JP2023029304A - 放射性廃液からガラス固化妨害元素を分離する方法 - Google Patents

放射性廃液からガラス固化妨害元素を分離する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】硝酸を含む放射性廃液からガラス固化妨害元素を除去する方法において、放射性二次廃棄物の発生量を抑えて、簡便な方法でガラス固化妨害元素を分離すること。【解決手段】硝酸を含む放射性廃液からガラス固化妨害元素を分離する方法であって、前記放射性廃液と、酵母と、を含む反応液中で、前記ガラス固化妨害元素を前記酵母に捕集させる、バイオ捕集工程と、前記バイオ捕集工程後の前記酵母を前記反応液から分離する、酵母分離工程と、を含む、方法。該方法は、前記酵母分離工程で分離された前記酵母を乾燥および/または燃焼させる、減量工程をさらに含むことが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、放射性廃液からガラス固化妨害元素を分離する方法に関する。
原子力発電所の運転等により発生する使用済核燃料を再処理する際に、使用済核燃料からウランおよびプルトニウムを回収した後に、高い放射性を有する金属成分を含む廃液(放射性廃液)が高レベル放射性廃棄物として残る。
高い放射性を有する金属成分としては、超ウラン元素であるネプツニウム、アメリシウム、キュリウム等や、核分裂生成物であるストロンチウム、セシウム、テクネチウム、白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等)、または、ネオジウム(Nd)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)等が挙げられる。
この放射性廃液は、ガラス固化体として処分される。ガラス固化体とは、濃縮により減容された放射性廃液と溶融ガラスとの混合物を、堅固な容器内に収容された状態で冷やし固められたものである。ガラス固化体は、専用の貯蔵施設で30~50年間冷却しながら貯蔵され、その後、300メートル以深の地層中に処分される。
ここで、放射性廃液をガラス固化体にする際に、放射性廃液がガラス固化妨害元素(Pd、Ru、Rh、Mo、Zr等)を含んでいると、ガラス固化体の製造が阻害されることが知られている。
例えば、放射性廃液が白金族元素(Pd、Ru、Rh等)またはモリブデン(Mo)を含む場合、ガラス溶融炉内でフロックが形成され、該フロックが溶融炉底部に沈積し、その炉壁付近では溶融ガラスは高粘性化する。これにより、ガラスの流動性が低下して閉塞が生じるといった問題が起こり、ガラス固化の連続運転が不可能になる虞がある。
さらに、放射性廃液がモリブデン(Mo)およびジルコニウム(Zr)を含む場合、MoとZrは、不溶性のモリブデン酸ジルコニウム(ZrMo(OH))を形成し、それが配管の内表面等に付着して、ガラス溶融時の操作性やガラス固化体の化学的性質に悪影響を与える。このため、ガラス溶融炉に放射性廃液を投入する前に、予めガラス固化妨害元素として白金族元素とMoに加えて、Zrも分離除去することが望ましいと考えられる。
このため、放射性廃液をガラス固化体にする前に、放射性廃液からガラス固化妨害元素を分離除去しておくことは意義深い。
放射性廃液(高濃度の硝酸溶液)に含まれるガラス固化妨害元素の分離除去に関する従来技術としては、無機系吸着法、溶媒抽出法、抽出クロマトグラフィー法(溶媒抽出剤を担持させた多孔性シリカ/ポリマー複合粒子を分離剤に使用)などが知られている。また、別の方法としては、脱硝沈殿法が知られている。
なお、特許文献1(特開2017-88990号公報)には、酵母等の微生物を用いて、放射性廃液などから白金族金属を回収する方法が開示されている。
特開2017-88990号公報
しかしながら、無機系吸着法では、放射性の固体廃棄物(放射性二次廃棄物)を多量に発生する。溶媒抽出法では、高価な溶媒抽出剤(液体)を使えば分離の選択性は高いが、放射性の有機廃液(油)を多量に発生する。抽出クロマトグラフィー法では、溶媒抽出剤を担持させた多孔性シリカ/ポリマー複合粒子を分離剤として使用するため、上記と同様に放射性二次廃棄物を多量に発生する。このように、放射性二次廃棄物を多量に発生するという問題がある。
また、脱硝沈殿法においては、溶液の濃度調整操作が煩雑であるという問題がある。
なお、特許文献1では、Pdイオンを含む希塩酸溶液(原料溶液)からのPdの分離(回収)についての実施例が開示され、原料溶液および酵母を含む反応液のpHを塩酸で1.8に調整した例が開示されている。しかし、硝酸を含む実際の放射性廃液のような強酸性の液から酵母を用いて金属を分離することについて、具体的な開示はなされていない。また、特許文献1には、白金族金属以外のガラス固化妨害元素(ZrおよびMo)の分離方法については何ら開示されていない。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、硝酸を含む放射性廃液からガラス固化妨害元素を除去する方法において、放射性二次廃棄物の発生量を抑えて、簡便な方法でガラス固化妨害元素を分離することを目的とする。
(1) 硝酸を含む放射性廃液からガラス固化妨害元素を分離する方法であって、
前記放射性廃液と、酵母と、を含む反応液中で、前記ガラス固化妨害元素を前記酵母に捕集させる、バイオ捕集工程と、
前記バイオ捕集工程後の前記酵母を前記反応液から分離する、酵母分離工程と、
