JP6327782B2 - 放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去する方法 - Google Patents

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本発明は、放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去して、排水を放流可能にする方法に関する。
原子力発電所の事故により放出された放射性物質のうち、とくに放射性セシウム(以下「134Cs、137Cs」と記すことがある)は、農作物や廃棄物処理場の焼却灰・溶融飛灰に含有されるほか、被災地の瓦礫の処理や建造物の除染作業にともなって発生する排水に含有され、その効率的な除去方法が求められている。発明者らの一部は、種々の可燃物に付着ないし吸収された放射性セシウムが、可燃物を都市ゴミ焼却炉で焼却処理したときに飛灰に濃縮され、主灰や飛灰を溶融処理したときは、溶融飛灰に移行すること、これらの焼却灰および飛灰(以下「灰」と略記する)の中に存在するセシウムは、水に溶けやすい形態であることから、灰からセシウムを水で抽出し、その抽出液からセシウムを適宜の吸着剤に吸着させて分離し、セシウムを吸着した吸着剤を固化処理することによって大幅な減容が可能になることを見出し、その実施技術を確立して、すでに提案した(特許文献1)。
水抽出液からのセシウムイオンの吸着分離を行なう吸着剤としては、まずゼオライトが挙げられ、有効に使用できることが確認されている。しかし、一定量のゼオライトが吸着できるセシウムの量は、案外少ない。灰の中には、カリウムやナトリウム(以下、カリウムで代表させる)の化合物のような、これも水に溶けやすい物質が多量に含まれており、それらに由来するカリウムのイオンがゼオライトの吸着サイトの大部分を占めるため、セシウムが吸着できるサイトが減ってしまうのがその理由である。
発明者らの一部は、セシウムとともにカリウムを吸着したゼオライトを水で処理すると、カリウムは溶出するがセシウムはほとんど残留するという事実を見出し、上記の問題への対応策を確立することに成功した。すなわち、放射性セシウムを吸着したゼオライトを水洗して吸着サイトを復活させ、再度吸着に利用するという放射性セシウムの除去方法であって、これもすでに開示した(特許文献2)。
一方、セシウムを選択的に吸着する物質として、古くから、プルシャンブルー(紺青、以下「PB」と略記する。)、すなわちフェロシアン化鉄(II)酸鉄(III)カリウムKFe[Fe(CN)6]によって代表される顔料が有効であることが知られており、核燃料再処理廃液からの137Csの分離除去の技術が研究されている(非特許文献1)。PBと同種の化合物である、フェロシアン化カルシウムカリウムの利用も提案されている(特許文献3)。さらに、PBにおける2価の鉄の一部をニッケルに置き換えた構造の化合物である、ヘキサシアノニッケル(II)鉄(II)カリウムK2−XNiX/2[NiFe(CN)6]・nH2OがCsの吸着に高い選択性を示すことがわかった。この物質は微細な粒子なので、取り扱いに好都合なように、これをシリカゲルに担持して使用することが提案された(非特許文献2)。
PBがセシウムを選択的に吸着するのは、セシウムイオンの水和半径が、PBの結晶がもつ内部空孔の大きさに合致しているからと考えられている。最近では、ナノ粒子化したPBは、比表面積の増大に伴い吸着能が増大するので、その使用が効果的であるとして、量産技術および性能試験の結果が発表された(非特許文献3)。発表によれば、ゼオライト、PB市販品にくらべ、PBナノ粒子(60μm、11μm)は、液−固比(処理すべきセシウム含有水溶液の容積/吸着材の重量)が大きい領域で、高い吸着性能を示す。そこで、放射性セシウムで汚染された都市ゴミ焼却灰から放射性セシウムを除去するために、PBナノ粒子を使用することが提案されている。具体的には、セシウム溶出が危惧される焼却灰の処理法として、ひとつは埋設処分場からの浸出水を除染後排水することであり、いまひとつは埋設処分前に焼却灰を洗浄し、その洗浄水をPBナノ粒子吸着剤で処理することである。
