以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本発明の一態様、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、接続部の少なくとも一部を、アルカリ可溶性樹脂、及びキノンジアジド基を有する化合物を含有するフィルム状ポジ型感光性樹脂組成物を用いて封止する工程を備える、半導体装置の製造方法である。
<半導体装置>
本実施形態の半導体装置は、第1の基板、及び第1の基板の主面上に配置された第1の接続部を有する第1の部材と、第2の基板、及び第2の基板の主面上に配置された第2の接続部を有する第2の部材と、第1の部材及び第2の部材を互いに接続する接続バンプと、第1の部材及び第2の部材の隙間に充填された接着材料とを有している。第1の部材及び第2の部材は、配線や接続バンプ等によってフリップチップ接続されている。配線や接続バンプは、接着材料により封止されており外部環境から遮断されている。接着材料は、後述するポジ型感光性樹脂組成物の硬化物である。上記第1の部材及び上記第2の部材は特には制限されないが、例えば、半導体ウェハ、半導体チップ、半導体チップ搭載用の支持部材、パネルサイズの支持部材等が挙げられる。上記第1の部材及び上記第2の部材の接続部は、該接続部を介して第1の部材及び第2の部材が接続されるものであれば特には制限されないが、その材質としては主に金属が用いられる。また、第1の接続部及び第2の接続部は予め導電性のバンプ(以下、「接続バンプ」ともいう。)を有していてもよい。さらに、第1の部材及び第2の部材は回路形成されていてもよい。
さらに、本実施形態の半導体装置について、図1及び2を用いて以下説明する。図1は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図1(a)に示すように、半導体装置100は、互いに対向する半導体チップ10及び基板(回路配線基板)20と、半導体チップ10及び基板20の互いに対向する面にそれぞれ配置された配線15と、半導体チップ10及び基板20の配線15を互いに接続する接続バンプ30と、半導体チップ10及び基板20間の空隙に隙間なく充填された接着材料40とを有している。半導体チップ10及び基板20は、配線15及び接続バンプ30によりフリップチップ接続されている。配線15及び接続バンプ30は、接着材料40により封止されていることから外部環境から遮断されており、アンダーフィル材として機能してもよい。接着材料40は、後述するポジ型感光性樹脂組成物の硬化物である。
図1(b)に示すように、半導体装置200は、互いに対向する、半導体チップ10及び基板20と、半導体チップ10及び基板20の互いに対向する面にそれぞれ配置されたバンプ32と、半導体チップ10及び基板20間の空隙に隙間なく充填された接着材料40とを有している。半導体チップ10及び基板20は、対向するバンプ32が互いに接続されることによりフリップチップ接続されている。バンプ32は、接着材料40により封止されており外部環境から遮断されている。
図2は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。図2(a)に示すように、半導体装置300は、2つの半導体チップ10が配線15及び接続バンプ30によりフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置100と同様である。図2(b)に示すように、半導体装置400は、2つの半導体チップ10がバンプ32によりフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置200と同様である。
半導体チップ10としては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体を用いることができる。
基板20としては、回路基板であれば特に制限はなく、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン等を主な成分とする絶縁基板の表面に、金属膜の不要な個所をエッチング除去して形成された配線(配線パターン)15を有する回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線15が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線15が形成された回路基板を用いることができる。
配線15やバンプ32等の接続部は、主成分として、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ−銀、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銅、スズ−銀−銅)、ニッケル、スズ、鉛等を含有しており、複数の金属を含有していてもよい。
上記金属の中でも、接続部の電気伝導性・熱伝導性に優れたパッケージとする観点から、金、銀及び銅が好ましく、銀及び銅がより好ましい。コストが低減されたパッケージとする観点から、安価であることに基づき銀、銅及びはんだが好ましく、銅及びはんだがより好ましく、はんだが更に好ましい。室温において金属の表面に酸化膜が形成すると生産性が低下する場合やコストが増加する場合があるため、酸化膜の形成を抑制する観点から、金、銀、銅及びはんだが好ましく、金、銀、はんだがより好ましく、金、銀が更に好ましい。
上記配線15及びバンプ32の表面には、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ−銀、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銅)、スズ、ニッケル等を主な成分とする金属層が、例えばメッキにより形成されていてもよい。この金属層は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、上記金属層は、単層又は複数の金属層が積層された構造をしていてもよい。
また、本実施形態の半導体装置は、半導体装置100〜400に示すような構造(パッケージ)が複数積層されていてもよい。この場合、半導体装置100〜400は、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ−銀、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銅、スズ−銀−銅)、スズ、ニッケル等を含むバンプや配線で互いに電気的に接続されていてもよい。
半導体装置を複数積層する手法としては、図3に示すように、例えばTSV(Through−Silicon Via)技術が挙げられる。図3は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図であり、TSV技術を用いた半導体装置である。図3に示す半導体装置500では、インターポーザ50上に形成された配線15が半導体チップ10の配線15と接続バンプ30を介して接続されることにより、半導体チップ10とインターポーザ50とはフリップチップ接続されている。半導体チップ10とインターポーザ50との間の空隙には接着材料40が隙間なく充填されている。上記半導体チップ10におけるインターポーザ50と反対側の表面上には、配線15、接続バンプ30及び接着材料40を介して半導体チップ10が繰り返し積層されている。半導体チップ10の表裏におけるパターン面の配線15は、半導体チップ10の内部を貫通する孔内に充填された貫通電極34により互いに接続されている。なお、貫通電極34の材質としては、銅、アルミニウム等を用いることができる。
このようなTSV技術により、通常は使用されない半導体チップの裏面からも信号を取得することが可能となる。さらには、半導体チップ10内に貫通電極34を垂直に通すため、対向する半導体チップ10間や半導体チップ10及びインターポーザ50間の距離を短くし、柔軟な接続が可能である。本実施形態の半導体用接着剤は、このようなTSV技術において、対向する半導体チップ10間や、半導体チップ10及びインターポーザ50間の半導体用接着剤として適用することができる。
また、エリヤバンプチップ技術等の自由度の高いバンプ形成方法では、インターポーザを介さないでそのまま半導体チップをマザーボードに直接実装できる。本実施形態の半導体用接着剤は、このような半導体チップをマザーボードに直接実装する場合にも適用することができる。なお、本実施形態の半導体用接着剤は、2つの配線回路基板を積層する場合に、基板間の空隙を封止する際にも適用することができる。
<半導体装置の製造方法>
本実施形態では、例えば、以下のようにして半導体装置を製造することができる。
(工程1)準備工程、ポジ型感光性樹脂組成物層形成工程
まず、回路が形成された基板(以下、回路基板とする)を準備する。次に、上記回路基板にポジ型感光性樹脂組成物を、ポジ型感光性樹脂組成物が配線及び接続バンプを埋めるように供給して部材を得る。
(工程2)露光・現像工程
ポジ型感光性樹脂組成物層を露光、及び現像によって、接続部が露出する開口部が形成されるようにパターニングする工程
(工程3)接続工程
ポジ型感光性樹脂組成物を回路基板に形成し、接続部が露出するようにパターニングした後、半導体チップのはんだバンプと基板の銅配線をフリップチップボンダーなどの接続装置を用いて、位置合わせした後、半導体チップと基板をはんだバンプの融点以上の温度で加熱しながら押し付けて(接続部にはんだを用いる場合は、はんだ部分に240℃以上かかることが好ましい)、半導体チップと基板を接続するとともに、ポジ型感光性樹脂組成物層の硬化物によって接続部を封止する。上記ポジ型感光性樹脂組成物層は、アルカリ可溶性樹脂、及びキノンジアジド基を有する化合物を含有する。
<半導体装置の製造方法の詳細な説明>
本実施形態の半導体装置の製造方法について、より具体的に、図4及び5を用いて以下説明する。図4は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
