JP2011183714A - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

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卓司 東大路
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Abstract

【課題】 磁気記録媒体としたときの使用環境や保存時の環境変化による寸法変化の少ない、かつ、エラーレートの少ない優れた高密度磁気記録媒体とすることができる二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】A層とB層とからなる積層構成を有し、幅方向の湿度膨張係数が3〜6ppm/%RHである二軸配向ポリエステルフィルムであって、A層はガラス転移温度が150℃未満のポリエステルと、ガラス転移温度が220℃〜280℃の非晶性熱可塑性樹脂(P)1〜10質量%とを含有し、B層はガラス転移温度が150℃未満のポリエステルを含有し、B層の表面粗さRaBが0.3〜10nm、B層のウネリ指数が1〜10であり、B層の表面粗さRaBよりもA層の表面粗さRaAの方が大きい二軸配向ポリエステルフィルムとする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、耐熱性や寸法安定性および表面特性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
二軸延伸ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されており、特に磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られている。近年、磁気テープなどの磁気記録媒体は、機材の軽量化、小型化、大容量化のため、ベースフィルムや磁性層の薄膜化や高密度記録化が要求されている。高密度記録化のためには、記録波長を短くし、記録トラックを小さくすることが有用である。しかしながら、記録トラックを小さくすると、テープ走行時における熱やテープ保管時の温湿度変化による変形により、記録トラックのずれが起こりやすくなるという問題がある。したがって、テープの使用環境および保管環境における寸法安定性といった特性の改善に対する要求がますます強まっている。また一方で、磁気テープとしたときの走行耐久性の改善要求がますます強くなっている。しかしながら、薄膜化すると機械的強度が不十分となってフィルムの腰の強さが弱くなったり、長手方向に伸びやすく、幅方向に縮みやすくなるため、トラックずれを起こしたり、ヘッドタッチが悪化し電磁変換特性が低下したり、ヘッドやテープが削れたりするといったような問題点がある。さらに、磁性層、特に下層の厚みの低減に伴い、ベースフィルム表面のうねりが磁性層表面に与える影響もある。
この観点から、支持体には、強度、寸法安定性の点で二軸延伸ポリエステルフィルムよりも優れた、剛性の高い芳香族ポリアミドが用いられることがある。しかしながら芳香族ポリアミドは、剛性が高くなりすぎてヘッド削れを引き起こしたりすることがある。さらに高価格でコストがかかり、汎用記録媒体の支持体としては現実的ではない。ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどを用いたポリエステルフィルムにおいても、延伸技術を用いて高強度化した磁気記録媒体用支持体が開発されているが、温度や湿度に対する寸法安定性などの厳しい要求を満足することはいまだ困難である。
近年、ポリエステルフィルムの耐熱性を高めるために、ポリエステルに他の熱可塑性樹脂をブレンドするなどの方法が検討されている。
ポリエステルとポリエステルとの親和性が良好な耐熱性熱可塑性樹脂を混合した、走行性、耐傷つき性に優れる二軸配向ポリエステルフィルムが提案されている(例えば特許文献1)。しかし、該耐熱性熱可塑性樹脂がポリエステルの結晶化速度を低下させるため、フィルムの結晶化度が低下し、その結果、寸法安定性が不十分となったり、また、使用するポリエステル単独からなるフィルムと比較して弾性率や破断強度が低下する問題がありさらなる改善が切望されている。また、ポリエステルとポリイミドおよびポリイミドとナノ相溶するポリマーとからなるフィルムにおいて、ポリイミドとナノ相溶するポリマーCとして芳香族ポリエーテルケトンなどを用いて耐熱性や剛性、熱寸法安定性が向上したフィルムが提案されている(例えば特許文献2)。しかし、3成分混練時、特に2段目混練の剪断応力が不十分であるため、溶融押出後のフィルム中でのポリマーCの分散径が不均一であったり、ポリマーCの未溶融物による異物や、ポリエステルの熱劣化による異物がフィルム中に発生しやすくなり、フィルムの表面特性や延伸性が低下するなどの問題がある。特に、ポリマーCのフィルム中での分散ドメインが大きく、粗大突起が形成されるため、例えば磁気記録媒体用などに用いる場合にエラーレートが不良となることがある。さらに、ポリイミドとそれ以外の熱可塑性樹脂として特定のガラス転移温度を有する非晶性ポリマーからなる二軸配向フィルムが提案されている(例えば特許文献3)が、非晶性ポリマーの分散径が大きくかつ、分散径の分布に幅があり表面粗さの低減と表面突起の均一化には至っていない。さらにまた、平滑性の優れた複合ポリエステルフィルムが提案されている(例えば特許文献4)が、ポリエステルに他の熱可塑性樹脂をブレンドし、ポリエステルにナノ相溶した分散ドメインの均一化や微細化については全く検討はなされておらず、ポリマアロイフィルムの表面平滑化は達成されていないのが現状である。
特開2001−323146号公報 特開2004−123863号公報 特開2009−209351号公報 特開2002−050027号公報
本発明の目的は、上記の問題を解決し、剛性や寸法安定性および表面特性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることにある。
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(7)を特徴とするものである。
(1)A層とB層とからなる積層構成を有し、幅方向の湿度膨張係数が3〜6ppm/%RHである二軸配向ポリエステルフィルムであって、A層はガラス転移温度が150℃未満のポリエステルと、ガラス転移温度が220℃〜280℃の非晶性熱可塑性樹脂(P)1〜10質量%とを含有し、B層はガラス転移温度が150℃未満のポリエステルを含有し、B層の表面粗さRaBが0.3〜10nm、B層のウネリ指数が1〜10であり、B層の表面粗さRaBよりもA層の表面粗さRaAの方が大きい二軸配向ポリエステルフィルム。
(2)B層が、ガラス転移温度が150℃以上220℃未満の非晶性熱可塑性樹脂(Q)を3〜15質量%含有する、上記(1)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(3)B層の厚みが全フィルム厚みの1〜30%である、上記(1)または(2)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(4)長手方向の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度が120〜180℃である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(5)A層が、ガラス転移温度が150℃以上220℃未満の非晶性熱可塑性樹脂(Q)を3〜15質量%含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(6)非晶性熱可塑性樹脂(P)および非晶性熱可塑性樹脂(Q)が非晶性ポリイミドである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとして用いた磁気記録媒体。
本発明によれば、剛性や寸法安定性および表面平滑性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができ、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる。中でも磁気記録媒体とした際に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化を小さくすることができ、エラーレートの少ない高密度磁気記録媒体とすることができる二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
幅寸法を測定する際に用いるシート幅測定装置の模式図である。
本発明において、ガラス転移温度が150℃未満のポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものを用いることができる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
ポリマの共重合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
ポリエステルは、二軸延伸を施せること、および、寸法安定性などの本発明の効果を発現するために、ガラス転移温度が150℃未満のものを好適に使用できる。本発明のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)が好ましい。また、これらの共重合体や変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。本発明においては、これらポリマーの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
