JP6412760B2 - 蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents
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Description
電気エネルギー貯蔵装置等に好適に用いられるセパレータに関する。
蓄電デバイスが異常加熱した場合に速やかに電池反応を停止する「ヒューズ特性」、
高温になっても当初の形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する「ショート特性」
等が求められている。
このようなセパレータを構成する材料としては、例えば不織布、紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等が知られている。
このような事情のもと、セパレータの密着性を向上させる目的で、ポリオレフィンからなる微多孔膜に接着性ポリマーを塗工する試みが行われている(例えば特許文献1及び2参照)。
この点、特許文献3には、電極との密着性と、セパレータ表面のべたつきの抑制とを両立するために、2種類以上の樹脂バインダーを混合使用する技術が;
特許文献4には、2種類以上の樹脂バインダーのマイグレーションをそれぞれ制御する技術が;
特許文献5には、2種類の樹脂バインダーを重ねて塗工する技術が、
それぞれ開示されている。
本発明は、上記の現状を打開しようとしてなされたものである。従って、本発明の目的は、電極との密着性、多孔基材層との接着強度、及び無機充填材の結着強度に優れるとともに、べたつきを生じず、ハンドリング性にも優れ、更に良好なサイクル特性を示す蓄電デバイス用セパレータを、優れた生産性で提供することである。
即ち、本発明は以下のとおりである。
前記多孔層(B)の表面軟化温度が30〜60℃であり、
前記樹脂バインダー(b−1)中にガラス転移温度(Tg)が30℃以上の第1の樹脂バインダー(b−1−1)、及びガラス転移温度(Tg)が30℃未満の第2の樹脂バインダー(b−1−2)が含まれており、
前記多孔層(B)の外表面における樹脂バインダー(b−1)の官能基当量が0.5mmol/g以下であり、そして
前記多孔層(B)の外表面における樹脂バインダー(b−1)の官能基当量と、
前記多孔層(B)における全樹脂バインダー(b−1)の平均官能基当量と
の差が0.15mmol/g以上であることを特徴とする、蓄電デバイス用セパレータ。
[3] 前記第1の樹脂バインダー(b−1−1)の官能基当量が、前記第2の樹脂バインダー(b−1―2)の官能基当量よりも少ない、[1]又は[2]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[5] 電極と、
[1]〜[4]のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータと
が積層されて成ることを特徴とする、積層体。
[6] [5]に記載の積層体を具備することを特徴とする、蓄電デバイス。
本発明のセパレータを具備する蓄電デバイスは、高い電池容量を長期間維持することができ、例えばリチウムイオン二次電池、コンデンサー、キャパシタ等の蓄電デバイスのセパレータとして。好適に使用できる。
本発明における多孔基材層(A)について説明する。
上記多孔基材層(A)としては、電子伝導性が小さく、イオン伝導性を有し、有機溶媒に対する耐性が高く、孔径の微細なものが好ましい。
そのような多孔基材層(A)としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含む多孔基材膜;ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を含む多孔膜;ポリオレフィン系の繊維を織ったもの(織布);ポリオレフィン系の繊維の不織布;紙;並びに、絶縁性物質粒子の集合体が挙げられる。これらの中でも、塗工工程を経てセパレータを得る場合に塗工液の塗工性に優れ、セパレータの膜厚をより薄くして、電池等の蓄電デバイス内の活物質比率を高めて体積当たりの容量を増大させる観点から、ポリオレフィン樹脂を含む多孔基材膜(以下、「ポリオレフィン樹脂多孔基材膜」ともいう。)が好ましい。
中でも、電池用セパレータとした時のシャットダウン特性の観点から、ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの共重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等、
ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等、
共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンラバー等、が挙げられる。
多孔基材層(A)の膜厚は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、更に好ましくは3μm以上25μm以下である。機械的強度の観点から0.1μm以上が好ましく、電池の高容量化の観点から100μm以下が好ましい。多孔基材層(A)の膜厚は、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御すること等によって調整することができる。
平均孔径は、組成比、押出シートの冷却速度、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることにより調整することができる。
多孔基材層(A)がポリオレフィン樹脂多孔基材膜である場合、その気孔率は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることによって調整することができる。
(1)ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(3)ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形した後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(4)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法
