JP6166869B2 - セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素の分離安定固定化方法 - Google Patents
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Description
〔1〕 不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程(1)と、
前記工程(1)により得られた吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程(2)と、を有する多核種の元素の分離安定固定化方法。
〔2〕 ゼオライト(B)のシリカ/アルミナ比が、1.0〜4.5である、〔1〕に記載の分離安定固定化方法。
〔3〕 ゼオライト(B)が、A型ゼオライトである、〔1〕又は〔2〕に記載の分離安定固定化方法。
〔4〕 ゼオライト(B)のイオン交換容量が、4〜10meq/gである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔5〕 ゼオライト(B)に対する不溶性フェロシアン化合物(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、0.5/99.5〜60/40である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔6〕 工程(2)の焼成における最高温度が、1000〜1200℃である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔7〕 工程(1)と工程(2)との間に、工程(1)において得られた吸着剤をプレス成型する工程(3)を更に有し、前記工程(2)において前記工程(3)により得られたプレス成型体を焼成する、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔8〕 不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなるセシウム及びストロンチウム除去用吸着剤。
〔9〕 不溶性フェロシアン化合物(A)とゼオライト(B)の質量比が、0.5/99.5〜60/40である、〔8〕に記載の吸着剤。
〔10〕 ゼオライト(B)が、A型ゼオライトである、〔8〕又は〔9〕に記載の吸着剤。
〔11〕 〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する、セシウム及びストロンチウムの吸着除去方法。
工程(1);不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程と、
工程(2);前記工程(1)により得られた吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程と、を有する。
このような方法により、処理液中からセシウム及びストロンチウムを吸着して分離できると共に、当該吸着剤をセシウムの揮発を抑制しつつ安定固定して処理し、安全性の高い処分形態とすることができる理由は定かではないが、以下のように推定される。
不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤は、その不溶性フェロシアン化合物(A)によりセシウムの吸着能を示し、ゼオライト(B)によりストロンチウム等の他の核種の吸着を行うことができると考えられる。吸着後、当該吸着剤を焼成することで、フェロシアン化合物(A)に吸着したセシウムが、熱分解後にゼオライト(B)内に取り込まれ、ゼオライト(B)がセラミックス状固化体となり安定固定化することができると考えられる。
以下、本発明の方法において用いるもの及び、各工程について詳細に説明する。
本発明の方法において用いられる吸着剤は、不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる。
不溶性フェロシアン化合物(A)としては、セシウムの吸着・除去に使用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、ジカリウムヘキサシアノコバルト鉄(K2[CoFe(CN)6])、ジナトリウムヘキサシアノコバルト鉄(Na2[CoFe(CN)6])、ジカリウムヘキサシアノニッケル鉄(K2[NiFe(CN)6])、フェロシアン化第二鉄(Fe4〔Fe(CN)6〕3)、フェロシアン化コバルト(Co2[Fe(CN)6]3)、フェロシアン化ニッケル(Ni2[Fe(CN)6]3)等が挙げられる。これらの中でも、特に、ジカリウムヘキサシアノコバルト鉄、ジカリウムヘキサシアノニッケル鉄が好ましい。
ここで「不溶性」とは、20℃における水への溶解性が、5g/100mL以下のものを意味する。
本発明において用いられるゼオライトは、特に制限されるものではないが、フォージャサイト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、ゼオライトβ、モルデナイト、チャバサイト、フェリエライト、クリノプチロライトが挙げられる。なお、フォージャサイトとしては、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定化Y型ゼオライト(Ultra Stable Y;USY)が挙げられる。ゼオライトは、天然であっても、合成であってもよい。
