JP2013160666A - 放射性セシウムを含有する焼却灰の安全な処分方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】放射性セシウムを含有する焼却灰を安定に管理もしくは処理するための方法を提供する。
【手段】 放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される、放射性セシウムを含有する焼却灰を水に溶出させたセシウム溶解水又は該焼却灰から溶出したセシウム溶解水を、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子をセシウム吸着材として使用し、除染する方法
【選択図】図1

Description

本発明は、放射性セシウムを含有する焼却灰から放射性セシウムを抽出、安定に処理できるように行う方法である。
原子力発電所の事故の際には、大量の放射性物質が環境に飛散することがある。中でも、放射性であるセシウム134とセシウム137は遠距離まで飛散することが知られており、その対策が大きな課題となる。実際、2011年3月に起こった福島第一原子力発電所の事故でも、ある程度距離が離れた地域では、ある程度時間が経った後に問題となっているのはこの二つの放射性物質だけである。
放射性セシウムは様々なものに吸着し、その除染が必要となる。その中でも、可燃物については、焼却を行うことで体積を下げる減容処理を行うことが望ましい。放射性セシウムを含有する汚染物を焼却すると、放射性セシウムを含有する焼却灰が発生するため、その管理方法が重要である。特に、水との接触により放射性セシウムが溶出するかどうかが重要な点である。非特許文献1には、焼却灰の種類により、放射性セシウムの水への溶出挙動が大きく異なることが報告されている。都市ゴミ焼却灰の飛灰からは、ほぼ全量の放射性セシウムが水に溶出する。一方、都市ゴミ焼却灰主灰及び下水汚泥焼却灰からは水への溶出はほとんど見られない。都市ゴミ焼却灰飛灰の処理においては、水との接触のない形式にすることが必要となる。
焼却灰飛灰については、群馬県伊勢崎市の一般廃棄物最終処分場に埋設した際に、降雨により浸水した結果、浸出水より放射性セシウムが検出された(非特許文献2)。一方、このような飛灰から放射性セシウムを溶出させた液体の除染には、セシウムイオンを吸着する吸着材を使用することが考えられる。しかしながら、液体中に様々な共存イオンが存在する場合には、放射性セシウムだけを選択的に吸着しなければ、他のイオンを吸着してしまい、従来想定される吸着容量を確保できない等の課題がある。
例えば、非特許文献1によると、都市ゴミ焼却灰飛灰を水洗した後の洗浄水からの放射性セシウムについて、セシウム吸着能を持つことで知られるベントナイトで吸着試験を行ったところ、吸着能を示す分配係数Kdがセシウム137の場合で64.1mL/gであった。
ここで、分配係数とは以下の式で与えられるものであり、吸着能を示す一般的な指標として用いられるものである。

Kd=(ρi−ρf)/ρf × V/m

ρi:初期の液体中セシウムイオン濃度
ρf:吸着後の液体中セシウムイオン濃度
V:液体の体積
m:吸着材の重量

一方、蒸留水に溶かしたセシウム137のみの溶液の場合は、6200mL/gであり、共存イオンの存在により、吸着能力が約1/100に低下することが報告されている。
このため、放射性セシウムを含む液体中に、他のイオンが存在する場合には、吸着材の吸着能力が低下し、結果として大量の吸着材を使用する必要が生じる。
2011年環境省災害廃棄物安全評価検討会第5回資料 [http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/05-mat_1.pdf] 2011年環境省災害廃棄物安全評価検討会第7回資料 [http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/07-mat_1.pdf]
上記の問題を解決するには、セシウム選択性、即ち共存イオンが存在してもセシウムイオンだけを吸着する吸着材が必要となる。このような吸着材として知られるのは、金属ヘキサシアノ鉄錯体と呼ばれる一群の物質である。
金属ヘキサシアノ鉄錯体は、組成式がAxM[Fe(CN)6y・zH2Oで表される。代表的なものに、M=Feのプルシアンブルー(紺青)がある。プルシアンブルーは、チェルノブイリ事故後に家畜にセシウムの内部被曝薬として投与された実績がある。また、M=Co、Niなども、原子力施設においてセシウム吸着材として使用されている。
これらを焼却灰と接触し、放射性セシウムが溶解した液体の除染に使用することは可能である。