を含む、方法。
(2) 前記ガラス固化妨害元素は、Pd、Zr、Mo、RuおよびRhからなる群から選択される少なくとも1種の元素である、(1)に記載の方法。
(3) 前記ガラス固化妨害元素は、ZrおよびMoの少なくともいずれかを含む、(2)に記載の方法。
(4) 前記ガラス固化妨害元素は、Pd、Zr、MoおよびRuを含む、(3)に記載の方法。
(5) 前記酵母分離工程の後の前記反応液と、前記酵母と、を含む2次反応液中で、前記ガラス固化妨害元素を前記酵母に捕集させる、2次バイオ捕集工程と、
前記2次バイオ捕集工程後の前記酵母を前記2次反応液から分離する、2次酵母分離工程と、をさらに含む、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記バイオ捕集工程において、前記ガラス固化妨害元素のうちPdおよびZrの少なくとも1種の元素を優先的に前記酵母に捕集させ、
前記2次バイオ捕集工程において、前記ガラス固化妨害元素のうちMo、RuおよびRhの少なくとも1種の元素を優先的に前記酵母に捕集させる、(5)に記載の方法。
(7) 前記放射性廃液のpHが2.0以下である、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 前記酵母分離工程で分離された前記酵母を乾燥および/または燃焼させる、減量工程をさらに含む、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 前記バイオ捕集工程において、前記反応液中で前記ガラス固化妨害元素を前記酵母に捕集させる処理の時間が10~120分間である、(1)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10) 硝酸を含む放射性廃液から、ガラス固化妨害元素、並びに、Rb、Cs、Ba、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、CrおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を分離する方法であって、
前記放射性廃液と、酵母と、を含む反応液中で、前記ガラス固化妨害元素、並びに、Rb、Cs、Ba、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、CrおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を前記酵母に捕集させる、バイオ捕集工程と、
前記バイオ捕集工程後の前記酵母を前記反応液から分離する、酵母分離工程と、
を含む、方法。
本発明によれば、硝酸を含む放射性廃液からガラス固化妨害元素を除去する方法において、放射性二次廃棄物の発生量を抑えて、簡便な方法でガラス固化妨害元素を分離することができる。
実施例1におけるガラス固化妨害元素の除去率を示すグラフである。 実施例2におけるガラス固化妨害元素等の除去率を示すグラフである。 実施例3におけるガラス固化妨害元素の除去率を示すグラフである。 実施例4における乾燥過程における酵母の質量(図4(a))および減量化率(図4(b))の経時変化を示すグラフである。 実施例4における焼成温度と酵母の減量化率の関係を示すグラフである。 本発明のバイオ分離方法の一例を説明するためのフロー図である。 実施例5における各種酵母によるRh/Ru系模擬廃液(硝酸濃度:0.1mol/L)からのガラス固化妨害元素の除去率を示すグラフである。 実施例5における各種酵母によるRh/Ru系模擬廃液(硝酸濃度:0.01mol/L)からのガラス固化妨害元素の除去率を示すグラフである。 実施例6におけるパン酵母(野生株)による23金属元素模擬廃液からの各種金属元素の除去率を示すグラフである。 実施例6におけるトルラ酵母による23金属元素模擬廃液からの各種金属元素の除去率を示すグラフである。 実施例7におけるトルラ酵母によるPd/Zr/Mo/Rh/Ru/Nd系模擬廃液からの妨害元素除去率に及ぼすγ線照射の影響を示すグラフである。 実施例8におけるトルラ酵母によるRh/Ru系模擬廃液からの妨害元素除去率に及ぼすγ線照射の影響を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施形態の方法は、放射性廃液からガラス固化妨害元素をバイオ分離する方法(以下、「バイオ分離方法」と略記する場合がある。)である。
(放射性廃液)
放射性廃液は、硝酸を含む。放射性廃液中の硝酸の濃度は、例えば0.1~10mol/Lであり、好ましくは0.5~5.0mol/Lであり、より好ましくは1.0~2.0mol/Lである。
放射性廃液のpHは、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.0以下であり、さらに好ましくは-1.0~1.0であり、さらに好ましくは-0.7~0.3であり、さらに好ましくは-0.3~0である。なお、1.0mol/L硝酸溶液のpHは0であり、2.0mol/L硝酸溶液のpHは約-0.3である。
放射性廃液は、放射性のガラス固化妨害元素(その元素を有するイオンを含む)を含む。放射性廃液は、通常、ガラス固化妨害元素以外の放射性の金属イオン等も含んでいる。
