JP2016176742A - 放射性セシウムの固定化方法、及び放射性セシウム吸着無機鉱物 - Google Patents

放射性セシウムの固定化方法、及び放射性セシウム吸着無機鉱物 Download PDF

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剛彦 高野
誠吾 市川
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誠吾 市川
吉彦 西崎
Yoshihiko Nishizaki
吉彦 西崎
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Abstract

【課題】長期間保存を行ったとしても放射性セシウム溶出が極めて低く、安定的に貯蔵可能なセシウム吸着無機鉱物を提供する。【解決手段】高濃度に濃縮した放射性セシウムを無機鉱物に吸着させ、該無機鉱物を1000℃以上で焼成する。【選択図】図1

Description

本発明は、高度に濃縮した放射性セシウムを担体である無機鉱物に吸着させ、吸着した放射性セシウムが溶出しないよう固定化させた、放射性セシウム吸着無機鉱物に関する。
原子力発電所の事故により放出された種々の放射性物質のうち、特に重要な放射性セシウム(134Csと137Csがあるが、本明細書においては、まとめて「放射性セシウム」と記す。)を、自然界や居住環境から分離除去し、安全に貯蔵して放射能の減衰を待つための、さまざまな除染方法や減容貯蔵の方法が開発されている。
本発明者らは、種々の可燃物に付着ないし吸着された放射性セシウムが、可燃物を都市ゴミ焼却炉で焼却処理したときに飛灰に濃縮され、主灰や飛灰を溶融処理したときは溶融飛灰に移行すること、及び、これらの焼却灰および飛灰(以下「灰」と略記する)の中に存在する放射性セシウムは水に溶けやすい形態であることから、灰から放射性セシウムを水で抽出し、その抽出液から放射性セシウムを適宜の吸着剤に吸着させて分離し、放射性セシウムを吸着した吸着剤を固化処理することによって大幅な減容が可能になること、を見出し、その実施技術を確立して提案した。
また、放射性セシウム含有排水から放射性セシウムを除去するため、フェロシアン化鉄に放射性セシウムを吸着させた後、フェロシアン化鉄の粒子を凝集沈殿させて分離する方法(特許文献1参照)、更にはフェロシアン化鉄に吸着させた放射性セシウムを放出し、ゼオライトに放射性セシウムを吸着させて貯蔵する方法(特許文献2、3参照)、を提案している。
特開2013−242291号公報 特開2014−077774号公報 特開2015−004655号公報
本発明者らは、特許文献3にあるように、ゼオライトのような放射性セシウム吸着物質へ、かなりの高濃度で放射性セシウムを吸着させることに到達している。ゼオライトは安定な無機鉱物ではあるが、塩分濃度が高くなると放射性セシウム吸着能が低下するため、上記技術では、塩分濃度を低く抑制した状態で高濃度の放射性セシウム溶液を調製することで、ゼオライトに高濃度で放射性セシウム吸着を可能とした。
しかしながらゼオライトは、放射性セシウムを吸着した後もイオン交換能力を有することが解った。そのため、再度アルカリ金属イオンを多く含む溶液と接触すると、放射性セシウムが溶出する恐れがある。
本発明はこのような状況下なされたものであり、長期間保存を行ったとしても放射性セシウム溶出が極めて低く、安定的に貯蔵可能なセシウム吸着無機鉱物を提供することを課題とする。また、安定的に貯蔵可能なように、放射性セシウムを無機鉱物に固定化する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記の課題に鑑みて鋭意検討した結果、セシウムを高濃度で吸着した無機
鉱物の構造を変化させることで、放射性セシウムの溶出を低減させられるのではないかと考えた。そして、放射性セシウムを高濃度で吸着させた無機鉱物を一定以上の温度で焼成することで、セシウムを吸着した無機鉱物の構造を変化させ、放射性セシウムの溶出が低減できることに想到した。本発明は以下のとおりである。
(1)放射性セシウムを吸着させたフェロシアン化鉄を準備する準備ステップ、該フェロシアン化鉄を水に分散させ、該分散液のpHを10以上に調整する調整ステップ、該分散液中の放射性セシウムを濃縮する濃縮ステップ、該放射性セシウムが濃縮された分散液に無機鉱物を接触させ、放射性セシウム吸着無機鉱物を得る吸着ステップ、及び得られた放射性セシウム吸着無機鉱物を1000℃以上で焼成する焼成ステップ、を含む、放射性セシウムの固定化方法。
