向に5倍以上8倍以下、TD方向に5倍以上8倍以下の範囲であることがさらに好ましい。総面積倍率が20倍以上であると、得られる多孔膜に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であると延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
また、シート状成形体を圧延してもよい。圧延は、例えば、ダブルベルトプレス機等を使用したプレス法にて実施することができる。圧延は特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は1倍より大きく3倍以下であることが好ましく、1倍より大きく2倍以下であることがより好ましい。圧延倍率が1倍より大きいと、面配向が増加し最終的に得られる多孔膜の膜強度が増加する傾向にある。一方、圧延倍率が3倍以下であると、表層部分と中心内部の配向差が小さく、膜の厚さ方向に均一な多孔構造を形成することができる傾向にあるため好ましい。
次いで、シート状成形体から可塑剤を除去して多孔膜とする。可塑剤を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して可塑剤を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。可塑剤を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれであってもよい。多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、多孔膜中の可塑剤残存量は1質量%未満にすることが好ましい。
抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒で、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
多孔膜の収縮を抑制するために、延伸工程後、又は、多孔膜形成後に熱固定や熱緩和等の熱処理を行うこともできる。また、多孔膜に、界面活性剤等による親水化処理、電離性放射線等による架橋処理等の後処理を行ってもよい。
[フィラー多孔層]
また、本実施形態に係る多層多孔膜は、無機フィラー及び樹脂バインダを含むフィラー多孔層をさらに含んでもよい。多層多孔膜がフィラー多孔層を備える位置は、ポリオレフィン微多孔膜の片面であっても両面であってもよい。
(無機フィラー)
前記フィラー多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
上記の中でも、電気化学的安定性及び多層多孔膜の耐熱特性を向上させる観点から、アルミナ、水酸化酸化アルミニウムなどの酸化アルミニウム化合物や、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライトなどのイオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物が好ましい。前記酸化アルミニウム化合物としては、水酸化酸化アルミニウムが特に好ましい。イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物としては、安価で入手も容易なため、カオリン鉱物で主に構成されているカオリンがより好ましい。カオリンには湿式カオリン及びこれを焼成処理した焼成カオリンがあるが、焼成カオリンは焼成処理の際に結晶水が放出されるのに加え、不純物が除去されるので、電気化学的安定性の点で特に好ましい。
前記無機フィラーの平均粒径は、0.1μmを超えて4.0μm以下であることが好ましく、0.2μmを超えて3.5μm以下であることがより好ましく、0.4μmを超えて3.0μm以下であることが更に好ましい。無機フィラーの平均粒径を上記範囲に調整することは、フィラー多孔層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温での熱収縮を抑制する観点から好ましい。
前記無機フィラーにおいて、0.2μmを超えて1.4μm以下の粒径を有する粒子が無機フィラー全体に占める割合としては、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、更に好ましくは5体積%以上であり、上限としては、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。
前記無機フィラーにおいて、0.2μmを超えて1.0μm以下の粒径を有する粒子が無機フィラー全体に占める割合としては、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上であり、上限としては、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
また、前記無機フィラーにおいて、0.5μmを超えて2.0μm以下の粒径を有する粒子が無機フィラー全体に占める割合としては、好ましくは8体積%以上、より好ましくは10体積以上であり、上限としては、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。
更に、前記無機フィラーにおいて、0.6μmを超えて1.4μm以下の粒径を有する粒子が無機フィラー全体に占める割合としては、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上であり、上限としては、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。
無機フィラーの粒度分布を上記範囲に調整することは、フィラー多孔層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温での熱収縮を抑制する観点から好ましい。なお、無機フィラーの粒径の割合を調整する方法としては、例えば、ボールミル・ビーズミル・ジェットミル等を用いて無機フィラーを粉砕し、粒径を小さくする方法等を挙げることができる。
無機フィラーの形状としては、板状、鱗片状、針状、柱状、球状、多面体状、塊状等が挙げられ、上記形状を有する無機フィラーを複数種組み合わせて用いてもよい。多層多孔膜とした際に、後述の150℃熱収縮を10%以下に抑制することが可能であれば、無機フィラーの形状は特に限定されないが、透過性向上の観点からは複数の面からなる多面体状、柱状、紡錘状が好ましい。
前記無機フィラーが、前記フィラー多孔層中に占める割合としては、無機フィラーの結着性、多層多孔膜の透過性及び耐熱性等の観点から適宜決定することができるが、50質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上99.99質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
(樹脂バインダ)
樹脂バインダの種類としては、特に限定されないが、本実施形態における多層多孔膜をリチウムイオン二次電池用セパレータとして使用する場合には、リチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
樹脂バインダの具体例としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂等が挙げられる。