しかしながら、課題として、原子力発電所事故により環境中に大量に飛散した場合には、生じる焼却灰の量も大量になることなどから、より吸着能の高い吸着材が必要となる。また、焼却灰の処理法に関しても、処分後の浸出水除染に加え、より効率的な方法も求められている。
さらには、森林等の汚染植物体についても、焼却処分を行う方針が示されている。しかしながら、植物体を焼却した焼却灰については、それに含まれる放射性セシウムに関し、水と接触した際の挙動が知られていない。この挙動を明らかにした上で、適切な管理方法を確立することが望まれている。
本発明は、こうした当該技術分野の現状を鑑みてなされたものであって、焼却灰と水が接触し、放射性セシウム含有水が生じ、その取り扱いに課題が発生することを解決するため、焼却灰由来の放射性セシウム含有水を除染する効率的な方法を提供することを目的とするものである。さらには、焼却灰からの放射性セシウム溶出を低下させ、より安定に管理するための手法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セシウム吸着材としてプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を使用することにより、放射性セシウムを含有する焼却灰を水に溶出させた/もしくは溶出したセシウム溶解水の放射性セシウムを効率的に除去しうるという知見を得た。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰に液体が接触することにより生成された放射性セシウムが溶出している液体から、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子を用いて放射性セシウムを除去することを特徴とするセシウムの除去方法。
[2]放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰を、水に接触させて放射性セシウムを溶出せしめた液体を得、その液体からプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を用いて放射性セシウムを除去することを特徴とするセシウムの除去方法。
[3]前記水の温度が30℃以上であることを特徴とする[2]に記載のセシウムの除方法。
[4]前記プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の一次平均粒径が3〜30nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のセシウムの除去方法。
[5]液体からプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を用いて放射性セシウムを除去する前に、液体のpHを9以下にする処理を施すことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のセシウムの除去方法。
[6]液体のpHを9以下にすることにより前記液体中に析出する沈殿物を濾過により除去することを特徴とする[5]に記載のセシウムの除去方法。
[7]前記放射性セシウムの除去処理を行う際に、前記プルシアンブルー型錯体ナノ粒子を造粒したものもしくは有機物に坦持させたものをカラムに充填し、該カラムに前記液体を通水することにより処理を行うことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のセシウムの除去方法。
[8]前記放射性セシウムの除去処理を行う際に、前記プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の粉末、懸濁液、もしくは分散液を、放射性セシウムの溶出する液体に添加することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のセシウムの除去方法。
本発明を利用することにより、水との接触により、水へ放射性セシウムが溶出する焼却灰の処分が容易となる。森林、農地等に存在する植物系放射性セシウム汚染物の除染も焼却後の管理を含め、作業の加速が期待できる。
具体的には、放射性セシウムを仮置き場や最終処分場にて管理する場合、その浸出水中の放射性セシウム除去を、より少ない吸着材で実行することができ、結果として排出される放射性廃棄物の量を著しく減少させることができる。また、仮置き場や最終処分場における管理の前に、水洗処理を行うことにより、管理時の放射性セシウム溶出の可能性を大きく低減させることが可能となる。
