JP6793544B2 - 土壌処理材及び重金属汚染土壌の浄化方法 - Google Patents
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また、鉄粉自体は、重金属等の汚染物の吸着又は結合する能力が低いので、これを活性化することが望まれる。そのためにも、酸を添加することは有効であるが、トンネル工事現場や掘削現場等に近接して設けられる土壌処理現場において、濃硫酸のような危険な劇物を使用することは望ましいとは言えない。
1)鉄粉が、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉、又は銑ダライであること。
2)金属塩が、酸性硫酸金属塩、例えば酸性硫酸マグネシウム、酸性硫酸アルミニウムであること。
上記添加、混合工程においては、酸が添加されないことが好ましく、上記磁選工程においては、乾式の磁力選別法により行われることが好ましい。
また、重金属汚染土壌中に、水を添加することなく、土壌処理材を混合攪拌し、乾式で磁力選別することが有効である。
このような鉄粉としては、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉、又は銑ダライ粉が挙げられる。アトマイズ鉄粉、還元鉄粉は、製鉄工程で高圧水や副原料による還元を利用して得られる鉄粉であり、銑ダライ粉は、鋳鉄を切削、旋削した際に発生する屑である。これらの鉄粉は土壌処理用として市販されているものが適するが、その他の用途、例えば懐炉用や脱酸素材用の鉄粉であっても差し支えない。
特に、酸性硫酸マグネシウム、及び酸性硫酸アルミニウムは市販品があるので、入手も容易である。また、硫酸鉄や硫酸アルミニウムも水中で酸性を示し、入手が容易であるので金属塩として適する。
土壌処理材10gを100mlの水中に投入し攪拌したときのpHは、1〜5程度がよい。
浄化土壌は、通常の土壌としての利用が可能であり、有用な資源となる。一方、重金属を吸着した土壌処理材は、重金属の濃度は高いとしても、少量であるから、無害化処理や固化処理、廃棄処理等が容易である。
市販の還元鉄粉(JFEスチール社製、金属鉄97.55%、見掛密度2.73g/cm3、流動度23.0、粒度分布(150〜106メッシュ;59.0%))と、酸性硫酸マグネシウム(MgO含有量=27〜28wt%、pH3、営口豊達硼製品有限公司社製)を、表1に示す割合でスーパーミキサーを使用して混合攪拌し、土壌処理材1〜7を作製した。
ヒ素含有岩石の浸出水(ヒ素濃度1.60mg/L)100mL中に、実施例1〜7で得た土壌処理材1〜7をそれぞれ0.5g添加し、25℃で6時間攪拌し、接触させた。24時間後、溶液をミリポアフィルターでろ過し、ろ液中のヒ素濃度を公定法により測定した。また、溶液の状態を目視により観察するとともに、pHを測定した。その結果を表2〜3に示す。
なお、溶液の状態が黄褐色懸濁(YBS)である場合、鉄粉表面が活性化し、ヒ素を捕捉し、水酸化鉄として懸濁していることを示す。一方、溶液の状態が無色透明(CLT)である場合、鉄粉が不動態化し、ヒ素が捕捉されていないことを示す。表中、溶液の状態において、YBTは黄褐色透明を、YTは黄色透明を意味する。
実施例1で使用したと同じ還元鉄粉及び酸性硫酸マグネシウムをそれぞれ単独で使用して、土壌処理材H1(還元鉄粉100%)、土壌処理材H2(酸性硫酸マグネシウム100%)とした。
この土壌処理材H1及びH2を、実施例8〜14と同様にヒ素含有岩石の浸出水に添加し、評価した。その結果を表3に示す。
本発明の土壌処理材は、ヒ素の除去能力が高いことが示された。
市販の還元鉄粉の代わりに市販のアトマイズ鉄粉(JFEスチール社製)又は銑ダライ(同社製)を用いた他は、実施例1と同様にして土壌処理材8、及び9を作製した。また、上記アトマイズ鉄粉又は銑ダライを単独で用いて土壌処理材H3〜H4とした。土壌処理材を表4に示す。
実施例8〜14で使用したと同じヒ素含有岩石の浸出水(ヒ素濃度1.60mg/L)100mL中に、土壌処理材8〜9、H3〜H4をそれぞれ0.5g添加し、25℃で6時間攪拌し、接触させた。24時間後、溶液をミリポアフィルターでろ過し、ろ液中のヒ素濃度を公定法により測定した。また、溶液の状態を目視により観察するとともに、pHを測定した。その結果を表5に示す。
実施例1〜6で使用したと同じ鉄粉と、硫酸第一鉄(粉末状工業用薬品;石原産業社製)、硫酸アルミニウム(粉末状工業用薬品;大明化学社製)を使用し、表6に示す混合比率でスーパーミキサーを使用して混合攪拌し、土壌処理材10、11を作製した。
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生したヒ素汚染土壌(含水率26%)を使用した(汚染土壌1)。この汚染土壌に土壌処理材10、11及び3を、表7に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間攪拌、混合した。得られた処理土壌について溶出量試験(環境省告示第18号)を実施した。結果を表7に示す。参考例は、土壌処理材を添加しない例であり、基準となる。
実施例19で使用したと同じ汚染土壌1に、土壌処理材H1を表10に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表8に示す。
