JP6180568B1 - ポリアニオン正極活物質及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献5には、マリサイト型NaMnPO4を用いたナトリウム二次電池用活物質が開示されており、また特許文献6には、オリビン型構造を有するリン酸遷移金属ナトリウムを含む正極活物質が開示されており、いずれの文献においても高性能なナトリウムイオン二次電池が得られることを示している。
また、上記特許文献5〜6に記載のナトリウムイオン二次電池用活物質においても、より有用なナトリウムイオン二次電池の実現が望まれている。
LiFeaMnbMcPO4・・・(A)
(式(A)中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0≦a≦1、0≦b≦1、及び0≦c≦0.3を満たし、及び2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たし、かつa+b≠0を満たす数を示す。)
Li2FedMneNfSiO4・・・(B)
(式(B)中、NはNi、Co、Al、Zn、V又はZrを示す。d、e及びfは、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f<1、及び2d+2e+(Nの価数)×f=2を満たし、かつd+e≠0を満たす数を示す。)
NaFegMnhQiPO4・・・(C)
(式(C)中、QはMg、Ca、Co、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。を示す。g、h及びiは、0≦g≦1、0≦h≦1、0≦i<1、及び2g+2h+(Qの価数)×i=2を満たし、かつg+h≠0を満たす数を示す。)
で表されるポリアニオン材料の表面に、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるポリアニオン正極活物質を提供するものである。
リチウム化合物又はナトリウム化合物、セルロースナノクリスタル(X)、並びにリン酸化合物又はケイ酸化合物を混合して、複合体(A−1)を含む混合液(B−1)を得た後、得られた混合液(B−1)に少なくとも鉄化合物又はマンガン化合物を含む金属塩を混合して混合液(C−1)を得る工程(I−1)、
得られた混合液(C−1)を水熱反応に付して複合体(D−1)を得る工程(II−1)、並びに
得られた複合体(D−1)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−1)
を備えるポリアニオン正極活物質の製造方法(以下、「製造方法(X)」とも称する)を提供するものである。
リチウム化合物又はナトリウム化合物、並びにリン酸化合物又はケイ酸化合物を混合して、複合体(A−2)を含む混合液(B−2)を得た後、得られた混合液(B−2)に少なくとも鉄化合物又はマンガン化合物を含む金属塩を混合して混合液(C−2)を得る工程(I−2)、
得られた混合液(C−2)を水熱反応に付して複合体(D−2)を得る工程(II−2)、
得られた複合体(D−2)、セルロースナノクリスタル(Y)、及び水を混合して、混合液(E−2)を得る工程(III−2)、
得られた混合液(E−2)をスプレードライに付して、造粒体(F−2)を得る工程(IV−2)、並びに
得られた造粒体(F−2)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−2)
を備えるポリアニオン正極活物質の製造方法(以下、「製造方法(Y)」とも称する)を提供するものである。
リチウム化合物又はナトリウム化合物、セルロースナノクリスタル(Z−1)、並びにリン酸化合物又はケイ酸化合物を混合して、複合体(A−3)を含む混合液(B−3)を得た後、次いで少なくとも鉄化合物又はマンガン化合物を含む金属塩を混合して混合液(C−3)を得る工程(I−3)、
得られた混合液(C−3)を水熱反応に付して複合体(D−3)を得る工程(II−3)、
得られた複合体(D−3)、セルロースナノクリスタル(Z−2)又はセルロースナノファイバー(F)のいずれか1種、及び水を混合して、混合液(E−3)を得る工程(III−3)、
得られた混合液(E−3)をスプレードライに付して、造粒体(F−3)を得る工程(IV−3)、並びに
得られた造粒体(F−3)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−3)
を備えるポリアニオン正極活物質の製造方法(以下、「製造方法(Z)」とも称する)を提供するものである。
本発明で得られるポリアニオン正極活物質に用いられるポリアニオン材料は、下記式(A)、(B)又は(C):
LiFeaMnbMcPO4・・・(A)
(式(A)中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦0.2、及び2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たし、かつa+b≠0を満たす数を示す。)
Li2FedMneNfSiO4・・・(B)
