JP6131245B2 - セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法 - Google Patents
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Description
[1]セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物及びモレキュラーシーブを混合する工程(A)と、
前記工程(A)により得られた混合物を焼成してセラミックス状固化体とする工程(B)と、
を有するセシウムの安定固定化方法、
[2]工程(A)において、前記不溶性フェロシアン化合物と前記モレキュラーシーブとの質量比が、1:1〜1:3である[1]のセシウムの安定固定化方法、
[3]前記モレキュラーシーブが、ゼオライトである[1]又は[2]のセシウムの安定固定化方法。
[4]前記ゼオライトが、モルデナイト又はクリノプチロライトである[3]のセシウムの安定固定化方法、
[5]工程(B)において、焼成の最高温度が、1000〜1100℃である[1]〜[4]のいずれかのセシウムの安定固定化方法、
[6]工程(B)において、前記焼成が、600〜700℃の条件で3〜180分間処理された後、1000℃以上の高温で3〜180分間処理される[1]〜[5]のいずれかのセシウムの安定固定化方法、
[7]前記工程(A)において得られた混合物をプレス成型する工程(C)を更に有し、前記工程(B)において前記工程(C)により得られたプレス成型体を焼成する[1]〜[6]のいずれかのセシウムの安定固定化方法、
である。
このような結果が得られた理由は定かではないが以下の理由によるものと考えられる。
工程(A)では、セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物及びモレキュラーシーブを混合する。
工程(A)において、セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物とモレキュラーシーブとの質量比は、セシウムを揮発させずに安定固定化する観点から、10:1〜1:10が好ましく、5:1〜1:5がより好ましく、更に吸着セシウムの固定化率を顕著に高める観点から、1:1〜1:3が更に好ましい。
本発明で用いられる、セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物は、不溶性フェロシアン化合物によって、廃液中からセシウムを吸着したいわゆる使用済みの不溶性フェロシアン化合物である。
ここで「不溶性」とは、20℃における水への溶解性が、5g/100mL以下のものを意味する。
吸着前の不溶性フェロシアン化合物としては、セシウムの吸着・除去に使用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、ジカリウムヘキサシアノコバルト鉄(K2[CoFe(CN)6])、ジナトリウムヘキサシアノコバルト鉄(Na2[CoFe(CN)6])、ジカリウムヘキサシアノニッケル鉄(K2[NiFe(CN)6])等が挙げられる。これらの中でも、特に、ジカリウムヘキサシアノコバルト鉄、ジカリウムヘキサシアノニッケル鉄が好ましい。
本発明において用いられるモレキュラーシーブは、特に制限されるものではないが、ゼオライト、ケイチタン酸塩が挙げられる。これらの中でも、ゼオライトが好ましい。
本発明に用いるゼオライトのシリカ/アルミナ比は、特に制限はないが、通常ゼオライトの種類によりその値が決定される。例えば、モルデナイト、クリノプチロライトの場合は3〜200(好ましくは5〜200)、ゼオライトβの場合は5〜300のものが通常用いられる。
ケイチタン酸塩としては、結晶性ケイチタン酸塩(クリスタラインシリコチタネート(CST))が好ましい。
工程(B)では、前記工程(A)により得られた混合物を焼成してセラミックス状固化体とする。本発明においては、焼成の条件としては、600〜700℃の条件で、3〜180分間処理(以下、単に「第一段階の焼成」とする。)した後に、1000℃以上の高温で3〜180分間処理(以下、単に「第二段階の焼成」とする。)されることが好適である。すなわち比較的低温の第一段階の焼成において、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをモレキュラーシーブに移行させ、比較的高温の第二段階の焼成において、セシウムを吸着したモレキュラーシーブを焼結してセラミックス状固化体に変換しやすくすることで、セシウムの揮発をより顕著に抑制することができる。
第一段階の焼成における処理時間は、セシウムの好適な移行と作業の効率の観点から、好ましくは5〜170分間であり、より好ましくは5〜160分間である。
第二段階の焼成における処理時間は、セラミックス状固化体とするための作業の効率の観点から、好ましくは5〜100分間であり、より好ましくは20〜40分間である。
本発明の焼成における最高温度は、セラミックス状固化体を得やすくする観点から、好ましくは1000〜1200℃であり、より好ましくは1000〜1100℃である。
工程(B)によりセラミックス状固化体が得られる。セラミックス状固化体としては、アモルファスであっても、結晶性であってもよく、焼成によるモレキュラーシーブの分解物が含まれる。セラミックス状固化体の中で、セシウムは、どのような形態で存在していてもよいが、Cs−Al−O−Si−O又はCs−Ti−O−Si−O等の結合を生成するなどして、共有結合によりセシウム元素が取り込まれていることが好適である。また、セラミックス状固化体は、不溶性フェロシアン化合物に由来する残渣の鉄、コバルト、ニッケル等が含まれていてもよい。その他、セラミックス状固化体には、アンモニア、NOxの放出によって空隙が発生することもある。
