本発明において用いるポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものを用いることができる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
ポリマの共重合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
ポリエステルは、二軸延伸を施せること、および、寸法安定性などの本発明の効果を発現するために、ガラス転移温度が150℃未満のものを好適に使用できる。本発明において用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)が好ましい。特に、結晶子サイズや結晶配向度を高めるプロセスが適用しやすいことから主成分はポリエチレンテレフタレートが好ましい。ここで、主成分とはフィルム組成中80質量%以上であることをいう。また、これらの共重合体や変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。特にポリエステルと相溶するポリマーが好ましく、ポリエーテルイミド樹脂などが好ましい。ポリエーテルイミド樹脂としては、例えば以下で示すものを用いることができる。
(ただし、上記式中R1は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、R2は6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
または
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem1000」、「Ultem1010」、「Ultem1040」、「Ultem5000」、「Ultem6000」および「UltemXH6050」シリーズや「Extem XH」および「Extem UH」の登録商標名等で知られているものである。
本発明の実施の形態にかかる二軸配向ポリエステルフィルムは、水溶性高分子を含む塗布層を少なくとも片面に有する二軸配向ポリエステルフィルムである。特に、本発明の塗布層表面の幅方向および長手方向の突起間隔Sm−X、Sm−Yを得、耐削れ性を向上させるためには、セルロース系樹脂および第三成分(後述する樹脂エマルジョンの固形分)をさらに含んだ構成成分とする塗布層であると好ましい。これらの3成分が同時に存在することにより、これら成分による突起を長く連なった形状とすることが可能となり、突起の耐久性を高めることができる。このため耐削れ性に優れたフィルムとすることが可能である。
本発明において用いるセルロース系樹脂(以下A成分と略称する。)としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体が好ましく例示され、中でもメチルセルロースが本発明の塗布層表面の幅方向および長手方向の突起間隔Sm−X、Sm−Yや長さが6μm以上の突起を形成する上で特に好ましい。
本発明において用いる水溶性高分子(以下B成分と略称する。)としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリオレフィンなどのイオン変性ポリマーまたはその塩を水に溶解したものであり、それらのブレンド体も使用できる。また、必要に応じてシランカップリング剤やメラミン樹脂やエポキシ化合物等の架橋剤を用いて架橋することもできる。B成分は、A成分と基材フィルムの接着性およびA成分とC成分の接着性を向上させることができるため、塗布層表面の幅方向および長手方向の突起間隔Sm−X、Sm−Yや長さが6μm以上の突起の耐削れ性を向上させる働きがある。
ポリエステルの中でも、水溶性ポリエステルが好ましく、例えば、塗布層を構成する水溶性ポリエステルとしては、全ジカルボン酸成分中の0.5〜40モル%をスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸としたジカルボン酸と多価アルコールとからなるポリエステル共重合体を挙げることができる。該スルホン酸金属塩基含有ジカボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等の金属塩が挙げられ、特に好ましいのは、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸である。あるいは、分子内に遊離カルボン酸およびカルボン酸塩基を少なくとも一種有する水性ポリエステルと2個以上のエポキシ基を有する架橋剤、および、必要に応じて、反応促進化合物を含むものを挙げることができる。この水性ポリエステルの分子内にカルボン酸基を導入するためには、例えば無水トリメリット酸、トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸等の多価化合物をポリマ製造原料の一つとして用いることが好ましい。また、カルボン酸塩はポリマ中に導入されたカルボン酸基をアミノ化合物、アンモニア、アルカリ金属等で中和することによって導入することができる。ポリエステル共重合体のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
ポリウレタンとしては、特に限定されないが、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基または硫酸半エステル塩基により水への親和性が高められたポリウレタンを挙げることができる。ただし、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基または硫酸半エステル塩基等の塩基の量は0.5〜15質量%が望ましい。あるいは、アニオン性基を有するポリウレタン系樹脂あるいはそれらに準じたポリウレタン系樹脂を用いることができる。ここでポリウレタン形成成分の主要な構成成分は、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖長延長剤、架橋剤等である。また、分子量300〜20,000のポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物からなる樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基は、好ましくは−SO3H、−SO2H、−COOHおよびこれらのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩あるいはマグネシウム塩として用いられる。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基の量は0.05〜8質量%が望ましい。
ポリアクリルとしては、40モル%のアクリルおよび/またはメタクリルモノマと、その他の官能基含有モノマ0.1〜20モル%と一種またはそれ以上のハロゲン非含有エチレン性不飽和モノマ約0〜49.9モル%とコポリマ、あるいは少なくとも25モル%のアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸メタクリル酸のアルキルエステルの中から選ばれたコモノマと1〜50モル%のビニルスルホン酸およびp−スチレンスルホン酸ならびにこれらの酸の中から選ばれたコモノマから導かれる共重合体が望ましい。
