JP6166869B2 - セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素の分離安定固定化方法 - Google Patents

セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素の分離安定固定化方法 Download PDF

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Description

本発明は、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着し、安定なセラミックス状固化体として安定固定化する分離安定固定化方法、この方法に使用する吸着剤、並びに、セシウム及びストロンチウムの吸着除去方法に関する。
原子力関連施設において発生する廃液中には、種々の放射性物質が含まれており、排出に先立ってこれを除去する必要がある。これらの廃液の中でも、高レベル廃液とされるものでは、比較的高濃度の硝酸又は硝酸ナトリウムを主成分とし放射性セシウムその他の核種を含有している。このような廃液の中からセシウムを選択的に取り除く方法としては、不溶性フェロシアン化合物を吸着剤として使用することが知られている(例えば、特許文献1、2)。その他、放射性排水等からセシウムを分離濃縮するために、フェロシアン化合物を添着させたゼオライトを用いることが報告されている(例えば、特許文献3)。
特開平4−118596号公報 特開平5−254828号公報 特公昭62−18216号公報
特許文献1〜3において用いられる不溶性フェロシアン化合物は、不溶性フェロシアン化合物は、熱分解しやすく、還元性雰囲気ではシアンガスの発生が懸念される。セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物は高温となった場合に、容易に熱分解してセシウムが揮発する可能性がある。そのため、当該不溶性フェロシアン化合物を焼成固化すると、セシウムは揮発し、残渣として不溶性フェロシアン化合物に由来する鉄やコバルトの酸化物が残ることとなる。このため、吸着した元素を安定固定化する方法が望まれる。また、セシウムに加えてストロンチウムについても、吸着して安定化することが望まれる。
そこで、本発明は、セシウム及びストロンチウムを吸着して分離し、更に分離したセシウムを安定固定化する多核種の元素の分離安定固定化方法、この方法に使用する吸着剤、並びに、セシウム及びストロンチウムの吸着除去方法を提供することを課題とする。
本発明者は、不溶性フェロシアン化合物を添着したゼオライトよりなる吸着剤を被処理液に接触させることで、被処理液中のセシウムを吸着し、更に当該吸着剤を焼結することで吸着したセシウムを安定固定化できることを見出した。本発明は係る知見に基づいて完成されたものである。
すなわち本発明は、以下の〔1〕〜〔11〕に関する。
〔1〕 不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程(1)と、
前記工程(1)により得られた吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程(2)と、を有する多核種の元素の分離安定固定化方法。
〔2〕 ゼオライト(B)のシリカ/アルミナ比が、1.0〜4.5である、〔1〕に記載の分離安定固定化方法。
〔3〕 ゼオライト(B)が、A型ゼオライトである、〔1〕又は〔2〕に記載の分離安定固定化方法。
〔4〕 ゼオライト(B)のイオン交換容量が、4〜10meq/gである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔5〕 ゼオライト(B)に対する不溶性フェロシアン化合物(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、0.5/99.5〜60/40である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔6〕 工程(2)の焼成における最高温度が、1000〜1200℃である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔7〕 工程(1)と工程(2)との間に、工程(1)において得られた吸着剤をプレス成型する工程(3)を更に有し、前記工程(2)において前記工程(3)により得られたプレス成型体を焼成する、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
〔8〕 不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなるセシウム及びストロンチウム除去用吸着剤。
