JP2015086276A - 二軸配向ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体 - Google Patents

二軸配向ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】厚み精度に優れ、寸法安定性や電磁変換特性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムであって、磁気記録媒体とした際に平滑な磁性層を有すると共に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化が小さい、エラーレートの少ない高密度磁気記録媒体となる二軸配向ポリエステルフィルムを安定に提供する。
【解決手段】カルボキシル末端基濃度が10〜30eq/ton以下であり、幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RH、幅方向の厚み斑が10%以下、幅方向のヤング率が7GPa以上、フィルム厚みが6μm以下である二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】 図1

Description

本発明は、耐熱性や寸法安定性および表面特性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
二軸延伸ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されている。特に塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られており、当該磁気記録媒体(磁気テープ)には常に高密度記録化が要求されている。更なる高密度記録を達成するためには、磁性層の薄膜化や微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を高度に分散させて、磁性層表面の平滑性を高めることや記録波長を短くし、記録トラックを小さくすることが有効である。
しかしながら、記録トラックを小さくすると、磁気テープ走行時における熱やテープ保管時の温湿度変化による変形により、記録トラックのずれが起こりやすくなるという問題があり、磁気テープの使用環境および保管環境における寸法安定性といった特性の改善に対する要求がますます強まっている。
この観点から、支持体には、強度、寸法安定性の点で二軸配向ポリエステルフィルムよりも優れた剛性の高い芳香族ポリアミドが用いられることがある。しかしながら芳香族ポリアミドは高価格でコストがかかり、汎用記録媒体(磁気テープ)の支持体としては現実的ではない。
二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の寸法安定性を向上させるためにポリマーアロイや共重合などによりフィルムの湿度膨張係数を低減する技術が開発されてきた(特許文献1〜3)。これらの技術は、フィルムの走行性と平滑性を両立したり、更なる高密度化記録を達成するためにフィルムを薄くし、高強度化し湿度膨張係数を低減させる目的で、二軸配向度を高くすると、温度に対する寸法安定性が著しく悪化したり、製膜時の過度の延伸により厚み斑が発生しやすく、製膜時のフィルム破れが多発し、安定に二軸配向フィルムが製造できずに、また、磁気記録媒体の製造工程では、二軸配向ポリエステルフィルムの微細な厚み斑がフィルムの場所による熱収縮のバラツキを生じさせ磁気記録媒体の表面性が悪化するなどの問題がある。
また、カルボキシル末端基濃度の低濃度化により、熱寸法安定性を向上させる技術も開発されているが、近年の高密度化記録に対応した支持体としては、テープの使用環境および保管環境における寸法安定性を満足することは出来ない(特許文献4〜6)。
さらに、カルボキシル末端架橋剤を添加したポリエチレンナフタレートフィルムも開発されているが近年の高密度化記録に対応した支持体としては、テープの使用環境および保管環境における幅方向の寸法安定性を満足することは出来ない(特許文献7)。
特開2010−37448号公報 特開2010−31116号公報 特開2009−221277号公報 特開2012−158769号公報 特開2012−17456号公報 特開昭62−263024号公報 特開平11−5854号公報
本発明の目的は、上記の問題を解決した、厚み精度に優れ、寸法安定性や電磁変換特性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムであって、磁気記録媒体とした際に平滑な磁性層を有すると共に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化が小さい、エラーレートの少ない高密度磁気記録媒体となる二軸配向ポリエステルフィルムを安定に提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、次の各構成を特徴とするものである。
(1)カルボキシル末端基濃度が10〜30eq/ton以下であり、幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RH、幅方向の厚み斑が10%以下、幅方向のヤング率が7GPa以上、フィルム厚みが6μm以下である二軸配向ポリエステルフィルム。
(2)長手方向の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度が125〜180℃であることを特徴とする、上記(1)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(3)100℃で30分間処理した時の幅方向の熱収縮率が0.3〜1.5%であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(4)微小融解ピーク温度(T−meta)が160〜210℃であり、長手方向の屈折率(nMD)と幅方向の屈折率(nTD)と厚み方向の屈折率(nZD)の平均で示される平均屈折率(n_bar)が1.590〜1.680であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(5)平均粒径が0.060〜0.60μmの不活性粒子を0.02〜0.5質量%含有する層を少なくとも1層有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(6)長手方向のヤング率が3.5〜5GPaであることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(7)塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
(8)上記(6)または(7)に記載の二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとして用いたことを特徴とする磁気記録媒体。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、厚み精度、寸法安定性に優れており、延伸破れを発生することなく安定的に製膜できる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを支持体とした磁気記録媒体は平滑な磁性層を有し、電磁変換特性に優れると共に温度や湿度の環境変化や保存による寸法変化が小さく、エラーレートの少ない高密度磁気記録媒体となる。
幅寸法を測定する際に用いるシート幅測定装置の概略図である。
本発明において用いるポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものを用いることができる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
ポリマーの共重合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
ポリエステルは、二軸延伸を施せること、および、寸法安定性などの本発明の効果を発現するために、ガラス転移温度が150℃未満のものを好適に使用できる。本発明において用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)が好ましく、また、これらの共重合体や変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。本発明のポリエステルとしては特に、結晶子サイズや結晶配向度を高めるプロセスが適用しやすいことから主成分がポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。ここで、主成分とはフィルム組成中80質量%以上であることをいう。
本発明のポリエチレンテレフタレートをポリマーアロイとする場合、他の熱可塑性樹脂は、ポリエステルと相溶するポリマーが好ましく、ポリエーテルイミド樹脂などがより好ましい。ポリエーテルイミド樹脂としては、例えば以下で示すものを用いることができる。
Figure 2015086276
