JP6207769B1 - 固定子、電動機、固定子の製造方法および電動機の製造方法 - Google Patents
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Abstract
固定子は、巻線が巻装固定されるティース部(5)と、ティース部(5)に対して薄肉接続部(1a,1b)を介して一端部を連結され、磁路を構成するコアバック部(3a,3b)とを備える。ティース部(5)とコアバック部(3a,3b)は、薄肉接続部(1a,1b)を開閉することで、開状態と閉状態とをとることが可能である。開状態では、ティース部(5)とコアバック部(3a,3b)は、鈍角をなし、閉状態では、ティース部(5)とコアバック部(3a,3b)は当接し、鋭角をなす。
Description
本発明は、固定子、電動機、固定子の製造方法および電動機の製造方法に係り、特に固定子へのコイルの装着に関する。
従来、電動機の固定子は、通常、コアバック部と、ティース部と、コアバック部およびティース部に囲まれたスロットとを有する固定子鉄心と、ティース部に別々に巻装されたコイルとを備える。コアバック部は、ヨーク部とも呼ばれ、コイルの巻装されるティース部の外側の幅広部をいう。内側に先端ヨーク部を有する固定子もある。
電動機の固定子では、性能向上のために、コイルの占積率すなわち巻線密度を上げることが重要な課題となっている。そのためには電機子コア内における磁路を最適化し、無駄な磁路を構成する鉄心部を削減してそこにコイルを巻き込むことが求められる。
磁路を構成するコアバック部の形状を最適化するとコアバック部とティース部の付け根にアンダーカット部が発生することが知られている。アンダーカット部は、コアバック部の下で、コアバック部とティース部とが鋭角で交わる部分に形成される領域である。
従来の一般的な巻線方法は、固定子鉄心の周囲を巻線用のノズルが周回運動しながら巻線を行うノズル巻線方法が主流であり、このノズル巻線方法は、高速かつ簡便に巻線できる。しかしながら、アンダーカット部には巻線を施すことができず、巻線のコイル占積率を向上するのは困難であった。
アンダーカット部への巻線を実施する方法として、例えば特許文献1に示すように、巻線ノズル角度を巻線位置により変化させ、巻線実施する方法が開示されている。
また、一般的な汎用巻線機を使用し占積率を向上させることのできる鉄心構造として、特許文献2に示すように、ティース部と外周部とを薄肉部を介してL字型に結合したものをリング状に複数個組み合わせ、ティース部への巻線の装着を容易に行うことができる固定子を得る技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された従来の鉄心構造によれば、特殊な巻線機が必要となり、汎用巻線機に比べ、高価でかつ巻線に際して制御が複雑となる。
特許文献2に記載された従来の鉄心構造によれば、コアバックの初期位置が最終形状位置から略90°ずれた場所にあるため、コアバックを閉じる際の鉄心変形量が大きく、鉄心の薄肉部強度が必要となる。また鉄心製造時の加工精度およびコアバックの折り曲げ精度が求められる。
また、特許文献2については、ボビンに巻線した空芯コイルを鉄心に挿入することから、ボビン強度が必要となる。そのため、ボビン厚さが増すことにより占積率が減少する。また空芯コイルの精度が必要となるため、ボビン製造精度あるいは巻線機のテンション制御が必要となるという問題もあった。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、巻線の占積率が高く、製造が容易な、固定子を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る固定子は、電磁鋼板で構成され、巻線が巻装されるティース部と、ティース部に対して薄肉接続部を介して一端部を連結され、磁路を構成するコアバック部とを有する分割鉄心を複数個備える。ティース部と前記コアバック部の中心線は電磁鋼板の素材上で鈍角をなし、ティース部とコアバック部との間に、ティース部の中心線に対して対称に配された溝を有し、溝内に配された薄肉接続部を支点にしてコアバック部は溝内を回動可能で、かつティース部に当接可能であり、ティース部とコアバック部とが当接部で鋭角をなし、巻線はティース部の鋭角をなす当接部まで巻回されることを特徴とする。