樹脂バインダとしてポリビニルアルコールを使用する場合、そのケン化度は85%以上100%以下であることが好ましい。ケン化度が85%以上であると、多層多孔膜を電池用セパレータとして使用した際に、短絡する温度(ショート温度)が向上し、より良好な安全性能が得られる傾向にあるため好ましい。ケン化度は、より好ましくは90%以上100%以下、さらに好ましくは95%以上100%以下、特に好ましくは99%以上100%以下である。また、ポリビニルアルコールの重合度は、200以上5000以下であることが好ましく、より好ましくは300以上4000以下、さらに好ましくは500以上3500以下である。重合度が200以上であると、少量のポリビニルアルコールで焼成カオリン等の無機フィラーを多孔膜に強固に結着でき、フィラー多孔層の力学的強度を維持しながらフィラー多孔層形成による多層多孔膜の透気度増加を抑えることができる傾向にあるため好ましい。また、重合度が5000以下であると、塗布液を調製する際のゲル化等を防止できる傾向にあるため好ましい。
樹脂バインダとしては、樹脂ラテックスバインダが好ましい。樹脂ラテックスバインダを用いた場合、無機フィラーとバインダとを含むフィラー多孔層をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層した場合は、樹脂バインダの一部又は全てを溶媒に溶解させた後に、得られた溶液をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層し、貧溶媒への浸漬や乾燥による溶媒除去等により樹脂バインダを多孔膜に結着させた場合と比較して、イオン透過性が低下しにくく高出力特性が得られ易い傾向にある。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い傾向にある。
樹脂ラテックスバインダとしては、電気化学的安定性と結着性を向上させる観点から、脂肪族共役ジエン系単量体や不飽和カルボン酸単量体、及びこれらと共重合可能な他の単量体を乳化重合して得られるものが好ましい。乳化重合の方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。単量体及びその他の成分の添加方法については特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法の何れも採用することができ、また、一段重合、二段重合又は多段階重合等の何れも採用することができる。
脂肪族共役ジエン系単量体としては、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に1,3−ブタジエンが好ましい。
不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノ又はジカルボン酸(無水物)等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
これらと共重合可能な他の単量体としては、特に限定されず、例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特にメチルメタクリレートが好ましい。
なお、これらの単量体に加えて様々な品質及び物性を改良するために、上記以外の単量体成分をさらに使用することもできる。
樹脂バインダの平均粒径は、50〜500nmであることが好ましく、より好ましくは60〜460nm、更に好ましくは80〜250nmである。樹脂バインダの平均粒径が50nm以上である場合、無機フィラーとバインダとを含むフィラー多孔層をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層した際、イオン透過性が低下しにくく高出力特性が得られ易い。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。樹脂バインダの平均粒径が500nm以下である場合、良好な結着性を発現し、多層多孔膜とした場合に熱収縮が良好となり安全性に優れる傾向にある。
樹脂バインダの平均粒径は、重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pHなどを調整することで制御することが可能である。
フィラー多孔層の層厚は、耐熱性、絶縁性を向上させる観点から1μm以上であることが好ましく、電池の高容量化と透過性を向上させる観点から50μm以下であることが好ましい。フィラー多孔層の層厚は、より好ましくは1.5μm以上20μm以下、さらに好ましくは2μm以上10μm以下、さらにより好ましくは3μm以上10μm以下、特に好ましくは3μm以上7μm以下である。
フィラー多孔層の層密度は、0.5〜2.0g/cmであることが好ましく、0.7〜1.5cmであることがより好ましい。フィラー多孔層の層密度が0.5g/cm以上であると、高温での熱収縮率が良好となる傾向にあり、2.0g/cm以下であると、透気度が低下する傾向にある。
フィラー多孔層の形成方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む塗布液を塗布してフィラー多孔層を形成する方法を挙げることができる。
塗布液の溶媒としては、前記無機フィラー、及び前記樹脂バインダを均一かつ安定に分散できるものが好ましく、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられる。
塗布液には、分散安定化や塗工性の向上のために、界面活性剤等の分散剤;増粘剤;湿潤剤;消泡剤;酸、アルカリを含むpH調製剤等の各種添加剤を加えてもよい。これらの添加剤は、溶媒除去の際に除去できるものが好ましいが、リチウムイオン二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で、電池反応を阻害せず、かつ200℃程度まで安定ならばフィラー多孔層内に残存してもよい。
前記無機フィラーと前記樹脂バインダとを、塗布液の溶媒に分散させる方法については、塗布工程に必要な塗布液の分散特性を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
塗布液を多孔膜に塗布する方法については、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
さらに、塗布液の塗布に先立ち、多孔膜表面に表面処理を施すと、塗布液を塗布し易くなると共に、塗布後の無機フィラー含有フィラー多孔層と多孔膜表面との接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法は、多孔膜の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗布後に塗布膜から溶媒を除去する方法については、多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はなく、例えば、多孔膜を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法等が挙げられる。多孔膜及び多層多孔膜のMD方向の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、巻取り張力等は適宜調整することが好ましい。
[セパレータ]
本実施形態のセパレータは、上記多層多孔膜から成るか、又はポリオレフィン微多孔膜及びフィラー多孔層から成る多層微多孔膜の少なくとも一方の表面の少なくとも一部に特定の海島構造を有する熱可塑性ポリマー被覆層を有する。セパレータは、蓄電デバイスを形成するために使用されることが好ましい。
(多層多孔膜又はセパレータの剥離強度)