(ただし、上記式中Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R、Rとしては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
Figure 2015086276
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
Figure 2015086276
または
Figure 2015086276
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数である。)
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem(登録商標)1000」、「Ultem(登録商標)1010」、「Ultem(登録商標)1040」、「Ultem(登録商標)5000」、「Ultem(登録商標)6000」および「Ultem(登録商標)XH6050」シリーズや「Extem(登録商標) XH」および「Extem(登録商標) UH」の登録商標名等で知られているものである。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのカルボキシル末端基濃度は、10〜30eq/tonである。好ましくは15〜28eq/tonである。カルボキシル末端基濃度を本発明の範囲内に設定すると、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製膜する際のフィルムの延伸工程、特に高温下で実施される2段目の幅方向の延伸において、非晶部の配向(秩序性)を促進しやすくなる。カルボキシル末端基濃度が10eq/tonより小さいと分子鎖の絡み合いが多くなると同時に非晶部の秩序性が高まり過ぎるため、幅方向の2段目の延伸が困難となる場合や、均一延伸ができない場合があり、厚み斑や製膜安定性が低下する傾向にある。また、カルボキシル末端基濃度が30eq/tonを超えると幅方向に2段階で延伸する際にフィルム中の非晶部の秩序性が低下したり、結晶化が起こりやすくなるため、配向結晶部などの拘束点の歪みが大きくなり、厚み精度や製膜安定性また熱収縮率、寸法安定性が悪化する場合がある。なお、カルボキシル末端基濃度を本発明の範囲内とするには、1)触媒の適正化、2)重合温度の低温化、3)重合時間の短縮化、4)ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分とのエステル化反応をさせ、溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出、ストランド化、カッティングを行い、チップ化したのち、固相重合する方法、5)緩衝剤をエステル交換反応またはエステル化反応終了後から重縮合反応初期(固有粘度が0.3未満)までの間に添加する方法、等の組み合わせ等により得ることができる。また、緩衝剤や末端封止剤を成形時に添加することによっても得ることができる。
触媒の具体例としては、エステル交換反応時の反応触媒としては、従来公知のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることが出来る。また、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物などを挙げることができる。
緩衝剤の具体例としては、重合反応性、耐湿熱性の点から緩衝剤がアルカリ金属塩であることが好ましく、例えば、フタル酸、クエン酸、炭酸、乳酸、酒石酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリアクリル酸などの化合物とのアルカリ金属塩を挙げることができる。中でも、アルカリ金属元素として、カリウム、ナトリウムであることが触媒残渣による析出物を生成しにくい点から好ましく、具体的には、フタル酸水素カリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。
また、下記(I)式で示されるアルカリ金属塩であることがポリエステル樹脂の重合反応性や、溶融成形時の耐熱性の点で好ましく、さらにはアルカリ金属がナトリウム、および/またはカリウムであることが重合反応性、耐熱性、耐湿熱性の点で好ましく、特にリン酸とナトリウムおよび/またはカリウムの金属塩であることが重合反応性、耐湿熱性の点で好ましい。
POxHyMz ・・・(I)
(ここで、xは2〜4の整数、yは1または2、zは1または2であり、Mはアルカリ金属である。)
緩衝剤の含有量は、0.1モル/t以上5.0モル/t以下であることが好ましい。更に好ましくは0.2モル/t以上3.0モル/t以下である。0.1モル/t以上であると、カルボキシル末端基濃度を本発明の下限以上に調節しやすくなり、製膜時に幅方向の高配向化が進みやすくなる。5.0モル/t以下であると、過剰なアルカリ金属によって分解反応が促進されることはなく、分子量が低下しにくくなり、延伸工程において十分な分子鎖の絡み合いが得られやすく、延伸応力の分散が効率的に出来やすく、延伸破れも発生しにくくなる。また、寸法安定性、機械特性の低下も起こりにくい傾向にある。
本発明のポリエステル樹脂の重合では、微量の水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物をエステル化反応初期から中期の間、あるいはエステル交換反応開始前から反応初期の間に添加したり、微量のマグネシウム化合物、例えば酢酸マグネシウムなどをエステル化反応終了から重縮合反応初期までの間、或いは、エステル交換反応開始前に添加する方法が、カルボキシル末端基濃度の調節方法として、好ましく例示される。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は0.65以上であることがより好ましい。更により好ましくは0.66以上である。固有粘度が高いと分子鎖の絡まりが多くなり、この絡まりが延伸配向する際の起点となり、延伸応力の伝播性が向上しやすくなる。さらに、フィルムの延伸工程、特に高温下で実施される2段目の幅方向の延伸において、前延伸工程で形成された配向結晶(拘束点)の結晶化の促進が抑制されやすくなり、幅方向に延伸を実施し高配向化、高強力化する際に配向結晶が受ける歪みを抑制でき、幅方向の厚み斑が低減し、製膜安定性が飛躍的に良好となる傾向にある。すなわち、固有粘度が0.65以上であると、幅方向の2段目の延伸工程において前工程で形成された配向結晶に起因する拘束点以外の分子間の絡み合いが十分となり、拘束点に延伸応力が集中しすぎず、局所的な幅方向の延伸の過延伸が起きにくくなり、厚み斑の悪化や延伸破れの発生が起こりにくく、製膜安定性が向上する傾向にある。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のIVを0.65以上とすることによって、カルボキシル末端基濃度を本願の範囲内に調節しやすくなる。なお、IVの上限は特に決められるものではないが、重合時間が長くなるためコスト的に不利となったり、溶融押出が困難となるという点から、好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.75以下である。上記固有粘度とするには、溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出、ストランド化、カッティングを行い、チップ化する方法と、目標より低めの固有粘度で一旦チップ化し、その後固相重合を行う方法とがある。これらのうち、熱劣化を抑えられ、かつカルボン酸末端基数を低減できるという点で、目標より低めの固有粘度(0.5〜0.6以下)で一旦チップ化し、その後固相重合を行うのがより好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RHである。湿度膨張係数が6ppm/%RH以下であると、磁気記録媒体用に用いた場合、湿度変化による変形が大きくならず、寸法安定性の悪化が起こりにくくなる。より好ましい上限は5.5ppm/%RHであり、さらに好ましくは5ppm/%RHである。湿度膨張係数は分子鎖の緊張度合いが影響する物性であり、後述するようにTD延伸1とTD延伸2の倍率比によって制御することができ、また、TD延伸トータルの倍率やMD延伸倍率との比によっても制御が可能である。TD延伸1とTD延伸2の倍率比(TD1/TD2)が大きいほど湿度膨張係数は小さくなる。また、TD延伸トータルの倍率が高いほど湿度膨張係数は小さくなる。