本発明によれば、巻線の占積率が高く、製造が容易な、固定子を得ることができる。
以下に、本発明の実施の形態に係る固定子、電動機、固定子の製造方法および電動機の製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。また、平面図であっても、図面を見易くするためにハッチングを付す場合がある。一方断面図であっても、図面を見易くするためにハッチングを付さない場合がある。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の電動機用の固定子の分割鉄心を示す断面図である。図2は、図1の固定子の分割鉄心の巻線を装着する前の状態を示す断面図である。図3(a)から(c)は、実施の形態1の固定子の分割鉄心の要部拡大図であり、(a)は、断面図、(b)は、(a)のIIIb−IIIb断面図、(c)は、(a)のIIIc−IIIc断面図である。図4は、実施の形態1の固定子を用いた電動機を示す説明図である。
図1は、実施の形態1の電動機用の固定子の分割鉄心を示す断面図である。図2は、図1の固定子の分割鉄心の巻線を装着する前の状態を示す断面図である。図3(a)から(c)は、実施の形態1の固定子の分割鉄心の要部拡大図であり、(a)は、断面図、(b)は、(a)のIIIb−IIIb断面図、(c)は、(a)のIIIc−IIIc断面図である。図4は、実施の形態1の固定子を用いた電動機を示す説明図である。
実施の形態1の電動機の固定子は、分割鉄心10dの構成に特徴を有するものである。固定子を構成する分割鉄心10dは、薄肉接続部1a,1bおよび、溝2a,2bを挟んで接続された、コアバック部3a,3bとティース部5とを備える。ティース部5には、巻線6が巻装固定される。ティース部5とコアバック部3a,3bは、薄肉接続部1a,1bの形成された溝2a,2bを開閉することで、開状態または閉状態をとることが可能である。ティース部5とコアバック部3a,3bとの間に配された薄肉接続部1a,1bを支点にしてティース部とコアバック部は回動して、当接可能であり、ティース部とコアバック部とが当接部で鋭角をなす。
実施の形態1の固定子の分割鉄心10dは、図1に示すように、閉状態では、ティース部5とコアバック部3a,3bは当接し、ティース部5の中心線であるティース部中心線5oとコアバック部3a,3bの中心線であるコアバック部中心線3oとのなす角θcが直角をなす。コアバック部中心線3oとのなす角θcとは、正確にはティース部中心線5oと、その交点におけるコアバック部中心線3oの接線とのなす角である。またコアバック部3a,3bは閉じた状態であり、2つの溝2a,2bはなく、2つの薄肉接続部1a,1bは切り欠き1sに吸収される。図1では、コアバック部3a,3bとティース部5におけるコアバック部3a,3bとティース部5のなす角度θcoは鋭角となっておりアンダーカット部4a,4bを形成している。コアバック部3a,3bとティース部5の当接部におけるコアバック部3a,3bとティース部5のなす角度θcoとは、当該当接部の内縁の点におけるコアバック部3a,3bの内周とティース部5の側辺とのなす角をいうものとする。ここでもコアバック部3a,3bの内周は円弧であるため、当接点である内縁の点における接線とティース部5の側辺とのなす角を、コアバック部3a,3bとティース部5のなす角度θcoというものとする。