本発明において用いるA層の非晶性熱可塑性樹脂(P)は、ガラス転移温度が220〜280℃である。
非晶性熱可塑性樹脂(P)のガラス転移温度を特定の範囲内とすることにより、A層中に非晶性熱可塑性樹脂(P)の分散ドメインによる拘束点を形成し、延伸工程において延伸応力を分散することで延伸性が増し、その結果、分子鎖配向を高めやすくなる。分子鎖配向が高まると、強力化や寸法安定性向上を図ることができる。なお、非晶性熱可塑性樹脂(P)は、非晶性熱可塑性樹脂(P)とは異なる非晶性熱可塑性樹脂(Q)を含有させるとフィルム中により均一に微分散しやすい傾向を有するので好ましい。非晶性熱可塑性樹脂(Q)の好ましいガラス転移温度は、150℃以上220℃未満であり、さらに好ましくは200℃以上〜220℃未満である。
非晶性熱可塑性樹脂(P)の好ましいガラス転移温度は、220〜280℃であり、さらに好ましくは220〜260℃である。ここで、非晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)などを用いて試料を測定した場合に、融点や融解ピークが検出されない特性のことである。さらに、非晶性熱可塑性樹脂(P)および(Q)は、ポリエステル以外の樹脂であることが二軸配向ポリエステルフィルム中に非晶性熱可塑性樹脂(P)や(Q)の分散ドメインによる拘束点を効率的に形成させることができるため好ましく、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)およびポリフェニレンエーテル(PPE)が好ましく例示される。中でも、非晶性熱可塑性樹脂(P)、(Q)は同種類の樹脂を用いるのが好ましく、共に非晶性ポリイミド樹脂であることが好ましく、特に非晶性ポリエーテルイミドであることが好ましい。
非晶性ポリエーテルイミドとしては、ポリエステルとの親和性や溶融成形性や取扱い性などの点から、例えば、下記一般式で示されるポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドが特に好ましい。
Figure 2011183714
(ただし、上記式中Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R、Rとしては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
Figure 2011183714
本発明では、二軸配向ポリエステルフィルムの表面粗さの観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
Figure 2011183714
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの剛性および寸法安定性の観点からは、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
Figure 2011183714
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem1000」、「Ultem1010」、「Ultem1040」、「Ultem5000」、「Ultem6000」および「UltemXH6050」シリーズや「Extem XH」および「Extem UH」の登録商標名等で知られているものである。
A層中の非晶性熱可塑性樹脂(P)の含有量は、表面性、耐熱性、寸法安定性の観点から、1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜8質量%である。非晶性熱可塑性樹脂(P)の含有量が1質量%未満では、本発明の湿度膨張係数を満足できないことがある。また、含有量が10質量%を超えると非晶性熱可塑性樹脂(P)に起因する未溶融物が発生したり分散径が不均一になったり、延伸性が著しく低下し、本発明の表面粗さを得ることが困難となりやすい。
なお、A層には、上述した非晶性熱可塑性樹脂(Q)を含有せしめることが好ましい。A層中の非晶性熱可塑性樹脂(Q)の含有量は、表面性、耐熱性、寸法安定性の観点から、3〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは3〜10質量%である。非晶性熱可塑性樹脂(Q)の含有量が3質量%未満では、非晶性熱可塑性樹脂(P)をフィルム中に均一に微分散させる効果が減少し、本発明の表面粗さや損失正接(tanδ)のピーク温度を得ることが困難となりやすい。また、含有量が15質量%を超えると本願の湿度膨張係数を満足することが困難となる傾向がある。
A層の表面には平滑性、寸法安定性を阻害しない範囲であれば易接着層や離型層等の機能層を塗設しても構わない。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、A層とB層とからなる積層構成を有している。A層とB層の界面近傍から離れたA層内部に存在する非晶性熱可塑性樹脂(P)の内部ドメインは、表面に突起を形成する効果は小さい。しかし、該内部ドメインは、A層とB層の界面近傍の非晶性熱可塑性樹脂(P)の表面ドメインを突き上げ効果によって押し上げる結果、フィルム表面に大きな起伏、つまりウネリを発生させる。例えば、磁気記録媒体に用いられる場合、このウネリが磁気テープの再生時のエラーレートを増加させる原因にもなる。そこでA層にB層が積層されることにより、上記内部ドメインの突き上げによるウネリをB層により抑えて、B層の表面粗さRaBをA層の表面粗さRaAよりも小さくすることが可能となる。
B層を構成する樹脂は、ガラス転移温度が150℃未満のポリエステルを含んでいるが、寸法安定性や積層のし易さ、フィルムの二軸延伸性、カール抑止の観点からガラス転移温度が150℃以上220℃未満の非晶性熱可塑性樹脂(Q)を3〜15質量%含有することが好ましい。
B層の表面には所定の表面粗さを維持できるのであれば易接着層や離型層等の機能層を塗設しても構わない。
B層の厚みは、特に限定されないが、全フィルム厚みに対してB層の厚みが1〜30%、好ましくは、5〜20%であるとフィルムの湿度膨張係数を本発明の範囲内に制御することができるため好ましい。特に、B層の厚み(T)とA層の非晶性熱可塑性樹脂(P)の平均ドメイン径Dpとの比(T/Dp)が2〜15の範囲であるとウネリ指数を本発明の範囲に制御しやすくなり好ましい。
また、A層およびB層には、本願の表面粗さを阻害しない範囲内であれば平均粒径が10〜300nmの粒子を0.5質量%以下の割合で含有することも可能である。A層またはB層に含有される粒子は同一でも異なっていても構わない。また、本願の表面粗さを損なわない範囲内であれば、粒径の異なる粒子を2種類以上併用していても構わないが、表面性の観点から、B層に含有させる粒子は平均粒径が10〜80nmの粒子が特に好ましい。
好ましい粒子としては、無機粒子、有機粒子などの不活性粒子が挙げられ、特に限定されないが、酸化チタン、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム粒子、カーボンブラック、アルミナおよびジルコニア等の凝集粒子、架橋ポリスチレン、シリコーン、ポリイミドなどの架橋有機粒子などがある。
本発明の二軸配向ポリエステルのB層の表面粗さRaBは0.3〜10nmである。特に、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを磁気記録媒体用として用いる場合、B層が磁性層を設ける側の表面を担う場合の表面粗さRaBは0.3nm〜5nmであることが好ましい。磁性層を設ける側の表面のRaが0.3nmより小さい場合は、フィルム製造、加工工程などで、搬送ロールなどとの摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを起こすことがあり、磁気テープとして用いる場合に、磁気ヘッドとの摩擦が大きくなり、磁気テープ特性が低下しやすい。また、Raが5nmより大きい場合は、高密度記録の磁気テープとして用いる場合に、電磁変換特性が低下することがある。磁性層を設ける側の表面のRaの下限は、より好ましくは0.5nm、さらに好ましくは1nmであり、Raの上限は4nmである。
一方、A層あるいはB層をバックコート層側(磁性層を設ける側とは反対側の面)の表面として用いる場合の表面粗さRaは5〜10nmであることが好ましい。バックコート層側の表面のRaが5nmより小さい場合は、フィルム製造、加工工程などで、搬送ロールなどとの摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを起こすことがあり、磁気テープとして用いる場合に、ガイドロールとの摩擦が大きくなり、テープ走行性が低下することがある。また、Raが10nmより大きい場合は、フィルムロールやパンケーキとして保管する際に、表面突起が反対側の表面に転写し、エラレートが増加する傾向がある。
なお、本発明においては、B層の表面粗さRaBよりもA層の表面粗さRaAの方が大きい。これにより、B層上に磁性層を設けて磁気記録媒体とすれば、電磁変換特性が向上し、かつ各工程における搬送性の向上を同時に図ることができる。