なお、本発明において、MDとは二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向を示し、TDとは二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向または横方向を示す。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向の厚み斑が10%以下である。より好ましくは7%以下である。厚み斑が10%以下であると磁気テープの製造工程での表面性の低下が起きにくくなる傾向にある。また幅方向の熱収縮率の悪化も起きにくくなる傾向にある。さらに延伸破れの多発もなく、製膜安定性も良化する傾向にある。厚み斑は、TD延伸2の延伸条件の影響を大きく受けやすく、前工程までに形成された配向結晶などの拘束点や分子鎖の絡み合いを起点としてさらに幅方向に延伸する際に引き起こされるため、延伸応力を拘束点や分子鎖の絡み合いの箇所に分散させ、これらの拘束点にかかる延伸応力を小さくすることが好ましい。幅方向に延伸する際(TD延伸2)の延伸応力を均一に分散させる方法としては、前工程までの面倍率を9倍以上、好ましくは10倍以上に延伸し拘束点を形成させておくと、TD延伸2の延伸工程で特定のカルボキシル末端基濃度を有するポリマーの絡み合いによる新たな拘束点が形成されやすくなり、幅方向の延伸を2段階(TD延伸1およびTD延伸2)に分けて実施することによって延伸応力を均一分散させ易くなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向のヤング率が7GPa以上であり、7〜10GPaであることが幅方向の湿度膨張係数の制御の観点からより好ましい。幅方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の環境変化による寸法安定性が良好となる傾向にある。幅方向のヤング率は後述するTD延伸1、2の温度や倍率によって制御することができる。特にトータルのTD倍率が影響し、トータルのTD倍率が高いほどTDヤング率が高くなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率が3.5〜5GPaがより好ましい。長手方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の保管時の張力による保存安定性がより良好となる。5GPa以下であると、二軸配向ポリエステルフィルムの製膜時のMD延伸倍率を大きく上げることは必要でなく、製膜性が安定しやすい。長手方向のヤング率のさらに好ましい範囲は3.5〜4.5GPa、さらにより好ましい範囲は3.8〜4.4GPaである。長手方向のヤング率はMD延伸倍率で制御することができる。MD倍率が高いほどMDヤング率が高くなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは6μm以下である。フィルム厚みが6μm以下であると、高密度磁気記録媒体として用いる場合にテープ1巻あたりのテープ長さが長くなるため、磁気テープの小型化、高容量化が容易になり市場ニーズに対応しやすい。フィルム厚みは好ましくは5.5μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。フィルム厚みの下限としては、剛性、寸法安定性さらに厚み斑を満足できる観点から3μm以上が好ましい。厚みの調整方法としては、二軸配向ポリエステルフィルムの製膜の際のポリマーの溶融押出時におけるスクリューの吐出量を調整し、口金から未延伸フィルムの厚みを制御することによって二軸延伸後のフィルム厚みを調節することが可能となる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度は125〜180℃であることがより好ましい。更により好ましくは128〜170℃であり、さらにより望ましく128〜160℃である。長手方向のtanδのピーク温度が125℃以上であると、フィルム中の配向結晶に起因する拘束点が効率よく形成される傾向にある。また、ポリエステルフィルムでは、長手方向のtanδのピーク温度上限は180℃と推定される。tanδを本発明の範囲内とするには、本発明のポリエチレンテレフタレートにガラス転移温度が200℃以上の非晶性熱可塑性樹脂を3質量%以上30質量%以下の割合で含有させることによって調節することが出来る。さらに、長手方向のヤング率を3.5GPa以上とすることも有効であり、これらの方法を併用することが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの100℃で30分間熱処理を施した時の幅方向の熱収縮率が0.3〜1.5%であることがより好ましく、さらには0.5〜1.3%であることが好ましい。幅方向の熱収縮率が小さいと、磁気記録媒体の製造工程において幅縮みやシワなどの問題が起こりにくくなる。熱収縮はフィルム中の歪みが大きい事により引き起こされるため、熱収縮を低くするには、熱処理温度を高温化することや幅方向の延伸倍率の低倍化によって歪みを小さくすることが一般的であるが、この方法では、本発明の幅方向の湿度膨張係数を達成することが困難となる。発明者らは鋭意工夫の結果、相反する関係にある熱収縮率と湿度膨張係数の両立が、横延伸の予熱と延伸温度条件を次のように制御することで可能となることを見出した。すなわち、TD延伸1の予熱温度を(MD延伸後のフィルムの冷結晶化温度(以下Tcc.BFという)−5℃)〜(Tcc.BF+5℃)の間に設定し、TD1延伸温度を予熱温度以下に設定すること、およびTD延伸2の延伸温度を熱処理温度近傍まで高温化するように制御する。なお、ここで冷結晶化温度とは、ガラス状態からの結晶化発熱ピーク温度をいい、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定できる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの微小融解ピーク温度(T−meta)は160〜210℃であることがより好ましい。160℃以上であると、二軸配向ポリエステルフィルムの構造固定が十分となり、寸法安定性や熱収縮率が向上する傾向にある。210℃以下であると、二軸配向ポリエステルフィルムの配向緩和が起こりにくく、寸法安定性が良化する傾向にある。さらにより好ましい範囲は170〜200℃であり、さらに望ましくは175〜190℃である。T−metaは熱固定温度で制御することができる。熱固定温度が高いとT−metaが高くなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、平均屈折率(n_bar)がより好ましくは1.590〜1.680である。更により好ましくはn_barが1.590〜1.65である。n_barが1.590以上であると結晶性や配向が十分となり、寸法安定性が良化する傾向にある。n_barが1.680以下であると配向緩和による結晶性が進みすぎておらず、寸法安定性の悪化が起こりにくくなる傾向にある。n_barは熱固定温度で制御することができ、また、後述するTD延伸1、2の条件によっても制御することができる。なお、n_barは、長手方向の屈折率をnMDとし、幅方向の屈折率をnTDとし、厚み方向の屈折率をnZDとしたとき、((nMD+nTD+nZD)/3)にて算出される値をいう。熱固定温度が低いほどn_barは低くなる。また、TD延伸1とTD延伸2の倍率比が(TD1/TD2)が大きいほどn_barは小さくなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.060〜0.60μmの不活性粒子を含有する層を少なくとも1層有するのがより好ましい。更に好ましい平均粒径は0.10〜0.45μmである。含有量は好ましくは0.02〜0.5質量%であり、より好ましくは0.05〜0.4質量%である。不活性粒子としては特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、いずれも用いることができる。2種類以上の粒子を併用してもかまわない。具体的な種類としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ珪酸塩、カオリン、タルク、モンモリロナイト、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子などが添加されてもよい。
上記の不活性粒子が含有させる表面の中心線表面粗さRaはより好ましくは3〜15nmであり、更により好ましくは5〜12nmである。表面粗さRaが3〜15nmの範囲外であると走行性や巻き取り性が不良となりやすい。表面粗さの制御方法としては、粒子の粒径と含有量によって制御することが可能である。また、粒子が含有されている層の積層厚み(t)と該層に含有される粒子の平均粒径(d)との関係(t/d)を0.1〜10、好ましくは0.5〜5に設定することでも制御できる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いる場合は、平滑な表面層側に磁性層を設けることが高密度磁気記録媒体を得る上で重要であり、特に、磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末を用いてなる磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性を発揮できる。
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造される。
まず、ポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。
