JP2015101523A - プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法及び該方法で合成されたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子 - Google Patents

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【課題】 ナノ粒子の粒径を小さくすると共に、十分な歩留まりを確保したプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法、及びそれらのナノ粒子を利用し、セシウム吸着能を向上させたセシウム吸着剤を提供する。
【手段】 二つまたは三つ以上の流入口を持ち、内部で合流した上で、一つまたは二つ以上の流出口を持つ液体の混合装置を用い、金属Mを含む金属塩の水溶液からなる第1の溶液と、ヘキサシアノ鉄イオン([Fe(CN)6])を含む塩の水溶液からなる第2の溶液をそれぞれ別の流入口から流しいれ、内部で混合させてプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を合成する方法において、以下のa又はbの条件を満たす方法で合成する。
a.前記混合装置内の前記第1の溶液と前記第2の溶液の混合後のレイノルズ数が2000以上である条件で混合する。
b.前記混合装置内に邪魔板を設ける。
【選択図】図3

Description

本発明は、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法及び該方法で合成されたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子に関する。
配位高分子は配位子と金属イオンで構成される連続構造をもつ錯体である。配位高分子の中でもプルシアンブルーに代表されるプルシアンブルー型錯体ナノ粒子は原子力発電所事故にともない飛散した放射性セシウムの除去剤や電気化学的に色を変化させることが性質を利用してエレクトロクロミック材料としての研究開発が進められている。
例えば放射性セシウムの除去剤としての利用に注目した場合、原子力発電所の事故により飛散した放射性セシウムが存在する系は土壌、河川、海水、焼却灰など多岐にわたり、これらはカリウムやナトリウムなど他の金属イオンを多量に含む。プルシアンブルー型錯体ナノ粒子は高いセシウム選択性を有しており、これらの対象から優先的に放射性セシウムを吸着する(特許文献1)。
また、配位高分子は、低電圧、低電力で駆動可能なエレクトロクロミック材料としても使用されている。その中でもプルシアンブルー型錯体は、その色と色変化は構成する金属イオンによって異なり、用途に応じて適切なプルシアンブルー型錯体を選ぶことができる(特許文献2)。また、複数の金属元素を含むようなプルシアンブルー型錯体ナノを合成することにより、その色調を変化させることができる。
さらに、プルシアンブルー型錯体は、二次電池電極、バイオセンサのトランスデューサ、ガス吸着剤などとしての検討もなされている。
このように、プルシアンブルー型錯体は多様な用途への応用を目的として研究開発が進められている。特に、そのナノ粒子化については、非常に注目を集めている。例えば、ナノ粒子化し、その表面を修飾することにより、溶媒への分散性を向上させることができる。この特徴を生かせば、溶媒に分散させた分散液をインクとして用い、印刷塗布で製膜が可能になり、特にエレクトロクロミック素子用薄膜の作製が容易となることなどが示されている。
プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の粒径については、その制御方法は必ずしも明確ではない。非特許文献1には、亜鉛置換型プルシアンブルー型錯体ナノ粒子について、粒径を小さくすることにより、エレクトロクロミック反応が安定化することが示されている。しかしながら、ここで用いられている方法は、いったん合成した様々な粒径のナノ粒子を遠心分離法で分級するものである。これにより確かに小さなナノ粒子をえることができるものの、それは合成物のごく一部であり、歩留まりが悪い、という問題があった。
プルシアンブルー型錯体の中でもプルシアンブルーのナノ粒子は小さな粒径のものが比較的合成しやすいことが知られている。例えば、非特許文献2によると、フロー合成に加え、二液を単に混合させるバッチ法であっても、7nm以下の粒径のものが得られることが報告されている。
しかしながら、プルシアンブルー以外のプルシアンブルー型錯体については、15nm以下のナノ粒子の合成が困難であった。例えば、特許文献2には、他にも様々な金属Mのプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成についての記載があり、実施例3にはM=Cuの場合が記載されているが、その粒径は45nmとされている。また、実施例4にはM=Coの例が記載されているが、この場合は粒径が30nmである。アンモニアを添加することによって粒径が小さくなるとの記載があるが、その場合であっても、17nmであり、さらに、このような他の材料の添加は、利用時に劣化などの原因になる可能性があり、可能ならば避けることが望ましい。さらに、M=Niの場合の粒径も20nmとの記載もある。また、非特許文献1にはM=Znの場合が記載されているが、この場合の粒径は、分級前は182nmとされている。このように、プルシアンブルー以外の材料については、ナノ粒子の合成要素以外の添加物なしで15nm以下のナノ粒子を合成することは困難であった。