〔9〕 不溶性フェロシアン化合物(A)とゼオライト(B)の質量比が、0.5/99.5〜60/40である、〔8〕に記載の吸着剤。
〔10〕 ゼオライト(B)が、A型ゼオライトである、〔8〕又は〔9〕に記載の吸着剤。
〔11〕 〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する、セシウム及びストロンチウムの吸着除去方法。
本発明の方法によれば、被処理液中からセシウム及びストロンチウムを吸着して分離できると共に、当該吸着剤をセシウムの揮発を抑制しつつ安定固定して処理し、安全性の高い処分形態とすることができる。更に本発明によれば、この方法に使用する吸着剤、並びに、セシウム及びストロンチウムの吸着除去方法が提供される。
本発明の多核種の元素の分離安定固定化方法は、
工程(1);不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程と、
工程(2);前記工程(1)により得られた吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程と、を有する。
このような方法により、処理液中からセシウム及びストロンチウムを吸着して分離できると共に、当該吸着剤をセシウムの揮発を抑制しつつ安定固定して処理し、安全性の高い処分形態とすることができる理由は定かではないが、以下のように推定される。
不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤は、その不溶性フェロシアン化合物(A)によりセシウムの吸着能を示し、ゼオライト(B)によりストロンチウム等の他の核種の吸着を行うことができると考えられる。吸着後、当該吸着剤を焼成することで、フェロシアン化合物(A)に吸着したセシウムが、熱分解後にゼオライト(B)内に取り込まれ、ゼオライト(B)がセラミックス状固化体となり安定固定化することができると考えられる。
以下、本発明の方法において用いるもの及び、各工程について詳細に説明する。
[吸着剤]
本発明の方法において用いられる吸着剤は、不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる。
(不溶性フェロシアン化合物(A))
不溶性フェロシアン化合物(A)としては、セシウムの吸着・除去に使用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、ジカリウムヘキサシアノコバルト鉄(K2[CoFe(CN)6])、ジナトリウムヘキサシアノコバルト鉄(Na2[CoFe(CN)6])、ジカリウムヘキサシアノニッケル鉄(K2[NiFe(CN)6])、フェロシアン化第二鉄(Fe4〔Fe(CN)63)、フェロシアン化コバルト(Co2[Fe(CN)63)、フェロシアン化ニッケル(Ni2[Fe(CN)63)等が挙げられる。これらの中でも、特に、ジカリウムヘキサシアノコバルト鉄、ジカリウムヘキサシアノニッケル鉄が好ましい。
ここで「不溶性」とは、20℃における水への溶解性が、5g/100mL以下のものを意味する。
(ゼオライト(B))
本発明において用いられるゼオライトは、特に制限されるものではないが、フォージャサイト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、ゼオライトβ、モルデナイト、チャバサイト、フェリエライト、クリノプチロライトが挙げられる。なお、フォージャサイトとしては、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定化Y型ゼオライト(Ultra Stable Y;USY)が挙げられる。ゼオライトは、天然であっても、合成であってもよい。
これらの中でも、特に好適なセシウム吸着能及び焼結後の吸着保持率を得る観点から、A型ゼオライト、X型ゼオライト、L型ゼオライト、モルデナイト、チャバサイト、クリノプチロライト、又はこれらのうち2以上の組合せが好ましい。特に、不溶性セシウム化合物を添着しても、好適なセシウム吸着能及びストロンチウム吸着能を有することから、A型ゼオライトが好適である。またA型ゼオライトと組み合わせて、他のゼオライトを含有していてもよく、例えば、コバルト等の他の核種の元素の吸着の観点から、X型ゼオライトと組み合わせて用いることが好適である。
本発明に用いるゼオライトのシリカ/アルミナ比は、特に制限はないが、通常ゼオライトの種類によりその値が決定される。例えば、3〜300が好ましく、5〜200がより好ましい。また、セシウムに加えて、ストロンチウムを吸着除去する観点から、本発明に用いるゼオライトのシリカ/アルミナ比は、1.0〜4.5が好ましく、1.5〜4.5がより好ましく、2.0〜4.0が更に好ましい。
