JP2015004655A - 排水から分離した放射性セシウムを高度に濃縮する方法 - Google Patents

排水から分離した放射性セシウムを高度に濃縮する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放射性セシウムを含有する排水、とくにゴミ焼却場で生じる飛灰や溶融飛灰を水で洗浄して放射性セシウムを溶出させた排水、または除染処理によって発生した排水から放射性セシウムを分離除去し、高度に濃縮して貯蔵可能にする方法を提供する。
【解決手段】放射性セシウムを含有する排水に、フェロシアン化鉄を接触させて吸着させる。放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄の水分散液にアルカリを加えてフェロシアン化鉄を分解させ、吸着した放射性セシウムを放出させる。放射性セシウムのイオンを含有する水溶液を、陽イオン交換膜を隔膜として備えた電解室に供給し、直流電圧を印加して電気透析を行なって、放射性セシウムを陰極室液中に濃縮する。陰極室液にゼオライト等の吸着物質を接触させて、濃縮された放射性セシウムを吸着させ、貯蔵のための処理に付する。
【選択図】なし

Description

本発明は、放射性セシウム(以下「セシウム」をCsで示す。)を含有する排水から放射性Csを分離除去し、排水を放流可能にするとともに、分離した放射性Csを高度に濃縮した上で、安定に貯蔵する方法に関する。
原子力発電所の事故により放出された種々の放射性物質のうちとくに重要な放射性Cs(134Csと137Csがあるが、以下の記述においては、まとめて「放射性Cs」と記す。)を、自然界や居住環境から分離除去し、安全に貯蔵して放射能の減衰を待つための、さまざまな除染方法や減容貯蔵の方法が開発されている。出願人は、種々の可燃物に付着ないし吸収された放射性Csが、可燃物を都市ゴミ焼却炉で焼却処理したときに飛灰に濃縮され、主灰や飛灰を溶融処理したときは、溶融飛灰に移行すること、これらの焼却灰および飛灰(以下「灰」と略記する)の中に存在するCsは、水に溶けやすい形態であることから、灰からCsを水で抽出し、その抽出液からCsを適宜の吸着剤に吸着させて分離し、Csを吸着した吸着剤を固化処理することによって大幅な減容が可能になることを見出し、その実施技術を確立して、すでに提案した(特許文献1)。具体例でいえば、約86,000Bq/kgの放射能濃度をもつ飛灰を水で洗浄(飛灰:水=1:10重量比)すると、放射性Csの94.4%が水側に移行するから、洗浄後の飛灰の放射能濃度は4,800Bq/kgに低下し、国が定める一般廃棄物の基準8,000Bq/kgを大きく下回る。
水抽出液からのCsイオンの吸着分離を行なう吸着剤としては、まずゼオライト、とくにモルデナイト型のものが挙げられ、有効に使用できることが確認されている。しかし、一定量のゼオライトが吸着できるCsの量は、案外少ない。これは、灰の中には、カリウムやナトリウムの化合物のような、これも水に溶けやすい物質が多量に含まれており、それらに由来するイオンがゼオライトの吸着サイトの大部分を占めるため、Csが吸着できるサイトが減ってしまうということが、その理由である。
一方、Csを選択的に吸着する物質として、古くからプルシャンブルー(紺青、以下「PB」と略記する。)、すなわち、フェロシアン化鉄(II)酸鉄(III)カリウムKFe[Fe(CN)6]によって代表される顔料が有効であることが知られ、これを用いて核燃料再処理廃液から137Csを分離除去する技術が研究されている(非特許文献1)。PBがCsを選択的に吸着するのは、Csイオンの水和半径がPBの内部空孔の大きさに合致しているからと考えられている。最近では、ナノ粒子化したPBは、比表面積の増大に伴い吸着能が増大するので、その使用が効果的であるとして、量産技術および性能試験の結果が発表された(非特許文献2)。しかし、従来の技術ではナノ粒子を抽出液に投入してCsを吸着する際、ナノ粒子と液との固液分離が困難であるという問題があるので、ナノ粒子を造粒するか、またはナノ粒子を多孔質体に固定させて得た吸着材を固定床式の吸着塔に充填し、そこへ抽出液を循環させて吸着浄化をはかる、という方法が提案されていた。この方法は不均一反応であるため、反応時間がかかり、吸着量もナノ粒子の性能を100%生かせるところまでは達しなかった。
発明者らは、Csの選択的吸着にPBのナノ粒子による吸着が効率的であること、ナノ粒子はより微細で比表面積が大きいほど有効である、という事実に着目し、PBナノ粒子の生成と同時にCsの吸着が行なわれれば、さらに高度な吸着が実現するであろうという期待をもち、それにもとづいて、Csイオンが存在する液中でPBを生成させ、かつ、固液分離が困難であるという欠点を解消するために、生成したCsを選択的に吸着したPBを直ちに凝集沈殿させて系外に取り出すことによって、最も有利な吸着平衡条件を実現することを着想した。実験の結果、期待どおりの成績が得られたので、この放射性Cs除去方法も提案した(特許文献2)。
