JP3850046B2 - 重金属含有廃棄物の処理方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、重金属含有廃棄物の処理方法に係り、特に、廃棄物中の鉛とカドミウムを鉄塩を用いて固定化する重金属含有廃棄物の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ焼却工場の焼却灰、集じん機で捕集した飛灰あるいは廃水処理工場から排出されるスラッジ、その他固形産業廃棄物には、各種の有害な重金属が含まれており、特に鉛とカドミウムの溶出が問題になっている。
また、都市ごみ焼却炉の飛灰は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正に伴い、平成7年4月1日以降は、前記重金属を不溶化処理しなければ埋立処分ができなくなった。
従来、不溶化処理対策としては、下記の方法が提案されている。
▲1▼ セメント固化法
廃棄物をセメントと混合し、さらに少量の水を添加したのち、混練して固化する方法である。本法の原理はセメントの強アルカリ性による重金属イオンの不溶出化、セメントゲル生成による物理的封じ込め作用に基づいている。
【0003】
▲2▼ 溶融固化法
廃棄物をその融点以上(1300〜1500℃)の温度で加熱処理し、ガラス状のスラグとして回収する方法である。不溶化の原理は、重金属類がガラスのマトリックスに封じ込められる作用にもとずいている。
▲3▼ 液体キレート添加法
廃棄物を液体キレートと混合し、さらに小量の水を添加したのち、混練する方法である。不溶化の原理は、重金属が不溶性のキレート化合物になることにもとずいている。
▲4▼ フェライト化処理法
重金属を含む廃棄物を鉄塩の存在下にOH基を有するアルカリを加えて混合したのち、該混合物を300℃未満の温度に保持する(特公昭61−47154号公報)。
この不溶化の原理は、重金属を不溶性のフェライト化合物にすることにもとずいている。
【0004】
ところが、上述した従来の処理法には次のような問題点がある。
▲1▼ セメント固化法は、比較的簡単な設備で運転コストが低いことから、最も多く実施されている処理法である。前述したように、重金属の不溶化の原理は、セメントの強アルカリ性による重金属イオンの不溶化、及びセメントゲルによる物理的封じ込め作用であるか、飛灰中に含まれる重金属の種類及び化学組成によっては全く不溶化できないケースが生じている。重金属類は、一般にアルカリ性(pHを高くする)が高いほど水酸化物として沈澱し不溶化されるが、例外として、pH値が高すぎるとPbは亜・鉛酸イオン(HPbO2 - )、Znは亜・亜鉛酸イオン(HZnO2 - )として溶解する。従って、アルカリ含有飛灰に本法を適用すると、飛灰中にもともと含有されているアルカリ物質に、さらにセメント中のアルカリが加えられるため、逆にPbとZnの溶出量が増加する傾向がみられる。また、セメントゲルによる封じ込めは、NaCl、KCl、CaCl2 等のアルカリ金属塩、アルカリ土金属塩を多く含む飛灰(主として、都市ごみ焼却炉飛灰)に適用した場合、セメントの水硬化反応が阻害され、そのためセメントゲルの生成が不完全となり、重金属類の物理的封じ込めも困難となる。
【0005】
▲2▼ 溶融固化法は、1300〜1500℃の高温で処理しなければならないため、エネルギー多消費型であり、また高温作業での危険性が伴うため、設備の運転には熟練した技術者が必要である。さらに溶融処理工程において、全ての重金属がガラスのマトリックスに封じ込められるのではなく、低沸点の重金属(Cd,Pb,Zn,Hg等)は再揮発するため、再度飛灰となって捕集され、いわゆる溶融炉飛灰となって排出される。この溶融炉飛灰は、焼却炉飛灰よりも高濃度の重金属が含まれるため、さらに不溶化処理が困難となる。
【0006】
▲3▼ 液体キレート添加法は装置の簡易さ、メンテナンスの利点があるため、導入しやすいシステムである。しかし、キレート剤の高価なためランニングコストが高くなり、また、キレート剤は有機物質であるため埋立地において微生物により分解をうけるため、長期的安定性に問題がある。さらに液体キレートはそれ自体は無害であるが、未反応のキレートが埋立地より流出すると、動植物に必要な有用金属をもキレート化するため利用できなくなり、環境に対する二次公害も懸念されている。