本発明のゼオライトに使用されるイオン交換容量は、特に制限されないが、0.1meq/g以上が好ましく、2〜10meq/gがより好ましく、良好なストロンチウム除去能を得る観点から、4〜6meq/gが更に好ましい。なお、イオン交換容量とは、ゼオライトの単位質量あたりに導入されたイオン交換基のモル数を表し、値が大きいほどイオン交換基含量が高いことを示す。イオン交換容量は、ゼオライトに存在する交換性陽イオンの量を示し、例えば、セミミクロSchollenberger法により測定が可能である。
本発明に使用するゼオライトの有効細孔径は、特に制限されないが、セシウムの吸着及び固定化の観点から、例えば、1〜20Åが好ましく、2〜15Åがより好ましく、2〜10Åが更に好ましい。有効細孔径は、定容量式ガス吸着法により測定される細孔径である。前記定容量式ガス吸着法に使用する吸着ガスとしては、N2、CO2、CH4、H2等が挙げられる。
本発明に使用するゼオライトの比表面積は、特に制限されないが、200m2/g以上が好ましく、300m2/g以上がより好ましく、300m2/g以上がより好ましく、以上が更に好ましい。なお、比表面積の上限は特に制限されないが、例えば、1000m2/gである。なお、比表面積は窒素吸着BET法(なお、有効細孔径3Å以下のゼオライトのはヘリウム吸着BET法)により求められる。
ゼオライトの形態は、特に制限されないが、ビーズ、ペレット等の粒、紙、等の成形体を用いることが好ましい。
吸着剤における、ゼオライト(B)に対する不溶性フェロシアン化合物(A)の質量比〔(A)/(B)〕は、0.5/99.5〜60/40が好ましく、5/99〜50/50がより好ましく、15/95〜50/50が更に好ましい。このような質量比の範囲とすることで、ゼオライト自体の吸着性能をほとんど低下させることなく、フェロシアン化合物によりセシウム吸着能力を向上することができる。
不溶性フェロシアン化合物(A)のゼオライト(B)への添着方法は、公知の方法を使用することができ、特に制限されないが、例えば、硝酸ニッケル、硝酸コバルト等の酸の金属塩を減圧下でゼオライト(B)に含浸させ、次いでフェロシアン化カリウム溶液を含浸させるとゼオライトに不溶性フェロシアン化合物を添着することができる。
[分離安定固定化方法]
<工程(1)>
工程(1)では、不溶性フェロシアン化合物(A)を添着したゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを吸着する。
(被処理液)
本発明の方法において、被処理物は、少なくともセシウムを含む水を用いることが好適である。また、被処理物は、セシウム以外にもストロンチウム等の多核種の元素を含んでいてもよい。
ここでセシウムとしては、特に限定されないが、例えば、硝酸セシウム(CsNO3)、酢酸セシウム(CH3COOCs)、硫酸セシウム(Cs2SO4)、塩化セシウム、ヨウ化セシウム等のセシウムハロゲン化物が挙げられる。
ストロンチウムとしては、特に限定されないが、例えば、硝酸ストロンチウム(Sr(NO32)、酢酸セシウム((CH3COO)2Sr)、硫酸セシウム(SrSO4)、塩化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム等のストロンチウムハロゲン化物が挙げられる。
被処理液は、セシウム及びストロンチウムを少なくとも含んでいれば、特に制限されないが、例えば、原子力関連施おいて発生する放射性廃液等が挙げられる。
また吸着時の温度も特に制限されないが、例えば、0〜100℃が好ましく、10〜70℃が好ましく、20〜40℃が好ましい。
工程(1)では、バッチ式で被処理液と吸着剤を接触させてもよいし、吸着剤をカラムに充填して被処理液を通過させてもよい。前者の場合、吸着剤を被処理液から分離する工程を含んでいてもよい。分離方法は、特に制限されないが、公知の方法が使用でき、濾過、沈降分離、等の手段が挙げられる。
<工程(2)>
工程(2)では、前記工程(1)により得られた吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする。
本発明の焼成における最高温度は、セラミックス状固化体を得やすくする観点から、好ましくは1000〜1200℃であり、より好ましくは1000〜1100℃であり、更に好ましくは1000〜1050℃である。
