JP7166773B2 - 蓄電デバイス用セパレータ及びそれを用いた積層体、捲回体、リチウムイオン二次電池、並びに蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス用セパレータ及びそれを用いた積層体、捲回体、リチウムイオン二次電池、並びに蓄電デバイス Download PDF

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Description

本発明は、蓄電デバイス用セパレータ及びそれを用いた積層体、捲回体、リチウムイオン二次電池、並びに蓄電デバイスに関する。
近年、リチウムイオン二次電池に代表される蓄電デバイスの開発が、活発に行われている。通常、蓄電デバイスには、微多孔膜(セパレータ)が正負極間に設けられている。セパレータは、正負極間の直接的な接触を防ぎ、かつ微多孔中に保持した電解液を通じイオンを透過させる機能を有する。
従来、セパレータには、異常加熱した場合に速やかに電池反応が停止される特性(ヒューズ特性)、高温になっても形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する性能(ショート特性)等の安全性に関する性能が求められている。
安全性の高い電池を製造することを目的として、特許文献1には、ポリオレフィン微多孔膜上に、無機粒子と樹脂製バインダを含む多孔層を備えるセパレータを形成する技術が記載されている。
また、近年では、電池のような蓄電デバイスの高容量化を背景に、電極とセパレータが積層された捲回体を熱プレスすることで、捲回体の体積を小さくする技術が用いられる。このときセパレータに電極との密着性を持たせることで、プレス後に電極とセパレータが固定され、プレス時の体積を維持することができる。また、枚葉上の電極とセパレータを1枚ずつ重ね合わせて積層するスタック方式においては、積層後の積層体のハンドリング中に電極とセパレータの位置ずれが発生しやすい。しかしながら、セパレータに電極との密着性を持たせることにより、高速で搬送される積層体の位置ずれが抑制され、生産性の高い蓄電デバイスの製造が可能となる。
上記のような、密着性を有するセパレータは、電解液を捲回体に注入する工程の前で接着性を発現することが求められる。
このような事情のもと、セパレータに密着性を持たせる試みとして、例えば、特許文献2では、粒子形状のアクリル系共重合体の水分散体を基材上に担持させる技術が提示されている。
また、特許文献3には、安全性を高めつつ電極との密着性を両立させる目的で、無機粒子と樹脂製バインダを含む多孔層上に、粒子形状のアクリル系共重合体の水分散体を含む熱可塑性ポリマー層を担持させる技術も開示されている。
特許第5354735号公報 特開2015-128059号公報 特許第6105816号公報
多孔膜に耐熱性と電極への密着性とを付与するためには、特許文献3に記載されたような、無機粒子を含む耐熱層と熱可塑性ポリマー層とを併せ持つことが望ましい。しかしながら、特許文献3に記載された無機フィラー多孔層と熱可塑性ポリマー層を同時に積層した場合、熱可塑性ポリマーが無機フィラー多孔層に担持され難くなり、無機フィラー間に存在する孔に落ち込みやすくなる。この場合、電極との密着性をより十分に発現させるために、無機フィラー間に存在する孔に熱可塑性ポリマーを充填する必要がある。その結果、余分な熱可塑性ポリマーを用いることとなり、セパレータのイオン透過性が低下する傾向にある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電極との接着性及び耐熱性に優れると共に、イオン透過性にも優れた蓄電デバイス用セパレータ及びそれを用いた積層体、捲回体、リチウムイオン二次電池、並びに蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、セパレータの基材上に配置される無機粒子の層とその表面に配置される熱可塑性樹脂の層との組み合わせを最適化することにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の通りである
[1]基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層と、前記無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成された熱可塑性ポリマー含有層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、前記無機フィラー多孔層は、無機フィラーを含み、かつ、複数の孔を有し、前記熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含有し、前記熱可塑性ポリマーが粒子状の重合体を含み、前記粒子状の重合体の算術平均粒径が前記無機フィラー多孔層の平均孔径よりも大き前記無機フィラーの平均粒径D50が0.5μm以上1.0μm未満であり、前記粒子状の重合体の算術平均粒径が0.20μm以上1.0μm以下であり、前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が9.5%以下であり、前記基材がポリオレフィン微多孔膜である、蓄電デバイス用セパレータ。
[2]基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層と、前記無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成された熱可塑性ポリマー含有層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、前記無機フィラー多孔層は、無機フィラーを含み、かつ、複数の孔を有し、前記熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含有し、前記熱可塑性ポリマーが粒子状の重合体を含み、前記粒子状の重合体の算術平均粒径が前記無機フィラー多孔層の平均孔径よりも大きく、前記無機フィラーの平均粒径D50が0.5μm以上1.0μm未満であり、前記粒子状の重合体の算術平均粒径が0.20μm以上1.0μm以下であり、前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が9.5%以下であり、前記熱可塑性ポリマー含有層は、前記蓄電デバイスが備える電極に直接接着されるのに用いられる、蓄電デバイス用セパレータ。
[3]前記粒子状の重合体が、(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[4]基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層と、前記無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成された熱可塑性ポリマー含有層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、前記無機フィラー多孔層は、無機フィラーを含み、かつ、複数の孔を有し、前記熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含有し、前記熱可塑性ポリマーが粒子状の重合体を含み、前記粒子状の重合体の算術平均粒径が前記無機フィラー多孔層の平均孔径よりも大きく、前記無機フィラーの平均粒径D50が0.5μm以上1.0μm未満であり、前記粒子状の重合体の算術平均粒径が0.20μm以上1.0μm以下であ前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が9.5%以下であり、前記粒子状の重合体が、(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する、蓄電デバイス用セパレータ。
[5]前記無機フィラー多孔層に含まれる前記粒子状の重合体の含有量が、前記無機フィラー多孔層の全体量に対して、20体積%以下である、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[6]透気度が、10秒/100cc以上である、上記蓄電デバイス用セパレータ。
]前記粒子状の重合体のガラス転移点が50℃以上であ前記熱可塑性ポリマー含有層による前記無機フィラー多孔層に対する表面被覆率が70%以下であり、前記熱可塑性ポリマー含有層は、前記基材の表面上にドット状に存在する層である、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[8]前記無機フィラー多孔層の厚さが5.0μm以下であり、前記無機フィラーが無機酸化物を含む、上記蓄電デバイス用セパレータ。
[9]前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が5.0%以下である、上記蓄電デバイス用セパレータ
[10]前記基材の気孔率が40%より大きく、前記蓄電デバイス用セパレータの突刺強度が300gf/20μm以上である、上記蓄電デバイス用セパレータ
[11]正極と、上記蓄電デバイス用セパレータと、負極と、を含む積層体。
12]正極と、上記蓄電デバイス用セパレータと、負極とが捲回されてなる捲回体。
13]上記積層体又は上記捲回体と、電解液と、を含む蓄電デバイス
本発明によれば、電極との接着性及び耐熱性に優れると共に、イオン透過性にも優れた蓄電デバイス用セパレータ及びそれを用いた積層体、捲回体、リチウムイオン二次電池、並びに蓄電デバイスを提供することができる。
無機フィラー多孔層の平均孔径の測定を説明するための説明図である。 無機フィラー多孔層の平均孔径の測定を説明するための説明図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
<蓄電デバイス用セパレータ>
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、基材と、基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層と、該無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成された熱可塑性ポリマー含有層とを備える。本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、粒子状の重合体を含む熱可塑性ポリマー含有層が無機フィラー多孔層の少なくとも一方の面上に配置されており、これにより、電極活物質との接着性、及びイオン透過性に優れる。以下、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを構成する各部材、及び蓄電デバイス用セパレータの製造方法の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
[基材]
本実施形態に用いる基材は、それ自体が、従来セパレータとして用いられていたものであってもよい。基材としては、多孔質膜が好ましく、その多孔質膜が電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高い、孔径の微細な多孔質膜であるとより好ましい。そのような多孔質膜としては、例えば、ポリオレフィン系(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリ塩化ビニル)、及びそれらの混合物又は共重合体等の樹脂を主成分として含む微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を主成分として含む微多孔膜、ポリオレフィン系の繊維を織ったもの(織布)、ポリオレフィン系の繊維の不織布、紙、並びに、絶縁性物質粒子の集合体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、セパレータの膜厚をより薄くして、電池等の蓄電デバイス内の活物質比率を高めて体積当たりの容量を増大させる観点から、ポリオレフィン系の樹脂を主成分として含むポリオレフィン微多孔膜が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜は、塗工工程を経てポリマー層を得る場合に塗布液の塗工性に優れるので、セパレータの厚さをより薄くすることができる。なお、ここでポリオレフィン系の樹脂を「主成分として含む」とは、基材の全体量に対して50質量%を超えて含むことを意味する。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、なおも更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、100質量%であってもよい。
本実施形態において基材としてポリオレフィン微多孔膜(以下、「ポリオレフィン多孔性基材」ともいう。)を用いる場合、ポリオレフィン微多孔膜におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、特に限定されない。ただし、蓄電デバイス用セパレータとして用いた場合のシャットダウン性能などの観点から、該ポリオレフィン微多孔膜を構成する全成分の50質量%以上100質量%以下がポリオレフィン樹脂であると好ましい。ポリオレフィン樹脂の含有量は、そのポリオレフィン微多孔膜を構成する全成分の60質量%以上100質量%以下であるとより好ましく、70質量%以上100質量%以下であると更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、通常の押出、射出、インフレーション、及びブロー成形等に使用できるポリオレフィン樹脂であってもよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等を単量体とするホモポリマー、並びに、それらの単量体2種以上のコポリマー及び多段ポリマーが挙げられる。これらのホモポリマー、コポリマー、及び多段ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ポリオレフィン樹脂の代表例としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテンが挙げられ、より詳細には、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダムコポリマー、ポリブテン、及びエチレンプロピレンラバーが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ポリオレフィン樹脂としては、孔が熱溶融により閉塞するシャットダウン特性の観点から、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレンが好ましい。特に、低融点であり、かつ高強度であることから、高密度ポリエチレンが好ましく、JIS K 7112に従って測定した密度が0.93g/cm3以上であるポリエチレンがより好ましい。これらのポリエチレンの製造の際に用いられる重合触媒は特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、フィリップス系触媒及びメタロセン系触媒が挙げられる。
ポリオレフィン多孔性基材の耐熱性を向上させるために、ポリオレフィン多孔性基材は、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂とを含むことがより好ましい。ここで、ポリプロピレンの立体構造は、限定されるものではなく、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン及びアタクティックポリプロピレンのいずれでもよい。また、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等を単量体とするホモポリマー、並びに、それらの単量体2種以上のコポリマー及び多段ポリマーが挙げられ、具体例としては、既に上記で説明したものが挙げられる。
ポリオレフィン多孔性基材中のポリオレフィンの総量に対するポリプロピレンの含有割合は、特に限定されないが、耐熱性と良好なシャットダウン機能の両立の観点から、1~35質量%であることが好ましく、より好ましくは3~20質量%、更に好ましくは4~10質量%である。同様の観点から、ポリオレフィン多孔性基材中のポリオレフィンの総量に対するポリプロピレン以外のオレフィン樹脂、例えばポリエチレンの含有割合は、65~99質量%であることが好ましく、より好ましくは80~97質量%、更に好ましくは90~96質量%である。ポリプロピレンを製造する際に用いられる。重合触媒は特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒及びメタロセン系触媒が挙げられる。
ポリエチレン及びポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリブテン及びエチレン-プロピレンランダムコポリマーが挙げられる。
ポリオレフィン多孔性基材を構成するポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されないが、3万以上1200万以下であることが好ましく、より好ましくは5万以上200万未満、更に好ましくは10万以上100万未満である。粘度平均分子量が3万以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性がより良好になると共に、ポリマー同士の絡み合いにより更に高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が1200万以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。更に、粘度平均分子量が100万未満であると、温度上昇時に孔を閉塞しやすく、より良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。なお、粘度平均分子量(Mv)は、ASTM-D4020に基づき、溶剤としてデカリンを用い、測定温度135℃で測定された極限粘度[η]から、下記式により算出される。
ポリエチレン:[η]=6.77×10-4Mv0.67(Chiangの式)
ポリプロピレン:[η]=1.10×10-4Mv0.80
また、例えば、粘度平均分子量100万未満のポリオレフィンを単独で用いる代わりに、粘度平均分子量200万のポリオレフィンと粘度平均分子量27万のポリオレフィンの混合物であって、その粘度平均分子量が100万未満の混合物を用いてもよい。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材は、任意の添加剤を含有することができる。このような添加剤は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン以外のポリマー;無機粒子;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の合計含有量は、ポリオレフィン多孔性基材中のポリオレフィン樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上であり、さらに好ましくは40%より大きい。一方、その気孔率は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。気孔率を20%以上とすることは、セパレータの透過性をより有効かつ確実に確保する観点から好ましい。一方、気孔率を90%以下とすることは、突刺強度をより有効かつ確実に確保する観点から好ましい。ここで、気孔率は、例えば、ポリオレフィン多孔性基材の試料の体積(cm3)、質量(g)、膜密度(g/cm3)から、下記式:
気孔率=(体積-質量/膜密度)/体積×100