(式(B)中、NはNi、Co、Al、Zn、V又はZrを示す。d、e及びfは、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f<1、及び2d+2e+(Nの価数)×f=2を満たし、かつd+e≠0を満たす数を示す。)
NaFegMnhQiPO4・・・(C)
(式(C)中、QはMg、Ca、Co、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。を示す。g、h及びiは、0≦g≦1、0≦h≦1、0≦i<1、及び2g+2h+(Qの価数)×i=2を満たし、かつg+h≠0を満たす数を示す。)
のいずれかの式で表される。
これらのポリアニオン材料は、いずれもオリビン型構造を有しており、少なくとも鉄又はマンガンを含む。上記式(A)又は式(B)で表されるポリアニオン材料から成るポリアニオン正極活物質は、いわゆるリチウムイオン二次電池用正極活物質であり、上記式(C)で表されるポリアニオン材料から成るポリアニオン正極活物質は、いわゆるナトリウムイオン二次電池用正極活物質である。
なお、セルロースナノクリスタル及びセルロースナノファイバーは、さらにはそれらを原料とした複合材料をも包含して、「ナノセルロース」と総称されることもある。
より具体的には、各製造方法(X)、製造方法(Y)及び製造方法(Z)において、例えば、製造方法(X)の工程(I−1)においてリン酸化合物を用いた場合、製造方法(Y)の工程(I−2)においてリン酸化合物を用いた場合、又は製造方法(Z)の工程(I−3)においてリン酸化合物を用い、かつ工程(III−3)においてセルロースナノクリスタルを用いた場合、セルロースナノクリスタルの炭素原子換算量は、本発明のポリアニオン正極活物質中に、好ましくは0.1〜12質量%であり、より好ましくは0.2〜10質量%であり、さらに好ましくは0.3〜7質量%である。また、上記各工程のリン酸化合物に代えてケイ酸化合物を用いた場合、セルロースナノクリスタルの炭素原子換算量は、本発明のポリアニオン正極活物質中に、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは0.3〜10質量%である。
より具体的には、例えば、工程(I−3)においてリン酸化合物を用いた場合、セルロースナノクリスタル(Z−1)の炭素原子換算量は、本発明のポリアニオン正極活物質中に、好ましくは0.05〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜8質量%であり、さらに好ましくは0.2〜6質量%であり、そして、水熱反応の後の工程(III−3)においては、セルロースナノクリスタル(Z−2)又はセルロースナノファイバー(F)が炭化してなる炭素としてポリアニオン材料の表面に担持してなる炭素の原子換算量は、本発明のポリアニオン正極活物質中に、好ましくは0.05〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜8質量%であり、さらに好ましくは0.2〜6質量%である。また、工程(I−3)においてケイ酸化合物を用いた場合、セルロースナノクリスタル(Z−1)の炭素原子換算量は、本発明のポリアニオン正極活物質中に、好ましくは0.05〜12質量%であり、より好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜8質量%であり、そして、水熱反応の後の工程(III−3)においては、セルロースナノクリスタル(Z−2)又はセルロースナノファイバー(F)が炭化してなる炭素としてポリアニオン材料の表面に担持してなる炭素の原子換算量は、本発明のポリアニオン正極活物質中に、好ましくは0.05〜12質量%であり、より好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜8質量%である。
具体的には、20kNの荷重をかけた場合の粉体抵抗において、一般的なグルコース由来の炭素が担持されてなるポリアニオン正極活物質は×10−4S・cmオーダーであるのに対し、本発明のセルロースナノクリスタル由来の炭素が担持されてなるポリアニオン正極活物質は、1.0×10−3〜5.0×10−2S・cmであり、電気伝導性に優れている。
本発明のポリアニオン正極活物質は、特徴的な複合構造を有する炭素が、正極活物質のパッキング密度が増大する状態で酸化物粒子間の導電パスを形成しているため、優れた充放電特性が発現されると考えられる。
得られた混合液(C−1)を水熱反応に付して複合体(D−1)を得る工程(II−1)、並びに
得られた複合体(D−1)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−1)
を備える製造方法であり、水熱反応前の工程においてセルロースナノファイバーを用いる方法である。
得られた混合液(C−2)を水熱反応に付して複合体(D−2)を得る工程(II−2)、
得られた複合体(D−2)、セルロースナノクリスタル(Y)、及び水を混合して、混合液(E−2)を得る工程(III−2)、
得られた混合液(E−2)をスプレードライに付して、造粒体(F−2)を得る工程(IV−2)、並びに