PBは安定な化合物で、放射性Csを吸着した状態で長い年月保存し、放射能の減衰を待っても、分解して放射性Csを放出するような心配は、実質上しなくてよいと考えられるが、なにぶんPBの化合物名に「シアン」が含まれていることから、放射性Csを吸着したPBを貯蔵すること自体に抵抗感をもつ人々も少なくないと懸念される。このような事情を考えれば、いったんPBに吸着させた放射性Csを、より安定な吸着材に移して貯蔵することが好ましい。発明者らは、より安定な吸着材として前記のゼオライト、とくにモルデナイト型ゼオライトを再度採用する可能性を探究した。天然ゼオライトであれば、鉱物であるから、きわめて安定であって、吸着した放射性セシウムの減衰を待つ間の貯蔵になんの不安もないし、ゼオライトであれば抵抗感を持つ人もいないはずであって、住民による反対運動などが起こる心配がない。
ゼオライトによる放射性Csの吸着を、前掲の特許文献1に開示した焼却灰または溶融飛灰の水洗浄液にゼオライトを接触させて実施したときの問題点は、水洗浄液にはCsイオンだけでなく、NaやKのイオンが大量に存在し、それらがゼオライトの吸着サイトをブロックするために、セシウム吸着の効率がよくないということであった。一方、焼却灰および溶融飛灰には重金属イオンも含まれることが普通であるが、通常の処理においてはキレート剤等で除去するので、水洗浄液中の重金属の含有量は、問題になるほどのレベルではない。
ゼオライトによる微量のCsの吸着が、共存するNaイオンによってどのように妨げられるかを調べたところ、Naの共存がなければ、ゼオライト添加量0.2g/L以上でCsイオンがほぼ完全に除去されるのに対し、多量のNaが共存する場合は、1g/Lのゼオライトを添加してようやく、Csイオンの60%を除去できたという差のあることが確認された。Csの吸着に対する影響をNaとKとで比較すると、Naの方が、その妨害の程度が低い。これは、水和イオンの大きさが、Kの方がCsのそれに近いためと考えられる。
ゼオライト吸着を行なった場合の二次廃棄物の発生量を考えると、つぎのとおりである。放射能量が85,788Bq/kgである溶融飛灰を水洗浄し、洗浄液にゼオライトを投入して放射性Csを吸着させたとき、ゼオライト添加量50g/Lのときに除去率86.6%であり、このときの吸着平衡濃度は1,094Bq/kgであったから、Csを吸着したゼオライトの放射線量は、
(8,184Bq/kg−1,094Bq/kg)÷50g/L=141,800Bq/kg
であり、原飛灰(85,788Bq/kg)にくらべて、
141,800Bq/kg÷85,788Bq/kg=1.61(倍)
に止まり、大幅な低減は望めない。
発明者らは、放射性Csをゼオライトに吸着させて安定に貯蔵しその間に減衰をはかるという処理に伴っている、容積の低減化の率が低いという問題を解決し、ゼオライトの有効利用を実現することを企てた。あわせて、放射性CsをPBすなわちフェロシアン化鉄に吸着させて貯蔵する場合にあり得る、「シアン」をその名に含む化合物を使用することによる世人の心配を払拭するとともに、排水もまた問題なく放流可能であるような処理方法を提供することも意図した。
このような企てを実現するために有効な手段として発明者らが見出したのが、まず、放射性Csを含有する排水の中でフェロシアン化鉄すなわちPBを生成させ、生成するそばからPBの結晶構造に放射性Csを吸着させて行くことである。この液中合成PBの利用により、より高い効率をもって放射性Csの吸着が行なわれる。つぎに、このようにしていったん排水から分離した放射性Csをゼオライトに引き渡し、フェロシアン化鉄を再生させることであって、放射性Csの貯蔵は安定なゼオライトに任せて、再生されたフェロシアン化鉄を循環使用することができ、その結果、資源の有効な利用が可能になる。この処理方法も、すでに開示した(特許文献3)。
特開2013−101098 特願2012−176545 特願2012−279754 見塩規行ほか「日本原子力学会誌」vol.6, No.1 (1964) p.2 (独)産業技術総合研究所プレスリリース 2012年2月8日
原子力発電所から放出された放射性Csは、除染作業の進展につれて大量に集まってくるから、比較的効率よく貯蔵することができたとしても、二次廃棄物の量は軽視できないレベルに達する。したがって、これからの問題は、とくに放射性Csを可能な限り高度に濃縮して廃棄物の減容をはかることにある。発明者らは、こうした観点から研究を続け、これまで確立された技術に従ってPBに吸着させた放射性Csを、いっそう高度に濃縮する手法として、電気透析の利用を着想した。実験の結果、きわめて有効であることが確認できた。
本発明の目的は、発明者らの得た上記の知見を活用し、排水中の放射性CsをPBに、とりわけ、液中合成PBに吸着させて除去し、化学共沈により液から分離した放射性Cs含有PBから放射性Csをさらに濃縮して、高度に減容した状態で、安定に貯蔵できる二次廃棄物とする技術を提供することにある。
このような目的を達成する本発明の、放射性Csを含有する排水から放射性Csを分離除去し、高度に濃縮する方法は、下記の諸工程からなる。
A)放射性Csを含有する排水にフェロシアン化鉄を接触させ、フェロシアン化鉄に放射性Csを吸着させる工程、
B)放射性Csを吸着したフェロシアン化鉄の沈殿を排水から分離し、排水は放射能量を測定して、基準値内であることを確認して放出する工程、