(2)前記無機鉱物は、モルデナイト型ゼオライトである(1)に記載の方法。
(3)前記焼成ステップにおいて、モルデナイト型ゼオライト構造が変化することで、放射性セシウムがゼオライトに固定化される(2)に記載の方法。
(4)前記吸着ステップにおいて、無機鉱物に吸着された放射性セシウム濃度が100,000Bq/kg以上である、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(5)放射性セシウムが高濃度で固定化された、放射性セシウム吸着無機鉱物であって、Na+濃度360ppmのNaCl水溶液に24時間含浸させて行う放射性セシウム溶出試験において、放射性セシウム溶出濃度が100Bq/kg以下であり、かつ、実質的にシアンを含まない、放射性セシウム吸着無機鉱物。
(6)無機鉱物に吸着された放射性セシウム濃度が100,000Bq/kg以上である、(5)に記載の放射性セシウム吸着無機鉱物。
(7)前記無機鉱物がゼオライトである、(5)または(6)に記載の無機鉱物。
本発明によれば、ゼオライトなどの無機鉱物に放射性セシウムを高濃度で吸着させ、固定化することで、長期間保存を行ったとしても放射性セシウムの溶出レベルが極めて低く、安定的に貯蔵可能なセシウム吸着無機鉱物を提供できる。
つまり本発明によれば、放射性セシウムを高濃度に濃縮しても、長期間溶出させることなく安全に保管可能となる。
本発明の完成により、本発明者らは、放射性セシウム含有水からの放射性セシウムの除染、放射性セシウムの濃縮、さらには放射性セシウムの無機鉱物への固定化と、放射性セシウムによる汚染に対し、長期間の安定的な保管まで含めた一連の処理が可能となった。
実施例におけるゼオライトのXRD測定の結果を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
本発明の第一の実施形態は、放射性セシウムの固定化方法であり、以下のステップを含む。
(1)放射性セシウムを吸着させたフェロシアン化鉄を準備する準備ステップ、
(2)該フェロシアン化鉄を水に分散させ、該分散液のpHを10以上に調整する調整ステップ、
(3)該分散液中の放射性セシウムを濃縮する濃縮ステップ、
(4)該放射性セシウムが濃縮された分散液に無機鉱物を接触させ、放射性セシウム吸着無機鉱物を得る吸着ステップ、
(5)得られた放射性セシウム吸着無機鉱物を1000℃以上で焼成する焼成ステップ。
なお、本発明の効果を阻害しない限り、これら以外のステップを含んでもよいことはいうまでもない。
(1)準備ステップ
準備ステップでは、放射性セシウムを吸着させたフェロシアン化鉄を準備する。放射性セシウムを吸着させたフェロシアン化鉄を準備する方法は特段限定されないが、放射性セシウムを含む排水を処理するプロセスにおいて、当該フェロシアン化鉄を準備することが好ましい。
放射性セシウムを含有する排水の中でフェロシアン化鉄を生成させるには、例えば、水可溶性のフェロシアン化化合物と、水可溶性の第二鉄化合物とを、放射性セシウムを含有する排水の中で反応させる方法があげられる。また、水可溶性の第一鉄化合物を排水に添加し、酸化剤により酸化させることで第二鉄化合物を調製して、フェロシアン化化合物と反応させてもよい。
フェロシアン化化合物としては、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化ナトリウム、フェロシアン化アンモニウムなどがあげられ、フェロシアン化カリウムが、入手が容易である点で好ましい。
水可溶性の第二鉄化合物としては、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、酢酸第二鉄などがあげられ、硫酸第二鉄がコスト的に好ましい。
水可溶性の第一鉄化合物としては、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄などがあげられる。
酸化剤としては、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどがあげられる。
フェロシアン化鉄を準備する際の、フェロシアン化カリウム及び硫酸第二鉄を用いた反応は、以下の式(1)に表される。