得られた造粒体(F−2)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−2)
を備える製造方法であり、水熱反応後の工程においてセルロースナノファイバーを用いる方法である。
得られた混合液(C−3)を水熱反応に付して複合体(D−3)を得る工程(II−3)、
得られた複合体(D−3)、セルロースナノクリスタル(Z−2)又はセルロースナノファイバー(F)のいずれか1種、及び水を混合して、混合液(E−3)を得る工程(III−3)、
得られた混合液(E−3)をスプレードライに付して、造粒体(F−3)を得る工程(IV−3)、並びに
得られた造粒体(F−3)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−3)
を備える製造方法であり、水熱反応前後の双方の工程においてセルロースナノファイバーを用いる方法である。
混合液aにおけるリチウム化合物又はナトリウム化合物の含有量は、水100質量部に対し、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは7〜45質量部である。より具体的には、工程(I−1)、工程(I−2)又は工程(I−3)においてリン酸化合物を用いた場合、混合液aにおけるリチウム化合物又はナトリウム化合物の含有量は、水100質量部に対し、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜45質量部である。また、ケイ酸化合物を用いた場合、混合液aにおけるリチウム化合物の含有量は、水100質量部に対し、好ましくは5〜40質量部であり、より好ましくは7〜35質量部である。
なお、混合液aを撹拌する際、さらに混合液aの沸点温度以下に冷却するのが好ましい。具体的には、80℃以下に冷却するのが好ましく、20〜60℃に冷却するのがより好ましい。
窒素がパージされると、複合体((A−1)、(A−2)又は(A−3))は溶存酸素濃度が低減された状態で生成し、また、混合液((B−1)、(B−2)又は(B−3))の溶存酸素濃度も効果的に低減されるため、次の工程で添加する金属塩の酸化を抑制することができる。かかる混合液((B−1)、(B−2)又は(B−3))中において、複合体((A−1)、(A−2)又は(A−3))は、微細な分散粒子として存在する。
また、窒素をパージする際、反応を良好に進行させる観点から、リン酸化合物又はケイ酸化合物を混合した後の混合液((B−1)、(B−2)又は(B−3))を撹拌するのが好ましい。このときの撹拌速度は、好ましくは200〜700rpmであり、より好ましくは250〜600rpmである。
金属塩は、少なくとも鉄化合物又はマンガン化合物を含み、さらにこれら鉄化合物及びマンガン化合物以外の金属(M、N又はQ)塩を含んでいてもよい。鉄化合物としては、酢酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸鉄が好ましい。また、マンガン化合物としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸マンガンが好ましい。
これら金属(M、N又はQ)塩を用いる場合、鉄化合物、マンガン化合物、及び金属(M、N又はQ)塩の合計添加量は、混合液((C−1)、(C−2)又は(C−3))中のリン酸又はケイ酸1モルに対し、好ましくは0.99〜1.01モルであり、より好ましくは0.995〜1.005モルである。
得られた複合体((D−1)又は(D−3))は、上記式(A)〜(C)で表されるポリアニオン材料並びにセルロースナノクリスタルを含む複合体であり、得られた複合体((D−2))は、上記式(A)〜(C)で表されるポリアニオン材料の前駆体に相当する複合体であり、ろ過後、水で洗浄し、乾燥することによりこれを単離できる。乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられる。
なお、セルロースナノファイバー(F)としては、例えばセリッシュFD−200L(繊維径:繊維径2〜100μm、ダイセルファインケム株式会社製)等の市販品を用いるのが好ましい。
セルロースナノファイバー 500g(セリッシュFD−200L(繊維径:2〜100μm、含水率:20質量%、ダイセルファインケム株式会社製)を、49%硫酸5000gに投入した後、当該硫酸スラリーを6時間攪拌した。攪拌後の硫酸スラリーを10倍希釈し、ろ過した後、水による洗浄を行い、含水率80質量%のセルロースナノクリスタル(CNC)を得た。
[実施例1]
LiOH・H2O 1272g、水 4L及びCNC 353g(活物質中における炭素原子換算量で2.0質量%に相当)を混合してスラリー水aを得た。次いで、得られたスラリー水Aを、25℃の温度に保持しながら2〜3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液 1153gを35mL/分で滴下し、続いて12時間、速度400rpmで撹拌することによりリン酸三リチウム混合液a1を得た。かかる混合液a1は、リン1モルに対し、2.97モルのリチウムを含有していた。なお、得られた混合液a1は、窒素パージし、溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした。次に、得られたリン酸三リチウムを含有する混合液a1全量に対し、MnSO4・5H2O 1688g、FeSO4・7H2O 834gを添加して、混合液a2を得た。このとき、添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、70:30であった。