熱可塑性ポリマー被覆層が存在する多層多孔膜又は蓄電デバイス用セパレータの最表面に対して、アルミ箔(正極集電体など)を、温度25℃及び圧力5MPaで3分間加圧した後の剥離強度(以下、「常温剥離強度」ともいう。)は、8gf/cm以下が好ましく、より好ましくは7gf/cm以下、さらに好ましくは6gf/cm以下である。常温剥離強度が8gf/cmよりも大きいと、ベタツキ性が見られ、セパレータのスリット性又は捲回性に障害を生じる。なお、常温剥離強度は実施例に記載の方法により測定することができる。
熱可塑性ポリマー被覆層が存在する多層多孔膜又は蓄電デバイス用セパレータの最表面に対して、アルミ箔(正極集電体など)を、温度80℃及び圧力10MPaで3分間加圧した後の剥離強度(以下、「加熱剥離強度」ともいう。)は、10gf/cm以上が好ましく、15gf/cm以上がより好ましく、20gf/cm以上がさらに好ましい。加熱剥離強度は10gf/cmよりも小さいと、セパレータの組立工程又は使用時において、電極とセパレータの剥離が見られ、築電デバイスの能力を低下する原因となる。なお、加熱剥離強度は実施例に記載の方法により測定することができる。
加熱剥離強度が上記範囲であるセパレータは、後述の蓄電デバイスに適用される際に、電極とセパレータとの接着性に優れる点で好ましい。
また、電解液の存在下でセパレータと負極を積層し、80℃、10MPaの圧力で2分間加圧した後、セパレータと負極を剥離した場合に、セパレータ上に活物質が、セパレータの被積層面積を基準として、10%以上付着することが好ましい。
本実施形態に係る多層多孔膜又は蓄電デバイス用セパレータでは、ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー被覆層との90°剥離強度は、6gf/mm以上が好ましく、7gf/mm以上がより好ましく、8gf/mm以上がさらに好ましい。ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー被覆層との90°剥離強度が6gf/mm以上であることにより、熱可塑性ポリマーとポリオレフィン微多孔膜の接着性がより優れる傾向にあり、結果として熱可塑性ポリマー層の脱落が抑制されるか、又はセパレータと電極との接着性が優れる傾向にある。
(セパレータのその他の物性)
蓄電デバイス用セパレータの膜厚は、下限として好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。膜厚を2μm以上とすることは、蓄電デバイス用セパレータの強度確保の観点から好適である。一方、膜厚を100μm以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。
本実施形態における蓄電デバイス用セパレータの透気度は、下限として好ましくは10sec/100cc以上、より好ましくは50sec/100cc以上であり、上限として好ましくは10,000sec/100cc以下、さらに好ましくは1,000sec/100cc以下である。この透気度を10sec/100cc以上とすることは、蓄電デバイス用セパレータとする場合に、蓄電デバイスの自己放電を一層抑制する観点から好適である。一方、この透気度を10,000sec/100cc以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。蓄電デバイス用セパレータの透気度は、ポリオレフィン微多孔膜を製造する際の延伸温度、延伸倍率の変更、熱可塑性ポリマーの面積割合、存在形態等により調節可能である。
蓄電デバイス用セパレータは、耐熱性の指標であるショート温度が、好ましくは140℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは160℃以上である。ショート温度を160℃以上とすることは、蓄電デバイス用セパレータとする場合に、蓄電デバイスの安全性の観点から好ましい。
(蓄電デバイス用セパレータの製造方法)
ポリオレフィン微多孔膜上に、又はポリオレフィン微多孔膜及びフィラー多孔層から成る多層微多孔膜上に、熱可塑性ポリマーを形成する方法としては、特に限定されず、例えば熱可塑性ポリマーを含有する塗布液をポリオレフィン微多孔膜又は多層微多孔膜に塗布する方法が挙げられる。
熱可塑性ポリマーを含有する塗布液をポリオレフィン微多孔膜又は多層微多孔膜に塗布する方法については、必要とする海島構造、層厚と塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、インクジェット塗布法等が挙げられる。これらのうち、熱可塑性ポリマーの塗工形状の自由度が高く、かつ好ましい面積割合を容易に得られるという観点から、グラビアコーター法又はスプレー塗布法が好ましい。
多層微多孔膜に熱可塑性ポリマーを塗工する場合、塗布液が多層微多孔膜の内部にまで入り込んでしまうと、接着性樹脂が孔の表面及び内部を埋めてしまい透過性が低下してしまう。そのため、塗布液の媒体としては、熱可塑性ポリマーの貧溶媒が好ましい。塗布液の媒体として熱可塑性ポリマーの貧溶媒を用いた場合には、多層微多孔膜の内部に塗工液は入り込まず、接着性ポリマーは主に多層微多孔膜の表面上に存在するため、透過性の低下を抑制する観点から好ましい。このような媒体としては水が好ましい。また、水と併用可能な媒体は、特に限定されないが、エタノール、メタノール等を挙げることができる。
さらに、塗布に先立ち、多層微多孔膜表面に表面処理をすると、塗布液を塗布し易くなると共に、多層微多孔膜と接着性ポリマーとの接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法は、多層微多孔膜の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗布後に塗布膜から溶媒を除去する方法については、ポリオレフィン微多孔膜又は多層微多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はない。例えば、多層微多孔膜を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、接着性ポリマーに対する貧溶媒に浸漬して接着性ポリマーを凝固させると同時に溶媒を抽出する方法等が挙げられる。
蓄電デバイス用セパレータは、捲回時のハンドリング性及び蓄電デバイスのレート特性に優れ、さらには、熱可塑性ポリマーとポリオレフィン微多孔膜との接着性及び透過性にも優れる。そのため、蓄電デバイス用セパレータの用途としては、特に限定されないが、例えば、非水電解液二次電池等の電池、コンデンサー、キャパシタ等の蓄電デバイスの作製が挙げられる。本実施形態に係るセパレータは、物質の分離等にも好適に使用できる。
[積層体]
本実施形態に係るセパレータを電極と接着することにより、セパレータと電極とが積層している積層体を得ることができる。ここで、「電極と接着」とは、電極がアルミ箔であると仮定したときに、セパレータと電極との上記加熱剥離強度が、好ましくは10gf/cm以上、より好ましくは15gf/cm以上、さらに好ましくは20gf/cm以上であることをいう。
積層体は、捲回時のハンドリング性及び蓄電デバイスのレート特性が優れ、さらには、熱可塑性ポリマーとポリオレフィン微多孔膜との接着性及び透過性にも優れる。そのため、積層体の用途としては、特に限定されないが、積層体は、例えば、非水電解液二次電池等の電池、コンデンサー、キャパシタ等の蓄電デバイス等に好適に使用できる。
本実施形態の積層体に用いられる電極としては、後述の蓄電デバイスの項目に記載の電極を用いることができる。