等が挙げられる。
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られる多孔基材層(A)の強度等を向上させる観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる多孔基材層(A)が裂けにくくなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点からは同時二軸延伸が好ましい。また面配向の制御容易性の観点からは遂次二軸延伸が好ましい。
緩和操作は、膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。なお、MD、TD双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることが更に好ましい。緩和率は膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TD両方向で行ってもよいが、MD或いはTD片方だけ行ってもよい。
樹脂バインダー(b−1)及び無機充填材(b−2)を含む多孔層(B)について説明する。
前記多孔層(B)に使用する無機充填材(b−2)としては、特に限定されないが、耐熱性及び電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機充填材(b−2)としては、例えば、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、その他化合物が挙げられる。
マグネシウム化合物としては、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
その他化合物としては、酸化物系セラミックス、窒化物系セラミックス、粘土鉱物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラス繊維等が挙げられる。酸化物系セラミックスとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。窒化物系セラミックスとしては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等が挙げられる。粘土鉱物としては、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、複数を併用してもよい。
樹脂バインダー(b−1)の種類としては、セパレータとしたときにリチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
1)ポリオレフィン:例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンラバー、及びこれらの変性体;
2)共役ジエン系重合体:例えば、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物;
3)アクリル系重合体:例えば、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体;
5)含フッ素樹脂:例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体;
6)融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマー:例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル。特に、耐久性の観点から全芳香族ポリアミド、中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好適である。
中でも、電極とのなじみやすさの観点からは上記2)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記3)アクリル系重合体及び5)含フッ素樹脂が好ましい。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、特に1,3−ブタジエンが好ましい。
上記3)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物をモノマー単位として含む重合体である。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つを示す。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート;
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、上記2)共役ジエン系重合体は、他のモノマーとして上記(メタ)アクリル系化合物を共重合させて得られるものであってもよい。
ガラス転移温度の高い第1の樹脂バインダー(b−1−1)と、
ガラス転移温度の低い第2の樹脂バインダー(b−1−2)と、
を含むことが好ましい。
このような複数種の樹脂バインダー(b−1)を用いることにより、これらを含有する塗工液を多孔基材層(A)上に塗工して、乾燥により不動化・固化して多孔層(B)が形成される際に、樹脂バインダー(b−1)のマイグレーションが起こる。そのため、形成される多孔層(B)において、多孔基材層(A)側と多孔層(B)表面側とで樹脂バインダー(b−1)の機能を異ならせることが可能となるため、好ましい。
ガラス転移温度が低い第2の樹脂バインダー(b−1−2)のガラス転移温度は、30℃未満であり、好ましくは5℃以下であり、より好ましくは−10℃以下である。第2の樹脂バインダー(b−1−2)のガラス転移温度が30℃未満の場合、電極との密着性、及び多孔基材層との接着強度の観点から好ましい。
前記の官能基量とは、これらの官能基の合計量を言う。本明細書においては、これらの官能基が無機充填材(b−2)の有する官能基と反応して新たな結合を形成した場合であっても、元の官能基としてカウントする。