例えば、森田泰治ほか,「群分離法の開発:小規模実験による4群群分離プロセスにおけるテクネチウム挙動の確認」,日本原子力研究所,JAERI-Research 98-046,(1998年8月)に示される高レベル放射性廃液の模擬液は、硝酸(HNO)と、Na、Cr、Fe、Ni、Rb、Sr、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Te、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、GdおよびTeの23元素と、を含む。なお、この模擬液において23元素のうち最も濃度が高い元素はNd(ネオジウム)である。放射性廃液は、このような金属元素(イオン)を含み得る。
(ガラス固化妨害元素)
ガラス固化妨害元素は、放射性廃液中に含まれる元素(金属元素)であり、放射性廃液をガラス固化体にする際にガラス固化を阻害する元素である。
ガラス固化妨害元素は、例えば、Pd、Zr、Mo、RuおよびRhからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。ガラス固化妨害元素は、ZrおよびMoの少なくともいずれかを含むことが好ましい。ガラス固化妨害元素は、Pd、Zr、MoおよびRuを含むことがより好ましく、Pd、Zr、Mo、RuおよびRhを含むことがより好ましい。特許文献1には、ZrおよびMoの分離は記載されていない。
放射性廃液中において、ガラス固化妨害元素は、通常、放射性である(放射能を有している)。放射性のガラス固化妨害元素は、ガラス固化妨害元素の放射性同位体などである。例えば、放射性のPd(Pdの放射性同位体)としては、Pd107が挙げられる。
なお、本発明の分離方法において、放射性のガラス固化妨害元素(その元素を有するイオンを含む)から酵母に照射される放射線の線量は、好ましくは3kGy以下であり、より好ましくは20Gy~3kGyである。ここでいう「線量」とは、ガラス固化妨害元素から放射される放射線の放射線量率と、本発明の分離方法において酵母がガラス固化妨害元素から放射される放射線に曝される合計時間との積を意味する。
<分離方法>
図6は、本発明の分離方法の一例を説明するためのフロー図である。図6を参照して、本発明の放射性のガラス固化妨害元素のバイオ分離方法は、少なくともバイオ捕集工程(S10)と、酵母分離工程(S20)と、を含む。
なお、酵母分離工程(S20)の後に、減量工程(S30)を含んでいてもよい。
また、(1次)バイオ捕集工程(S10)および(1次)酵母分離工程(S20)の後に、さらに、2次バイオ捕集工程(S11)および2次酵母分離工程(S21)を含んでいてもよい。
以下、本発明の分離方法における各工程について説明する。
[バイオ捕集工程(S10)]
バイオ捕集工程では、放射性廃液と酵母とを含む反応液中で、ガラス固化妨害元素(その元素を有するイオンを含む)を酵母に捕集させる。
ガラス固化妨害元素がPd、Zr、MoおよびRu(Pd、Zr、Mo、RuおよびRh)を含む場合、バイオ捕集工程において、ガラス固化妨害元素がPd、Zr、Mo、Ru(Pd、Zr、Mo、Ru、Rh)の優先順で捕集されることが好ましい。なお、本実施形態の分離方法のバイオ捕集工程においては、ガラス固化妨害元素であるPd、Zr、MoおよびRu(Pd、Zr、Mo、RuおよびRh)は、この順で優先的に酵母に捕集され、放射性廃液から分離されることが、本発明者らの実験により確認された。
放射性のガラス固化妨害元素のうち、長寿命核分裂生成物(LLFP)であるパラジウム(Pdの放射性同位体であるPd107の半減期:650万年)およびジルコニウム(Zrの放射性同位体であるZr93の半減期:153万年)の2元素は、特に先(優先的)に除去する必要性が高い。本実施形態の分離方法は、このPd107およびZr93を優先的に分離することができるため、これらのLLFPをより確実に分離することができる。
なお、硝酸は塩酸より非常に酸化力が強く、例えば、Pdは硝酸溶液中では陽イオン(Pd2+イオン)として存在するのに対して、塩酸溶液中では陰イオン(テトラクロロ錯体イオン:PdCl 2-)として存在するといった違いが生じる。このような違いから、上記のような元素の分離の優先順位については、特許文献1の塩酸溶液(酸性反応液)の場合から予測することはできない。
(酵母)
本発明において、「酵母」とは、出芽酵母、分裂酵母などを意味する。出芽酵母としては、例えば、Saccharomyces属(Saccharomyces cerevisiaeなど)が挙げられる。分裂酵母としては、例えば、Schizosaccharomyces属(Schizosaccharomyces pombeなど)が挙げられる。これらのうちでも特に好ましい酵母は、Saccharomyces cerevisiaeである。他の酵母として、トルラ酵母(Candida utilis)も好適に用いることができる。酵母(特に、Saccharomyces cerevisiae)は食品分野等での普及品であるため、菌体の入手が容易であり廉価である。トルラ酵母は、家畜用飼料等として市場に一般的に流通しており、パン酵母と同様に低コストで大量に導入することができるので、放射性廃液の大量処理にも対応できる経済的かつ高性能なガラス固化妨害元素等バイオ分離剤である。このため、酵母を用いる場合、本発明を容易に実施することができ、分離(除去)コストも削減することができる。
放射性のガラス固化妨害元素(その元素を有するイオンを含む)と、上記の酵母との接触は液体(反応液)中で行われる。このとき、酵母は、吸着機能等が発揮され得る限り、生菌でもよく死菌であってもよい。
