JP3574928B2 - 焼却炉および溶融炉からの飛灰の処理方法 - Google Patents

焼却炉および溶融炉からの飛灰の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみ焼却工場や産業廃棄物焼却工場等における焼却炉および溶融炉から発生する重金属含有飛灰の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、事業場や一般家庭から排出されるゴミ(「都市ゴミ」または「一般廃棄物」と称されている。)は、都市ゴミ焼却場に集められて焼却処分されるが、その際に焼却炉から発生する燃えがらや飛灰は最終処分場に堆積されていた。
【0003】
しかしながら、近年、堆積場確保の困難性や、堆積される飛灰に含まれている鉛、カドミウムなどの重金属やダイオキシン類の有害性が問題視されている。
【0004】
そのため、上記有害物質の安定化を図るためセメント固化法や薬剤処理法等が開発され実用化されているが、セメント固化法等によると埋立容積を減らすことができないため、堆積場の確保に関する問題点は未解決のままであった。また、飛灰とセメントとの混練処理により、飛灰に含まれている重金属の溶出はなくなる(環境庁告示第13号法による溶出試験)と報告されているが、酸性雨等の影響を考えた場合、セメントと混練した飛灰中の重金属類は必ずしも安定であるとはいいきれないものであった(菊池猛著「プラズマによるゴミ焼却灰の溶融処理による焼却残渣の無害化と生成スラグの資源化」PPM1992/5)。
【0005】
一方、焼却炉からの燃えがらや飛灰を溶融処理することにより、減容化やダイオキシン類の熱分解による無害化を図ることができるという報告がある(永田勝也著「都市ゴミ焼却炉におけるダイオキシン対策の現状と動向」廃棄物学会誌第3巻第3号)。
【0006】
しかしながら、上記溶融処理によると、蒸気圧の大きい鉛やカドミウム等の重金属は、炉内で揮発して排ガス中に入り、排ガスに入った重金属は排ガス処理設備内で凝縮し、再び飛灰となってしまうという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上述従来の技術の問題点を解決し、飛灰中に含まれている重金属を安定な形で分離することができる焼却炉および溶融炉からの飛灰の処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、飛灰をpH3以下において浸出し、残渣を濾別した後中和剤および硫化剤を添加し、生成した沈殿物を濾別することにより、上記課題が解決されることを見い出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、焼却炉および溶融炉から発生するナトリウムおよびカリウム、並びに亜鉛、銅および鉛等の重金属を含む飛灰の処理方法であって、上記飛灰を、そのまままたは塩酸や硫酸などの鉱酸(無機酸)を添加し、pH3以下において溶解することによって鉛以外の重金属を溶出せしめ、鉛を含む残渣を濾別し鉛の資源として処理する第一工程、上記第一工程において得られた濾液に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは水酸化カルシウムなどの中和剤を添加し、pH7以上に中和して亜鉛を主とする重金属の水酸化殿物を生成させると共に、この濾液に硫化ナトリウム、水硫化ナトリウムまたは硫化水素などの硫化剤を酸化還元電位−100mVまで添加して残りの重金属を硫化物として沈殿させ、これらの沈殿物を濾別し亜鉛の資源として処理する第二工程、および上記第二工程において得られた濾液を放流する第三工程からなることを特徴とする焼却炉および溶融炉からの飛灰の処理方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明法を、都市ゴミ焼却工場において焼却灰の溶融処理の際に発生する飛灰の処理方法を例にあげて具体的に説明する。
【0011】
まず、飛灰を水に溶解させてスラリーとし、このスラリーを撹拌しながら塩酸または硫酸等の鉱酸(無機酸)を添加してpHを3以下に調整する。なお、飛灰のpHはその組成によって異なるため、鉱酸の添加量は飛灰のpHに応じて調整する必要がある。すなわち、スラリーのpHは低いほうが後に得られる鉛残渣の鉛品位が高くなる傾向を示すため、飛灰の品位等に応じて最適pHを設定し、そのpHを得るべく鉱酸の添加量を調整すれば良いのである。また、上記スラリーのpHがすでに最適pHである場合には鉱酸を加える必要はない。さらに、上記pHを維持しての撹拌時間は少なくとも10分あれば良く、その時の温度は室温でよい。