本発明の二軸配向ポリエステルのB層のウネリ指数は、1〜10であり、好ましくは3〜8である。ウネリ指数が1より低くなると、フィルム製造、加工工程などで、搬送ロールなどとの摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを起こすことがあり、磁気テープとして用いる場合に、ガイドロールや磁気ヘッドとの摩擦が大きくなり、磁気ヘッドや磁気テープ表面に傷が発生する場合がある。磁気テープは、通常、磁性層/ベースフィルム/バックコート層からなり、塗布型磁気記録テープの場合は、この磁性層はさらに上層(磁性塗料)と下層(非磁性塗料)からなる2層で構成されている。近年の磁気記録テープの大容量化や高密度化に伴い、磁性層、特に下層の厚みの低減、中でも磁性層下層の厚みが0.9μm未満とさらなる薄膜化に伴い、ベースフィルム表面のうねりが磁性層表面に与える影響は大きくなる一方であり、ウネリ指数が10を超えると、磁性層の表面性が悪化し、磁気記録テープの電磁変換特性やエラーレートが著しく増加する場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルのB層の10点平均粗さRzBと表面粗さRaBの比(RzB/RaB)は、10〜50であることが好ましい。より好ましくは、B層が磁性層を設ける側の表面を担う場合は、RzB/RaBは10〜40が好ましく、B層がバックコート側の表面を担う場合は、RzB/RaBは15〜50が好ましい。RzB/RaBが50を超えると、磁気テープの記録再生時に磁気記録ヘッドを傷つけてしまうことがある。また、RzB/RaBが10未満ではフィルム製造、加工工程などで、搬送ロールなどとの摩擦係数が大きくなり、工程トラブルを起こすことがあり、磁気テープとして用いる場合に、ガイドロールや磁気ヘッドとの摩擦が大きくなり、磁気ヘッドや磁気テープ表面に傷が発生する場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのA層表面の平均突起高さRpと、非晶性熱可塑性樹脂(P)の平均ドメイン径Dpの比(Rp/Dp)は0.01〜1であることが好ましい。より好ましくは、0.03〜0.8であり、さらに好ましくは、0.03〜0.5である。Rp/Dpは小さいほど好ましいが、下限値の0.01は、A層表面の製法上の限界と考える。また、上限値1を超えるとフィルムロールやパンケーキとして保管する際に、表面突起が反対側の表面に転写し、本発明の表面粗さを得ることが困難となる傾向がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度は120〜180℃であることが好ましい。より好ましくは123〜170℃であり、さらに好ましくは126〜160℃である。上記した長手方向のtanδのピーク温度が120℃未満であると、フィルム中の非結晶性熱可塑性樹脂(P)に起因する拘束点が効率よく形成されていない可能性がある。また、長手方向のtanδのピーク温度上限である180℃については、ポリエステルフィルムの製法上の限界と考えられる。
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムのA層中に非晶性熱可塑性樹脂(P)による拘束点を効率よく多数形成させるためには、特にポリエステルフィルム中にポリエステルのガラス転移温度より高く、かつ、非晶性熱可塑性樹脂(P)のガラス転移温度より低い温度を有する非晶性熱可塑性樹脂(Q)を3〜15質量%含有することが好ましい。
本発明において、ポリエステルよりガラス転移温度が高く、かつ溶融粘度の異なるポリエステル以外の非晶性熱可塑性樹脂(P)を少量ポリエステル中に含有させると、ポリエステルの溶融押出に際し、溶融温度が低いため非晶性熱可塑性樹脂(P)に起因する未溶融物の異物が発生することがある。また、ポリエステルの溶融押出温度での非晶性熱可塑性樹脂(P)の溶融粘度が高すぎるために、ポリエステル中に均一に分散しない傾向がある。そこで、本発明では、非晶性熱可塑性樹脂(P)をポリエステルに混合するときに、非晶性熱可塑性樹脂(P)よりもガラス転移温度が低く、かつ、ポリエステルと親和性の良好な非晶性熱可塑性樹脂(Q)を同時に混合することで非晶性熱可塑性樹脂(P)の分散ドメインをポリエステル中に均一分散させることができる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを作成する場合の原料製法では、ポリエステルと非晶性熱可塑性樹脂(P)、(Q)を同時に配合する混練方法が特に有効に採用される。この混練方法によって、非晶性熱可塑性樹脂(P)の分散ドメインが粗大化し、ポリエステルへの均一微分散が困難である場合に、非晶性熱可塑性樹脂(Q)を介してポリエステル中に非晶性熱可塑性樹脂(P)を均一微分散させることが可能となると同時に、ポリエステルの熱劣化や溶融粘度低下の抑止効果が高まるため、大幅に異物低減した組成物やフィルムを製造することができる。
以下に、上述した非晶性熱可塑性樹脂(Q)を用いた組成物(3成分組成物)を製造するための溶融混練の一例を簡単に説明する。
まず、溶融混練の溶融温度は、[ポリエステルの融点+60℃]〜[ポリエステルの融点+100℃]の範囲内が好ましく例示でき、300〜350℃の範囲で、好ましくは315〜330℃の範囲が好ましい。
次に、ポリエステル、非晶性熱可塑性樹脂(P)および非晶性熱可塑性樹脂(Q)の配合割合は、ポリエステル/非晶性熱可塑性樹脂[(P)+(Q)]の配合比率(質量比)を50/50〜70/30とするのが好ましい。
このときの非晶性熱可塑性樹脂(P)と非晶性熱可塑性樹脂(Q)との配合比率(質量比)は、50/50〜30/70が好ましく例示される。
ポリエステルの配合比率が、組成物全体の70質量%を超えると、混練時の剪断応力が不足するため、非晶性熱可塑性樹脂(P)の未溶融物が発生したり、非晶性熱可塑性樹脂(P)の分散ドメインが粗大化するため本発明の表面粗さやうねり指数、また湿度膨張係数を得ることが困難となる場合がある。配合比率が組成物全体の50質量%未満では、組成物の溶融粘度が高くなり、フィルム押出において分散不良となりやすい。
また、上記の非晶性熱可塑性樹脂(P)と非晶性熱可塑性樹脂(Q)との好ましい配合比率において、非晶性熱可塑性樹脂(Q)の配合比率が50質量%未満になるとポリエステルとの混和性が著しく欠如するため、非晶性熱可塑性樹脂(P)の分散ドメインが粗大化し本発明の表面粗さやうねり指数、さらに湿度膨張係数を得ることが困難となりやすい。また、非晶性熱可塑性樹脂(Q)の配合比率が70質量%を超えると、非晶性熱可塑性樹脂(P)による拘束点が減少するため延伸配向性を高めにくくなり、本発明の湿度膨張係数を得ることが困難となりやすい。
二軸押出機で溶融混練する場合、スクリュー回転数や二軸押出機のL/D(スクリュー軸長さL/スクリュー軸径D)の比率を適宜調整することも有効である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けたスクリュー形状にするとよい。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する元込め方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合するサイドフィーダー方法など、いずれの方法を用いてもよいが、本発明の表面粗さと湿度膨張係数を両立するためには、元込め混練が特に好ましい。また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。なお、ポリマーの混合割合は後述するNMR法を用いて測定する。
また、上記で述べたフィルム中の(延伸の際の)拘束点は、レーザーラマン分光による分子鎖配向解析や広角X線による結晶配向によりその存在を確認することができる。また、固体NMRによる緩和時間の解析や固体粘弾性解析によりその存在を確認することもできる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向の温度膨張係数が−5.0〜8.0ppm/℃であることが好ましい。温度膨張係数が上記範囲内であることは、例えば磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の温度変化による寸法安定性の観点から好ましい。幅方向の温度膨張係数の上限は、好ましくは7.0ppm/℃、さらに好ましくは5.0ppm/℃であり、下限は、好ましくは−3.0ppm/℃、さらに好ましくは0ppm/℃である。幅方向の温度膨張係数の下限を−5.0ppm/℃より小さくするためには、幅方向の配向をかなり高める必要があり、実質的に二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが困難である場合がある。より好ましい範囲としては、−3.0〜7.0ppm/℃、さらに好ましい範囲としては0〜5.0ppm/℃である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向の湿度膨張係数が3〜6ppm/%RHであることが好ましい。湿度膨張係数が上記範囲内であることは、例えば磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の湿度変化による寸法安定性の観点から好ましい。幅方向の湿度膨張係数の上限は、好ましくは5.5ppm/%RH、さらに好ましくは5.0ppm/%RHである。幅方向の湿度膨張係数の下限を3ppm/%RHより小さくするためには、幅方向の配向をかなり高める必要があり、実質的に二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが困難である場合がある。より好ましい範囲としては、4〜5.5ppm/%RHである。