本実施態様のセパレータ中の多孔層(B)は、
多層基材層(A)と接触する側の面においては十分な接着性を有し、
外表面側(多孔基材層(A)との接触面の反対側)においては過度の粘着性(べたつき性)を示さないことが好ましい。従って、形成後の多孔層(B)においては、外表面側には、ガラス転移温度の高い第1の樹脂バインダー(b−1−1)が、
多層基材層(A)との接触面側には、ガラス転移温度の低い第2の樹脂バインダー(b−1−2)が、
それぞれ多く存在することが有利である。
本実施態様のセパレータ中の多孔層(B)は、
多層基材層(A)と接触する側の面においては十分な接着反応性を示し、
外表面側においては、得られるセパレータを保管する際の耐光性の観点から、反応性が過度に高くないことが好ましい。従って、多孔層(B)は、外表面側の官能基当量数が多く、多孔基材層(A)との接触面側の官能基当量数が少ないことが有利である。
以上の観点から、
ガラス転移温度の高い第1の樹脂バインダー(b−1−1)の官能基当量数がより少なく、
ガラス転移温度の低い第2の樹脂バインダー(b−1−2)の官能基当量数がより多い組み合わせとすることが、好ましい。
官能基含有モノマーとして、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー;
アクリルアミド、メタクリル酸アミド等のアミド基含有モノマー
等が、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー;
スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;
ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステルモノマー;
ビニルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー
等が、それぞれ挙げられる。これらの官能基含有モノマー、及び官能基非含有かつ非架橋性モノマーとしては、それぞれ、上記の例示のうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているモノマーの具体例としては、
ラジカル重合性の二重結合を2個有するモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等を;
ラジカル重合性の二重結合を3個有するモノマーとして、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を;
ラジカル重合性の二重結合を4個有するモノマーとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等を、
それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
第1の樹脂バインダー(b−1−1)について、
官能基含有モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは0.2〜2質量部%、更に好ましくは0.3〜1質量部%であり;
官能基非含有かつ非架橋性モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは86.0〜99.8質量%、より好ましくは93〜99.5質量%、更に好ましくは96〜99.2質量%であり;そして、
架橋性モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%である。
官能基含有モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは3〜7質量%であり;
官能基非含有かつ非架橋性モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは75〜99.4質量%、より好ましくは85〜98.7質量%、更に好ましくは90〜96.5質量%であり;そして
架橋性モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%である。
第1の樹脂バインダー(b−1−1)と第2の樹脂バインダー(b−1−2)との使用割合は、樹脂バインダー(b−1)の全量に対する第1の樹脂バインダー(b−1−1)の使用割合{(b−1−1)/(b−1)の質量比}として、0.05〜0.95とすることが好ましく、0.1〜0.7とすることがより好ましく、0.15〜0.5とすることが更に好ましい。0.05以上であることが、セパレータ最表面のべたつき性、及びハンドリング性の観点から好ましく、0.95以下であることが、電極との密着性、多孔基材層(A)との接着強度、及び無機充填材(b−2)の結着強度の観点から好ましい。
多孔層(B)の形成方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔基材層(A)の少なくとも片面に、無機充填材(b−2)と樹脂バインダー(b−1)とを、所定量で含む塗工液を塗工して多孔層(B)を形成する方法を挙げることができる。
ガラス転移温度(Tg)が30℃以上の第1の樹脂バインダー(b−1−1)、及びガラス転移温度(Tg)が30℃未満の第2の樹脂バインダー(b−1−2)の双方を含有する。また、本実施形態の好ましい態様においては、第1の樹脂バインダー(b−1−1)の官能基当量数は少なく、第2の樹脂バインダー(b−1−2)の官能基当量数は多い。そして、多孔層(B)を形成する際のバインダーのマイグレーションにより、
多孔層(B)の外表面側(多孔基材層(A)との接触面の反対側)には、第1の樹脂バインダー(b−1−1)が多く存在し、
多孔層(B)の多孔基材層(A)との接触面側には、第2の樹脂バインダー(b−1−2)が多く存在することとなる。従って、多孔層(B)の外表面における樹脂バインダー(b−1)の官能基当量は、多孔層(B)における全樹脂バインダー(b−1)の平均官能基当量よりも少ないこととなる。
前記多孔層(B)の外表面における樹脂バインダー(b−1)の官能基当量と、
前記多孔層(B)における全樹脂バインダー(b−1)の平均官能基当量と