発明者らは、セシウムの選択的吸着にPBのナノ粒子による吸着が効率的であること、ナノ粒子はより微細で比表面積が大きいほど有効である、という事実に着目し、PBナノ粒子の生成と同時にセシウムの吸着が行なわれれば、さらに高度な吸着が実現するであろうという期待をもち、それにもとづいて、セシウムイオンが存在する液中でPBを生成させ、かつ、生成したセシウムを選択的に吸着したPBを直ちに凝集沈殿させて系外に取り出すことによって、最も有利な吸着平衡条件を実現することを着想した。実験の結果、期待どおりの成績が得られた。
特願2011−232269 特願2011−265334 特開2008−526833 見塩規行ほか「日本原子力学会誌」Vol. 6, No. 1 (1964) p. 2 三村均ほか「素材工学研究所報告」第54巻第1, 2号 (1998) p. 1 (独)産業技術総合研究所プレスリリース 2012年2月8日
本発明の主たる目的は、上記した発明者らの得た新知見を活用し、放射性セシウムが他のアルカリイオンと共存する水溶液から放射性セシウムを選択的に除去する方法において、単に市販のPBを吸着剤として使用する場合はもちろん、PBナノ粒子を使用する場合よりも高いPB使用効率をもって放射性セシウムの除去が可能である除去方法を提供することにある。本発明のさらなる目的は、この方法の実施に当たって、放流する排水中に、放射性セシウムだけでなく、シアン化合物も検出されない、きわめて安全度の高い処理を実現した処理方法を提供することにある。
上記の目的を達成する本発明の除染方法は、放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去する方法であって、原理的にいえば、放射性セシウムを含有する排水の中で、フェロシアン化物と第二鉄化合物とを反応させてフェロシアン化鉄、すなわちヘキサシアン化鉄(II)酸鉄(III)を生成させ、生成したフェロシアン化鉄に放射性セシウムを吸着させるとともに、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄の微細な粒子を、第二鉄化合物から生成した水酸化第二鉄Fe(OH)3の作用によって凝集沈殿させ、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄を固液分離によって排水から分離することからなる。固液分離によって生じた液は、もはや有害な放射性セシウムを含有しないから、通常は、そのまま、または必要な処理をして放流することができる。
本発明の除染方法の実施に当たっては、排水の中で反応させるフェロシアン化物と第二鉄化合物との量的な比をどのように選ぶかが、重要なポイントである。詳細は後述するが、フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が当量よりも過剰であることが必須であり、放射性セシウムが排水中に入って行かないようにするためには、少なくとも当量の2倍量とすべきであって、2〜10倍量の範囲から選ぶことが好ましい。一方、フェロシアン化物もPBも、化合物名に「シアン」が含まれているので、シアン化合物であることは否定できない。どちらも無害であり、安定な物質であるから、微量が排水中に混入しても、通常は、とりたてて問題が生じる懸念はないはずである。しかし、何らかの原因でこれらの物質の分解が起こったりすることを予防し、または「シアン」の名を担った化合物の存在そのものが忌避されるときは、フェロシアン化物もPBも排水中に入ることを完全に防止したい。そのような場合は、フェロシアン化物に対する第二鉄化合物の割合を、当量の10倍以上に高く選ぶ。
本発明の除染方法によれば、排水中に溶存していた放射性セシウムが、排水へのフェロシアン化物と第二鉄化合物との同時添加により生成したばかりのフェロシアン化鉄に吸着され、この吸着がきわめて高い効率をもって実現するため、少量のフェロシアン化鉄に多量の放射性セシウムが含有された沈殿物が生成する。前述のように、セシウムの吸着は、水和イオンがフェロシアン化鉄の結晶の空孔に取り込まれるという機構によっており、フェロシアン化鉄が生成するそばから、生成した空孔への取り込みが行なわれることが、高い吸着効率をもたらすと解される。
放射性セシウムの吸着が高い効率をもって行なわれる結果、二次廃棄物の容積がきわめて小さく、高度の減容が実現する。処理すべき汚染物の量が膨大であり、かつ、相当の年月にわたって除染を継続しなければならないという状況のもとでは、除染を行なっても、その結果発生した大量の二次廃棄物の処理をどうするかということが重要な問題となるが、本発明によって高度の減容を行なえば、この問題が著しく軽減される。