まず、図4(a)に示すように、配線15を有する基板20上に、接続バンプ30を形成する位置に開口を有するソルダーレジスト60を形成する。このソルダーレジスト60は必ずしも設ける必要はない。しかしながら、基板20上にソルダーレジストを設けることにより、配線15間のブリッジの発生を抑制し、接続信頼性・絶縁信頼性を向上させることができる。ソルダーレジスト60は、例えば、市販のパッケージ用ソルダーレジスト用インキを用いて形成することができる。市販のパッケージ用ソルダーレジスト用インキとしては、具体的には、SRシリーズ(日立化成株式会社製、商品名)及びPSR4000−AUSシリーズ(太陽インキ製造株式会社製、商品名)が挙げられる。次に、図4(a)に示すように、ソルダーレジスト60の開口に接続バンプ30を形成する。
(工程1)
そして、図4(b)に示すように、接続バンプ30及びソルダーレジスト60が形成された基板20上に、フィルム状ポジ型感光性樹脂組成物を貼付して、接着剤層41を設ける。フィルム状ポジ型感光性樹脂組成物の貼付は、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等によって行うことができる。フィルム状ポジ型感光性樹脂組成物の供給面積や厚みは、半導体チップ10及び基板20のサイズや、接続バンプ30の高さによって適宜設定される。
(工程2)
図4(c)に示すように、基板20上に設けられた接着剤層41に対して、所定の位置に開口が形成されているマスク70を介して活性光線(典型的には紫外線)を照射する。これにより接着剤層41が所定のパターンで露光される。
次に、図4(d)に示すように、露光後、接着剤層41のうち露光された部分を、アルカリ現像液を用いた現像によって除去することで、接続バンプ30が露出する開口部75が形成されるように接着剤層41がパターニングされる。現像後に接着剤パターンに対して活性光線を照射する工程、又は現像後に接着剤パターンを加熱する工程を有することで、この後のプロセスにおいてボイドの発生を低減できる傾向にある。
(工程3)
別途準備した半導体チップ10の配線15と接続バンプ30とをフリップチップボンダー等の接続装置を用いて、位置合わせする。続いて、半導体チップ10と基板20とを接続バンプ30の融点以上の温度で加熱しながら圧着し、図5に示すように、半導体チップ10と基板20とを接続すると共に、接着剤層41の硬化物である接着材料40によって、半導体チップ10及び基板20間の空隙を封止充填する。以上により、半導体装置600が得られる。
本実施形態の半導体装置の製造方法では、位置合わせをした後に仮固定し(半導体用接着剤を介している状態)、リフロー炉で加熱処理することによって、接続バンプ30を溶融させて半導体チップ10と基板20とを接続してもよい。仮固定の段階では、金属接合を形成することが必ずしも必要ではないため、上記の加熱しながら圧着する方法に比べて低荷重、短時間、低温度による圧着でよく、生産性が向上すると共に接続部の劣化を抑制することができる。
また、半導体チップ10と基板20とを接続した後、オーブン等で加熱処理工程(キュア工程)を行って、更に接続信頼性・絶縁信頼性を高めてもよい。加熱温度は、フィルム状接着剤の硬化が進行する温度が好ましく、完全に硬化する温度がより好ましい。加熱温度、加熱時間は適宜設定される。
キュア工程では、接続体を加熱して半導体用接着剤の硬化を促進させる。キュア工程における加熱温度、加熱時間、キュア工程後の半導体用接着剤の硬化反応率は、硬化物である接着材料が半導体装置の信頼性を満たす物性を発揮すれば特に制限されない。
キュア工程における加熱温度及び加熱時間は、半導体用接着剤の硬化反応が進行するように適宜設定され、半導体用接着剤が完全に硬化するように設定されることが好ましい。加熱温度は、反り低減の観点から、可能な限り低い温度であることが好ましい。加熱温度は、100〜200℃が好ましく、110〜190℃がより好ましく、120〜180℃が更に好ましい。加熱時間は、0.1〜10時間が好ましく、0.1〜8時間がより好ましく、0.1〜5時間が更に好ましい。キュア工程時に半導体用接着剤の未反応分を可能な限り反応させることが好ましく、キュア工程後の硬化反応率は95%以上が好ましい。キュア工程における加熱は、オーブン等の加熱装置を用いて行なうことができる。
なお、本実施形態の半導体装置の製造方法では、図6(a)〜(c)に示すように、上記工程1と同様に接続バンプ30が形成された半導体チップ10上に接着剤層41を設け、上記工程2と同様に接着剤層41をパターニングした後、上記工程3と同様に半導体チップ10と基板20との接続を行ってもよい。
生産性が向上する観点から、複数の半導体チップ10が連結した半導体ウェハにフィルム状ポジ型感光性樹脂組成物を供給し、露光、現像を行い開口部75を形成した後、ダイシングして個片化することによって、半導体チップ10上にフィルム状ポジ型感光性樹脂組成物が供給された構造体を得てもよい。特に制限されるものではないが、加熱プレス、ロールラミネート及び真空ラミネート等の貼付方式により半導体チップ10上の配線やバンプを埋め込むようにフィルム状のポジ型感光性樹脂組成物を供給すればよい。この場合、樹脂の供給量が一定となるため生産性が向上し、埋め込み不足によるボイドの発生及びダイシング性の低下を抑制することができる。
なお、ペースト状の半導体用接着剤をスピンコートする方法と比較して、フィルム状の半導体用接着剤をラミネートする方法によれば、供給後の接着剤層の平坦性が良好となる傾向にある。そのため、半導体用接着剤の形態としては、フィルム状が好ましい。また、フィルム状接着剤は、多様なプロセスへの適用性、取り扱い性等にも優れる。
接続荷重は、接続バンプ30の数や高さのばらつき、加圧による接続バンプ30、又は接続部のバンプを受ける配線の変形量を考慮して設定される。接続温度は、接続部の温度が接続バンプ30の融点以上であることが好ましいが、それぞれの接続部(バンプや配線)の金属接合が形成される温度であればよい。接続バンプ30がはんだバンプである場合は、約240℃以上が好ましい。また、接続温度は、500℃以下であってよく、400℃以下であってもよい。
接続時の接続時間は、接続部の構成金属により異なるが、生産性が向上する観点から短時間であるほど好ましい。接続バンプ30がはんだバンプである場合、接続時間は20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下が更に好ましく、4秒以下が更に好ましく、3秒以下が特に好ましい。銅−銅又は銅−金の金属接続の場合は、接続時間は60秒以下が好ましい。
上述した様々なパッケージ構造のフリップチップ接続部においても、本実施形態の半導体用接着剤は、優れた耐リフロー性及び接続信頼性を示す。
以下、本発明で用いるポジ型感光性樹脂組成物の一態様について説明する。
<ポジ型感光性樹脂組成物>
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド基を有する化合物を含有する。
((A)アルカリ可溶性樹脂成分)
(A)成分はアルカリ可溶性(アルカリ水溶液に可溶)の樹脂である。ここで、本実施形態の(A)成分がアルカリ水溶液に可溶であることの1つの基準を以下に説明する。(A)成分単独と任意の溶剤又は(A)成分と、以下に順を追って説明する(B)成分から得られた樹脂溶液を、シリコンウェハ等の基板上にスピン塗布して膜厚5μm程度の樹脂膜を形成する。
これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか一つに、20〜40℃において浸漬する。この結果、樹脂膜が均一な溶液として溶解し得るとき、用いた(A)成分はアルカリ水溶液に可溶であると判断する。
(A)成分のTgは150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが最も好ましい。このTgが150℃を超える場合、ポジ型感光性樹脂組成物をフィルム状とした場合にフィルム状接着剤を被着体に貼り合わせる際に高温を要し、半導体ウェハに反りが発生しやすくなる傾向がある。また、パターン形成後の上記接着剤の溶融粘度が高くなり、熱圧着性が低下する傾向がある。
また、フィルム状とした場合、ウェハ裏面への貼り付け温度は、20℃〜150℃であることが好ましく、40℃〜100℃であることがより好ましい。上記範囲内では、半導体ウェハの反りが抑えられる傾向にある。上記温度での貼り付けを可能にするためには、フィルム状接着剤のTgを150℃以下にすることが好ましい。また、上記Tgの下限は40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが最も好ましい。上記Tgが40℃未満の場合、露光、及び加熱硬化後の弾性率を向上させるために、他の硬化成分を多量に配合する必要があり、取り扱い性、保存安定性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び低応力性を低下させる傾向がある。
ここで、(A)成分の「Tg」とは、(A)成分をフィルム化したものについて、粘弾性アナライザー(レオメトリックス社製、商品名:RSA−2)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150℃〜300℃の条件で測定したときのtanδピーク温度である。
(A)成分の重量平均分子量は、5,000〜500,000の範囲内で制御されていることが好ましく、10,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが最も好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、ポジ型感光性樹脂組成物をシート状、又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好となる。また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差(凹凸)に対する良好な埋込性を確保することが可能となる。上記重量平均分子量が5,000未満であると、フィルム形成性が充分でなくなる傾向がある。一方、上記重量平均分子量が500,000を超えると、熱時流動性、及び上記埋め込み性が充分でなくなる傾向や、パターン形成する際にポジ型感光性樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が充分でなくなる傾向がある。ここで、「重量平均分子量」とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、商品名:C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