の差は、0.15mmol/g以上であることが好ましく、0.25mmol/g以上であることがより好ましい。
「多孔層(B)の外表面における樹脂バインダー(b−1)の官能基当量」とは、多孔層(B)の外表面から厚み方向に0〜50%の範囲に存在する樹脂バインダー(b−1)が有する官能基当量の平均値を言う。
多孔基材層(A)と、無機充填材(b−2)及び樹脂バインダー(b−1)を含む多孔層(B)とを有する上記セパレータは、耐熱性に優れ、シャットダウン機能を有しているので電池の中で正極と負極を隔離する電池用セパレータに適している。
特に、上記セパレータは高温においても短絡し難いため、高起電力電池用のセパレータとしても安全に使用できる。
上記セパレータの透気度は、10秒/100cc以上650秒/100cc以下であることが好ましく、より好ましくは10秒/100cc以上500秒/100cc以下、更に好ましくは30秒/100cc以上450秒/100cc以下、特に好ましくは50秒/100cc以上400秒/100cc以下である。透気度が10秒/100cc以上であると電池用セパレータとして使用した際の自己放電が少なくなる傾向にあり、650秒/100cc以下であると良好な充放電特性が得られる傾向にある。
正極材料としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、スピネル型LiMnO4、オリビン型LiFePO4等のリチウム含有複合酸化物等が、負極材料としては、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種合金材料等が挙げられる。
なお、上記外装体としては、電池缶や袋状のフィルムを用いることができる。
(1)多孔基材層(A)の気孔率(体積%)
多孔基材層(A)から10cm×10cm角の試料を切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を測定し、膜密度を0.95(g/cm3)として、下記数式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/膜密度)/体積×100
JIS P−8117に準拠し、(株)東洋精機製作所製のガーレー式デンソメータG−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径が11.3mmの試料ホルダーにて多孔基材層(A)を固定した。25℃雰囲気下で、前記固定された多孔基材層(A)の中央部を、先端の曲率半径が0.5mmの針を用いて、突刺速度2mm/secにて突刺試験を行った。この時の最大突刺荷重を突刺強度(g)とした。
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、樹脂多孔膜の透気度測定における空気の流れはクヌーセンの流れに、多孔膜の透水度測定における水の流れはポアズイユの流れに、それぞれ従うと仮定する。
平均孔径d(μm)及び曲路率τa(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101,325Pa)、気孔率ε(%)、及び膜厚L(μm)から、下記数式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
τa= (d×(ε/100)×ν/(3L×Ps×Pgas))1/2
Rgas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101,325))
Rliq=透水度/100
透気度及び透水度は、それぞれ、次のように求められる。
[透気度]
ここでいう透気度は、多孔基材層(A)について前記「(2)セパレータの透気度」の記載に準拠して測定することにより、透気抵抗度として得ることができる。
[透水度]
直径41mmのステンレス製の透液セルに、予めエタノールに浸しておいた多孔基材層(A)膜をセットし、該膜のエタノールを水で洗浄した。その後、約50,000Paの差圧で水を透過させ、120sec経過した際の透水量(cm3)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、空気の分子速度νは、気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、及び空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から、下記数式を用いて求められる。
ν={(8R×T)/(π×M)}1/2
孔数B (個/μm2) は、下記数式より求めることができる。
B=4×(ε/100)/(π×d2×τa)
(5)−1 多孔基材層(A)及びセパレータの厚み(μm)
多孔基材層(A)及びセパレータから、それぞれ、10cm×10cm角のサンプルを切り出し、格子状に選んだ9箇所(3点×3点)の膜厚を、微小測厚器(東洋精機製作所(株) タイプKBM)を用いて室温23±2℃において測定した。9箇所の測定値の平均値を、多孔基材層(A)又はセパレータの厚み(μm)とした。
多孔層(B)の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用い、セパレータの断面観察により測定した。サンプルのセパレータを1.5mm×2.0mm程度に切り取り、ルテニウム染色した。ゼラチンカプセル内に染色サンプル及びエタノールを入れて液体窒素により凍結させた後、ハンマーでサンプルを割断した。サンプルをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30,000倍にて観察し、多孔層の厚さを算出した。この時、SEM画像において、多孔基材層(A)断面の多孔構造が見えない最表面領域を、多孔層(B)の領域とした。
セパレータの表面と黒ラシャ紙を合わせて、カレンダーを用い、ロール温度20℃、カレンダーロール間線圧10kgf/cmの条件下で圧着させた後、両者引き離して、黒ラシャ紙のセパレータへの転写有無を確認した。転写が確認されなかった場合、カレンダーのロール温度を5℃上昇させ、同様の試験を実施した。以降、5℃刻みでロール温度を上昇させつつ同様の試験を繰り返し、黒ラシャ紙のセパレータへの転写が見られた時の温度を、多孔層(B)の表面軟化温度とした。