特開2013−160666号公報 国際公開第2008/081923号
Kyoung Moo Lee、Hisashi Tanaka、Kyong Ho Kim、Midori Kawamura、Yoshio Abe、Tohru Kawamoto、Applied Physics Letters、Vol.102、P141901(2013年). 針生北斗、川本徹、高橋顕、南公隆、山田和典、「フロー合成によるプルシアンブルーナノ粒子の物性」、日本大学生産工学部学術講演会、平成24年度12月1日
このように、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子は、その粒径を制御することにより、機能が向上することが示されている。しかしながら、プルシアンブルーを除いては、効率的に粒径の小さいナノ粒子を合成する方法は知られておらず、さらには、エレクトロクロミズム以外の、例えば放射性セシウム吸着剤としての機能が、ナノ粒子化することにより向上するかどうかも必ずしも明確ではなかった。
本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の粒径を効率的に制御し、十分な歩留まりを確保したうえで、そのナノ粒子が、放射性セシウム吸着剤として高い機能を発現するための合成方法、及び該方法で合成されたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を提供することを目的とするものである。
発明者らは、様々な検討の上、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子において、粒径の小さな粒子を得るためには、均一な反応を連続的行うことが重要であることを明らかにした。本発明者らはこのような条件を達成すべくさらに鋭意研究を重ねた結果、プルシアンブルー型錯体を合成する際に、液の混合時に乱流を発生させることで迅速に撹拌することが可能なフロー合成を行うことにより、より粒径の小さな粒子を得ることができるという知見を得た。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]二つまたは三つ以上の流入口を持ち、内部で合流した上で、一つまたは二つ以上の流出口を持つ液体の混合装置を用い、金属Mを含む塩の溶液からなる第1の溶液と、ヘキサシアノ鉄イオン([Fe(CN)6])を含む塩の溶液からなる第2の溶液をそれぞれ別の流入口から流しいれ、内部で混合させてプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を合成する方法において、以下のa又はbの条件を満たす方法で合成することを特徴とするプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法。
a.前記混合装置内の前記第1の溶液と前記第2の溶液の混合後のレイノルズ数が2000以上である条件で混合する。
b.前記混合装置内に邪魔板を設ける。
[2]前記金属Mが銅である[1]に記載のプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法。
[3]前記混合装置内の流路半径が0.5mm以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の合成方法で得られたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載の合成方法で得られたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子からなるセシウム吸着剤。
[6][1]〜[3]のいずれかに記載の合成方法で得られたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子からなるエレクトロクロミック材料。
本発明によれば、粒径の小さなナノ粒子を合成することができる。また、そのナノ粒子を利用することにより、より吸着性能の高いセシウム吸着剤を供することができる。
Y字管の形状をしたマイクロミキサを使用した場合の混合装置の模式図 実施例1で銅プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の平均粒径のレイノルズ数依存性を示す図 実施例1で得られた銅プルシアンブルー型錯体ナノ粒子のセシウム吸着率のしんとう時間およびレイノルズ数依存性を示す図
