JP4994509B1 - 放射性物質を含む下水汚泥中の放射性物質を集約する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】既存の放射線物質による汚染に対処する。
【解決手段】放射性物質を含む下水汚泥を爆砕処理、水熱処理、または、水熱処理及び爆砕処理する工程を経た後、少なくとも液分中の放射性物質を吸着剤により吸着させる工程からなり、放射性物質を含む下水汚泥中の放射性物質を集約する。
【選択図】なし

Description

本発明は固体核燃料を用いる原子力発電所の事故や核兵器テロ、原爆実験などで汚染された下水汚泥中の放射性物質を集約する方法に関する。
固体核燃料を用いる原子力発電や核兵器テロ、原爆実験などはウラン235やプルトニウム239の原子核を人工的に破壊する核分裂反応に依る。その際、ウラン235やプルトニウム239の原子核は粉々の破片に分かれる。これらの破片の殆どは非常に放射能レベルが高い人工放射性核種である。これらの人工放射性核種は半減期が短いものが多い。例えば放射性クリプトンや放射性キセノンは常温でも気体であり、これらを主成分とする放射性雲が通過中に強烈な放射線を放射するが、放射能雲の通過後には残らない。また、沃素131は半減期が8日なので半年後には殆ど消滅する。
しかしながら、セシウム137は678℃で気体になるため、原発事故で放出されやすく、しかも半減期が30年と長い。またセシウムは土壌粒子と結合しやすいため長い間地表から流されない。このため、短寿命の放射性核種や沃素131が消滅した後にも残り、地面から放射線を放ち続け、農作物にも取り込まれて、長期汚染の原因になる。1960年代末までの大気圏核実験によって1億500万京ベクレルという、膨大な核分裂生成物がばらまかれ、地球全体を汚染した。核実験によるセシウム137は、現在も海水・地表・大気中に残っている。またチェルノブイリ原発事故では、直径約250kmの範囲にわたり、高濃度汚染地域が点在している。さらに福島原発事故でも原発から遠く離れた静岡県の茶にもセシウムが検出された。
また、ストロンチウム90も半減期が28年であり、セシウム137と同様の問題がある。よって、放射性物質の汚染を考慮する上では、セシウム137とストロンチウム90を主として対策をとればよい。
このような厄介な放射性セシウム137とストロンチウム90で汚染された、生活空間にある物体から放射性物質を除去し、放射線物質を特定領域に集約する方法としては、自然界にある放射能セシウム137と放射性ストロンチウム90を表面に付着する物質を水中に入れ、水に溶ける放射性セシウム137と放射性ストロンチウム90を水に溶かし、そこにフェロシアン化鉄やフェロシアン化ニッケルなどのフェロシアン化物を溶かし、水中の放射性セシウムをフェロシアン化物に吸着させる方法が知られている(非特許文献1)。しかしながら、この方法は水に溶けている放射性物質を取り込むだけであり、生物の体内に取り込まれた放射性物質を取り出すことはできない。
また、更に別の方法としては、藻類「バイノス」が放射性物質で汚染された水から放射性物質を藻類細胞内に取り込むことが知られている(非特許文献2)。この方法も水に溶けている放射性物質を取り込むだけであり、生物の体内に取り込まれた放射性物質を取り出すことができないのは前述と同様であり、藻類に取り込まれた放射性物質をどうするかという問題が残されている。
福島原発事故による放射性物質で汚染されたものとしては下水汚泥が一つの大きな問題になっている。放射能で汚染された下水汚泥は処理場で引き取ってもらえず、悪臭を周囲に放ちつつ、大量に野積みされたままである。下水汚泥は微生物で処理されるので下水汚泥中、水分の含有率に次いで微生物の占める割合が大きい。したがって、上述と同様、微生物の体内に取り込まれた放射性物質を取り出せない。加えて、下水汚泥には粘土が若干ながら含まれる。粘土にも放射性物質のセシウムが取り込まれ、簡単には取れないので対応に苦慮しているのが現実である。
毎日新聞 「顔料使ってセシウム汚染水浄化 東工大が開発」 2011.4.15 毎日新聞社
日本経済新聞 「放射性物質汚染水を浄化する藻「バイノス」 浄化に藻類活用」 2011.7.15 日本経済新聞社 朝刊