さらに、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和が11〜20GPaであることが好ましい。ヤング率の和の好ましい範囲は、12〜20GPaであり、さらに好ましい範囲は13〜18GPaである。ヤング率の和が11GPaより小さい場合、例えば磁気記録媒体用に使用する場合などに、後述するように、長手方向や幅方向のヤング率が不足するために、伸び変形により幅方向に収縮し、幅方向の寸法安定性が低下しやすくなる。また、ヤング率の和が20GPaより大きい場合、延伸倍率を高めて極度に配向させる必要があり、フィルム破れが頻発して生産性に劣ったり、破断伸度が小さくなり破断しやすくなったりすることがある。
長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和を上述の範囲内とするためには、二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向のヤング率を3.5〜12GPaとすることが好ましい。長手方向のヤング率が3.5GPaより小さい場合、テープドライブ内での長手方向への張力によって長手方向に伸び、この伸び変形により幅方向に収縮し、幅方向の寸法安定性が低下しやすくなる。長手方向のヤング率の下限は、より好ましくは4GPaであり、さらに好ましくは4.5GPaである。一方、長手方向のヤング率が12GPaより大きい場合、幅方向のヤング率を好ましい範囲に制御することが難しくなり、幅方向のヤング率が不足し、エッジダメージの原因となる傾向がある。長手方向のヤング率の上限は、より好ましくは11GPa、さらに好ましくは10GPaである。より好ましい範囲は4〜11GPaであり、さらに好ましい範囲は4.5〜10GPaである。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率Emと幅方向のヤング率Etの比Em/Etが0.50〜0.95の範囲内であることが好ましく、0.60〜0.90の範囲内であることがより好ましく、0.60〜0.80の範囲内であることがさらに好ましい。特に、長手方向のヤング率より幅方向のヤング率が大きいほうが幅方向の温度膨張係数や湿度膨張係数を本発明の範囲に制御しやすい。
また、幅方向のヤング率は6〜12GPaの範囲とすることが好ましい。幅方向のヤング率が6GPaより小さい場合、幅方向の寸法安定性が低下しやすくなる。幅方向のヤング率の下限は、より好ましくは6.5GPaである。一方、幅方向のヤング率が12GPaより大きい場合、長手方向のヤング率を好ましい範囲に制御することが難しくなり長手方向の張力により変形しやすくなったり、スリット性が悪化したりすることがある。幅方向のヤング率の上限は、より好ましくは11GPa、さらに好ましくは10GPaである。より好ましい範囲は7〜11GPa、さらに好ましい範囲は7〜10GPaである。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、3〜6μmであることが好ましい。この厚みが3μmより小さい場合は、磁気テープにした際にテープに腰がなくなるため、電磁変換特性が低下することがある。ポリエステルフィルムの厚みの下限は、より好ましくは4μmである。一方、厚みが6μmより大きい場合は、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量化が困難になる場合がある。二軸配向ポリエステルフィルムの厚みの上限は、より好ましくは5.8μm、さらに好ましくは5.6μmである。より好ましい範囲としては3〜5.8μm、さらに好ましい範囲としては4〜5.6μmである。
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造される。
二軸配向ポリエステルフィルムを製造するには、たとえば原料となる樹脂(ポリマー)のペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。また、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
続いて、上記シートを、長手方向と幅方向の二軸に延伸して、熱処理する。延伸工程は、各方向において2段階以上に分けることが好ましい。すなわち再縦、再横延伸を行う方法が高密度記録の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られ易いために好ましい。
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
特に本発明においては同時二軸延伸法を用いることが好ましい。逐次二軸延伸法に比べて同時二軸延伸法は、製膜工程で長手方向、幅方向に結晶が均一に成長するため、安定して高倍率に延伸し易くなる。
つまり、本発明では、延伸時の局所的な応力集中を抑制する目的で、ポリエステルフィルム中に非晶性熱可塑性樹脂(P)による拘束点を多数形成させることが重要となる。この拘束点に延伸応力を分散させることが高倍率延伸には重要である。延伸工程においてこれらの特性を活かして分子鎖緊張を増大させるには、逐次二軸延伸の各工程で徐々に分子鎖緊張させるより、同時二軸延伸を用いて、長手方向と幅方向に均一に分子鎖緊張させることが高倍率に延伸しやすくなり、特に有効である。
なお、ここでいう同時二軸延伸とは、長手方向と幅方向の延伸が同時に行われる工程を含む延伸方式である。必ずしも、すべての区間で長手方向と幅方向が同時に延伸されている必要はなく、長手方向の延伸が先にはじまり、その途中から幅方向にも延伸を行い(同時延伸)、長手方向の延伸が先に終了し、残りを幅方向のみ延伸するような方式でもよい。延伸装置としては、例えば同時二軸延伸テンターなどが好ましく例示され、中でもリニアモータ駆動式の同時二軸テンターが破れなくフィルムを延伸する方法として特に好ましい。
延伸工程後の熱処理は、1段階で実施してもよいが、温度膨張係数や湿度膨張係数を本発明の範囲に制御するには、過度な熱処理による分子鎖配向の緩和を起こさず、効果的に熱処理を施すことが望ましいので、熱処理温度を制御して多段階で実施することが好ましい。多段階とは、熱処理温度を変更して2段階以上で実施することである。
熱処理温度は用いるポリエステルの融点を目安にして決定することができる。熱処理温度は、[ポリエステルの融点(Tm)−80℃]〜(Tm−20℃)が好ましく、熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うのが好ましい。特に、1段目の熱処理温度を好ましくは(Tm−75℃)〜(Tm−20℃)、さらに好ましくは(Tm−60℃)〜(Tm−30℃)に設定して、2段目の熱処理温度を1段目より低温に設定するとよい。好ましくは(Tm−100℃)〜(Tm−75℃)、さらに好ましくは(Tm−100℃)〜(Tm−85℃)に設定する。さらに、1段目および/または2段目の熱処理工程において幅方向に1〜5%の弛緩率で弛緩処理するとさらに好ましい。
そして、このようにして製造された二軸配向ポリエステルフィルムはコア上に巻き取られフィルムロールとなる。さらに、本発明の効果である寸法安定性や保存安定性を高めるために、巻き取られたフィルムロールをコアごと一定の温度条件下で熱処理することも好ましい。一定の温度条件下とは、ある温度条件に設定された熱風オーブンやゾーンにフィルムロールをコアごと設置することである。フィルムロールをコアを含めてそのまま熱処理することで、フィルムの内部構造のひずみが除去されやすく、クリープ特性等の寸法安定性が改良されやすい。例えば、フィルムを巻き取って保存したり、磁気テープなどの磁気記録媒体用に使用された場合にテープに巻き取った状態で保存したり、テープを走行させて使用したりするときには、フィルムの長手方向に張力が付加され、長手方向にクリープ変形などを起こすことがあるが、クリープ特性等の寸法安定性が改良されると、保存安定性が格段に向上しやすい。
なお、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムに、必要に応じて、熱処理、マイクロ波加熱、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチング、などの任意の加工を行ってもよい。
以下、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性熱可塑性樹脂(P)、(Q)としてポリエーテルイミド(PEI)を用いた例を代表例として説明する。もちろん、本願はPETを構成成分として用いた支持体に限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)などを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
まず、ポリエチレンテレフタレートを準備する。ポリエチレンテレフタレートは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。
フィルムを構成するポリエステルに粒子を含有させる場合には、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の粒子のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないPETで希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
PETと2種類のPEIを混合した3成分ペレットの作成方法としては、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて混練してマスターチップ化する方法が好ましい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましい。