本発明において用いる第三成分(樹脂エマルジョンとして用いる塗液の固形分(以下C成分と略称する。))とは、樹脂が溶剤に分散してエマルジョン状態となったものを塗布して乾燥せしめた後の残分(固形分)である。好ましいエマルジョン状態の樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂が例示でき、これら樹脂は単一重合体でも共重合体でもよく、また混合体でもよい。好ましく例示できる共重合体としては、ウレタンアクリル共重合体、アクリル系共重合体、架橋スチレンアクリル共重合体等を例示することができる。特に、他成分(A、B成分)との分散安定性と基材フィルムとの接着性、塗布層表面に形成された上記3成分の樹脂による突起の耐削れ性の観点でアクリル系共重合体エマルジョンが好ましい。
前記樹脂は溶剤中にエマルジョンの状態で分散しており、好ましい分散径としては20〜80nmであり、さらに好ましくは30〜50nmであるとエマルジョン径に由来した突起がA成分による長く連なった突起に埋もれ一体化するため耐削れ性が良好となり好ましい。
前記樹脂エマルジョンに用いられる溶剤は、塗布層を構成する他成分との安定分散性のしやすさから水が好ましい。
本発明において用いることができるアクリル系共重合体エマルジョンとしては、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)、分子内にカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体(b−1)、及び/又は分子内に水酸基を有するエチレン系不飽和単量体(b−2)、分子内にメチロール基を有する不飽和カルボン酸アミド(c)、上記(a)〜(c)と共重合可能な該(a)〜(c)以外の単量体(d)、及び水分散可能な高分子化合物(e)から構成される。
上記の(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル;例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数5〜12のシクロアルキルエステル;例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数7〜12のアラルキルエステル;などを挙げることができる
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)の使用量は、共重合体を構成する単量体(a)〜(d)の合計100質量%に対して、40〜99質量%、好ましくは80〜99質量%、である。該単量体(a)の使用量が該上限値未満であれば、重合安定性が良好となり、また得られるアクリル系共重合体エマルジョンの被膜性能も十分であるので好ましい。一方、該下限値未満であれば、得られるアクリル系共重合体エマルジョンで形成される被膜の耐候性、造膜性等が低下する傾向がある。
上記のアクリル系共重合体エマルジョンは、分子内にカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体(b−1)、及び/又は分子内に水酸基を有するエチレン系不飽和単量体(b−2)を含有する。
分子内にカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体(b−1)は、分子内に一個又は二個以上のカルボキシル基を含むエチレン系不飽和単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸等の不飽和モノ-もしくはジ-カルボン酸単量体が好適に使用できる。
さらに分子内にカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体(b−1)として、上記の他、例えば、モノブチルマレート、モノ−2−エチルヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体;例えば、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のジカルボン酸モノ多価アルコールエステルの(メタ)アクリル酸エステル;例えば、(メタ)アクリル酸ダイマー(好ましくはnの平均値約1.4のもの)、ω−カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(好ましくはnの平均値約2のもの)等;も使用することができる。
これらの分子内にカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体(b−1)の中では、入手の容易さ、共重合性のよさ、得られる水性アクリル系共重合体エマルジョンの貯蔵安定性のよさ等の観点からアクリル酸またはメタクリル酸の使用が特に好ましい。
このような分子内にカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体(b−1)の使用量は、単量体(a)〜(d)の合計100質量%中、0.5〜30質量%、好ましくは0.8〜10質量%である。該単量体(b)使用量が該下限値以上であれば、得られるアクリル系共重合体エマルジョンの機械安定性が十分で、架橋密度が低下しないため好ましく、該上限値以下であれば、該共重合体エマルジョンの製造時の粘度が高くなり過ぎないので好ましい。
同様に、分子内に水酸基を有するエチレン系不飽和単量体(b−2)としては、例えば、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシルプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アリルエーテル、アリルアルコール、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の分子内に水酸基有する単量体を用いることができる。
上記のアクリル系共重合体エマルジョンは上記分子内にカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体(b−1)と、分子内に水酸基を有するエチレン系不飽和単量体(b−2)のどちらか一方を含むことが好ましく、両単量体を含むものであってもよい。両単量体を含む場合は単量体合計として単量体(a)〜(d)の合計100質量%中、0.5〜30質量%、好ましくは1〜10質量%である。
上記のアクリル系共重合体エマルジョンは、分子内にメチロール基を有する不飽和カルボン酸アミド(c)を含有する。具体的には、例えば、N−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミド等を使用することができる。これらは、単独或いは併用して使用することができ、単量体(c)の使用量は、単量体(a)〜(d)の合計100質量%中、0.5〜15質量%、好ましくは0.8〜10質量%である。上限値以下であれは、該分散液の製造安定性が良いので好ましく、下限値以上であれば、被膜強度及び耐溶剤性等が十分であるので好ましい。
単量体(a)〜(c)と共重合可能な該(a)〜(c)以外の単量体(d)としては、例えば、以下のような各単量体を例示することができる。
