JP2016107642A - 多層多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有する多層多孔膜であって、
前記熱可塑性ポリマー被覆層には、平均粒径が500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが分散して存在し、
前記最外表面には、前記粒状熱可塑性ポリマーを含む部分と前記粒状熱可塑性ポリマーを含まない部分とを含む海島構造が形成されている、
多層多孔膜。
[2] 前記粒状熱可塑性ポリマーが、シード粒子の製造後、さらにシード重合を行うことにより得られる、[1]に記載の多層多孔膜。
[3] 前記粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径が、1000nm以上2000nm以下である、[1]又は[2]に記載の多層多孔膜。
[4] 前記粒状熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)が、20℃以下である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[5] 下記式(1):
で表される規格化面積の最低値が、0.3以上である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[6] 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度25℃及び圧力5MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、8gf/cm以下である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[7] 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度80℃及び圧力10MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、10gf/cm以上である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[8] 前記ポリオレフィン微多孔膜と前記熱可塑性ポリマー被覆層との90°剥離強度が、6gf/mm以上である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[9] 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、95%以下である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[10] 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、50%以下である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
[11] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の多層多孔膜から成る蓄電デバイス用セパレータ。
[12] [11]に記載の蓄電デバイス用セパレータと電極とが積層した、積層体。
本実施形態に係る多層多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜と、該ポリオレフィン多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有する。所望により、多層多孔膜は、フィラー多孔層をさらに有してよい。
本実施形態に係る多層多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部、特に、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層を有する。
熱可塑性ポリマー被覆層は、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部に平均粒径500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが均一に分散して存在する層である。
本実施形態における熱可塑性ポリマーの含有量は、ポリオレフィン微多孔膜との接着力を向上させる一方で、ポリオレフィン微多孔膜の孔の目詰まりによるサイクル特性(透過性)の低下を抑制する観点から、0.05g/m2以上1.0g/m2以下が好ましく、より好ましくは0.07g/m2以上0.8g/m2以下であり、さらに好ましくは0.1g/m2以上0.7g/m2以下である。熱可塑性ポリマーの含有量は、塗工液のポリマー濃度又はポリマー溶液の塗布量を変更することにより調整されることができる。
特に、ポリマーブレンドやコアシェル構造は、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移温度を制御できる。また、熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与できる。例えば、ブレンドの場合は、特にガラス転移温度を20℃以上の領域に持つポリマーと、ガラス転移温度を20℃未満の領域に持つポリマーを2種類以上ブレンドすることで、耐ベタツキ性とポリオレフィン微多孔膜への接着性を両立することができる。ブレンドする場合の混合比としてはガラス転移温度を20℃以上の領域に持つポリマーと、ガラス転移温度を20℃未満の領域に持つポリマーとの比が0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、5:95〜95:5であり、さらに好ましくは50:50〜95:5であり、よりさらに好ましくは60:40〜90:10である。コアシェル構造の場合は、外殻ポリマーを変えることによりポリオレフィン微多孔膜などの他の材料に対する接着性や相溶性の調整ができ、中心部分に属するポリマーを調整することで、例えば熱プレス後の電極への接着性を高めたポリマーに調整することができる。また、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせて粘弾性の制御をすることもできる。
本実施形態における熱可塑性ポリマーの構造としては、多層多孔膜のハンドリング性、接着性及びリチウムイオン透過性の観点から、粒状が好ましい。
粒状熱可塑性ポリマーの中でも、コアシェル構造を備える粒状熱可塑性ポリマーがより好ましい。シェル側のポリマー及びコア側のポリマーは、特に限定されないが、シェル側のポリマーのガラス転移温度は、コア側のポリマーのガラス転移温度よりも低く、かつ20℃以下であることがより好ましい。シェル側のポリマーのガラス転移温度は、−30℃以上15℃以下であることが更に好ましい。
また、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドする場合は、シェル側のガラス転移温度が20℃以上の粒状熱可塑性ポリマーであってもよい。
ここで、熱可塑性ポリマーの「粒状」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定において、個々の熱可塑性ポリマーが輪郭を持った状態のことを指し、例えば、扁平形状であっても、球状であっても、多角形状等であってもよい。