一方、図2に分割鉄心の打ち抜き直後の状態を示すように、開状態では、ティース部5とコアバック部3a,3bは、ティース部中心線5oとコアバック部中心線3oとのなす角θoが鈍角をなす。つまりコアバック部3a,3bとティース部5とのなす角度は鈍角となっている。なお、切欠き1sは折り曲げ時の逃げ部であり、折り曲げ時に余肉の吸収領域となる。開状態の薄肉接続部1a,1bの周りの要部拡大図を図3(a)から図3(c)に示す。ティース部5とコアバック部3a,3bとの間は、全体としては図3(c)に示すように、溝2a,2bで離間しているが、一部が図3(b)に示すように、薄肉接続部1a,1bからなる連結部を構成し、接続されている。溝2a,2bの深さつまり連結部の連結幅および薄肉接続部1a,1bの厚さは、連結強度と、折り曲げの容易性との両方を満足するよう、考慮して決定される。図3(b)および図3(c)では、ティース部5とコアバック部3aとの境界部のみを示しているが、薄肉接続部1a,1bおよび溝2a,2bはティース部中心線5Oに対して対称に形成され、連結強度および折り曲げの容易性は両側で等しく構成されている。
電動機100は、図4に示すように、コアバック部3a,3bとティース部5とを備えるT字形状の分割鉄心10dを、複数接続して円筒状に形成して固定子10を構成し、固定子で囲まれた中心部に回転子20を配して構成される。
分割鉄心10dは、電磁鋼板からなる複数層の分割鉄心構造体を積層して形成されている。実施の形態1の電動機の固定子は、固定子鉄心を構成する各分割鉄心10dのティース部5に図示しない絶縁部材を介して巻線6が巻装されている。
分割鉄心10dのティース部5の軸方向すなわちティース部中心線5O方向の両端部および側面の壁部は、絶縁紙または絶縁塗装により形成される非膨張性の絶縁部材により被覆される。巻線6が、絶縁部材の上からティース部5に巻装される。
ティース部5に巻線6が巻装され、巻装された巻線6の外側を必要に応じて熱硬化性樹脂で被覆された9個の分割鉄心10dは、薄肉接続部1a,1bを折り込まれ、溝2a,2bが消失して、ティース部5にコアバック部3a,3bが密着され固着される。図4は円筒状の固定子鉄心を備えた電動機を示す図である。円筒状の固定子鉄心の径方向の外側には、図示しない枠体が装着され、固定子鉄心を備えた電動機が形成される。
次に、実施の形態1の固定子の製造方法について説明する。図5から図7は、実施の形態1の固定子の製造工程を示す工程断面図、図8は、実施の形態1の固定子の斜視図、図9は、実施の形態1の固定子の製造工程を示すフローチャートである。まず、図9の開状態のコアを形成するステップS101で、図5に示すように、プレス加工により、ティース部5とコアバック部3a,3bは、ティース部中心線5oとコアバック部中心線3oとのなす角θoが鈍角をなす分割鉄心構造体を成型する。ティース部5とコアバック部3a,3bとの間は、全体的には、溝2a,2bで離間しているが、一部が薄肉接続部1a,1bからなる連結部を構成し、接続されている。コアを積層するステップS102で、薄型抜きして得られた分割鉄心構造体を組み上げ、分割鉄心10dを形成する。この後、組み上げた分割鉄心10dに対地間の絶縁処理を施す。絶縁処理としては絶縁部材を分割鉄心10dの軸すなわちティース部中心線5o方向の両端に相当する部分に取り付ける処理がある。この他にも、絶縁塗装を分割鉄心10d全体に施す処理、又は絶縁部材として絶縁紙を分割鉄心10d側面部に貼り付ける処理が絶縁処理として挙げられる。さらに、前述した複数の処理のうち2以上を組み合わせて絶縁処理としてもよい。
続いて、図9のコイルを巻装するステップS103で、図6に示すように、分割鉄心10dのティース部5に絶縁材料で被覆された導線からなる巻線6を巻装することにより、コイルとしてティース部5の全幅にわたって装着する。なお、巻線6は、銅線からなる心線に、絶縁材料の被覆、本実施の形態ではエナメル被覆を形成することで、表面は絶縁化されている。巻線6を構成する導線は銅に限定されることなく導体で構成される導線であればよい。