スラリー水aを作製するときにCNCを添加しない以外、実施例1と同様にして得られた複合体b(LiFe0.3Mn0.7PO4)を100g分取し、これにCNC 224g(活物質中における炭素原子換算量で2.0質量%に相当)及び水1Lを添加し、混合液b1を得た。次いで、得られた混合液b1を超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた。その後、混合液b1を目開き150μmの篩に通過させて、複合体bとセルロースナノクリスタルの分散液である混合液b2を得た。なお、上記篩い分けでの篩残分は認められなかった。
得られた造粒体bを、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質(LiFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=2.0質量%)を得た。
スラリー水aを作製するときにCNC 176g(活物質中における炭素原子換算量で1.0質量%に相当)を混合した以外、実施例1と同様にして得られた複合体cを100g分取し、これにCNC 112g(活物質中における炭素原子換算量で1.0質量%に相当)及び水1Lを添加した以外、実施例2と同様にして、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質(LiFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=2.0質量%)を得た。
得られた複合体c 100gに、CNCの代わりにセルロースナノファイバー(セリッシュFD−200L)112g(活物質中における炭素原子換算量で1.0質量%に相当)を添加した以外、実施例3と同様にして、セルロースナノクリスタル及びセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質(LiFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=2.0質量%)を得た。
得られた複合体b(LiFe0.3Mn0.7PO4)に添加するCNCの代わりにグルコース 100g(活物質中における炭素原子換算量で4.0質量%に相当)とした以外、実施例2と同様にして、グルコース由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質(LiFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=4.0質量%)を得た。
[実施例5]
NaOH 600g、水 9L、及びCNC 167g(活物質中における炭素原子換算量で2.0質量%に相当)を混合してスラリー水dを得た。次いで、得られたスラリー水dを、25℃の温度に保持しながら5分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液 577gを35mL/分で滴下し、続いて12時間、400rpmの速度で撹拌することにより、混合液d1を得た。かかる混合液d1は、リン1モルに対し、3.00モルのナトリウムを含有していた。得られた混合液d1に対し、窒素ガスをパージして溶存酸素濃度を0.5mg/Lに調整した後、MnSO4・5H2O 819g、FeSO4・7H2O 417gを添加して、混合液d2を得た。このとき、添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、70:30であった。
スラリー水dを作製するときにCNCを添加しない以外、実施例5と同様にして得られた複合体e(NaFe0.3Mn0.7PO4)を50g分取し、これにCNC 112g(活物質中における炭素原子換算量で2.0質量%に相当)及び水1Lを添加し、混合液e1を得た。次いで、得られた混合液e1を超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた。その後、混合液e1を目開き150μmの篩に通過させて、複合体eとセルロースナノクリスタルの分散液である混合液e2を得た。なお、上記篩い分けでの篩残分は認められなかった。
得られた造粒体eを、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄ナトリウム正極活物質(NaFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=2.0質量%)を得た。