汚染土壌1に、土壌処理材H1と、濃硫酸(比重1.84;和光純薬工業(株)製)を表10に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表8に示す。
実施例19で使用したと同じ汚染土壌1に、実施例19〜21で使用したと同じ土壌処理材10、11及び3を、表9に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した40mm×25mm×厚さ15mmで、表面磁束密度392.9mTのネオジム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験(環境省告示第18号)を実施した。結果を表9に示す。磁性分離除去後重量(wt%)は、磁性分離前を100 wt%として計算された値である。なお、磁着物粒子量(wt%)は、100−磁性分離除去後重量(wt%)で計算される。
本発明による土壌処理材の添加と磁着物粒子の磁性分離除去により、汚染物質溶出量が低下することが示された。
実施例19で使用したと同じ汚染土壌1に土壌処理材H1を、表10に示す量(重量%)で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した40mm×25mm×厚さ15mmで、表面磁束密度392.9mTのネオジム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表10に示す。
汚染土壌1に土壌処理材H1と、濃硫酸を表10に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した40mm×25mm×厚さ15mmで、表面磁束密度392.9mTのネオジム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表10に示す。
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生した汚染土壌(含水率25%)を使用した(汚染土壌2)。この汚染土壌に実施例3の土壌処理材3を、表11に示す量で添加し、混合機で10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した30mm×40mm×厚さ10mmのネオジウム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表11に示す。
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生した汚染土壌(含水率27%)を使用した(汚染土壌3)。この汚染土壌に実施例17の土壌処理材10を、表12に示す量で添加し、混合機で10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した30mm×40mm×厚さ10mmのネオジウム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表12に示す。
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生した流動性を有する汚染土壌(含水率30%)を使用した(汚染土壌4)。この汚染土壌に実施例18の土壌処理材11を、表13に示す量で添加し、混合機で10分間混合した。得られた処理土壌は、流動性が解消し磁力選別が可能な状態となったため、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した30mm×40mm×厚さ10mmのネオジウム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表13に示す。本発明による土壌処理材の添加と磁着物粒子の磁性分離除去により、汚染物質溶出量が低下することが示された。また、含水率が高く流動性を有する汚染土壌に対して、通常では添加される中性固化材の使用なしでも、磁性分離が比較的しやすく、中性固化材の添加は不要であった。
Claims (4)
- 重金属汚染土壌を浄化する方法であって、表面に凹凸又は空隙を有する鉄粉に、酸性硫酸マグネシウム又は酸性硫酸アルミニウムから選ばれる酸性硫酸金属塩を1〜30重量%担持させて土壌処理材とする工程、この土壌処理材を重金属汚染土壌中に添加、撹拌、混合し、土壌中の重金属を土壌処理材に吸着させる添加、混合工程、及び磁力選別法により重金属を吸着した土壌処理材を土壌中から分離、回収する磁選工程を備えることを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
- 鉄粉が、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉、又は銑ダライである請求項1に記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
- 添加、混合工程において、酸が添加されない請求項1又は2に記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
- 磁選工程が、乾式の磁力選別法により行われる請求項1〜3のいずれかに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
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