により求めることができる。ここで、例えばポリエチレンからなるポリオレフィン多孔性基材の場合、膜密度を0.95(g/cm3)と仮定して計算することができる。気孔率は、ポリオレフィン多孔性基材の延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の透気度は、特に限定されないが、好ましくは10秒/100cc以上、より好ましくは50秒/100cc以上であり、好ましくは1000秒/100cc以下、より好ましくは500秒/100cc以下である。透気度を10秒/100cc以上とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制する観点から好ましい。一方、透気度を1000秒/100cc以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。ここで、透気度は、JIS P-8117に準拠して測定される透気抵抗度である。透気度は、ポリオレフィン多孔性基材の延伸温度及び/又は延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の平均孔径は、好ましくは0.15μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下であり、好ましくは0.01μm以上である。平均孔径を0.15μm以下とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制し、容量低下を抑制する観点から好適である。平均孔径は、ポリオレフィン多孔性基材を製造する際の延伸倍率の変更等により調節可能である。基材の平均孔径は、実施例に記載の方法に準拠して測定される。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の突刺強度は、特に限定されないが、好ましくは200gf/20μm以上、より好ましくは300gf/20μm以上であり、さらに好ましくは400gf/20μm以上であり、好ましくは2000gf/20μm以下、より好ましくは1000gf/20μm以下である。突刺強度が200gf/20μm以上であることは、セパレータを電極と共に捲回した時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点、及び充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制する観点からも好ましい。一方、突刺強度が2000gf/20μm以下であることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。突刺強度は、後述の実施例に記載の方法に準拠して測定される。上記突刺強度は、ポリオレフィン多孔性基材の延伸倍率及び/又は延伸温度等を調整することにより調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。この膜厚を2μm以上とすることは、機械強度を向上させる観点から好ましい。一方、この膜厚を100μm以下とすることは、蓄電デバイスにおけるセパレータの占有体積が減るため、蓄電デバイスの高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
[無機フィラー多孔層]
無機フィラー多孔層(以下、単に「フィラー多孔層」ともいう。)は、無機フィラーを含み、好ましくは樹脂バインダを含み、複数の孔を有する。
(無機フィラー)
フィラー多孔層に含まれる無機フィラーとしては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池のような蓄電デバイスの使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機酸化物(酸化物系セラミックス);窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の無機窒化物(窒化物系セラミックス);シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;並びにガラス繊維が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらの中では、電気化学的安定性及びセパレータの耐熱特性を向上させる観点から、無機酸化物が好ましく、アルミナ及び水酸化酸化アルミニウムのような酸化アルミニウム化合物;並びに、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライトのようなイオン交換能を有しないケイ酸アルミニウム化合物がより好ましい。
同様の観点から、酸化アルミニウム化合物としては、水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))が特に好ましい。イオン交換能を有しないケイ酸アルミニウム化合物としては、安価で入手も容易なため、主としてカオリン鉱物から構成されているカオリンがより好ましい。カオリンには、湿式カオリン及びこれを焼成処理してなる焼成カオリンが知られている。本実施形態においては、焼成カオリンが特に好ましい。焼成カオリンは、焼成処理の際に、結晶水が放出されており、更に不純物も除去されていることから、電気化学的安定性の点で特に好ましい。
無機フィラーの平均粒径D50は、0.01μm以上が好ましく、0.2μm以上がよりに好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。また、この平均粒径D50は、4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm未満であることが更に好ましい。無機フィラーの平均粒径D50を上記範囲に調整することは、フィラー多孔層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温における熱収縮を抑制する観点から好ましい。また、無機フィラーの平均粒径D50が4.0μm以下であると、耐熱性が向上する傾向にあり、一方、無機フィラーの平均粒径D50が0.01μmを超えると、イオン透過性が良好になる傾向がある。無機フィラーの粒径及びその分布を調整する方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の適宜の粉砕装置を用いて無機フィラーを粉砕して粒径を小さくする方法が挙げられる。
無機フィラーの粒度分布は、粒径に対する頻度のグラフにおいて、ピークが一つとなることが好ましい。ピークが一つであれば、無機フィラーの平均粒径を制御することで、無機フィラー多孔層の平均孔径を調節しやすくなる。なお、上記グラフにおいて、ピークが二つか、ピークをなさないような台形状のチャートとなる場合、無機フィラーの平均粒径を制御しても、無機フィラー多孔層の平均孔径の変化は、より生じ難くなる。無機フィラーの平均粒径D50及び粒度分布は、実施例に記載の方法に準拠して測定される。
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータにおいて、後述の粒子状の重合体(以下、単に「粒子状重合体」ともいう。)は、無機フィラー多孔層の平均孔径より大きい。無機フィラー多孔層の平均孔径は、無機フィラー多孔層中の無機フィラーと無機フィラー、無機フィラーとバインダ、又はバインダとバインダとの間の隙間を定量的に定義したものであり、実施例に記載の方法に準拠して測定される。
無機フィラー多孔層の平均孔径を測定する際、セパレータ断面の観察は、セパレータ断面のうちの、イオン伝導に関与していない領域について行うとよい。無機フィラー多孔層の平均孔径は、例えば、製造直後のセパレータであって未だ蓄電デバイスに組み込まれていない状態のセパレータについて測定してもよい。あるいは、セパレータが蓄電デバイスに組み込まれた後の場合は、セパレータのうちの、所謂「耳」と呼ばれる部分(セパレータの外縁部近傍であって、イオン伝導に関与していない領域)について測定してもよい。
無機フィラー多孔層の平均孔径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。また、この平均孔径は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく0.7μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。無機フィラー多孔層の平均孔径が5μm以下であると、無機フィラー多孔層上に存在する粒子状重合体の無機フィラー多孔層への落ち込みをより抑制できる。一方、無機フィラー多孔層の平均孔径が0.01μm以上であると、セパレータのイオン透過性が更に良好になる傾向にある。
無機フィラー多孔層の平均孔径は、基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層における、好ましくは樹脂バインダによって結着された無機フィラー同士にて形成される空隙部分の大きさを表す指標である。無機フィラー多孔層の平均孔径は、無機フィラー多孔層の形成方法によって決まるため、例えば、用いる無機フィラーの性状、無機フィラー多孔層を形成するための無機フィラー多孔層用スラリーの性質、及び無機フィラー多孔層を形成する際の形成方法によって調整することができる。
無機フィラーの平均粒径D50を大きくすると、無機フィラー多孔層において空隙が大きくなるため、無機フィラー多孔層の平均孔径は大きくなる傾向にある。また、無機フィラーの形状については、例えばブロック状に比べると、板状の方が平均孔径は小さくなる傾向にあり、針状の方がさらに平均孔径が小さくなる傾向にある。無機フィラーの構造が複雑になるほど、平均孔径は大きくなる傾向にある。さらには、無機フィラー多孔層を形成するための無機フィラー多孔層用スラリーの性質のうち、特にそのスラリーの粘度が無機フィラー多孔層の平均孔径に影響を与える。スラリーの粘度が高い場合、基材上に無機フィラー多孔層用スラリーを塗布した後、無機フィラーの流動性が抑制されるため、無機フィラー同士が最も安定となる配置を取りづらくなる。その結果、無機フィラー多孔層の平均孔径が大きくなる傾向にある。同様に、乾燥条件を強くし急激に乾燥させることによっても、無機フィラーに安定した配置を取らせる時間が与えられないため、無機フィラー多孔層の平均孔径は大きくなる傾向にある。また、後述のように無機フィラーを含む塗布液を塗布する際に、その塗布液にかかるせん断応力を調節すること、あるいは、無機フィラー多孔層と基材との積層体をカレンダー処理することで、平均孔径を制御することもできる。
無機フィラーの形状としては、例えば、板状、鱗片状、針状、柱状、球状、多面体状、及び塊状(ブロック状)が挙げられる。これらの形状を有する無機フィラーの複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、本発明による作用効果をより有効活確実に奏する観点から、ブロック状及び板状が好ましい。
無機フィラーのフィラー多孔層中の含有割合は、無機フィラーの結着性、セパレータの透過性、及び耐熱性の観点から、フィラー多孔層の全量に対して、20質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上80質量%以下、更に好ましくは35質量%以上70質量%以下、特に好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
(樹脂バインダ)
フィラー多孔層に含有される樹脂バインダの樹脂の種類としては、特に限定されないが、リチウムイオン二次電池のような蓄電デバイスの電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池のような蓄電デバイスの使用範囲において電気化学的に安定な樹脂を用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、樹脂として、フィラー多孔層に含まれる樹脂バインダ(A)、及び熱可塑性ポリマー含有層に含まれる粒子状重合体(B)に加えて、熱可塑性ポリマー含有層に含まれ、粒子状重合体(B)を上記基材やフィラー多孔層に結着させる結着バインダ(C)が用いられてもよい。樹脂バインダ(A)及び結着バインダ(C)はセパレータにおいて通常、粒子状になっていない。一方、後述の粒子状重合体(B)はセパレータにおいて粒子状であり、粒子状重合体(B)は、樹脂バインダ(A)及び結着バインダ(C)と異なる種類の樹脂を含むことが好ましい。
このような樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の、融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
樹脂バインダは、樹脂ラテックスバインダを含むことが好ましい。樹脂バインダとして樹脂ラテックスバインダを用いた場合、樹脂ラテックスバインダを用いない場合と比較して、イオン透過性が低下し難く、出力特性の高い蓄電デバイスを与える傾向にある。更に、樹脂ラテックスバインダを含むフィラー多孔層を備えるセパレータを有する蓄電デバイスは、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られやすい傾向にある。
樹脂ラテックスバインダとしては、電気化学的安定性及び結着性を向上させる観点から、脂肪族共役ジエン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体と、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体が好ましい。ここで、脂肪族共役ジエン系単量体としては、例えばブタジエン及びイソプレンが挙げられ、不飽和カルボン酸単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸が挙げられ、他の単量体としては、例えば、スチレンが挙げられる。このような共重合体の重合方法に特に制限はないが、乳化重合が好ましい。乳化重合の方法としては、特に制限はなく、既知の方法を用いることができる。単量体及びその他の成分の添加方法については、特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、及び連続添加方法の何れも採用することができ、重合方法は、一段重合、二段重合、又は三段階以上の多段階重合のいずれも採用することができる。
樹脂バインダの具体例としては、以下の1)~7)が挙げられる。
1)ポリオレフィン:例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンラバー、及びこれらの変性体;
2)共役ジエン系重合体:例えば、スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物;
3)アクリル系重合体:例えば、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体;
4)ポリビニルアルコール系樹脂:例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;
5)含フッ素樹脂:例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体;
6)セルロース誘導体:例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;及び
7)融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマー:例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル。
短絡時の安全性をさらに向上させるという観点からは、上記のうち、3)アクリル系重合体、5)含フッ素樹脂、及び7)ポリマーとしてのポリアミドが好ましい。ポリアミドとしては、耐久性の観点から全芳香族ポリアミド、その中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好適である。
樹脂バインダと電極との適合性の観点からは、上記2)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記3)アクリル系重合体及び5)含フッ素樹脂が好ましい。
上記2)共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を単量体単位として含む重合体である。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、特に1,3-ブタジエンが好ましい。
上記3)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として含む重合体である。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上を示す。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸を挙げることができる。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアメタクリレート;並びに、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。上記の中でも、特に2-エチルヘキシルアクリレート(以下、「EHA」とも表記する。)及びブチルアクリレート(以下、「BA」とも表記する。)が好ましい。
アクリル系重合体は、衝突試験での安全性の観点から、EHA又はBAを主な構成単位として含むポリマーであることが好ましい。主な構成単位とは、ポリマーを形成するための全原料に対して40モル%以上を占める単量体と対応するポリマー部分をいう。
アクリル系重合体は、衝突試験での安全性を向上させる観点から、EHA-BAコポリマー、及び/又は、EHAが主な構成単位であるポリマーとBAが主な構成単位であるポリマーとの混合物を含むことが好ましく、より好ましくは、EHAが主な構成単位であるポリマーとBAが主な構成単位であるポリマーとの混合物である。EHA-BAコポリマーの場合、共重合時の混合比率(EHA:BAの質量比)が1:99~99:1であることが好ましく、より好ましくは50:50~95:5、さらに好ましくは70:30~90:10である。EHAを用いることで、無機フィラーとポリオレフィン樹脂との接着性を向上させ、ポリオレフィン樹脂の熱収縮を抑制する効果があり、BAを用いることでフィラー多孔層に柔軟性が付与され、同じく熱収縮を抑制する効果がある。EHAが主な構成単位であるポリマーとBAが主な構成単位であるポリマーとの混合物の場合、両者の質量混合比は、1:99~99:1の範囲内でよい。
上記2)共役ジエン系重合体及び3)アクリル系重合体は、これらと共重合可能な他の単量体をも共重合させて得られるものであってもよい。用いられる共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマール酸、及びイタコン酸が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種を組み合わせて用いられる。上記の中でも、特に不飽和カルボン酸アルキルエステルが単量体として好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート及びモノエチルフマレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、上記2)共役ジエン系重合体は、他の単量体として上記(メタ)アクリル系化合物を共重合させて得られるものであってもよい。