スラリー水dを作製するときにCNC 84g(活物質中における炭素原子換算量で1.0質量%に相当)を混合した以外、実施例5と同様にして得られた複合体fを50g分取し、これにCNC 56g(活物質中における炭素原子換算量で1.0質量%に相当)及び水1Lを添加した以外、実施例6と同様にして、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄ナトリウム正極活物質(NaFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=2.0質量%)を得た。
得られた複合体f 50gに、CNCの代わりにセルロースナノファイバー(セリッシュFD−200L)56g(活物質中における炭素原子換算量で1.0質量%に相当)を添加した以外、実施例7と同様にして、セルロースナノクリスタル及びセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄ナトリウム正極活物質(NaFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=2.0質量%)を得た。
得られた複合体e(NaFe0.3Mn0.7PO4)に添加するCNCの代わりにグルコース 50g(活物質中における炭素原子換算量で4.0質量%に相当)とした以外、実施例6と同様にして、グルコース由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄ナトリウム正極活物質(NaFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=4.0質量%)を得た。
[実施例9]
LiOH・H2O 428g、Na4SiO4・nH2O 1397gに超純水3.75Lを混合してスラリー水gを得た。このスラリー水gに、CNC 360g(活物質中における炭素原子換算量で4.0質量%に相当)、FeSO4・7H2O 392g、MnSO4・5H2O 793g、及びZr(SO4)2・4H2O 53gを添加し、混合して混合液G1を得た。このとき、添加したFeSO4、MnSO4およびZr(SO4)2のモル比(鉄化合物:マンガン化合物:ジルコニウム化合物)は、28:66:3であった。
スラリー水gを作製するときにCNCを添加しない以外、実施例9と同様にして得られた複合体h(Li2Fe0.28Mn0.66Zr0.03SiO4)を50g分取し、これにCNC 224g(活物質中における炭素原子換算量で4.0質量%に相当)及び水1Lを添加し、混合液h1を得た。次いで、得られた混合液h1を超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた。その後、混合液h1を目開き150μmの篩に通過させて、複合体hとセルロースナノクリスタルの分散液である混合液h2を得た。なお、上記篩い分けでの篩残分は認められなかった。
得られた造粒体hを、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、650℃で1時間焼成して、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるZrドープしたケイ酸鉄マンガンリチウム正極活物質(Li2Fe0.28Mn0.66Zr0.03SiO4、炭素の量=4.0質量%)を得た。
スラリー水gを作製するときにCNC 180g(活物質中における炭素原子換算量で2.0質量%に相当)を混合した以外、実施例9と同様にして得られた複合体iを50g分取し、これにCNC 112g(活物質中における炭素原子換算量で2.0質量%に相当)及び水1Lを添加した以外、実施例10と同様にして、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるZrドープしたケイ酸鉄マンガンリチウム正極活物質(Li2Fe0.28Mn0.66Zr0.03SiO4、炭素の量=4.0質量%)を得た。
得られた複合体i 50gに、CNCの代わりにセルロースナノファイバー(セリッシュFD−200L)112g(活物質中における炭素原子換算量で1.0質量%に相当)を添加した以外、実施例11と同様にして、セルロースナノクリスタル及びセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなるZrドープしたケイ酸鉄マンガンリチウム正極活物質(Li2Fe0.28Mn0.66Zr0.03SiO4、炭素の量=4.0質量%)を得た。
得られた複合体h(Li2Fe0.28Mn0.66Zr0.03SiO4)に添加するCNCの代わりにグルコース 100g(活物質中における炭素原子換算量で8.0質量%に相当)とした以外、実施例10と同様にして、グルコース由来の炭素が担持してなるZrドープしたケイ酸鉄マンガンリチウム正極活物質(Li2Fe0.28Mn0.66Zr0.03SiO4、炭素の量=8.0質量%)を得た。
透過型電子顕微鏡 ARM200F(日本電子株式会社製)を用い、実施例2で得られたセルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質(LiFe0.3Mn0.7PO4、炭素の量=2.0質量%)の炭素の担持状態を観察した。得られたTEM写真を図1に示す。