C)分離した、放射性Csを吸着したフェロシアン化鉄を水に分散させ、分散液にアルカリを加えてpHを10以上に調整することによってフェロシアン化鉄を分解させ、吸着した放射性Csを放出させる工程、
D)放出された放射性Csを含有する水溶液を、陽イオン交換膜を隔膜として備えた電解室に供給して電解し、フェロシアンイオンを主とするアニオンは陽極室に、Csイオンを含むカチオンは陰極室に集めることによって、放射性Csを濃縮する工程、
E)濃縮された放射性Csを含有する陰極室液に、Csイオンを吸着する物質を接触させることにより、濃縮された放射性Csを吸着させる工程、ならびに、
F)濃縮された放射性Csを吸着している物質を、貯蔵のための処理に付する工程。
放射性Csを、排水からフェロシアン化鉄、すなわちPBにより選択的に吸着するという除去方法は、カリウムやナトリウムのような他のアルカリ金属の存在により吸着効率が引き下げられることなく、排水中の放射性Csを高い比率で濃縮できるという、PBを利用する方法の利益をそのまま享受できる。固液分離後の排水に含まれる放射性物質は微量であるし、溶存するフェロシアン化鉄も微量であるから、排水は、所要の処理をほどこしたのち、放流することに支障はないものになっている。
本発明の方法により、排水からPBに吸着させることにより分離除去した放射性Csを、電気透析の手法を利用して高度に濃縮すれば、放射性Csを高濃度で含有する廃棄物を得ることができ、放射能の減衰を待つ間の貯蔵に要するスペースが節約できる。これは、今後の放射性廃棄物量の増加を考えるとき、大きなメリットである。より高度の濃縮が必要であれば、この方法を繰り返し行なうこと、すなわち、
放射性CsのPB吸着−Cs吸着PBの分解−電気透析による濃縮
→放射性CsのさらなるPB吸着−Cs吸着PBの分解−電気透析によるさらなる濃縮→・・・
という工程の繰り返しを実施すればよい。
上記の工程Aにおいて使用するフェロシアン化鉄すなわちPBとしては、既成のもの、とくにナノ粒子形状のPBを使用することが可能であるが、それに代えて、放射性Csを含有する排水の中でフェロシアン化物、代表的にはフェロシアン化ナトリウムと硫酸第二鉄とを反応させ、その場で生成させたPBを使用することが好ましい。この反応は、つぎの式に従う。
3Na4[Fe(CN)6]+2Fe2(SO4)3+過剰な硫酸第二鉄
→ 6Na2SO4+Cs・Fe4[Fe(CN)6]3+過剰分の硫酸第二鉄に相当する水酸化第二鉄
この操作により、形成されつつあるPBの結晶構造にCsイオンが取り込まれて、既成のものを使用するよりも効率的に吸着ができる。
この反応に関しては、フェロシアン化ナトリウムに対する硫酸第二鉄の量が、PBすなわちフェロシアン化鉄が生成する当量よりも、過剰であるような割合で存在させることが好ましい。過剰の度合は、上記の反応に関与しなかった硫酸第二鉄が水酸化第二鉄Fe(OH)となって、その凝集沈殿作用が発揮されるようなものとすべきであって、具体的には、当量の関係に対して、すくなくとも2倍量の硫酸第二鉄を使用することが好ましい。できれば、5〜10倍量を使用することがより好ましい。反応にとって過剰の鉄分は、水酸化第二鉄Fe(OH)となって、生成した放射性Csを吸着したフェロシアン化鉄の沈殿を凝集させるのに役立つからである。
排水へのフェロシアン化ナトリウムおよび硫酸第二鉄の添加は、どちらも、所定の濃度で調製した水溶液を、撹拌下に排水へ同時に添加することによって行なうのが好ましい。反応時の液のpHは、フェロシアン化鉄の沈殿をFe(OH)の作用により凝集させる上で都合のよい範囲、通常はpH5〜8となるように選ぶ。この範囲内でも、とくにpH6〜7が好ましい。実際は、たとえば水道水を用いて建造物の洗浄を行なうといった、通常の除染作業によって発生した排水であれば、とくにpHを考慮する必要はない。ゴミ焼却により発生した灰の水洗により放射性Csを溶出させた排水は、Cs以外のアルカリ金属を多量に含んでいるが、そのままでもpHは、上記した吸着に好都合な範囲内にある。
凝集沈殿した、放射性Csを選択的に吸着したPBは、排水から分離する。この分離は、濾過や遠心分離などの固液分離手段によることが好ましいが、単に沈殿を引き抜くことでも可能である。分離した排水は、放射線量を測定して、基準値以内であることを確認して放流することができる。
分離した固体分は、つぎに工程Cにおいて、水に分散させた状態とし、そこへアルカリ、好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液を添加して、pHを10以上に高める。そうすると、フェロシアン化鉄はつぎの反応により溶解し、吸着されていた放射性Csがイオンとして液中に放出される。
Cs・Fe4[Fe(CN)6]3+12NaOH
→Cs+12Na+3Fe(CN)6 4−+4Fe(OH)3
工程Dにおいて行なう電気透析は、図1に示すように、陽イオン交換膜を隔膜として備え、チタン板などを電極とする電解装置を用い、直流電圧を印加して電解を行なうことにより実施する。電圧および電流密度は、装置に合せて適宜決定することができる。この電気透析により、フェロシアンイオンを主とするアニオンは陽極室に、Csイオンを含むカチオンは陰極室に集まり、結果として放射性Csが濃縮される。