本発明は放射性物質で汚染された下水汚泥中の放射性物質含有体を集約する方法を提供し、大量の下水汚泥の処理をできるようにすることを目的とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明は放射性物質を含む下水汚泥を爆砕処理、水熱処理、または、水熱処理及び爆砕処理する工程を経た後、少なくとも液分中の放射性物質を吸着剤により吸着させる工程からなることを特徴とする、放射性物質を含む下水汚泥を集約する方法である。
本発明によれば、放射性物質を取り込んだ下水汚泥中の微生物体内にある放射性物質を回収するとともに、放射性物質を凝縮した形で回収することができ、保存スペースを極小化することができる。しかも通常の焼却処理であれば煙と共に放射性物質が大気中に飛散するが、本発明によれば、そのような心配もない。
本発明は下水汚泥を爆砕処理、水熱処理、または、水熱処理及び爆砕処理する。下水汚泥の大部分は水分であり、残りの殆どは下水処理に関わった微生物であり、粘土が微量ながら含まれる。本発明でいう爆砕処理とは急激な圧力変化により、その微生物の細胞膜を破断する操作をいう。急激な圧力変化というのは、例えば、4〜5MPaから一気に常圧に戻すような変化である。その際、温度は常温でもよい。爆砕処理の場合には物理的作用が主体となる。爆砕装置は、圧力容器、圧力容器にバルブを介して連結されるブロータンク、及び必要に応じたサイレンサ等から構成する。圧力容器中に下水汚泥を60〜90容量%、好適には70〜80容量%で投入し、圧力容器内を高圧にした後、バルブを開き、常圧のブロータンクに下水汚泥を送り込んで、一気に圧力を開放する。微生物の細胞膜の中に閉じ込められた水分中に溶けていた放射性物質は爆砕により細胞膜が破裂することで細胞膜内の水分と共に外に出されて飛散するが、ブロータンクの中に留まり、焼却処理の場合のような煙やガスが放射性物質を同伴しつつ外界に拡散することはない。
一方、水熱処理とは、水の亜臨界状態の条件を満足する範囲での処理を言う。微生物の細胞膜を高温高圧の熱水の物理的、化学的作用により、微生物の細胞膜を破断して、内部の細胞液が外界に流出し得る状態にする。水の亜臨界状態(亜臨界水状態とも言う)、即ち、臨界点以下の温度における飽和蒸気圧以上の圧力下の水は加水分解力が非常に大きく、固体有機物を短時間に低分子の有機物に分解する。中でも水のイオン積が最大となる250℃付近が常温におけるイオン積の約1000倍となり、H+とOH-の濃度は常温における値の30倍以上となり、加水分解力が非常に大きくこれらのイオンのエステル結合部など加水分解の起こり得る結合部位への攻撃が極めて大きくなる。330℃より温度が高くなると、温度の上昇に伴い、水のイオン積は急激に減少するため加水分解力も急激に衰え、加水分解力は臨界点を超えるとなくなるので、臨界点以下の温度で処理を行うとよい。また130℃より低い温度でも加水分解力は緩やかではあるが低下するので、好ましくは130〜330℃で、より好ましくは230〜280℃、特に好ましくは240〜270℃で行なわれる。水熱装置は、反応容器等から構成され、反応容器中に下水汚泥を投入し、そこに高温高圧の蒸気を吹き込み、水の亜臨界状態の条件にさせて反応させ、その後圧力を開放し、常温、常圧に戻す。
好適な方法は、水熱処理した上で爆砕処理する方法である。圧力容器中に下水汚泥を投入し、そこに高温高圧の蒸気を吹き込み、水の亜臨界状態の条件にさせ、圧力容器のバルブを開き、常温・常圧のブロータンクに下水汚泥を送り込んで、一気に圧力を開放する。爆砕の過程で温度が高く、水蒸気となっている場合には、ブロータンクの中で冷却されて、水蒸気は水となる。生物体の中に留まっていた放射性物質は細胞液とともに外界に放出されるか、破断された細胞膜に付着している。尚、その過程で、放射性物質は水に溶け込むものもあるが、爆砕により破砕された物やブロータンクの壁に付着しているものもある。後者の放射性物質はブロータンク内をときどき水洗浄することで水に溶け込ませて次の処理工程に廻すことができる。
爆砕或いは水熱処理の温度、圧力が適切であると、放射性物質の殆どは液側に移行し、固形破断物に残留する放射性物質は僅かとなる。