樹脂バインダが樹脂ラテックスバインダである場合のその平均粒径(D50)は、50~500nmであることが好ましく、より好ましくは60~460nm、更に好ましくは80~250nmである。樹脂バインダの平均粒径が50nm以上である場合、該バインダと無機フィラーとを含むフィラー多孔層を具備するセパレータは、イオン透過性が低下し難く、高い出力特性の蓄電デバイスを与えやすい。更に、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性を有する蓄電デバイスが得られやすい。樹脂バインダの平均粒径が500nm以下である場合、良好な結着性(無機フィラー同士を樹脂バインダで結着する場合の結着性)を発現し、セパレータにおける基材と無機フィラー多孔層との積層体の熱収縮が良好となり、安全性に優れる傾向にある。樹脂バインダの平均粒径は、重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pHなどを調整することで制御することが可能である。樹脂バインダの平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
樹脂バインダのフィラー多孔層中の含有割合は、無機フィラーの結着性、セパレータの透過性、及び耐熱性の観点から、フィラー多孔層の全量に対して、0質量%を超え80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上20質量%以下、更に好ましくは2質量%以上10質量%以下、特に好ましくは3質量%以上5質量%以下である。
フィラー多孔層に含まれる後述の粒子状重合体の含有量は、蓄電デバイスセパレータに含まれる粒子状重合体の含有量の5体積%未満であると好ましく、3体積%未満であるとより好ましく、2体積%未満であるとより好ましい。この粒子状重合体の含有量が5体積%未満であると、セパレータのイオン透過性がより良好になる観点から好ましい。
フィラー多孔層の厚さは、蓄電デバイスの高容量化と透過性を向上させる観点から10.0μm以下であることが好ましく、6.0μm以下であることがより好ましい。また、フィラー多孔層の厚さは、耐熱性及び絶縁性を向上させる観点から、0.5μm以上であることが好ましい。フィラー多孔層の層密度は、0.5g/(m2・μm)以上3.0g/(m2・μm)以下であることが好ましく、0.7~2.0(m2・μm)であることがより好ましい。フィラー多孔層の層密度が0.5g/(m2・μm)以上であると、高温での熱収縮率が良好となる傾向にあり、3.0g/(m2・μm)以下であると、透気度が低下する傾向にある。フィラー多孔層の密度は、フィラー多孔層の厚さと質量から算出することができる。
[熱可塑性ポリマー含有層]
本実施形態における熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含有し、その熱可塑性ポリマーが粒子状重合体を含有する。熱可塑性ポリマー含有層は、基材と、基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層とを有する積層体に対して、無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成される。熱可塑性ポリマー含有層は、無機フィラー多孔層の表面の全面上に配置されてもよいし、一部に配置されてもよい。無機フィラー多孔層が基材の片面の面上にしか配置されない場合は、基材の無機フィラー多孔層が存在しない表面上に配置されてもよい。得られる蓄電デバイスが高いイオン透過性を示すように、熱可塑性ポリマー含有層を基材の面の一部にのみ配置することがより好ましい。
本実施形態では、熱可塑性ポリマー含有層は、電極と直接接着されることが予定されている。蓄電デバイス用セパレータに備えられる少なくとも1つの熱可塑性ポリマー含有層は、電極と直接接着されるように、例えば、基材の少なくとも片面の少なくとも一部と電極とが熱可塑性ポリマー含有層を介して接着されるか、又は基材上に配置された他の層と電極とが熱可塑性ポリマー含有層を介して接着されるように、配置されるものとする。
本実施形態における熱可塑性ポリマー含有層の基材に対する塗工量、すなわち、基材の一つの面の面積あたりの熱可塑性ポリマー含有層の形成量(配置量)は、固形分で0.03g/m2以上であると好ましく、0.05g/m2以上であるとより好ましい。また、その塗工量は、2.0g/m2以下であると好ましく、1.5g/m2以下であると更に好ましい。その塗工量を0.05g/m2以上とすることは、得られるセパレータにおいて、熱可塑性ポリマー含有層と電極との接着力を向上させ、より均一な充放電を実現し、デバイス特性(例えば電池のサイクル特性)を向上させる点で好ましい。一方で、その塗工量を2.0g/m2以下とすることは、イオン透過性の低下を更に抑制する観点から好ましい。
本実施形態において、無機フィラー多孔層の面のうちの、熱可塑性ポリマー含有層が配置される面の全面積に対する熱可塑性ポリマー含有層がその上に存在する面の面積割合、すなわち熱可塑性ポリマー含有層による無機フィラー多孔層に対する表面被覆率は、100%以下であると好ましく、80%以下であるとより好ましく、75%以下であると更に好ましく、70%以下であると特に好ましい。また、この表面被覆率は、5%以上であると好ましく、10%以上であるとより好ましく、15%以上であると更に好ましく、30%以上であると特に好ましい。この表面被覆率を100%以下とすることは、粒子状重合体による基材の孔の閉塞を更に抑制し、セパレータの透過性を一層向上する観点から好ましい。一方、表面被覆率を5%以上とすることは、電極との接着性を一層向上する観点から好ましい。この表面被覆率は、得られるセパレータにおいて、熱可塑性ポリマー含有層が形成された面をSEMで観察することにより測定され、詳細には実施例に記載の方法に準じて測定される。また、熱可塑性ポリマー含有層が基材の表面上にも配置される場合、その表面被覆率(基材の面のうちの、熱可塑性ポリマー含有層が配置される面の全面積に対する熱可塑性ポリマー含有層がその上に存在する面の面積割合)も、上記と同様であると好ましい。
本実施形態における表面被覆率は、例えば、後述のセパレータの製造方法において、無機フィラー多孔層及び場合によってはそれに加えて基材(以下、単に「無機フィラー多孔層等」という。)の表面に塗布する塗布液中の粒子状重合体の種類又はその重合体の濃度、塗布液の塗布量、塗布方法及び塗布条件を変更することにより調整することができる。ただし、塗工面積の調整方法は、それらに限定されない。
熱可塑性ポリマー含有層を無機フィラー多孔層等の面の一部にのみ配置する場合、熱可塑性ポリマー含有層は海島状に存在することが好ましく、その配置パターンとしては、例えば、ドット状、ストライプ状、格子状、縞状、亀甲状、ランダム状等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中では、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、ドット状が好ましい。配置パターンがドット状である場合、そのドット径は50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがより好ましい。また、そのドット径は、1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。ドット径が50μm以上であることで、電解液中のイオンの流れが更に良好となり透過性に一層優れる。ドット径が1mm以下であることで、セパレータを電極とより均一に接着させることができ、面内の電流密度を更に均一にすることができる。さらに、ドット状の配置パターンの中に熱可塑性ポリマーが塗布されていない部分を設けることで、より一層面内の電流密度を均一にすることができる。
熱可塑性ポリマー含有層を部分的に配置する場合、セパレータの表面被覆率が、ある一定の面積範囲において、均一であることが望ましい。具体的には、セパレータの表面をSEMにて観察した際の10mm×10mm以上の観察視野範囲において、下記式で表される表面被覆率の変化率が±50%以内であることが好ましい。
(表面被覆率の変化率(%))=(C1-C2)/C1×100
ここで、C1は任意の10mm×100mm以上の観察視野範囲における表面被覆率を示し、C2はそれ以外の10mm×100mm以上の観察視野範囲における表面被覆率を示す。例えば、熱可塑性ポリマー含有層が部分的に配置されているセパレータについて、10mm×10mmのある観察視野範囲における表面被覆率の測定値が50%であった場合、そのセパレータの他のどの部分を観察しても、10mm×10mmの観察視野範囲における表面被覆率が25%以上75%以下であることが好ましい。
無機フィラー多孔層等の上に配置される熱可塑性ポリマー含有層の厚さは、無機フィラー多孔層等の一つの面当たり、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。また、その厚さは、無機フィラー多孔層等の一つの面当たり、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることが更に好ましい。この厚さを0.01μm以上とすることは、電極と無機フィラー多孔層等との間の接着力を均一に発現する点で好ましく、その結果、デバイス特性を向上させることができる。また、この厚さを5.0μm以下とすることはイオン透過性の低下を抑制する点で好ましい。本実施形態における熱可塑性ポリマー含有層の厚さは、例えば、無機フィラー多孔層等に塗布する塗布液における粒子状重合体の種類又はその重合体の濃度や塗布液の塗布量、塗布方法及び塗布条件を変更することにより調整することができる。ただし、この厚さの調整方法は、それらに限定されない。熱可塑性ポリマー含有層の厚さは、実施例に記載の方法によって測定される。
(粒子状重合体)
本実施形態では、熱可塑性ポリマー含有層は、粒子状重合体を含む。なお、以下の説明において「エチレン性不飽和単量体」とは、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ以上有する単量体を意味する。熱可塑性ポリマー含有層が粒子状重合体を含むことにより、優れた電極への接着力とイオン透過性を両立することができる。
上記熱可塑性ポリマー含有層に含まれる粒子状重合体の樹脂種の具体例としては、共役ジエン系重合体、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、及び含フッ素樹脂が挙げられる。これらの中でも、電極とのなじみやすさの観点から共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からアクリル系重合体及び含フッ素樹脂が好ましい。また、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、粒子状重合体は粒子状の共重合体を含むと好ましい。粒子状重合体は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、上記熱可塑性ポリマー含有層は、その全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、上記粒子状重合体を含む。更に、上記熱可塑性ポリマー含有層は、粒子状重合体以外の熱可塑性ポリマーを、本発明の課題解決を損なわない程度に含んでもよい。
共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を単量体単位として有する重合体である。上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に1,3-ブタジエンが好ましい。また、共役ジエン系重合体は、後述する(メタ)アクリル系化合物又は他の単量体を単量体単位として含んでいてもよい。そのような単量体としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物が挙げられる。
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として有する重合体である。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を示し、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。このような化合物としては、例えば、下記式(P1)で表される化合物が挙げられる。
CH2=CRY1-COO-RY2 (P1)
ここで、式(P1)中、RY1は水素原子又はメチル基を示し、RY2は水素原子又は1価の炭化水素基を示す。RY2が1価の炭化水素基の場合は、置換基を有していてもよくかつ鎖内にヘテロ原子を有していてもよい。1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖であっても分岐していてもよい鎖状アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基が挙げられる。また、置換基としては、例えば、ヒドロキシル基及びフェニル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えばハロゲン原子及び酸素原子が挙げられる。(メタ)アクリル系化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。このような(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリル酸、鎖状アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、及びフェニル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
Y2の1種である鎖状アルキル基として、より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基のような炭素原子数が1~3の鎖状アルキル基;n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、及びラウリル基のような炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基が挙げられる。また、RY2の1種であるアリール基としては、例えばフェニル基が挙げられる。そのようなRY2を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びラウリルメタクリレートのような鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート;並びに、フェニル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレートのような芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中では、セパレータの電極(電極活物質)との密着性向上の観点から、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有する単量体、より具体的には、RY2が炭素原子数4以上の鎖状アルキル基である(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。より具体的には、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基における炭素原子数の上限は特に限定されず、例えば14であってもよいが、7が好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、上記炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有する単量体に代えて、あるいはこれに加えて、RY2としてシクロアルキル基を有する単量体を含むことも好ましい。これによっても、セパレータは電極との密着性が更に向上する。そのようなシクロアルキル基を有する単量体としては、より具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びアダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。シクロアルキル基の脂環を構成する炭素原子の数は、4~8が好ましく、6及び7がより好ましく、6が特に好ましい。また、シクロアルキル基は置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、例えば、メチル基及びt-ブチル基が挙げられる。これらの中では、シクロヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が、アクリル系重合体調製時の重合安定性が良好である点で好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体として、上記のものに代えて、あるいは加えて、好ましくは上記のものに加えて、架橋性単量体を含むことが好ましい。架橋性単量体としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体、重合中又は重合後に自己架橋構造を与える官能基を有する単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、及び多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、及び4官能(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、上記と同様の観点から、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
重合中又は重合後に自己架橋構造を与える官能基を有する単量体としては、例えば、エポキシ基を有する単量体、メチロール基を有する単量体、アルコキシメチル基を有する単量体、及び加水分解性シリル基を有する単量体が挙げられる。上記エポキシ基を有する単量体としては、アルコキシメチル基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、具体的には例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジルエーテルが挙げられる。
メチロール基を有する単量体としては、例えば、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、及びジメチロールメタクリルアミドが挙げられる。上記アルコキシメチル基を有する単量体としては、アルコキシメチル基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、具体的には例えば、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、及びN-ブトキシメチルメタクリルアミドが挙げられる。上記加水分解性シリル基を有する単量体としては、例えば、ビニルシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、上記アクリル系重合体は、様々な品質及び物性を改良するために、上記以外の単量体を単量体単位として更に有してもよい。そのような単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体(ただし、(メタ)アクリル酸を除く。)、アミド基を有する単量体、シアノ基を有する単量体、ヒドロキシル基を有する単量体、及び芳香族ビニル単量体が挙げられる。更に、スルホン酸基又はリン酸基のような官能基を有する各種のビニル系単量体、及び酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、及び塩化ビニリデンも必要に応じて用いられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記他の単量体は、上記各単量体のうち2種以上に同時に属するものであってもよい。
アミド基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。シアノ基を有する単量体としては、シアノ基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、具体的には、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。ヒドロキシル基を有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及びα-メチルスチレンが挙げられる。好ましくはスチレンである。