工程Eにおいて、Csイオンを吸着する物質として、吸着材として広く用いられているゼオライトを選べば、既知の技術に従って工程を完了することができ、放射性Csを吸着したゼオライトをそのまま安定的に貯蔵に回すことができる。ゼオライトとしては、既知の技術において行なわれているように、モルデナイト型ゼオライトを使用することが好ましい。
一方、Csイオンを吸着する物質として、ここでもPBを選択することができ、ゼオライトを使用した場合にくらべ、いっそう高度の濃縮が実現する。いうまでもないが、このPBもまた、濃縮された放射性Csを含有する排水の中で、フェロシアン化ナトリウムと硫酸第二鉄との反応により生成させたものとすることにより、効率的な放射性Csの吸着が実現する。放射性Csを吸着する物質として液中で合成したPBを利用する場合、Csイオンの吸着はPBの生成と同時に行なわれると考えられ、それがまた、高い吸着率を与えると理解されていたので、PB合成−Cs吸着の工程に要する時間は短いと思われた。しかし、後記する実施例にみるとおり、この工程の時間を長く取ることにより、より高度のCs吸着が実現することが確認された。したがって、本発明の方法において、フェロシアン化カリウムと硫酸第二鉄とを、後者が過剰になるように添加し、生成するPBに放射性Csを吸着させる反応の操作時間は、生成させようとするPBの量を考慮して、適切に選択すべきであり、それによって効率のよい除染ができる。
工程Fの、濃縮された放射性Csを吸着している物質の貯蔵のための処理の具体的な態様は、下記の工程G、HおよびIからなることができる。
G)濃縮された放射性Csを吸着しているフェロシアン化鉄を水に分散させ、分散液にアルカリを加えてpHを10以上に調整することによってフェロシアン化鉄化合物を分解させ、吸着していた、濃縮された放射性Csを液中に放出させる工程、
H)放出された放射性セシウムを含有する液にゼオライトを接触させ、ゼオライトに放射性Csを吸着させる工程、および、
I)放射性Csを吸着したゼオライトを液から分離し、貯蔵処理に回す工程。
貯蔵のための処理として、上述の工程G〜Iを実施する場合、工程Iにおいて放射性Csを吸着したゼオライトを分離した液に対しては、下記の工程JおよびKを行なうことが推奨される。
J)工程Eで得た液のpHを4以下に調整して水酸化第二鉄をいったん溶解させたのち、pHを6〜8の中性領域に戻し、フェロシアン化鉄と水酸化第二鉄のフロックとの共沈物を得る工程、
および、
K)フェロシアン化鉄と水酸化第二鉄のフロックとの共沈物に酸を加え、pHを4以下に調整して水酸化第二鉄を再溶解し、ついでpHを中性領域に戻して、フェロシアン化鉄と水酸化第二鉄を工程Aに循環使用すること。
放射性Csを最終的に吸着した吸着材がゼオライトであれば、放射性セシウムはシアン化合物と縁が切れて、天然の鉱物であり、まったく安定な物質であるゼオライトに吸着された形で貯蔵され、減衰を待つことになる。ゼオライトによる吸着の場にNaイオンが存在しても、CsとNaとの比率は、排水中におけるそれより格段に低くなっており、かつ、前記したようにNaの妨害作用はKより低いから、単に排水にゼオライトを接触させた場合に比べ、使用効率は桁違いに改善される。このようにして、二次廃棄物の容積がきわめて小さくなる高度の減容を実現した上で、「シアン」をその名に含み、CN構造を有する化合物を放射性物質の吸着と貯蔵に使用することを避けた処理が可能になる。
本発明で処理の対象とする放射性Csを含有する排水は、ゴミ焼却灰の飛灰または溶融飛灰を水で洗浄して、可溶性成分を溶出させた形で含有する水洗浄液が代表であるが、各種の除染排水なども対象とすることができる。ゴミ焼却灰の飛灰または溶融飛灰は、しばしば重金属を含有し、それが灰の水洗浄に際して溶出してくることがあるので、対策をとらなければならない。それには多くの場合、重金属イオンに対するキレート剤を作用させることが有効であって、重金属イオンの溶存を実質上なくした水洗浄液を用意することができる。
本発明の除染方法は、放射性Csを吸着する物質として液中で合成したPBを利用する有利な態様においては、上記の説明から容易に理解されるように、PB合成−Cs吸着とCs吸着PBのアルカリ分解液の電気透析によるCs濃縮とを順次、多数回繰り返して実施することにより、高度に放射性Csを濃縮することができるから、放射性廃棄物のきわめて高度な減容が実現する。そのようにして高度に濃縮された放射性Csを、最後にゼオライトのような安定な吸着材に吸着させることにより、きわめて安全な貯蔵が可能である。
除染廃棄物の焼却減容化の対象は、現在はいわゆる警戒区域外のものであって、飛灰洗浄液の示す放射能濃度は8,000〜16,000Bq/kg程度であるが、今後、警戒区域内の除染廃棄物の焼却減容化を進めて行けば、より高濃度の飛灰洗浄液が発生すると予想される。そのような高濃度の飛灰洗浄液に対しても、本発明の除染方法は、効果的に適用することができる。
以下の実施例において、放射線量の測定は、Canberra社製のLaBr検出器スペクトロサーベイメーター(Inspector 1000)を用いて行なった。U8容器(100mL)使用。定量下限は、300Bq/kgであった。
参照例