本発明の安定固定化方法は、工程(A)及び工程(B)の間に、工程(A)において得られた混合物をプレス成型する工程(C)を更に有し、前記工程(B)において前記工程(C)により得られたプレス成型体を焼成することが好適である。工程(C)においてプレス成型することで、混合物が押し固められて、セシウムの揮発をより顕著に抑制することが可能となる。また、プレス成型することで、焼成(第二段の熱処理)において、るつぼ等の容器に粉末が付着することを防止することができる。なお、プレス成型の方法については、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことが可能である。特に、混合物をペレット状に成型することで、焼成後のセラミックス固体の取り扱いが容易となる。
0.5mol/LのCsNO3水溶液100mLに対して、不溶性フェロシアン化合物(ジカリウムヘキサシアノコバルト(II)鉄(II):K2[CoFe(CN)6])2gを添加して1日攪拌して室温で放置した。生成した沈殿物を蒸留水で5回洗浄し、90℃で6時間乾燥することにより、セシウム吸着不溶性フェロシアン化合物(セシウムヘキサシアノコバルト(II)鉄(II))が得られた。当該不溶性フェロシアン化合物中のセシウムの濃度は、11.8質量%であった。
製造例1で得られたセシウム吸着不溶性フェロシアン化合物と、ゼオライト(クリノプチロライト、ジークライト工業社製)とを質量比1:1の割合で混合して、以下に示す、昇温方法Aにて熱処理し、セラミックス状固化体を得た。セシウム吸着不溶性フェロシアン化合物とゼオライトとの混合時及び熱処理後の試料についてEDS(エネルギー分散型微小部X線分析法)により解析を行って試料中のセシウム濃度(質量%)を測定し、これらの結果から吸着保持率(%)([熱処理後のセシウム濃度]/[混合時のセシウム濃度]×100)を求めて、表1に示した。
モレキュラーシーブの種類、セシウム吸着不溶性フェロシアン化合物とモレキュラーシーブとの質量比、及び、昇温方法を表1に記載の条件に変更した以外は実施例1と同様にして、混合物を熱処理した。得られた結果を表1に示した。実施例1〜20ではセラミックス状固化体が得られた。なお、比較例1〜11においては、熱処理後の試料は溶融固化しなかった。
昇温方法A: 200℃で30分保持後、昇温(17℃/分)、400℃で30分保持後、昇温(20℃/分)、500℃で30分保持し、昇温(14℃/分)して1000℃で1時間保持し、昇温(17℃/分)して1200℃で1時間保持した(600〜700℃:7.14分、1000℃以上:1時間以上)。(*なお、表1中最高温度が1000℃の実施例においては、上記昇温方法において、1000℃で1時間保持後、昇温せずに終了した。)
昇温方法B: 200℃で30分保持後、昇温(17℃/分)して400℃で30分保持後、昇温(20℃/分)して500℃で30分保持し、その後1100℃まで昇温(14℃/分)した。(*なお、表1中最高温度が1000℃の実施例においては、上記最終昇温温度を1000℃として5分間程度保持して終了した。)
昇温方法C: 45℃から200℃まで昇温(25℃/分)し、その後300℃まで昇温(22℃/分)し、その後500℃まで昇温(25℃/分)し、その後1000℃まで昇温(16℃/分)し、その後1200℃まで昇温(6℃/分)した。(*なお、表1中の各比較例においては、示された最高温度に達した時点又は、その温度での保持がある場合には保持した後に終了した。)
Claims (7)
- セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物及びモレキュラーシーブを混合する工程(A)と、
前記工程(A)により得られた混合物を焼成してセラミックス状固化体とする工程(B)と、
を有する、セシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法。 - 工程(A)において、前記不溶性フェロシアン化合物と前記モレキュラーシーブとの質量比が、1:1〜1:3である請求項1に記載のセシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法。
- 前記モレキュラーシーブが、ゼオライトである請求項1又は2に記載のセシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法。
- 前記ゼオライトが、モルデナイト又はクリノプチロライトである請求項3に記載のセシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法。
- 工程(B)において、焼成の最高温度が、1000〜1100℃である請求項1〜4のいずれか1項に記載のセシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法。
- 工程(B)において、前記焼成が、600〜700℃の条件で3〜180分間処理された後、1000℃以上の高温で3〜180分間処理される請求項1〜5のいずれか1項に記載のセシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法。
- 前記工程(A)において得られた混合物をプレス成型する工程(C)を更に有し、前記工程(B)において前記工程(C)により得られたプレス成型体を焼成する請求項1〜6のいずれか1項に記載のセシウムを吸着した不溶性フェロシアン化合物の処理方法。
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