本発明のセルロースナノクリスタルが炭化してなる炭素は、ポリアニオン材料表面に立体的に存在し、この炭素が酸化物粒子間の隙間を充填する状態になることで、酸化物粒子の表面全部を均一に被覆しなくても酸化物粒子間の導電パスとなり、かつ密な積層構造体である活物質の形成に大いに寄与していると判断される。
実施例1〜12及び比較例1〜3で得られたポリアニオン正極活物質を用い、リチウムイオン二次電池もしくはナトリウムイオン電池の正極を作製した。具体的には、得られたポリアニオン正極活物質、ケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比75:20:5の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔(リチウムイオン電池の場合)もしくはナトリウム箔(ナトリウムイオン電池の場合)を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6(リチウムイオン二次電池の場合)もしくはNaPF6(ナトリウムイオン二次電池の場合)を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR−2032)を製造した。
結果を表1〜3に示す。
Claims (6)
- 下記式(A)、(B)又は(C):
LiFeaMnbMcPO4・・・(A)
(式(A)中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0≦a≦1、0≦b≦1、及び0≦c≦0.3を満たし、及び2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たし、かつa+b≠0を満たす数を示す。)
Li2FedMneNfSiO4・・・(B)
(式(B)中、NはNi、Co、Al、Zn、V又はZrを示す。d、e及びfは、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f<1、及び2d+2e+(Nの価数)×f=2を満たし、かつd+e≠0を満たす数を示す。)
NaFegMnhQiPO4・・・(C)
(式(C)中、QはMg、Ca、Co、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。を示す。g、h及びiは、0≦g≦1、0≦h≦1、0≦i<1、及び2g+2h+(Qの価数)×i=2を満たし、かつg+h≠0を満たす数を示す。)
で表されるポリアニオン材料の表面に、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質。 - セルロースナノクリスタル由来の炭素の原子換算量が、0.1〜15質量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質。
- 下記式(A)、(B)又は(C):
LiFeaMnbMcPO4・・・(A)
(式(A)中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0≦a≦1、0≦b≦1、及び0≦c≦0.3を満たし、及び2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たし、かつa+b≠0を満たす数を示す。)
Li2FedMneNfSiO4・・・(B)
(式(B)中、NはNi、Co、Al、Zn、V又はZrを示す。d、e及びfは、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f<1、及び2d+2e+(Nの価数)×f=2を満たし、かつd+e≠0を満たす数を示す。)
NaFegMnhQiPO4・・・(C)
(式(C)中、QはMg、Ca、Co、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。を示す。g、h及びiは、0≦g≦1、0≦h≦1、0≦i<1、及び2g+2h+(Qの価数)×i=2を満たし、かつg+h≠0を満たす数を示す。)
で表されるポリアニオン材料の表面に、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質の製造方法であって、
リチウム化合物又はナトリウム化合物、セルロースナノクリスタル(X)、並びにリン酸化合物又はケイ酸化合物を混合して、複合体(A−1)を含む混合液(B−1)を得た後、得られた混合液(B−1)に少なくとも鉄化合物又はマンガン化合物を含む金属塩を混合して混合液(C−1)を得る工程(I−1)、
得られた混合液(C−1)を水熱反応に付して複合体(D−1)を得る工程(II−1)、並びに
得られた複合体(D−1)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−1)
を備えるリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質の製造方法。 - 下記式(A)、(B)又は(C):
LiFeaMnbMcPO4・・・(A)