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径は、多層多孔膜のハンドリング性、接着性及びリチウムイオン透過性の観点から、500nm以上2000nm以下であることが好ましく、1000nm以上2000nm以下であることがより好ましい。
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径を500nm以上に調整する方法、つまり、大粒径を有する粒状熱可塑性ポリマーの形成方法として、例えば、シード粒子の製造後、さらにシード重合を行うことによる粒径成長が挙げられる。具体的には、ラテックス粒子(シード粒子)を含む乳化液中にモノマーを滴下し、ラテックス粒子を核としたモノマーの重合を誘導する。シード重合では、重合反応を繰り返すことができる(多段階重合を行うことができる)ので、所望の大粒径のラテックス粒子を得ることができる。
本実施形態において、多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積に対する粒状熱可塑性ポリマーの面積割合は、特に限定されないが、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、又は75%以下であることが好ましく、また、この面積割合は、10%以上、15%以上、又は20%以上であることが好ましい。より好ましくは、この面積割合は、10%以上95%以下である。多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積に対する粒状熱可塑性ポリマーの面積割合Sは、以下の式:
S(%)=粒状熱可塑性ポリマーの面積÷多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積
から算出される。
ここで、多層多孔膜の最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積及び粒状熱可塑性ポリマーの面積は、実施例において後述する通り、多層多孔膜の最表面をSEM(倍率30000倍)で観察することによって測定される。
本実施形態では、粒状熱可塑性ポリマーの凝集度を評価するために、下記式(1):
で表される規格化面積を算出することができる。
本実施形態に係る多層多孔膜では、多層多孔膜と電極との剥離強度、及び多孔膜を含む電池のサイクル特性の観点から、規格化面積の最低値が、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上であることが好ましい。式(1)におけるボロノイ多角形面積、視野中のボロノイ多角形面積の平均値、及び規格化面積は、実施例において後述する通り、多層多孔膜の特定の視野をボロノイ分割に供することにより算出されることができる。
本実施形態で使用される熱可塑性ポリマーは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、α−ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー又はこれらを含むコポリマー;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンをモノマー単位として含むジエン系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどをモノマー単位として含むアクリル系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂:並びにこれらの混合物等が挙げられる。
ジエン系ポリマーは、特に限定されないが、例えば、ブタジエン、イソプレン等の、共役の二重結合を2つ有する共役ジエンモノマーを重合することにより得られるモノマー単位を含むポリマーである。
その他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル化合物;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基含有化合物;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系モノマーなどが挙げられる。
これらの内の1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリレートモノマーを重合することにより得られるモノマー単位を含むポリマーである。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を示し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を示す。
フッ素系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマー、及びフッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。フッ素系ポリマーは、電気化学的安定性の観点から好ましい。
熱可塑性ポリマーを合成する際に使用するモノマーとして、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アミド基及びシアノ基から成る群から選択される少なくとも1つの基を有するモノマーを使用してもよい。
本実施形態で用いる熱可塑性ポリマーは、セパレータと電極との接着性の点から、少なくとも1つのガラス転移温度が、20℃未満の領域に存在するという熱特性を有することが好ましい。ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定される。なお、本明細書では、ガラス転移温度を「Tg」と表現する場合もある。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+‥‥+Wi/Tgi+‥‥Wn/Tgn (2)
{式中、Tg(K)は、コポリマーのガラス転移温度(Tg)であり、Tgi(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgであり、かつWiは、各モノマーの質量分率である}
より概算することもできる。ただし、FOXの式により得られるTgは、あくまでも概算値であるため、本願明細書では、特に言及しない限り、熱可塑性ポリマーのTgとしては、上記DSCを用いた方法により測定したTgを採用する。
本実施形態における熱可塑性ポリマーは、サイクル特性等の電池特性の点から、電解液に対する膨潤性を有することが好ましい。熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度は、5倍以下が好ましく、4.5倍以下がより好ましく、4倍以下がさらに好ましい。また、この膨潤度は、1倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度は、実施例において後述する方法により測定される。