次いで、図9のコアを閉状態にするステップS104で、薄肉接続部1a,1bを折りこみ、溝2a,2bを消失させて、図7に示すように、ティース部5にコアバック部3a,3bを密着させる。巻線6が巻装されて閉状態とした分割鉄心10dを図8に斜視図で示す。分割鉄心10dは、ティース部5にコアバック部3a,3bが密着し、電動機100に組み込むのに望ましい磁路を形成する形状となっている。図8で矢印Aは分割鉄心の積層方向を示す。このようにして得られた分割鉄心10dを隣接するコアバック部3a,3b同士で9個溶接により固着し、円筒状にし、図4に示したように固定子鉄心を構成する。そして回転子20などの部品を装着し電動機100が得られる。
実施の形態1の固定子によれば、開状態においては、コアバック部3a,3bとティース部5の当接部において、いずれの分割鉄心におけるコイルターンも、ティース部に対して鈍角をなすように空間が開放されているため、一般的な巻線方法で巻線の装着が可能である。巻線は後に鉄心を折り曲げた際に構成されるアンダーカット部の形状に合わせた形で作業性良く実施可能である。分割鉄心のアンダーカット部にもコイルを配置することで占積率を改善させることができる。分割鉄心は、コアバック部に薄肉接続部と溝を設けた形でコアバック部とティース部のなす角が鈍角となるよう成型される。これにより従来の巻線機であってもアンダーカットにあたる部位に巻線を固定することが可能となる。
開状態のティース部と薄肉接続部とコアバック部とは、巻線の巻装し得る程度の角度で形成されているため、薄肉接続部の厚さを削減できることから曲げた際に発生する空隙を抑制できる。また、強度を考慮し、1本の溝内に薄肉接続部を2カ所あるいは2カ所以上配設してもよい。溝の両端に薄肉接続部を設けることで、それぞれ分割鉄心の内側と外側に曲げ込むようにすることで、平坦性を維持することができる。また、巻線固定後、分割鉄心の薄肉接続部を折り曲げることでコアバック部が望ましい形状で形成されるが、折り曲げによる変形量を、最小限に抑えることができるため、薄肉接続部の割れは発生しにくい。従って分割鉄心材料として、高強度材料を使用する必要もなく折り曲げ時の破損あるいは異物の噛みこみを抑制することができる。また効率改善に効果がある。
実施の形態1では、分割鉄心はプレス加工により成型したが、ワイヤカットあるいはレーザカッターでの切り抜きなどの方法で製造してもよい。
実施の形態2.
図10は実施の形態2の固定子の分割鉄心を示す断面図である。実施の形態1では、薄肉接続部1a,1bは、切欠き1sから鋭角をなして互いに拡がる方向に形成されたが、実施の形態2として、薄肉接続部11a,11bは、2個離間して設けられた例について説明する。切欠き11sは、実施の形態1の切欠き1sと同様、折り曲げ時の逃げ部を構成する。
図10は実施の形態2の固定子の分割鉄心を示す断面図である。実施の形態1では、薄肉接続部1a,1bは、切欠き1sから鋭角をなして互いに拡がる方向に形成されたが、実施の形態2として、薄肉接続部11a,11bは、2個離間して設けられた例について説明する。切欠き11sは、実施の形態1の切欠き1sと同様、折り曲げ時の逃げ部を構成する。
実施の形態2の電動機の固定子を構成する分割鉄心10dは、互いに離間して設けられた薄肉接続部11a,11bおよび、溝12a,12bを挟んで接続された、コアバック部13a,13bとティース部15とを備える。ティース部15には、図示しない巻線が巻装固定される。ティース部15とコアバック部13a,13bは、実施の形態1と同様、薄肉接続部11a,11bを開閉することで、開状態と閉状態とをとることが可能である。
実施の形態2の固定子の分割鉄心10dは、閉状態では、実施の形態1と同様であり、ティース部15とコアバック部13a,13bは当接し、ティース部中心線5Oとコアバック部中心線3Oとのなす角が鋭角をなす。
実施の形態2による電動機の固定子の分割鉄心の薄肉接続部によれば、実施の形態1の薄肉接続部に比べ、巻線後のコアバック変形量を削減できる。またコアバック部に薄肉接続部および溝部を3本以上設けた場合は、1本当たりの変形量をさらに抑制することができる。
実施の形態3.