本実施形態のセパレータを用いて積層体を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態のセパレータと電極とを重ね、必要に応じて加熱および/またはプレスして製造することができる。上記加熱および/またはプレスは、電極とセパレータとを重ねる際に行うことができる。また、電極とセパレータとを重ねた後に円又は扁平な渦巻き状に巻回して得られる巻回体に対して、加熱及び/又はプレスを行うことで製造することもできる。
また、積層体は、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順に平板状に積層し、加圧及び必要に応じて補助的に加熱して製造することもできる。
より具体的には、本実施形態のセパレータを、幅10〜500mm(好ましくは80〜500mm)、長さ200〜4000m(好ましくは1000〜4000m)の縦長形状のセパレータとして調製し、当該セパレータを、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順で重ね、加圧及び必要に応じて補助的に加熱して製造することもできる。
上記加圧時の圧力としては、1MPa〜30MPaが好ましい。加圧時間は5秒〜30分が好ましい。加熱温度としては、40℃〜120℃が好ましい。加熱時間は5秒〜30分が好ましい。また、加圧と加熱の順序は、加熱をしてから加圧しても、加圧をしてから加熱をしても、加圧と加熱を同時に行ってもよい。これらのなかでも、加圧と加熱を同時に行うことが好ましい。
[蓄電デバイス]
本実施形態のセパレータは、電池、コンデンサー、キャパシタ等の作製、物質の分離等に用いることができる。特に、非水電解液電池用セパレータとして用いた場合に、電極への接着性と優れた電池性能を付与することが可能である。
以下、蓄電デバイスが非水電解液二次電池である場合についての好適な態様について説明する。
本実施形態のセパレータを用いて非水電解液二次電池を製造する場合、正極、負極、非水電解液に限定はなく、それぞれ公知のものを用いることができる。
正極材料としては、特に限定されないが、例えば、LiCoO、LiNiO、スピネル型LiMnO、オリビン型LiFePO等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
負極材料としては、特に限定されないが、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種合金材料等が挙げられる。
非水電解液としては、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩が挙げられる。
本実施形態のセパレータを用いて蓄電デバイスを製造する方法は、特に限定されないが、蓄電デバイスが二次電池の場合、例えば、本実施形態のセパレータを、幅10〜500mm(好ましくは80〜500mm)、長さ200〜4000m(好ましくは1000〜4000m)の縦長形状のセパレータとして調製し、当該セパレータを、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順で重ね、円または扁平な渦巻状に巻回して巻回体を得、当該巻回体を電池缶内に収納し、更に電解液を注入することで製造することができる。この際、当該巻回体に対して加熱および/または加圧を行うことで上述の積層体を形成してもよい。また、上記巻回体として上述の積層体を円または扁平な渦巻き状に巻回したものを用いて製造することもできる。また、蓄電デバイスは、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順に平板状に積層したもの、または上述の積層体を袋状のフィルムでラミネートし、電解液を注入する工程と、所望により、加熱および/または加圧を行う工程とを経て製造することもできる。上記の加熱および/または加圧を行う工程は、前記電解液を注入する工程の前および/または後に行うことができる。
なお、上述した各種物性の測定値は、特に断りの無い限り、後述する実施例における測定法に準じて測定される値である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下の製造例、実施例及び比較例において使用された各種物性の測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。なお、特に記載のない限り、各種測定および評価は、室温23℃、1気圧及び相対湿度50%の条件で行われた。
[測定方法]
(1)粘度平均分子量(以下、「Mv」ともいう。)
ASRM−D4020に基づき、デカリン溶剤における135℃での極限粘度[η]を求め、ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=0.00068×Mv0.67
また、ポリプロピレンのMvは次式より算出した。
[η]=1.10×Mv0.80
(2)ポリオレフィン微多孔膜の目付
10cm×10cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、(株)島津製作所製の電子天秤AEL−200を用いて重量を測定した。得られた重量を100倍することで1m当りの膜の目付け(g/m)を算出した。
(3)ポリオレフィン微多孔膜、多層微多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータの膜厚(μm)
ポリオレフィン微多孔膜、多層微多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータから、各々、10cm×10cmのサンプルを切り出し、格子状に9箇所(3点×3点)を選んで、膜厚を微小測厚器(東洋精機製作所(株) タイプKBM)を用いて室温23±2℃で測定した。各々、9箇所の測定値の平均値を、ポリオレフィン微多孔膜、多層多孔膜および蓄電デバイス用セパレータの膜厚(μm)とした。
(4)ポリオレフィン微多孔膜の気孔率(%)
10cm×10cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、膜密度を0.95(g/cm)として次式を用いて計算した。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
(5)透気度(sec/100cc)
JIS P−8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
(6)ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度(g)
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーでポリオレフィン微多孔膜を固定した。次に固定されたポリオレフィン微多孔膜の中央部を、針先端の曲率半径0.5mm、及び突刺速度2mm/secの条件下で、25℃雰囲気下にて突刺試験に供することにより、最大突刺荷重として突刺強度(g)を得た。
(7)ポリオレフィン微多孔膜の平均孔径(μm)
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
平均孔径d(μm)は、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×10
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm/(cm・sec・Pa))から次式を用いて求められる。