これらの中でも、特に好適なセシウム吸着能及び焼結後の吸着保持率を得る観点から、A型ゼオライト、X型ゼオライト、L型ゼオライト、モルデナイト、チャバサイト、クリノプチロライト、又はこれらのうち2以上の組合せが好ましい。特に、不溶性セシウム化合物を添着しても、好適なセシウム吸着能及びストロンチウム吸着能を有することから、A型ゼオライトが好適である。またA型ゼオライトと組み合わせて、他のゼオライトを含有していてもよく、例えば、コバルト等の他の核種の元素の吸着の観点から、X型ゼオライトと組み合わせて用いることが好適である。
本発明に使用するゼオライトの比表面積は、特に制限されないが、200m2/g以上が好ましく、300m2/g以上がより好ましく、300m2/g以上がより好ましく、以上が更に好ましい。なお、比表面積の上限は特に制限されないが、例えば、1000m2/gである。なお、比表面積は窒素吸着BET法(なお、有効細孔径3Å以下のゼオライトのはヘリウム吸着BET法)により求められる。
<工程(1)>
工程(1)では、不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを吸着する。
本発明の方法において、被処理物は、少なくともセシウムを含む水を用いることが好適である。また、被処理物は、セシウム以外にもストロンチウム等の多核種の元素を含んでいてもよい。
ここでセシウムとしては、特に限定されないが、例えば、硝酸セシウム(CsNO3)、酢酸セシウム(CH3COOCs)、硫酸セシウム(Cs2SO4)、塩化セシウム、ヨウ化セシウム等のセシウムハロゲン化物が挙げられる。
ストロンチウムとしては、特に限定されないが、例えば、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)、酢酸セシウム((CH3COO)2Sr)、硫酸セシウム(SrSO4)、塩化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム等のストロンチウムハロゲン化物が挙げられる。
また吸着時の温度も特に制限されないが、例えば、0〜100℃が好ましく、10〜70℃が好ましく、20〜40℃が好ましい。
工程(2)では、前記工程(1)により得られた吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする。
本発明の焼成における最高温度は、セラミックス状固化体を得やすくする観点から、好ましくは1000〜1200℃であり、より好ましくは1000〜1100℃であり、更に好ましくは1000〜1050℃である。
本発明においては、焼成の条件としては、600〜700℃の条件で、3〜180分間処理(以下、単に「第一段階の焼成」とする。)した後に、1000℃以上の高温で3〜180分間処理(以下、単に「第二段階の焼成」とする。)されることが好適である。すなわち比較的低温の第一段階の焼成において、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させ、比較的高温の第二段階の焼成において、セシウムを吸着したゼオライトを焼結してセラミックス状固化体に変換しやすくすることで、セシウムの揮発をより顕著に抑制することができる。
第一段階の焼成における処理時間は、セシウムの好適な移行と作業の効率の観点から、好ましくは5〜170分間であり、より好ましくは5〜160分間である。
第二段階の焼成における処理時間は、セラミックス状固化体とするための作業の効率の観点から、好ましくは5〜100分間であり、より好ましくは20〜40分間である。
工程(2)によりセラミックス状固化体が得られる。セラミックス状固化体としては、アモルファスであっても、結晶性であってもよく、焼成によるゼオライトの分解物が含まれる。セラミックス状固化体の中で、セシウムは、どのような形態で存在していてもよいが、Cs−Al−Si−O等の結合を生成するなどして、共有結合によりセシウム元素が取り込まれていることが好適である。また、セラミックス状固化体は、不溶性フェロシアン化合物に由来する残渣の鉄、コバルト、ニッケル等が含まれていてもよい。その他、セラミックス状固化体には、アンモニア、NOxの放出によって空隙が発生することもある。
本発明の安定固定化方法は、工程(1)と工程(2)との間に、工程(1)において得られた吸着剤をプレス成型する工程(3)を更に有し、前記工程(2)において前記工程(3)により得られたプレス成型体を焼成することが好適である。工程(3)においてプレス成型することで、混合物が押し固められて、セシウムの揮発をより顕著に抑制することが可能となる。また、プレス成型することで、焼成(第二段の熱処理)において、るつぼ等の容器に粉末が付着することを防止することができる。なお、プレス成型の方法については、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことが可能である。特に、混合物をペレット状に成型することで、焼成後のセラミックス固体の取り扱いが容易となる。