▲4▼ フェライト化処理法は、空気酸化が必要であるため、反応時間が長くなり、さらに加熱処理等を考慮しなければならない。従って、設備が大型化するとともに運転コストが高くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、廃棄物に含有される有害な重金属、特に鉛とカドミウムの溶出を簡単な方法で、安価で、長期にわたり安定して防止でき、しかも埋立地での酸性雨等を考慮して、酸性域でも安定な処理方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、少なくとも鉛とカドミウムを同時に溶出する廃棄物であって、焼却炉排ガス又は炉内に有害ガス除去用アルカリを添加して得られるアルカリ飛灰に、鉄塩を、飽和以上の状態に維持した水溶液として、その添加混練時のpHが7〜12(10wt%スラリー換算)の範囲となる量に調整して添加し、加熱することなく混練して含湿状態ないしペースト状を呈する湿潤状態とする廃棄物の処理方法としたものである。
【0009】
本発明において、使用される鉄塩としては、硫酸第一鉄(FeSO4 )、硫酸第二鉄(Fe2 (SO4 )3 )、塩化第一鉄(FeCl2 )、塩化第二鉄(FeCl3 )、ポリ硫酸鉄({Fe2 (OH)n (SO4 )3-n/2 }n )等の薬品の他、鉄金属表面の酸洗い、酸化チタン製造の際に大量に生じる副産物の塩化第一鉄、硫酸第一鉄を用いることができる。
鉄塩の添加量は廃棄物の成分、含まれる重金属の種類や量によって異なり、事前に実験によって定めるべきであるが、廃棄物100部(乾燥重量)に対してFeとして1〜300部でよい。また、鉄塩は溶液状、固体状のいずれでも使用可能であるが、固体状の場合は混練のために少量の水を添加する必要がある。
【0010】
反応時のpHは、添加混合後の液相のpHによって決定される(液相のpHは、混合物に対して約10倍量の水を添加し混合して、そのときの液相のpHを測定することによる)。本発明におけるpHの適用範囲は、7〜12である。鉄塩は強酸と弱塩基とからなる塩であるため、その水溶液は酸性を呈する。(FeSO4 の250g/リットルの水溶液:pH1.9、ポリ硫酸鉄水溶液(Feイオンとして160g/リットル):pH0.8)。従って、高アルカリ飛灰であっても、鉄塩を単独で添加するだけで、至適pHに達することができる。
【0011】
一方、鉄塩と廃棄物の混練状況は、含湿状態又はペースト状を呈していれば十分であり、混練時の水分、混練時間は重金属の固定化性能に大きな差異はなく、水分は湿重量基準の含水率で10〜40%程度、混練時間は5分〜20分で十分である。その理由は、本法に用いられる鉄塩は溶出試験時に溶液中に拡散して重金属を不溶性にする働きがあるからである。
なお、鉄塩を水溶液の状態で添加する場合は、該鉄塩はできるだけ濃厚な状態で作成するのが望ましい。
【0012】
すなわち、稀薄溶液で添加した場合は、所望の鉄イオンを添加する際に同伴される液体量が過多となり、混練物から液体成分が分離・流出する恐れが生ずる。分離や流出を起こすような状態では鉄塩が有効に使用されず、また、処理後にろ過等の手段を講じる必要があって本来の目的を外れることになり、ろ液の処理が問題となる。
従って、鉄塩は飽和以上の状態に維持した溶液で作成するのが望ましい。例えば、硫酸第1鉄(FeSO4 )は常温において20%以上、塩化第2鉄(FeCl3 )は同48%以上で作成する。さらに、市販のポリ硫酸第2鉄水溶液(Fe3+11.0%以上)や塩化第2鉄水溶液(FeCl3 37%)に粉末状の硫酸第1鉄や塩化第2鉄を溶解せしめて、飽和以上の状態に維持した溶液とすることも可能である。以上、できるだけ濃厚な状態で添加すれば、液体の容量が少なくてすむため、分離、流出が抑制できる。この場合、液体量が少なすぎて、含湿状態とならない場合は、別途水を添加して調節することができる。
【0013】
【作用】
本発明方法によって廃棄物中の重金属が不溶性になる原理の詳細は不明であるが、鉄塩と前記廃棄物中に含まれるアルカリ分が作用し、水酸化鉄沈澱を形成する。
そして、廃棄物中に含まれる微量の重金属類は水酸化鉄の結晶格子のFeイオンと置換して取り込まれるものと考えられる。例えば、鉄塩が第1鉄の場合は、下記▲1▼式の反応により、鉄塩が第2鉄の場合は下記▲2▼式の反応がおこり、重金属の不溶化が可能となる。
xM2++yFe2++2(x+y)OH- →Mx Fey (OH)2(x+y)
・・・・・ ▲1▼
xM2++yFe3++2(x+ 3/2y)OH- →
Mx Fey (OH)2(x+3/2y) ・・・・・ ▲2▼
ここで、MはPb,Cd,Zn.Hg等の重金属を示す。このように、本発明は、重金属に鉄塩を作用させることによって、重金属と鉄の混合水酸化物あるいはこれらの固溶体が生成することにより、重金属は不溶化される。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