また、ポリエステルフィルムの表面性を制御しつつ易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性などを付与するため、不活性粒子を添加することが好ましい。不活性粒子は無機粒子、有機粒子、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン、イミド系化合物等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)などが挙げられる。
さらに、本発明を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
続いて、上記シートを長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、熱処理する。幅方向の寸法安定性を向上させるために延伸工程は、幅方向において2段階以上に分けることが好ましい。すなわち、再横延伸を行う方法が高寸法安定性の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られ易いために好ましい。
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に2段階で延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や同時二軸延伸した後にさらに幅方向に延伸する延伸方法が好ましい。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。なお本願はPETフィルムに限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
まず、PETのペレットを製造する。PETは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のPETまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、カルボキシル末端基濃度を調節する目的でエステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、エステル化反応、またはエステル交換反応が実質的に終了した後から、固有粘度が0.4に達するまでの間に重合触媒や緩衝剤などの添加物を添加する。公知の方法で重合反応を行うことができるが、重縮合により得られるPETのカルボキシル基末端数を30eq/ton以下の範囲でより低減させ、かつPETの固有粘度を高めるためには、上記重合を行った後、190℃以上、PETの融点未満の温度で、減圧または窒素ガスのような不活性気体の流通下で加熱する、いわゆる固相重合することが好ましい。この場合、固相重合に移行する前の固有粘度を0.5以上0.6以下の範囲にPETの重合を調整することが重合むらがなく均一な固有粘度のPETを得るために好ましい。
フィルムを構成するPETに不活性粒子を含有させるには、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。不活性粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないPETで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。
次に、得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けることは本発明の特徴面を形成する上で極めて好ましい。フィルムを積層するには、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層するとよい。
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてステンターにより横延伸を二段階行う(TD延伸1、TD延伸2)二軸延伸方法について説明する。
まず、未延伸フィルムをMD延伸する。MD延伸の延伸温度は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)を目安として決めることができる。Tg−10〜Tg+15℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg℃〜Tg+10℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下し、本願の特徴であるMD延伸後の二段階TD延伸で安定して延伸することが困難となることがある。MD延伸倍率は3.0〜3.8倍、好ましくは3.1〜3.5倍である。二段階のTD延伸を安定して行うにはMD延伸後のフィルムにおけるポリマー構造が重要である。MD方向へ配向させすぎるとTD延伸時に分子鎖が絡み合い局所的に応力が発生するためにフィルム破れが発生する。その局所的な応力発生を防ぐためには、応力の伝搬部として作用する微結晶状態を発生させることや、また適度なMD配向を付与することが重要である。微結晶は熱分析(DSC)による結晶化度分析で簡易的に判断することができる。結晶化度は20〜30%が好ましく、より好ましくは23〜28%である。またMD延伸後の配向パラメータとして複屈折Δn(nMD−nTD)で判断することができ、Δnが0.011〜0.015であることが好ましい。また、冷結晶化温度が90〜100℃であることが好ましい。
次に、ステンターを用いて、TD延伸を行う。幅方向の寸法安定性を向上させ、幅方向の厚み斑や延伸斑なく、安定製膜が可能な二軸配向PETフィルムを得るには幅方向に、温度の異なるゾーンで二段階に延伸することが好ましい。まず、一段目の延伸(TD延伸1)の延伸倍率は、好ましくは3.2〜4.0倍であり、より好ましくは3.3〜3.8倍である。また、TD延伸1の延伸温度は好ましくは(Tcc.BF−5℃)〜(Tcc.BF+5℃)の範囲であり、さらに好ましくは(Tcc.BF−3℃)〜(Tcc.BF+5℃)の範囲で行う。
本発明の寸法安定性と幅方向の厚み斑を両立させるために、TD延伸1の予熱温度を延伸温度よりも3〜8℃高く設定することが好ましい。予熱温度を高くすることで前工程(MD延伸)で形成された配向結晶が、MD方向の配向を維持しつつ僅かに緩和され、次のTD1延伸において配向結晶がMDからTD方向へ回転しやすくなるため、TD延伸1によるTD配向が効率的に促進されると推定される。
次にステンター内で二段目の延伸(TD延伸2)を行う。TD延伸2の延伸倍率は好ましくは1.1〜2倍であり、より好ましくは1.2〜1.8倍、さらに好ましくは1.3〜1.6倍である。TD延伸2の延伸温度は好ましくは(熱処理温度−20℃)〜(熱処理温度+10℃)の範囲であり、さらに好ましくは(熱処理温度−10℃)〜(熱処理温度+5℃)の範囲で行う。TD延伸2の延伸温度を熱処理温度と同等程度に高めることにより、分子鎖の運動性が向上し、前工程の延伸による配向結晶に起因する拘束点周辺の分子鎖の絡み合いを適度にほどきながら延伸することが可能になると推定される。また、フィルム中のカルボキシル末端基やポリマーの固有粘度も特定範囲に調節されているため、前工程の延伸による配向結晶に起因する拘束点以外に分子鎖の絡み合いの箇所が大幅に増加し、延伸応力がより伝播されやすくなるために非晶部の高配向化が促進される。通常、TD延伸2の延伸を高温下で行うと前延伸工程で形成された配向結晶(拘束点)が緩和しいわゆるドロー延伸となり分子配向がされにくくなり機械強度を高めることは出来ない。しかし、本発明フィルムは、カルボキシル末端基やポリマーの固有粘度も特定範囲に調節されているため、このような高温下でTD延伸2を実施しても前延伸工程で形成された配向結晶(拘束点)の緩和が抑制されると同時に配向結晶化が起こるため、TD2延伸においてさらに幅方向に延伸を実施し高配向化、高強力化するときに配向結晶が受ける歪みを抑制でき、幅方向の厚み斑が低減し、製膜安定性が飛躍的に良好になる。
続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定処理する。熱固定処理条件として、熱固定温度は、180〜210℃が好ましい。熱固定温度の上限は、より好ましくは200℃、さらに好ましくは195℃である。熱固定温度の下限は、より好ましくは185℃、さらに好ましくは190℃である。熱固定処理時間は0.5〜10秒の範囲、弛緩率は0.3〜2%で行うのが好ましい。熱固定処理後は把持しているクリップを開放することでフィルムにかかる張力を低減させながら室温へ急冷する。その後、フィルムエッジを除去しロールに巻き取り、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。また、TD延伸2の延伸温度と熱固定温度に差があり、熱固定温度が高すぎると緩和しやすく寸法安定性が低下する傾向にあり、熱固定温度が低すぎると結晶性が低くなりやすく、磁気記録媒体としたときの保存安定性が低下する。