3K4[Fe(CN)6]+2Fe2(SO43 → Fe4[Fe(CN6)]3+6K2SO4 (1)
反応におけるフェロシアン化化合物に対する第二鉄化合物の添加量は、フェロシアン化鉄が生成(沈殿)する当量よりも過剰であることが好ましい。フェロシアン化化合物に対して、第二鉄化合物を当量の2倍以上添加することが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、一方、20倍以下であることが好ましく、15倍以下であることがより好ましい。
排水に対してフェロシアン化化合物及び第二鉄化合物を添加するタイミングは特段限定されないが、略同時であることが好ましく、反応時のpHは5〜6であることが好ましい。
沈殿したフェロシアン化鉄を分離する。分離は、ろ過、遠心分離等により固液分離を行うことが好ましい。以上のように、放射性セシウムを吸着させたフェロシアン化鉄を準備する。
(2)調整ステップ
調整ステップは、(1)準備ステップで準備した放射性セシウムを吸着させたフェロシアン化鉄を水に分散させ、該分散液のpHを10以上に調整する。調整ステップでは、分散液のpHを高めることで、フェロシアン化鉄に吸着されていた放射性セシウムがイオンとして分散液中に放出される。そのため、放射性セシウムを含む排水よりもはるかに高濃度の放射性セシウム含有溶液を調製することができる。
pHを10以上とするためにはアルカリを添加すればよい。アルカリとしては特に限定
されず、入手が容易な水酸化ナトリウムを用いればよい。
なお水酸化ナトリウムを用いた場合の、フェロシアン化鉄からの放射性セシウムの放出は、以下の式(2)に表される。
Cs・Fe4[Fe(CN)63+12NaOH → Cs++12Na++3Fe(CN)6 4-+4Fe(OH)3 (2)
(3)濃縮ステップ
濃縮ステップは、(2)調整ステップで得られた高濃度のセシウム含有溶液を、更に濃縮する。濃縮ステップは、放射性セシウム含有溶液を濃縮できれば特にその方法は制限されないが、例えば特許文献3(特開2015−4655号公報)に開示された電気透析による方法を用いることが好ましい。
具体的には、陽イオン交換膜を隔膜として備えた電解装置を用い、直流電圧を印加して電解を行うことで、濃縮を行うことができる。電解装置により、フェロシアンイオンを主とするアニオンは陽極室に、セシウムイオンを含むカチオンは陰極室に集まり、結果として陰極室において放射性セシウムが濃縮される。
上記(1)〜(3)のステップによって、高度に濃縮された放射性セシウムを準備することとなる。この際に陰極室に存在する放射性セシウム濃度は通常100,000Bq/kg以上であり、好ましくは250,000Bq/kg以上であり、より好ましくは500,000Bq/kg以上である。すなわち上記(1)〜(3)のステップは、(1)´100,000Bq/kg以上の高濃度放射性セシウム溶液を準備する工程、と置き換えることができる。
(4)吸着ステップ
吸着ステップは、放射性セシウムが濃縮された分散液または高濃度放射性セシウム溶液に無機鉱物を接触させ、放射性セシウム吸着無機鉱物を得る。
無機鉱物としては、放射性セシウムを吸着できれば特段限定されず、ゼオライト、ベントナイト、珪砂などが用いられ、このうちゼオライトが好ましい。
ゼオライトはセシウムを吸着する物質として知られており、ここで用いるゼオライトの種類は特段限定されないが、モルデナイト型ゼオライトを使用することが好ましい。
吸着ステップにおいて得られる放射性無機鉱物吸着ゼオライトの、放射性セシウム濃度は非常に高濃度とすることができ、好ましくは100,000Bq/kg以上であり、より好ましくは1,000,000Bq/kg以上であり、更に好ましくは10,000,000Bq/kg以上である。
(5)焼成ステップ
焼成ステップは、上記放射性セシウムを吸着させた無機鉱物を1000℃以上で焼成する。