実施の形態1では、分割鉄心10dの絶縁処理については、巻線後に行ったが、実施の形態3では、コアバック部3a,3bとティース部5との間にスリット7sが入った分割ボビンを用いることで、巻線実施前にボビン取付け可能としたものである。図11に開状態の分割鉄心を示すように、ティース部5とコアバック部3a,3bは、それぞれに装着され、閉状態では、互いに当接するコアバックボビン7a1,7a2とティースボビン7b1,7b2とを装着したものである。他は実施の形態1の分割鉄心と同様である。
実施の形態1では、分割鉄心10dの絶縁処理については、巻線後に行ったが、実施の形態3では、コアバック部3a,3bとティース部5との間にスリット7sが入った分割ボビンを用いることで、巻線実施前にボビン取付け可能としたものである。図11に開状態の分割鉄心を示すように、ティース部5とコアバック部3a,3bは、それぞれに装着され、閉状態では、互いに当接するコアバックボビン7a1,7a2とティースボビン7b1,7b2とを装着したものである。他は実施の形態1の分割鉄心と同様である。
実施の形態3による電動機の固定子の分割鉄心によれば、実施の形態1の分割鉄心による効果に加え、巻線後の絶縁処理を施さずに済むことから、製造工数を削減することができる。また絶縁部品に関してはボビンに限らず、スロットセルなどの絶縁性の薄膜フィルムからなる成型体を用いてもよい。
実施の形態4.
実施の形態1の分割鉄心10dは、個別に形成され、巻線後、薄肉接続部を閉状態にして、9個配列して固定することで、固定子を形成したが、実施の形態4では、9個の分割鉄心構造体からなる分割鉄心部10sを連結した状態で形成するものである。図12に示すように、分割鉄心部10sは、薄肉接続部1a,1bおよび、溝2a,2bを挟んで接続された、コアバック部3a,3bとティース部5とを備える。ティース部5には、巻線が巻装固定される。ティース部5とコアバック部3a,3bは、薄肉接続部1a,1bを開閉することで、開状態と閉状態とをとることが可能である。
実施の形態1の分割鉄心10dは、個別に形成され、巻線後、薄肉接続部を閉状態にして、9個配列して固定することで、固定子を形成したが、実施の形態4では、9個の分割鉄心構造体からなる分割鉄心部10sを連結した状態で形成するものである。図12に示すように、分割鉄心部10sは、薄肉接続部1a,1bおよび、溝2a,2bを挟んで接続された、コアバック部3a,3bとティース部5とを備える。ティース部5には、巻線が巻装固定される。ティース部5とコアバック部3a,3bは、薄肉接続部1a,1bを開閉することで、開状態と閉状態とをとることが可能である。
図12に示すように、コアバック部3a,3bは、開状態では、外縁部が一直線上にあるが、個々の分割鉄心部10Sでは、薄肉接続部1a,1bおよび、溝2a,2bを挟んで、実施の形態1と同様の形状をなしている。
隣接するコアバック部3a,3bが連続的に形成されて、9個の分割鉄心部10sが1直線上に連続形成されている他は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
コイルを巻装するステップでは、ティース部5とコアバック部3a,3bとは開状態では直角よりも5度から10度程度大きい鈍角であるため、容易に巻装可能であるが、開状態から溝2a,2bをさらに拡げる状態に反らせ、巻線6の装着を行うようにしてもよい。そして巻線の装着後に9個の分割鉄心部10sを連結状態のまま閉状態とすることで、環状となり、図13に示すような環状の鉄心を備えた固定子10が形成される。あとは実施の形態1と同様に、回転子20の装着を行うことで実施の形態1と同様の電動機が得られる。
実施の形態4によれば、分割鉄心部を一括形成することができるため、組み立て作業性が大幅に向上するだけでなく、おおむね一直線上にコアバック部の外縁がくるように分割鉄心部を形成することができるうえ、接続部が不要であるため、分割鉄心材料の大幅な節減をはかることができる。また、接続部が少ないため、磁路が設計値通りに形成される。
実施の形態5.