本実施形態において、熱可塑性ポリマーのゲル分率は、特に限定されないが、電解液中への溶解の抑制や電池内部での熱可塑性ポリマーの強度維持の観点から80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。ここで、ゲル分率は、実施例において後述する通り、トルエン不溶分の測定により求められる。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂組成物から構成される多孔膜が挙げられ、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜であることが好ましい。本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂の含有量は特に限定されないが、蓄電デバイス用セパレータとして用いた場合のシャットダウン性能などの観点から、多孔膜を構成する全成分の質量分率の50%以上100%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物から成る多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂が占める割合は60%以上100%以下がより好ましく、70%以上100%以下であることが更に好ましい。
例えば、粘度平均分子量100万未満のポリオレフィンを単独で使用する代わりに、粘度平均分子量200万のポリオレフィンと粘度平均分子量27万のポリオレフィンの混合物であって、その粘度平均分子量が100万未満の混合物を用いてもよい。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は、特に限定されないが、好ましくは200g/20μm以上、より好ましくは300g/20μm以上であり、好ましくは2000g/20μm以下、より好ましくは1000g/20μm以下である。突刺強度が200g/20μm以上であることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点、及び充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制する観点からも好ましい。一方、突刺強度が2000g/20μm以下であることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。ここで、突刺強度は、後記の実施例の記載の方法により測定される。
なお、上記突刺強度は、ポリオレフィン微多孔膜の延伸倍率及び/又は延伸温度等を調整することにより調節可能である。
なお、気孔率は、ポリオレフィン微多孔膜の延伸倍率の変更等により調節可能である。
なお、上記透気度は、ポリオレフィン微多孔膜の延伸温度及び/又は延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜を製造する方法は、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状に成形後、場合により延伸した後、可塑剤を抽出することにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法等が挙げられる。
なお、ここで、同時二軸延伸とは、MD方向(微多孔膜の機械方向)の延伸とTD方向(微多孔膜のMDを90°の角度で横切る方向)の延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、MD方向、又はTD方向の延伸が独立して施される延伸方法をいい、MD方向又はTD方向に延伸がなされている際は、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。
また、本実施形態に係る多層多孔膜は、無機フィラー及び樹脂バインダを含むフィラー多孔層をさらに含んでもよい。多層多孔膜がフィラー多孔層を備える位置は、ポリオレフィン微多孔膜の片面であっても両面であってもよい。
前記フィラー多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
樹脂バインダの種類としては、特に限定されないが、本実施形態における多層多孔膜をリチウムイオン二次電池用セパレータとして使用する場合には、リチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
なお、これらの単量体に加えて様々な品質及び物性を改良するために、上記以外の単量体成分をさらに使用することもできる。
本実施形態のセパレータは、上記多層多孔膜から成るか、又はポリオレフィン微多孔膜及びフィラー多孔層から成る多層微多孔膜の少なくとも一方の表面の少なくとも一部に特定の海島構造を有する熱可塑性ポリマー被覆層を有する。セパレータは、蓄電デバイスを形成するために使用されることが好ましい。
熱可塑性ポリマー被覆層が存在する多層多孔膜又は蓄電デバイス用セパレータの最表面に対して、アルミ箔(正極集電体など)を、温度25℃及び圧力5MPaで3分間加圧した後の剥離強度(以下、「常温剥離強度」ともいう。)は、8gf/cm以下が好ましく、より好ましくは7gf/cm以下、さらに好ましくは6gf/cm以下である。常温剥離強度が8gf/cmよりも大きいと、ベタツキ性が見られ、セパレータのスリット性又は捲回性に障害を生じる。なお、常温剥離強度は実施例に記載の方法により測定することができる。
蓄電デバイス用セパレータの膜厚は、下限として好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下である。膜厚を2μm以上とすることは、蓄電デバイス用セパレータの強度確保の観点から好適である。一方、膜厚を100μm以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜上に、又はポリオレフィン微多孔膜及びフィラー多孔層から成る多層微多孔膜上に、熱可塑性ポリマーを形成する方法としては、特に限定されず、例えば熱可塑性ポリマーを含有する塗布液をポリオレフィン微多孔膜又は多層微多孔膜に塗布する方法が挙げられる。
本実施形態に係るセパレータを電極と接着することにより、セパレータと電極とが積層している積層体を得ることができる。ここで、「電極と接着」とは、電極がアルミ箔であると仮定したときに、セパレータと電極との上記加熱剥離強度が、好ましくは10gf/cm以上、より好ましくは15gf/cm以上、さらに好ましくは20gf/cm以上であることをいう。
本実施形態のセパレータは、電池、コンデンサー、キャパシタ等の作製、物質の分離等に用いることができる。特に、非水電解液電池用セパレータとして用いた場合に、電極への接着性と優れた電池性能を付与することが可能である。
以下、蓄電デバイスが非水電解液二次電池である場合についての好適な態様について説明する。
(1)粘度平均分子量(以下、「Mv」ともいう。)
ASRM−D4020に基づき、デカリン溶剤における135℃での極限粘度[η]を求め、ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=0.00068×Mv0.67
また、ポリプロピレンのMvは次式より算出した。
[η]=1.10×Mv0.80
10cm×10cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、(株)島津製作所製の電子天秤AEL−200を用いて重量を測定した。得られた重量を100倍することで1m2当りの膜の目付け(g/m2)を算出した。
ポリオレフィン微多孔膜、多層微多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータから、各々、10cm×10cmのサンプルを切り出し、格子状に9箇所(3点×3点)を選んで、膜厚を微小測厚器(東洋精機製作所(株) タイプKBM)を用いて室温23±2℃で測定した。各々、9箇所の測定値の平均値を、ポリオレフィン微多孔膜、多層多孔膜および蓄電デバイス用セパレータの膜厚(μm)とした。