実施例2において、通水液を25mL毎に分集し、それぞれの非放射性セシウムイオン濃度を測定した結果示す図 実施例3に用いたスタティックミキサーを模式的に示す装置説明図 吸着材に、本発明のナノ粒子(平均粒径11μm、及び平均粒径60μm)、市販品の紺青、及び愛子産ゼオライトを用いた場合の、吸着固液比と吸着量の関係を示す図
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の対象となる焼却灰は、水との接触により、放射性セシウムが溶出するものであればその種類を問わない。放射性セシウムの溶出が一部であっても、処理後の水との接触により、再溶出の可能性が低減できる効果が期待できる。また、より高温で処理した溶融スラグや、焼却灰に固化などの処理を加えたものでも、同様に放射性セシウムが水により溶出するものであれば同様の処理が可能であり、本発明においてはこれらも焼却灰と呼ぶ。具体的には、都市ゴミを焼却した際に生じる主灰、飛灰、もしくはそれらの処理物、また、下水汚泥焼却灰や、除染に際し生じる植物体や、マスク、手袋等の放射性セシウムを含む廃棄物の焼却によって生じる焼却灰も含まれる。
本発明において、放射性セシウムが溶出した水、或いは、放射性セシウムを溶出せしめた水から、放射性セシウムを除去することが肝要である。
本発明の方法の具体的利用法として、以下の二つがあげられる。
[方法1]
焼却灰などを、仮置き場、中間貯蔵施設、最終処分場などにおいて管理もしくは処分する場合において、浸出水を安全に除染することにより、環境中に放射性セシウム溶解水を排水することを避ける方法。
該方法の場合、多くは降雨等、地下水による水との接触が浸出水の原因となる。
[方法2]
仮置き場、中間貯蔵施設、最終処分場などにおいて管理する前に、液体による洗浄を施し、水に放射性セシウムを溶解させた後に吸着材で処理する方法。
[方法1]及び[方法2]は、共に、放射性セシウムが溶解した液からの放射性セシウムを除去、回収することが必要である。
[方法2]では、その前処理として、焼却灰の水による洗浄工程を伴う。
よって、本発明を用いた方法は、以下の、工程A、工程B、工程C、及び工程Dからなる。
工程A:焼却灰と水を接触させ、水に放射性セシウムを溶解させる工程
工程B:放射性セシウムを溶解させた水から、吸着材によって放射性セシウムを回収する工程
工程C:放射性セシウムを除去した水を排水もしくは適切に管理する工程
工程D:焼却灰を管理もしくは処分する工程
この場合は、放射性セシウム溶解水を積極的に作製することで、以後の放射性廃棄物からの放射性セシウム溶解を低減させる。ただし、工程Dを最初に行い、その場で工程A即ち洗浄を行うなど、必要に応じて工程の順番を変えることは可能である。
一方、[方法1]の場合、まず工程Dを行い、その後工程Bおよび工程Cを行う。即ち、仮置き場等でまず管理もしくは処分を行い、降雨や地下水等との接触による放射性セシウムの溶解が発生した際に、その放射性セシウム溶解水を処理することが主たる工程となる。
以下、工程毎に詳細に説明する。
〈工程A〉
工程Aにおいて使用する水とは、水分が70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がより好ましい。水分以外の組成物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウムなどの塩、亜硝酸、亜硫酸などの酸、水酸化カルシウムなどの塩基、界面活性剤、アルコール等を含んでいてもよい。また、浮遊物質などについても、洗浄の妨げにならなければ含まれていてもよい。
焼却灰と水を接触させる方法は、焼却灰と水が接触すればよく、その方法を問わないが、効率的に放射性セシウムを水に溶解させることが必要である。例えば、攪拌槽において焼却灰と水を混合攪拌する方法、カラム状のものに焼却灰を充填し、通水する方法などが挙げられる。
使用する水量/焼却灰重量を洗浄固液比と定義した場合、その洗浄固液比についても、効率的な溶解が達成されれば特に制限はないが、0.2以上が好ましく、1以上が特に好ましく、3以上がより好ましい。上限に特に制限はないが、1000以下が実際的である。
温度については、高い方が水への溶解が促進されるため望ましいが、処理後の管理方法などによっては、必ずしも高い温度を使用する必要はない。具体的には、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、35℃以上が特に好ましい。温度の下限としては、凍結しなければ特に制限はない。
〈工程B〉
工程Bは、放射性セシウム溶解水とプルシアンブルー型ナノ粒子吸着材を接触させ、水から放射性セシウムを取り除く工程である。