溶融混練の溶融温度は、[ポリエステルの融点+60℃]〜[ポリエステルの融点+100℃]の範囲内が好ましい。つまり、上記PET、2種類のPEIを300〜350℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に同時に供給して溶融押出し、3成分のブレンド組成物を作製する。この時の配合割合は、上述の通り、PET/PEI[(P)+(Q)]の配合比率(質量比)を50/50〜70/30とするのが好ましい。また、PEI(P)とPEI(Q)との配合比率(質量比)は、50/50〜30/70が好ましい。
次に、PEI(P)の配合量を所定の量に調節するために用いるPEI(Q)含有PETペレットの作成方法について説明する。PETペレットとPEI(Q)のペレットを、PET/PEI(Q)の混合質量比率が30/70〜60/40の範囲になるように配合し、270〜300℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して溶融押出する。このときの剪断速度は50〜300sec−1が好ましく、より好ましくは100〜200sec−1、滞留時間は0.5〜10分が好ましく、より好ましくは1〜5分である。上記方法で混練することによって、PETとPEIは相溶し、単一のガラス転移温度を有するPEI(Q)含有PET組成物のペレットを得ることができる。
ここで、単一のガラス転移温度(Tg)を有するとは、理想的には文字通りTgが唯一1つのみ認められ、それ以外のTgないしはそれに相当するものが全く認められないことであるが、Tgの熱流束のギャップ以外に熱流束のギャップが認められても、前記Tgの1/10以下の熱流束のギャップである場合はこれを無視し、単一のガラス転移温度を有するとみなす。また、Tg付近に5mJ/mg以下のショルダーがあっても、単一のTgを有するとみなす。
フィルム化する場合、通常の一軸押出機に上述の通り混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。
3成分ペレットの溶融混練時の剪断速度は、50〜500sec−1が好ましく例示できる。滞留時間は0.5〜10分が好ましく、より好ましくは1〜5分である。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。
さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることが好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー形状にするとよい。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。
次に、得られた3成分ペレット、PEI(Q)含有PETペレットおよびPETのペレットをそれぞれ180℃で3時間以上減圧乾燥した後、所望のPEI(P)、(Q)の重合配合率となるようにPEI(Q)含有PET組成物ペレットとPETペレットで希釈調節する。このブレンド混合ペレットを固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜300℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。フィルムを積層する場合には、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層することも可能である。
次に、たとえば同時二軸延伸テンターに導いて、長手および幅方向に同時に二軸延伸を行う。延伸速度は長手、幅方向ともに100〜20,000%/分の範囲で行うのが好ましい。より好ましくは、500〜10,000%/分、さらに好ましくは2,000〜7,000%/分である。延伸速度が100%/分よりも小さい場合には、フィルムが熱にさらされる時間が長くなるため、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず製造したフィルムのヤング率が低下したりすることがある。また、20,000%/分よりも大きい場合には、延伸時点で分子間の絡み合いが生成しやすくなり、延伸性が低下して、高倍率の延伸が困難となることがある。
延伸温度は、用いるブレンドポリマーの種類によって適宜設定すればよく、未延伸フィルムのガラス転移温度Tgを目安として決めることができる。長手方向および幅方向それぞれの1段目の延伸工程における温度は、Tg〜Tg+30℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg+5℃〜Tg+20℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、再延伸性が低下して高倍率に安定して延伸することが困難となったりすることがある。また、上記範囲よりも延伸温度が高い場合には、特にエッジ部分が結晶化して延伸破れの原因となり製膜性が低下したり、十分に分子配向が進まず製造したフィルムのヤング率が低下したりすることがある。
また、ポリエステルフィルムの製造工程が多段延伸、すなわち再延伸工程を含む場合は、1段目の延伸温度は上述のとおりであるが、2段目の延伸温度はTg+40℃〜Tg+120℃が好ましく、さらに好ましくはTg+60℃〜Tg+100℃である。延伸温度が上記範囲を外れる場合には、熱量不足や結晶化の進みすぎによって、フィルム破れが多発して生産性が低下したり、十分に配向を高めることができず強度が低下したりする場合がある。
一方、延伸倍率は、用いるブレンドポリマーの種類や延伸温度によって、また多段延伸の有無により適宜設定すればよいが、総面積延伸倍率(総縦延伸倍率×総横延伸倍率)が、20〜40倍の範囲になるようにすることが本発明の湿度膨張係数を得るためには好ましい。より好ましくは25〜35倍である。長手方向、幅方向の一方向の総延伸倍率としては、2.5〜8倍が好ましく、より好ましくは、3〜7倍である。延伸倍率が上記範囲より小さい場合には、延伸ムラなどが発生しフィルムの加工適性が低下することがある。また、延伸倍率が上記範囲より大きい場合には、延伸破れが多発して、生産性が低下する場合がある。
各方向に関して延伸を多段で行う場合、1段目の長手、幅方向それぞれにおける延伸倍率は、2〜4倍が好ましく、より好ましくは2.5〜3倍である。また、1段目における好ましい面積延伸倍率は4〜16倍であり、より好ましくは、6〜10倍である。これらの延伸倍率の値は、特に同時二軸延伸法を採用する場合に好適な値であるが、逐次二軸延伸法でも適用できる。
また、再延伸を行う場合の一方向における延伸倍率は、1.05〜2.5倍が好ましく、より好ましくは1.2〜1.8倍である。再延伸の面積延伸倍率としては、1.4〜4倍が好ましく、より好ましくは1.9〜3倍である。
続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。熱処理条件のうち、熱処理温度は、190℃〜215℃が好ましく、熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うのが好ましい。熱処理工程を2段階以上の多段階で行うことが好ましく、特に、1段目の熱処理温度を好ましくは190〜215℃、さらに好ましくは195〜210℃に設定して、2段目の熱処理温度を1段目より低温にして、好ましくは155〜180℃、さらに好ましくは155〜170℃に設定するとよい。さらに、2段目の熱処理工程のみを幅方向に1〜5%の弛緩率で弛緩処理するとさらに好ましい。上述の多段階の熱処理工程によると、ヤング率や温度・湿度変化に対する寸法安定性を高めやすくなる。
その後、フィルムエッジを除去し、コアに巻き取る。そして、本発明の寸法安定性の効果をさらに高めるために、フィルムをコアに巻いた状態(ロール状のフィルム、フィルムロール)で、熱風オーブンなどで加熱処理することも好ましい。加熱処理の雰囲気温度は、二軸延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)を目安にして決定することができ、(Tg−80℃)〜(Tg−30℃)の範囲、より好ましくは(Tg−75℃)〜(Tg−35℃)の範囲、さらに好ましくは(Tg−70℃)〜(Tg−40℃)の範囲である。好ましい処理時間は、10〜360時間の範囲、より好ましくは24〜240時間の範囲、さらに好ましくは72〜168時間の範囲である。多段階で加熱処理を行う場合、ロール状フィルムの加熱処理の合計時間が上記範囲内となるようにすることが好ましい。
次に、磁気記録媒体を製造する方法を説明する。
上記のようにして得られた二軸配向ポリエステルフィルムを、たとえば0.1〜3m幅にスリットし、速度20〜300m/min、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面(B)に磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布する。なお、上層に磁性塗料を厚み0.1〜0.3μmで塗布し、下層に非磁性塗料を厚み0.5〜1.5μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面(A)にバックコートを厚み0.3〜0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行う。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、1/2インチ(1.27cm)幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
・変成ポリウレタン : 10質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