10cm×10cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、膜密度を0.95(g/cm3)として次式を用いて計算した。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
JIS P−8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーでポリオレフィン微多孔膜を固定した。次に固定されたポリオレフィン微多孔膜の中央部を、針先端の曲率半径0.5mm、及び突刺速度2mm/secの条件下で、25℃雰囲気下にて突刺試験に供することにより、最大突刺荷重として突刺強度(g)を得た。
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
平均孔径d(μm)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
Rgas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm3/(cm2・sec・Pa))から次式を用いて求められる。
Rliq=透水度/100
なお、透水度は次のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめエタノールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のエタノールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm3)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=38〜42%、pH=9.0)を、アルミ皿に適量取り、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後の乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。なお測定条件は下記の通りとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。−50℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
−50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
ベースライン(得られたDSC曲線におけるベースラインを高温側に延長した直線)と、変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)における接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
テフロン(登録商標)板上に、熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=38〜42%、pH=9.0)をスポイトで滴下し(直径5mm以下)、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後、乾燥皮膜を約0.5g精秤(a)し、それを50mLポリエチレン容器に取り、そこに30mLのトルエンを注ぎ入れ3時間室温で振とうした。その後、内容物を325メッシュでろ過し、メッシュ上に残ったトルエン不溶分をメッシュごと、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させた。なお、ここで使用する325メッシュはあらかじめその乾燥重量を量っておいた。
熱可塑性ポリマーのゲル分率(トルエン不溶分)=(b)/(a)×100 [%]
熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを分散させた溶液を130℃のオーブン中に1時間静置した後、乾燥させた熱可塑性ポリマーを0.5gになるように切り取り、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒10gと一緒に50mLのバイアル瓶に入れ、3時間浸透させた後、サンプルを取り出し、上記混合溶媒にて洗浄し、重量(Wa)を測定した。その後、150℃のオーブン中に1時間静置したあと重量(Wb)を測定し、以下の式より熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度を測定した。
熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa−Wb)÷(Wb)
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径は、オスミウム蒸着した蓄電デバイス用セパレータを、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察することにより測定した。粒状熱可塑性ポリマーの径が最も大きい部分を粒径とし、20個の平均値を平均粒径とした。
蓄電デバイス用セパレータの最表面に存在する熱可塑性ポリマーに対する粒状熱可塑性ポリマーの面積割合(S)は、以下の式より算出した。
S(%)=粒状熱可塑性ポリマーの面積÷セパレータの最表面に存在する熱可塑性ポリマーの全面積×100
粒状熱可塑性ポリマーの面積は、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて測定した。蓄電デバイス用セパレータをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察することにより測定した。
ボロノイ分割とは、ある距離空間上の任意の位置に配置された複数個の点(母点)に対して、同一空間上の他の点がどの母点に近いかによって領域分けすることをいう。このようにして得られた領域を含む図は、ボロノイ図と呼ばれる。一般に、ボロノイ図において、複数の領域の境界線は、各母点の二等分線の一部になり、かつ各領域は多角形を形成する。
セパレータの熱可塑性ポリマー被覆層に対し、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製)を貼りつけた。テープをサンプルから50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP−5N)を用いて測定した。得られた測定結果に基づいて、下記評価基準で接着力を評価した。
A:6gf/mm以上
C:6gf/mm未満
セパレータと、被着体としての正極集電体(冨士加工紙(株)アルミ箔20μm)とをそれぞれ30mm×150mmに切り取り、重ね合わせて積層体を得た後、その積層体をテフロン(登録商標)シート(ニチアス(株)ナフロンPTFEシート TOMBO‐No.9000)で挟んだ。各積層体について下記各条件にてプレスを行うことによって試験用サンプルを得た。
条件1)温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧
条件2)温度40℃、圧力5MPaで3分間加圧
条件3)温度80℃、圧力10MPaで3分間加圧
得られた各試験用サンプルの剥離強度を、島津製作所製のオートグラフAG−IS型(商標)を用いて、JIS K6854−2に準じて引張速度200mm/分で測定した。得られた結果に基づいて、下記評価基準でセパレータの剥離強度を評価した。