本発明を亜臨界水状態で実施する場合、亜臨界水の状態は超臨界水のような酸化還元力がないので、容器は超臨界水装置に比べれば腐蝕されがたいものの、水分と酸が存在するので、腐蝕を加速させる要因を有する。しかしながら、水熱処理系では酸素を含まないようにすることで腐蝕そのものを起こさせないようにすることがかなりの程度まで可能である。そのような手段として、蒸気に用いる水は純水を使い、しかも80℃で加熱して酸素が仮に入り込んだ場合でも追い出したものを用いる。また、下水汚泥に含まれている空気を例えば0.5〜0.8MPa程度の水蒸気でブロータンクに追い出して系内のガスを水蒸気だけにする。また、無機の燐が含まれないようにすることも必要である。このような配慮をした上で、水熱処理後に爆砕処理させると、爆砕により容器内部は全てのものが吹き飛ばされるので、内部は清浄にされるため、長期にわたる使用が可能であり、容器の長期使用の耐久性の面からも好ましい。本発明で用いられる容器は亜臨界水状態で使用される公知の材料が用いられ、オーステナイトやマルテンサイト、二層合金系などのステンレス鋼、高合金などが用いられる。
容器の大きさは大きいと内部の温度が不均一になるので、30〜200L程度、好適には30〜100L程度の小型のものを用いればよく、処理時間は数分あれば十分である。例えば下水汚泥と蒸気投入に30秒〜1分、処理時間2〜5分、容器から被処理物を排除するのに30秒〜1分程度が好適な条件である。大量処理が必要な場合にはこのような小型容器を複数個用意する。例えば、コンベア上に置かれた下水汚泥からリミットスイッチによりバルブを介して開いた計量計に向けて下水汚泥が送り込まれ、所定量の下水汚泥が計量されたことを光センサーで感知したところでバルブを閉めて、所定量の下水汚泥が、容器に送り込まれる。相互の容器の下水汚泥や蒸気の入口と出口はそれぞれリミットスイッチにより所定の条件を満たすと開閉して、順次、水熱処理される。また、その後に爆砕処理する場合には、共通のブロータンクに下水汚泥が送り込まれる。このような小型容器を複数連動させることで、大型容器を所定の温度にするまでの昇温時間に比べて、短時間で所定温度に達することができ、容器内の温度分布が均一にできることと相俟って大型容器を用いて処理を行う以上に大量処理が可能である。
爆砕処理、水熱処理、または、水熱処理及び爆砕処理後、必要に応じ、固形破断物からスクウィーズ、スクリュープレス、遠心分離或いは濾過などの手段である程度液分を分離する。ここで「固形破断物」というのは、爆砕等により破砕されたものであり、破断が細かいため、一見すると固体と認識しにくい場合が多い。しかも、破断により細胞膜でそれまで保存されていた液分も外界に出るので、破断物と液分が混在している。そのため、本発明でいう「固形破断物」とは、固形破断物というより、ドロドロした液状といってもよい場合が多く、本発明でいう「固形破断物」とはこのような状態のものを包含し、具体的には、微生物の細胞膜、粘土等が挙げられる。液分分離工程により、固形破断物に放射性物質が付着していたり、固形破断物と放射性物質が同伴されていた場合に、液分分離の過程でそのような放射性物質が液分に溶けたり、同伴されるので、固形破断物中の放射性物質は相対的に減少し、次になされる水洗浄が不要になる場合もある。しかしながら、このような液分分離処理をしないで後述の吸着工程で水洗浄を合わせて行なってもよい。
放射性物質を固形破断物から除去する必要がある場合には、固形破断物の水洗浄工程を行う。水洗浄は攪拌洗浄が好ましい。また、水洗浄の際に、固形破断物を振動させることも効果的である。かかる水洗浄は固形破断物中の放射能が問題とならないレベルになるまで繰り返し洗浄することで、固形破断物は通常の廃棄物と同様の処理が可能となる。かかる水洗浄は後述の吸着工程で同時に行なってもよい。洗浄に用いた水は、前記液分分離工程で分離した液分と共に、次の吸着工程に供されるとよい。
次いで、爆砕処理、水熱処理、または、水熱処理及び爆砕処理された、少なくとも液分中の放射性物質を吸着剤により吸着させる。放射性物質の吸着は、化学吸着でも物理吸着でもよい。吸着剤としては、フェロシアン化物、ゼオライト、活性炭が例示される。中でもフェロシアン化物は少量で多くの放射性物質を吸着できるので好適である。その中でも、フェロシアン化鉄が好ましいが、この他、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルトなどが例示される。放射性ストロンチウムは放射性セシウムに吸着するので、フェロシアン化物で取り込まれた放射性セシウムともども取り込まれる。吸着剤はその吸着剤の吸着能力と水溶液中の放射性物質の量に応じて必要量を適宜選定する。このような吸着剤はカラムに充填して水溶液を通過させる形で接触させてもよいし、水溶液中に必要な量の吸着剤を投入して攪拌させるような形でもよい。攪拌であれば、前述の洗浄工程を兼ねて行なうことができる。また、液分ばかりでなく、固体破断物も攪拌される場に混在させてもよい。なお、前者のカラムに充填して水溶液を通過させる場合、吸着剤は、カラムに充填でき、流出しない程度の粒径のものでなければならない。また、後者の水溶液中に吸着剤を投入させる場合は水溶液中に吸着剤が浮遊していては困るので、吸着剤だけ凝集させて沈澱させることができる凝集沈殿剤を用いる必要がある。例えば、フェロシアン化物は特に造粒しない限り、微粉であるため、フェロシアン化物を造粒するか、あるいは微粉のままで使うのであれば、凝集剤を用いる。