樹脂バインダー(b−1)含有ラテックスを、アルミ皿に適量とり、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥皮膜を得た。得られた乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記の通りとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。−70℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
−70℃から毎分15℃の割合で300℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSC(DSCの微分)のデータを取得。DDSCのピークトップ温度をガラス転移温度とした。
顕微FT−IRシステム Nicolet iN10(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用い、顕微IR−ATR(Attenuated Total Reflection(全反射測定法))法によって、多孔層(B)の測定を行った。顕微IR−ATR法は、赤外光の多孔層へ進入角度を変えることによって、外表面から所定深深度までの範囲についてのIRスペクトルを得ることができる。
本実施例においては、以下の方法によった。
先ず、測定対象の多孔層(B)について、赤外光の進入角度を変量しながら赤外測定を行い、多孔基材層(A)の主成分であるポリエチレンの吸収が検出される侵入角度を調べた。そして、前記角度よりも1°少ない侵入角度で測定し得られたIRスペクトルより算出した官能基当量を、多孔層(B)の平均官能基当量とし、この角度の1/2の角度で測定し得られたIRスペクトルより算出した官能基当量を、多孔層(B)の上半分領域の官能基当量(外表面における官能基当量)とした。
ここで、IRスペクトルから官能基当量を定量するには、濃度既知の試料を用いて作成した検量線を用いて行った。
マニピュレータを用いて、セパレータより、多孔層の上半分及び下半分を掻き取って多孔層(B)を分離し、それぞれを試料とした。得られた粉体試料について、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記のとおりとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。−70℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
−70℃から毎分15℃の割合で300℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得した。
上半分及び下半分のDDSCデータについて上記の処理を行い、各領域における第1の樹脂バインダー(b−1−1)と第2の樹脂バインダー(b−1−2)との比率を求め、
第1の樹脂バインダー(b−1−1)の内の上半分領域に存在する割合、及び
第2の樹脂バインダー(b−1−2)の内の下半分領域に存在する割合
を、それぞれ算出した。
セパレータと電極(負極)との密着性は、以下の手順で評価した。
(負極の作製)
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)、及びスチレン−ブタジエンコポリマーラテックス(粒径:80nm、ガラス転移温度:−40℃)1.7質量%(固形分換算)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚み12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗工し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を得た。この時、負極の活物質塗工量は106g/m2、活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにした。
上記方法により得られた負極を、幅20mm、長さ40mmにカットした。この負極上に、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)を負極が浸る程度にたらした上にセパレータを重ね、積層体を得た。この積層体をアルミジップに入れ、80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行った。
その後、積層体を取り出し、セパレータを電極から剥がして目視による観察を行い、以下の基準により評価した。
(評価基準)
○(良好):セパレータ面積の30%以上に負極活物質が付着した場合
△(可):セパレータ面積の10%以上30%未満に負極活物質が付着した場合
×(不良):セパレータ面積の10%未満に負極活物質が付着した場合
被着体として正極集電体(冨士加工紙(株)アルミ箔20μm)を30mm×150mmに切り取ったものを、セパレータと重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体を、2枚のテフロン(登録商標)シート(ニチアス(株)ナフロンPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート TOMBO−No.9000)により挟み、プレス条件を下記のように変量してそれぞれプレスを行うことにより、プレス条件の異なる2種の試験用サンプルを得た。
条件1)温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧
条件2)温度80℃、圧力10MPaで3分間加圧
得られた結果に基づいて、下記の評価基準でセパレータの剥離強度を評価した。
[ベタツキ性]
条件1)のプレス後のサンプルについて、
◎(優良):剥離強度が4gf/cm以下であった場合
○(良好):剥離強度が4gf/cmを超えて6gf/cm以下であった場合
△(可):剥離強度が6gf/cmを超えて8gf/cm以下であった場合
×(不良):剥離強度が8gf/cmを超得た場合