・2−エチルヘキシルオレート : 1.5質量部
・パルミチン酸 : 1質量部
・カーボンブラック : 1質量部
・アルミナ : 10質量部
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95質量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10質量部
・アルミナ : 0.1質量部
・変成ポリウレタン : 20質量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO4やLTO5など))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)ウネリ指数
小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用いて、平均表面粗さRaを測定した。条件は下記のとおりであり、20回の測定の平均値をもって値とした。
・触針先端半径:0.5μm
・触針荷重:5mg
・測定長:0.5mm
・カットオフ値:0.08mm
なお、Raの定義は、たとえば、奈良治郎著「表面粗さの測定・評価法」(総合技術センター、1983)に示されているものである。
上記Raの測定を、同一サンプルに対して、カットオフ値0.08mmの他に、0.008mm、0.25mmに設定して行う。このとき、各測定値の値を横軸(対数目盛)にカットオフ値、縦軸にRaの値を取ってプロットし、最小二乗法で直線の傾きを求める。この傾きの値をウネリ指数とした。
(2)表面粗さRa、10点平均粗さRz
原子間力顕微鏡を用いて、場所を変えて10視野測定を行った。得られた画像について、三次元面粗さをOff-Line機能のRoughness Analysisにて算出し、Ra、Rz、Rpを測定した。条件は下記のとおりである。
測定装置 :NanoScope III AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :30μm□
走査速度 :0.5Hz
Flatten Auto :オーダー3
(3)湿度膨張係数
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とする。
・測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50(湿度発生器:アルバック理工製湿度雰囲気調節装置HC−1)
・試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
・荷重:0.5g
・測定回数:3回
・測定温度:30℃
・測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し時間40分で80%RHまで昇湿し、80%RHで6時間保持したあと支持体幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定する。次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出する。
湿度膨張係数(ppm/%RH)=10×{(ΔL/12.6)/(80−40)}
(4)温度膨張係数
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における温度膨張係数とする。
・測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50
・試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
・荷重:0.5g
・測定回数:3回
・測定温度:窒素をフローした状態で温度25℃から昇温速度2℃/分で温度50℃まで昇温して、5分間保持した後、温度25℃まで降温速度2℃/分で降温し、温度40〜30℃のフィルム幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定する。次式から温度膨張係数(ppm/℃)を算出する。
・温度膨張係数(ppm/℃)=10×{(ΔL/12.6)/(40−30)}
(5)ヤング率
ASTM−D882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
・測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
・試料サイズ:
フィルム幅方向のヤング率測定の場合
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
フィルム長手方向のヤング率測定の場合
フィルム幅方向2mm×フィルム長手方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム長手方向に8mm)
・引張り速度:1mm/分
・測定環境:温度23℃、湿度65%RH
・測定回数:5回測定し、平均値から算出する。
(6)ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121(1987年)に従って決定した。
・装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
・測定条件:
・加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
・温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
・温度変調振幅:±1K
・温度変調周期:60秒
・昇温ステップ:5K
・試料質量 :5mg
・試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
・参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度は下記式により算出する。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(7)融点(Tm)
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、サンプル約5mgをアルミニウム製受皿上300℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度10℃/分で昇温する。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とする。ポリエステルの融点は上記方法で検出することができる。
なお、結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点の検出方法として、マイクロ熱分析装置(T.A.Instruments製「μ−TA装置」)を使用した。この装置のセンサーは、先端がV字型に折返されたワイヤから成る検出部を備えている。測定は、基材フィルムを斜め切削法などにより露出させて、センサーのV字型検出部を接触させ、昇温速度10℃/秒、押し込み強さ20nAの条件下で常温から温度400℃まで上昇させて行なった。
(8)損失正接(tanδ)ピーク温度
JIS−K7244(1999年)に従って、セイコーインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置”DMS6100”を用いて求めた。サンプルサイズは幅4mm×長さ50mmとして、フィルムの長手方向が50mmとなるようにサンプルを整えチャック間距離が20mmとなるようにセットしチャックからはみ出したフィルムは取り除いた。引張モード、駆動周波数は1Hz、チャック間距離は20mm、昇温速度は2℃/minの測定条件にて、各フィルムの粘弾性特性の温度依存性を測定した。この測定結果から、tanδが極大となるときの温度をそのフィルムのtanδと定義した。
(9)積層されたB層の厚み
下記条件にて断面観察を場所を変えて10視野行い、得られた厚み[nm]の平均値を算出しB層の厚み[nm]とする。
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM) 日立製H−7100FA型
測定条件:加速電圧 100kV
測定倍率:1万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD−ZD断面(TD:幅方向、ZD:厚み方向)
測定回数:1視野につき3点、10視野を測定する。
(10)非晶性熱可塑性樹脂(P)の平均ドメイン径Dp
上記(9)の記載の方法に従い透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、非晶性熱可塑性樹脂(P)の分散ドメインを観察した。倍率は2万倍とした。場所を変えて20視野観察し、フィルムの厚み方向と同方向に測定した直径の平均を非晶性熱可塑性樹脂(P)の平均ドメイン径Dpとした。
(11)粒子の平均粒径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍で観察する。この時、写真上で1cm以下の粒子が確認できた場合はTEM観察倍率をさらに5万倍の倍率で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野測定し、写真に撮影された単分散した粒子全てについて等価円相当径をもとめ、その平均を不活性粒子の平均粒径とした。ここで、1万倍で観察した写真上に不定形の凝集粒子が確認できた場合、これは粒子の平均粒径には含めないこととする。