(A)成分のTg、及び重量平均分子量を上記範囲内とすることによって、ウェハへの貼り付け温度を低く抑えることができる。さらに、半導体チップを半導体チップ搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(熱圧着温度)も低くすることができ、半導体チップの反りの増大を抑制しながら、高温接着性を付与することができる。また、貼付性、熱圧着性及び現像性を有効に付与することができる。
(A)成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、及びポリエステルイミド樹脂、並びに、これらの共重合体及びこれらの前駆体(ポリアミド酸等)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が10,000〜1,000,000の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、及びフェノール樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖に、エチレングリコール、及びプロピレングリコール等のグリコール基、カルボキシル基及び/又は水酸基が付与されたものであってもよい。
これらの中でも、高温接着性、耐熱性、及びフィルム形成性の観点から、(A)成分はポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、又はポリヒドロキシスチレン樹脂であることが好ましい。
さらに高温接着性及びパターン形成性の観点から、上記アルカリ可溶性樹脂は、末端基にフェノール性水酸基を有することが好ましい。
(ポリイミド樹脂)
本発明で好適に用いることのできるポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとフェノール性水酸基含有(単官能)アミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。
上記縮合反応における、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合モル比は、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が0.5mol〜0.98molであることが好ましく、0.6mol〜0.95molであることがより好ましい。
上記縮合反応における、テトラカルボン酸二無水物とフェノール性水酸基含有アミンとの混合モル比は、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、フェノール性水酸基含有アミンの合計が0.04mol〜1.0molであることが好ましく、0.1mol〜0.8molであることがより好ましい。
なお、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及びフェノール性水酸基含有アミンの添加順序は任意でよい。
上記縮合反応においては、テトラカルボン酸二無水物を、ジアミンよりも過剰に用いることが好ましい。これにより、テトラカルボン酸二無水物由来の残基を末端に有するオリゴマーが増加し、このテトラカルボン酸二無水物由来の残基が後述するフェノール性水酸基含有アミンのアミノ基と反応することにより、末端基としてフェノール性水酸基が導入される。
また、上記縮合反応における、反応温度は80℃以下が好ましく、0℃〜60℃がより好ましい。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、樹脂組成物の諸特性の低下を抑えるため、上述のテトラカルボン酸二無水物は、無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
本実施形態でのポリイミド樹脂とは、イミド基を有する樹脂を意味する。具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、及びポリエステルイミド樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
ポリイミド樹脂は、上記縮合反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、及び脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限はなく、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、及び下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。下記一般式(1)中、aは2〜20の整数を示す。
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド、及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、及び1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)が挙げられる。
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿性、並びに波長が365nmである光に対する透明性を付与する観点から、下記式(2)、又は(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては、カルボキシル基を持たず、フェノール性水酸基を有するジアミンを少なくとも1種用いることが好ましい。カルボキシル基を持たず、フェノール性水酸基を有するジアミンを用いることにより、ポリイミド樹脂の側鎖基としてフェノール性水酸基を導入することができる。カルボキシル基を持たず、フェノール性水酸基を有するジアミンとしては、例えば、下記式(5)、(7)、(A−1)で表される芳香族ジアミンが挙げられ、Tgが高いポリイミド樹脂としたときに良好なパターン形成性、及び熱圧着性を得る観点から、下記一般式(A−1)で表されるジアミンがより好ましい。
式中R
21は、単結合、又は、2価の有機基を示す。2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30の2価の炭化水素基、又は、ハロゲン原子によって水素の一部若しくは全部が置換されている炭素数1〜30の2価の炭化水素基、−(C=O)−、―SO
2−、−O−、−S−、―NH−(C=O)−、―(C=O)−O−、下記一般式(B−1)で表される基、及び下記一般式(B−2)で表される基が挙げられる。式中、nは1〜20の整数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。
上記R21は、ポリイミド樹脂のTgを上昇させたときのパターン形成性の観点から、−C(CF3)2−、及び−C(CH3)2−が好ましい。このような基を有する上記ジアミンを用いることにより、パターン形成時にポリイミドのイミド基同士の凝集を抑制でき、アルカリ現像液が浸透しやすくなることでパターン形成性を向上させることができる。これにより、ポリイミドのTgを上昇させても良好なパターン形成性を得ることが可能となり、耐湿信頼性がさらに向上したポジ型感光性樹脂組成物の実現が可能となる。
一般式(A−1)で表されるジアミンは、全ジアミンの10モル%〜80モル%とすることが好ましく、20モル%〜80モル%とすることがより好ましく、30モル%〜70モル%とすることがさらに好ましい。ポリイミド樹脂としてカルボキシル基含有樹脂を用いると、加熱乾燥時に配合しているエポキシ樹脂と反応して熱可塑性樹脂の酸価が大きく低下する傾向にある。これに対して、ポリイミド樹脂の側鎖をフェノール性水酸基とすることで、カルボキシル基の場合に比べてエポキシ樹脂との反応が進行しにくくなる。その結果、パターン形成性、熱圧着性及び高温接着性に加え、当該組成物をワニスあるいはフィルム形態とした際の安定性が向上することが考えられる。
本実施形態においては、上記フェノール性水酸基を有するジアミンが、下記式で表される、フルオロアルキル基を有するジフェノールジアミンを含むことが好ましい。ポリイミド鎖にフルオロアルキル基が導入されることによって、ポリイミド同士の分子鎖凝集力が低下し、現像液が浸透しやすくなる。その結果、上記ポジ型感光性樹脂組成物のパターン形成性(溶解現像性、細線化)がさらに向上する。また、ポリイミドの凝集力の低下によって、熱圧着性を向上させることができ、さらにはポリイミドのTgを上昇させても良好なパターン形成性を得ることが可能となる。これにより、耐湿信頼性及び耐リフロー性がさらに向上したポジ型感光性樹脂組成物の実現が可能となる。
フルオロアルキル基を有するジフェノールジアミンは、全ジアミンの5モル%〜100モル%とすることが好ましく、10モル%〜90モル%とすることがさらに好ましく、10モル%〜80モル%とすることが更により好ましく、20モル%〜80モル%とすることが特に好ましく、30モル%〜70モル%とすることが最も好ましい。
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、及び3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン、並びに、下記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンが挙げられる。下記一般式(8)中、R1、R2及びR3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。下記一般式(9)中、R4及びR9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基、又はフェニレン基を示し、R5、R6、R7、及びR8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。なお、上記フェニレン基は、置換基を有していてもよい。