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクレート、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテルなどの分子内にグリシジル基を有する単量体。
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン系不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル類;例えば、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド類などの分子内にアミノ基又は置換アミノ基を有する単量体。
2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、4−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート等の分子内にアセトアセチル基を有する単量体。
ジビニルベンゼン、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の2個以上のラジカル重合性不飽和基を持つ単量体。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランを有する単量体。
チッソ株式会社製サイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725等に代表されるジメチルシロキサン骨格を有する単量体。
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン系単量体。
スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレ ン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエンの芳香族ビニル単量体。
蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」等の飽和脂肪酸ビニル単量体。
例えば、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体。
以上を挙げることができ、またこれらの他、N−プロピル−N−[β−(メタ)アクリロキシエチル]パーフルオロオクタンスルホンアミド等の特殊なフッ素原子含有単量体も使用できる。
これらの単量体は、得られるアクリル系共重合体エマルジョンの安定性及びこれより形成される皮膜性能の観点から、任意に選択し使用することができ、上述していないものでも使用することは可能である。
これら単量体(d)の共重合量は単量体(a)〜(d)の合計100質量%に対して、一般に0〜30質量%の範囲である。
上記のアクリル系共重合体エマルジョンの共重合体のTgは、0〜100℃、好ましくは30〜90℃であると該共重合体に由来する突起が延伸時の熱で軟化しやすく平坦となるため、A成分に由来する突起と一体化し、分断されずに長く連なった突起形態を形成しやすくなる。
本発明におけるA成分の固形分濃度は0.05〜0.15質量%が好ましい。A成分の固形分濃度が0.05質量%未満では、塗布層表面の突起数が減少し、6μm以上に長く連なった突起が形成されにくくなり、耐削れ性が低下しやすい。また、固形分濃度が0.15質量%を超えると、突起高さが高くなり平滑性が損なわれ、中心線表面粗さRaが高くなる傾向がある。
本発明において、塗液の固形分濃度は0.3〜1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜1質量%である。塗布量は10〜60mg/m2であることが、長さが6μm以上の突起形成および中心線表面粗さRaを満足する上で好ましい。
本発明の実施の形態にかかる二軸配向ポリエステルフィルムの塗布層の表面には、粒状、直線状、紐状、曲線状、あるいは分岐箇所を有しながら網目状に連なる不定形かつ不均一な突起が多数形成されていることが好ましい。このような不定形な突起の総個数としては300個/30μm2以上、好ましくは500個/30μm2以上、さらに好ましくは1,000個/30μm2以上形成されていると走行性、走行耐久性が良好となり好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm−Xと長手方向の突起間隔Sm−Yはいずれも3〜10μmである。好ましくはいずれも3.5〜9μm、さらに好ましくは4.5〜8μmである。突起間隔が10μmより大きいと走行性不良により耐削れ性が低下する場合がある。また、突起間隔が3μmよりも小さいと突起個数が多くなりすぎ、やはり耐削れ性が低下する傾向がある。
本発明の実施の形態にかかる突起の長さとは、上述の種々の形態を有する各突起において最も長い中心軸に相当する直線の長さ(長径)であり、原子間力顕微鏡(以下AFMと略称する。)による観察像でしきい値(Threshold height)法を用いて計測することが可能である。突起の高さのしきい値としては0.5〜10nm、好ましくは1〜8nmであり、さらに好ましくは1.5〜5nmの範囲に適宜設定して、指定したしきい値以上の突起を抽出し各突起について長さを計測する。詳細については後述する。
本発明のフィルムには、塗布層表面に突起を有するが、その長さは6μm以上であることが好ましい。形状としては、直線状、紐状、曲線状、あるいは分岐しながら網目状に連なった形態を有していても構わないが、耐削れ性を飛躍的に向上させるには、分岐しながら網目状に長く連なった形態の突起が特に好ましい。突起の長さが6μm未満では耐削れ性が低下することがある。突起長さの上限は特に限定されず、長さが長いと耐削れ性が良好になる傾向があり好ましいが、製法上の限界としては50μm程度である。
上記した突起について、長さが6μm以上の突起の個数は1〜100個/30μm2であることが好ましい。より好ましくは3〜80個/30μm2である。長さが6μm以上の突起が存在しない場合、耐削れ性が低下することがある。突起個数が100個/30μm2を超えて形成されると平滑性が低下する場合がある。
本発明における最長突起とは、上記の中心軸が最も長い突起である。この最長突起は、耐削れ性の観点より分岐しながら網目状に長く連なっている形態であると好ましい。最長突起は、6μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。最長突起が長いと突起の走行耐久性が増し、耐削れ性が良好となる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの塗布層側表面の中心線表面粗さRaは0.5nm以上5nm未満であることが好ましく、より好ましくは1〜4nmである。塗布層側表面の中心線表面粗さRaが上記の範囲外であると塗布層の耐久性や耐削れ性が低下することがある。