飛灰洗浄液に直接ゼオライトを接触させて、放射性Csを吸着させた場合、どの程度の放射性Csの除去が行なわれるか、を調べた。放射能濃度が85,788Bq/kgである飛灰を洗浄して、8,184Bq/kgの飛灰洗浄液を得た。これに種々の量のゼオライトを添加したとき、洗浄液中の放射性Cs量がどのように減少するかを、図2のグラフに示す。ゼオライトは、粒状の製品「ユニセレックUR3103Z」(アタカメンテナンス(株)の販売)を使用した。50g/Lのゼオライトを添加したとき、ようやく1,094Bq/kgへの減衰が実現したわけで、ゼオライトに吸着された放射性Csは
(8,184−1,094)Bq/kg÷50g/L=141,800Bq/kg
であって、原飛灰の放射能濃度に対して、濃縮の度合は1.61倍に止まっている。
放射性Csを含有し約80,000Bq/kgの放射能を示す溶融飛灰に、固液比(重量比)1:5の割合で水を加え、6時間にわたり撹拌した後、0.8μmフィルターで濾過し、濾液に塩酸を加えてpH7に調整した。得られた6Lの飛灰洗浄液を試験の対象とし、まず放射能濃度を測定したところ、13,700Bq/kgであった。溶出率は、86%である。
上記の放射性Csを含有する飛灰洗浄液に、フェロシアン化カリウムと硫酸第二鉄とを、PBが0.6g(0.1g/Lの割合)生成し、硫酸第二鉄Fe2(SO4)3が8mol過剰に残る量で加え、30分間撹拌した。これにより、飛灰洗浄液中の放射性Csは、液中で生成したPBに吸着された。過剰な硫酸第二鉄は、つぎの式のように水酸化第二鉄となって、生成したPBを凝集沈殿させた。
3K4[Fe(CN)6]+2Fe2(SO4)3+8Fe2(SO4)3
→6K2SO4+Fe4[Fe(CN)6]3+16Fe(OH)3
この液から、沈殿物を0.8μmメンブレンフィルターで濾別し、PBを含む鉄系沈殿物を得た。残った濾液の放射能濃度を測定したところ、検出限界以下であった。鉄系沈殿物(固形物換算で1.26g)の方は、上記した放射能濃度13,700Bq/kgを有する放射性CsがすべてPBに吸着されたとすると、13,700Bq/kg×6L=82,200Bqの放射性Csを吸着していることになる。
濃度1mol/LのNaOH水溶液100mLに、上記の鉄系沈殿物すなわち放射性Csを吸着したPBを加えて、30分間撹拌してPBを分解し、PBに吸着されていた放射性Csを脱離させた。一夜放置した後、液のpHを6に調整して上澄み液を分取し、放射能濃度を測定した。残った沈殿物に1mol/L−NaOH水溶液100mLを加え、30分間撹拌して、脱離せずに残っていた放射性Csを脱離させる操作を再度行なった。さらに一夜放置した後、上澄み液を分取して、放射能濃度を測定した。この脱離操作を合計3回繰り返したところ、100%の脱離が行なわれた。各回の放射性Cs脱離のデータは下記の表1のとおりである。その累積状況を、図3に示す。
表1 PBからのCs脱離
Figure 2015004655
上記の結果をまとめれば、液量合計6L、放射能濃度13,700Bq/kgの飛灰洗浄液を、液中合成PBにより処理して、飛灰洗浄液中の放射性Csを0.6gのPBに吸着除去したことになる。吸着された放射性Csの放射能総量は82.200Bqであるから、ドライPB換算の放射能濃度は1.37億Bq/kgとなる。
放射性Csをより高濃度で吸着したPB吸着物を得るためには、脱離液中のCsとフェロシアンイオンをいったん分離する必要がある。そこで、陽イオン交換膜「Nafion 115」(デュポン社製)を隔膜として備え、陽極としてIrO−Pt熱分解コーティングをしたTi板、陰極としてムクのTi板を用いた電解槽を用意し、陽極側に上記のようにして得た放射性Cs脱離液300mLを、陰極側にpHが13のNaOH水溶液300mLを入れ、0.5Aの定電流で電解を行なった。電極の有効面積は20cm、したがって電流密度は、0.025A/cmである。電極反応は、それぞれつぎのとおりである。
(陽極側)2H2O→4H+O2+4e
(陰極側)2H2O+2e→H2+2OH
フェロシアンイオンが移行した陰極側の液が目的物であって、以下これを「電解膜分離液」と呼ぶ。陽極側の液は、放射能濃度が10000Bq/kg程度に低下したところで、濃度の高い液と交換した。
上で得た、放射性Csを含有する電解膜分離液に塩酸を加えてpHを2に調整し、上記したところと同様にして、液中合成PBによる放射性Csの吸着除去を行なった。ただし、合成されるPBの量が0.1g/L、0.2g/Lおよび0.5g/Lの3種の場合を実施した。過剰なFe2(SO4)3の量は、どの場合も8molである。処理液のpHを6に調整したのち、0.8μmフィルターで濾過し、得られた濾液の放射能濃度を測定した。
陰極室の液をとり、その液性を酸性にした上で鉄イオンを加えるという定性的な方法により判定したところ、青色に着色しなかったこと、つまりPBの生成が認められなかったことから、カチオン交換膜を備えた電解室を用いてCs脱離液を電解することによる、フェロシアンイオンとCsイオンとの分離が達成されたこと、つまり放射性Csをほぼ100%電解により分離できたことが確認された。上記の操作により、放射能濃度が約250,000Bq/kgであるイオン交換膜分離液が生成した。通電量とイオン移動量との関係は、下の表2に示すとおりである。表2において収支が合わないのは、カチオン交換膜自体がCsイオンを吸着するためと考えられる。通電量の変化に伴って陰極室および陽極室の液における放射性Cs濃度が変化するようすは、図4に示すとおりである。