本発明の実施に当たって、使用するフェロシアン化物に対する第二鉄化合物の割合を十分過剰にすることによって、排水に含まれるシアン化合物の濃度を、実質上ゼロに、また必要であれば、完全にゼロにすることができ、シアン化合物の存在が引き起こすことのある実際上の危険および心理的な懸念を回避することができる。本発明の除染方法は、その実施に必要な装置および薬剤に、特殊なものはない。したがって、多くの自治体またその傘下のクリーンセンターはむろん、住民団体やNPOにおいても実施することができる。除染作業が、必ずしも化学ないし放射性物質に関する知識経験をもたない者によっても行なわなければならない実情にかんがみれば、実施の容易さは重要なことである。
フェロシアン化化合物としては、フェロシアン化カリウムが、入手が容易である点で最適であって、これが代表的であるが、カリウム塩に限らず、ナトリウム塩あるいはアンモニウム塩のような、他のフェロシアン化物も使用可能である。
放射性セシウムを含有する排水の中で、フェロシアン化鉄を生成させるには、つぎの二つの方法が可能である。
・水可溶性のフェロシアン化化合物と、水可溶性の第二鉄化合物とを、排水の中で反応させる。
・水可溶性のフェロシアン化化合物と、水可溶性の第一鉄化合物に加えて、酸化剤を排水の中で反応させる。この場合の酸化剤は、容易に理解されるように、第一鉄を酸化して第二鉄に変えるためものものであるから、操作としては直接第二鉄を反応させる方が簡便で有利である。
水可溶性の第二鉄化合物として実際に使用されるものは、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、さらには酢酸第二鉄など、さまざまな物質を挙げることができる。これらの中では硫酸第二鉄が最適であって、製鉄製鋼業の酸洗作業の副産物として比較的安価に入手でき、市場には、凝集沈殿剤などの用途に向けるための種々の商品形態のものがある。水可溶性の第一鉄化合物も、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄などから選ぶことができる。水溶液の状態にある第一鉄化合物は、比較的容易に酸化されて、その一部が第二鉄に変化することがあるが、もちろん支障ない。ということは、第一鉄化合物と第二鉄化合物とを混合して使用してもよいわけである。第一鉄化合物と組み合わせて添加する酸化剤は、塩素酸カリウムまたはナトリウム、過塩素酸カリウムまたはナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなど、常用の無機酸化剤が使用できる。
以下、本発明の実施態様として代表的といえる、フェロシアン化カリウムおよび硫酸第二鉄を挙げて記述を進めれば、これらの原料からフェロシアン化鉄が生成する反応は、つぎの式に従うと考えられる。
3K4[Fe(CN)6]+2Fe2(SO4)3→Fe4[Fe(CN)63+6K2SO4 (1)
この反応に関して重要なことは、前述のように、フェロシアン化化合物に対する第二鉄化合物の量が、フェロシアン化鉄が生成する当量よりも過剰であるような割合で存在させることである。過剰の度合は、上記の反応に関与しなかった第二鉄化合物が水酸化第二鉄Fe(OH)3となって、その凝集沈殿作用が発揮されるようなものとすべきであり、そのために必要な最小限の量が、当量の2倍である。後記する実施データにみるように、2倍量以上、できれば、5〜10倍量を使用することが好ましい。また、排水中のシアン成分を皆無にするという目的があれば、10倍量またはそれ以上を使用すべきことになる。
このほかに排水に添加するフェロシアン化カリウムおよび硫酸第二鉄の量を決定する因子は、むろんコストや実施の容易さという観点も必要であるが、それよりは、ひとつは達成を意図する放射性セシウム吸着除去の程度から、いまひとつは発生する二次廃棄物の量が許容できるかどうかという観点からも判断すべきである。達成すべき放射性セシウム吸着除去の程度は、いうまでもなく、処理後の排水にどの程度の残留放射線量が許容されるかによって定まる。本発明は排水中でフェロシアン化鉄を生成させ、生成するそばからセシウムを吸着するという新規な構成を採用することにより、高い吸着材使用効率で吸着除去ができるから、常用の測定器による測定で「不検出」と評価される除去を実現することは容易である。