フィルム中に粒径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記の等価円相当径の個数分布が2個以上のピークを有する分布となる。この場合は、それぞれのピーク値をそれぞれの粒子の平均粒径とする。
(12)粒子の含有量
ポリマー1gを1N−KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。
(13)エラーレート
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面(B)に下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布し(上層が磁性塗料で、塗布厚0.2μm、下層が非磁性塗料で塗布厚0.7μm)、磁気配向させ、乾燥温度100℃で乾燥させる。次いで反対側の表面(A)に下記組成のバックコートを塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧2.0×10N/mでカレンダー処理した後、巻き取る。上記テープ原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、カセットテープとする。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
〔Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(質量比)〕
〔長軸長:0.09μm、軸比:6、保磁力:153kA/m(1,922Oe)、飽和磁化:146Am /kg(146emu/g)、BET比表面積:53m /g、X線粒径:15nm〕
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10質量部
(数平均分子量:25,000,スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1質量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL(商品名))
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ : 0.1質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
作製したカセットテープを、市販のIBM社製LTOドライブ3580−L11を用いて25℃65%RHの環境で記録・再生(記録波長0.55μm)を300回繰り返した後下記基準で評価する。エラーレートはドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)から次式にて算出する。次の基準で評価する。
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
優:エラーレートが1.0×10−6未満
良:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−5未満
可:エラーレートが1.0×10−5以上、1.0×10−4未満
不良:エラーレートが1.0×10−4以上
(14)電磁変換特性
上記(13)と同様にカセットテープを作製し、C/Nの測定にはリールtoリールテスタを用い、市販のMRヘッドを搭載して下記の条件で実施した。
相対速度:2m/sec
記録トラック幅:18μm
再生トラック幅:10μm
シールド間距離:0.27μm
記録用信号発生器:HP社製 8118A
再生信号処理:スペクトラムアナライザ
このC/Nを市販のLTO4テープ(富士フィルム社製)と比較して、0dB以上は○、−2以上0dB未満は△、−2dB未満は×と判定した。○が望ましいが、△でも実用的には使用可能である。
(15)幅寸法測定
上記(13)と同様にして作製したカセットテープのカートリッジからテープを取り出し、下記恒温恒湿槽内へ図1のように作製したシート幅測定装置を入れ、幅寸法測定を行う。なお、図1に示すシート幅測定装置は、レーザーを使って幅方向の寸法を測定する装置で、磁気テープ9をフリーロール5〜8上にセットしつつ荷重検出器3に固定し、端部に荷重となる分銅4を吊す。この磁気テープ9にレーザー光10を発振すると、レーザー発振器1から幅方向に線状に発振されたレーザー光10が磁気テープ9の部分だけ遮られ、受光部2に入り、その遮られたレーザーの幅が磁気テープの幅として測定される。3回の測定結果の平均値を本発明における幅とする。
測定装置:(株)アヤハエンジニアリング社製シート幅測定装置
レーザー発振器1、受光部2:レーザー寸法測定機 キーエンス社製LS−5040
荷重検出器3:ロードセル NMB社製CBE1−10K
恒温恒湿槽:(株)カトー社製SE−25VL−A
荷重4:分銅(長手方向)
試料サイズ:幅1/2inch×長さ250mm
保持時間:5時間
測定回数:3回測定する。
(幅寸法変化率)
2つの条件でそれぞれ幅寸法(l,l)を測定し、次式にて寸法変化率を算出する。
次の基準で寸法安定性を評価する。×を不合格とする。
A条件:10℃10%RH 張力1.0N
B条件:29℃80%RH 張力0.6N
幅寸法変化率[ppm]=10×((l−l)/l
優:幅寸法変化率が0[ppm]以上500[ppm]未満
良:幅寸法変化率が500[ppm]以上800[ppm]未満
不良:幅寸法変化率が800[ppm]以上
(16)フィルム中の樹脂Pおよび樹脂Qの含有量
フィルムを下記溶媒にて溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて不溶物を沈降させ、上澄み液を取り除いた。不溶物にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた不溶物を乾燥させ、その質量を測定し元素分析、FT−IR、NMR法により該成分の構造と質量分率を測定することでフィルム中の樹脂P、Qの含有量を算出した。上澄み液についても同様の分析を行うことで、ポリエステル成分および他成分の質量分率と構造が特定できる。さらに詳しくは、この上澄み液成分から溶媒を留去した後にH核のNMRスペクトルを測定する。
得られたスペクトルで、各成分に特有の吸収(例えば、PETであればテレフタル酸の芳香族プロトン、PEIであればビスフェノールあの芳香族プロトン)のピーク面積強度を求め、その比率とプロトン数よりブレンドのモル比率を算出する。さらにポリマの単位ユニットに相当する式量より質量比を算出する。このようにして各成分の質量分率と構成が特定できる。
装置 :ブルカー社製BRUKER DRX-500
溶媒 :HFIP/重クロロホルム(質量比50/50)
観測周波数 :499.8MHz
基準 :TMS(テトラメチルシラン)(0ppm)
測定温度 :30℃
観測幅 :10KHz
データ点 :64K
acquisition time :4.952秒
pulse delay time:3.048秒
積算回数 :256回
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート))をPENと表記する。
(実施例1)
(1)PETペレットの作製:テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料−1)。
(2)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を98質量部とコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを20質量部(コロイダルシリカ粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有PETペレット(原料−2)を得た。
(3)2成分(PET/PEI(Q))ペレットの作製:温度280℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記方法で得られたPETペレットとSABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“Ultem1010”のペレットを供給して、剪断速度100sec−1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを50質量%含有した2成分ペレットを得た。なお、作製した2成分ペレットのガラス転移温度は150℃であった(原料−3)。
(4)3成分ペレットの作製:温度320℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記、原料−1を50質量%、PEI(Q)として、SABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“Ultem1010”30質量%、さらに、PEI(P)としてSABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“UltemCRS5011”(Tg:225℃)を20質量%となるように供給し、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPEI(P)および(Q)を計50質量%含有する3成分ペレットを作製した(原料−4)。