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性、有機溶剤可溶性、及びアルカリ可溶性を付与する点で、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル株式会社製ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、ED−600、ED−900、ED−2000、EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230、D−400、及びD−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの1モル%〜80モル%であることが好ましく、10モル%〜80モル%であることがより好ましく、10モル%〜60モル%であることが更により好ましい。この量が1モル%未満であると、高温接着性及び熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が充分でなくなる傾向にある。
さらに、上記脂肪族エーテルジアミンは、パターン形成性の観点から、下記構造式で表わされるプロピレンエーテル骨格を有し、且つ分子量が300〜600であることが好ましい。このようなジアミンを用いる場合、フィルムの自己支持性、高温接着性、耐リフロー性、及び耐湿信頼性の観点から、その量は全ジアミンの80モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。また、貼付性、熱圧着性、及び高温接着性の観点から、全ジアミンの10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。この量が上記範囲にあることで、ポリイミドのTgを上記範囲に調整することができ、貼付性、熱圧着性、高温接着性、耐リフロー性、及び気密封止性を付与することが可能となる。下記構造式中、mは3〜7の整数を示す。
また、室温での密着性、及び接着性を向上させる観点から、上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンが好ましい。
上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(9)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、及び1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、及び1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンは、例えば、BY16−871EG(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)として入手可能である。
上記ジアミンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上述のジアミンの量は、全ジアミンの1モル%〜80モル%とすることが好ましく、2モル%〜50モル%とすることがさらに好ましく、5モル%〜30モル%とすることが最も好ましい。1モル%を下回るとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなり、80モル%を上回ると他成分との相溶性、高温接着性、及び現像性が低下する傾向がある。
また、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが、上述のように150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが特に好ましい。
上記ポリイミド樹脂の合成時に、フェノール性水酸基含有アミンを用いると、テトラカルボン酸由来の残基とフェノール性水酸基含有アミンのアミノ基とが反応することにより、末端基としてフェノール性水酸基を導入することができる。これによって、ポリマーの重量平均分子量を低くし、パターン形成時の現像性、及び熱圧着性を向上させることができる。
フェノール性水酸基含有アミンとしては、アミノフェノール誘導体が好ましい。アミノフェノール誘導体としては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2−アミノ−m−クレゾールなどのアミノクレゾール類、2−アミノ−4−メトキシベンゼンなどのアミノメトキシベンゼン類、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルアニリンなどの−ヒドロキシジメチルアニリン類などが挙げられるが、下記式(13)で表される化合物が好ましい。中でもアルカリ現像液への溶解性とワニス時の安定性の観点からアミノ基のメタ位に水酸基を持つものがあることが好ましく、これらの中でもm−アミノフェノールがポリイミド合成時の導入が容易であり、特に好ましい。
末端基としてフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂は、パターン形成性、熱圧着性及び高温接着性に加え、当該ポジ型感光性樹脂組成物の安定性、接続部のように突起や段差がある基板への塗布やラミネートによる埋め込み性(平坦性)が向上するので好ましい。
上述したポリイミド樹脂は、1種を単独で、又は必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。
上記ポリイミド樹脂は、光硬化性の観点から、30μmのフィルム状に成形したときの波長365nmの光に対する透過率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記式(2)で表される酸無水物と、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
(ポリアミド樹脂)
一方、(A)成分として好ましく用いることのできるポリアミド樹脂としては下記一般式(I)で表される構造単位を有するものを挙げることができる。
[式中、Uは4価の有機基を示し、Vは2価の有機基を示す。]
一般式(I)で表される水酸基を含有するアミドユニットは、最終的には硬化時の脱水閉環により、耐熱性、機械特性及び電気特性に優れる、下記一般式(X)で表されるオキサゾール体に変換されることが好ましい。
[式中、Uは4価の有機基を示し、Vは2価の有機基を示す。]
本発明で用いることができるアルカリ水溶液可溶性ポリアミドは、上記一般式(I)で表される構造単位を有していればよいが、ポリアミドのアルカリ水溶液に対する可溶性は、主としてフェノール性水酸基に由来するため、一般式(I)で表される水酸基を含有するアミドユニットが、ある割合以上含まれていることが好ましい。
このようなものとして、下記式(4)で表されるアルカリ水溶液可溶性ポリアミドが挙げられる。
[式(4)中、Uは4価の有機基を示し、VとWは2価の有機基を示す。jとkは、モル分率を示し、jとkの和は100モル%であり、jが60〜100モル%、kが40〜0モル%である。]
式(4)中のjとkのモル分率は、jが80〜100モル%、kが20〜0モル%であることがより好ましい。
(Uで表される4価の有機基)
上記Uで表される4価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成するジヒドロキシジアミンの残基であり、4価の芳香族基が好ましく、炭素原子数としては6〜40のものが好ましく、炭素原子数6〜40の4価の芳香族基がより好ましい。ここで、芳香族基は炭素数1〜30の2価の炭化水素基、ハロゲン原子によって水素の一部又は全部が置換されている炭素数1〜30の2価の炭化水素基、−(C=O)−、―SO2−、−O−、−S−、―NH−(C=O)−、―(C=O)−O−等で2以上の芳香環が連結されたものであってもよい。4価の芳香族基としては、4個の結合部位がいずれも芳香環上に存在し、2個の水酸基がそれぞれUに結合しているアミンのオルト位に位置した構造を有するジヒドロキシジアミン、すなわち、フェノール性水酸基含有ジアミンの残基が特に好ましい。
フェノール性水酸基含有ジアミンは、下記一般式(A−1)で表されるものが好ましい。
式中R21は、単結合又は2価の有機基を示す。ここで2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30の2価の炭化水素基、ハロゲン原子によって水素の一部又は全部が置換されている炭素数1〜30の2価の炭化水素基、−(C=O)−、―SO2−、−O−、−S−、―NH−(C=O)−、―(C=O)−O−、下記一般式(B−1)で表される基、及び下記一般式(B−2)で表される基が挙げられる。式中、nは1〜20の整数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。
上記R21は、パターン形成性の観点から、−C(CF3)2−、及び−C(CH3)2−が好ましい。このような基を有するフェノール性水酸基含有ジアミンを用いることにより、パターン形成時にアルカリ水溶液可溶性ポリアミド同士の凝集を抑制でき、アルカリ現像液が浸透しやすくなることでパターン形成性を向上させることができる。これにより、耐湿信頼性がさらに向上したポジ型感光性樹脂組成物の実現が可能となる。
一般式(A−1)で表されるフェノール性水酸基含有ジアミンは、全ジアミンの10モル%〜80モル%とすることが好ましく、20モル%〜80モル%とすることがより好ましく、30モル%〜70モル%とすることがさらに好ましい。
本実施形態においては、フェノール性水酸基含有ジアミンが、下記式(C−1)で表される、フルオロアルキル基を有するものを含むことが好ましい。ポリアミド鎖にフルオロアルキル基が導入されることによって、ポリアミド同士の分子鎖凝集力が低下し、現像液が浸透しやすくなる。その結果、上記ポジ型感光性樹脂組成物のパターン形成性(溶解現像性、細線化)がさらに向上する。また、ポリアミドの凝集力の低下によって、熱圧着性を向上させることができ、さらにはポリアミドのTgを上昇させても良好なパターン形成性を得ることが可能となる。これにより、耐湿信頼性及び耐リフロー性がさらに向上したポジ型感光性樹脂組成物の実現が可能となる。
フルオロアルキル基を有するフェノール性水酸基含有ジアミンは、全フェノール性水酸基含有ジアミンの5モル%〜100モル%とすることが好ましく、10モル%〜90モル%とすることがより好ましく、10モル%〜80モル%とすることがさらに好ましく、20モル%〜80モル%とすることが特に好ましく、30モル%〜70モル%とすることが最も好ましい。