放射性物質を吸着した吸着剤と水溶液との混合物はそのまま、最終処分場に運び込み、水分を自然蒸発させてもよいが、水溶液側の放射性物質は殆ど無視できる程度の量であるので、吸着剤と水溶液を分離して吸着剤のみを最終処分場に運び、水はそのまま排泄しても又は再利用しても環境に影響はない。吸着剤と水溶液との分離は、吸着剤の物性を考慮して、遠心分離、濾過などの方法により行われる。
放射性物質を吸着した吸着剤は放射性物質の放射能が抑制できるような容器に収容保存する。容器の材質としてはコンクリート製、鉛製など、放射線を外界に放出する度合いを顕著に抑制できる材質であればよく、コンクリートが好適に用いられる。ここで容器は放射線を吸着した吸着剤の放射線量が大きいときには最終処分場の保管容器となるが、吸着剤の放射線量が少ないときには放射性物質を吸着した吸着剤を収容するまで容器の形態であればよく、収容後は口をコンクリートなどの封止材で封止し、別な用途、例えば、コンクリートであれば、コンクリートが本来用いられる用途、例えば、土木建築材として用いられる。放射性物質を吸着した吸着剤を容器に収容させるのには、生コンの原料の水とともに吸着剤を混ぜる方法が好適に用いられる。
(実施例1)
下水汚泥としては、福島市堀河町終末処理場から採取した、放射性セシウムの放射能が3110Bqである下水汚泥31.1g(1kg当たり10万Bq相当;75%が水分であり、固形分は6g)を用いた。これを水93.1gと混ぜて、オートクレーブに入れ、水熱処理した。オートクレーブは500ccの高圧マイクロリアクター(オーエムラボテック(株)製)を用いた。水熱処理は常温から260℃までの昇温時間を60分、260℃で4MPaとし、その保持時間を30分、260℃から常温までの放冷時間90分である。水熱処理後、ナイロン製メッシュ(150メッシュ)で濾別した。濾液は94.2gで1680Bq(1kg当たり1800Bq相当)であり、残渣は16.3gで1077Bq(1kg当たり66000Bq相当)であった。
後述する通り、濾液は約100%除染されるので、除染率は(当初のベクレル数−処理後の残渣中のベクレル数)/当初のベクレル数と定義した場合、この段階での除染率は66%である。
次いで、残渣を水洗いした。水洗いは、残渣16.3gに30倍の水438gを加えて攪拌洗浄することでなされた。次いで、前述と同様、ナイロン製メッシュで濾別した。濾液は443gで600Bq(1kg当たり1350Bq相当)、残渣は7.5gで357Bq(1kg当たり47600Bq相当)であった。この段階での除染率は89%である。
次いで上記二つの濾液を合わせ、フェロシアン化鉄を濾液に対し1%、凝集剤「イオンリアクションP」(再生舎製市販品)0.8%を加えて攪拌させた後、上述と同様、ナイロン製メッシュで濾別した。濾液は490gで50Bq(1kg当たり102Bq相当)、残渣は45gで1953Bq(1kg当たり43400Bq相当)であった。この濾液中の除染率は98%であり、最終的に濾液中の放射能は100Bq/kg程度にまで低減された。
また、当初の下水汚泥31.1g中、75%が水分であり、固形分は約6gであるが、その殆どは微生物である。これに対し、最終残渣45g中、95%以上が水分であり、固形分は2gであった。微生物は水熱処理で細胞膜が破壊されるので、この殆どは粘土と推定される。
これより下水汚泥31.1gは、本発明の処理により、水分も除去されれば、2gの固形分に集約されることが分かり、それとともに放射性物質も集約されることが分かった。
本発明は放射性物質で汚染された下水汚泥の処理が可能である。

Claims (1)

  1. 放射性物質を含む下水汚泥を爆砕処理、水熱処理、または、水熱処理及び爆砕処理する工程を経た後、少なくとも液分中の放射性物質を吸着剤により吸着させる工程からなることを特徴とする、放射性物質を含む下水汚泥中の放射性物質を集約する方法。
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