JP3565359B2 - 都市ゴミ焼却炉飛灰の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、飛灰の処理方法に係り、特に、都市ゴミ焼却炉より発生する飛灰中の重金属を鉄塩を用いて固定化する重金属含有飛灰の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ焼却工場の焼却灰、集じん機で捕集した飛灰あるいは廃水処理工場から排出されるスラッジ、その他固形産業廃棄物には、各種の有害な重金属が含まれている。
また、都市ごみ焼却炉の飛灰は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正に伴い、平成7年4月1日以降は、前記重金属を不溶化処理しなければ埋立処分ができなくなった。
従来、不溶化処理対策としては、下記の方法が提案されている。
▲1▼ セメント固化法
廃棄物をセメントと混合し、さらに少量の水を添加したのち、混練して固化する方法である。本法の原理はセメントの強アルカリ性による重金属イオンの不溶出化、セメントゲル生成による物理的封じ込め作用に基づいている。
【0003】
▲2▼ 溶融固化法
廃棄物をその融点以上(1300〜1500℃)の温度で加熱処理し、ガラス状のスラグとして回収する方法である。不溶化の原理は、重金属類がガラスのマトリックスに封じ込められる作用にもとずいている。
▲3▼ 液体キレート添加法
廃棄物を液体キレートと混合し、さらに小量の水を添加したのち、混練する方法である。不溶化の原理は、重金属が不溶性のキレート化合物になることにもとずいている。
▲4▼ フェライト化処理法
重金属を含む廃棄物を鉄塩の存在下にOH基を有するアルカリを加えて混合したのち、該混合物を300℃未満の温度に保持する(特公昭61−47154号公報)。
この不溶化の原理は、重金属を不溶性のフェライト化合物にすることにもとずいている。
【0004】
ところが、上述した従来の処理法には次のような問題点がある。
▲1▼ セメント固化法は、比較的簡単な設備で運転コストが低いことから、最も多く実施されている処理法である。前述したように、重金属の不溶化の原理は、セメントの強アルカリ性による重金属イオンの不溶化、及びセメントゲルによる物理的封じ込め作用であるか、飛灰中に含まれる重金属の種類及び化学組成によっては全く不溶化できないケースが生じている。重金属類は、一般にアルカリ性(pHを高くする)が高いほど水酸化物として沈殿し不溶化されるが、例外として、pH値が高すぎるとPbは亜・鉛酸イオン(HPbO )、Znは亜・亜鉛酸イオン(HZnO )として溶解する。従って、アルカリ含有飛灰に本法を適用すると、飛灰中にもともと含有されているアルカリ物質に、さらにセメント中のアルカリが加えられるため、逆にPbとZnの溶出量が増加する傾向がみられる。また、セメントゲルによる封じ込めは、NaCl、KCl、CaCl等のアルカリ金属塩、アルカリ土金属塩を多く含む飛灰(主として、都市ごみ焼却炉飛灰)に適用した場合、セメントの水硬化反応が阻害され、そのためセメントゲルの生成が不完全となり、重金属類の物理的封じ込めも困難となる。
【0005】
▲2▼ 溶融固化法は、1300〜1500℃の高温で処理しなければならないため、エネルギー多消費型であり、また高温作業での危険性が伴う。さらに溶融処理工程において、全ての重金属がガラスのマトリックスに封じ込められるのではなく、低沸点の重金属(Cd,Pb,Zn,Hg等)は再揮発するため、再度飛灰となって捕集され、いわゆる溶融炉飛灰となって排出される。この溶融炉飛灰は、焼却炉飛灰よりも高濃度の重金属が含まれるため、さらに不溶化処理が困難となる。
【0006】
▲3▼ 液体キレート添加法は装置の簡易さ、メンテナンスの利点があるため、導入しやすいシステムである。しかし、キレート剤の高価なためランニングコストが高くなり、また、キレート剤は有機物質であるため埋立地において微生物により分解をうけるため、長期的安定性に問題がある。さらに液体キレートはそれ自体は無害であるが、未反応のキレートが埋立地より流出すると、動植物に必要な有用金属をもキレート化するため利用できなくなり、環境に対する二次公害も懸念されている。
▲4▼ フェライト化処理法は、空気酸化が必要であるため、反応時間が長くなり、さらに加熱処理等を考慮しなければならない。従って、設備が大型化するとともに運転コストが高くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、都市ゴミ焼却炉より発生する飛灰に含有される有害な重金属、特に鉛の溶出を簡単な方法で、安価で、長期にわたり安定して防止でき、しかも埋立地での酸性雨等を考慮して、酸性域でも安定な処理が可能な処理薬剤を用いた処理方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、鉛を含有する都市ゴミ焼却炉より発生する飛灰に、第1鉄塩及び/又は第2鉄塩の2種類以上を包含し、できるだけ高濃度で作成した水溶液を、前記飛灰100g当り10〜50mlの範囲で添加して混練し、含湿状態ないしペースト状を呈する湿潤状態とすることを特徴とする都市ゴミ焼却炉飛灰の処理方法としたものである。