上記アクリル系重合体が(メタ)アクリル系化合物を単量体単位として有する割合は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは5質量%以上95質量%以下である。その下限値は、より好ましくは15質量%であり、更に好ましくは20質量%であり、特に好ましくは30質量%である。上記単量体単位の含有割合が5質量%以上であると、基材への結着性及び耐酸化性の点で好ましい。一方、より好ましい上限値は92質量%であり、更に好ましい上限値は80質量%であり、特に好ましい上限値は60質量%である。上記単量体の含有割合が95質量%以下であると、基材との密着性が向上するため好ましい。
アクリル系重合体が、鎖状アルキル(メタ)アクリレート又はシクロアルキル(メタ)アクリレートを単量体単位として有する場合、それらの含有割合の合計は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは、3質量%以上92質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以上75質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以上55質量%以下である。これらの単量体の含有割合が3質量%以上であると耐酸化性の向上の点で好ましく、92質量%以下であると、基材との結着性が向上するため好ましい。
アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸を単量体単位として有する場合、その含有割合は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。上記単量体の含有割合が、0.1質量%以上であると、セパレータは膨潤状態でのクッション性が向上する傾向にあり、5質量%以下であると、重合安定性が良好な傾向にある。
アクリル系重合体が、架橋性単量体を単量体単位として有する場合、アクリル系重合体における架橋性単量体の含有割合は、アクリル系重合体100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。上記単量体の含有割合が0.01質量%以上であると耐電解液性が更に向上し、10質量%以下であると膨潤状態でのクッション性の低下をより抑制することができる。
本実施形態におけるアクリル系重合体としては、以下のいずれかの態様が好ましい。以下の共重合の含有割合は、いずれも、共重合体100質量%を基準とする値である。
(1)(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する共重合体(但し、下記の(2)の共重合体及び(3)の共重合体を除く。)。好ましくは、(メタ)アクリル酸5質量%以下(より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体3質量%以上92質量%以下(より好ましくは10質量%以上90質量%以下、更に好ましくは15質量%以上75質量%以下、特に好ましくは25質量%以上55質量%以下)と、アミド基を有する単量体、シアノ基を有する単量体、及びヒドロキシル基を有する単量体からなる群より選択される少なくとも1種15質量%以下(より好ましくは10質量%以下)と、架橋性単量体10質量%以下(より好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上3質量%以下)と、の共重合体;
(2)芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを単量体単位として有する共重合体。好ましくは、芳香族ビニル単量体5質量%以上95質量%以下(より好ましくは10質量%以上92質量%以下、更に好ましくは25質量%以上80質量%以下、特に好ましくは40質量%以上60質量%以下)と、(メタ)アクリル酸5質量%以下(より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体5質量%以上95質量%以下(より好ましくは15質量%以上85質量%以下、更に好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは30質量%以上75質量%以下)と、アミド基を有する単量体、シアノ基を有する単量体、及びヒドロキシル基を有する単量体からなる群より選択される少なくとも1種10質量%以下(より好ましくは5質量%以下)と、架橋性単量体10質量%以下(より好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上3質量%以下)と、の共重合体;並びに
(3)シアノ基を有する単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを単量体単位として有する共重合体。好ましくは、シアノ基を有する単量体1質量%以上95質量%以下(より好ましくは5質量%以上90質量%以下、更に好ましくは50質量%以上85質量%以下)と、(メタ)アクリル酸5質量%以下(好ましくは0.1質量%以上5質量%以下)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体1質量%以上95質量%以下(より好ましくは5質量%以上85質量%以下、更に好ましくは10質量%以上50質量%以下)と、アミド基を有する単量体、シアノ基を有する単量体、及びヒドロキシル基を有する単量体からなる群より選択される少なくとも1種10質量%以下(より好ましくは5質量%以下)と、架橋性単量体10質量%以下(より好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上3質量%以下)と、の共重合体。
上記(2)の共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体として(メタ)アクリル酸の炭化水素エステルを有することが好ましい。この場合の(メタ)アクリル酸の炭化水素エステルの共重合割合は0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。また、上記(2)の共重合体がアミド基を有する単量体を有する場合、その共重合割合は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。更に、上記(2)の共重合体がヒドロキシル基を有する単量体を有する場合、その共重合割合は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
上記(3)の共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体として、鎖状アルキル(メタ)アクリレート及びシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。上記鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数が6以上の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。(3)の共重合体における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの共重合割合は、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、3質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。この共重合割合の上限値は、60質量%であってもよく、特に40質量%又は30質量%であってもよく、とりわけ好ましくは20質量%である。(3)の共重合体におけるシクロヘキシルアルキル(メタ)アクリレートの共重合割合は、1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、3質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。この共重合割合の上限値は、60質量%であってもよく、特に50質量%であってもよく、とりわけ好ましくは40質量%である。また、上記(3)の共重合体がアミド基を有する単量体を有する場合、その共重合割合は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。更に、上記(3)の共重合体がヒドロキシル基を有する単量体を有する場合、その共重合割合は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好まし好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
アクリル系重合体は、例えば、通常の乳化重合法によって得られる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、水性媒体中で上述の単量体、界面活性剤、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系において、上記各単量体を含む単量体組成物を重合することによりアクリル系重合体が得られる。重合に際しては、供給する単量体組成物の組成を全重合過程で一定にする方法、重合過程で逐次又は連続的に変化させることによって生成する樹脂分散体の粒子の形態的な組成変化を与える方法等、必要に応じて様々な方法が利用できる。アクリル系重合体を乳化重合により得る場合、例えば、水と、その水中に分散した粒子状のアクリル系重合体とを含む水分散体(ラテックス)の形態であってもよい。
界面活性剤は、一分子中に少なくとも1つ以上の親水基と1つ以上の親油基とを有する化合物である。各種界面活性剤には非反応性界面活性剤と反応性界面活性剤があり、好ましくは反応性界面活性剤であり、より好ましくはアニオン性の反応性界面活性剤であり、更に好ましくはスルホン酸基を有する反応性界面活性剤である。界面活性剤の具体例は後述するので、ここでは説明を省略する。この界面活性剤は、単量体組成物100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下で用いることが好ましい。界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、熱又は還元性物質によりラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤及び有機系開始剤のいずれも用いることができる。また、ラジカル重合開始剤としては、水溶性又は油溶性の重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の具体例は後述するので、ここでは説明を省略する。
ラジカル重合開始剤は、単量体組成物100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上2質量部以下で用いることができる。ラジカル重合開始剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。また、含フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体が挙げられる。
上記の熱可塑性ポリマーの中でも、セパレータと電極との接着性、蓄電デバイスの高温保存特性及びサイクル特性を向上させ、かつ電極とセパレータとの接着体の薄膜化を達成する観点から、単量体と、乳化剤と、開始剤と、水とを含むエマルションから形成されるアクリル系コポリマーラテックスが好ましい。
本実施形態において、粒子状重合体のガラス転移温度(Tg)は、電極との接着性及びイオン透過性の観点から、-50℃以上であることが好ましく、-30℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましく、50℃以上であることがなおもさらに好ましい。また、粒子状重合体のガラス転移温度は、200℃以下であることが好ましい。本実施形態におけるガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定される。具体的には、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点の温度を、ガラス転移温度として採用することができる。より詳細には、実施例に記載の方法に準じて決定すればよい。また、「ガラス転移」はDSCにおいて試験片であるポリマーの状態変化に伴う熱量変化が吸熱側に生じたものを指す。このような熱量変化はDSC曲線において階段状変化の形状として観測される。「階段状変化」とは、DSC曲線において、曲線がそれまでの低温側のベースラインから離れ新たな高温側のベースラインに移行するまでの部分を示す。なお、階段状変化とピークとが組み合わされたものも階段状変化に含まれることとする。さらに、「変曲点」とは、階段状変化部分のDSC曲線のこう配が最大になるような点を示す。また、階段状変化部分において、上側を発熱側とした場合に、上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点と表現することもできる。「ピーク」とは、DSC曲線において、曲線が低温側のベースラインから離れてから再度同じベースラインに戻るまでの部分を示す。「ベースライン」とは、試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線のことを示す。
本実施形態では、粒子状重合体のガラス転移温度Tgは、例えば、粒子状重合体を製造する際に用いる単量体の種類、及び、粒子状重合体が共重合体である場合は各単量体の配合比を変更することにより、適宜調整できる。すなわち、粒子状重合体の製造に用いられる各単量体について、一般に示されているそのホモポリマーのTg(例えば、「ポリマーハンドブック」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION)に記載)と、単量体の配合割合とから、ガラス転移温度の概略を推定することができる。例えば、約100℃のTgのホモポリマーを与えるメチルメタクリレ-ト、アクリルニトリル及びメタクリル酸のような単量体を高い比率で共重合した共重合体のTgは高くなり、約-50℃のTgのホモポリマーを与えるn-ブチルアクリレ-ト及び2-エチルヘキシルアクリレ-トのような単量体を高い比率で共重合した共重合体のTgは低くなる。
また、共重合体のTgは、下記数式(1)で表されるFOXの式によっても、概算することができる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・・・+Wi/Tgi+・・・・・・Wn/Tgn (1)
ここで、式中、Tg(K)は共重合体のTgであり、Tgi(K)は単量体iのホモポリマーのTgであり、Wiは各単量体の質量分率である。
ただし、本実施形態における粒子状重合体のガラス転移温度Tgとしては、上記DSCを用いる方法により測定した値を採用する。
無機フィラー多孔層等への濡れ性、無機フィラー多孔層等と熱可塑性ポリマー含有層との結着性、及び電極との接着性の観点から、熱可塑性ポリマー含有層には、ガラス転移温度が20℃未満のポリマーが含まれることが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満のポリマーのガラス転移温度は、イオン透過性の観点から好ましくは-100℃以上、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは-40℃以上であり、ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー含有層との結着性の観点から好ましくは20℃未満、より好ましくは15℃未満、さらに好ましくは-10℃未満である。
本実施形態において、熱可塑性ポリマー含有層に含まれる粒子状重合体がガラス転移温度を少なくとも2つ有すると好ましい。粒子状重合体がガラス転移温度を少なくとも2つ有するようにする方法としては、限定されるものではないが、2種類以上の粒子状重合体をブレンドする方法、及びコアシェル構造を備える粒子状重合体を用いる方法が挙げられる。コアシェル構造とは、中心部分とその中心部分を被覆する外殻部分とを有する構造であって、それぞれの部分を構成するポリマーの種類又は組成が互いに異なる、二重構造の形態をしたポリマーである。特に、ポリマーのブレンド及びコアシェル構造において、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーとを組み合せることにより、粒子状重合体全体のガラス転移温度を制御できる。また、粒子状重合体全体に複数の機能を付与することができる。
例えば、2種類以上の粒子状重合体をブレンドする場合、特にガラス転移温度が20℃以上の領域に存在する1種以上のポリマーと、ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在する1種以上のポリマーとをブレンドすることにより、耐ベタツキ性と基材への塗れ性とを更に良好に両立することができる。ブレンドする場合のそれぞれのポリマーの混合比は、ガラス転移温度が20℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在するポリマーとの比として、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、5:95~95:5であり、更に好ましくは50:50~95:5であり、特に好ましくは60:40~90:10である。
コアシェル構造を備える粒子状重合体を用いる場合、外殻部分のポリマーの種類を選択することにより、熱可塑性ポリマー含有層の他の部材(例えば無機フィラー含有層等)に対する接着性及び相溶性の調整ができる。また、中心部分のポリマーの種類を選択することにより、例えば熱プレス後の電極への接着性を高めることができる。あるいは、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせることにより、熱可塑性ポリマー含有層の粘弾性を制御をすることも可能である。
なお、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーの外殻部分(シェル)のガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃未満であると好ましく、15℃以下であるとより好ましく、-30℃以上15℃以下であると更に好ましい。また、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーの中心部分(コア)のガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃以上が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、50℃以上200℃以下が更に好ましい。
粒子状重合体の算術平均粒径は、好ましくは10nm(0.01μm)以上であり、より好ましくは100nm(0.10μm)以上であり、更に好ましくは200nm(0.20μm)以上である。また、粒子状重合体の算術平均粒径は、好ましくは1000nm(1.0μm)以下であり、より好ましくは800nm(0.80μm)以下であり、更に好ましくは700nm(0.70μm)以下である。この算術平均粒径を10nm以上とすることにより、無機フィラー多孔層における孔に粒子状重合体が入り込まない程度の粒子状重合体の寸法が確保されるので、セパレータのイオン透過性をより高く維持できる。したがって、この場合、電極とセパレータとの間の接着性、及び蓄電デバイスのサイクル特性、及びレート特性を向上させるという観点から好ましい。また、この算術平均粒径を1000nm以下とすることは、粒子状重合体を含む熱可塑性ポリマー含有層を水分散体から形成する場合に、その分散安定性を確保する観点から好ましく、また、熱可塑性ポリマー含有層の厚さを柔軟に制御できる観点から好ましい。これらの観点から、粒子状重合体の算術平均粒径が0.20μm以上1.0μm以下であり、かつ、無機フィラー多孔層に含まれる無機フィラーの平均粒径D50が0.5μm以上1.0未満であると特に好ましい。粒子状重合体の算術平均粒径は、下記実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