消石灰を排ガスに添加して、排ガスと反応させたのちの飛灰を用いて、各種テストを行った。飛灰の化学組成を表1に、環境庁告示第13号による飛灰の溶出試験結果を表2に示す。
【表1】
表 1
(wt%)
(mg/kg)
【0015】
【表2】
表 2
(mg/リットル)
表1に示すように、本飛灰は消石灰に起因する多量のアルカリ(CaOとして分析値を表示)が含まれており高アルカリ飛灰でありそのpHは13.0であった。本飛灰100gに対して濃度250g/リットルのFeSO4 水溶液を添加し、所定量のFe添加率で混練処理した。混練時間は15分である。結果の一覧を表3に示す。
【0016】
【表3】
表 3
【0017】
表3に示すように、飛灰100に対して9部以上のFeを添加すれば全ての有害重金属を検出限界以下(ND)とすることができる。なお、前述したように、鉄塩の溶液は酸性を呈するため、その添加量に応じてpHは酸性に移行する。極端に酸性側に移行すると表3に示すようにPbとCdは溶出する傾向にあり、特にCdはその傾向が著しい。
そこで、表3の結果にもとずき、鉄塩添加時の最適pHについて検討した。その結果を図1に示す。なお、比較のために、鉱酸(H2 SO4 )のみでpH調整した試料についても溶出テストした。図1に示したように、PbとCdが同時に埋立基準値(総理府全第5号、昭和48年)を満足するためのpH範囲は7〜12である。
一方、鉱酸で処理した場合は本発明よりも溶出量が大きく、しかもCdとPbが基準値を同時に満足するpH領域はみあたらない。したがって、本発明は単にpHの変化のみで、重金属の溶出を防止しているものではない。
【0018】
実施例2
国内での溶出試験方法(環境庁告示第13号)は初期pH5.8−6.3の脱イオン水を用い、溶出時間内のpHの変動は何ら考慮されていない。そこで、米国のEP−Toxの方法(酢酸を用いて常にpH≦5に維持する)を用いてテストすることにより、酸性域での溶出性を検討した。
本法は、酸性雨等についても考慮したものである。
試料はFe添加率18、反応時のpH10で作成したものである。その結果を表4に示す。
【表4】
表 4
単位(mg/リットル)
【0019】
表4に示すように、EP−Toxの方法においても国内の基準値以下にすることができる。
これらの結果を、公知のセメント固化法、キレート法と比較した結果を表5に示す。
【表5】
表 5
【0020】
表5に示したように、本発明では全ての重金属の溶出を防止できる。コストはセメント固化法が最も安価であるがPbの溶出防止ができない。キレート法は添加量を多くすれば、何とか基準値以下にすることができるが、極めて高いコストになる。
なお、上記実施例では全て第1鉄塩(FeSO4 )を用いているが、第2鉄塩、例えばFeCl3 、ポリ硫酸鉄を用いても同様の効果が認められた。
【0021】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、加熱等の特別の処理をする必要がなく、安価な薬品の添加による攪拌・混練という簡単処理により、全ての重金属の溶出を長期に安定して防止できた。また、埋立地での酸性雨により、酸性域となった場合でも重金属の溶出を基準値以下に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鉛とカドミウムのpHによる溶出量の変化を示すグラフ。
Claims (1)
- 少なくとも鉛とカドミウムを同時に溶出する廃棄物であって、焼却炉排ガス又は炉内に有害ガス除去用アルカリを添加して得られるアルカリ飛灰に、鉄塩を、飽和以上の状態に維持した水溶液として、その添加混練時のpHが7〜12(10wt%スラリー換算)の範囲となる量に調整して添加し、加熱することなく混練して含湿状態ないしペースト状を呈する湿潤状態とすることを特徴とする廃棄物の処理方法。
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JP19378894A JP3850046B2 (ja) | 1994-07-27 | 1994-07-27 | 重金属含有廃棄物の処理方法 |
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JPH0839038A JPH0839038A (ja) | 1996-02-13 |
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-
1994
- 1994-07-27 JP JP19378894A patent/JP3850046B2/ja not_active Expired - Lifetime
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