liq=透水度/100
なお、透水度は次のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめエタノールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のエタノールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
(8)熱可塑性ポリマーのガラス転移温度
熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=38〜42%、pH=9.0)を、アルミ皿に適量取り、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後の乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。なお測定条件は下記の通りとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。−50℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
−50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
ベースライン(得られたDSC曲線におけるベースラインを高温側に延長した直線)と、変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)における接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
(9)熱可塑性ポリマーのゲル分率(トルエン不溶分)
テフロン(登録商標)板上に、熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=38〜42%、pH=9.0)をスポイトで滴下し(直径5mm以下)、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後、乾燥皮膜を約0.5g精秤(a)し、それを50mLポリエチレン容器に取り、そこに30mLのトルエンを注ぎ入れ3時間室温で振とうした。その後、内容物を325メッシュでろ過し、メッシュ上に残ったトルエン不溶分をメッシュごと、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させた。なお、ここで使用する325メッシュはあらかじめその乾燥重量を量っておいた。
トルエンを揮発させた後、トルエン不溶分の乾燥体と325メッシュの重量から、あらかじめ量っておいた325メッシュの乾燥重量を差し引くことでトルエン不溶分の乾燥重量(b)を得た。ゲル分率(トルエン不溶分)は、以下の計算式で算出した。
熱可塑性ポリマーのゲル分率(トルエン不溶分)=(b)/(a)×100 [%]
(10)熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(電解質溶媒膨潤度)(倍)
熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを分散させた溶液を130℃のオーブン中に1時間静置した後、乾燥させた熱可塑性ポリマーを0.5gになるように切り取り、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒10gと一緒に50mLのバイアル瓶に入れ、3時間浸透させた後、サンプルを取り出し、上記混合溶媒にて洗浄し、重量(Wa)を測定した。その後、150℃のオーブン中に1時間静置したあと重量(Wb)を測定し、以下の式より熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度を測定した。
熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa−Wb)÷(Wb)
(11)粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径(μm)
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径は、オスミウム蒸着した蓄電デバイス用セパレータを、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察することにより測定した。粒状熱可塑性ポリマーの径が最も大きい部分を粒径とし、20個の平均値を平均粒径とした。
(12)粒状熱可塑性ポリマーの面積割合(表面粒子面積比)
蓄電デバイス用セパレータの最表面に存在する熱可塑性ポリマーに対する粒状熱可塑性ポリマーの面積割合(S)は、以下の式より算出した。
S(%)=粒状熱可塑性ポリマーの面積÷セパレータの最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積×100
粒状熱可塑性ポリマーの面積は、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて測定した。蓄電デバイス用セパレータをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察することにより測定した。
(13)ボロノイ多角形の各面積/ボロノイ多角形の平均面積の比(規格化面積)
ボロノイ分割とは、ある距離空間上の任意の位置に配置された複数個の点(母点)に対して、同一空間上の他の点がどの母点に近いかによって領域分けすることをいう。このようにして得られた領域を含む図は、ボロノイ図と呼ばれる。一般に、ボロノイ図において、複数の領域の境界線は、各母点の二等分線の一部になり、かつ各領域は多角形を形成する。
セパレータ表面を特定の視野で観察するときに、その観察視野において、1つの熱可塑性ポリマー粒子を、平均直径(l)を有する1つの円とみなし、かつ隣接する複数の熱可塑性ポリマー粒子の間に垂直二等分線を引き、それぞれの粒子について該垂直二等分線により囲まれた多角形を「ボロノイ多角形」と称する。
観察視野においてボロノイ分割を行なったときに、閉じられていない領域は、上記式の計算対象としないものとする。閉じられていない領域としては、例えば、観察視野の境界に粒子が存在し、その粒子の全体が観察されていないときに、その粒子に対してボロノイ分割を行なうことにより得られる領域が挙げられる。
したがって、セパレータ表面の少なくとも一部の領域を撮影して得られた画像において、その画像の端に位置する粒子については、その粒子全体が観察されているか否かを確認することが好ましい。
検証する対象物により、確認方法が異なるが、一例としては、10μm×10μmより大きい視野にて、熱可塑性ポリマー粒子の分散性を評価する。また、撮像する枚数についても、対象物により一概に規定はできないが、無作為に選んだ10視野以上を検定することが必要と考える。
セパレータ表面の特定の観察視野において特定された熱可塑性ポリマー粒子について、上記で定義されたボロノイ分割を行なうことができる。具体的には、セパレータ表面に熱可塑性ポリマーを塗工した後の有機塗工膜表面を撮影して、画像を得る。得られた画像中で特定された熱可塑性ポリマー粒子を平均直径(l)の円と見なして、ボロノイ分割を行なうことによりボロノイ多角形を描画することができる。例えば、手動で、又は画像処理ソフトウェアを用いて、ボロノイ多角形を描画してよく、描画されたボロノイ多角形の面積を算出してもよい。