(Wで表される2価の有機基)
上記Wで表される2価の有機基とは、一般に、ジカルボン酸と反応してポリアミド構造を形成するジアミンの残基であり、上述したUで表されるジヒドロキシジアミン以外の残基を表す。2価の芳香族基又は脂肪族基が好ましく、炭素原子数としては4〜40のものが好ましく、炭素原子数4〜40の2価の芳香族基がより好ましい。ここで、芳香族基は上記のUで表される4価の有機基で記載された芳香族基と同義である。
このようなジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物が挙げられる。さらに、これらの他にも、シリコーン基の入ったジアミンとして、LP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161C、X−22−161E(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(Vで表される2価の有機基)
上記Vで表される2価の有機基とは、上述したジヒドロキシジアミンやジアミンと反応してポリアミド構造を形成するジカルボン酸の残基であり、2価の芳香族基が好ましく、炭素原子数としては6〜40のものが好ましく、炭素原子数6〜40の2価の芳香族基が硬化膜の耐熱性の観点でより好ましい。2価の芳香族基としては、2個の結合部位がいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。ここで、芳香族基は上記のUで表される4価の有機基で記載された芳香族基と同義である。
このようなジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル(4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸)、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などを挙げることができる。
また、Vが炭素数2〜30のアルキレン鎖を有する2価の有機基の場合は、熱硬化する際の温度を280℃以下と低くしても十分な物性が得られる点で好ましい。
このようなジカルボン酸としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸が挙げられ、さらに下記一般式(6):
[式(6)中、Zは炭素数1〜6の炭化水素基、式中nは1〜6の整数である。]で表されるジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
現像性、硬化膜特性及び接着性の観点で、さらに好ましくは炭素数が2〜15のアルキレン鎖を有するジカルボン酸であり、特に好ましくは下記一般式(II)で表される構造を有するジカルボン酸である。式中、nは、1〜14の整数を示す。
上記のような炭素数が2〜15のアルキレン鎖を有するジカルボン酸又は後述するジカルボン酸誘導体はジカルボン酸全体又はジカルボン酸誘導体全体の10〜100モル%とすることが好ましい。
上記ポリアミド樹脂の末端基としてフェノール性水酸基を有するものが好ましいが、側鎖基にもアルカリ可溶性基を有することが好ましい。アルカリ可溶性基としては、例えば、エチレングリコール基、カルボキシル基、水酸基、スルホニル基、フェノール性水酸基等が挙げられるが、フェノール性水酸基が好ましい。さらに(A)成分におけるアルカリ可溶性基がフェノール性水酸基のみであることがより好ましい。
上記ポリアミド樹脂の合成時に、フェノール性水酸基含有アミンを用いると、ジカルボン酸の残基とフェノール性水酸基含有アミンのアミノ基とが反応することにより、末端基としてフェノール性水酸基を導入することができる。これによって、ポリマーの重量平均分子量を低くし、パターン形成時の現像性、及び熱圧着性を向上させることができる。
フェノール性水酸基含有アミンとしては、アミノフェノール誘導体が好ましい。アミノフェノール誘導体としては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2−アミノ−m−クレゾールなどのアミノクレゾール類、2−アミノ−4−メトキシベンゼンなどのアミノメトキシベンゼン類、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルアニリンなどの−ヒドロキシジメチルアニリン類などが挙げられるが、下記式(13)で表される化合物が好ましい。中でもアルカリ現像液への溶解性とワニス時の安定性の観点からアミノ基のメタ位に水酸基を持つものがあることが好ましく、これらの中でもm−アミノフェノールがポリアミド合成時の導入が容易であり、特に好ましい。
末端基としてフェノール性水酸基を有するポリアミド樹脂は、パターン形成性、熱圧着性及び高温接着性に加え、当該ポジ型感光性樹脂組成物をワニスあるいはフィルム形態とした際の安定性、接続部のように突起や段差がある基板への塗布やラミネートによる埋め込み性(平坦性)が向上するので好ましい。
本発明において、上記一般式(I)で表される構造単位を有するアルカリ水溶液可溶性ポリアミドは、上述したフェノール性水酸基含有ジアミンとジカルボン酸誘導体とを反応させることによって合成することができる。
ここで、ジカルボン酸誘導体とは、ジカルボン酸の水酸基が炭素及び水素以外の原子に置換された化合物を表す。上記ジカルボン酸誘導体としては、ハロゲン原子に置換されたジハライド誘導体が好ましく、塩素原子で置換されたジクロリド誘導体がより好ましい。
上記ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。
ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させる方法、又は過剰のハロゲン化剤中で反応させる方法が挙げられる。
溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
これらのハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合、ジカルボン酸に対して、1.5〜3.0モル当量が好ましく、1.7〜2.5モル当量がより好ましく、ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モル当量が好ましく、5.0〜20モル当量がより好ましい。
反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
上記ジクロリド誘導体とフェノール性水酸基含有ジアミンとの反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。
脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。
また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。
反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
(フェノール樹脂)
本発明で好適に用いることのできるフェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は酸又は塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂といわれる。ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂及びフェノール−ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂が挙げられる。
フェノール樹脂を得るために用いられるフェノール誘導体としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のアルキルフェノール、メトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール等のアルコキシフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール等のアルケニルフェノール、ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール、メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール、ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール、クロロフェノール等のハロゲン化フェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール、α−またはβ−ナフトール等のナフトール誘導体;p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール、p−ヒドロキシフェニル−4−ブタノール等のヒドロキシアルキルフェノール;ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルクレゾール;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物;ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等のアルコール性水酸基含有フェノール誘導体;p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニルブタン酸、p−ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸、ジフェノール等のカルボキシル基含有フェノール誘導体等が挙げられる。また、ビスヒドロキシメチル−p−クレゾール等の上記フェノール誘導体のメチロール化物をフェノール誘導体として用いてもよい。
さらにフェノール樹脂は、上述のフェノール又はフェノール誘導体をm−キシレンのようなフェノール以外の化合物とともにアルデヒド類と重縮合して得られる生成物であってもよい。この場合、重縮合に用いられるフェノール誘導体に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であると好ましい。上述のフェノール誘導体及びフェノール化合物以外の化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