上記(1)乃至(4)のステップにより、ゼオライトに代表される無機鉱物に高濃度で放射性セシウムを吸着させることができる。そして、当該ゼオライトは安定した二次廃棄物であり、長期間の貯蔵・保管が可能であると思われた。しかしながらゼオライトは、放射性セシウム吸着後もイオン交換能力を有するため、再度ナトリウムイオンやカリウムイオンを多く含む溶液と接触した場合、放射性セシウムが溶出する可能性が否定できなかった。ここで本発明者らは放射性セシウムが吸着したゼオライトの構造を変化させることができれば、放射性セシウムの溶出を抑制できると考えた。そして、放射性セシウムを吸着させたゼオライトを1000℃以上で焼成することで、放射性セシウムを吸着させたゼオライトの構造を変化させ、その結果放射性セシウムの溶出が抑制されることに想到した。また、ゼオライト以外の無機鉱物であっても、構造を変化させることで、放射性セシウムの溶出を抑制できると推定される。
焼成温度は1000℃以上であり、また、通常1300℃以下であり、好ましくは1200℃以下である。
焼成時間は特段限定されず、通常0.5時間程度、好ましくは0.5時間以上、である。
こうして得られた放射性セシウム吸着無機鉱物は、放射性セシウムを高濃度で吸着した状態でその構造が変化しており、放射性セシウムの溶出レベルが極めて低い。無機鉱物の構造が変化しているか否かは、XRDによる構造解析で確認することができる。例えばモルデナイト型ゼオライトであれば、焼成ステップ後には、焼成前に20°付近に存在していたモルデナイト構造を示すピークが消失する。
なお、上記ピークに関していえば、ピークが完全に消失する必要はなく、ピーク強度が変化することのみで、構造が変化したといえる。
なお、高濃度で放射性セシウムを吸着した無機鉱物は、放射能濃度が高すぎる場合、放射線により水が分解し水素が発生する恐れがあるが、焼成ステップにより無機鉱物に含まれ得る水が消失するため、水素発生のリスクを低減できる。
また、こうして得られた放射性セシウム吸着無機鉱物は、放射性セシウムを高濃度で含んだ状態で固定化されており、放射性セシウムの溶出レベルが従来と比較してはるかに低いレベルで抑制されている。本発明の第二の実施形態は、放射性セシウムが高濃度で固定化された放射性セシウム吸着無機鉱物であって、Na+濃度360ppmのNaCl水溶液に24時間含浸させて行う放射性セシウム溶出試験において、放射性セシウム溶出濃度が100Bq/kg以下であり、かつ、実質的にシアンを含まない、放射性セシウム吸着無機鉱物である。
上記放射性セシウム溶出試験における放射性セシウム溶出濃度が100Bq/kg以下である場合には、放射性セシウム吸着無機鉱物が、仮に長期保管中にアルカリ金属イオンを多く含む溶液に晒されたとしても、放射性セシウムが溶出する可能性は極めて低く、長期間安全に保存が可能である。また100Bq/kg以下は、放射能に対するクリアランスレベルとして認識される数値である。
上記溶出濃度は75Bq/kg以下であることが好ましく、50Bq/kg以下であることがより好ましい。下限は0Bq/kgであることが好ましいことは明らかであるが、通常検出限界は20Bq/kgである。
上記溶出試験は、以下のとおり行う。
放射性セシウム吸着無機鉱物1gをNaCl溶液(Na+濃度360ppm)200mL中に添加し、スターラーを用い200rpmの撹拌速度で24時間撹拌する。その後フィルターで吸引濾過分離して濾液を得る。得られた濾液に対し放射性セシウムの溶出濃度を測定する。なお、放射性セシウムの溶出濃度は、ゲルマニウム半導体検出器、又は臭化ランタン検出器により測定でき、セシウム由来の661keVなどの放射能のカウント数から算出することができる。
溶出試験におけるナトリウムイオン濃度は360ppmで実施しているが、当該アルカリ金属イオン濃度はアルカリ脱離液(上記(2)調整ステップ後の溶液に対し、中和し、放射性セシウムを除去した溶液をいう。)相当濃度を想定しており、好ましくは浸出水相当である7,000ppmナトリウムイオン濃度での上記溶出試験において、放射性セシウム溶出濃度が100Bq/kg以下であり、20Bq/kg以下であることがより好ましい。
また、好ましくは海水相当である14,000ppmナトリウムイオン濃度での上記溶出試験において、放射性セシウム溶出濃度が100Bq/kg以下であり、20Bq/kg以下であることがより好ましい。
なお、上記溶出試験を行う際の無機鉱物に吸着された放射性セシウム濃度は100,000Bq/kg以上であることが好ましく、1,000,000Bq/kg以上であることがより好ましく、10,000,000Bq/kg以上であることが更に好ましい。上記溶出試験を充足し、かつ、このように高濃度で放射性セシウムが吸着した無機鉱物は、少量の無機鉱物で大量の放射性セシウムを処理することができるため、放射性セシウムの処理に非常に適した無機鉱物である。