排水へのフェロシアン化カリウムおよび硫酸第二鉄の添加は、どちらも、所定の濃度で調製した水溶液を、撹拌下に排水へ同時に添加することによって行なうのが好ましい。反応時の液のpHは、フェロシアン化鉄の沈殿をFe(OH)3の作用により凝集させる上で都合のよい範囲、通常はpH5〜8となるように選ぶ。この範囲内でも、とくにpH6〜7が好ましい。実際は、たとえば水道水を用いて建造物の洗浄を行なうといった、通常の除染作業によって発生した排水であれば、とくにpHを考慮する必要はない。ゴミ焼却により発生した灰の水洗により放射性セシウムを溶出させた排水は、セシウム以外のアルカリ金属を多量に含んでいるが、そのままでもpHは上記した吸着に好都合な範囲内にある。
本発明の除染方法を適用できる対象物は、広い範囲にわたる。上述のように、放射性セシウムが付着した廃棄物を焼却処理したときには、飛灰、とくに溶融処理をした場合は溶融飛灰にセシウムは濃縮されるので、その灰を水洗して放射性セシウムを溶出させた液が、重要な対象物である。そのほか、道路、側溝、建物などの洗浄によって発生した排水などが含まれる。
都市ゴミの焼却灰および飛灰には、しばしばクロムや鉛、カドミウムあるいは砒素のような有害な重金属が含有されており、灰の処分にともなってそれら重金属が排水中に溶出する可能性がある。そのような場合、本発明の実施に先だって、液体キレート剤を使用して排水中の重金属の固定化処理を行なうとよい。代表的な液体キレート剤としては、ジオチルカルバミン酸の塩があり、本発明の排水からの放射性セシウムの除去に先立つ処理にも、それらが有用である。
比較例
既知のプルシャンブルーによるセシウムの選択的吸着の効果を、つぎのようにして調べた。放射線量の測定は、スペクトロサーベイメーターまたはゲルマニウム半導体検出器(Canberra Model GC2520)を用いて行なった。ゴミ焼却場の飛灰であって、放射性セシウムに起因する放射線量が85,788Bq/kgを示すものに、重量にして10倍量の蒸留水を加え、24時間撹拌したのち、孔径0.8μmのフィルターで濾過することにより、洗浄排水を得た。得られた排水の放射線量は、8,900Bq/kgであった。液のpHは11.6であったため、塩酸を加えてpH8に調節した。
この排水に、プルシャンブルー(関東化学社製、以下「市販PB」という)を、濃度が0.05〜1g/Lとなる範囲内の種々の量で添加し、30分間撹拌して市販PBを液に分散させることにより、吸着平衡に達するまで放射性セシウムを吸着させた。吸着済み市販PBを濾過により分離した後、排水について放射線量を測定した。市販PB添加量と処理済み排水中の放射性セシウム濃度との関係に、吸着による低減効果を、あわせて表1に示す。
表1
Figure 0006327782
表1をグラフにしたものが、図1である。このグラフにみるように、市販PBを1g/L使用したとき、液の放射線量がはじめ8,900Bq/kgあったものが、処理後は550Bq/gにまで減少した。これは、吸着済みPBへの放射性セシウムの濃縮という観点で考えれば、
(8,900Bq/kg−550Bq/kg)÷1g/L(kg)=8,350Bq/g
=8,350,000Bq/kg
であるから、原飛灰からは約100倍の濃縮が行なわれたことを意味する。
本発明の除染方法を大規模に実施する場合は、下記の構成部分が連結された装置を建設して、それを用いることが推奨される。
・排水を受け入れてそれにフェロシアン化物を添加し、ついで第二鉄化合物を添加するための、撹拌装置およびpH測定装置を備えた混合槽、
・排水とフェロシアン化物および第二鉄化合物との混合を十分に行なうための、強力な撹拌装置を備えた急速撹拌槽、
・急速に撹拌された混合物から凝集物を沈殿させるための緩速撹拌槽、
・沈殿物を沈降させるためのシックナー、および
・沈降した固形物を濾過分離するための濾過装置。
これらの装置の建設および運転は、当業者にとって既知の技術に従い、容易に実施することができるであろう。なお、作業員の安全のため、これらの装置の構成部分に対し、必要に応じて放射線遮蔽手段を付加することが推奨される。
比較例と同様にして、放射性セシウムを含有する排水を得た。この排水の放射線量は、7,680Bq/kgであった。フェロシアン化カリウムは、濃度10g/Lの水溶液を用意し、硫酸第二鉄としては、市販の凝集沈殿材である「ポリ鉄」(日鉄鉱業社の製品)を用意した。フェロシアン化カリウム水溶液を、pHを調節した上記の飛灰洗浄排水に対して、その中で生成するフェロシアン化鉄の濃度がそれぞれ0.01〜0.1g/Lとなる量添加した。一方、ポリ鉄は、前記の反応式によりフェロシアン化鉄が生成するのに必要な量に対して、1.2倍モル、2倍モルまたは5倍モルを添加した。フェロシアン鉄1モルを生成するのに必要な硫酸第二鉄は2モルであるから、必要なモル数に対しそれぞれ1.2倍モル、2倍モルまたは5倍モルとは、過剰な量としては、それぞれ0.4モル(0.2倍)、2モル(1倍)および8モル(4倍)を加えたことを意味する。