本発明においては、焼成の条件としては、600〜700℃の条件で、3〜180分間処理(以下、単に「第一段階の焼成」とする。)した後に、1000℃以上の高温で3〜180分間処理(以下、単に「第二段階の焼成」とする。)されることが好適である。すなわち比較的低温の第一段階の焼成において、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させ、比較的高温の第二段階の焼成において、セシウムを吸着したゼオライトを焼結してセラミックス状固化体に変換しやすくすることで、セシウムの揮発をより顕著に抑制することができる。
第一段階の焼成における処理時間は、セシウムの好適な移行と作業の効率の観点から、好ましくは5〜170分間であり、より好ましくは5〜160分間である。
第二段階の焼成における処理時間は、セラミックス状固化体とするための作業の効率の観点から、好ましくは5〜100分間であり、より好ましくは20〜40分間である。
(セラミックス状固化体)
工程(2)によりセラミックス状固化体が得られる。セラミックス状固化体としては、アモルファスであっても、結晶性であってもよく、焼成によるゼオライトの分解物が含まれる。セラミックス状固化体の中で、セシウムは、どのような形態で存在していてもよいが、Cs−Al−Si−O等の結合を生成するなどして、共有結合によりセシウム元素が取り込まれていることが好適である。また、セラミックス状固化体は、不溶性フェロシアン化合物に由来する残渣の鉄、コバルト、ニッケル等が含まれていてもよい。その他、セラミックス状固化体には、アンモニア、NOxの放出によって空隙が発生することもある。
<工程(3)>
本発明の安定固定化方法は、工程(1)と工程(2)との間に、工程(1)において得られた吸着剤をプレス成型する工程(3)を更に有し、前記工程(2)において前記工程(3)により得られたプレス成型体を焼成することが好適である。工程(3)においてプレス成型することで、混合物が押し固められて、セシウムの揮発をより顕著に抑制することが可能となる。また、プレス成型することで、焼成(第二段の熱処理)において、るつぼ等の容器に粉末が付着することを防止することができる。なお、プレス成型の方法については、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことが可能である。特に、混合物をペレット状に成型することで、焼成後のセラミックス固体の取り扱いが容易となる。
以上、本発明の多核種の元素の安定固定化方法により、被処理液からセシウム及びストロンチウムを吸着除去して、安定固定化することができる。更に本発明によれば、放射性物質を含む廃液の処理において、大量に発生するセシウム及びストロンチウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物中のセシウムを固定化して廃棄することができる。
(実施例1〜7:不溶性フェロシアン化合物を添着したゼオライト)
不溶性フェロシアン化合物を添着したゼオライトの調製の前処理として粒状ゼオライトは200℃で乾燥させた。乾燥したゼオライトを減圧下で1mol/LのCo(NO32溶液に3時間浸した後、90℃で3時間乾燥した。乾燥後、0.5mol/LのK4Fe(CN)6溶液に減圧下で3時間含浸させ、90℃で3時間乾燥させて、不溶性フェロシアン化コバルトカリウムを担持したゼオライト(吸着剤)を調製した。減圧下にするためにアスピレータ(東京理科器械,EYELA A−1000S)を使用した。なお、製造例7では宮城県仙台市愛子産のゼオライトを用いた。
Figure 0006166869
(実施例8〜12、参考例1〜5 工程(1)セシウムの吸着除去)
実海水は松島海岸で採取したものを用い、セシウム濃度1ppmの溶液を調製した。これらの溶液5cm3を0.05gの各種吸着剤と温度25℃で振とうした。その後、5,000rpmで5分間遠心分離した後に、上澄み液のみを1mLずつサンプリングし、Cs,Sr濃度をγ線用NaIシンチレーションカウンター(千代田テクノル製JDC−715)により測定した。ここで、吸着率Rを各々以下の式(1)で示すように定義する。
Figure 0006166869
ここで、Aiは137Cs、85Srの初期放射能カウント数[cpm]、Afは吸着実験後137Cs、85Srのカウント数[cpm]である。
(海水系からのCs吸着特性)
振とう時間24hでバッチ実験を行い、不溶性フェロシアン化合物を添着した吸着剤(実施例1,2,4,5,6)のセシウムに対する吸着率(実施例8〜12)と各種製造例の吸着剤に用いたゼオライト単体のセシウムに対する吸着率(参考例1〜5)を比較した。
Figure 0006166869
以上の結果から、ゼオライトに対して、不溶性フェロシアン化合物を添着することで、セシウム吸着力に関する効果が顕著となることが読み取れる。
(実施例13、比較例6〜11:工程(1)ストロンチウムの吸着除去)