図14は、実施の形態5の固定子の分割鉄心を示す断面図、図15は、実施の形態5の固定子を用いた電動機100Sを示す断面図である。実施の形態4では、9個の分割鉄心構造体からなる分割鉄心部10sを連結した状態で形成した。これに対し実施の形態5の固定子は、鉄心を、さらに多数個の連結構造体とすることで、開状態ではティース部5の外縁は一直線上に位置するようにし、閉状態ではティース部5の外縁が円形に近い状態となるように構成したものである。
図14は、実施の形態5の固定子の分割鉄心を示す断面図、図15は、実施の形態5の固定子を用いた電動機100Sを示す断面図である。実施の形態4では、9個の分割鉄心構造体からなる分割鉄心部10sを連結した状態で形成した。これに対し実施の形態5の固定子は、鉄心を、さらに多数個の連結構造体とすることで、開状態ではティース部5の外縁は一直線上に位置するようにし、閉状態ではティース部5の外縁が円形に近い状態となるように構成したものである。
実施の形態5によれば、ティース部5の外縁が円形に近い状態となることで、実施の形態4の固定子に比べ、分割鉄心部10sの連結構造体で構成された鉄心の磁気特性のさらなる向上を図ることができる。また、鉄心材料の無駄を低減することができ、鉄心材料のさらなる節減が可能となる。
実施の形態1から5において、ティース部とコアバック部は開状態では、当接部におけるティース部とコアバック部とのなす角を鈍角とし、閉状態では鋭角をなすように構成するが、開状態から閉状態に変位する際の角度がなるべく小さい方が、望ましい。従ってティース部とコアバック部は開状態では、直角よりも5度から10度程度大きい鈍角とするのが望ましい。かかる構成をとることで、コイルの巻装が容易でかつ、薄肉連結部の強度劣化の少ない固定子を得ることが可能である。
なお、実施の形態1から5では、分割鉄心構造体あるいは分割鉄心構造体を連結した鉄心構造体を積層することで積層構造体を形成したが、積層構造をとることなく、単層構造体で構成しても良い。単層構造体で構成する場合は、開状態から閉状態にする際のストレスを少なくし回動の容易性を考慮すると薄肉連結部の肉厚をできる限り小さくするのが望ましい。
また、実施の形態1から5では、コアバック部の内周縁は、段差なしに滑らかな面となっているが、段差があってもよく、各分割鉄心のコアバック部の内周縁の外端部とを結ぶ線とティース部とのなす角が、開状態では、鈍角、閉状態では鋭角であればよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1a,1b,11a,11b 薄肉接続部、1s,11s 切欠き、2a,2b,12a,12b 溝、3a,3b,13a,13b コアバック部、3O コアバック部中心線、4a,4b アンダーカット部、5,15 ティース部、5O ティース部中心線、6 巻線、7a1,7a2 コアバックボビン、7b1,7b2 ティースボビン、10 固定子、10d 分割鉄心、10s 分割鉄心部、20 回転子、100 電動機。
Claims (14)
- 電磁鋼板で構成され、巻線が巻装されるティース部と、前記ティース部に対して薄肉接続部を介して一端部を連結され、磁路を構成するコアバック部とを有する分割鉄心を複数個備え、
前記ティース部と前記コアバック部の中心線は前記電磁鋼板の素材上で鈍角をなし、
前記ティース部と前記コアバック部との間に、前記ティース部の前記中心線に対して対称に配された溝を有し、
前記溝内に配された前記薄肉接続部を支点にして前記コアバック部は前記溝内を回動可能で、かつ前記ティース部に当接可能であり、前記ティース部と前記コアバック部とが当接部で鋭角をなし、前記巻線は前記ティース部の鋭角をなす前記当接部まで巻回されることを特徴とする固定子。 - 前記分割鉄心は、前記ティース部と前記コアバック部と前記薄肉接続部とを備えた薄片を複数層積層して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の固定子。
- 前記薄肉接続部は、開状態と閉状態とをとることが可能であり、
開状態では、前記ティース部と前記コアバック部との前記当接部における開き角度が、直角よりも5°から10°大きい鈍角であり、