不溶性フェロシアン化合物を添着したゼオライトの調製の前処理として粒状ゼオライトは200℃で乾燥させた。乾燥したゼオライトを減圧下で1mol/LのCo(NO3)2溶液に3時間浸した後、90℃で3時間乾燥した。乾燥後、0.5mol/LのK4Fe(CN)6溶液に減圧下で3時間含浸させ、90℃で3時間乾燥させて、不溶性フェロシアン化コバルトカリウムを担持したゼオライト(吸着剤)を調製した。減圧下にするためにアスピレータ(東京理科器械,EYELA A−1000S)を使用した。なお、製造例7では宮城県仙台市愛子産のゼオライトを用いた。
実海水は松島海岸で採取したものを用い、セシウム濃度1ppmの溶液を調製した。これらの溶液5cm3を0.05gの各種吸着剤と温度25℃で振とうした。その後、5,000rpmで5分間遠心分離した後に、上澄み液のみを1mLずつサンプリングし、Cs,Sr濃度をγ線用NaIシンチレーションカウンター(千代田テクノル製JDC−715)により測定した。ここで、吸着率Rを各々以下の式(1)で示すように定義する。
振とう時間24hでバッチ実験を行い、不溶性フェロシアン化合物を添着した吸着剤(実施例1,2,4,5,6)のセシウムに対する吸着率(実施例8〜12)と各種製造例の吸着剤に用いたゼオライト単体のセシウムに対する吸着率(参考例1〜5)を比較した。
セシウム濃度1ppmの溶液をストロンチウム濃度1ppmの溶液に置き換え、表3に示す吸着剤(実施例1)又は表4に示すゼオライト単体を用いた以外は実施例8と同様の条件で、ストロンチウムの吸着実験を行った。結果を表3及び表4に示す。
A型のゼオライトの場合、それ単体でのストロンチウムの吸着能が高く(表4)、セシウムの吸着は、顕著ではない(表2)。特に当該A型のゼオライトにフェロシアン化合物を添着すると、ストロンチウム吸着量を維持して、セシウム吸着量を向上させることができることがわかる。また、以下の実施例で示されるようにフェロシアン化合物を添着したゼオライトにはゼオライト成分が含まれるのでセシウムの安定固定化を行うことができる。
0.5mol/LのCsNO3水溶液100mLに対して、不溶性フェロシアン化合物(ジカリウムヘキサシアノコバルト(II)鉄(II):K2[CoFe(CN)6])を添着したゼオライト(各製造例の吸着剤)を1g添加して、1日攪拌して室温で放置した。溶液から吸着剤を取り出し90℃で6時間乾燥した。その後、吸着剤を以下に示す、以下の昇温方法Aにて熱処理し、セラミックス状固化体を得た。
(昇温方法A)
200℃で30分保持後、昇温(17℃/分)、400℃で30分保持後、昇温(20℃/分)、500℃で30分保持し、昇温(14℃/分)して1000℃で1時間保持し、昇温(17℃/分)して1100℃で1時間保持した(600〜700℃:7.14分、1000℃以上:1時間以上)。(*なお、表5中1000℃の実施例においては、上記昇温方法において、1000℃で1時間保持後、昇温せずに終了した。)
実施例14〜16における分離した吸着剤及び熱処理後の試料についてEDS(エネルギー分散型微小部X線分析法)により解析を行って試料中のセシウム濃度(質量%)を測定し、これらの結果から吸着保持率(%)([熱処理後のセシウム濃度]/[混合時のセシウム濃度]×100)を求めて、表5に示した。
Claims (7)
- 不溶性フェロシアン化合物(A)を添着した、A型ゼオライト及びモルデナイトから選ばれる少なくとも1種のゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程(1)と、
前記工程(1)により得られた多核種の元素を吸着した吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程(2)と、を有する多核種の元素の分離安定固定化方法であって、
前記工程(2)において、600〜700℃の条件で処理し、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させた後に、1000℃以上で処理する、分離安定固定化方法。 - ゼオライト(B)のシリカ/アルミナ比が、1.0〜4.5である、請求項1に記載の分離安定固定化方法。
- ゼオライト(B)が、A型ゼオライトである、請求項1又は2に記載の分離安定固定化方法。
- ゼオライト(B)のイオン交換容量が、2〜10meq/gである、請求項1〜3のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
- ゼオライト(B)に対する不溶性フェロシアン化合物(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、0.5/99.5〜60/40である、請求項1〜4のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
- 工程(2)の焼成における最高温度が、1000〜1200℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
- 工程(1)と工程(2)との間に、工程(1)において得られた吸着剤をプレス成型する工程(3)を更に有し、前記工程(2)において前記工程(3)により得られたプレス成型体を焼成する、請求項1〜6のいずれかに記載の分離安定化方法。
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