本願の電磁変換特性、寸法安定性を達成するためにはトータルのTD延伸倍率とMD延伸倍率の比が重要である。トータルTD延伸倍率/MD延伸倍率の値は1.2〜2.0であることが好ましい。より好ましくは1.3〜1.8、さらに好ましくは1.4〜1.6である。トータルTD延伸倍率/MD延伸倍率の値は分子鎖の配向のバランスを制御する指標となり、特に寸法安定性を高めるにはTD配向を高める必要がある。しかしながら、単純にTD延伸倍率だけを高めてもその効果には限界があり、MD延伸を適度に制御することによってその後のTD延伸による効果を最大とすることが可能となる。これは、延伸による配向度向上の効果はある程度の分子鎖の絡まりが必要であり、TD延伸によるTD配向の効果を最大限高めるために必要となる分子鎖の絡まりの程度を、前段のMD延伸により制御することを意味する。このMD延伸倍率の最適値は後段のトータルTD延伸倍率と関係するため、前述のような延伸倍率の比をもって好ましい状態に制御することが可能となる。
また、安定した製膜を行うためにTD延伸1とTD延伸2の延伸倍率比が重要である。TD延伸1倍率/TD延伸2倍率の値は1.8〜4.1が好ましい。より好ましくは2.2〜3.5、さらに好ましくは2.5〜3.0である。TD延伸は2段階で行うが、TD延伸1で比較的延伸倍率を高くすることが好ましい。これは、通常TD配向を高めるには最終延伸での倍率が大きいほど配向を高められるが、TD延伸2はTD延伸1より高温で延伸することが好ましい。TD延伸1で、横方向に配向化させると同時に拘束点の形成と非晶部の秩序性を高め、TD延伸2では、その拘束点を起点として緩和と再配向が同時進行して高配向化と歪低減の両立を可能とし、また、秩序性が高まった非晶部を緩和させ配向させることで新たな拘束点を形成することが可能となる。TD延伸2の高温化は、拘束点への延伸応力の集中を抑制すると同時に局所的な過延伸部位の低減を可能とする延伸プロセスである。
本願はMD−TD1−TD2の延伸プロセスを行うことで、電磁変換特性、寸法安定性、保存安定性、製膜安定性が良好な二軸配向PETフィルムを得ることができ、MD−TDやMD1−TD1−MD2−TD2などの延伸プロセスではすべての物性が良好な二軸配向PETフィルムは得られにくい。
次に、磁気記録媒体は例えば次のように製造される。
上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体(二軸配向ポリエステルフィルム)を、たとえば0.1〜3m幅にスリットし、速度20〜300m/min、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面に磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより逐次または同時に重層塗布する。なお、上層に磁性塗料を厚み0.1〜0.3μmで塗布し、下層に非磁性塗料を厚み0.5〜1.5μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面にバックコートを厚み0.3〜0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行う。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
(磁性塗料の組成)
強磁性金属粉末 : 100質量部
変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
変成ポリウレタン : 10質量部
ポリイソシアネート : 5質量部
2−エチルヘキシルオレート : 1.5質量部
パルミチン酸 : 1質量部
カーボンブラック : 1質量部
アルミナ : 10質量部
メチルエチルケトン : 75質量部
シクロヘキサノン : 75質量部
トルエン : 75質量部
(バックコートの組成)
カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95質量部
カーボンブラック(平均粒径280nm): 10質量部
アルミナ : 0.1質量部
変成ポリウレタン : 20質量部
変成塩化ビニル共重合体 : 30質量部
シクロヘキサノン : 200質量部
メチルエチルケトン : 300質量部
トルエン : 100質量部
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO4やLTO5など))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
(1)カルボキシル末端基濃度
原料チップまたはフィルムサンプルをベンジルアルコール/クロロホルム(質量比7/3)混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用いた。これを基準液(0.025Nの水酸化カリウム溶液(エタノール溶液))を用いて滴定し、その滴定量よりカルボキシル末端基濃度(eq/ton)を求めた。
(2)幅方向の湿度膨張係数
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とする。
測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50(湿度発生器:アルバック理工製湿度雰囲気調節装置HC−1)
試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
荷重:0.5g
測定回数:3回
測定温度:30℃
測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し時間40分で80%RHまで昇湿し、80%RHで6時間保持したあと支持体幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定する。次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出する。
湿度膨張係数(ppm/%RH)=10×{(ΔL/12.6)/(80−40)} (3)フィルム厚みおよび厚み斑
アンリツ製フィルムシックネステスタKG601A及び電子マイクロメーターK306Cを用いて、フィルム長手方向に1m長、50mm幅でサンプリングした。サンプル幅に対して中央部(C)および両エッジ部からそれぞれ15mmの地点(C1、C2)の合計3点について、フィルムの長手方向に沿って連続的に厚みを測定し、その最大値Ta、最小値Tb,平均値Tcから次式により算出した。なお、フィルム厚みは平均値Tcとした。
厚み斑=[(Ta−Tb)/Tc]×100
(4)屈折率
JIS−K7142(2008年)に従って、下記測定器を用いて測定した。
装置:アッベ屈折計 4T(株式会社アタゴ社製)
光源:ナトリウムD線
測定温度:25℃
測定湿度:65%RH
マウント液:ヨウ化メチレン、屈折率1.74以上の場合は硫黄ヨウ化メチレンを用いた。
平均屈折率n_bar=((nMD+nTD+nZD)/3)
複屈折Δn=(nMD−nTD)
nMD;フィルム長手方向の屈折率
nTD;フィルム幅方向の屈折率
nZD;フィルム厚み方向の屈折率
(5)ヤング率
ASTM−D882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定した。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとした。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とした。
測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
試料サイズ:
フィルム幅方向のヤング率測定の場合
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
フィルム長手方向のヤング率測定の場合
フィルム幅方向2mm×フィルム長手方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム長手方向に8mm)
引張り速度:1mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回。
(6)長手方向の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度
JIS−K7244(1999年)に従って、セイコーインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置”DMS6100”を用いて求めた。サンプルサイズは幅4mm×長さ50mmとして、フィルムの長手方向が50mmとなるようにサンプルを整えチャック間距離が20mmとなるようにセットしチャックからはみ出したフィルムは取り除いた。引張モード、駆動周波数は1Hz、チャック間距離は20mm、昇温速度は2℃/minの測定条件にて、各フィルムの粘弾性特性の温度依存性を測定した。この測定結果から、tanδが極大となるときの温度をそのフィルムのtanδのピーク温度と定義した。
(7)熱収縮率
フィルムをMD方向あるいはTD方向に幅10mm長さ300mmに切り、150mm間隔にマーキングし支持板に一定張力(5g)下で固定した後、マーキング間隔の原長a(mm)を測定する。次に、無荷重下で100℃の熱風オーブン中で30分間静置処理し、原長測定と同様にしてマーキング間隔b(mm)を測定する。下記の式により熱収縮率を求め、5本の平均値を用いる。
熱収縮率(%)=(a−b)/a×100
(8)微小融解ピーク温度(T−meta)