フェノール樹脂を得るために用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2−ホルミルプロピオン酸、2−ホルミルプロピオン酸メチル等から選ばれる。また、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体、アセトン、ピルビン酸、レブリン酸、4−アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸、及び3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸等のケトン類を反応に用いてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(ポリヒドロキシスチレン)
ポリ(ヒドロキシスチレン)系樹脂は、例えば、保護基を導入したヒドロキシスチレンのエチレン性不飽和二重結合を触媒(ラジカル開始剤)の存在下で、重合(ビニル重合)させ、さらに、脱保護することにより得られる。また、PHS−B(デュポン社商品名)のような市販のブランチ型のポリ(ヒドロキシスチレン)を用いることもできる。
(A)成分の分子量は、現像性及び硬化膜特性のバランスの観点から、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。ここで、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として10質量%〜90質量%であることが好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、20質量%〜70質量%であることがさらに好ましく、30質量%〜60質量%であることが最も好ましい。この含有量が10質量%以上であると、パターン形成時の現像性が充分となる傾向や、タック性等の取り扱い性が充分となる傾向があり、90質量%以下であると、パターン形成時の現像性、及び接着性が充分となる傾向がある。
((B)キノンジアジド基を有する化合物成分)
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上記(A)アルカリ可溶性樹脂とともに(B)キノンジアジド基を有する化合物を含む。このキノンジアジド基を有する化合物とは、光の照射により酸を発生し、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。良好な感度、解像度を発現するという観点から、o−キノンジアジド化合物を用いることが好ましい。
上記o−キノンジアジド化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物又はアミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
上記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとしては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等を用いることができる。
上記ヒドロキシ化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等を用いることができる。
上記アミノ化合物としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を用いることができる。
上記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物又はアミノ化合物との反応は、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基及びアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間とされる。
上記反応の反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがあげられる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、上記(A)成分として用いるアルカリ可溶性樹脂とともに、上記(B)成分として光によって酸を発生する化合物を用いる。この量は、感光時の感度、解像度を良好とするために、(A)成分100重量部に対して、0.01〜50重量部とすることが好ましく、0.01〜20重量部とすることがより好ましく、0.5〜20重量部とすることがさらに好ましい。
<(C)成分>
さらに本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、(C)熱によりそれ自身あるいは樹脂と架橋する化合物(以下(C)成分と呼ぶことがある。)を含有する。
本実施形態において、(C)熱によりそれ自身あるいは樹脂と架橋する化合物は、分子内に少なくとも一つのメチロール基、アルコキシアルキル基、エポキシ基、オキセタニル基を有する化合物などを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。(C)成分の架橋しうる温度としては、熱圧着時の流動性を確保するためポジ型感光性樹脂組成物が塗布、乾燥、露光、現像の各工程で架橋が進行しないように、150℃以上であることが好ましい。
これらの中でもエポキシ基を有する化合物が信頼性に優れる観点で好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、高温接着性、及び耐リフロー性の観点から、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、パターン形成性、及び熱圧着性の点から、室温(25℃)で液状、又は半固形、具体的には軟化温度が50℃以下であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型、AD型、S型、又はF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、3官能型、又は4官能型のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、並びに3官能型、又は4官能型のグリシジルアミンが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(C)成分としては、5%質量減少温度が150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、260℃以上であることが最も好ましい。5%質量減少温度が150℃以上であることで、低アウトガス性、高温接着性、及び耐リフロー性が向上する。
上記5%質量減少温度とは、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%質量減少温度である。
上記(C)成分として、下記構造式で表されるエポキシ樹脂を用いることが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いることで5%質量減少温度、パターン形成性、高温接着性、耐リフロー性、及び耐湿信頼性を充分に付与できる。
また、(C)成分としては、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びハロゲンイオン、特に塩素イオンを300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。エレクトロマイグレーション防止及び金属導体回路の腐食防止が可能となる。
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5質量部〜300質量部であることが好ましく、10質量部〜100質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部以下であると、アルカリ水溶液への溶解性が向上し、パターン形成性が向上する傾向がある。一方、上記含有量が5質量部未満であると、充分な熱圧着性、及び高温接着性が得にくくなる傾向がある。
<(D)成分>
さらに本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物には、(D)硬化促進剤(以下(D)成分と呼ぶことがある。)を含有させることもできる。(D)成分としては、加熱によってエポキシの硬化及び/又は重合を促進するものであれば特に制限はない。例えば、芳香族含窒素化合物、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレートが挙げられる。中でもイミダゾール化合物やそれらの塩が促進効果と安定性が両立できる点で、好ましいものとして挙げられる。特に効果が高く、好ましいものとして、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレートなどを挙げることができる。これら(D)成分のポジ型感光性樹脂組成物における含有量は、(C)成分100質量部に対して0.01質量部〜50質量部が好ましい。
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物には、各種カップリング剤を添加することもできる。上記カップリング剤を用いることで、異種材料間の界面結合性が向上する。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、及びアルミニウム系が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基等の熱硬化性基、並びに、メタクリレート及び/又はアクリレート等の放射線重合性基を有する化合物がより好ましい。また、上記シラン系カップリング剤の沸点及び/又は分解温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。つまり、200℃以上の沸点及び/又は分解温度で、且つエポキシ基等の熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレート等の放射線重合性基を有するシラン系カップリング剤が最も好ましく用いられる。上記カップリング剤の使用量は、その効果、耐熱性、及びコストの面から、使用する(A)成分100質量部に対して、0.01質量部〜20質量部とすることが好ましい。