例えば、図2は、図1で特定された複数の熱可塑性ポリマー粒子にボロノイ分割を行なってボロノイ多角形を得た結果の一例である。図2に示されるボロノイ多角形の中で、閉じられた領域と対応しているボロノイ多角形の数及び面積を、画像処理ソフトウェアを用いて自動的に算出する(図3)。
上記の観察方法及び画像処理方法により、観察視野の投影面積が決定され、かつ熱可塑性ポリマー粒子の総数、投影面積及びボロノイ多角形の面積が得られる。また、上記の定義に従って、熱可塑性ポリマー粒子について、ボロノイ多角形の面積を算出することができる。更に視野中のボロノイ多角形の面積を平均化することにより、粒子が理想的に均一に配置された場合の粒子の占有面積が求められる。各ボロノイ多角形の面積を視野中のボロノイ多角形の平均面積で割ることにより、粒子の凝集度を評価することができる。規格化面積が1よりも小さいボロノイ多角形部分は、粒子が密になっており、規格化面積が1よりも大きい部分は、粒子が粗になっていると評価できる。
(14)熱可塑性ポリマー被覆層とポリオレフィン微多孔膜との接着力(基材との接着性)
セパレータの熱可塑性ポリマー被覆層に対し、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製)を貼りつけた。テープをサンプルから50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP−5N)を用いて測定した。得られた測定結果に基づいて、下記評価基準で接着力を評価した。
A:6gf/mm以上
C:6gf/mm未満
(15)加熱剥離強度及ベタツキ性(セパレータの剥離強度)
セパレータと、被着体としての正極集電体(冨士加工紙(株)アルミ箔20μm)とをそれぞれ30mm×150mmに切り取り、重ね合わせて積層体を得た後、その積層体をテフロン(登録商標)シート(ニチアス(株)ナフロンPTFEシート TOMBO‐No.9000)で挟んだ。各積層体について下記各条件にてプレスを行うことによって試験用サンプルを得た。
条件1)温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧
条件2)温度40℃、圧力5MPaで3分間加圧
条件3)温度80℃、圧力10MPaで3分間加圧
得られた各試験用サンプルの剥離強度を、島津製作所製のオートグラフAG−IS型(商標)を用いて、JIS K6854−2に準じて引張速度200mm/分で測定した。得られた結果に基づいて、下記評価基準でセパレータの剥離強度を評価した。
ベタツキ性(セパレータのハンドリング性)の評価基準:条件1)のプレス後の剥離強度の評価基準
S:剥離強度が、4gf/cm以下
A:剥離強度が、4gf/cm超6gf/cm以下
B:剥離強度が、6gf/cm超8gf/cm以下
C:剥離強度が、8gf/cm超
ベタツキ性(セパレータのハンドリング性)の評価基準:条件2)のプレス後の剥離強度の評価基準
S:剥離強度が、4gf/cm以下
A:剥離強度が、4gf/cm超6gf/cm以下
B:剥離強度が、6gf/cm超8gf/cm以下
C:剥離強度が、8gf/cm超
加熱剥離強度の評価基準:条件3)のプレス後の剥離強度の評価基準
A:剥離強度が、10gf/cm以上
C:剥離強度が、10gf/cm未満
(16)セパレータと電極の接着性(密着性(対電極))
セパレータと電極との接着性は、以下の手順で評価した。
(正極の作製)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、正極の活物質塗布量は250g/m、活物質嵩密度は3.00g/cmになるようにした。
(負極の作製)
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエンコポリマーラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗布量は106g/m、活物質嵩密度は1.35g/cmになるようにした。
(接着性試験)
上記方法により得られた負極を幅20mm、長さ40mmにカットした。この電極上にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)を負極が浸る程度にたらし、この上にセパレータを重ねた。この積層体をアルミジップに入れ、80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行った後、積層体を取り出し、セパレータを負極から剥がした。
(評価基準)
S:セパレータの30%以上の面積に負極活物質が付着した場合。
A:セパレータの10%以上30%未満の面積に負極活物質が付着した場合。
C:セパレータの10%未満の面積に負極活物質が付着した場合。
(17)捲回性及び電池のサイクル特性
(17−1)評価用サンプルの作製
<電極>
正極及び負極を項目(17)「セパレータと電極の接着性」と同様に作製した。正極を幅約57mmに、負極を幅約58mmに切断して、それぞれ帯状にすることで評価用電極を作製した。
<非水電解液の調整>
非水電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより調製した。
<セパレータ>
実施例及び比較例で得られたセパレータを60mmにスリットして帯状にすることにより評価用セパレータを作製した。
(17−2)捲回性の評価
上記で得られた、負極、セパレータ、正極、セパレータを、この順に重ね、250gfの巻取張力で渦巻状に複数回捲回することで電極積層体を作製した。10個作製した電極積層体のうちセパレータの撚れやシワの有無を目視で観察し、下記評価基準にて評価をした。
(評価基準)
S:撚れやシワ等の外観不良が全く生じなかったもの。
A:撚れやシワ等の外観不良が1個生じたもの。
C:撚れやシワ等の外観不良が2個以上発生したもの。
(17−3)電池のサイクル特性の評価
<電池組立て>
上記で得られた、負極、セパレータ、正極、セパレータを、この順に重ね、巻取張力を250gf、捲回速度を45mm/秒として、渦巻状に複数回捲回することで電極積層体を作製した。この電極積層体を外径が18mmで高さが65mmのステンレス製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製タブを容器蓋端子部に、負極集電体から導出したニッケル製タブを容器壁に溶接した。その後、真空下、80℃で12時間の乾燥を行った。アルゴンボックス内にて、組立てた電池容器内に上記非水電解液を注入し、封口した。
<前処理>
組立てた電池を1/3Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を8時間行い、その後1/3Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に、1Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を3時間行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。最後に、1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電をした後、4.2Vの定電圧充電を3時間行い、前処理を終えた。なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表す。
<サイクル試験>