JIS−K7121(1987年)に従って、示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、25℃から300℃まで、昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)、Tmより低温側に現れる微小吸熱ピーク温度をT−metaとした。Tmのピーク面積から算出される熱量を融解熱量ΔHmとする。
(9)不活性粒子の平均粒径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍で観察する。この時、写真上で1cm以下の粒子が確認できた場合はTEM観察倍率を5万倍に変えて観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野測定し、写真に撮影された単分散した粒子全てについて等価円相当径をもとめ、その平均を不活性粒子の平均粒径とした。ここで、1万倍で観察した写真上に不定形の凝集粒子が確認できた場合、これは粒子の平均粒径の計算には含めないこととした。
フィルム中に粒径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記の等価円相当径の個数分布が2個以上のピークを有する分布となる。この場合は、それぞれのピーク値をそれぞれの粒子の平均粒径とした。
(10)不活性粒子の含有量
ポリマー1gを1N−KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。
(11)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃の温度で測定した溶液粘度から、下式に基づいて、固有粘度[η]を計算した。
ηsp/C=[η]+K[η]×C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(g/100ml、通常1.2)であり、Kはハギンス定数(0.343とした)である。また、溶液粘度と溶媒粘度は、オストワルド粘度計を用いて測定した。
(12)ろ波中心線うねり Wc
ISO4287−1997に従って、小坂研究所製のsurf−corder ET−4000Aを用いて、ろ波中心線うねりWcを測定した。条件は下記のとおりであり、10回の測定の平均値をもって値とした。
装置:小坂研究所製“surf−corder ET−4000A”
解析ソフト:i−star
触針先端半径:0.5μm
測定長 :0.5mm
針圧 :50μN
カットオフ値:高域−0.08mm、低域−0.8mm
レベリング:直線(全域)
フィルター:ガウス
倍率 縦×20万倍 横×500倍
(13)幅寸法安定性
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面に下記に従って磁性塗料および非磁性塗料を重層塗布し12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、磁気テープとした。
(以下、「部」とあるのは「質量部」を意味する。)
磁性層形成用塗布液
バリウムフェライト磁性粉末 100部
(板径:20.5nm、板厚:7.6nm、
板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)
飽和磁化:44Am/kg、BET比表面積:60m/g)
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α−アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)
粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
非磁性層形成用塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長0.09μm、
BET法による比表面積 50m/g
pH 7
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面処理層Al 8質量%
カーボンブラック 25部
“コンダクテックス”(登録商標)SC−U
(コロンビアンカーボン社製)
塩化ビニル共重合体 MR104(日本ゼオン社製) 13部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 3.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 205部
シクロヘキサノン 135部
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ−ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2,000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ−トを非磁性層の塗料には5.0部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層形成用塗布液を、PETフィルム上に乾燥後の厚さが1.0μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが0.10μmになるように逐次重層塗布を行い、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに6,000G(600mT)の磁力を持つコバルト磁石と6,000G(600mT)の磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。次いで7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にて処理を行った。その後、厚み0.4μmのバックコート層(カーボンブラック 平均粒子サイズ:17nm 100部、炭酸カルシウム平均粒子サイズ:40nm 80部、αアルミナ 平均粒子サイズ:200nm 5部をニトロセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネートに分散)を塗布した。スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付け、テープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。
磁気テープのカートリッジからテープを取り出し、下記恒温恒湿槽内へ図1のように作製したシート幅測定装置を入れ、幅寸法測定を行った。なお、図1に示すシート幅測定装置は、レーザーを使って幅方向の寸法を測定する装置で、磁気テープ9をフリーロール5〜8上にセットしつつ荷重検出器3に固定し、端部に荷重となる分銅4を吊す。この磁気テープ9にレーザー光10を照射すると、レーザー発振器1から幅方向に線状に発振されたレーザー光10が磁気テープ9の部分だけ遮られ、受光部2に入り、その遮られたレーザーの幅が磁気テープの幅として測定される。3回の測定結果の平均値を本発明における幅とした。
測定装置:(株)アヤハエンジニアリング社製シート幅測定装置
レーザー発振器1、受光部2:レーザー寸法測定機 キーエンス社製LS−5040
荷重検出器3:ロードセル NMB社製CBE1−10K
恒温恒湿槽:(株)カトー社製SE−25VL−A
荷重4:分銅(長手方向)
試料サイズ:幅1/2inch×長さ250mm
保持時間:5時間
測定回数:3回測定。
(幅寸法変化率:幅寸法安定性)
2つの条件でそれぞれ幅寸法(L、L)を測定し、次式にて寸法変化率を算出した。具体的には、次の基準で幅寸法安定性を評価した。
A条件で24時間経過後Lを測定して、その後B条件で24時間経過後にLを測定した。テープカートリッジのはじめから30m地点から切り出したサンプル、100m地点から切り出したサンプル、170m地点から切り出したサンプルの3点を測定した。×を不合格とした。
A条件:10℃10%RH 張力0.8N
B条件:29℃80%RH 張力0.5N
幅寸法変化率(ppm)=10×((L−L)/L
◎◎:幅寸法変化率の最大値が450(ppm)未満
◎:幅寸法変化率の最大値が450(ppm)以上500(ppm)未満
○:幅寸法変化率の最大値が500(ppm)以上600(ppm)未満
△:幅寸法変化率の最大値が600(ppm)以上700(ppm)未満
×:幅寸法変化率の最大値が700(ppm)以上
(14)保存安定性
上記(13)と同様に、作製したカセットテープのカートリッジからテープを取り出し、次の2つの条件でそれぞれ幅寸法(L、L)を測定し、次式にて幅寸法変化率を算出した。
具体的には、次の基準で保存安定性を評価した。
23℃65%RHで24時間経過後Lを測定して、40℃20%RHの環境下で10日間カートリッジを保管後、23℃65%RHで24時間経過後にLを測定した。テープカートリッジのはじめから30m地点から切り出したサンプル、100m地点から切り出したサンプル、170m地点から切り出したサンプルの3点を測定した。×を不合格とした。
幅寸法変化率(ppm)=10×(|L−L|/L
◎:幅寸法変化率の最大値が50(ppm)未満