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物には、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。上記イオン捕捉剤によって、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性が向上する。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、及びすず系、並びに、これらの混合系の無機化合物が挙げられる。
上記イオン捕捉剤の具体例としては、特に限定はしないが東亜合成株式会社製の無機イオン捕捉剤、商品名:IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、及びIXE−1100(カルシウム系)がある。これらは1種を単独で、又は2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果、耐熱性、コスト等の点から、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましい。
(フィラー成分)
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、フィラー成分を含有していてもよい。これによって、半導体用接着剤の粘度、半導体用接着剤の硬化物の物性等を制御することができる。具体的には、例えば、接続時のボイド発生の抑制、半導体用接着剤の硬化物の吸湿率の低減、等を図ることができる。
フィラー成分としては、絶縁性無機フィラー、ウィスカー、樹脂フィラー等を用いることができる。また、フィラー成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
絶縁性無機フィラーとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ及び窒化ホウ素が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素が好ましく、シリカ、アルミナ及び窒化ホウ素がより好ましい。
ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び窒化ホウ素が挙げられる。
樹脂フィラーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイミド等の樹脂からなるフィラーが挙げられる。
樹脂フィラーは、有機成分(エポキシ樹脂及び硬化剤等)と比較して熱膨張率が小さいため接続信頼性の向上効果に優れる。また、樹脂フィラーによれば、半導体用接着剤の粘度調整を容易に行うことができる。また、樹脂フィラーは、無機フィラーと比較して応力を緩和する機能に優れるため、樹脂フィラーによればリフロー試験等での剥離を一層抑制することができる。
無機フィラーは、樹脂フィラーと比較して熱膨張率が小さいため、無機フィラーによれば、接着剤組成物の低熱膨張率化が実現できる。また、無機フィラーには汎用品で粒径制御されたものが多いため、粘度調整にも好ましい。
樹脂フィラー及び無機フィラーはそれぞれに有利な効果があるため、用途に応じていずれか一方を用いてもよく、双方の機能を発現するため双方を混合して用いてもよい。
フィラー成分の形状、粒径及び含有量は特に制限されない。また、フィラー成分は、表面処理によって物性を適宜調整されたものであってもよい。
フィラー成分は、絶縁物で構成されていることが好ましい。フィラー成分が導電性物質(例えば、はんだ、金、銀、銅等)で構成されていると、絶縁信頼性(特にHAST耐性)が低下するおそれがある。
(その他の成分)
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物には、酸化防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤、フラックス剤、エラストマー,溶解促進剤等の添加剤を配合してもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの配合量については、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。
(ポジ型感光性樹脂組成物)
上記ポジ型感光性樹脂組成物をフィルム状に成形することによって、フィルム状接着剤を得ることができる。図7は、本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す端面図である。図7に示すフィルム状ポジ型感光性樹脂組成物は、上記ポジ型感光性樹脂組成物をフィルム状に成形したものである。
フィルム状ポジ型感光性樹脂組成物は、例えば、図7に示す基材5上に上記ポジ型感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させることによってフィルム状に成形される。このようにして、基材5と、基材5上に形成された上記ポジ型感光性樹脂組成物からなる接着剤層3とを備える接着シート1が得られる。図7は、本発明の接着シート1の一実施形態を示す端面図である。図7に示す接着シート1は、基材5と、これの一方面上に設けられたフィルム状ポジ型感光性樹脂組成物からなる接着剤層3とから構成される。
図8は、本発明の接着シートの他の一実施形態を示す端面図である。図8に示す接着シート1は、基材5と、これの一方面上に設けられたフィルム状ポジ型感光性樹脂組成物からなる接着剤層3とカバーフィルム7とから構成される。
フィルム状ポジ型感光性樹脂組成物は、例えば、以下の方法で得ることができる。まず、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び必要に応じて添加される他の成分を、有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製する。次に、基材5上にこのワニスを塗布してワニスの層を形成し、加熱によってワニス層を乾燥した後に基材5を除去する。このとき、基材5を除去せずに、接着シート1の状態で保存、又は使用することもできる。また、接着剤層3の基材5が設けられている面とは反対の面にカバーフィルム7を積層した上で、接着シート1の状態で保存、又は使用することもできる。
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解、又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)が挙げられる。
上記混合、及び混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。上記加熱による乾燥は、(B)成分が充分には反応しない温度で、且つ、溶媒が充分に揮散する条件で行う。上記「(B)成分が充分には反応しない温度」とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製、商品名:DSC−7型)を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。具体的には、通常60℃〜180℃で、0.1分〜90分間加熱することによってワニス層を乾燥させる。乾燥前のワニス層の厚みは、1μm〜200μmが好ましい。この厚みが1μm以上であると、接着固定機能が充分となる傾向があり、200μm以下であると、後述する残存揮発分が少なくなる傾向がある。
得られたワニス層の残存揮発分は10質量%以下が、好ましい。この残存揮発分が10質量%以下であると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因となる接着剤層内部にボイドが残存しにくくなり、耐湿性が向上する傾向がある。また、加熱時に発生する揮発成分によって、周辺材料、又は部材が汚染される可能性も低くなる傾向がある。なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断した接着シート1について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤1を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、以下の式により残存揮発分(%)を求める。残存揮発分(%)=[(M1−M2)/M1]×100
基材5は、上述の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、及びメチルペンテンフィルムを基材5として用いることができる。基材5としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤で処理されたものであってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施例及び比較例で用いた材料について以下に示す。
[(A)成分]
A−1:
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた300mLフラスコ内に、ジアミンである2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子株式会社製、商品名:BIS−AP−AF、分子量:366)を14.64g(0.04mol)、ポリオキシプロピレンジアミン(BASF社製、商品名:D−400、分子量:433)を17.32g(0.04mol)、3,3’−(1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビスプロピルアミン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:BY16−871EG、分子量:248.5)を2.485g(0.01mol)、m−アミノフェノールを2.183g(0.02mol)及び溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」と略す。)を80g仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下「ODPA」と略す。)を31g(0.1mol)、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温して、ポリイミド樹脂A−1を得た。A−1のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)=25,000であった。また、A−1のTgは75℃であった。1H−NMRにより残存するカルボキシル基がないことを確認した。