塗布層を形成するための塗液には、無機粒子に起因する不活性粒子を含有しないことが耐削れ性の観点で好ましい。無機粒子に起因する不活性粒子は、フィルムの製造工程で変形しないため、塗布層表面に急峻な突起を形成し塗布層との接着性あるいは密着性が低下し、工程内で脱落しやすい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向(MD)のヤング率が3〜6GPaであることが好ましい。長手方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の保管時の張力による保存安定性が良好となる。6GPaよりも大きくするにはMD倍率を上げることになり、製膜性が低下しやすい。長手方向のヤング率の好ましい範囲は3.4〜5.5GPa、さらに好ましい範囲は3.8〜5.0GPaである。長手方向のヤング率は長手方向の延伸倍率で制御することができる。長手方向の倍率が高いほど長手方向のヤング率が高くなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向(TD)のヤング率が4〜8.5GPaであることが好ましい。幅方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の環境変化による寸法安定性が良好となる。幅方向のヤング率の上限は、より好ましくは8GPa、さらに好ましくは7GPaである。幅方向のヤング率の下限は、より好ましくは4.5GPa、さらに好ましくは5GPaである。幅方向のヤング率は後述する1段目の延伸およびまたは2段目の延伸温度や倍率によって制御することができる。特にトータルの幅方向の倍率が影響し、トータルの幅方向の倍率が高いほど幅方向のヤング率が高くなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも2層(La層|Lb層)以上の積層構成を有していることが好ましく、La層は平滑性を担い、Lb層は走行性を向上させる目的で不活性粒子を含有する層とすることが耐削れ性の観点から有効である。
La層上には塗布層が塗設され、La層中には塗布層側表面の中心線表面粗さRaを損なわない範囲内であれば、平均粒径が10〜100nm、好ましくは20〜80nmの不活性粒子を0.01〜0.8質量%の割合で含有してもかまわない。好ましく例示できる不活性粒子としては、無機粒子、有機粒子、いずれも用いることができる。もちろん、1種類の粒子でも、2種類以上の粒子を併用してもかまわない。具体的な種類としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ珪酸塩、カオリン、タルク、モンモリロナイト、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子などが添加されてもよい。
Lb層は走行性付与の観点より、平均粒径が0.05〜0.8μmの不活性粒子を含有させることが有効である。含有量は好ましくは0.05〜0.5質量%である。不活性粒子としては特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、いずれも用いることができる。もちろん、1種類の粒子でも、2種類以上の粒子を併用してもかまわない。具体的な種類としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ珪酸塩、カオリン、タルク、モンモリロナイト、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子などが添加されてもよい。
Lb層表面の中心線表面粗さは3〜15nmであることが好ましく、より好ましくは5〜12nmである。Lb層の表面粗さが3〜15nmの範囲外であると走行性や耐削れ性が低下しやすい。Lb層の表面粗さの制御方法としては、該層に含有される粒子の粒径と含有量によって制御することが可能である。また、該層の厚み(t)を0.3〜1μmに設定し、さらに該層に含有される粒子の平均粒径(d)との関係(t/d)を0.1〜10、好ましくは0.5〜5に設定することで制御できる。
Lb層表面には、高さが300nm以上の突起が30個/mm2未満の頻度で形成されていることが電磁変換特性の観点から好ましい。より好ましくは20個/mm2以下であり、さらに好ましくは10個/mm2以下である。Lb層表面の高さ300nmを超える突起は、Lb層表面に突起を形成するだけでなく、反対面のLa層表面にもブロードな突起を形成することによって、La層表面の平滑性を低下させる。その結果、塗布層の中心線表面粗さRaを本発明の範囲内に制御できない場合がある。また、Lb層上にバックコート層を塗設した後もバックコート層表面に該突起に起因する凹凸がトレースされ、これがロールとして巻き上げた時に磁性層表面に転写し磁性層の平滑性を低下させ電磁変換特性を低下させることがある。
Lb層表面の高さ300nm以上の突起を上記した個数密度の範囲内に制御するには、含有粒子の平均粒子径と含有量で制御が可能で、平均粒子径は0.05〜0.5μmとすることが有効である。また粒子の含有量は0.08〜0.3質量%の範囲内で添加することが好ましい。
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムとしての厚みは、用途に応じて適宜決定できるが、通常リニア磁気記録媒体用途では1〜7μmが好ましい。この厚みが1μmより小さい場合、磁気テープにした際に電磁変換特性が低下することがある。一方、この厚みが7μmより大きい場合は、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量化が困難になる場合がある。したがって、高密度磁気記録媒体用途の場合、厚みの下限は、好ましくは2μm、より好ましくは3μmであり、上限は、好ましくは6.5μm、より好ましくは6μmである。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いる場合は、塗布層上に磁性層を設けることが高密度磁気記録媒体を得る上で好ましく、優れた電磁変換特性を発揮できる。
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造される。
まず、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムを製造する。ポリエステルフィルムを製造するには、たとえばポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。
また、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
フィルムの延伸方式としては同時二軸延伸法を用いることが好ましい。同時二軸延伸法は、製膜工程で長手方向、幅方向に同時に延伸が進むため塗布層表面の突起が分断されることなく長く成長するため、塗布層表面の突起長さや突起間隔Smを本発明の範囲内に制御し易くなるため特に有効である。
延伸装置としては、例えば同時二軸延伸テンターなどが好ましく例示され、中でもリニアモータ駆動式の同時二軸テンターが破れなくフィルムを延伸する方法として特に好ましい。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。もちろん、本願はPETフィルムに限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
まず、ポリエチレンテレフタレートを準備する。ポリエチレンテレフタレートは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。