粒子状重合体の算術平均粒径は、無機フィラー多孔層の平均孔径よりも大きいことが好ましく、無機フィラー多孔層の平均孔径に対し1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましく、1.8倍以上であることが特に好ましい。また、粒子状重合体の算術平均粒径は、無機フィラー多孔層の平均孔径に対し6.0倍以下であることが好ましく、3.0倍以下であることがより好ましい。粒子状重合体の算術平均粒径が無機フィラー多孔層の平均孔径に対し1.2倍以上であることより、無機フィラー多孔層の孔内に粒子状重合体が入り込み難くなるため、セパレータのイオン透過性がより向上する。一方、粒子状重合体の算術平均粒径が無機フィラー多孔層の平均孔径に対し6.0倍以下であることで、粒子状重合体と無機フィラー多孔層との結着力を高めることができる。
無機フィラー多孔層に含まれる粒子状重合体の含有量は、無機フィラー多孔層の全体量に対して、20体積%以下であることが好ましく、15体積%以下であることがより好ましく、10体積%以下であることが更に好ましく、5体積%以下であることが特に好ましい。無機フィラー多孔層に含まれる粒子状重合体の含有量が20体積%以下であることで、蓄電デバイス中の無駄な抵抗となる粒子状重合体が少なくなり、透過性に一層優れた蓄電デバイスを提供することができる。
セパレータの接着性と耐ブロッキング性とのバランスを取るために、それぞれ異なる算術平均粒径を有する2種類以上の粒子状重合体を、熱可塑性ポリマー含有層に含有させることもできる。例えば、10nm以上300nm以下の算術平均粒径を有する粒子状重合体(以下「小粒径粒子」という)と、100nmを超え、かつ2000nm以下の算術平均粒径を有する粒子状重合体(以下「大粒径粒子」という)との組み合わせを用いると好ましい。
上記で説明した粒子状重合体は、上記で説明した単量体を用いること以外は、既知の重合方法によって製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の適宜の方法を採用することができる。特に粒子形状の分散体として得る目的で、乳化重合法が好ましい。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、水性媒体中で上述の単量体、界面活性剤、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系において、上記各単量体からなる単量体組成物を重合することにより重合体が得られる。重合に際しては、供給する単量体組成物の組成を全重合過程で一定にする方法、重合過程で逐次又は連続的に変化させることによって、生成する樹脂分散体の粒子の形態的な組成変化を与える方法等、必要に応じて様々な方法を用いることができる。重合体を乳化重合により得る場合、例えば、水と、その水中に分散した粒子状の重合体とを含む水分散体(ラテックス)の形態であってもよい。
界面活性剤は、一分子中に少なくとも1つ以上の親水基と1つ以上の親油基とを有する化合物である。界面活性剤としては、例えば、非反応性のアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、及び、非反応性のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの他に、親水基と親油基とを有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性二重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。
反応性界面活性剤の中のアニオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基及びこれらの塩を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられ、スルホン酸基、又はそのアンモニウム塩若しくはアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。具体的には、例えば、アルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば、三洋化成株式会社製エレミノール(商標)JS-20、花王株式会社製ラテムル(商標。以下同様。)S-120、S-180A、S-180が挙げられる。)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロン(商標。以下同様。)HS-10が挙げられる。)、α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープ(商標。以下同様。)SE-10Nが挙げられる。)、アンモニウム=α-スルホナト-ω-1-(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン(例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH-10が挙げられる。)、スチレンスルホン酸塩(例えば、東ソー有機化学株式会社製スピノマー(商標)NaSSが挙げられる。)、α-〔2-〔(アリルオキシ)-1-(アルキルオキシメチル)エチル〕-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR-10が挙げられる。)、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3-メチル-3-ブテニル)エーテルの硫酸エステル塩(例えば、花王株式会社製ラテムルPD-104が挙げられる。)が挙げられる。
また、反応性界面活性剤の中のノニオン性界面活性剤としては、例えば、α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープNE-20、NE-30、NE-40が挙げられる。)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN-10、RN-20、RN-30、RN-50が挙げられる。)、α-〔2-〔(アリルオキシ)-1-(アルキルオキシメチル)エチル〕-ω-ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープER-10が挙げられる。)、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3-メチル-3-ブテニル)エーテル(例えば、花王株式会社製ラテムルPD-420が挙げられる。)が挙げられる。
上記各種界面活性剤の中でも、反応性界面活性剤が好ましく、より好ましくはアニオン性の反応性界面活性剤であり、さらに好ましくはスルホン酸基を有する反応性界面活性剤である。界面活性剤は、単量体組成物100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下用いることが好ましい。界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、熱又は還元性物質によりラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤及び有機系開始剤のいずれも用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性又は油溶性の重合開始剤を用いることができる。水溶性の重合開始剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、水溶性のアゾビス化合物、過酸化物-還元剤のレドックス系が挙げられる。ペルオキソ二硫酸塩としては、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(NPS)、及びペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)が挙げられ、過酸化物としては、例えば、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t―ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキシド、及び過酸化ベンゾイルが挙げられ、水溶性のアゾビス化合物としては、例えば、2,2-アゾビス(N-ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、2、2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩化水素、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)が挙げられ、過酸化物-還元剤のレドックス系としては、例えば、上記過酸化物にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸、及びその塩、第一銅塩、並びに第一鉄塩等の還元剤の1種又は2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
ラジカル重合開始剤は、単量体組成物100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上2質量部以下用いることができる。ラジカル重合開始剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、ポリアルキレングリコール基を有するエチレン性不飽和単量体(P)と、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体(A)と、その他の単量体(B)とを含む単量体組成物を乳化重合し、重合体粒子が溶媒(水)中に分散した分散体を形成する場合、得られた分散体の固形分としては、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
また、分散体は、長期の分散安定性を保つため、そのpHを5~12の範囲に調整されることが好ましい。pHの調整には、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びジメチルアミノエタノール等のアミン類を用いることが好ましく、アンモニア(水)又は水酸化ナトリウムによりpHを調整することがより好ましい。
本実施形態における水分散体は、上記特定の単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体を、水中に分散した粒子(重合体粒子)として含む。水分散体には、水及び重合体以外に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の溶媒や、分散剤、滑剤、増粘剤、殺菌剤等が含まれていてもよい。
本実施形態では、熱可塑性ポリマー含有層を塗工によって容易に形成することができるので、乳化重合により粒子状重合体を形成し、それにより、得られた粒子状重合体エマルジョンを水系ラテックスとして使用することが好ましい。
(任意成分)
本実施形態における熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーのみを含有していてもよいし、熱可塑性ポリマーに加えて、これ以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、フィラー多孔層を形成するために上記で説明された無機フィラーが挙げられる。熱可塑性ポリマー含有層における熱可塑性ポリマーの含有量は、その熱可塑性ポリマー含有層の全量に対して、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
本実施形態のセパレータは、衝突試験時の安全性を向上させるという観点から、130℃におけるTDでの熱収縮率が、12.0%未満であることが好ましく、より好ましくは0%以上10%以下であり、さらに好ましくは0%以上5.0%以下である。ここで、TDでの熱収縮率が、12.0%未満であると、衝突試験時に短絡により発熱した際に外力が付加されている箇所以外での短絡の発生をより有効に抑制する。これにより、電池全体の温度上昇及びそれに伴い生じ得る発煙及び発火をより確実に防止することができる。セパレータの熱収縮率の調整は、上述した基材の延伸操作と熱処理とを適宜組み合わせることにより行うことができる。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータの透気度は、好ましくは10秒/100cc以上10000秒/100cc以下であり、より好ましくは10秒/100cc以上1000秒/100cc以下であり、更に好ましくは50秒/100cc以上500秒/100cc以下である。このことにより、該セパレータを蓄電デバイスに適用したときに、よい高いイオン透過性を示すこととなる。この透気度は、ポリオレフィン多孔性基材の透気度と同じく、JIS P-8117に準拠して測定される透気抵抗度である。
<蓄電デバイス用セパレータの製造方法>
[基材の製造方法]
本実施形態における基材を製造する方法は、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、基材が、ポリオレフィン性多孔性基材である場合、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状に成形後、場合により延伸した後、可塑剤を抽出することにより多孔化させる方法、ポリオレフィン系の樹脂を主成分として含むポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、及び、ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法が挙げられる。
また、基材としての不織布又は紙を作製する方法は、公知のものであってもよい。その作製方法としては、例えば、ウェブをバインダに浸漬、乾燥して繊維間結合させるケミカルボンド法;ウェブに熱溶融性繊維を混ぜ込み、その繊維を部分的に溶融し繊維間結合させるサーマルボンド法;ウェブに刺のあるニードルを繰り返し突き刺し、繊維を機械的に絡めるニードルパンチ法;高圧の水流をノズルからネット(スクリーン)を介してウェブに噴射し、繊維間を絡める水流交絡法が挙げられる。
以下、ポリオレフィン多孔性基材(以下、単に「多孔性基材」ともいう。)を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状に成形後、可塑剤を抽出する方法について説明する。まず、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を、押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入して混練する方法が挙げられる。この際、ポリオレフィン樹脂、その他の添加剤及び可塑剤を樹脂混練装置に投入する前に、予めヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練しておくことが好ましい。より好ましくは、事前混練において可塑剤の一部のみを投入し、残りの可塑剤を樹脂混練装置サイドフィードしながら混練する。
可塑剤としては、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒を用いることができる。このような不揮発性溶媒の具体例として、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコールが挙げられる。これらの中で、流動パラフィンが好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば特に限定はない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とからなる組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上70質量%以下である。可塑剤の質量分率をこの範囲とすることにより、溶融成形時のメルトテンションと、均一かつ微細な孔構造の形成性とが両立する観点で、好ましい。
次に、上記のようにして加熱溶融及び混練して得られた溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押し出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、及び可塑剤自体が挙げられるが、金属製のロールが熱伝導の効率が高いため好ましい。この場合、金属製のロールに接触させる際に、ロール間で溶融混練物を挟み込むと、熱伝導の効率が更に高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上するため、より好ましい。Tダイよりシート状に押し出す際のダイリップ間隔は400μm以上3000μm以下であることが好ましく、500μm以上2500μm以下であることが更に好ましい。
このようにして得たシート状成形体を、次いで延伸することが好ましい。延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができる。得られる微多孔膜の強度等の観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる多孔性基材が裂け難くなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点から同時二軸延伸が好ましい。
延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上50倍以下の範囲であることが更に好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MD方向に4倍以上10倍以下、TD方向に4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MD方向に5倍以上8倍以下、TD方向に5倍以上8倍以下の範囲であることが更に好ましい。延伸倍率をこの範囲の倍率とすることにより、より十分な強度を付与することができると共に、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる点で、好ましい。
上記のようにして得られたシート状成形体を、更に圧延してもよい。圧延は、例えば、ダブルベルトプレス機等を使用したプレス法にて実施することができる。圧延により、特にシート状成形体の表層部分の配向を増大させることができる。圧延面倍率は1倍より大きく3倍以下であることが好ましく、1倍より大きく2倍以下であることがより好ましい。この範囲の圧延倍率とすることにより、最終的に得られる多孔性基材の膜強度が増加し、かつ、膜の厚さ方向により均一な多孔構造を形成することができる点で、好ましい。
次いで、シート状成形体から可塑剤を除去して多孔性基材を得る。可塑剤を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して可塑剤を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。可塑剤を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれであってもよい。多孔性基材の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、多孔性基材中の可塑剤の残存量は1質量%未満にすることが好ましい。
抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒で、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
多孔性基材の収縮を抑制するために、延伸工程後、又は、多孔性基材形成後に熱固定や熱緩和等の熱処理を行ってもよい。多孔性基材に、界面活性剤等による親水化処理、電離性放射線等による架橋処理等の後処理を行ってもよい。
[無機フィラー多孔層の形成方法]
上記のようにして製造された基材の少なくとも一方の面(片面)上に、無機フィラー多孔層を形成して配置、固定する。基材上に、無機フィラー多孔層を形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法によって形成することができる。例えば、無機フィラーと必要に応じて樹脂バインダとを含有する塗布液を基材に塗布する方法が挙げられる。塗布液を基材に塗工する方法は、必要とする層厚及び塗工面積を実現できる限り特に限定されない。基材がポリオレフィン多孔性基材のように樹脂を含む場合、無機フィラーと樹脂バインダとを含む原料と、樹脂を含む基材の原料とを共押出法により積層して押し出してもよいし、基材と無機フィラー多孔層(膜)とを個別に作製した後にそれらを貼り合せてもよい。
塗布液の溶媒としては、無機フィラーと必要に応じて樹脂バインダとを均一かつ安定に分散又は溶解できるものが好ましく、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン及びヘキサンが挙げられる。
塗布液には、分散安定化や塗工性の向上のために、界面活性剤等の分散剤;増粘剤;湿潤剤;消泡剤;酸、アルカリを含むPH調製剤等の各種添加剤を加えてもよい。これらの添加剤は、溶媒除去の際に除去できるものが好ましいが、リチウムイオン二次電池のような蓄電デバイスの使用範囲において、電気化学的に安定で、電池反応を阻害せず、かつ200℃程度まで安定ならば無機フィラー多孔層内に残存してもよい。
無機フィラーと必要に応じて樹脂バインダとを、塗布液の媒体に分散又は溶解させる方法については、塗布工程に必要な塗布液の分散特性を実現できる方法であれば特に限定はない。そのような方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌が挙げられる。
塗布液を基材に塗布する方法については、必要とする厚さ又は塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、及びスプレー塗布法が挙げられる。
塗布液を塗布する際、塗布液にかかるせん断応力を調整することで、無機フィラー多孔層の平均孔径を調整することができる。せん断がかかることにより、無機フィラーの配列が変化し、その配列が通常の配列に戻る前に溶媒を除去することで、通常の配列と異なる配列が得られる。例えば、塗布液がダイラタンシー特性を有する液であれば、せん断により無機フィラーや樹脂バインダがより密に詰まる。そのため、大きなせん断応力をかけることにより、形成される無機フィラー多孔層の平均孔径は小さくなる。
さらに、塗布液の塗布に先立ち、基材、特にポリオレフィン多孔性基材表面に表面処理を施すと、塗布液を塗布しやすくなると共に、塗布後の無機フィラー多孔層と基材表面との接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法は、基材が有し得る多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ放電処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、及び紫外線酸化法が挙げられる。
特に、コロナ放電処理法、溶剤処理法、酸化処理法、あるいは紫外線酸化法を用いると、基材表面の化学的性質が変化し、塗布液を塗布した後の無機フィラー多孔層の平均孔径に影響を与える。この要因は定かではないが、基材表面がより親水化することで溶媒との親和性が変化し、塗布液中で溶媒と無機フィラーや樹脂バインダが偏在化するためと考えられる。例えば、多孔質構造を有する多孔膜である基材にコロナ放電処理を行い、かつ塗布液の溶媒として水を選択すると、多孔膜表面に水が集まり、無機フィラーが塗布液と大気との界面に追いやられることで、より密に無機フィラーが配置され、その結果、無機フィラー多孔層の平均孔径が小さくなると考えられる。この場合、表面処理の強度が強いほど、無機フィラー多孔層の平均孔径が小さくなる傾向にある。
塗布後に塗布膜から溶媒を除去する方法については、基材に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はない。例えば、基材を固定しながら基材を構成する材料の融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、樹脂バインダに対する貧溶媒に浸漬して樹脂バインダを凝固させると同時に溶媒を抽出する方法が挙げられる。またデバイス特性に著しく影響を及ぼさない範囲においては溶媒を一部残存させてもよい。基材と無機フィラー多孔層との積層体のMD方向の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度及び巻取り張力等を適宜調整することが好ましい。
乾燥にて塗布液を塗布膜から除去する場合、乾燥条件を変化させることで無機フィラー多孔層の平均孔径を調整することができる。乾燥条件をより強くし乾燥速度を速めると、無機フィラーが十分分散した状態から形状を整えることなくそのままの配置で固定化される結果、平均孔径が大きくなると考えられる。一方で乾燥条件をより緩和させると、溶媒が乾燥していく過程において、分散していた無機フィラーがよりエネルギー的に安定な構造を取ろうとし、結果的に無機フィラー多孔層の平均孔径が小さくなると考えられる。また、塗布液の粘度が低ければ、安定構造をより取りやすくなり、無機フィラー多孔層の平均孔径はより小さくなる。さらには、無機フィラーの分散状態は、無機フィラーの種類、溶媒の種類、添加された界面活性剤の有無、界面活性剤の種類の影響も受ける。
無機フィラー多孔層と基材との積層体をカレンダー処理することで、無機フィラー多孔層の平均孔径を小さくすることができる。カレンダー処理の方法は特に限定はなく、塗布液を乾燥した後、ニップロールにて圧力をかけながら搬送する方法を用いてもよい。
[熱可塑性ポリマー含有層の配置方法]
上記のようにして製造された無機フィラー多孔層表面の少なくとも一部に、熱可塑性ポリマー含有層を配置する。無機フィラー多孔層が基材の片面にのみ配置されている場合は、無機フィラー多孔層表面に加えて、基材の表面の少なくとも一部に熱可塑性ポリマー含有層が配置されてもよい。熱可塑性ポリマー含有層を配置する方法としては、特に限定されず、例えば、該粒子状重合体を含有する塗布液を無機フィラー多孔層表面やポリオレフィン多孔性基材に塗布する方法が挙げられる。
塗布液としては、粒子状重合体を、該ポリマーを溶解しない溶媒中に分散させた分散体を好ましく用いることができる。特に好ましくは、粒子状重合体を乳化重合によって合成し、該乳化重合によって得られるエマルジョンをそのまま塗布液として使用する場合である。
基材上に、粒子状重合体を含有する塗布液を塗布する方法については、所望の塗布パターン、塗布膜厚、及び塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、インクジェット塗布法等が挙げられる。これらのうち、粒子状重合体の塗工形状の自由度が高く、かつ好ましい面積割合を容易に得られるという観点から、グラビアコーター法又はスプレー塗布法が好ましい。
塗布液の媒体としては、水、又は水及び水溶性有機媒体からなる混合溶媒が好ましい。水溶性有機媒体としては、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノール等を挙げることができる。これらの中でもより水が好ましい。塗布液を基材に塗布する際に、塗布液が基材の内部にまで入り込んでしまうと、重合体を含む粒子状重合体が、基材の孔の表面及び内部を閉塞し透過性が低下し易くなる。この点、塗布液の溶媒又は分散媒として水を用いる場合には、基材の内部に塗布液が入り込み難くなり、重合体を含む粒子状重合体は主に基材の外表面上に存在し易くなるため、透過性の低下をより効果的に抑制できるので好ましい。また、水と併用可能な溶媒又は分散媒としては、例えば、エタノール及びメタノールを挙げることができる。
塗布に先立ち、基材表面に表面処理を施しておくと、塗布液を塗布し易くなると共に、基材と粒子状重合体との接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗布後に塗布膜から溶媒を除去する方法については、基材及び熱可塑性ポリマー含有層に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はない。例えば、基材を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、粒子状重合体に対する貧溶媒に浸漬して該粒子状重合体を粒子状に凝固させると同時に溶媒を抽出する方法等が挙げられる。
<蓄電デバイス>
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを備える蓄電デバイスは、その蓄電デバイス用セパレータを備える以外は、従来しられているものと同様であってもよい。蓄電デバイスとしては、特に限定されないが、例えば、非水系電解液二次電池等の電池、コンデンサー及びキャパシタが挙げられる。それらの中でも、本発明による作用効果による利益がより有効に得られる観点から、電池が好ましく、非水系電解液二次電池がより好ましく、リチウムイオン二次電池が更に好ましい。本実施形態のセパレータを備えるので、蓄電デバイスは、蓄電性能などのデバイス特性に優れる。また、リチウムイオン二次電池は、電池特性に優れる。
本実施形態のセパレータはこれを電極と重ね合わせて、プレス温度90℃、プレス圧力1.0MPa、プレス時間5秒の条件でプレスをした際の剥離強度が2N/m以上であることが好ましい。これは本実施形態のセパレータが電極に対する接着性を有していることを意味する。剥離強度をこの範囲に設定することにより、セパレータと電極間の接着性が十分に確保され、電極及びセパレータからなる捲回体をプレス成形した際のプレスバックを抑制できる。また、シート状電極及びシート状セパレータからなる積層体をプレス成形した後の、剥がれ及び位置ズレを防ぐことができる。従って、蓄電デバイス組立工程における歩留まり低下を抑制し、生産工程時間を短縮することができる。プレスの際には、圧力が均等にかかるよう緩衝材を重ねてプレスすることがこのましい。剥離強度の測定においては、電極及びセパレータ間の剥離強度を、JIS K6854-2に準じて島津製作所製のオートグラフAG-IS型(商標)を用いて、引張速度200mm/分で測定する。
電極との剥離強度の測定に用いる電極は、正極及び負極のどちらであってもよいが、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータの効果を適切に把握するためには、正極を用いることが適切である。特に、蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合、正極集電体上に、正極活物質を含む正極活物質層が形成されたリチウムイオン二次電池用正極を、正極活物質層がセパレータの熱可塑性ポリマー含有層の形成面と相対するように重ね合わせ、上記のように熱プレスした上で測定されることが適切である。このリチウムイオン二次電池用正極については後述される。
以下、蓄電デバイスが非水系電解液二次電池である場合についての好適な態様について説明する。
本実施形態のセパレータを用いてリチウムイオン二次電池を製造する場合、正極、負極、及び非水電解液に限定はなく、それぞれ公知のものを用いることができる。
正極としては、正極集電体上に正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極を好適に用いることができる。正極集電体としては、例えばアルミニウム箔が挙げられる。正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、スピネル型LiMnO4、オリビン型LiFePO4等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。正極活物質層には、正極活物質の他、バインダ、導電材等を適宜含んでいてもよい。
負極としては、負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極を好適に用いることができる。負極集電体としては、例えば銅箔が挙げられる。負極活物質としては、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種合金材料が挙げられる。
非水電解液としては、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩が挙げられる。
<蓄電デバイスの製造方法>
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを用いて蓄電デバイスを製造する方法は、特に限定されない。例えば、以下の方法を例示することができる。本実施形態のセパレータを、幅10~500mm(好ましくは80~500mm)、長さ200~4000m(好ましくは1000~4000m)の縦長形状のセパレータとして製造し、当該セパレータを、正極-セパレータ-負極-セパレータ、又は負極-セパレータ-正極-セパレータの順で積層し、円又は扁平な渦巻状に捲回して捲回体を得、当該捲回体をデバイス缶(例えば電池缶)内に収納し、更に電解液を注入することにより、製造することができる。あるいいは、シート状のセパレータ及び電極からなる積層体(例えば正極-セパレータ-負極-セパレータ-正極、又は負極-セパレータ-正極-セパレータ-負極の順に平板状に積層したもの)、又は電極及びセパレータを折り畳んで捲回体としたものを、デバイス容器(例えばアルミニウム製のフィルム)に入れて、電解液を注液する方法によって製造してもよい。
この時、積層体又は捲回体に対して、プレスを行うことができる。具体的には、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータと、集電体及び該集電体の少なくとも片面上に形成された活物質層を有する電極とを、前者の熱可塑性ポリマー含有層と活物質層とが対向するように重ね合わせてプレスを行う方法を例示することができる。
プレス温度は、効果的に接着性を発現できる温度として例えば20℃以上が好ましい。また熱プレスによるセパレータにおける孔の目詰まり又は熱収縮を抑える点で、プレス温度は基材に含まれる材料の融点よりも低いことが好ましく、120℃以下がさらに好ましい。プレス圧力はセパレータにおける孔の目詰まりを抑える観点から20MPa以下が好ましい。プレス時間については、ロールプレスを用いたときに1秒以下でもよく、数時間の面プレスでもよいが、生産性の観点から2時間以下が好ましい。本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを用いて、上記の製造工程を経ると、電極及びセパレータからなる捲回体をプレス成形した際のプレスバックを抑制できる。また、シート状電極及びシート状セパレータからなる積層体をプレス成形した後の、剥がれ及び位置ズレを防ぐことができる。従って、デバイス組立工程における歩留まり低下を抑制し、生産工程時間を短縮することができ、好ましい。
上記のようにして製造された蓄電デバイス、特にリチウムイオン二次電池は、高い接着性を有し、かつイオン抵抗を低減させたセパレータを具備するから、優れた電池特性(レート特性)と長期連続稼動耐性(サイクル特性)に優れる。
以下の実施例における物性評価は、以下の方法に従って行なった。
(1)固形分
得られた熱可塑性ポリマーの水分散体をアルミ皿上に約1g精秤し、このとき量り取った水分散体の質量を(a)gとした。それを、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥し、乾燥後の熱可塑性ポリマーの乾燥質量を(b)gとした。下記式により固形分を算出した。
固形分=(b)/(a)×100 [%]
(2)無機フィラーの平均粒径(D50)及び粒度分布
無機フィラーの平均粒径及び粒度分布は、粒子径測定装置(日機装株式会社製、製品名「Microtrac UPA150」)を使用し、測定した。測定条件としては、ローディングインデックス=0.20、測定時間300秒とし、得られたデータにおける50%粒子径(D50)の数値を平均粒径として記載した。
(3)樹脂バインダ及び粒子状重合体の平均粒径(D50)
樹脂バインダの平均粒径(D50)は、粒子径測定装置(日機装株式会社製、製品名「Microtrac UPA150」)を使用し、測定した。測定条件としては、ローディングインデックス=0.20、測定時間300秒とし、得られたデータにおける50%粒子径(D50)の数値を平均粒径として記載した。
(4)無機フィラー多孔層の平均孔径
無機フィラー多孔層の平均孔径は、セパレータ断面の観察により求めた。断面は、断面の奥行方向へのばらつきを軽減するためブロードイオンビーム(BIB)によって作製し、得られた断面について走査型電子顕微鏡を用いて観察した。BIBで加工する際は、セパレータへのダメージを軽減するために直前までセパレータを冷却した。具体的には、-40℃の冷却装置内でセパレータを一昼夜静置した。次に、得られたセパレータ断面を、Cペースト及びOsコーティングにより導通処理を行った後、「HITACHI S-4700」(日立ハイテクフィールディング社製製品名)を用いて、撮影倍率1万倍、加速電圧1.0kV、検出器:二次電子(情報UPPER)の設定で撮影を行った。観察視野内には、セパレータの表面が水平方向と平行になる向きとなり、視野の中央に無機フィラー多孔層の厚み方向に対する中央部分が映り込むようにした。
得られた電子画像から、得られた観察視野を、画像解析処理ソフトImageJ(バージョン1.46)を用いて、視野に含まれる無機フィラー粒子を特定した。具体的には、所望の断面SEMの電子画像を開き、評価エリアの選択を行うため「Rectangular selections」を用いて、無機フィラー多孔層に該当する領域を選択した。具体的には、基材と無機フィラー多孔層との界面の線と、無機フィラーが存在する最も基材から離れた部分を通る上記界面に平行な直線に挟まれた部分を選択した。続いて、選択領域を別ファイルへ作成するため、「Dupulicate」を用いて、無機フィラー多孔層のみの新しい電子画像を作成した。次に、その無機フィラー多孔層について、無機フィラー部分が白、孔部分が黒となるような2値化処理を行った。具体的には、「Threshold」を選択し、256階調のうち反転させる範囲を「0-100」として処理を行った。例として、図1に2値化処理を行った後の無機フィラー多孔層の模式図を示す。
ここで得られた2値化画像に対し、視野の縦方向を4等分する横方向の水平な線を引き、その線上において、無機フィラーや樹脂バインダによって閉じられた、それら無機フィラーや樹脂バインダが存在しない部分の長さを測定した。計測できるすべての測定点を測定し、50nm以上であった計測点のみにおいて、その中央値を無機フィラー多孔層の平均孔径とした。例えば、図2は、前記視野の縦方向を4等分した水平な線を引いた例である。
(5)無機フィラー多孔層に含まれる粒子状重合体の含有量(存在比率)