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるプルシアンブルー型錯体とは、金属Mを含む塩1の溶液(第1の溶液)と、ヘキサシアノ鉄イオン[Fe(CN)6]を含む塩2の溶液(第2の溶液)を混合して得られ、組成としてAxM[Fe(CN)6]y・zH2Oであらわされるものをいう。ここでAはLiイオン、Naイオン、Kイオン、NHイオン、Rbイオン、Csイオンなどの陽イオンを表す。また、水以外の溶媒や、不純物として含まれるほかのイオンなど、組成にあらわされていない材料が含まれていてもよい。xは0から3の範囲が好ましく、0から2の範囲が特に好ましい。yは0.3から1.5の範囲が好ましく、0.4から1の範囲が特に好ましい。zは0から5の範囲が好ましく、0から4の範囲が特に好ましい。ただし、x、y、zは不純物として塩が含まれていたり、プルシアンブルー型錯体の内部構造に取り込まれていない水分を材料が有する場合などは、その効果を除去して評価されなければならない。
塩1は陽イオンとして金属Mを含んでいればよい。ここでMとしては、V,Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ph、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag,Zn、La、Eu、Gd、Lu、Ba、Sr、Caの一種または二種以上であり、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mnが好ましく、特に、Ni、Cu、Zn、Mnが好ましい。塩1に含まれる陰イオンとしては、塩1が溶媒に分散すればよく、例えば硝酸イオン、塩素イオンなどが利用できる。
塩2は、ヘキサシアノ鉄イオンを含んでおり、溶媒に分散すればよく、例えばフェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化ナトリウム、フェリシアン化ナトリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウムなどが利用できる。
第1の溶液および第2の溶液濃度としては、10g/Lが望ましく、100g/Lがより望ましい。上限は特にないが、現実的には1000g/L以下である。第1の溶液および第2の溶液に使用する溶媒としては、塩1および塩2が溶解すれば等に制限はなく、水、メタノールなどが使用できる。
本発明の対象となるプルシアンブルー型錯体の合成は2つ、またはそれ以上の原料液を混合することにより達成される。混合装置の形状としては、流入口が二つ以上あり、流出口が一つ以上あればよく、第1の溶液と第2の溶液が内部で混合できればよい。
具体的な例として、図1にY字管の形状をしたマイクロミキサを混合装置として使用した場合の装置図を示す。
効率的な混合が達成できれば特に形状の制限はないが、内部に合成されたナノ粒子がたまる構造などでなければよい。また、混合の効率の観点から混合液のお互いの比率は1000倍以下が望ましく、100倍以下がより望ましい。現実的には10倍以下である。材質に制限は無いが、粒子の付着による管の閉塞を防ぐために、合成される粒子との親和性が低いものが望ましい。例えば、ステンレス(SUS316L、SUS304など)、PEEKなどが使用できる。
本発明においては、合成時に乱流を発生させることが重要である。乱流を発生させる手法としては、配管内に邪魔板を設置することが挙げられる。また、混合部としてマイクロミキサを使用するなど、配管内に邪魔板の設置が難しい場合には、レイノルズ数を2000以上として、乱流状態とすることが利用できる。具体的には、図1に示す装置の場合、混合部直後、すなわち図1に示す矢印※の位置におけるレイノルズ数を増加させることで乱流状態とすることが必要である。乱流状態とすることにより、高速かつ均一に二つの液を混合することが可能になり、結果として得られるナノ粒子の粒径を小さくすることができる。レイノルズ数Reは2000以上が特に好ましく、5000以上がより好ましい。特に上限は無いが、1000000以下が現実的である。
ここで、レイノルズ数Reとは、混合後のプルシアンブルー型錯体ナノ粒子が通過する管における流れに対して定義される量を示し、(液の密度)×(液の流速)×(配管の直径)/(液の粘性)であらわされる無次元量である。レイノルズ数が高いほど、乱流状態になりやすいことが知れており、混合状態の評価に用いることができる。
プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の望ましい粒径としては、一次平均粒径が30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、15nm以下が特に好ましい。また、Mの種類によっては、例えばM=Znの際のように、ナノ粒子の構成要素以外の物質の添加なしや遠心分離などの分級作業なしでは100nm以下のナノ粒子の合成が困難な場合もあり、その場合は、上記記載の粒径に限らず、本発明により、従来技術に比べて小さな粒径の粒子の合成にも使用できる。本発明において、一次粒径とは、一次粒子の直径をいい、その円相当直径を粉末X線構造解析のピークの半値幅より算出することができる。また、配位子などが粒子表面に吸着している場合もあるが、その場合も一次粒径としては、配位子を除いた粒径を指すものとする。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