使用するプルシアンブルー型ナノ粒子吸着材はプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を含むものであればよい。プルシアンブルー型錯体ナノ粒子とは、組成がAxM[Fe(CN)6y・zH2Oと書けるものである。
ここでAは陽イオンであり、カリウム、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、アンモニアなどが利用でき、さらにはそれらの混合でもよい。
Mは金属原子であり、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀などが使用できる。一般的に結晶構造は立方晶であるが、三方晶、正方晶などを取る材料もあり、特に制限はなく、放射性セシウムを水から除去する能力があればよい。
また、Fe(CN)6はヘキサシアノ鉄イオンであり、その一部が水や水酸化物イオンなど置換されている、もしくは配位数(この場合6)は、その一部が2〜8に変更されていてもよい。
プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の一次平均粒径は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、10nm以下が特に好ましい。具体的には、特開2006−256954号公報及び国際公開第2008/081923号に記載の表面処理が施されていない水不溶性ナノ粒子又は同表面処理を施した水分散性ナノ粒子、或いは特願2012−12458号出願明細書に記載のナノ粒子が使用できる。ここでいう粒径の測定法については、実施例に記載の方法に従うこととする。
また、使用上の便宜から、さらに大きな二次粒子に造粒されていてもよい。さらに言えば、形成上の都合などの理由により、他の材料との複合体であってもよい。例えば、不織布、綿布等の有機物に坦持させた形状や、高分子もしくは酸化物などをバインダとして使用した複合体であってもよい。この場合、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の含有量としては、0.1%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上が特に好ましい。
放射性セシウム溶解水は、主成分が水であればよく、具体的には水分が70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がより好ましい。水分以外の組成物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウムなどの塩、亜硝酸、亜硫酸などの酸、水酸化カルシウムなどの塩基、界面活性剤、アルコール等を含んでいてもよい。また、浮遊物質などについても、洗浄の妨げにならなければ含まれていてもよい。
プルシアンブルー型錯体ナノ粒子吸着材の使用量については、処理法によって大きく変化するが、当該吸着材は放射性セシウムと非放射性セシウムの区別をして吸着することはできないため、安定セシウムを含めたセシウム全量で使用量を決めることが好ましい。例えば、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子吸着材と、放射性セシウム溶解水を混合、攪拌することにより、水中のセシウムイオンを回収する場合、溶解水重量/吸着材重量を吸着固液比と定義すれば、吸着固液比は100以上であることが、放射性廃棄物減量の観点から好ましく、500以上であることがより好ましく、1000以上であることが特に好ましい。上限については、十分に放射性セシウムを吸着すれば特に制限はないが、100億以上が実際的である。吸着量は、攪拌の仕方や、攪拌時間により大きく変化するため、吸着材の量と、それらの条件を最適化することが重要である。具体的には、吸着固液比として1000万以下が実際的である。
また、吸着材をカラムに充填し、通水する手法も使用できる。この場合、攪拌より効率的に吸着材と溶解水を接触させることができるため、より少量の吸着材で処理を行うことが可能である。具体的には、溶解水に含まれるセシウムイオン(放射性、非放射性含む)の重量の3倍以上のプルシアンブルー型錯体ナノ粒子吸着材を使用することが好ましく、5倍以上がより好ましく、10倍以上がより好ましい。
また、吸着処理前に放射性セシウム溶解水の前処理を行うことも可能である。例えば、pHを調整することで、より安定的に本工程を実施することが可能である。例えば、代表的なプルシアンブルー型錯体であるプルシアンブルーはアルカリ性中で分解することが知られている。この場合、事前に中和処理を施し、pHを9以下、好ましくは、8.6以下にしてから吸着処理を施すことが好ましい。この際に、沈殿等が生じる場合があるが、その場合は沈殿を事前に濾過等で除去してから吸着処理を行うことができる。また、不織布等形状の吸着材を使用するなど、沈殿と吸着材の分離が可能であれば、沈殿濾過等の分離工程は不要である。