(式(A)中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0≦a≦1、0≦b≦1、及び0≦c≦0.3を満たし、及び2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たし、かつa+b≠0を満たす数を示す。)
Li2FedMneNfSiO4・・・(B)
(式(B)中、NはNi、Co、Al、Zn、V又はZrを示す。d、e及びfは、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f<1、及び2d+2e+(Nの価数)×f=2を満たし、かつd+e≠0を満たす数を示す。)
NaFegMnhQiPO4・・・(C)
(式(C)中、QはMg、Ca、Co、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。を示す。g、h及びiは、0≦g≦1、0≦h≦1、0≦i<1、及び2g+2h+(Qの価数)×i=2を満たし、かつg+h≠0を満たす数を示す。)
で表されるポリアニオン材料の表面に、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質の製造方法であって、
リチウム化合物又はナトリウム化合物、並びにリン酸化合物又はケイ酸化合物を混合して、複合体(A−2)を含む混合液(B−2)を得た後、得られた混合液(B−2)に少なくとも鉄化合物又はマンガン化合物を含む金属塩を混合して混合液(C−2)を得る工程(I−2)、
得られた混合液(C−2)を水熱反応に付して複合体(D−2)を得る工程(II−2)、
得られた複合体(D−2)、セルロースナノクリスタル(Y)、及び水を混合して、混合液(E−2)を得る工程(III−2)、
得られた混合液(E−2)をスプレードライに付して、造粒体(F−2)を得る工程(IV−2)、並びに
得られた造粒体(F−2)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−2)
を備えるリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質の製造方法。 - 下記式(A)、(B)又は(C):
LiFeaMnbMcPO4・・・(A)
(式(A)中、MはMg、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b及びcは、0≦a≦1、0≦b≦1、及び0≦c≦0.3を満たし、及び2a+2b+(Mの価数)×c=2を満たし、かつa+b≠0を満たす数を示す。)
Li2FedMneNfSiO4・・・(B)
(式(B)中、NはNi、Co、Al、Zn、V又はZrを示す。d、e及びfは、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f<1、及び2d+2e+(Nの価数)×f=2を満たし、かつd+e≠0を満たす数を示す。)
NaFegMnhQiPO4・・・(C)
(式(C)中、QはMg、Ca、Co、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。を示す。g、h及びiは、0≦g≦1、0≦h≦1、0≦i<1、及び2g+2h+(Qの価数)×i=2を満たし、かつg+h≠0を満たす数を示す。)
で表されるポリアニオン材料の表面に、セルロースナノクリスタル由来の炭素が担持してなるリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質の製造方法であって、
リチウム化合物又はナトリウム化合物、セルロースナノクリスタル(Z−1)、並びにリン酸化合物又はケイ酸化合物を混合して、複合体(A−3)を含む混合液(B−3)を得た後、次いで少なくとも鉄化合物又はマンガン化合物を含む金属塩を混合して混合液(C−3)を得る工程(I−3)、
得られた混合液(C−3)を水熱反応に付して複合体(D−3)を得る工程(II−3)、
得られた複合体(D−3)、セルロースナノクリスタル(Z−2)又はセルロースナノファイバー(F)のいずれか1種、及び水を混合して、混合液(E−3)を得る工程(III−3)、
得られた混合液(E−3)をスプレードライに付して、造粒体(F−3)を得る工程(IV−3)、並びに
得られた造粒体(F−3)を還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程(V−3)
を備えるリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質の製造方法。 - リチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質中におけるセルロースナノクリスタルの炭素原子換算量が、0.1〜15質量%である請求項3〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用又はナトリウムイオン二次電池用ポリアニオン正極活物質の製造方法。
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