<銅プルシアンブルー型錯体ナノ粒子の一次粒径のレイノルズ数依存性>
銅−鉄シアノ錯体ナノ粒子(Cu3[Fe(CN)6]2)を以下の通りに調製した。硫酸銅五水和物140gを純水で500mLになるように溶解し、フェロシアン化カリウム三水和物104gを純水で500mLになるように溶解したものを調整した。流量を、4.7、9.4、37、94mL/分に調整しフロー方式により合成した。ここでは、Y字型のマイクロミキサ(VICI社製 マイクロボリュームコネクター「1/16 Y PEEK,製品番号 MY1XCPK」の流路部分と「1/16 Y SUS,製品番号MY1XCS6」の接続部分をつなぎあわせたもの)を用い、液の密度は1100kg/m3、配管の直径は1.5×10-4m、粘度は2×10-3Pa/sであった。これらよりそれぞれの流量におけるレイノルズ数を計算すると、389、778、3180、7780に対応する。
得られた液を10000rpm15分間の遠心分離を行い、得られた沈殿物を純水洗浄後、真空乾燥することで赤褐色粉末P1、P2、P3、P4を得た。
得られたP1、P2、P3、P4について、X線回折装置で評価したところ、いずれもデータベース中にK2Cu3[Fe(CN)6]2ピーク位置と一致した。
また、得られたP1、P2、P3、P4の平均一次粒径を粉末X線回折のピーク幅からシェラーの式で算出した。シェラーの式は以下のように表される式である。
d=K×λ/(β×cosθ)
(d:一次粒径、K:シェラー定数、λ:X線の波長、θ:ピークの回折角)
得られた結果を図2に示す。図2から明らかなように、レイノルズ数が高いほど小さいという結果が得られた。レイノルズ数が2000より小さい場合には、レイノルズ数を増加させると共に粒径が小さくなるが、レイノルズ数が2000を超えると粒径はほぼ一定となった。
(実施例2)
<銅プルシアンブルー型錯体ナノ粒子のセシウム吸着能>
実施例1で得られたP1、P2、P3、P4のセシウム吸着能を以下の方法で調べた。
それぞれの粉末0.1gを500mLの2mg/LのCsNO3水溶液に添加し、200rpmの条件でしんとう試験を行った。実験には、しんとう装置としてTAITEC社TS−20を用いた。また、比較のため、特許文献2に記載のプルシアンブルーナノ粒子を用いた試験も同様に行った。しんとう途中にサンプルを採取し、液中のCs濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置(NexION300D,Perkin Elmer社)で測定することにより、液中のCs濃度を測定し、初期液中Cs濃度の差分から固体中のCs吸着量を算出した。
得られた結果を図3に示す。図3から明らかなように、セシウムの吸着量は合成時のレイノルズ数が高いほど早く吸着し、平衡状態におけるCs吸着量も大きいことが分かった。

Claims (6)

  1. 二つまたは三つ以上の流入口を持ち、内部で合流した上で、一つまたは二つ以上の流出口を持つ液体の混合装置を用い、金属Mを含む塩の溶液からなる第1の溶液と、ヘキサシアノ鉄イオン([Fe(CN)6])を含む塩の溶液からなる第2の溶液をそれぞれ別の流入口から流しいれ、内部で混合させてプルシアンブルー型錯体ナノ粒子を合成する方法において、以下のa又はbの条件を満たす方法で合成することを特徴とするプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法。
    a.前記混合装置内の前記第1の溶液と前記第2の溶液の混合後のレイノルズ数が2000以上である条件で混合する。
    b.前記混合装置内に邪魔板を設ける。
  2. 前記金属Mが銅である請求項1に記載のプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法。
  3. 前記混合装置内の流路半径が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプルシアンブルー型錯体ナノ粒子の合成方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成方法で得られたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成方法で得られたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子からなるセシウム吸着剤。
  6. 請求項1〜3の方法で得られたプルシアンブルー型錯体ナノ粒子からなるエレクトロクロミック材料。
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