表2 通電量とイオン移動量の関係
Figure 2015004655
図4のグラフが示唆するように、陽極側の液を交換することによって放射性Csを濃縮することが可能である。
電気透析によって生成した陰極側の液は、CsイオンおよびNaイオンの移動と、HOの電解によるOHイオンの生成により高アルカリ性になっているので、塩酸を加えて中和した。液量の増大に伴って放射性Cs濃度は223,000Bq/kgに希釈された。この液を対象にして、PB液中合成−化学共沈法による放射性Cs除去を試みた。この場合も、液中で合成されるPBの量が、0.1g/L(A)または0.5g/L(B)となるようにし、どちらの場合も、過剰なFe2(SO4)3が8mol生成するようにした。結果を、下の表3に示す。
表3 電気透析濃縮液からの放射性Csの除去
Figure 2015004655
* PBをドライ換算で0.1g/Lとなるよう合成した場合(表のA)、処理液中の放 射性Csの量が223,000Bq/Lから128,000Bq/Lとなり、その差223,000−128,000 =95,000(Bq/L)に相当する放射性CsがPBに吸着されたことになる。つまり 、ドライPB換算で、95,000Bq/L÷0.1g/L=950,000,000(9億5千万)Bq/
kgの放射性Cs吸着PBが得られたことになる。
放射性Csを、既成のPB粒子に吸着させた場合と、液中合成PBに吸着させた場合との優劣を比較するため、平衡吸着における平衡濃度と吸着量との関係を調べた。実験条件は、下の表4に示すとおりであって、結果は、図5のグラフに見るとおりである。このグラフは、放射性Csの濃度が低い場合から高い場合にわたって、PBを液中で合成してそれに吸着させる方が、既成のPB粒子を使用するよりも有利であることを示している。
表4 平衡吸着の実験条件
Figure 2015004655
*1 3K4[Fe(CN)6]+2Fe2(SO4)3→6K2SO4+Fe4[Fe(CN)6]という
当量反応に対して、9倍過剰とは、18Fe2(SO4)3相当分を投入することを
意味する。
*2 関東化学製ナノ粒子(粒径11μm)
*3 出願人が別に行なった実証実験のデータ
実施例2における陰極側の液に、塩酸を加えてpHを7に調整したものを対象に、ゼオライトによる放射性Csの吸着を行なった。アルカリ金属イオンの影響を一定の限度に抑えるために、液中のNaイオンの濃度を360ppmにコントロールした。さまざまな量のゼオライトを液に添加し、24時間撹拌後、静置して、上澄み液の放射能濃度を測定した。最終処分場から排出することが許される排水は、3ヶ月のファクターすなわち134Cs/60+137Cs/90が1未満でなければならない。測定された数値が、上記の装置を用いた測定の検出限界50Bq/kg以下であれば、ファクター<1の条件を満たしているといえる。この測定では、マリネリ容器(200mL)を用いて測定した。この吸着試験で得られた、ゼオライトの添加量と上澄み液の放射能濃度(ほとんど放射性Csによる)との関係を、図6のグラフに示す。ゼオライトの添加量を増すにつれて、吸着されずに残る放射性Csの濃度は低くなるが、なお検出限界を大きく上回っている。
つぎに、放射性Csを吸着したPBを含む鉄系沈殿物にアルカリを作用させて分解し、得られた放射性Csを脱離させた液に対して電気透析を行なって放射性Csイオンを濃縮した液について、ゼオライトによる放射性Csの吸着のようすを調べた。対象として、上記の吸着試験において0.3g/Lのゼオライト添加により放射性セシウムの濃度を10,000Bq/kgまで減少させた上澄み液をとった。試験方法は、上記と同様に、Naイオンの濃度を360ppmにコントロールし、さまざまな量のゼオライトを液に添加し、24時間撹拌後、静置して、上澄み液の放射能濃度を測定する、という手順である。結果を、図6のグラフに併せて示した。5g/Lのゼオライトを添加したとき、上澄み液の放射能濃度は、検出限界である50Bq/kgを下回るに至ったことがわかる。
この結果を要約すれば、
液中PB合成による放射性Cs吸着・一次固形物分離
→一次固形物のアルカリ分解による放射性Csの脱離
→電気透析による脱離した放射性Csの濃縮
→濃縮された放射性Csの液中合成PBによる吸着・二次固形物分離
→二次固形物のアルカリ分解による放射性Csの脱離
という手順で得た液に対してゼオライト吸着を行なって放射性Csを分離すると、2段階の処理、すなわち3g/L+5g/L=8g/Lのゼオライト使用により、12万Bq/kgから50Bq/kgまで放射能を低減する除染が実現する、ということになる。この場合、
(120,000−50)Bq/kg÷8g/L=約15,000Bq/g=15,000,000Bq/kg
に濃縮されたゼオライト放射性二次廃棄物が得られたことになる。原飛灰の放射能濃度が約80,000Bq/kgであったから、この二次廃棄物においては、約190倍の濃縮が行なわれたことになる。