吸着処理時の温度については特に制限はないが、常温で実施することが実際的である。
〈工程C〉
放射性セシウムを除去した水は、適切に管理もしくは排水することが可能である。この場合、環境基準等に適合させるために、放射性セシウム以外の含有イオン等の処理については、通常使用されている手法を用いることができる。また、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の構成要素であるヘキサシアノ金属イオンが溶出する場合にも、鉄イオンを添加して沈殿濾過するなど、適切に除去することで排水等が可能となる。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。また、一般に放射性セシウムと非放射性セシウムの化学的挙動に違いはないと考えられているため、一部の実施例は、非放射性セシウムを使用して行った。
<実施例1>
(焼却灰の洗浄1:都市ゴミ焼却灰)
ガス化溶融施設で都市ゴミ焼却により得られた飛灰をガンマ線スペクトロメーター(LB 2045 ベルトールド製)で測定したところ、サンプルの放射性セシウムの濃度は1541Bq/kgであった。この灰50gをカラムに充填し、通水洗浄を行った。240mLの水を、1mL/minで通水し、洗浄水の濃度を測定したところ、195Bq/kgであった。これは、灰中の放射性セシウム77Bqのうち、615の47Bqが水に溶出したことを示している。
さらに1000mLを通水洗浄したところ、洗浄水の濃度は9Bq/kgとなった。このことは、通水の初期240mLに対し、次の1000mL中の放射性セシウム濃度は約5%であり、通水により、その後のセシウムの水への溶出を著しく減少させることが可能であることを示している。
<実施例2>
(焼却灰の洗浄2:樹木)
針葉樹である杉を50kg/hの処理能力を持つ熱風炉で焼却した飛灰5gをカラムに充填し、5mL/minの流速で通水した。通水液を25mL毎に分集し、それぞれの非放射性セシウムイオン濃度を測定した結果を図1に示す。
セシウムイオン濃度は、得られた液体を遠心分離器で5000rpm、10分処理した後、固液分離し、誘導結合プラズマ質量分析装置 NexION 300D(商品名、株式会社パーキンエルマージャパン社製)セシウムは通水初期に水に溶解し、その後はほとんど溶解しないことがわかった。これより、水洗処理を行うことで、その後の水との接触によるセシウム溶出を低減できることがわかる。また、得られた洗浄水の金属イオン濃度を調べたところ、カリウムイオンが2000ppm以上含まれており、大量の共存イオンが存在することがわかった。また、設定温度により、水に溶解したセシウム量は飛灰1gあたりで、25℃(−■−)、40℃(−●−)、90℃(−▲−)でそれぞれ390ppb、817ppb、880ppbであった。これより、温度を上げることにより、より多くのセシウムが水へ溶解することがわかる。
<実施例3>
(プルシアンブルー型錯体ナノ粒子吸着材の製造)
プルシアンブルー型錯体ナノ粒子は、特願2012−12458号出願明細書に記載の方法で準備した。具体的には以下の通りである。
フェロシアン化ナトリウム・10水和物(分子量484.07)を水に溶解した水溶液[反応液1]を準備した(濃度:0.24g/mL)。これとは別に、硝酸鉄・9水和物(分子量403.99)を水に溶解した水溶液[反応液2]を準備した(濃度:0.54g/mL)。
図2に示すスタティックミキサーを用い、流体F1を前記反応液1として、流体F2を前記反応液2として装置内に導入した。このとき、攪拌部を構成する装置部分には、(株)ノリタケカンパニーリミテッド社製、1/4−N30−232−F(商品名)を用いた。混合部の流路の等価直径は10.5mmであり、全長は200mm、邪魔板は12枚であった。装置内への反応液の導入量は、反応液1(F1)を3.33L/minとし、反応液2(F2)を1.67L/minとした。
これで得られたスラリーをスプレードライヤで乾燥、造粒した。スプレードライヤは日本ビュッヒ社製 B−290(商品名)を用いた。運転条件は、熱風の入口温度:180℃、分散液の供給速度を10ml/minとした。分散液を二流体ノズルで熱風中に霧化して乾燥粉を得た。