また、本実施形態に係る放射性セシウム吸着無機鉱物は、シアン化物を実質的に含まない。ここで「実質的に」とは、通常含有量が0.1ppm以下であり、0.01ppm以下であることが好ましく、0ppmであることがより好ましい。シアン化物を含む場合、焼成時にシアンガスが発生する恐れがあり、安全面から好ましくない。
シアン化物としては、シアン化物イオンをアニオンとして有するシアン化ナトリウム、シアン化カリウム、配位子としてシアン化物イオンを有するフェロシアン化カリウムなどがあげられる。
シアン化物が含まれる場合としては、放射性セシウムを無機鉱物に吸着させる際に、放射性セシウム吸着能を有するフェロシアン化カリウムなどを用いると、シアン化物を含むこととなる。また、無機鉱物としてゼオライトを用いる場合、ゼオライトとフェロシアン化鉄、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルト等のフェロシアン化化合物とを同時に焼成した際、焼成物にフェロシアン化化合物の酸化物が含まれ、シアン化物を含むこととなる。
また、本実施形態に係る放射性セシウム吸着無機鉱物は、金属酸化物を実質的に含まないことが好ましい。金属酸化物としては、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルトなどがあげられ、このような金属酸化物が含まれる場合としては、放射性セシウムを無機鉱物に吸着させる際に、放射性セシウム吸着能を有するフェロシアン化カリウムなどを用いると、金属酸化物を含むこととなる。
以下、実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
<高濃度放射性セシウム溶液の調製>
放射性セシウムを含む飛灰洗浄廃水にフェロシアン化カリウムと硫酸第二鉄を加え、放射性セシウムを含むプルシアンブルー(PB)を合成し、合成したPBをメンブレンフィルターでろ過した。ろ過したPBをNaOH水溶液(pH10以上)に加え、30分間撹拌した。一晩静置した後、上澄み液に対して電気透析を行い、放射性セシウムを濃縮することで、放射性セシウム濃度約12万Bq/kgのアルカリ脱離液(アルカリ金属イオン濃度360ppm)を得た。なお、電気透析は、分離膜として陽イオン交換膜(Nafion115)を用い、陽極として貴金属コーティングをしたTi板を用い、陰極として無垢のTi板を用い、有効面積は20cm、0.5A定電流で行った。
<放射性セシウム吸着ゼオライトの作成>
得られた放射性セシウム濃度約12万Bq/kgのアルカリ脱離液(アルカリ金属イオン濃度360ppm)に対してゼオライト(ユニセレックUR3103Z、アタカメンテナンス株式会社製)を5g/Lで添加し、放射性セシウム吸着ゼオライト(約24000Bq/g)を得た。
<放射性セシウム吸着ゼオライトの焼成>
上記得られた放射性セシウム吸着ゼオライト約1gをるつぼ(材質:アルミナ)に入れ蓋をし、管状炉で所定温度(600℃、800℃、1000℃、1150℃)までそれぞ
れ1時間で昇温し、当該温度で30分保持し、その後室温まで自然放冷した。実験中は0.5L/min.で空気を通気した。
また同様に、放射性セシウムを吸着していないゼオライトに対しても焼成を行った。なお、焼成によって放射性セシウム濃度の減少は見られなかった。
得られた焼成後のゼオライトについて、XRD回折試験(線源:CuKα)を行った。結果を図1に示す。
図1から、放射性セシウムを高濃度で吸着させたゼオライトを1000℃以上で焼成することで、モルデナイト構造を示すピークが消失し、構造が変化したことが理解できる。
<アルカリ金属イオン溶液による逐次抽出試験>
上記得られた放射性セシウム吸着ゼオライト(焼成前)、および焼成後の放射性セシウム吸着ゼオライトに対して、濃度の異なるアルカリ金属イオン溶液で逐次抽出試験を行った。アルカリ金属イオン溶液は塩化ナトリウム溶液(ナトリウムイオン濃度として360〜140000mg/L)と塩化カリウム溶液(カリウムイオン濃度として180000mg/L)とした。逐次実験の条件は表1にまとめた。
具体的には、対象試料である放射性セシウム吸着ゼオライト1gと蒸留水200mLを入れ、24時間スターラーで撹拌後(回転速度200rpm)、0.45μmフィルターで吸引濾過分離し、ろ液と残渣を得た。ろ液は溶出された放射性セシウム濃度(Bq/kg)を測定し、残渣は更に次の試料とした。