なお、本発明者らにより、酵母は、γ線照射すると死滅し、硝酸溶液中でも死滅することが、確認されている。一方、酵母は、死滅してもガラス固化妨害元素に対する吸着能を有していることが分かっている。特に、酵母のうち、Saccharomyces cerevisiaeについては、放射線暴露状態において硝酸溶液中のガラス固化妨害元素(Pd、Zr、Mo、RuおよびRh)を捕集する能力を有することが、本発明者らの実験により確認された。
また、本発明者らは、3kGyの放射線被爆の前後の酵母(Saccharomyces cerevisiae)について、FT-IR-ATR(フーリエ変換-赤外-減衰全反射)分析により、酵母細胞の表層の官能基の同定を行った結果、放射線被曝による酵母細胞の表層の官能基への影響はないと考えられた。したがって、酵母が死滅してもガラス固化妨害元素の吸着能を維持できる理由は、酵母において、ガラス固化妨害元素を吸着捕集する官能基が、酵母の死滅によって変化しないためであると考えられる。
本工程で用いる酵母の数は、特に制限されない。一般的に細胞数が多いほど、処理時間が短くなり、分離効率が向上する。反応液中の酵母の細胞濃度は、好ましくは1.0×1014cells/m~2.0×1016cells/m、より好ましくは5.0×1014cells/m~1.0×1015cells/mである。
酵母の懸濁液の調製法の一例としては、市販の乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社製、Saccharomyces cerevisiae)を、硝酸水溶液または水(蒸留水、イオン交換水、純水などを含む)を用いて所定の濃度に調整する。これにより、所定濃度の酵母の懸濁液(酵母懸濁液)を得ることができる。
酵母としては、野生株を用いてもよく、表面修飾等が施された改変型の酵母を用いてもよい。酵母の表面修飾は、金属イオン(ガラス固化妨害元素のイオン)を吸着する官能基が増えるような修飾であることが好ましい。この場合、ガラス固化妨害元素の分離(除去)効率の向上が期待される。
このような酵母の表面修飾は、例えば、酵母にトリメタリン酸ナトリウム(Na)を化学反応させることにより実施可能であり、この場合は酵母の表面にリン酸基が付加される(参考文献「Y. Ojima, M. Azuma et al.; “Recovering metals from aqueous solutions by biosorption onto phosphorylated dry baker’s yeast”, Scientific Reports (2019)」参照)。このリン酸基は、金属イオンに対する優れた吸着能を有している。なお、当該参考文献には、酵母を用いた非放射性ガラス固化妨害元素(Pd、Zr、Mo、RuおよびRh)および放射性元素の回収には言及されておらず、酵母に放射線を照射する実験は行われていない。
特に、非修飾の酵母を用いた場合に放射性廃液からの除去率が比較的低いルテニウム(Ru)とロジウム(Rh)に対して、このような酵母の化学修飾株を捕集剤として用いることで、RuおよびRhの除去率の向上が期待される。
(反応液)
反応液は、上記の酵母による捕集機能が発揮される環境であれば、特に限定されない。反応液は、例えば、水、または、硝酸、pH調整剤(リン酸水素カリウムなど)、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む水溶液に、上記放射性廃液と、上記酵母とを添加してなる液である。
反応液のpHは、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.0以下であり、さらに好ましくは-1.0~1.0であり、さらに好ましくは-0.7~0.3であり、さらに好ましくは-0.3~0である。
例えば、バイオ捕集工程において、放射性廃液および酵母懸濁液の混合液(反応液)中において、放射性のガラス固化妨害元素と上記酵母とを接触させることにより、放射性のガラス固化妨害元素が酵母に捕集される。
酵母に捕集されるガラス固化妨害元素はイオン(当該元素を有するイオン)の状態であってもよい。すなわち、反応液中のガラス固化妨害元素のイオンがイオンのまま酵母に捕集されてもよい。尚、酵母等が金属イオンを吸着する現象は「バイオソープション」と呼ばれる。金属イオンは、例えば、酵母の細胞表層を構成するリン脂質やリポ多糖類(官能基としてカルボキシル基やリン酸基等)に捕集される。
なお、バイオソープションによって酵母に捕集された放射性のガラス固化妨害元素のイオンは、例えば、後の減量工程(S30)において焼成を行うことで、酵母細胞のほとんどが焼失するため、最終的にガラス固化妨害元素の濃縮物を回収することが可能である。
バイオ捕集工程の処理時間(バイオ捕集工程において、反応液中でガラス固化妨害元素を酵母に捕集させる処理の時間)は、ガラス固化妨害元素の酵母による捕集効率が高くなるように、回分操作(すなわち、後述のようにバイオ捕集工程を複数回行う場合の各々のバイオ捕集工程)について、10~120分間程度であることが好ましい。
バイオ捕集工程を実施する環境の温度は、特に限定されないが、より低エネルギー型の処理を行うために加熱等のエネルギーを必要としない観点からは、例えば、15~30℃程度である。なお、バイオ捕集工程は、空気中で実施すればよい。