実施例1において、液中合成PBによる放射性Csの吸着反応、すなわち、放射性Csを含有する飛灰洗浄液に、フェロシアン化カリウムと硫酸第二鉄とを、硫酸第二鉄Fe2(SO4)3が8mol過剰に残る量で添加し、生成するPBに放射性Csを吸着させる反応の操作時間は、30分間であった。しかし、前述のように、この時間をもっと長くとれば、より高度な吸着が実現するかも知れないと考えられたので、PBが0.1g/L、0.2g/Lまたは0.5g/L生成するようにフェロシアン化カリウムと硫酸第二鉄とを添加し、撹拌後、それぞれ30日、14日または5日にわたって放置し、その間の上澄み液の放射性Csの濃度を測定してみた。その結果は図7のグラフに示すとおりであって、反応時間を長くとることにより、吸着がさらに進むという事実が見出された。
本発明の方法の工程Dを説明するための、電気透析槽を概念的に示した図。 本発明の参照例のデータであって、飛灰洗浄液に直接ゼオライトを接触させて放射性Csを吸着させたときの、ゼオライト添加量と残った放射性Csの量との関係を示したグラフ。 本発明の前提となる、放射性Csを吸着したPBから、その分解により放射性セシウムが脱離する状況を示したデータであって、3回の脱理操作によって累積脱離率が100%に達したことを示すグラフ。 本発明の実施例のデータであって、放射性Csを吸着したPBにアルカリを加えて分解して得た液を、カチオン交換膜を備えた電解質で電解したときの、通電量の増大に伴って、陽極側の室および陰極側の室の液中の放射性Csの濃度が変化して行く状況を示したグラフ。 本発明の実施例のデータと参照例のデータを比較して掲げたものであって、PBによる放射性Csの平衡吸着に関し、平衡濃度と吸着量との関係を示すグラフ。 本発明の実施例のデータであって、放射性Csの吸着を最終的にゼオライトにさせた場合の、使用ゼオライト量と上澄み液に残存する放射性Csの濃度との関係を示したグラフ。 本発明の実施例のデータであって、液中合成PBによる放射性Csの吸着が、反応時間を長くすることにより、さらに進行することを示すグラフ。
ゼオライトによる放射性Csの吸着を、前掲の特許文献1に開示した焼却灰または溶融飛灰の水洗浄液にゼオライトを接触させて実施したときの問題点は、水洗浄液にはCsイオンだけでなく、NaやKのイオンが大量に存在し、それらがゼオライトの吸着サイトをブロックするために、セシウム吸着の効率がよくないということであった。一方、焼却灰および溶融飛灰には重金属イオンも含まれることが普通であるが、通常の処理においてはキレート剤等で固定化するので、水洗浄液中の重金属の含有量は、問題になるほどのレベルではない。
濃度1mol/LのNaOH水溶液100mLに、上記の鉄系沈殿物すなわち放射性Csを吸着したPBを加え、30分間撹拌してPBを分解し、PBに吸着されていた放射性Csを脱離させた。一夜放置した後、上澄み液を分取し、放射能濃度を測定した。残った沈殿物に1mol/L−NaOH水溶液100mLを加え、30分間撹拌して、脱離せずに残っていた放射性Csを脱離させる操作を再度行なった。さらに一夜放置した後、上澄み液を分取して、放射能濃度を測定した。この脱離操作を合計3回繰り返したところ、100%の脱離が行なわれた。各回の放射性Cs脱離のデータは下記の表1のとおりである。その累積状況を、図3に示す。
放射性Csをより高濃度で吸着したPB吸着物を得るためには、脱離液中のCsとフェロシアンイオンをいったん分離する必要がある。そこで、電気透析槽として、陽イオン交換膜「Nafion 115」(デュポン社製)を隔膜として備え、陽極としてIrO−Pt熱分解コーティングをしたTi板、陰極としてムクのTi板を用いた電解槽を用意し、陽極側に上記のようにして得た放射性Cs脱離液300mLを、陰極側にpHが13のNaOH水溶液300mLを入れ、0.5Aの定電流で電解する電気透析を行なった。電極の有効面積は20cm、したがって電流密度は、0.025A/cmである。電極反応は、それぞれつぎのとおりである。
(陽極側)2H2O→4H+O2+4e
(陰極側)2H2O+2e→H2+2OH
フェロシアンイオンが移行した陰極側の液が目的物であって、以下これを「電解膜分離液」と呼ぶ。陽極側の液は、放射能濃度が10000Bq/kg程度に低下したところで、濃度の高い液と交換した。
表2 通電量とイオン移動量の関係
Figure 2015004655
Csを吸着したPBに対しアルカリを作用させてCsを脱離させた液を対象にして、ゼオライトによる放射性Csの吸着を行なった。アルカリ金属イオンの影響を一定の限度に抑えるために、液中のNaイオンの濃度を360ppmにコントロールした。さまざまな量のゼオライトを液に添加し、24時間撹拌後、静置して、上澄み液の放射能濃度を測定した。最終処分場から排出することが許される排水は、3ヶ月のファクターすなわち134Cs/60+137Cs/90が1未満でなければならない。測定された数値が、上記の装置を用いた測定の検出限界50Bq/kg以下であれば、ファクター<1の条件を満たしているといえる。この測定では、マリネリ容器(2000mL)を用いて測定した。この吸着試験で得られた、ゼオライトの添加量と上澄み液の放射能濃度(ほとんど放射性Csによる)との関係を、図6のグラフに示す。ゼオライトの添加量を増すにつれて、吸着されずに残る放射性Csの濃度は低くなるが、なお検出限界を大きく上回っている。