セシウム濃度1ppmの溶液をストロンチウム濃度1ppmの溶液に置き換え、表3に示す吸着剤(実施例1)又は表4に示すゼオライト単体を用いた以外は実施例8と同様の条件で、ストロンチウムの吸着実験を行った。結果を表3及び表4に示す。
Figure 0006166869
Figure 0006166869
以上の表4の結果より、ゼオライトとして、4A、13X、LSXを使用した場合には、特に高いストロンチウム除去性能を示すことが確認された。
A型のゼオライトの場合、それ単体でのストロンチウムの吸着能が高く(表4)、セシウムの吸着は、顕著ではない(表2)。特に当該A型のゼオライトにフェロシアン化合物を添着すると、ストロンチウム吸着量を維持して、セシウム吸着量を向上させることができることがわかる。また、以下の実施例で示されるようにフェロシアン化合物を添着したゼオライトにはゼオライト成分が含まれるのでセシウムの安定固定化を行うことができる。
(実施例14〜16)
0.5mol/LのCsNO3水溶液100mLに対して、不溶性フェロシアン化合物(ジカリウムヘキサシアノコバルト(II)鉄(II):K2[CoFe(CN)6])を添着したゼオライト(各製造例の吸着剤)を1g添加して、1日攪拌して室温で放置した。溶液から吸着剤を取り出し90℃で6時間乾燥した。その後、吸着剤を以下に示す、以下の昇温方法Aにて熱処理し、セラミックス状固化体を得た。
(昇温方法A)
200℃で30分保持後、昇温(17℃/分)、400℃で30分保持後、昇温(20℃/分)、500℃で30分保持し、昇温(14℃/分)して1000℃で1時間保持し、昇温(17℃/分)して1100℃で1時間保持した(600〜700℃:7.14分、1000℃以上:1時間以上)。(*なお、表5中1000℃の実施例においては、上記昇温方法において、1000℃で1時間保持後、昇温せずに終了した。)
(セシウム濃度の測定方法(EDS))
実施例14〜16における分離した吸着剤及び熱処理後の試料についてEDS(エネルギー分散型微小部X線分析法)により解析を行って試料中のセシウム濃度(質量%)を測定し、これらの結果から吸着保持率(%)([熱処理後のセシウム濃度]/[混合時のセシウム濃度]×100)を求めて、表5に示した。
Figure 0006166869
本発明の方法によれば、被処理液中からセシウム及びストロンチウムを吸着して分離できると共に、当該吸着剤をセシウムの揮発を抑制しつつ安定固定して処理し、安全性の高い処分形態とすることができ、原子力関連設備における廃液処理に応用することができる。

Claims (7)

  1. 不溶性フェロシアン化合物(A)を添着した、A型ゼオライト及びモルデナイトから選ばれる少なくとも1種のゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程(1)と、
    前記工程(1)により得られた多核種の元素を吸着した吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程(2)と、を有する多核種の元素の分離安定固定化方法であって、
    前記工程(2)において、600〜700℃の条件で処理し、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させた後に、1000℃以上で処理する、分離安定固定化方法。
  2. ゼオライト(B)のシリカ/アルミナ比が、1.0〜4.5である、請求項1に記載の分離安定固定化方法。
  3. ゼオライト(B)が、A型ゼオライトである、請求項1又は2に記載の分離安定固定化方法。
  4. ゼオライト(B)のイオン交換容量が、2〜10meq/gである、請求項1〜3のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
  5. ゼオライト(B)に対する不溶性フェロシアン化合物(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、0.5/99.5〜60/40である、請求項1〜4のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
  6. 工程(2)の焼成における最高温度が、1000〜1200℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の分離安定固定化方法。
  7. 工程(1)と工程(2)との間に、工程(1)において得られた吸着剤をプレス成型する工程(3)を更に有し、前記工程(2)において前記工程(3)により得られたプレス成型体を焼成する、請求項1〜6のいずれかに記載の分離安定化方法。
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