放射性セシウムの除去効果を、ポリ鉄の添加量が1.2倍モルの場合を表2に、2倍モルの場合を表3に、5倍モルの場合を表4に示す。ポリ鉄を2倍モル加え、生成するフェロシアン化鉄(「フェロ鉄」と略記する)が0.025g/Lの場合については、アニオン系凝集剤を併用してみた。沈殿の凝集はできたが、放射性セシウムの除去効果は同程度であった。
表2 1.2倍モル
Figure 0006327782
表3 2倍モル
Figure 0006327782
表4 5倍モル
Figure 0006327782
表2〜4のデータをグラフにすれば、図2および図3のとおりである。吸着によって排水から除去された放射性セシウムの割合を「除去率」として計算すると、硫酸第二鉄の添加量が2倍モルの場合、最大の0.1g/LのPBを生成させたときでも、7,680Bq/kg→1,720Bq/kgであって、77.6%にとどまったが、5倍モルの場合は放射性セシウムが「不検出」という成績である。この不検出の場合は、放射性セシウムの実質上全量が生成したPBに吸着されたとみてよいから、濃縮率としては、
7,680Bq/kg÷0.1g/L=76,800,000Bq/kg
となって、原飛灰の放射線量8,588Bq/kgを基礎にすれば、960倍の濃縮が実現したことになる。
上記の表4において、液中フェロシアン化鉄の生成量が0.05g/Lの場合においても、処理後の排水の放射線量は374Bq/kgであり、95%を超える除去率が得られている。放射性セシウムの吸着に役だった液中PB生成量は0.5g/Lの値にもとづいて考えると、
(7,680Bq/kg−324Bq/kg)÷0.05g/L
=146,040、000Bq/kg
となって、1700倍以上の濃縮が行なわれている。
ただし、過剰に加えた硫酸第二鉄が、液中で水酸化第二鉄Fe(OH)3として残存しており、その量は、生成フェロシアン化鉄:Fe(OH)3=1:1.51 であるから、0.05g/Lのフェロシアン化鉄と水酸化第二鉄の合計量は0.1255g/Lとなる。しかし、この分を考慮してもなお、原飛灰に対する二次廃棄物の量との対比において、678倍の濃縮が達成できている。
参考までに、前掲の非特許文献1に記載のナノ粒子プルシャンブルーを使用した場合にどの程度のセシウム(試験は被放射性のセシウムを用いて行なわれている)吸着が実現するかを図2に併記すると、△記号で記したデータ、すなわち0.2g/Lのプルシャンブルーの添加によって、排水中のセシウム濃度を4000Bq/kgにまで低減することができたということになる。一方、本発明によれば、図2にみるとおり、液中で合成されるフェロシアン化鉄が0.1〜0.2g/Lですでに、放射性セシウムの濃度を実質上ゼロに低減することが可能である。
図2はまた、本発明の構成がもたらす利益を示している。フェロシアン化カリウムに対する硫酸第二鉄の量が1.2倍モル、2倍モルおよび5倍モルの場合を比較すると、液の使用量が同じで、したがって液中に生成するフェロシアン化鉄の量が0.1g/Lと同一であるにもかかわらず、液に残存する放射性セシウムの濃度は、それぞれ3,550Bq/kg、1,720Bq/kgおよび不検出と、顕著に相違しているという事実が、予期し得なかった発明の効果である。
比較例および実施例1で用いた放射性セシウムを含有する(放射線量7,680Bq/kg)排水を対象にして、処理後の排水中にシアン成分が存在しないような処理条件を求めた。放射性セシウム含有排水に、フェロシアン化カリウム(前記10g/Lの水溶液)と、硫酸第二鉄を主成分とする凝集沈殿剤「ポリ鉄」をさまざまな量で添加し、つぎの反応式に従うPB生成反応を行なわせることにより、0.1g/LのPBが生成するようにした。液のpHは、約6に調節した。
3K4[Fe(CN)6]+XFe2(SO4)3→Fe4[Fe(CN)63+6K2SO4
この式において、X=2のとき、すなわちフェロシアン化カリウム3モルに対して硫酸第二鉄を2モル添加したときが、当量関係である。Xの値を、2.4(当量の1.2倍モル)、4(2倍モル)、10(5倍モル)、20(10倍モル)または40(20倍モル)と変化させて、フェロシアン化カリウムに由来する系内のシアン濃度を測定した。結果は、図3のグラフに示すとおりであって、X=20すなわちフェロシアン化カリウムに対する硫酸第二鉄の添加量が当量の10倍に達したとき、排水中のシアン成分はゼロになることがわかる。