本発明において、使用される第1鉄塩としては、硫酸第一鉄(FeSO4 )、塩化第一鉄(FeCl2 )等の市販の薬品の他金属表面の酸洗い、酸化チタン製造の際に大量に生じる副産物の塩化第一鉄、硫酸第一鉄を用いることができる。 また、第2鉄塩としては、硫酸第二鉄(Fe2 (SO43 )、塩化第二鉄(FeCl3 )、ポリ硫酸鉄({Fe2 (OH)n (SO43-n/2n )等の薬品を用いることができる。
【0009】
そして、本発明は、前記鉄塩を混合した水溶液からなる薬剤であり、第1鉄塩同志の混合水溶液、第2鉄塩同志の混合水溶液、あるいは第1鉄塩と第2鉄塩の混合水溶液として用いる。
鉄塩の添加量は廃棄物の成分、含まれる重金属の種類や量によって異なり、事前に実験によって定めるべきであるが、廃棄物100部(乾燥重量)に対してFeとして1〜100部でよい。
また、本発明においては、既存の薬剤、例えばセメント、キレート剤等と併用して使用することも可能である。
【0010】
さらに、本発明では、混練操作によって含湿状態ないしペースト状を呈する湿潤状態とするものであるが、このような状態は被処理物に対する混合溶液の液体成分及び/又は別途に供給する水の量によって調整することになる。ここでいう含湿状態とは、液体成分量が最低の場合の状態であって、被処理物が液体成分で凝集して塊状を呈する状態を意味する。すなわち、本発明においては、被処理物の粒子表面が均質に濡れるための最低限の液体成分の存在が必要となる。
一方、ペースト状を呈する湿潤状態とは、そのとおりの意味であり、泥状あるいはクリーム状とも称され、放置時に液体成分が分離や流出を起こさない程度までの湿潤状態を意味する。分離や流出を起こすような状態では混練工程や混合物の搬出工程で取扱いに問題が生じ、また処理後にろ過等の手段を講じるような必要があって本来の目的を外れることになり、ろ液の処理も問題となり、さらに、作用すべき薬剤成分が有効に使用されないため無駄にすることになる。
【0011】
含湿状態からペースト状態となるべき薬剤の容量は、被処理物の粒度や性状に左右されるが、一応の目安を限定すれば、被処理物100gに対して薬剤の容量は10〜50mlの範囲が好適である。これ以上薬剤の容量が増加すると被処理物はスラリー状となり、前記理由により処理が困難となる。
従って、使用する薬剤はできるだけ高濃度で作成した方が容量が少なくてすむ。そのためには二種類以上の鉄塩を混合した溶液を作成すれば濃厚な薬剤となり、添加する薬剤の容量が少なくてすむ。なお、重金属を不溶性とするために必要な薬剤量が少なすぎて被処理物が含湿状態に至らない場合は、別途水を供給して調整すれば良い。
【0012】
【作用】
本発明方法により廃棄物中に含まれるアルカリ分が鉄塩と作用し、水酸化鉄沈殿を形成する。そして、廃棄物中に含まれる微量の重金属類は水酸化鉄の結晶格子のFeイオンと置換して取り込まれるものと考えられる。例えば、鉄塩が第1鉄の場合は、下記▲1▼式の反応により、鉄塩が第2鉄の場合は下記▲2▼式の反応がおこり、重金属の不溶化が可能となる。
【0013】
Figure 0003565359
ここで、MはPb,Cd,Zn,Hg等の重金属を示す。
さらに、第1鉄塩と第2鉄塩の混合水溶液の場合は、▲1▼式と▲2▼式に示した反応以外に、下記▲3▼式に示すようにFe(マグネタイト)が生成し、このFeは重金属の吸着作用が極めて大きいため、より効率的に重金属の不溶化が可能となる。
Fe2++2Fe3++4OH → Fe+2H ・・・・・▲3▼
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ストーカ式都市ごみ焼却炉より排出される飛灰を用いて、各種テストを行った。本飛灰は消石灰を焼却炉排ガスに添加して、排ガスと反応させ、電気集じん機により捕集したものである。飛灰の化学組成を表1に、環境庁告示第13号による飛灰の溶出試験結果を表2に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0003565359
【0016】
【表2】
Figure 0003565359
表1に示すように、本飛灰は消石灰に起因する多量の生石灰(CaOとして分析値を表示)が含まれており高アルカリ飛灰であった。
また、表2に示すようにPbの溶出量がわが国の基準値(昭和48年、総理府令第5号)を大きく上わまるため、そのまま埋立処分できない廃棄物であった。
【0017】
そこで、本飛灰を二種類の鉄塩の混合溶液を用いて処理した。すなわち、市販のポリ硫酸第2鉄溶液(以下ポリ鉄と記す)(一般式〔Fe(OH)(SO3−n/2 、Fe3+:160g/リットル、SO 2−:350g/リットル)100mlに硫酸第1鉄(FeSO・7HO)の粉末40gを溶解させた第1鉄塩と第2鉄塩の混合溶液を用いた。