○:幅寸法変化率の最大値が50(ppm)以上100(ppm)未満
△:幅寸法変化率の最大値が100(ppm)以上150(ppm)未満
×:幅寸法変化率の最大値が150(ppm)以上
(15)製膜安定性
フィルムの製膜性について、下記の基準で評価した。
○:フィルム破れの発生がほとんどなく、安定製膜が可能である。
△:フィルム破れが時々発生し、製膜安定性が若干低い。
×:フィルム破断が多数発生し、製膜安定性が低い。
判定は、○と△を合格とし、×を不合格とした。
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリエチレンナフタレートをPEN、ポリエーテルイミドをPEIと表記する。
(1)PETペレットの作製:テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を0.5質量部(リン酸トリメチルとして0.025質量部)とリン酸二水素ナトリウム2水和物の5質量%エチレングリコール溶液を0.3質量部(リン酸二水素ナトリウム2水和物として0.015質量部)添加した。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
移行後、反応系を230℃から275℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.55のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.55のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料−1)。
回転型真空重合装置を用いて、上記のPETペレット(原料−1)を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った(原料−1k)。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間が1時間で固有粘度が0.60、5時間で固有粘度が0.70、15時間で固有粘度が0.80である。
(2−a)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2a)を得た。
(2−b)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2b)を得た。
(2−c)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.80μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2c)を得た。
(2−d)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を95質量部と平均粒径0.060μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを5質量部(コロイダルシリカ粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2d)を得た。
(2−e)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を90質量部と平均粒径0.10μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を1質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2e)を得た。
(3)2成分組成物(PET/PEI)ペレットの作製:温度280℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記方法で得られたPETペレット(原料−1)とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem(登録商標)”1010のペレットを供給して、剪断速度100sec−1、滞留時間1分にて溶融押出し、PEIを50質量%含有した2成分組成物ペレットを得た。なお、作製した2成分組成物ペレットのガラス転移温度は150℃であった(原料−3)。
(実施例1)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、固相重合を4時間実施したPETペレット(原料−1k)を84質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)10質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
この積層未延伸フィルムをロール式延伸機にて90℃で長手方向に3.1倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差を利用して行った。
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.5倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて195℃の温度の加熱ゾーンでに幅方向に1.4倍延伸した(TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで190℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに150℃の温度で0.5%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表4に示すように、磁気テープとして使用した際に、寸法安定性、保存安定性に優れた特性を有していた。
以下、表1、表2、表3、表4に各実施例、比較例の原料組成、製膜条件、二軸配向ポリエステルフィルムの物性、磁気テープの特性等を示す。
(実施例2)
表1および2に示すように、PETペレット(原料−1)の固有粘度、固相重合の時間を変更したPETペレット(原料−1k)をA,B層に用いた。また、A層の積層厚み、TD延伸2温度を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
表1および2に示すように、PETペレット(原料−1)の固有粘度、固相重合の時間を変更したPETペレット(原料−1k)をA,B層に用いた。また、A層の積層厚み、熱固定温度を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
A層原料として、固相重合を15時間実施したPETペレット(原料−1k)を91.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を2.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製し、TD延伸2温度を表2の通りに変更した以外は実施例1と同様にして厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例5)
A層原料として、固相重合を4時間実施したPETペレット(原料−1k)を91.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を2.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製し、延伸条件を表2の通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例6)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、固相重合を3時間実施したPETペレット(原料−1k)88.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)5質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を0.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。延伸条件を表2に示した通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例7)
A層原料として、固相重合を8時間実施したPETペレット(原料−1k)を用いた。A層積層厚みを表1に示した通りに変更した以外は実施例6と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例8)