本発明の比較例のデータであって、ゴミ処理場で発生した溶融飛灰から放射性セシウムを水で溶出することにより発生した放射性セシウムを含有する排水に、市販PBを添加して吸着処理をさせたときの、市販PB添加量と処理済み排水中の残留放射性セシウム濃度の関係を示したグラフ。 本発明の実施例1のデータであって、比較例と同様な由来の排水に対し、本発明に従ってフェロシアン化カリウムと硫酸第二鉄とを添加して、液中でフェロシアン化鉄を生成させると同時にそれに放射性セシウムを吸着させて除去したときの、処理済み排水中の残留放射性セシウム濃度の関係を、フェロシアン化カリウムに対して硫酸第二鉄が当量の1.2倍モルである場合、2倍モルである場合および5倍モルである場合のグラフ。 本発明の実施例2のデータであって、比較例および実施例1と同じ排水中で、フェロシアン化カリウムに硫酸第二鉄を作用させてPBを生成させたときの、前者に対する後者の割合(倍モル)と、液中に残存するシアン化物の量との関係を示したグラフ。

Claims (9)

  1. 放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去する方法であって、
    放射性セシウムを含有する排水の中で、水可溶性のフェロシアン化物と水可溶性の第二鉄化合物とを反応させてフェロシアン化鉄、すなわちヘキサシアン化鉄(II)酸鉄(III)を生成させ、その際、フェロシアン化物に対する第二鉄化合物の割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な量よりも過剰に存在させ、生成したフェロシアン化鉄に放射性セシウムを吸着させるとともに、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄の微細な粒子を、第二鉄化合物から生成した水酸化第二鉄Fe(OH)の作用によって凝集沈殿させ、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄を固液分離によって排水から分離することからなり、
    フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の5倍以上として実施する除去方法。
  2. 水可溶性の第二鉄化合物を、排水の中で第一鉄化合物を酸化剤により酸化させることにより生成させて実施する請求項1の除去方法。
  3. フェロシアン化物としてフェロシアン化カリウムおよびフェロシアン化ナトリウムから選んだものを、水可溶性の第二鉄化合物として硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二鉄および酢酸第二鉄から選んだものを使用して実施する請求項1の除去方法。
  4. フェロシアン化物としてフェロシアン化カリウムを、水可溶性の第二鉄化合物として硫酸第二鉄を使用して実施する請求項3の除去方法。
  5. フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の10倍以内として実施する請求項1の除去方法。
  6. フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の10倍以上20倍以内として実施する請求項1の除去方法。
  7. 排水に対してまずフェロシアン化物の水溶液を添加し、排水に十分に混合したのち、第二鉄化合物の水溶液を添加して強力に撹拌する工程に従って実施する請求項1の除去方法。
  8. 第二鉄化合物の水溶液を添加した段階で排水のpHを測定し、pHが6〜7の範囲を逸脱していた場合には、酸またはアルカリを添加してpH6〜7としたのち、強力な撹拌を行なう請求項6の除去方法。
  9. 放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄の凝集を促進するための凝集助剤、および(または)凝集した沈殿の濾過を容易にするための濾過助剤を併用して実施する請求項1〜8のいずれか一項の除去方法。
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