とし、ベタつき性、及びハンドリング性の指標とした。
[塗工層剥離強度]
条件2)のプレス後のサンプルについて、
◎(優良):剥離強度が15gf/cm以上であった場合
○(良好):剥離強度が10gf/cm以上15gf/cm未満であった場合
×(不良):剥離強度が10gf/cm未満であった場合
とし、電極との密着性、多孔基材層(A)との接着強度、及び無機充填材(b−2)の結着強度の指標とした。
(12−1)評価用サンプルの作製
[電極の作製]
負極を前記「(10)セパレータと電極との密着性」における「(負極の作製)」と同様にして作製した。
正極は、以下のようにして作製した。
(正極の作製)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイト及びアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%ずつ、並びにバインダーとしてポリフッ化ビニリデン3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚み20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗工し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、正極を得た。この時、正極の活物質塗工量は250g/m2、活物質嵩密度は3.00g/cm3になるようにした。
[非水電解液の調整]
非水電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/2(体積比)からなる混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより調製した。
[セパレータの作製]
実施例及び比較例で得られた各セパレータを60mmに切断して帯状にすることにより、評価用セパレータを作製した。
[電池の組立て]
(12−1)で得られた、電極及びセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に重ね、巻取張力を250gf、捲回速度を45mm/秒として、渦巻状に複数回捲回して、電極積層体を作製した。ここで、セパレータは、多孔層(B)を形成した面を負極側として積層した。この電極積層体を、外径18mm、高さ65mmのステンレス製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製タブを容器蓋端子部に、負極集電体から導出したニッケル製タブを容器壁に溶接した。その後、真空下、80℃で12時間の乾燥を行った。アルゴンボックス内において、組立てた電池容器内に前記の非水電解液を注入し、封口することにより、評価用電池を作製した。
前記のように組立てた電池につき、1/3Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を8時間行い、その後1/3Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に、1Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を3時間行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。最後に1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電をした後、4.2Vの定電圧充電を3時間行って、前処理を終了した。
なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表す。
上記前処理を行った電池につき、温度25℃の条件下で、放電電流1Aで放電終止電圧3Vまで放電を行った後、充電電流1Aで充電終止電圧4.2Vまで充電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する200サイクル後の容量保持率を調べ、以下の基準でサイクル特性を評価した。
(評価基準)
◎(優良):容量保持率が95%以上100%以下であった場合
○(良好):容量保持率が90%以上95%未満であった場合
×(不良):容量保持率90%未満であった場合
(製造例1a)アクリル系ポリマーラテックスの製造
撹拌機、還流冷却器、滴下槽、及び温度計を取り付けた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(商品名、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.085質量部(固形分換算)と、「アデカリアソープSR1025」(商品名、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.085質量部(固形分換算)と、を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を0.15質量部(固形分換算)添加した。
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、アクリル系ポリマー(1a)は、粒子径161nmの球形、単分散であることが分かった。また、得られたアクリル系ポリマー(1a)のガラス転移温度は90℃、官能基当量(エポキシ基+カルボキシル基+アミド基の当量合計)は0.14mmol/gであった。
以下の成分の使用量を以下に記載したとおりに変更した他は、前記製造例1aと同様に操作することにより、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマー(1b)を含有するラテックスを得た。
[初期仕込み]
アクアロンKH1025(25質量%水溶液):0.125質量部(固形分換算)
アデカリアソープSR1025(25質量%水溶液):0.125質量部(固形分換算)
過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液):0.15質量部(固形分換算)
[乳化液中のモノマー]
メタクリル酸メチル:38.5質量部