無機フィラー多孔層の平均孔径を求める際に撮影した上記の無機フィラー多孔層の断面画像を用い、無機フィラー多孔層中の粒子状重合体の存在比率を求めた。観察視野中における、基材と無機フィラー多孔層との界面の線と、無機フィラーが存在する最も基材から離れた部分を通る上記界面に平行な直線に挟まれた部分の面積を、その断面における無機フィラー多孔層の面積とし、その中に存在する粒子状重合体の面積割合を粒子状重合体の含有量(存在比率)とした。粒子状重合体の特定には、SEM-EDXによる炭素原子のマッピング検出を用いた。具体的には、試料の前処理として、カーボンテープに試料を貼り付けた後、Osコーティング処理を行った。この試料を走査電子顕微鏡である「HITACHI S-4700」(日立ハイテクフィールディング社製製品名)、及び、エネルギー分散型X線分析装置である「EX250」(堀場製作所製品名)を用い、加速電圧20kVにて測定倍率1万倍のSEM画像に対し、元素マッピングを行った。動作距離は15mmとし、積算回数は20回とした。得られたマッピング画像に対し、幅100μmとなるような格子状の線を引き、1格子中にてCが検出された検出点が50点以上である格子の面積を粒子状重合体が存在する面積とした。最終的に、粒子状重合体が存在する面積を無機フィラー多孔層の面積で割ることで、無機フィラー多孔層に含まれる粒子状重合体の含有量(存在比率)を算出した。なお、この方法によれば、無機フィラー多孔層に含まれる樹脂バインダは検出されない。
(6)粒子状重合体の算術平均粒径
粒子状重合体の算術平均粒径は、オスミウム蒸着した蓄電デバイス用セパレータを、走査型電子顕微鏡(SEM)(型式「S-4800」、HITACHI社製)を用いて、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察することにより測定した。粒子状重合体の一番径が大きい部分を粒径とし、任意に選択した20個の粒子状重合体の粒径の平均値を平均粒径とした。
(7)熱可塑性ポリマー含有層の平均孔径
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、熱可塑性ポリマー含有層の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
熱可塑性ポリマー含有層の平均孔径d(μm)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求めた。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10-4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm3/(cm2・sec・Pa))から次式を用いて求めた。
liq=透水度/100
なお、透水度は次のように求めた。直径41mmのステンレス製の透液セルに、予めエタノールに浸しておいた熱可塑性ポリマー含有層をセットし、該層のエタノールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm3)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10-2kg/mol)から次式を用いて求めた。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
(8)基材の厚さ(μm)
基材から、10cm×10cm角の試料を切り取り、格子状に9箇所(3点×3点)を選んで、微小測厚器(株式会社東洋精機製作所、タイプKBM)を用いて室温23±2℃で厚さを測定した。得られた9箇所の測定値の平均値を、基材の厚さとして算出した。
(9)無機フィラー多孔層の厚さ、及び、熱可塑性ポリマー含有層の厚さ
無機フィラー多孔層の厚さ、及び、熱可塑性ポリマー含有層の厚さは、以下のように測定した。まず、セパレータを凍結割断し、その断面をSEM(型式S-4800、HITACHI社製)にて確認した。得られた視野から無機フィラー多孔層の厚さ、及び、熱可塑性ポリマー含有層の厚さを測定した。詳細には、セパレータのサンプルを1.5mm×2.0mm程度に切り取り、ルテニウム染色した。ゼラチンカプセル内に染色したサンプルとエタノールを入れ、液体窒素により凍結させた後、ハンマーでそのサンプルを割断した。割断したサンプルをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察し、無機フィラー多孔層の厚さ、及び、熱可塑性ポリマー含有層の厚さを算出した。なお、SEM画像にて基材断面の多孔構造が見得る部分と見えない部分の境界線と、これに平行で無機フィラー多孔層、及び、熱可塑性ポリマー含有層と接触する最も基材から遠い線までの最短距離を、それぞれ無機フィラー多孔層の厚さ、及び、熱可塑性ポリマー含有層の厚さの領域とした。無機フィラー多孔層上に熱可塑性ポリマー含有層がある場合は、基材から熱可塑性ポリマー含有層までの距離から無機フィラー多孔層の厚さを差し引いた距離を熱可塑性ポリマー含有層の厚さとした。
(10)セパレータ及び基材と無機フィラー多孔層との積層体の130℃での熱収縮率(%)
上記積層体をTD方向に100mm、MD方向に100mmに切り取った試料を、130℃のオーブン中に1時間静置した。このとき、温風が直接試料にあたらないよう、試料を2枚の紙に挟んだ。試料をオーブンから取り出し冷却した後、その長さ(mm)を測定し、下記式にて、TDの熱収縮率を算出した。
TD熱収縮率(%)=100-加熱後のTDでの長さ(mm)
(11)無機フィラーの組成解析
無機フィラーを20mmφアルミリングに詰めて錠剤成型した後、蛍光X線測定装置(リガク製製品名「ZSX-100e」(Rh管球))を用いて、全元素定性分析を行い、ピーク強度から各元素の含有率を半定量的に算出し、組成を求めた。
(12)熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の測定
熱可塑性ポリマーを含む水分散体(固形分=38~42質量%、pH=9.0)を、アルミ皿に適量取り、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥して乾燥皮膜を得た。その乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に充填し、DSC測定装置(島津製作所社製、型式名「DSC6220」)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記の通りとした。
1段目昇温プログラム:70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
2段目降温プログラム:110℃から毎分40℃の割合で降温。-50℃に到達後5分間維持。
3段目昇温プログラム:-50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
ベースライン(得られたDSC曲線におけるベースラインを高温側に延長した直線)と、変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)における接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
(13)粘度平均分子量Mv
ASTM-D4020に準拠して、デカリン溶剤中、135℃における極限粘度[η]を求めた。この[η]値を用いて、下記数式の関係から粘度平均分子量Mvを算出した。
ポリエチレンの場合:[η]=0.00068×Mv0.67
ポリプロピレンの場合:[η]=1.10×Mv0.80
(14)気孔率
ポリオレフィン微多孔膜である基材から10cm×10cm角の試料を切り取り、その体積(cm3)及び質量(g)を求めた。これらの値を用い、該基材の密度を0.95(g/cm3)として、気孔率を下記式から求めた
気孔率(%)=(1-質量/体積/0.95)×100
(15)透気度(秒/100cc)
ポリオレフィン微多孔膜である基材について、JIS P-8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G-B2(型式名)により測定した透気抵抗度を透気度とした。無機フィラー多孔層が基材の片面にしか存在しない場合は、無機フィラー多孔層が存在する面から針を突刺した。
(16)突刺強度(gf)
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES-G5(型式名)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで基材を固定した。次に、固定された基材の中央部に対して、先端の曲率半径0.5mmの針を用いて、突刺速度2mm/秒で、25℃雰囲気下において突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重を測定した。その最大突刺加重を20μmの厚さ当たりに換算した値を突刺強度(gf/20μm)とした。基材と無機フィラー多孔層との積層体、及び、基材と無機フィラー多孔層と熱可塑性ポリマーとの積層体の場合も同様の測定方法にて測定した。無機フィラー多孔層が基材の片面にしか存在しない場合は、無機フィラー多孔層が存在する面から針を突刺した。
(17)レート特性
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm3)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm3、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm3、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm3)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧縮成形することにより、正極を作製した。この時の正極活物質塗布量は109g/m2であった。
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm3、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm3、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を作製した。この時の負極活物質塗布量は5.2g/m2であった。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより、非水電解液を調製した。
d.電池組立
セパレータ又は基材を24mmφ、正極及び負極をそれぞれ16mmφの円形に切り出した。正極と負極の活物質面とが対向するように、負極、セパレータ又は基材、正極の順に重ね、蓋付きステンレス金属製容器に収容した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接していた。この容器内に前記非水電解液を0.4ml注入して密閉することにより、電池を組み立てた。
e.レート特性の評価
d.で組み立てた簡易電池を、25℃において、電流値3mA(約0.5C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を3mAから絞り始めるという方法により、電池作成後の最初の充電を合計約6時間行った。その後、電流値3mAで電池電圧3.0Vまで放電した。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計約3時間充電を行った。その後、電流値6mAで電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量を1C放電容量(mAh)とした。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計約3時間充電を行った。その後、電流値12mA(約2.0C)で電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量を2C放電容量(mAh)とした。
そして、1C放電容量に対する2C放電容量の割合を算出し、この値をレート特性とした。
レート特性(%)=(2C放電容量/1C放電容量)×100
レート特性(%)の評価基準
○(良好):レート特性が、85%超
△(可):レート特性が、80%超85%以下
×(不良):レート特性が、80%以下
(18)セパレータの耐ブロッキング性(ハンドリング性)
セパレータと被着体として正極集電体(冨士加工紙株式会社製のアルミニウム箔、厚さ:20μm)とをそれぞれ30mm×150mmに切り取り、重ね合わせた後、その積層体をテフロン(登録商標)シート(ニチアス株式会社製のナフロン(商標)PTFEシート TOMBO-No.9000)で挟んだ。各サンプルについて、下記1)及び2)の条件にて積層方向にプレスを行うことによって試験用サンプルを得た。
1)25℃、5MPa、3分
2)40℃、5MPa、3分
得られた各試験用サンプルのセパレータと正極集電体との間の剥離強度を、島津製作所製のオートグラフAG-IS型(商標)を用いて、JIS K6854-2に準じて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度の値に基づいて、下記の評価基準により評価した。
<評価基準>
8N/m以下…○
8N/m超…×
(19)熱可塑性ポリマー含有層の表面被覆率
熱可塑性ポリマー含有層の表面被覆率は、走査型電子顕微鏡(SEM)(型式:S-4800、HITACHI社製)を用いて測定した。サンプルであるセパレータをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、50倍の条件にて観察し、下記式から表面被覆率を算出した。なお、SEM画像にて基材(ポリオレフィン微多孔膜)表面の多孔構造が見えない領域を熱可塑性ポリマー含有層領域とした。
熱可塑性ポリマー含有層の表面被覆率(%)=熱可塑性ポリマー含有層の面積÷(基材の孔部分を含む面積+熱可塑性ポリマー含有層の面積)×100
各サンプルにおける表面被覆率は、上記測定を3回行い、その相加平均値とした。
(20)電極への接着性
各実施例及び比較例で得られた蓄電デバイス用セパレータと、被着体としての正極(enertech社製、正極材料:LiCoO2、導電助剤:アセチレンブラック、バインダ:PVDF、LiCoO2/アセチレンブラック/PVDF(質量比)=95/2/3、L/W:両側について36mg/cm2、密度:3.9g/cc、Al集電体の厚み:15μm、プレス後の正極の厚み:107μm)とをそれぞれ幅15mm及び長さ60mmの長方形状に切り取り、セパレータの熱可塑性ポリマー含有層と、正極活物質とが相対するように重ね合わせて積層体を得た後、その積層体を、以下の条件でプレスした。
プレス圧:1MPa
温度:100℃
プレス時間:5秒
プレス後の積層体について、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、電極を固定し、セパレータを把持して引っ張る方式によって剥離速度50mm/分にて90°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。このとき、上記の条件で行った長さ40mm分の剥離試験における剥離強度の平均値を剥離強度として採用し、電極との接着性を以下の基準で評価した。
A(著しく良好):剥離強度が15N/m以上である。
B(良好):剥離強度が5N/m以上15N/m未満である。
C(不良):剥離強度が5N/m未満である。
[製造例1-1](ポリオレフィン微多孔膜B1の製造)
Mvが70万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレン45質量部と、Mvが30万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレン45質量部と、Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレンとMvが15万であるホモポリマーのポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス-[メチレン-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物100質量部中に占める流動パラフィンの割合が65質量部となるように、すなわち、樹脂組成物の割合が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で230℃に加熱しながら溶融混練し、得られた溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度80℃に制御された冷却ロール上に押し出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物を得た。このシートを同時二軸延伸機にて倍率7×6.4倍、温度112℃下で延伸した後、塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後、乾燥し、テンター延伸機にて温度130℃、横方向に2倍延伸した。その後、この延伸シートを幅方向に約10%緩和して熱処理を行い、ポリオレフィン微多孔膜B1を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜B1について、上記方法により物性を測定した。また得られたポリオレフィン微多孔膜をそのままセパレータとして、上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
[製造例1-2](ポリオレフィン微多孔膜B2の製造)
延伸の際の温度と緩和率とを変更したこと以外は、製造例1-1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜B2を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜B2を製造例1-1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
[製造例1-3]
粘度平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン25質量部と、粘度平均分子量70万のホモポリマーの高密度ポリエチレン15質量部と、粘度平均分子量25万の高密度ポリエチレン30質量部と、粘度平均分子量12万でプロピレン単位含有量1mol%の共重合ポリエチレン30質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリマー混合物99質量部に対して酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィンを押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。それらを溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%、すなわち樹脂組成物の割合が35質量%となるように、フィーダー及びポンプを調整した。得られた溶融混練物を、T-ダイを経て冷却ロール上に押し出しキャストすることにより、シート状成形物を得た。その後、延伸温度と緩和率を変更したこと以外は、製造例1-1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜B3を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜B3を製造例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
[製造例2-1]
無機フィラーとしてブロック状の水酸化酸化アルミニウム47.7質量部と、ポリカルボン酸アンモニウム塩0.48質量部とを、47.7質量部の水にそれぞれ均一に分散させ、ビーズミル処理を行い、無機フィラー(水酸化酸化アルミニウム)の平均粒径が表2に示すとおりになるように破砕を行った。このときの粒度分布チャートにおけるピークは一つであった。その後、増粘剤0.10質量部、アクリルラテックス(平均粒径(D50):300μm)4.1質量部(固形分量として)を添加させた水溶液を、放電量1.0kVでコロナ処理した上記ポリオレフィン微多孔膜B1の表面にグラビアコーターを用いてライン速度を30m/minとして塗布した。塗布した膜を40℃で10秒、続いて70℃で10秒以上乾燥しながら水を除去し、ポリオレフィン微多孔膜上に厚さ4μmの無機フィラー多孔層(層密度:1.5g/(m2・μm))が形成された総厚さ15μmの多層多孔膜B1-1を得た。得られた多層多孔膜を上記のようにして評価した。得られた結果を表2に示す。