フィルムを構成するポリエステルに不活性粒子を含有させるには、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。不活性粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないPETで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。
次に、得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなる高精度ろ過フィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けることは本発明の特徴面を形成する上で極めて好ましい。フィルムを積層するには、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層するとよい。
次に、この未延伸フィルムを同時二軸延伸テンターに導いて、長手および幅方向に同時に二軸延伸を行う。延伸速度は長手、幅方向ともに100〜20,000%/分の範囲で行うのが好ましい。より好ましくは、500〜10,000%/分、さらに好ましくは2,000〜7,000%/分である。延伸速度が100%/分よりも小さい場合には、フィルムが熱にさらされる時間が長くなるため、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず、製造したフィルムのヤング率が低下することがある。また、20,000%/分よりも大きい場合には、延伸時点で分子間の絡み合いが生成しやすくなり、延伸性が低下して、高倍率の延伸が困難となることがある。
また、延伸温度は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度Tgを目安として決めることができる。長手方向および幅方向それぞれの1段目の延伸工程における温度は、Tg〜Tg+30℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg+5℃〜Tg+20℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、再延伸性が低下して、高倍率に安定して延伸することが困難となることがある。また、上記範囲よりも延伸温度が高い場合には、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず、製造したフィルムのヤング率が低下することがある。
延伸倍率は、用いるポリマーの種類や延伸温度によって異なり、また多段延伸の場合も異なるが、総面積延伸倍率(総縦延伸倍率×総横延伸倍率)が、10〜30倍の範囲になるようにすることが好ましい。より好ましくは12〜25倍である。長手方向、幅方向の一方向の総延伸倍率としては、3〜8倍が好ましく、より好ましくは、3.5〜7倍である。延伸倍率が上記範囲より小さい場合には、延伸ムラなどが発生しフィルムの加工適性が低下することがある。また、延伸倍率が上記範囲より大きい場合には、延伸破れが多発して、生産性が低下する場合がある。なお、各方向に関して延伸を多段で行う場合、1段目の長手、幅方向それぞれにおける延伸倍率は、2.5〜5倍が好ましく、より好ましくは3〜4倍である。また、1段目における好ましい面積延伸倍率は6〜12倍であり、より好ましくは、8〜10倍である。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法が多段延伸、すなわち再延伸工程を含む場合、2段目の延伸温度は未延伸フィルムの融点Tm−80℃〜Tm−20℃が好ましく、さらに好ましくはTm−70℃〜Tm−30℃である。(なお、3段の延伸を行う場合、2段目の延伸温度としては上記温度範囲の中でも比較的低い延伸温度とする方がよい)。延伸温度が上記範囲を外れる場合には、熱量不足や結晶化の進みすぎによって、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、十分に配向を高めることができず、強度が低下する場合がある。
また、再延伸を行う場合の一方向における延伸倍率は、1.05〜2倍が好ましく、より好ましくは1.2〜1.6倍である。
続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。熱処理条件は、ポリマーの種類によっても異なるが、熱処理温度は、170℃〜200℃が好ましく、熱固定温度の上限は、より好ましくは190℃である。熱固定温度の下限は、より好ましくは175℃である。熱固定処理時間は0.5〜10秒の範囲、弛緩率は0〜2%で行うのが好ましい。熱固定処理後は把持しているクリップを開放することでフィルムにかかる張力を低減させながら室温へ急冷する。その後、フィルムエッジを除去しロールに巻き取り、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
そして、このようにして製造された二軸配向ポリエステルフィルムはコア上に巻き取られフィルムロールとなる。
なお、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムに、必要に応じて、熱処理、マイクロ波加熱、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチング、などの任意の加工を行ってもよい。
本発明において塗布層を塗設する方法としては、上記フィルム製造過程の同時二軸延伸前に塗設することが好ましい。また、塗液の塗れ性が悪く弾く場合にはコロナ放電処理を施しコーティングすることが好ましい。上述の連続製造工程中で塗布層をコーティングすることはコスト的に有利となる。
次に、磁気記録媒体を製造する方法を説明する。
上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体(二軸配向ポリエステルフィルム)を、たとえば0.1〜3m幅にスリットし、速度20〜300m/min、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面(塗布層表面)に磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより逐次または同時に重層塗布する。なお、上層に磁性塗料を厚み0.1〜0.3μmで塗布し、下層に非磁性塗料を厚み0.5〜1.5μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面(Lb層表面)にバックコートを厚み0.3〜0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行う。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、1/2インチ(1.27cm)幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
・変成ポリウレタン : 10質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
・2−エチルヘキシルオレート : 1.5質量部