[酵母分離工程(S20)]
酵母分離工程では、バイオ捕集工程後の酵母を反応液から分離する。具体的には、例えば、反応液に対してろ過や遠心分離等の処理を施すことにより、上記酵母の菌体を反応液中から分離(固液分離)する。これにより、バイオ捕集工程によって上記酵母に捕集されたガラス固化妨害元素を、反応液から分離することができる。
なお、上述の酵母を用いたガラス固化妨害元素のバイオ分離方法は、低エネルギー型(低環境負荷型)の方法であり、かかる分離方法によれば、簡易な操作で、短時間に高い効率で、ガラス固化妨害元素を放射性廃液中から分離することができる。
[2次バイオ捕集工程(S11)および2次酵母分離工程(S21)]
本実施形態の分離方法は、上述の(1次)バイオ捕集工程および(1次)酵母分離工程に加えて、2次バイオ捕集工程および2次酵母分離工程をさらに含んでもよい。すなわち、バイオ捕集工程および酵母分離工程を2回繰り返してもよい。なお、バイオ捕集工程および酵母分離工程を3回以上繰り返してもよい。
2次バイオ捕集工程では、酵母分離工程の後の反応液と、酵母と、を含む2次反応液中で、ガラス固化妨害元素を酵母に捕集させる。2次バイオ捕集工程の手順は、基本的に上記のバイオ捕集工程(1次バイオ捕集工程)と同様である。
2次酵母分離工程では、2次バイオ捕集工程後の酵母を2次反応液から分離する。2次酵母分離工程の手順は、基本的に上記の1次酵母分離工程と同様である。
このように、1次バイオ捕集工程(S10)において、ガラス固化妨害元素のうちPdおよびZrの少なくとも1種の元素を優先的に酵母に捕集させ、2次バイオ捕集工程(S11)において、ガラス固化妨害元素のうちMo、RuおよびRhの少なくとも1種の元素を優先的に酵母に捕集させることが好ましい。
なお、例えば、ガラス固化妨害元素のうちPdおよびZrの少なくとも1種の元素を優先的に酵母に捕集させる工程を3回繰り返し(1次~3次バイオ捕集工程)、その後に、ガラス固化妨害元素のうちMo、RuおよびRhの少なくとも1種の元素を優先的に酵母に捕集させる工程を2回繰り返してもよい(4次~5次バイオ捕集工程)。
この場合、照射性廃液中からLLFP(Pd107およびZr93)をより確実に分離することができ、且つ、1次バイオ捕集工程(S10)および1次酵母分離工程(S20)だけでは分離されにくいMo、RuおよびRhの少なくとも1種の元素の分離効率を高めることができる。
本実施形態の分離方法においては、ガラス固化妨害元素であるPd、Zr、Mo、RuおよびRhは、この順で優先的に酵母に捕集され、特にPdおよびZrは他の元素よりも優先的に捕集および分離されることが本発明者らの検討により判明している。したがって、まず、1次バイオ捕集工程(S10)および1次酵母分離工程(S20)により、ガラス固化妨害元素のうちPdおよびZrの少なくとも1種の元素を優先的に酵母に捕集させて、反応液中のPdおよびZrの濃度を低減することで、次の2次バイオ捕集工程(S11)および2次酵母分離工程(S21)において、PdおよびZrより優先準位が低いMo、RuおよびRhを効率的に捕集および分離することが可能となる。
[減量工程(S30)]
減量工程では、酵母分離工程(S20)で分離された酵母を乾燥および/または燃焼させる。この減量工程により、放射性のガラス固化妨害元素を含む高レベル放射性廃棄物の容量を減少させることができる。
なお、本実施形態のバイオ分離方法が、1次バイオ捕集工程(S10)、1次酵母分離工程(S20)、2次バイオ捕集工程(S11)および2次酵母分離工程(S21)を含む場合は、1次酵母分離工程(S20)で分離された酵母、および、2次酵母分離工程(S21)で分離された酵母を、乾燥および/または燃焼させる。
例えば、酵母分離工程で集菌した酵母を乾燥させた後、焼成等により菌体等の有機物を除去することで、放射性のガラス固化妨害元素を含む高レベル放射性廃棄物の容量を大幅に減少させることができる。なお、酵母を乾燥させるだけでも、高レベル放射性廃棄物の容量を減少させることは可能である。
なお、バイオ捕集工程でガラス固化妨害元素のうちの白金族元素がイオンの状態が酵母に捕集された場合には、減量工程で焼成等の処理を行うことで、白金族元素のイオンが還元されてガラス固化妨害元素となり得る。このように、白金族元素を捕集した酵母を燃焼させることで、白金族元素のみを回収することが可能である。
このようにして回収されたガラス固化妨害元素に対して、必要に応じてさらに精製等の後処理を行ってもよい。さらに、放射性のガラス固化妨害元素を非放射性のガラス固化妨害元素に変換する処理を行うことで、非放射性のガラス固化妨害元素を得ることもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の分離方法においては、放射性廃液中の放射性のガラス固化妨害元素を反応液中で酵母と接触させてバイオ捕集工程を実施する。ただし、放射性のガラス固化妨害元素に対してバイオ捕集工程を実際に実施するためには、放射性物質を取り扱うための特別な設備が必要となる。
このため、以下の実施例1~8では、実験の便宜上、放射線照射施設において酵母(酵母懸濁液のみ)に所定量の放射線を照射した後に、酵母を放射線照射施設から取り出して、通常の実験室においてバイオ捕集工程を実施した。このような実験において、放射線照射後の酵母によって(非放射性の)ガラス固化妨害元素が分離可能であれば、本発明の分離方法において、酵母が放射性のガラス固化妨害元素から照射される放射線を受けた状態でも、酵母によるガラス固化妨害元素の分離が可能であると考えられる。