アクリル酸n−ブチル:19.6質量部
アクリル酸2−エチルヘキシル:31.9質量部
メタクリル酸:0.1質量部
アクリル酸:0.1質量部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:2質量部
アクリルアミド:5質量部
メタクリル酸グリシジル:2.8質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート:0.7質量部
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、アクリル系ポリマー(1b)は、粒子径121nmの球形、単分散であった。また、得られたアクリル系ポリマー(1b)の官能基当量(エポキシ基+カルボキシル基+アミド基の合計当量)は1.08mmol/g、ガラス転移温度は−20℃であった。
以下の成分の使用量を以下に記載したとおりに変更した他は、前記製造例1aと同様に操作することにより、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマー(1c)を含有するラテックスを得た。
[初期仕込み]
アクアロンKH1025(25質量%水溶液):0.07質量部(固形分換算)
アデカリアソープSR1025(25質量%水溶液):0.07質量部(固形分換算)
過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液):0.12質量部(固形分換算)
[乳化液中のモノマー]
メタクリル酸メチル:81.5質量部
アクリル酸n−ブチル:7質量部
アクリル酸2−エチルヘキシル:2質量部
メタクリル酸:1質量部
アクリル酸:1質量部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:1.5質量部
アクリルアミド:4質量部
メタクリル酸グリシジル:2質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート:0.5質量部
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、アクリル系ポリマー(1c)は、粒子径230nmの球形、単分散であった。また、得られたアクリル系ポリマー(1c)のガラス転移温度は90℃、官能基当量(エポキシ基+カルボキシル基+アミド基の合計当量)は0.85mmol/gであった。
撹拌機を備えた温度調節可能な反応器の内部を予め窒素置換した後、イオン交換水850質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量部、水酸化ナトリウム0.1質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.5質量部、及び硫酸第二鉄0.0005質量部を仕込んだ。その後、スチレン15質量部、メタクリル酸メチル30質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル51質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部、イタコン酸2質量部からなるモノマー混合物を全量加えて、重合系内温度を90℃に調節した後、過硫酸アンモニウム1質量部(固形分換算)及びイオン交換水50質量部からなる均一な開始剤水溶液を一括添加した。その後2時間、重合系内温度を90℃に保持してから重合系内温度を下げ、シードラテックスAを得た。得られたシードラテックスAの固形分は約10質量%、ポリマーの平均体積粒子径は16nm、ガラス転移温度は2℃、及び質量平均分子量(Mw)は7万であった。
濾過後のラテックスにアンモニア水溶液(アンモニア含有量25質量%)を添加してpH=8に調整した後、未反応モノマーを除去した。更にこれを濃縮した後、ポリアクリル酸ナトリウム0.5重量部(固形分換算)及びアンモニア水溶液(アンモニア含有量25質量%)を加えることにより、スチレン−ブタジエン系ポリマー(1d)を含有する固形分濃度50%、pH=8のラテックスを得た。
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、スチレン−ブタジエン系ポリマー(1d)は、粒子径200nmの球形、単分散であった。また、このスチレン−ブタジエン系ポリマー(1d)の官能基当量(エポキシ基+カルボキシル基+アミド基の合計当量)は0.21mmol/g、ガラス転移温度は70℃であった。
前記製造例1dと同様にして得たシードラテックスAを用い、該シードラテックスA及び各モノマー、並びに以下に記載の添加剤の使用量をそれぞれ以下のとおりとした他は、前記製造例1d後段と同様に操作することにより、固形分濃度50質量%のスチレン−ブタジエン系ポリマー(1e)を含有するラテックスを得た。
[初期仕込み]
シードラテックスA:0.8質量部(固形分換算)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1質量部(固形分換算)
[一括添加モノマー]
スチレン:40質量部
ブタジエン:38質量部
メチルメタクリレート:10質量部
アクリロニトリル:5質量部
アクリル酸:1質量部
メタクリル酸グリシジル:2質量部
イタコン酸:2質量部
アクリルアミド:2質量部
最終重合率は98%であった
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、スチレン−ブタジエン系ポリマー(1e)は、粒子径80nmの球形、単分散であった。また、このスチレン−ブタジエン系ポリマー(1e)の官能基当量(エポキシ基+カルボキシル基+アミド基の合計当量)は0.72mmol/g、ガラス転移温度は−40℃であった。
[多孔基材層(A)の製造]
体積平均分子量70万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と体積平均分子量25万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と体積平均分子量40万のホモポリマーのポリプ口ピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリマー混合物99質量部に対して、酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フロピオネー卜]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマ一等混合物を得た。