・パルミチン酸 : 1質量部
・カーボンブラック : 1質量部
・アルミナ : 10質量部
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95質量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10質量部
・アルミナ : 0.1質量部
・変成ポリウレタン : 20質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO4やLTO5など))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)突起間隔Sm(Sm−X、Sm−Y)
原子間力顕微鏡を用いて、場所を変えて10視野測定を行った。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをピエゾにセットして測定する。得られた画像について、Off−Line機能のRoughness Analysisにて各画像の平均最大突起高さ(Rpm)を求めた後、Off−Line機能のSection Analysis にて、Z軸のスケールをRpm値の2倍に設定し、X軸と平行なマーカー(直線)を等間隔に5本引き、各マーカーに対応する粗さ曲線を求める。この粗さ曲線において、中心線を通過し、高さRpm値を通過後、再度中心線を通過するものを突起と定義し、この突起個数(Pc)をカウントした。5本/画像の直線においてそれぞれ突起個数を求め、同様にY軸においても行い、X軸、Y軸の突起個数を求めた。各画像において同様の操作を実施し、X軸とY軸の突起個数の平均(Pc−X、Pc−Y)を求めた。走査範囲(30μm)を突起個数(Pc−X、Pc−Y)で除した値を突起間隔をそれぞれSm−X、Sm−Yとした。
但し、画像の両エッジ部は、中心線と交わる交点が片側のみしか観察できていない場合があるが、この場合も突起とみなし、個数に入れる。
測定装置 :NanoScope (R)IIIa AFM
(Digital Instruments社製)
カンチレバー :シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :30μm□
走査速度 :0.5Hz
Flatten Auto :オーダー3
(2)塗布層表面の長さが6μm以上の突起個数、最長突起
上記(1)の装置を用いて、場所を変えて10視野測定を行った。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをピエゾにセットして測定する。得られた画像について、Off−Line機能のParticle Analysisにて、Threshold heightを変更しながら最も長い突起長さを計測した。他の画像についても同様の方法で最も長い突起長さを求め、これらの平均を最長突起とした。さらに、各画像毎にその画像にて最も長い突起長さが観測されたときと同一のThreshold heightに設定して長さが6μm以上の突起個数を画像から計測し、10視野の平均値を長さが6μm以上の突起個数とした。条件は上記(1)と同条件で実施した。
(3)塗布層側表面の中心線表面粗さRa
上記(1)に記載の装置を用いて、場所を変えて10視野測定を行った。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをピエゾにセットして測定する。得られた画像について、Off-Line機能のRoughness Analysisにて算出し、Raを測定した。条件は上記(1)と同条件で実施した。
(4)ヤング率
ASTM−D882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
・測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
・試料サイズ:
フィルム幅方向のヤング率測定の場合
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
フィルム長手方向のヤング率測定の場合
フィルム幅方向2mm×フィルム長手方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム長手方向に8mm)
・引張り速度:1mm/分
・測定環境:温度23℃、湿度65%RH
・測定回数:5回。
(5)融点(Tm)、微小融解ピーク温度(T−meta)、融解熱量(ΔHm)
JIS−K7121(1987年)に従って、示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで、昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)、Tmの少し低温側に現れる微小吸熱ピーク温度をT−metaとした。Tmのピーク面積から算出される熱量を融解熱量ΔHmとする。
(6)ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS−K7121(1987年)に従って決定する。
・装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
・測定条件
・加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
・温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
・温度変調振幅:±1K
・温度変調周期:60秒
・昇温ステップ:5K
・試料質量 :5mg
・試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
・参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度は下記式により算出する。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(7)不活性粒子の平均粒径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍で観察する。この時、写真上で1cm以下の粒子が確認できた場合はTEM観察倍率を5万倍に変えて観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野測定し、写真に撮影された単分散した粒子全てについて等価円相当径をもとめ、その平均を不活性粒子の平均粒径とした。ここで、1万倍で観察した写真上に不定形の凝集粒子が確認できた場合、これは粒子の平均粒径には含めないこととする。
フィルム中に粒径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記の等価円相当径の個数分布が2個以上のピークを有する分布となる。この場合は、それぞれのピーク値をそれぞれの粒子の平均粒径とする。
(8)不活性粒子の含有量
ポリマー1gを1N−KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。
(9)走行性