<実施例1>
以下では、放射線照射後の酵母を用いて、ガラス固化妨害元素を含む放射性廃液の模擬溶液からガラス固化妨害元素を分離する実験を行い、PdおよびZrの分離率(除去率)を測定した。
酵母懸濁液に対して、線量率3kGy/hの放射線(60Coガンマ線)を線量(被爆量)が1.0kGyまたは3.0kGyとなる時間照射した。また、比較対照として、放射線を照射していない酵母懸濁液も別途用意した。なお、放射線の線量は、高レベル放射性廃液のガラス固化体の形成時の放射線量を模擬する放射線量率(1.5kGy/h程度)を目安に設定した。また、放射線の照射は、下記の放射線照射施設において行った。
〔放射線照射施設〕
公立大学法人大阪府立大学内の放射線研究センター
線源:60Co(350TBq)
線量率:0.5~17kGy/h
(なお、配置(線源からの距離)を調整することで、非照射体に対する放射線の線量を調整することができる。)
照射温度:室温
酵母としては、市販の乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社製、Saccharomyces cerevisiae、「オリエンタル ドライイースト」)を用いた。酵母懸濁液は、乾燥パン酵母を2.0M(mol/L)の硝酸溶液で懸濁し、所定の細胞濃度(1.0×1015cells/mまたは2.0×1015cells/m)となるように調製した。なお、液相中の細胞濃度は、ヘマトメータ法を用いて測定することができる。
これとは別に、2.0M(mol/L)の硝酸と、各々5mmol/Lの金属イオン(Pd(II)イオン、Ru(III)イオン、Rh(III)イオン、Mo(VI)イオン、Zr(IV)イオン、および、Nd(III)イオン)と、を含む、放射性廃液の模擬廃液(溶媒:水、pH:約-0.3)を調製した。なお、5mmol/Lの濃度は、従来の実験で用いられる放射性廃液の模擬液として一般的な濃度である。また、模擬液に、ガラス固化妨害元素以外のNdを配合した理由は、上述の日本原子力研究所が示す放射性廃液の模擬液において最も濃度が高い金属元素であるNdを配合することで、より実際の放射性廃液に近い条件での実験を行うためである。
(バイオ捕集工程)
次に、上記の模擬廃液を対象に、バイオ捕集工程を回分操作で行った。すなわち、上記の模擬廃液に、上記の酵母(放射線非照射、1.0kGy放射線照射、または3.0kGy放射線照射)を添加することで、バイオ捕集実験を開始した。
なお、反応液中の酵母の細胞濃度(酵母の含有率)が、5.0×1014cells/m(16g/L:1.6w/v%)となるように、酵母懸濁液の添加量を調整した。バイオ捕集工程は、室温下および空気雰囲気下で実施した。
また、バイオ捕集実験を開始した時点(酵母を添加した時点)から120分経過後までの所定時間毎(1分、5分、10分、30分、60分および120分経過時)に反応液をサンプリングし、反応液中のPdイオン(Pd(II)イオン)およびZrイオン(Zr(IV)イオン)の濃度をICP発光分光法により測定した。図1に、測定値から求めたガラス固化妨害元素の除去率の経時変化を示す。
図1に示される結果から、本発明の分離方法によれば、処理時間が30分程度の回分操作において模擬廃液からPdおよびZrが十分に分離されることが分かる。ここで、PdおよびZrの除去率は、硝酸水溶液(2.0mol/L以下)に懸濁したパン酵母へのγ線の照射の有無にあまり影響を受けないことが分かる。
<実施例2>
実施例2では、(1次)バイオ捕集工程および(1次)酵母分離工程に加えて更に2次バイオ捕集工程および2次酵母分離工程を実施し、模擬廃液中に含まれる全元素の除去率を求めた。酵母懸濁液への放射線の照射線量は3.0kGyとし、反応液中の酵母の濃度は32g/L(3.2w/v%、細胞濃度:1.0×1015cells/m)とした。それ以外は、実施例1と同様にして、模擬廃液からのガラス固化妨害元素のバイオ分離実験および除去率の測定を行った。
図2に、模擬廃液からのガラス固化妨害元素等の除去率を示す。なお、図2の左半分は1次バイオ捕集工程における模擬廃液中の各元素の測定値から求めた除去率の経時変化であり、図2の右半分は2次バイオ捕集工程における模擬廃液中の各元素の測定値から求めた除去率の経時変化である。いずれの除去率も、実験前の模擬廃液中の各元素濃度に対する各測定値の減少率である。
図2に示される結果から、ガラス固化妨害元素がPd、Zr、Mo、RuおよびRhを含む場合、処理時間が10~120分間の回分操作(1次バイオ捕集工程と2次バイオ捕集工程の各々)においてPd、Zr、Mo、Ru、Rhの優先順で捕集されることが分かる。また、バイオ捕集工程および分離工程を2回繰り返すことで、照射性廃液中からLLFP(Pd107およびZr93)をより確実に分離することができ、且つ、1次バイオ捕集工程および1次酵母分離工程だけでは分離されにくいMo、Ru等の分離効率を高められることが分かる。
<実施例3>