押出機E1、E2の2台を用い、295℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、PETペレット(原料−1)80質量部、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ粒子ペレット(原料−2)10質量部、3成分ペレット(原料−4)10質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、粒子濃度が0.2質量%となるように原料−1を84質量部、平均粒径60nmのコロイダルシリカ粒子ペレット(原料−2)を10質量部、さらに原料3を6質量部を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み(A層/B層)=4.2/0.3μmとなるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、A層に非晶性熱可塑性樹脂(Q)(以下、樹脂Qと記載する)を3質量%および非晶性熱可塑性樹脂(P)(以下、樹脂Pと記載する)を2質量%含有する積層未延伸フィルムを作製した。
この積層未延伸フィルムをリニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度90℃、延伸速度6,000%/分で3.3倍×3.3倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度180℃で長手方向および幅方向に同時に1.2×1.7倍に再延伸した。その後、温度200℃で5秒間熱処理後、温度160℃で幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを評価したところ、表3に示すように、磁気テープとして使用した際に寸法安定性やエラーレートに優れた特性を有していた。
(実施例2)
A層に用いる原料として、実施例1で用いたPETペレット(原料−1)、3成分ペレット(原料−4)を準備した。配合割合は表2の通りとした。B層原料は実施例1と同様の原料を用いた。
これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み(A層/B層)=4/0.5μmとなるよう合流させ表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、A層に樹脂Qを4.5質量%および樹脂Pを3質量%含有する積層未延伸フィルムを作製した。
得られた未延伸フィルムは、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
A層に用いる原料として、実施例1で用いた各種ペレットに加えて、2成分ペレット(原料−3)を準備した。各原料の配分割合は表2の通りである。B層原料は実施例1と同様の原料を用い、実施例2と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
A層、B層に用いる原料として、実施例1で用いたPETペレット(原料−1)、3成分ペレット(原料−4)を準備した。配合割合は表2の通りとした。B層原料は実施例1と同様の原料を用い、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例5)
A層に用いる3成分ペレットとして、温度320℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記、原料−3を50質量%、PEI(Q)として、SABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“Ultem1010”30質量%、さらに、PEI(P)としてSABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“UltemXH6050”(Tg:245℃)を20質量%供給し、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPEI(Q)および(P)を計50質量%含有する3成分ペレットを作製した(原料−4a)。各原料の配分割合は表2の通りである。B層原料は実施例1と同様の原料を用い、積層厚みを変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1)
実施例1で得られた原料−1を80質量部、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ粒子ペレット(原料−2)を10質量部、原料−3を10質量部を準備し、180℃で3時間減圧乾燥した後に、295℃に加熱された押出機に供給した。温度95℃、延伸速度6,000%/分で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度170℃で長手方向および幅方向に同時に1.2×1.45倍に再延伸した以外は、実施例1と同様に厚み4.5μmの二軸配向フィルムを作成した。
(比較例2)
3成分ペレットとして、まず、温度350℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、SABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI)“Ultem1010”のペレット70質量%とビクトレックス社製のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)“Victrex 90G”のペレット30質量%を供給し、剪断速度300sec-1で溶融押出してストランド状に吐出し、温度10℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして2成分ペレットを作製した(原料−5)。さらに、温度320℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、原料−1を83質量%と上記、原料−5を17質量%を供給し、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPET成分83質量%、PEI(Q)12質量%、PEEKを5質量%含有する3成分ペレットを作製した(原料−6)。A層に用いる原料として、原料−1を60質量部、原料−6を40質量部を準備し、B層に用いる原料は実施例1と同様にし、積層厚みを2.5/2μmに変更した。温度95℃、延伸速度6,000%/分で3.5倍×3.5倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度180℃で長手方向および幅方向に同時に1.2×1.5倍に再延伸した以外は全て実施例1と同様にして二軸配向フィルムを得た。
(比較例3〜6)
A層に用いる原料として、原料−1、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ粒子ペレット(原料−2)、および実施例2で用いたポリエステル、樹脂Qおよび樹脂Pの配合割合を表2の通りに変更して得られた3成分ペレット(原料−4b〜d)を準備した。また、比較例6については原料−4を用いた。各原料の配分割合は表2の通りである。B層に用いる原料は、実施例2と同様にして、積層厚みを表1の通り変更し、再縦横延伸倍率は比較例4のみ1.2×1.4倍、その他の実験例は1.2×1.5倍に変更して二軸配向フィルムを作成した。
(比較例7)
A層に用いる原料として、原料−1、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ粒子ペレット(原料−2)および実施例1で用いたポリエステルと樹脂Pの配合割合を表2の通りとして、樹脂Qを含有しない原料−4eを作成した。B層に用いる原料は、実施例1と同様にして、再縦横延伸倍率は1.2×1.5倍に変更して二軸配向フィルムを作成した。
Figure 2011183714
Figure 2011183714
Figure 2011183714
1:レーザー発振器
2:受光部
3:荷重検出器
4:荷重
5:フリーロール
6:フリーロール
7:フリーロール
8:フリーロール
9:磁気テープ
10:レーザー光

Claims (7)

  1. A層とB層とからなる積層構成を有し、幅方向の湿度膨張係数が3〜6ppm/%RHである二軸配向ポリエステルフィルムであって、A層はガラス転移温度が150℃未満のポリエステルと、ガラス転移温度が220℃〜280℃の非晶性熱可塑性樹脂(P)1〜10質量%とを含有し、B層はガラス転移温度が150℃未満のポリエステルを含有し、B層の表面粗さRaBが0.3〜10nm、B層のウネリ指数が1〜10であり、B層の表面粗さRaBよりもA層の表面粗さRaAの方が大きい二軸配向ポリエステルフィルム。
  2. B層が、ガラス転移温度が150℃以上220℃未満の非晶性熱可塑性樹脂(Q)を3〜15質量%含有する、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. B層の厚みが全フィルム厚みの1〜30%である、請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. 長手方向の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度が120〜180℃である、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. A層が、ガラス転移温度が150℃以上220℃未満の非晶性熱可塑性樹脂(Q)を3〜15質量%含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. 非晶性熱可塑性樹脂(P)および非晶性熱可塑性樹脂(Q)が非晶性ポリイミドである、請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとして用いた磁気記録媒体。
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