フィルムを幅12.65mmのテープ状にスリットしたものをテープ走行試験機SFT−700型((株)横浜システム研究所製)を使用し、23℃、65%RH雰囲気下にて、フィルムに荷重20gを掛けた状態で走行させ、走行後の摩擦係数(μk)を下記の式より求めた。なお、フィルムのX層表面をガイドに接するようにセットし、5回の測定の平均値で走行性を評価した。
μk=2/πln(T2/T1)
ここで、T1は張力荷重(20gf)、T2は走行中の張力である。ガイド径は6mmΦであり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.2S)、巻き付け角は90゜、走行距離は10cm、走行速度は3.3cm/秒である。この測定によって得られたμkが0.6以下の場合は走行性:良好、0.6を越える場合は走行性:不良と判定した。
(10)走行耐久性
上記(9)に記載の測定方法で、50回往復走行させ、1回目の摩擦係数(μk1)と50回走行後の摩擦係数(μk50)の差が±0.1未満の場合を走行耐久性:優、±0.1〜±0.2の場合を走行耐久性:良、±0.2を超える場合を走行耐久性:不良と判断した。
(11)耐削れ性
上記(9)に記載の装置を用いて、フィルムを幅12.65mmのテープ状にスリットし、フィルム表面(塗布層表面)に片刃を垂直に接触させ、片刃とフィルムが接触した状態からさらに1mm押し込んだ状態で10cm走行させる(走行張力:200g、走行速度:0.5cm/秒)。この時、片刃の先に付着したフィルム表面の削れ物の高さを顕微鏡(観察倍率200倍)で読みとり、削れ量とした。磁性層を塗布する塗布層表面について、この削れ量が10μm未満の場合は耐削れ性:優、10μm以上30μm以下の場合は、耐削れ性:良、30μmを超える場合は、耐削れ性:不良と判定した。
(12)電磁変換特性
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面(塗布層表面)に下記に従って、最初に非磁性塗料を塗布し乾燥した後さらに磁性塗料を塗布乾燥させ1/2インチ(12.65mm)幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、磁気テープとする。
(以下、「部」とあるのは「質量部」を意味する。)
磁性層形成用塗布液
バリウムフェライト磁性粉末 100部
〔板径:20.5nm、板厚:7.6nm、板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)飽和磁化:44Am2/kg、BET比表面積:60m2/g〕
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α−アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
非磁性層形成用塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長0.09μm、BET法による比表面積 50m2/g
pH 7
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面処理層Al2O3 8質量%
カーボンブラック 25部
コンダクテックスSC−U(コロンビアンカーボン社製)
塩化ビニル共重合体 MR104(日本ゼオン社製) 13部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 3.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 205部
シクロヘキサノン 135部
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ−ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2,000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ−トを非磁性層の塗料には5.0部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層形成用塗布液を、支持体のC層表面に乾燥後の厚さが1.0μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが0.10μmになるように逐次重層塗布を行い、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに6,000G(600mT)の磁力を持つコバルト磁石と6,000G(600mT)の磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。次いで7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にて処理を行った。その後、厚み0.4μmのバック層(カーボンブラック 平均粒子サイズ:17nm 100部、炭酸カルシウム平均粒子サイズ:40nm 80部、αアルミナ 平均粒子サイズ:200nm 5部をニトロセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネートに分散)を塗布した。スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付け、テープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。
C/Nの測定にはリールtoリールテスタを用い、市販のMRヘッドを搭載して下記の条件で実施した。
相対速度:2m/sec
記録トラック幅:18μm
再生トラック幅:10μm
シールド間距離:0.27μm
記録用信号発生器:HP社製 8118A
再生信号処理:スペクトラムアナライザ
作製したカセットテープを用いて、市販のLTO4テープ(富士フィルム社製)を0dBとして表し、1.5dB以上は○、1.5未満〜0dBは△、0dB未満は×と判定した。○が望ましいが、△でも実用的には使用可能である。
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリエチレンナフタレートをPEN、ポリエーテルイミドをPEIと表記する。
(1)PETペレットの作製:テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料−1)。
(2−a)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2a)を得た。
(2−b)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2b)を得た。
(2−c)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を95質量部と平均粒径60nmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを5質量部(コロイダルシリカ粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2c)を得た。
(2−d)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を90質量部と平均粒径100nmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を1質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2d)を得た。