実施例3では、パン酵母として、野生株と、その化学修飾株(化学処理により細胞表面にリン酸基が導入された酵母)と、の2種類を用いた。化学修飾は、酵母にトリメタリン酸ナトリウム(Na)を化学反応させることにより実施した(参考文献「Y. Ojima, M. Azuma et al.; “Recovering metals from aqueous solutions by biosorption onto phosphorylated dry baker’s yeast”, Scientific Reports (2019)」参照)。なお、模擬廃液の硝酸濃度は、2.0mol/L、0.1mol/Lおよび0.01mol/Lとした。この模擬廃液は、各々5mmol/Lの金属イオン(Ru(III)イオン、Rh(III)イオンを含むものである。それ以外は、実施例2と同様にして、模擬廃液からのガラス固化妨害元素のバイオ分離実験およびRuおよびRhの除去率の測定を行った。
図3に、実施例3におけるガラス固化妨害元素(RuおよびRh)の除去率の経時変化を示す。
図3に示される結果から、酵母として、細胞表面にリン酸基が導入された化学修飾株を用いることで、ガラス固化妨害元素(RuおよびRh)の除去率が向上することが分かる。なお、模擬廃液の硝酸濃度が低い(0.1mol/L以下)方が、リン酸基が導入された化学修飾株によるガラス固化妨害元素(RuおよびRh)の分離効率の向上効果が高いことが分かる。
<実施例4>
水で十分に湿潤させた実施例1と同様の市販のパン酵母に対して、50℃に設定された恒温乾燥器を用いて空気乾燥を48時間行い、所定時間(0、0.5、1、3、6、8、24、32および48時間)経過後の酵母の質量を比較し、乾燥前の湿潤した酵母の質量に対する減量化率(質量減少率)を求めた。図4に、乾燥後の酵母の質量(図4(a))および減量化率(図4(b))を示す。
また、湿潤させた市販のパン酵母、および、実施例1で用いた酵母(模擬廃液中のガラス固化妨害元素を分離する実験を行った後にろ過により回収した酵母)に対して、イオン50℃で30時間乾燥した後のパン酵母に対して、600℃で2時間の焼成処理を行い、酵母の減量化率を求めた。図5に、焼成後の酵母の減量化率を示す。
図4および図5に示される結果から、本発明の分離方法で用いられる酵母は二次放射性廃棄物(放射性のガラス固化妨害元素を含む酵母)となり得るが、酵母の乾燥および/または焼成により、この二次放射性廃棄物の減量化が可能であることが分かる。特に、焼成を行うことにより、二次放射性廃棄物(酵母)の減量化率を94%まで高められる。なお、乾燥だけでも、二次放射性廃棄物の減量化率を71%まで高められる。
<実施例5>
実施例5では、模擬廃液として、Rh/Ru系模擬廃液(各々5mmol/LのRh(III)イオンおよびRu(III)イオンを含む液)を用いた。
酵母としては、トルラ酵母、パン酵母(野生株)またはパン酵母(化学修飾株)を用いた。酵母の添加量は、36g/Lであった。なお、トルラ酵母は、市販の乾燥酵母(三輪製薬株式会社)であり、「パン酵母(化学修飾株)」は、実施例3と同様である。
模擬廃液の硝酸濃度は、0.1mol/L(図7)、または、0.01mol/L(図8)であった。なお、硝酸濃度が0.1mol/Lである模擬廃液のpHは1.0であり、硝酸濃度が0.01mol/Lである模擬廃液のpHは2.0である。
それ以外は、実施例1と同様にして、Rh/Ru系模擬廃液からのガラス固化妨害元素(RhおよびRu)のバイオ分離実験および除去率の測定を行った。除去率の測定結果を図7および図8のグラフに示す。
図7および図8に示される結果から、RhおよびRuについても酵母を用いた吸着除去が可能であることが分かる。
なお、トルラ酵母を用いることによって、パン酵母よりも高効率でガラス固化妨害元素(RuおよびRh)を吸着除去できることが分かる。
<実施例6>
実施例6では、模擬廃液として、表1に示される化学組成を有する23金属元素模擬廃液(2.0mol/L硝酸水溶液)を用いて、酵母による各種金属元素の除去率を測定した。酵母としては、パン酵母(野生株)またはトルラ酵母を用いた。各バッチ操作での酵母添加量は36g/Lであった。酵母懸濁液への放射線の照射線量は3.0kGyであった。
なお、実施例6では、計5回のバッチ除去操作を行った(図9および図10の下部参照)。すなわち、バイオ捕集工程および酵母分離工程からなるバッチ操作を3回繰り返し、反応液のpH調整後に、さらにバイオ捕集工程および酵母分離工程からなるバッチ操作を2回繰り返した。
それ以外の点は実施例1と同様にして、23金属元素模擬廃液からの各元素のバイオ分離実験および除去率の測定を行った。
総括除去率(各棒グラフの総長さ)および各段階での除去率(各棒グラフにおける各部分の長さ)の測定結果を図9(パン酵母野生株)および図10(トルラ酵母)に示す。なお、トルラ酵母を用いた場合のガラス固化妨害元素(Pd、Zr、Mo、RuおよびRh)の各段階での総括除去率を表2に示す。
Figure 2023029304000002
Figure 2023029304000003
図9、図10および表2に示される結果から、ガラス固化妨害元素(5種:(Pd、Zr、Mo、RuおよびRh))に関しては、2回バッチ除去操作によってPdとZrが99%以上除去され、5回バッチ除去操作によってMoが99%以上除去され、Ruが96%除去され、Rhが92%除去されており、極めて高い総括除去率を達成することができた。
また、図9および図10に示される結果から、23種の金属元素を含む模擬廃液から、ガラス固化妨害元素(5種)とともに、それ以外の13種の元素、すなわち、アルカリ金属元素(Rb、Cs)、アルカリ土類金属元素(Ba)、希土類元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd)、および、遷移金属元素(Cr、Fe)も分離除去することが可能であることが分かる。ガラス固化妨害元素とともに放射性廃液中の放射性の成分は、酵母を用いて出来るだけ除去することが望ましいため、この点は本分野において有用である。なお、合計18種の元素の総括除去率が60%以上になることも分かる。