上記前処理を行った電池を温度25℃の条件下で、放電電流1Aで放電終止電圧3Vまで放電を行った後、充電電流1Aで充電終止電圧4.2Vまで充電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する1000サイクル後の容量保持率を用いて、以下の基準でサイクル特性を評価した。
(評価基準)
S:容量保持率95%以上100%以下
A:容量保持率90%以上95%未満
C:容量保持率90%未満
[製造例1−1](ポリオレフィン微多孔膜1の製造)
Mvが70万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが30万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレンとMvが15万であるホモポリマーのポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量部となるように、すなわち、ポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で230℃に加熱しながら溶融混練し、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度80℃に制御された冷却ロール上に押し出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物を得た。このシートを同時二軸延伸機にて倍率7×6.4倍、温度112℃下で延伸した後、塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後乾燥し、テンター延伸機にて温度130℃、横方向に2倍延伸した。その後、この延伸シートを幅方向に約10%緩和して熱処理を行い、表1に示すポリオレフィン微多孔膜1を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜1について、上記方法により物性を測定した。また得られたポリオレフィン微多孔膜をそのままセパレータとして、上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
[製造例1−2](ポリオレフィン微多孔膜2の製造)
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)を96.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)4.0質量部、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、ポリオレフィン微多孔膜1の表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、フィラー多孔層を2μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜2を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜2を製造例1−1と同様に上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
[製造例1−3](ポリオレフィン微多孔膜3の製造)
焼成カオリン(カオリナイト(AlSi(OH))を主成分とする湿式カオリンを高温焼成処理したもの、平均粒径1.8μm)を95.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径220nm、最低成膜温度0℃以下)5.0質量部、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)0.5質量部を180質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、ポリオレフィン微多孔膜1の表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、フィラー多孔層を6μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜3を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜3を製造例1−1と同様に上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
[製造例1−4](ポリオレフィン微多孔膜4の製造)
水酸化アルミニウム粒子(平均粒径1.0μm)94質量部、アクリルラテックス(固形分濃度45%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)6.0質量部とポリリン酸アミン塩(分散剤)1.0質量部を100質量部の水にそれぞれ均一に分散させた水溶液を、ポリオレフィン微多孔膜1の表面にグラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、フィラー多孔層を2μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜4を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜4を製造例1−1と同様に上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
[製造例2−1A]
(熱可塑性ポリマー被覆層用原料ポリマー1Aの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)0.5質量部と、を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)を7.5質量部添加した。
過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、メタクリル酸メチル38.5質量部、アクリル酸n−ブチル19.6質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル31.9質量部、メタクリル酸0.1質量部、アクリル酸0.1質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部、アクリルアミド5質量部、メタクリル酸グリシジル2.8質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学工業株式会社製)0.7質量部、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)3質量部、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)3質量部、p−スチレンスルホン酸ナトリウム0.05質量部、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)7.5質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて、乳化液を作製した。得られた乳化液を、滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却した。得られたエマルジョンを、水酸化アンモニウム水溶液(25%水溶液)でpH=9.0に調整し、濃度40%のアクリル系コポリマーラテックスを得た(原料ポリマー1A)。得られた原料ポリマー1Aについて、上記方法により評価した。得られた結果を表2に示す。
[製造例2−2A、2−3A]
(熱可塑性ポリマー被覆層用原料ポリマー2A、3A)