(3)2成分組成物(PET/PEI)ペレットの作製:温度280℃に加熱されたニーデ
ィングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記方法で得られたPETペレット(原料−1)とSABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“Ultem1010”のペレットを供給して、剪断速度100sec−1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを50質量%含有した2成分組成物ペレットを得た。なお、作製した2成分組成物ペレットのガラス転移温度は150℃であった(原料−3)。
(実施例1)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、Lb層原料として、PETペレット(原料−1)73質量部、平均粒径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)10質量部、平均粒径0.45μm架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)0.5質量部、および平均粒径60nmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2c)16.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、La層原料として、PETペレット(原料−1)を100質量部を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(La層|Lb層)=10|1とし、La層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
この積層未延伸フィルムのLa層上にコロナ放電処理を施した後、次の水溶液をメイヤーバー方式にて塗布した後、リニアモーター式クリップを有する同時二軸延伸テンターを用いて、長手および幅方向に同時に90℃、延伸速度6,000%で3.5倍×4.2倍延伸し、次いで延伸温度180℃で幅方向に1.2倍再延伸を実施した後、定張下で190℃で5秒間熱処理を施し、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
[塗液]
メチルセルロース 0.08質量%
水溶性ポリエステル 0.35質量%
(テレフタル酸70モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1の共重合体)
アクリル系共重合体エマルジョン 0.25質量%
(アクリル酸エステル98質量%、N−メチロールアクリルアミド1質量%、アクリル酸1質量%のアクリル系共重合体:アクリル系共重合体の分散径50nm)
シランカップリング剤 0.01質量%
(3-(2-アミノエチルアミノ)フ゜ロヒ゜ルトリメトキシシラン)
固形分塗布量 42mg/m2
得られた二軸配向ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すように、走行性、走行耐久性、耐削れ性に優れた特性を有していた。
(実施例2)
Lb層に用いる原料をPETペレット(原料−1)80質量部、平均粒径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)10質量部、平均粒径100nmのコロイダルシリカ(原料−2d)10質量部、塗液を下記の通りに変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
[塗液]
メチルセルロース 0.05質量%
水溶性ポリエステル 0.35質量%
(テレフタル酸70モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1の共重合体)
アクリル系共重合体エマルジョン 0.25質量%
(アクリル酸エステル98質量%、N−メチロールアクリルアミド1質量%、アクリル酸1質量%のアクリル系共重合体:アクリル系共重合体の分散径50nm)
メラミン系架橋剤 0.03質量%
固形分塗布量 42mg/m2
(実施例3)
塗布層の組成および延伸倍率を表1に示した通りに変更した以外はすべて実施例2と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
塗布層の組成および延伸倍率を表1に示した通りに変更した以外はすべて実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例5)
表1に示すように、塗布層の塗液組成およびTD方向の延伸倍率を変更した以外は全て実施例4と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例6)
表1に示すように、塗布層の塗液組成およびTD方向の延伸倍率を変更した以外は全て実施例4と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1)
塗布層の塗液組成を下記の通り変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
[塗液]
メチルセルロース 0.09質量%
水溶性ポリエステル 0.35質量%
(テレフタル酸70モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1の共重合体)
シランカップリング剤 0.01質量%
(3-(2-アミノエチルアミノ)フ゜ロヒ゜ルトリメトキシシラン)
平均粒径18nmのコロイダルシリカ 0.03質量%
固形分塗布量 25mg/m2
(比較例2)
表1に示すように塗布層の塗液組成を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例3)
表1に示すように塗布層の塗液組成を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例4)
下記に示すように塗布層の塗液組成を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
[塗液]
メチルセルロース 0.15質量%
水溶性ポリエステル 0.5質量%
(テレフタル酸70モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30モル%の酸成分とエチレングリコールとの1:1の共重合体)
アクリル系共重合体エマルジョン 0.35質量%
(アクリル酸エステル94質量%、アクリロニトリル1質量%、アクリル酸5質量%のアクリル系共重合体:アクリル系共重合体の分散径120nm)
平均粒径18nmのコロイダルシリカ 0.05質量%
メラミン系架橋剤 0.4質量%
固形分塗布量 65mg/m2
(比較例5)
表1に示すように塗布層の塗液組成を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。