【0012】
次いで、上記スラリーを濾過し、鉛を含有する残渣と鉛以外の重金属を含む水溶液とに分離する。なお、上記濾過において残渣に付着する浸出液を除去するためには、十分に水洗を行う必要があり、この作業は特に得られた残渣を資源として活用する場合に重要となる。
【0015】
次に、鉛および鉄が除かれた濾液に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは水酸化カルシウムなどの中和剤を添加してそのpHを7以上に調整することにより、亜鉛を主とする重金属の水酸化殿物を生成させ、その液中に重金属が残留している場合は、さらに該溶液中に硫化ナトリウム、水硫化ナトリウムまたは硫化水素などの硫化剤を添加することにより、残留する重金属を硫化物として沈殿させ、この溶液を濾過して亜鉛殿物と中和濾液を得る。
【0016】
上記のように本発明法においては、飛灰に含まれている重金属を、残渣(主に鉛を含有)、水酸化殿物(主に亜鉛を含有)、硫化殿物(主に鉛、亜鉛以外の重金属を含有)として分けて分離している。そのため、上記鉛を主として含有する残渣および亜鉛を主とする重金属の水酸化殿物は、非鉄金属の資源として活用することが可能である。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし本発明の範囲は以下の実施例により制限されるものではない。
【0018】
[実施例1] 本発明の飛灰の処理方法の一例を以下に示す。
【0019】
まず、3リットルビーカーに蒸留水2リットルを入れて撹拌しながら、飛灰100gを入れてスラリーとし、これにpH1になるまで塩酸を添加した。なお、pH調整後10分間は撹拌を続けた。次いで、このスラリーを濾過して残渣と濾液とに分け、得られた濾液に200g/lに濃度調整した水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH7まで中和し、さらに10g/lに濃度調整した水硫化ナトリウムを酸化還元電位で−100mVまで添加し、亜鉛を主とする重金属の水酸化殿物およびその他の重金属の硫化殿物を生成させた。
【0020】
次に、上記沈殿物が生成した溶液を濾過し、亜鉛殿物と中和濾液とに分けた(図1)。なお、上記中和などの際に用いた薬剤は、添加が容易にできる濃度に調整したものを使用した。
【0021】
上記のようにして得た残渣、沈殿物(亜鉛殿物)、中和濾液および飛灰におけるPb、Zn、Fe、Cd、NaO、KOおよびClの含有量(率)を調べ、その結果を表1に示した。
【0022】
【表1】
Figure 0003574928
【0023】
表1からもわかるように、飛灰に含まれている鉛および亜鉛等の重金属は安定な形でほぼ完全に分離されていた。また、残渣中の鉛品位は44.2%、沈殿物中の亜鉛品位は40.9%であり、これらは資源として非鉄製錬所で処理できるものであった。さらに、中和排水は排水基準を下回っており、直接、河川や海に放流できるものであった。
【0030】
【発明の効果】
本発明法の開発により、飛灰に含まれている重金属を安定な形で分離することができるようになった。また、本発明法によって分離された鉛を含む残渣と亜鉛を主とする重金属の水酸化殿物は、鉛および亜鉛の資源として活用することができるものであるため、有害な重金属を埋め立てることなく安全な処分を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法の一例を示すフローチャートである。

Claims (1)

  1. 焼却炉および溶融炉から発生するナトリウムおよびカリウム、並びに亜鉛、銅および鉛等の重金属を含む飛灰の処理方法であって、上記飛灰を、そのまままたは鉱酸を添加し、pH3以下において溶解することによって鉛以外の重金属を溶出せしめ、鉛を含む残渣を濾別し鉛の資源として処理する第一工程、上記第一工程において得られた濾液に中和剤を添加し、pH7以上に中和して亜鉛を主とする重金属の水酸化殿物を生成させると共に、この濾液に硫化剤を酸化還元電位−100mVまで添加して残りの重金属を硫化物として沈殿させ、これらの沈殿物を濾別し亜鉛の資源として処理する第二工程、および上記第二工程において得られた濾液を放流する第三工程からなることを特徴とする焼却炉および溶融炉からの飛灰の処理方法。
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