ベタツキ性(セパレータのハンドリング性)の評価基準:条件1)のプレス後の剥離強度の評価基準
S:剥離強度が、4gf/cm以下
A:剥離強度が、4gf/cm超6gf/cm以下
B:剥離強度が、6gf/cm超8gf/cm以下
C:剥離強度が、8gf/cm超
ベタツキ性(セパレータのハンドリング性)の評価基準:条件2)のプレス後の剥離強度の評価基準
S:剥離強度が、4gf/cm以下
A:剥離強度が、4gf/cm超6gf/cm以下
B:剥離強度が、6gf/cm超8gf/cm以下
C:剥離強度が、8gf/cm超
加熱剥離強度の評価基準:条件3)のプレス後の剥離強度の評価基準
A:剥離強度が、10gf/cm以上
C:剥離強度が、10gf/cm未満
セパレータと電極との接着性は、以下の手順で評価した。
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、正極の活物質塗布量は250g/m2、活物質嵩密度は3.00g/cm3になるようにした。
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエンコポリマーラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗布量は106g/m2、活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにした。
上記方法により得られた負極を幅20mm、長さ40mmにカットした。この電極上にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)を負極が浸る程度にたらし、この上にセパレータを重ねた。この積層体をアルミジップに入れ、80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行った後、積層体を取り出し、セパレータを負極から剥がした。
(評価基準)
S:セパレータの30%以上の面積に負極活物質が付着した場合。
A:セパレータの10%以上30%未満の面積に負極活物質が付着した場合。
C:セパレータの10%未満の面積に負極活物質が付着した場合。
(17−1)評価用サンプルの作製
<電極>
正極及び負極を項目(17)「セパレータと電極の接着性」と同様に作製した。正極を幅約57mmに、負極を幅約58mmに切断して、それぞれ帯状にすることで評価用電極を作製した。
非水電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより調製した。
実施例及び比較例で得られたセパレータを60mmにスリットして帯状にすることにより評価用セパレータを作製した。
上記で得られた、負極、セパレータ、正極、セパレータを、この順に重ね、250gfの巻取張力で渦巻状に複数回捲回することで電極積層体を作製した。10個作製した電極積層体のうちセパレータの撚れやシワの有無を目視で観察し、下記評価基準にて評価をした。
(評価基準)
S:撚れやシワ等の外観不良が全く生じなかったもの。
A:撚れやシワ等の外観不良が1個生じたもの。
C:撚れやシワ等の外観不良が2個以上発生したもの。
<電池組立て>
上記で得られた、負極、セパレータ、正極、セパレータを、この順に重ね、巻取張力を250gf、捲回速度を45mm/秒として、渦巻状に複数回捲回することで電極積層体を作製した。この電極積層体を外径が18mmで高さが65mmのステンレス製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製タブを容器蓋端子部に、負極集電体から導出したニッケル製タブを容器壁に溶接した。その後、真空下、80℃で12時間の乾燥を行った。アルゴンボックス内にて、組立てた電池容器内に上記非水電解液を注入し、封口した。
組立てた電池を1/3Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を8時間行い、その後1/3Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に、1Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を3時間行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。最後に、1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電をした後、4.2Vの定電圧充電を3時間行い、前処理を終えた。なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表す。
上記前処理を行った電池を温度25℃の条件下で、放電電流1Aで放電終止電圧3Vまで放電を行った後、充電電流1Aで充電終止電圧4.2Vまで充電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する1000サイクル後の容量保持率を用いて、以下の基準でサイクル特性を評価した。
(評価基準)
S:容量保持率95%以上100%以下
A:容量保持率90%以上95%未満
C:容量保持率90%未満
Mvが70万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが30万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレンとMvが15万であるホモポリマーのポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量部となるように、すなわち、ポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)を96.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)4.0質量部、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、ポリオレフィン微多孔膜1の表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、フィラー多孔層を2μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜2を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜2を製造例1−1と同様に上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
焼成カオリン(カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)を主成分とする湿式カオリンを高温焼成処理したもの、平均粒径1.8μm)を95.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径220nm、最低成膜温度0℃以下)5.0質量部、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)0.5質量部を180質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、ポリオレフィン微多孔膜1の表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、フィラー多孔層を6μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜3を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜3を製造例1−1と同様に上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