得られたポリマ一等混合物は、窒素置換した後に、窒素雰囲気下でフィーダーにより、二軸押出機へ供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5m2/s)を、プランジャーポンプにより押出機シリンダーに注入した。溶融混練して押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの量比が67質量%(ポリマー等混合物濃度が33質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリユ一回転数100rpm、及び吐出量12kg/hとして、混練を行った。
これら一連の処理の結果、多孔基材層(A)として、膜厚17μm、気孔率60%、透気度84秒/100cc、平均孔径d=0.057μm、曲路率τa=1.45、孔数=165個/μm2、突刺強度が25μm換算で5,679fのポリオレフィン樹脂多孔基材膜(A1)を得た。
無機充填材(b−2)として、焼成カオリン(カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)を主成分とする湿式カオリンを高温焼成処理したもの、平均粒径1.8μm)を92.5質量部と、
樹脂バインダー(b−1)として、
前記製造例1aで得たアクリル系ポリマー(1a)ラテックスを2質量部(固形分換算)、及び
前記製造例1bで得たアクリル系ポリマー(1b)ラテックス5質量部(固形分換算)と、
ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468)0.5質量部(固形分換算)と
を180質量部の水に均一に分散させることにより、塗工液を調製した。
前記[ポリオレフィン樹脂多孔基材膜(A1)の製造]で得たポリオレフィン樹脂多孔基材膜(A1)の片面に、前記[塗工液の調製]で得た塗工液を、マイクログラビアコーターにより塗工した。得られた塗膜を、60℃において乾燥して水を除去し、ポリオレフィン樹脂多孔基材膜(A1)の片面に厚み2μmの多孔層(B)を形成することにより、セパレータを得た。
得られたセパレータについて、上記方法により評価した。得られた結果を表1に示した。
前記実施例1において、樹脂バインダー(b−1)として、表1に記載のものを各所定量使用した他は、実施例1と同様にして塗工液を調製し、セパレータを製造した。
得られたセパレータについて、上記方法により評価した。得られた結果を表1に示した。
Claims (7)
- 多孔基材層(A)と、2種類以上の樹脂バインダー(b−1)及び無機充填剤(b−2)を含む多孔層(B)とを有し、
前記多孔層(B)の表面軟化温度が30〜60℃であり、
前記樹脂バインダー(b−1)中に、官能基当量が0.01〜1.00mmol/gであってガラス転移温度(Tg)が30℃以上の第1の樹脂バインダー(b−1−1)、及び官能基当量が0.3〜5mmol/gであってガラス転移温度(Tg)が30℃未満の第2の樹脂バインダー(b−1−2)が含まれており、
前記多孔層(B)の外表面から厚み方向に0〜50%の範囲に存在する樹脂バインダー(b−1)の官能基当量が0.5mmol/g以下であり、そして
前記多孔層(B)の外表面から厚み方向に0〜50%の範囲に存在する樹脂バインダー(b−1)の官能基当量と、
前記多孔層(B)における全樹脂バインダー(b−1)の官能基当量と
の差が0.15mmol/g以上であることを特徴とする、蓄電デバイス用セパレータ。 - 多孔基材層(A)と、2種類以上の樹脂バインダー(b−1)及び無機充填剤(b−2)を含む多孔層(B)とを有し、
前記多孔層(B)の表面軟化温度が30〜60℃であり、
前記樹脂バインダー(b−1)中にガラス転移温度(Tg)が30℃以上の第1の樹脂バインダー(b−1−1)、及びガラス転移温度(Tg)が30℃未満の第2の樹脂バインダー(b−1−2)が含まれており、
前記多孔層(B)の外表面から厚み方向に0〜50%の範囲に存在する樹脂バインダー(b−1)の官能基当量が0.5mmol/g以下であり、そして
前記多孔層(B)の外表面から厚み方向に0〜50%の範囲に存在する樹脂バインダー(b−1)の官能基当量と、
前記多孔層(B)における全樹脂バインダー(b−1)の官能基当量と
の差が0.15mmol/g以上0.42mmol/g以下であることを特徴とする、蓄電デバイス用セパレータ。 - 前記第2の樹脂バインダー(b−1−2)の官能基当量が0.5〜5mmol/gであり、
前記第1の樹脂バインダー(b−1−1)の官能基当量が、前記第2の樹脂バインダー(b−1―2)の官能基当量よりも少なく、前記樹脂バインダー(b−1−1)の官能基当量と前記樹脂バインダー(b−1−2)の官能基当量との差は0.3mmol/g以上であり、
前記樹脂バインダー(b−1)の全量に対する前記第1の樹脂バインダー(b−1−1)の使用割合が質量比で0.1〜0.7である、
請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。 - 前記官能基が、エポキシ基、カルボキシル基、及びアミド基から成る群より選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセパレータ。
- 透気度が10〜500秒/100ccの範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 電極と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータと
が積層されて成ることを特徴とする、積層体。 - 請求項6に記載の積層体を具備することを特徴とする、蓄電デバイス。
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