閉状態では、前記ティース部と前記コアバック部は当接し、前記ティース部と前記コアバック部との当接部における開き角度が鋭角をなすことを特徴とする請求項1または2に記載の固定子。 - 前記薄肉接続部は、前記ティース部上で離間して設けられた複数の薄肉部で構成され、前記ティース部の両側に前記コアバック部が連結されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の固定子。
- 前記ティース部は、前記薄肉接続部を介して複数個連結されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の固定子。
- 前記ティース部と前記コアバック部は、それぞれに装着され、閉状態では、互いに当接するティースボビンとコアバックボビンとを有することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の固定子。
- 請求項1から6のいずれか1項に記載の固定子と、
前記ティース部に囲まれた領域に配された回転子と
を備えたことを特徴とする電動機。 - 巻線が巻装されるティース部と、前記ティース部に対して薄肉接続部を介して一端部を連結され、磁路を構成するコアバック部とを備えた鉄心構造体を成型する工程と、
前記ティース部と前記コアバック部との当接部における開き角度が、直角よりも5°から10°大きい鈍角である開状態で、前記ティース部と前記コアバック部の境界で、前記ティース部の鋭角をなす前記当接部まで、前記巻線を前記開状態の前記ティース部に巻装する工程と、
前記巻線が巻装された前記ティース部と前記コアバック部との当接部における開き角度が鋭角をなす位置まで、前記コアバック部を近づけ閉状態とする工程とを含むことを特徴とする固定子の製造方法。 - 前記薄肉接続部は、前記ティース部上で離間して設けられた複数の薄肉部で構成され、前記ティース部の両側に前記コアバック部が連結されたことを特徴とする請求項8に記載の固定子の製造方法。
- 前記鉄心構造体を成型する工程は、前記ティース部が、前記薄肉接続部を介して2個以上連結された構造体を成型する工程であることを特徴とする請求項8に記載の固定子の製造方法。
- 前記鉄心構造体を成型する工程は、
前記コアバック部の外周が1直線上に連結されて配された鉄心構造体を成型する工程を含み、
前記巻線を巻装する工程は、前記鉄心構造体が連結された状態で実施されることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の固定子の製造方法。 - 前記巻線を巻装する工程に先立ち、前記ティース部と前記コアバック部に、それぞれティースボビンとコアバックボビンとを装着する工程と、
前記巻線を巻装する工程後に、前記巻線が巻装された前記ティース部と前記コアバック部とが鋭角をなす位置まで当接させ、前記コアバック部を近づけ閉状態とするとともにティースボビンとコアバックボビンとを、互いに当接させる工程とを含むことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の固定子の製造方法。 - 前記巻線を巻装する工程に先立ち、
複数層の鉄心構造体を積層する工程を含むことを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の固定子の製造方法。 - 巻線が巻装されるティース部と、前記ティース部に対して薄肉接続部を介して一端部を連結され、磁路を構成するコアバック部とを備えた固定子を、前記ティース部と前記コアバック部との当接部における開き角度が、直角よりも5°から10°大きい鈍角である開状態とする工程と、
前記ティース部と前記コアバック部の境界で、前記ティース部の鋭角をなす前記当接部まで、前記巻線を前記開状態の前記ティース部に巻装する工程と、
前記巻線が巻装された前記ティース部と前記コアバック部との当接部における開き角度が鋭角をなす位置まで、前記コアバック部を近づけ閉状態とする工程と、
前記閉状態とする工程で得られた固定子内に、回転子を挿入する工程とを含むことを特徴とする電動機の製造方法。
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