水酸化アルミニウム粒子(平均粒径1.0μm)94質量部、アクリルラテックス(固形分濃度45%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)6.0質量部とポリリン酸アミン塩(分散剤)1.0質量部を100質量部の水にそれぞれ均一に分散させた水溶液を、ポリオレフィン微多孔膜1の表面にグラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、フィラー多孔層を2μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜4を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜4を製造例1−1と同様に上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
(熱可塑性ポリマー被覆層用原料ポリマー1Aの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)0.5質量部と、を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)を7.5質量部添加した。
(熱可塑性ポリマー被覆層用原料ポリマー2A、3A)
モノマー及びその他の使用原料の組成を、表2に記載のとおりに変更する以外は、原料ポリマー1Aの製造と同様にして、アクリル系コポリマーラテックスを得た(原料ポリマー2A、3A)。得られた原料ポリマー2A及び3Aについて、上記方法により評価した。得られた結果を表2に示す。
MMA :メタクリル酸メチル
BA :アクリル酸n−ブチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
EHA :アクリル酸2−エチルヘキシル
MAA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
HEMA :メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AM :アクリルアミド
GMA :メタクリル酸グリシジル
NaSS :p−スチレンスルホン酸ナトリウム
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
KH1025:アクアロンKH1025(登録商標、第一工業製薬株式会社製)
SR1025:アデカリアソープSR1025(登録商標、株式会社ADEKA製)
APS :過硫酸アンモニウム
(原料ポリマー1A2−a〜1A6、2A2〜2A5、3A2〜3A6)
表2に示される原料ポリマーを多段重合に供することにより粒状粒子を調製した。具体的には、表3に示される配合量(質量基準)に従って、攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、初期仕込みとして、イオン交換水、シードポリマー、及び乳化剤を投入し、反応容器中の温度を30℃に保ち、さらに開始剤の2%水溶液を添加した。
表4〜9に記載の微多孔膜と原料ポリマーの組み合わせに従って、蓄電デバイス用セパレータを作製した。具体的には、表4〜9に記載の原料ポリマーを、表4〜9に記載の濃度で水に均一に分散させて、熱可塑性ポリマーを含有する塗工液を調製した。次いで、表4〜9に記載のポリオレフィン微多孔膜の片面表面に、表4〜9に記載の塗工方法(スプレー又はグラビア)により塗工液を塗布し、60℃で乾燥して、塗工液の水を除去した。さらに、ポリオレフィン微多孔膜のもう片面にも同様に塗工液を塗布し、再度乾燥させることにより、ポリオレフィン微多孔膜の両面に熱可塑性ポリマーを備える蓄電デバイス用セパレータを作製した。得られたセパレータの物性及び評価結果を表4〜9に示す。
Claims (12)
- ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも1つの最外表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とを有する多層多孔膜であって、
前記熱可塑性ポリマー被覆層には、平均粒径が500nm以上2000nm以下の粒状熱可塑性ポリマーが分散して存在し、
前記最外表面には、前記粒状熱可塑性ポリマーを含む部分と前記粒状熱可塑性ポリマーを含まない部分とを含む海島構造が形成されている、
多層多孔膜。 - 前記粒状熱可塑性ポリマーが、シード粒子の製造後、さらにシード重合を行うことにより得られる、請求項1に記載の多層多孔膜。
- 前記粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径が、1000nm以上2000nm以下である、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
- 前記粒状熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)が、20℃以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
- 下記式(1):
で表される規格化面積の最低値が、0.3以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層多孔膜。 - 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度25℃及び圧力5MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、8gf/cm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
- 前記多層多孔膜の最表面に対して、アルミ箔を、温度80℃及び圧力10MPaで3分間加圧した後の剥離強度が、10gf/cm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
- 前記ポリオレフィン微多孔膜と前記熱可塑性ポリマー被覆層との90°剥離強度が、6gf/mm以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
- 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、95%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
- 前記熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆される前記ポリオレフィン微多孔膜の面積割合が、前記ポリオレフィン微多孔膜の全表面積100%に対して、50%以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層多孔膜から成る蓄電デバイス用セパレータ。
- 請求項11に記載の蓄電デバイス用セパレータと電極とが積層した、積層体。
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