本溶液の総鉄(T−Fe)イオン濃度は、240g/リットル(Fe2+ 80g/リットル、Fe3+ 160g/リットル)となり、高濃度の鉄イオン溶液とすることができた。処理試験の結果を表3に示し、それぞれの単独溶液の比較例を併記した。また、図1に灰当りのFe添加量に対するPbの溶出濃度を示した。
図1に示すように、本発明の第1鉄と第2鉄の混合液で処理した場合は、小量のFeでPbの溶出量を低減できる。また、Pbの溶出量を埋立基準値(3mg/リットル)以下にするための鉄塩溶液添加量、薬品量、混練状況を表4に示す。本発明は鉄塩溶液の容量が少くて良いため、混練状況は良好であり、また、薬品コストも安価となる。
【0018】
【表3】
Figure 0003565359
【0019】
【表4】
Figure 0003565359
【0020】
実施例2
実施例1の飛灰を用い、塩化第2鉄と硫酸第1鉄の混合水溶液で処理した。すなわち、薬剤として市販の塩化第2鉄水溶液(FeCl 37%溶液、Fe3+177g/リットル)100mlに硫酸第1鉄(FeSO・7HO)の粉末40gを混合させた混合溶液を用いた。本溶液の総鉄イオン濃度は257g/リットル(Fe2+ 80g/リットル、Fe3+ 177g/リットル)となり高濃度の鉄イオン溶液とすることができた。処理試験の結果を実施例1と同様に表5、図2及び表6に示す。本結果も実施例1と同様良好であった。
【0021】
【表5】
Figure 0003565359
【0022】
【表6】
Figure 0003565359
【0023】
実施例3
市販のポリ鉄溶液100ml(Fe3+ 160g/リットル)に、塩化第2鉄(FeCl)の粉末40gを溶解させた混合溶液を用いた。本溶液の総鉄イオン濃度は、296g/リットル(Fe3+ 296g/リットル)となり、高濃度の鉄イオン溶液とすることができた。処理試験結果を表7に示し、それぞれの単独溶液の比較例を併記した。また、図3にFe添加量に対するPbの溶出濃度を示した。表7、図3の結果から判るように、薬剤の容量が50ml/100g灰以下の場合はFe添加量に対するPbの溶出量は、本発明と比較例に差は認められない。しかし、薬剤の容量が70ml/100g灰以上においてはPbの溶出量の低下は少なく、薬剤が有効に利用されていないことを示した。また、表8に示すように本発明は鉄塩溶液の容量が少量であるため、混練状況は良好であった。
【0024】
【表7】
Figure 0003565359
【0025】
【表8】
Figure 0003565359
【0026】
実施例4
150g−FeSO/リットルを含有する酸洗い廃液(Fe2+ 55g/リットル)に塩化第1鉄(FeCl)の粉末200gを溶解させた混合溶液を用いた。本溶液の総鉄イオン濃度は143g/リットル(Fe2+ 143g/リットル)であった。処理試験の結果を実施例3と同様に表9、図4及び表10に示す。本結果も実施例3と同様、良好な結果が得られた。
【0027】
【表9】
Figure 0003565359
【0028】
【表10】
Figure 0003565359
【0029】
実施例5
実施例1で処理した本発明の試料を用いて環境庁告示13号試験条件下において、溶媒を純水のかわりに様々な濃度の塩酸もしくは水酸化ナトリウムの溶液を用いて溶出試験を行った。その結果を図5に示す。本法で処理したものは幅広いpH範囲で安定した固定効果があり、特に酸性域での溶出防止効果が優れているため最終処分地における酸性雨対策にも効果を発揮する。
【0030】
【発明の効果】
本発明においては、鉄塩を濃厚な溶液として添加でき、鉄塩を有効に利用できるため、少量の使用で全ての重金属、特に鉛の溶出を長期に安定して防止できる。また、埋立地での酸性雨により、酸性域となった場合でも、重金属の溶出を基準値以下に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のFe添加量とPb溶出濃度の関係を示すグラフ。
【図2】実施例2のFe添加量とPb溶出濃度の関係を示すグラフ。
【図3】実施例3のFe添加量とPb溶出濃度の関係を示すグラフ。
【図4】実施例4のFe添加量とPb溶出濃度の関係を示すグラフ。
【図5】溶出液のpHによるPb溶出量の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
A:実施例1、A−1:比較例1、A−2:比較例2
B:実施例2、B−1:比較例3、B−2:比較例4
C:実施例3、C−1:比較例5、C−2:比較例6
D:実施例4、D−1:比較例7、D−2:比較例8
E:本発明、F:無処理

Claims (1)

  1. 鉛を含有する都市ゴミ焼却炉より発生する飛灰に、第1鉄塩及び/又は第2鉄塩の2種類以上を包含し、できるだけ高濃度で作成した水溶液を、前記飛灰100g当り10〜50mlの範囲で添加して混練し、含湿状態ないしペースト状を呈する湿潤状態とすることを特徴とする都市ゴミ焼却炉飛灰の処理方法。
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