[製造例2-2~2-5]
増粘剤の量と乾燥速度を変更したこと以外は、製造例2-1と同様にして、多層多孔膜B1-2~B1-5を得た。これらの多層多孔膜を製造例2-1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
[製造例2-6~2-7]
ブロック状の水酸化酸化アルミニウムを含む無機フィラー多孔層の厚さを変更したこと以外は、製造例2-1と同様にして多層多孔膜B1-6~B1-7を得た。これらの多層多孔膜を製造例2-1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
[製造例2-8]
無機フィラーとして酸化アルミニウムを用いたこと以外は製造例2-1と同様にして多層多孔膜B1-8を得た。この多層多孔膜を製造例2-1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
[製造例2-9]
板状粒子の、水酸化酸化アルミニウムを用いたこと以外は、製造例2-1と同様にして多層多孔膜B1-9を得た。この多層多孔膜を製造例2-1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
[製造例2-10]
ポリオレフィン微多孔膜B2を用いたこと以外は、製造例2-1と同様にして多層多孔膜B2-1を得た。この多層多孔膜を製造例2-1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
[製造例2-11]
ポリオレフィン微多孔膜B3を用いたこと以外は、製造例2-1と同様の方法により多層多孔膜B3-1を得た。この多層多孔膜を製造例2-1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
<粒子状重合体の合成>
(製造例A1)水分散体(表中「原料ポリマー」と表記。以下同様。)A1の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下槽、及び温度計を取り付けた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液、表中「KH1025」と表記。以下同様。)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25%水溶液、表中「SR1025」と表記。以下同様。)0.5質量部と、を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温した。その後、80℃の容器内部温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)(表中「APS(aq)」と表記。以下同様。)を7.5質量部添加した。
一方、メタクリル酸メチル(表中「MMA」と表記。以下同様。)38.5質量部、アクリル酸n-ブチル(表中「BA」と表記。以下同様。)19.6質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル(表中「EHA」と表記。以下同様。)31.9質量部、メタクリル酸(表中「MAA」と表記。以下同様。)0.1質量部、アクリル酸(表中「AA」と表記。以下同様。)0.1質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(表中「HEMA」と表記。以下同様。)2質量部、アクリルアミド(表中「AM」と表記。以下同様。)5質量部、メタクリル酸グリシジル(表中「GMA」と表記。以下同様。)2.8質量部、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)3質量部、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)3質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム(表中「NaSS」と表記。以下同様。)0.05質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、表中「A-TMPT」と表記。以下同様。)0.7質量部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(表中「MPTMS」と表記。以下同様。)0.3質量部、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)7.5質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて、乳化液を作製した。
得られた乳化液を滴下槽から上記反応容器に滴下した。滴下は反応容器に過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に開始し、150分かけて乳化液の全量を滴下した。乳化液の滴下中は、容器内部温度を80℃に維持した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却し、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンを、水酸化アンモニウム水溶液(25%水溶液)を用いてpH=9.0に調整し、濃度40質量%のアクリル系コポリマーラテックスを得た(原料ポリマーA1)。得られた原料ポリマー(水分散体)A1について、上記方法により評価した。得られた結果を表3に示す。
(製造例A2~A18)水分散体A2~A18の合成
単量体及びその他の原料の組成を、それぞれ、表3~5に記載のとおりに変更する以外は、原料ポリマー(水分散体)A1と同様にして、コポリマーラテックス(原料ポリマーA2~A18)をそれぞれ得た。得られた原料ポリマー(水分散体)A2~A18について、それぞれ、上記方法により評価した。得られた結果を表3~5に示す。
(製造例A2-1)
上記製造例A2で得た水分散体A2の一部をとり、これをシードポリマーとする多段重合を行うことにより、水分散体A2-1を合成した。具体的には、まず、撹拌機、還流冷却器、滴下槽、及び温度計を取り付けた反応容器に、上記水分散体A2を固形分換算で16質量部、アクアロンKH1025(登録商標)0.5質量部、及びアデカリアソープSR1025(登録商標)0.5質量部を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温した。その後、80℃の容器内部温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)を7.5質量部添加した。以上が初期仕込みである。
一方、メタクリル酸メチル71.5質量部、アクリル酸n-ブチル18.9質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル2質量部、メタクリル酸0.1質量部、アクリル酸0.1質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2質量部、アクリルアミド5質量部、メタクリル酸グリシジル0.4質量部、アクアロンKH1025(登録商標、25%水溶液)3質量部、アデカリアソープSR1025(登録商標、25%水溶液)3質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム0.05質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.4質量部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)7.5質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて、乳化液を作製した。得られた乳化液を滴下槽から上記反応容器に滴下した。滴下は反応容器に過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に開始し、150分かけて乳化液の全量を滴下した。乳化液の滴下中は、容器内部温度を80℃に維持した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却し、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンを、水酸化アンモニウム水溶液(25%水溶液)を用いてpH=9.0に調整し、濃度40質量%のアクリル系コポリマーラテックスを得た(原料ポリマーA2-1)。得られた原料ポリマーA2-1について、上記方法により評価した。得られた結果を表6に示す。
(製造例A2-2~A18-2)
シードポリマー、単量体及びその他の原料の組成を、それぞれ、表6~10に記載のとおりに変更する以外は、原料ポリマー(水分散体)A2-1と同様にして、多段重合によって各コポリマーラテックスを得た。得られた原料ポリマー(水分散体)について、それぞれ、上記方法により評価した。得られた結果を表6~10に示す。
上記表3~10における原材料名の略称は、それぞれ、以下の意味である。
<乳化剤>
KH1025:アクアロンKH1025、第一工業製薬株式会社製、25%水溶液
SR1025:アデカリアソープSR1025、株式会社ADEKA製、25%水溶液
NaSS:p-スチレンスルホン酸ナトリウム
<開始剤>
APS:過硫酸アンモニウム(2%水溶液)
<単量体>
(酸単量体)
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
((メタ)アクリル酸エステル)
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸n-ブチル
BMA:メタクリル酸n-ブチル
EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
(芳香族ビニル単量体)
St:スチレン
(シアノ基含有単量体)
AN:アクリロニトリル
(その他の官能基含有単量体)
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
AM:アクリルアミド
(架橋性単量体)
GMA:メタクリル酸グリシジル
A-TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート
AcSi:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
[実施例1]
固形分で80質量部の水分散体A2-2と、固形分で20質量部の水分散体A7とを、水に均一に分散させて、熱可塑性ポリマーを含む塗布液(固形分30質量%)を調製した。このとき、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースが塗布液に対して1質量%となるように添加し、塗布液の粘度を30mPa・sに調整した。このとき、グラビアコーターを用い、ダイレクトグラビア塗工によって、多層多孔膜B1-1の無機フィラー多孔層側の表面にドット状に塗布液を塗布した。このときの熱可塑性ポリマーによる無機フィラー多孔層に対する表面被覆率は50%であった。その後、40℃にて塗布後の塗布液を乾燥して水を除去した。更に、多層多孔膜B1-1の基材側の表面にも同様に塗布液を塗布し、再度上記と同様にして乾燥させた。こうして、多層多孔膜B1-1の両面にポリマー層を形成したセパレータを得た。
[実施例2~27、29]
多層多孔膜及び塗布液の組成を、それぞれ、表11及び12に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、セパレータを得た。
[実施例28]
塗布液をリバースグラビア塗工にて多層多孔膜の全面に塗布した以外は実施例1と同様にして、セパレータを得た。
[実施例30]
水分散体A2-2に代えてPvDF-HFPラテックスSolef918(Solvey)を用いた以外は、実施例1と同様にして、セパレータを得た。
[比較例1~3、7]
多層多孔膜及び塗布液の組成を、それぞれ、表13に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、セパレータを得た。
[比較例4]
表13に記載した組成の塗布液をリバースグラビア塗工にて多層多孔膜の両側の全面に塗布し、無機フィラー多孔層表面からの熱可塑性ポリマーの厚さが1μmになるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、セパレータを得た。
[比較例5~7]
[製造例2-12]
ビーズミルの回転数を変更した以外は、製造例2-1と同様にして多層多孔膜B1-10及びB1-11を得た。多層多孔膜及び塗布液の組成を、それぞれ、表13に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、セパレータを得た。
Figure 0007166773000001
Figure 0007166773000002
Figure 0007166773000003
Figure 0007166773000004
Figure 0007166773000005
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Figure 0007166773000010
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本発明の蓄電デバイス用セパレータは、電極との接着性及び耐熱性に優れると共に、イオン透過性にも優れるので、そのような要求のある技術分野に産業上の利用可能性がある。

Claims (13)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層と、前記無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成された熱可塑性ポリマー含有層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
    前記無機フィラー多孔層は、無機フィラーを含み、かつ、複数の孔を有し、
    前記熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含有し、
    前記熱可塑性ポリマーが粒子状の重合体を含み、
    前記粒子状の重合体の算術平均粒径が前記無機フィラー多孔層の平均孔径よりも大き
    前記無機フィラーの平均粒径D50が0.5μm以上1.0μm未満であり、
    前記粒子状の重合体の算術平均粒径が0.20μm以上1.0μm以下であり、
    前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が9.5%以下であり、
    前記基材がポリオレフィン微多孔膜である、
    蓄電デバイス用セパレータ。
  2. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層と、前記無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成された熱可塑性ポリマー含有層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
    前記無機フィラー多孔層は、無機フィラーを含み、かつ、複数の孔を有し、
    前記熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含有し、
    前記熱可塑性ポリマーが粒子状の重合体を含み、
    前記粒子状の重合体の算術平均粒径が前記無機フィラー多孔層の平均孔径よりも大きく、
    前記無機フィラーの平均粒径D50が0.5μm以上1.0μm未満であり、
    前記粒子状の重合体の算術平均粒径が0.20μm以上1.0μm以下であり、
    前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が9.5%以下であり、
    前記熱可塑性ポリマー含有層は、前記蓄電デバイスが備える電極に直接接着されるのに用いられる、
    蓄電デバイス用セパレータ。
  3. 前記粒子状の重合体が、(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  4. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成された無機フィラー多孔層と、前記無機フィラー多孔層の表面の少なくとも一部上に形成された熱可塑性ポリマー含有層と、を備える蓄電デバイス用セパレータであって、
    前記無機フィラー多孔層は、無機フィラーを含み、かつ、複数の孔を有し、
    前記熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含有し、
    前記熱可塑性ポリマーが粒子状の重合体を含み、
    前記粒子状の重合体の算術平均粒径が前記無機フィラー多孔層の平均孔径よりも大きく、
    前記無機フィラーの平均粒径D50が0.5μm以上1.0μm未満であり、
    前記粒子状の重合体の算術平均粒径が0.20μm以上1.0μm以下であ
    前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が9.5%以下であり、
    前記粒子状の重合体が、(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する、
    蓄電デバイス用セパレータ。
  5. 前記無機フィラー多孔層に含まれる前記粒子状の重合体の含有量が、前記無機フィラー多孔層の全体量に対して、20体積%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  6. 透気度が、10秒/100cc以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  7. 前記粒子状の重合体のガラス転移点が50℃以上であ前記熱可塑性ポリマー含有層による前記無機フィラー多孔層に対する表面被覆率が70%以下であり、前記熱可塑性ポリマー含有層は、前記基材の表面上にドット状に存在する層である、請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  8. 前記無機フィラー多孔層の厚さが5.0μm以下であり、前記無機フィラーが無機酸化物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  9. 前記蓄電デバイス用セパレータの130℃におけるTDでの熱収縮率が5.0%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  10. 前記基材の気孔率が40%より大きく、前記蓄電デバイス用セパレータの突刺強度が300gf/20μm以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  11. 正極と、請求項1~10のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータと、負極と、を含む積層体。
  12. 正極と、請求項1~10のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータと、負極とが捲回されてなる捲回体。
  13. 請求項11に記載の積層体又は請求項12に記載の捲回体と、電解液と、を含む蓄電デバイス。
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