A−2:
p−t−ブトキシスチレンとスチレンとを、モル比85:15の割合で合計100質量部用意し、これらをプロピレングリコールモノメチルエーテル150質量部に溶解し、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、アゾビスイソブチロニトリル4質量部を用いて10時間、約160rpmの攪拌回転数で攪拌し、重合を行なった。その後、反応溶液に硫酸を加えて反応温度を90℃に保持して10時間反応させ、p−t−ブトキシスチレンを脱保護してヒドロキシスチレンに変換した。得られた共重合体に酢酸エチルを加え、水洗を5回繰り返し、酢酸エチル相を分取し、溶剤を除去して、p−ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体A−2を得た。この共重合体A−2のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は10000であった。また、13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンとスチレンとの共重合モル比は85:15であった。
[(B)成分]
B-1:トリス(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸) 4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールエステル
B-2:トリス(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸) 4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールエステル
[(C)成分]
C−1:ビスフェノールF型ビスグリシジルエーテル(新日鐵化学製,商品名「YDF−8170」)
C−2:1−[4−[1−(4−グリシジルオキシ)−1−メチルエチル]フェニル]−1,1−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エタン(三井化学製,VG−3101)
C−3:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW−30HM」)
E−1:4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン)−ビスフェノール(本州化学工業製,商品名「TrisP−PA−MF))
E−2:攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた100mlの三口フラスコに、乳酸エチル55gを秤取し、別途に秤取した重合性単量体(アクリル酸n−ブチル(BA)34.7g、アクリル酸ラウリル(LA)2.2g、アクリル酸(AA)3.9g、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)2.6g及び1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イルメタクリレート(商品名:FA−711MM、日立化成株式会社製)1.7g、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.29gを加えた。室温にて約160rpmの攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を止め、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を10時間保持して重合反応を行い、アクリル樹脂を得た。この際の重合率は99%であった。また、重量平均分子量は、約22000であった。
E−3:イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(東亜合成株式会社製)
I−819:チバ・ジャパン社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
<ポジ型感光性樹脂組成物の調製>
上記で得られた樹脂及び他の化合物を用いて、下記表1及び表2に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、実施例1〜6並びに比較例1及び2のポジ型感光性樹脂組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
<フィルム状接着シート>
得られたポジ型感光性樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が40μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて110℃で20分間加熱して、基材上にポジ型感光性樹脂組成物からなる接着剤層を形成した。このようにして、基材、及び基材上に形成された接着剤層を有する接着シートを得た。得られた接着シートについて以下に示す試験を行った。結果を表3に示す。
<評価試験>
支持台上にシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)を載せ、その上に、上記フィルム状接着シートを、接着剤層がシリコンウェハの裏面(支持台と反対側の面)と接するように、ロール加圧(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)によって積層した。
<パターン性>
得られた積層体を、接着剤層側からガラスマスクを介して、マスク露光機(ミカサ製、マスクアライナMA-20)を用いて露光した。実施例1〜6に関しては、ポジ型用のドットパターンのガラスマスクを、比較例1及び2に関しては、ネガ型用のドットパターンのガラスマスクを用いた。露光後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.38%水溶液を用いて現像した。その後、水でリンスした。50μm以下のドットパターンが形成できるものをA、60μmのドットパターンが形成できるものをB、ドットパターンが形成できないものをCとした。
<初期導通性(接続性)>
支持台上に接続部(金バンプを有する)付きシリコンチップ(1cm×1cm、厚さ400μm、端子部は40μm×40μm、高さ40μm、100μmピッチでチップのペリフェラル部に沿って2列等間隔に存在)を載せ、その上に、上記実施例1〜6、比較例1及び2の接着剤層を有する接着シートを、接着剤層がシリコンウェハの端子側と接するように、真空ラミネーター(温度80℃、圧力0.5MPa、時間30秒)によってラミネートした。
得られた積層体を、接着剤層側からガラスマスクを介して、マスク露光機(ミカサ製、マスクアライナMA-20)を用いて露光した。実施例1〜6に関しては、ポジ型用の直径φ60μmのドットパターンを、比較例2に関しては、ネガ型用の直径φ60μmのドットパターンのガラスマスクを用いて、シリコンチップの接続部部分が開口するように露光した。露光量は直径φ60μmのドットパターンが開口する最少の露光量とした。露光後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.38%水溶液を用いて現像し、その後、水でリンスして、シリコンチップの接続部部分が直径φ60μmで開口された、接着剤層付きシリコンチップを得た。比較例1はパターン形成が出来なかったため、評価しなかった。
上記接着剤層付きシリコンチップをフリップチップ実装装置FCB3(パナソニック社製、商品名)で、ガラスエポキシ基板(ガラスエポキシ基材:0.4mm厚、銅配線:9μm厚、ソルダーレジスト付き、日立化成株式会社製)上に実装した(実装条件:フィルム状接着剤の圧着温度250℃、圧着時間T:10秒間、0.5MPa)。これにより、図5と同様の半導体装置を得た。
上記のようにガラスエポキシ基板と接続部付き半導体チップとをデイジーチェーン接続した後、マルチメータ(ADVANTEST社製)により接続抵抗値を測定し、実装後の初期導通の可否(導通性)を評価した。導通した場合を「A」とし、導通しなかった場合を「C」として評価した。
<加熱時の流動性>
上記初期導通性(接続性)試験後、シリコンチップを上から見て、感光性WLUF(ウェハ・レベル・アンダーフィル)が実装前よりはみ出している場合は流動性A、はみ出していない場合は流動性Cとした。
<耐リフロー性>
シリコンウェハ、及び接着剤層からなる積層体を、5mm×5mmの大きさに個片化した。ガラス基板の代わりにプリント基板(ガラスエポキシ基板15mm×15mm×0.15mm)を用いて、個片化したシリコンチップ、接着剤パターン、及びプリント基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。得られたサンプルを、オーブン中で180℃、3時間の条件で加熱した。加熱後のサンプルを、温度85℃、湿度60%の条件下で168時間処理した後、温度25℃、湿度50%の環境下に置いた後、250℃、10秒のIRリフローを行い、剥離の有無を外観観察及び超音波探査装置(SAT)で観察した。全く剥離が見られなかったものをA、剥離が50%未満であったものをB、剥離が50%以上であったものをCとして、耐リフロー性の評価を行った。
表3から明らかなように、実施例1〜6のポジ型感光性樹脂組成物は、パターン性良好であり、フリップチップ実装中の流動性が低く、初期導通性が良好であった。またリフロー性も良好であった。
一方、比較例1では未露光部が現像時に流されてしまい、パターンを形成することができなかった。また、比較例2はラジカル発生剤I−819でネガ型のパターン形成できるが、実装中の流動性が低く、初期の導通が取れなかった。