A層原料として、固相重合を4時間実施したPETペレット(原料−1k)88.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)5質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を0.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。延伸条件を表2に示した通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例9)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、実施例3で用いたPETペレット(原料−1k)を76.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2e)を10質量部 平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)を7.5質量部を配合し180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部を配合し180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し積層未延伸フィルムを作製した。延伸条件を表2に示した通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例10)
A層原料として、実施例4で用いたPETペレット(原料−1k)を76.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.10μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2e)を10質量部 平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)を7.5質量部を配合し180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部を配合し180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し積層未延伸フィルムを作製した。延伸条件を表2の通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1)
A層原料として、実施例1で用いた酢酸マグネシウム四水和物の添加量を0.6質量部に変更した以外は同様の方法でエステル交換反応を行い、交換反応が終了した反応内容物を重合装置へ移行し、反応系を230℃から最終重合温度を290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに90分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3.5時間)反応させ、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを作成(原料−1)し、該PETペレット(原料−1)を91.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を2.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製し、延伸条件を表2の通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例2)
A層原料として、実施例1で用いたリン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)に変更し、リン酸二水素ナトリウム2水和物は添加しなかった。
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料−1)。PETペレット(原料−1)を91.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を2.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製し、延伸条件を表2の通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例3)
A層原料として実施例2で用いたPETペレット(原料−1k)を91.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を2.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製し、延伸条件を表2の通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例4、比較例5)
延伸条件を表2の通り変更する以外は、全て実施例2と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例6)
A層原料として、固相重合を30時間実施したPETペレット(原料−1k)88.5質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)5質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を0.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を94質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。延伸条件を表2の通りに変更して厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例7)
A層原料として、実施例2で用いたPETペレット(原料−1k)94.5質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)5質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)を0.5質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を100質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層|B層)=1|10とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。延伸条件を表2に示した通りに変更してこの積層未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に延伸(MD延伸1)した後、得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、長手方向に直角な幅方向に延伸し(TD延伸1)、さらに続いて同時二軸延伸式ステンターに導き長手方向幅方向に同時に1.7倍づつ延伸した(MD延伸2・TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで熱処理を施し、さらに120℃の温度で徐冷処理を行い厚さ4.8μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
Figure 2015086276
Figure 2015086276
Figure 2015086276
Figure 2015086276
1:レーザー発振器
2:受光部
3:荷重検出器
4:荷重
5:フリーロール
6:フリーロール
7:フリーロール
8:フリーロール
9:磁気テープ
10:レーザー光

Claims (8)

  1. カルボキシル末端基濃度が10〜30eq/ton以下であり、幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RH、幅方向の厚み斑が10%以下、幅方向のヤング率が7GPa以上、フィルム厚みが6μm以下である二軸配向ポリエステルフィルム。
  2. 長手方向の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度が125〜180℃であることを特徴とする請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. 100℃で30分間処理した時の幅方向の熱収縮率が0.3〜1.5%であることを特徴とする請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. 微小融解ピーク温度(T−meta)が160〜210℃であり、長手方向の屈折率(nMD)と幅方向の屈折率(nTD)と厚み方向の屈折率(nZD)の平均で示される平均屈折率(n_bar)が1.590〜1.680であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. 平均粒径が0.060〜0.60μmの不活性粒子を0.02〜0.5質量%含有する層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. 長手方向のヤング率が3.5〜5GPaであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  7. 塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  8. 請求項6または7に記載の二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとして用いたことを特徴とする磁気記録媒体。
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