これを水洗して副生成物である硝酸ナトリウムを除去した。スプレードライ粉100gを水2Lに加え、撹拌したのちろ過した。ろ過ケーキに水をかけて水洗したのち、メタノールをかけた。乾燥機で乾燥して硝酸ナトリウムを除去した粉末P101を得た。サイクロンで回収した粒子の洗浄後の平均粒径は11μm(凝集粒径)であった。なお、粒径(体積径)は装置:LA−920(商品名 株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、前処理として、フローセルに入れた水に試料を加え、超音波処理を行った。
また同様の手法で、スプレードライヤとして、GEAプロセスエンジニアリング株式会社製 SD−25N/R(商品名)を用いた。運転条件は、熱風の入口温度:180℃、スラリーの供給速度を1.5l/minとした。分散液をロータリーアトマイザで熱風中に霧化して乾燥粉を得た。これを水洗してP102を得た。P102の洗浄後の平均粒径は60μmであった。
<実施例4>
実施例3で作成した不溶性粉末P101およびP102を使用し、セシウム吸着実験を行った。実施例2で得られた通水液に硝酸セシウムを添加し、セシウム濃度を1ppmに調整後、硝酸を添加することでpHを7とする中和処理を施し、沈殿物を濾過により除去することで水溶液L101を得た。濾過物除去後のセシウム濃度の減少は見られず、濾過物へのセシウム移行はなかった。この水溶液L101に、粉末P101及び粉末P102を浸漬させ、600rpmで100分間浸透したのち、遠心分離器で5000rpm、10分処理した後、固液分離し、誘導結合プラズマ質量分析装置 NexION 300D(商品名、株式会社パーキンエルマージャパン社製)で、溶液中のセシウムイオン濃度を測定した。
また、比較対照として、市販品の紺青(C101)、及び愛子産ゼオライト(C102)を用いて同様の試験を行った。また、吸着材量を変更することにより、吸着固液比を変えた際の結果を図3に示す。これより、紺青(−▲―)、愛子産ゼオライト(−▼−)に比べ、本発明のナノ粒子吸着材P101(−■−)、P102(−●−)の吸着効率が高い事がわかる。これは、より少量の吸着材で、焼却灰洗浄水中からセシウムイオンを除去できることを示している。

Claims (8)

  1. 放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰に液体が接触することにより生成された放射性セシウムが溶出している液体から、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子を用いて放射性セシウムを除去することを特徴とするセシウムの除去方法。
  2. 放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰を、水に接触させて放射性セシウムを溶出せしめた液体を得、その液体からプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を用いて放射性セシウムを除去することを特徴とするセシウムの除去方法。
  3. 前記水の温度が30℃以上であることを特徴とする請求項2に記載のセシウムの除方法。
  4. 前記プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の一次平均粒径が3〜30nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセシウムの除去方法。
  5. 液体からプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を用いて放射性セシウムを除去する前に、液体のpHを9以下にする処理を施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセシウムの除去方法。
  6. 液体のpHを9以下にすることにより前記液体中に析出する沈殿物を濾過により除去することを特徴とする請求項5に記載のセシウムの除去方法。
  7. 前記放射性セシウムの除去処理を行う際に、前記プルシアンブルー型錯体ナノ粒子を造粒したものもしくは有機物に坦持させたものをカラムに充填し、該カラムに前記液体を通水することにより処理を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセシウムの除去方法。
  8. 前記放射性セシウムの除去処理を行う際に、前記プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の粉末、懸濁液、もしくは分散液を、放射性セシウムの溶出する液体に添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセシウムの除去方法。
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