次に、上記残渣を用い、蒸留水を表1に示すアルカリ金属イオン溶液に変更した以外は同様に、順次表1のF2→F6試験を行った。
また、測定された溶出ナトリウムイオン濃度から放射性セシウム溶出割合(重量%)を算出し、表2に示す。
表1から、焼成なしのゼオライトでは、蒸留水に対しての放射性セシウム溶出濃度が150Bq/kg以下であり、ゼオライトからの放射性セシウム溶出が問題とはならないレベルである。一方で、アルカリ金属イオン濃度の増加とともに放射性セシウム溶出濃度が増加し、150Bq/kg以上となった。一旦ゼオライトに吸着した放射性セシウムは、平衡吸着から予測されるとおり、吸着時よりも高い塩分濃度溶液と接触することでより溶出し、その濃度が高くなるほどより多く放射性セシウムを溶出する可能性があることを確認した。
一方で、焼成を行ったゼオライトでは、1000℃以上での焼成により構造を変化させたゼオライトは、その溶出量が極めて抑制されていることが理解される。一方で1000℃未満での焼成では、ゼオライトが構造変化せず、溶出量は高い状態であった。
また、表2から、1000℃以上での焼成により構造を変化させたゼオライトは、溶出試験後において、放射性セシウム残存量が99.9%であり、ほとんどの放射性セシウムは溶出せずゼオライトに固定されたままであることが理解できる。
本発明者はこれまで、放射性セシウム付着可燃物を都市ゴミ焼却炉で焼却処理したときに放射性セシウムが飛灰に濃縮されるため、当該飛灰から放射性セシウムを抽出し分離する技術を確立した。また、放射性セシウム含有排水から放射性セシウムを除去するため、フェロシアン化鉄に放射性セシウムを吸着させた後、フェロシアン化鉄の粒子を凝集沈殿させて分離する技術、更にはフェロシアン化鉄に吸着させた放射性セシウムを放出し、ゼ
オライトに放射性セシウムを吸着させて貯蔵する技術などを確立している。そして今回、高濃度で放射性セシウムを吸着させたゼオライトの構造を変化させることで、放射性セシウムの固定化に成功し、放射性セシウム溶出の恐れがない、長期間保存をする技術を確立した。
これらの技術を組み合わせることで、放射性セシウムに汚染された廃棄物から放射性セシウムを分離し、当該放射性セシウムを濃縮してゼオライトに吸着させ、安定的にゼオライトを長期間貯蔵できる技術を提供できる。
本発明は、現在日本が直面する社会的課題を解決するための一助になる。

Claims (7)

  1. 放射性セシウムを吸着させたフェロシアン化鉄を準備する準備ステップ、
    該フェロシアン化鉄を水に分散させ、該分散液のpHを10以上に調整する調整ステップ、
    該分散液中の放射性セシウムを濃縮する濃縮ステップ、
    該放射性セシウムが濃縮された分散液に無機鉱物を接触させ、放射性セシウム吸着無機鉱物を得る吸着ステップ、及び
    得られた放射性セシウム吸着無機鉱物を1000℃以上で焼成する焼成ステップ、
    を含む、放射性セシウムの固定化方法。
  2. 前記無機鉱物は、モルデナイト型ゼオライトである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記焼成ステップにおいて、モルデナイト型ゼオライト構造が変化することで、放射性セシウムがゼオライトに固定化される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記吸着ステップにおいて、無機鉱物に吸着された放射性セシウム濃度が100,000Bq/kg以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 放射性セシウムが高濃度で固定化された、放射性セシウム吸着無機鉱物であって、
    Na+濃度360ppmのNaCl水溶液に24時間含浸させて行う放射性セシウム溶出試験において、放射性セシウム溶出濃度が100Bq/kg以下であり、かつ、実質的にシアンを含まない、放射性セシウム吸着無機鉱物。
  6. 無機鉱物に吸着された放射性セシウム濃度が100,000Bq/kg以上である、請求項5に記載の放射性セシウム吸着無機鉱物。
  7. 前記無機鉱物がゼオライトである、請求項5又は6に記載の放射性セシウム吸着無機鉱物。
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