なお、図9および図10に示される結果を比較すると、トルラ酵母を用いることによって、パン酵母よりも高効率でガラス固化妨害元素や他の元素を吸着除去できることが分かる。
<実施例7>
実施例7では、酵母として、トルラ酵母を用いた。酵母懸濁液中の酵母の添加量は18g/Lであった。模擬廃液として、Pd/Zr/Mo/Rh/Ru/Nd系模擬廃液(Pd、Zr、Mo、Ru、RhおよびNdの各々の金属イオンを2.5mmol/L含む液)を用いた。模擬廃液の硝酸濃度は1.0mol/Lであった。バイオ捕集工程の反応時間は30分間であった。それ以外は実施例1と同様にして、妨害元素(Pd、ZrおよびMo)の除去率を測定した。各妨害元素の除去率の測定結果を図11に示す。
<実施例8>
実施例8では、模擬廃液として、Rh/Ru系模擬廃液(RhおよびRuの各々の金属イオンを2.5mmol/L含む液)を用いた。模擬廃液の硝酸濃度は0.01mol/L(pH:2.0)であった。それ以外は実施例7と同様にして、妨害元素(RhおよびRu)の除去率を測定した。各妨害元素の除去率の測定結果を図12に示す。
図11および図12に示される結果から、トルラ酵母は、3.0kGy以下の放射線(γ線)暴露状態においても硝酸溶液中のガラス固化妨害元素(5種)を吸着分離する能力を有することが確認された。
本発明の分離方法は、例えば、放射性廃液(原子力発電所の使用済燃料からウランおよびプルトニウムを回収した後に残る液状の廃棄物)などから、ガラス固化妨害元素を分離するために利用される。これにより、放射性廃液をガラス固化体として適切に処分することが可能となる。
なお、本発明の方法によって分離され回収される放射性のガラス固化妨害元素は、例えば中性子を照射することにより、非放射性の元素に変換された後に種々の用途に再利用することができる。

Claims (10)

  1. 硝酸を含む放射性廃液からガラス固化妨害元素を分離する方法であって、
    前記放射性廃液と、酵母と、を含む反応液中で、前記ガラス固化妨害元素を前記酵母に捕集させる、バイオ捕集工程と、
    前記バイオ捕集工程後の前記酵母を前記反応液から分離する、酵母分離工程と、
    を含む、方法。
  2. 前記ガラス固化妨害元素は、Pd、Zr、Mo、RuおよびRhからなる群から選択される少なくとも1種の元素である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ガラス固化妨害元素は、ZrおよびMoの少なくともいずれかを含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記ガラス固化妨害元素は、Pd、Zr、MoおよびRuを含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記酵母分離工程の後の前記反応液と、前記酵母と、を含む2次反応液中で、前記ガラス固化妨害元素を前記酵母に捕集させる、2次バイオ捕集工程と、
    前記2次バイオ捕集工程後の前記酵母を前記2次反応液から分離する、2次酵母分離工程と、をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記バイオ捕集工程において、前記ガラス固化妨害元素のうちPdおよびZrの少なくとも1種の元素を優先的に前記酵母に捕集させ、
    前記2次バイオ捕集工程において、前記ガラス固化妨害元素のうちMo、RuおよびRhの少なくとも1種の元素を優先的に前記酵母に捕集させる、請求項5に記載の方法。
  7. 前記放射性廃液のpHが2.0以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記酵母分離工程で分離された前記酵母を乾燥および/または燃焼させる、減量工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記バイオ捕集工程において、前記反応液中で前記ガラス固化妨害元素を前記酵母に捕集させる処理の時間が10~120分間である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 硝酸を含む放射性廃液から、ガラス固化妨害元素、並びに、Rb、Cs、Ba、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、CrおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を分離する方法であって、
    前記放射性廃液と、酵母と、を含む反応液中で、前記ガラス固化妨害元素、並びに、Rb、Cs、Ba、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、CrおよびFeからなる群から選択される少なくとも1つの元素を前記酵母に捕集させる、バイオ捕集工程と、
    前記バイオ捕集工程後の前記酵母を前記反応液から分離する、酵母分離工程と、
    を含む、方法。
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