本発明の方法の工程Dを説明するための、電気透析槽を概念的に示した図。 本発明の参照例のデータであって、飛灰洗浄液に直接ゼオライトを接触させて放射性Csを吸着させたときの、ゼオライト添加量と残った放射性Csの量との関係を示したグラフ。 本発明の前提となる、放射性Csを吸着したPBから、その分解により放射性セシウムが脱離する状況を示したデータであって、3回の脱離操作によって累積脱離率が100%に達したことを示すグラフ。 本発明の実施例のデータであって、放射性Csを吸着したPBにアルカリを加えて分解して得た液を、カチオン交換膜を備えた電気透析槽透析したときの、通電量の増大に伴って、陽極側の室および陰極側の室の液中の放射性Csの濃度が変化して行く状況を示したグラフ。 本発明の実施例のデータと参照例のデータを比較して掲げたものであって、PBによる放射性Csの平衡吸着に関し、平衡濃度と吸着量との関係を示すグラフ。 本発明の実施例のデータであって、放射性Csの吸着を最終的にゼオライトにさせた場合の、使用ゼオライト量と上澄み液に残存する放射性Csの濃度との関係を示したグラフ。 本発明の実施例のデータであって、液中合成PBによる放射性Csの吸着が、反応時間を長くすることにより、さらに進行することを示すグラフ。

Claims (10)

  1. 放射性Csを含有する排水から放射性Csを分離除去し、高度に濃縮する方法であって、下記の諸工程からなる方法:
    A)放射性Csを含有する排水にフェロシアン化鉄を接触させ、フェロシアン化鉄に放射性Csを吸着させる工程、
    B)放射性Csを吸着したフェロシアン化鉄の沈殿を排水から分離し、排水は放射線量を測定して、基準値内であることを確認して放出する工程、
    C)分離した、放射性Csを吸着したフェロシアン化鉄を水に分散させ、分散液にアルカリを加えてpHを10以上に調整することによってフェロシアン化鉄を分解させ、吸着した放射性Csを放出させる工程、
    D)放出された放射性Csを含有する水溶液を、陽イオン交換膜を隔膜として備えた電解室に供給して電解し、フェロシアンイオンを主とするアニオンは陽極室に、Csイオンを含むカチオンは陰極室に集めることによって、放射性Csを濃縮する工程、
    E)濃縮された放射性Csを含有する陰極室液に、Csイオンを吸着する物質を接触させることにより、濃縮された放射性Csを吸着させる工程、ならびに、
    F)濃縮された放射性Csを吸着している物質を、貯蔵のための処理に付する工程。
  2. 請求項1に記載した方法において、工程Aにおいて使用するフェロシアン化鉄が、放射性Csを含有する排水の中で、フェロシアン化ナトリウムと硫酸第二鉄との反応により生成させたものであって、放射性Csの吸着を、生成したばかりのフェロシアン化鉄の結晶構造にさせる方法。
  3. 請求項1に記載した方法において、工程Eにおいて使用するCsイオンを吸着する物質がゼオライトである方法。
  4. 請求項1に記載した方法において、工程Eにおいて使用するCsイオンを吸着する物質がフェロシアン化鉄である方法。
  5. 請求項4に記載した方法において、工程Eにおいて使用するフェロシアン化鉄が、濃縮された放射性Csを含有する排水の中で、フェロシアン化ナトリウムと硫酸第二鉄との反応により生成させたものであって、放射性Csの吸着を、生成したばかりのフェロシアン化鉄の結晶構造にさせる方法。
  6. 請求項4に記載した方法において、工程Fの、濃縮された放射性Csを吸着している物質の貯蔵のための処理が、下記の工程G、HおよびIからなる方法:
    G)濃縮された放射性Csを吸着しているフェロシアン化鉄を水に分散させ、分散液にアルカリを加えてpHを10以上に調整することによってフェロシアン化鉄化合物を分解させ、吸着していた放射性Csを液中に放出させる工程、
    H)放出された放射性Csを含有する液にゼオライトを接触させ、ゼオライトに放射性Csを吸着させる工程、および、
    I)放射性Csを吸着したゼオライトを液から分離し、貯蔵処理に回す工程。
  7. 請求項6に記載した方法において、工程Iにおいて放射性Csを吸着したゼオライトを分離した液について、下記の工程JおよびKを行なう方法:
    J)工程Eで得た液のpHを4以下に調整して水酸化第二鉄をいったん溶解させたのち、pHを6〜8の中性領域に戻し、フェロシアン化鉄と水酸化第二鉄のフロックとの共沈物を得る工程、
    および、
    K)フェロシアン化鉄と水酸化第二鉄のフロックとの共沈物に酸を加え、pHを4以下に調整して水酸化第二鉄を再溶解し、ついでpHを中性領域に戻して、フェロシアン化鉄と水酸化第二鉄を工程Aに循環使用すること。
  8. 工程Eまたは工程Hで使用するゼオライトとして、モルデナイト型ゼオライトを使用する請求項3または請求項6の方法。
  9. 放射性Csを含有する排水が、ゴミ焼却灰の飛灰または溶融飛灰を水で洗浄して可溶性成分を溶出させて含有する水洗浄液である請求項1ないし8のいずれかの方法。
  10. 放射性Csを含有する排水が、ゴミ焼却灰の飛灰または溶融飛灰にキレート剤を作用させて、重金属イオンの溶出を実質的になくしたものを水で洗浄して、可溶性成分を溶出させて含有する水洗浄液である請求項1ないし8のいずれかの方法。
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