モノマー及びその他の使用原料の組成を、表2に記載のとおりに変更する以外は、原料ポリマー1Aの製造と同様にして、アクリル系コポリマーラテックスを得た(原料ポリマー2A、3A)。得られた原料ポリマー2A及び3Aについて、上記方法により評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、表2に記載の原料ポリマー1A、2A及び3AのTgは、全てFOXの式による概算値である。
(注) 表2又は3中の原材料名
MMA :メタクリル酸メチル
BA :アクリル酸n−ブチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
EHA :アクリル酸2−エチルヘキシル
MAA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
HEMA :メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AM :アクリルアミド
GMA :メタクリル酸グリシジル
NaSS :p−スチレンスルホン酸ナトリウム
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
KH1025:アクアロンKH1025(登録商標、第一工業製薬株式会社製)
SR1025:アデカリアソープSR1025(登録商標、株式会社ADEKA製)
APS :過硫酸アンモニウム
(粒状粒子の製造方法)
(原料ポリマー1A2−a〜1A6、2A2〜2A5、3A2〜3A6)
表2に示される原料ポリマーを多段重合に供することにより粒状粒子を調製した。具体的には、表3に示される配合量(質量基準)に従って、攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、初期仕込みとして、イオン交換水、シードポリマー、及び乳化剤を投入し、反応容器中の温度を30℃に保ち、さらに開始剤の2%水溶液を添加した。
添加から5分後に、表3に示される配合量(質量基準)に従って、単量体、官能基含有単量体、乳化剤、架橋剤、開始剤及びイオン交換水から成る乳化混合液を150分かけて滴下槽から反応容器に投入した。この状態で更に30分撹拌を継続して、シード粒子にモノマーを吸収させた。次に、反応系のpHを4以下に維持した状態で、反応容器の温度を80℃に上昇させ、120分間攪拌を続け、その後、室温まで冷却した。
冷却後、200メッシュの金網でろ過を行い、凝集物等を除去して、粒状ポリマーを得た。この粒状ポリマーを更にシード重合に供して粒径を大きくする場合は、改めて仕込みから実施する。一方で、この粒状ポリマーをそのまま樹脂バインダとして使用する場合は、ろ過後、25%のアンモニア水でpHを8に調整し、その後、固形分が50%となるよう水を添加し調整した。
得られた原料ポリマー1A2−a〜1A6、2A2〜2A5、及び3A2〜3A6、について、上記方法により物性を評価した。評価結果を表3に示す。なお、表3における熱可塑性ポリマー(原料ポリマー)のTgは、上記(8)に記載の方法で測定した値である。
[実施例1〜33、比較例1〜15]
表4〜9に記載の微多孔膜と原料ポリマーの組み合わせに従って、蓄電デバイス用セパレータを作製した。具体的には、表4〜9に記載の原料ポリマーを、表4〜9に記載の濃度で水に均一に分散させて、熱可塑性ポリマーを含有する塗工液を調製した。次いで、表4〜9に記載のポリオレフィン微多孔膜の片面表面に、表4〜9に記載の塗工方法(スプレー又はグラビア)により塗工液を塗布し、60℃で乾燥して、塗工液の水を除去した。さらに、ポリオレフィン微多孔膜のもう片面にも同様に塗工液を塗布し、再度乾燥させることにより、ポリオレフィン微多孔膜の両面に熱可塑性ポリマーを備える蓄電デバイス用セパレータを作製した。得られたセパレータの物性及び評価結果を表4〜9に示す。

Claims (12)

  1. ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有する多層多孔膜であって、
    前記熱可塑性ポリマー被覆層には、平均粒径が500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが分散して存在し、
    前記最外表面には、前記粒状熱可塑性ポリマーを含む部分と前記粒状熱可塑性ポリマーを含まない部分とを含む海島構造が形成されている、
    多層多孔膜。
  2. 前記粒状熱可塑性ポリマーが、シード粒子の製造後、さらにシード重合を行うことにより得られる、請求項1に記載の多層多孔膜。
  3. 前記粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径が、1000nm以上2000nm以下である、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
  4. 前記粒状熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)が、20℃以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
  5. 下記式(1):
    {式中、「ボロノイ多角形面積」は、前記多層多孔膜の視野において、前記粒状熱可塑性ポリマーをボロノイ分割に供して得られる個々の多角形の面積であり、かつ「視野中のボロノイ多角形面積の平均値」は、前記視野において得られる全てのボロノイ多角形面積の平均値である。}
    で表される規格化面積の最低値が、0.3以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
  6. 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度25℃及び圧力5MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、8gf/cm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
  7. 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度80℃及び圧力10MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、10gf/cm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
  8. 前記ポリオレフィン微多孔膜と前記熱可塑性ポリマー被覆層との90°剥離強度が、6gf/mm以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
  9. 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、95%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
  10. 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、50%以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層多孔膜から成る蓄電デバイス用セパレータ。
  12. 請求項11に記載の蓄電デバイス用セパレータと電極とが積層した、積層体。
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