JP6162947B2 - 光学フィルタ及び光学機器、電子機器 - Google Patents

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本発明は、光透過性の基板上に屈折率傾斜薄膜と反射防止構造体をこの順に設けた光学フィルタ及びそれを用いた光学機器、電子機器に関する。
各種様々な用途で使用されている光学フィルタは、フィルタ自身の反射に起因した問題を抱えている事が多い。例えば、撮像光学系などで使用される光学フィルタでは、フィルタを透過した光の一部が、他の部材によって反射され、光学フィルタの光出射面から、再び光学フィルタに入射される現象が起きる場合がある。このような場合に、光学フィルタがこの入射光の波長領域に反射率を持っていると、再度光を反射してしまい、これに起因した不具合を発生させる事がある。従って、光学フィルタにおける反射防止機能の更なる強化が強く望まれている。
特許文献1には、反射防止構造体として微細周期構造体を用いたND(Neutral Density)フィルタが開示されている。また特許文献2には、モスアイフィルム上にカラーフィルタ層を形成し、膜厚方向に基板の屈折率に向かって屈折率が擬似的に近づくように構成して反射を低減することが記載されている。
特開2009−122216号公報 WO2010/150615号公報
引用文献1に記載されている基板上に微細周期構造体を設け可視波長域の光を吸収する光吸収膜を反射防止構造体部上に形成されている構成では、これらの界面での光反射が問題となる場合がある。界面の反射を防止するには、引用文献2に記載されているように膜厚方向に基板の屈折率に向かって屈折率が近づく屈折率傾斜薄膜を有する光学フィルタが提案されている。一方、膜厚方向に異種材料の混合比率を変化させた領域を用いて屈折率の傾斜を持たせた薄膜を基板上に形成した場合、屈折率が連続的に変化するタイプであれ、屈折率が段階的に変化するタイプであれ、かかる領域の異種材料組成は、組成を一定とした領域と比較して不安定な組成となる事が多い。
本発明の目的は、微細構造体と屈折率傾斜薄膜を備え、反射率に起因した不具合を低減した光学フィルタの耐環境性を改善することにある。また、このような光学フィルタを撮像光学系に用いる事で、反射率に起因したゴーストを大幅に低減し、同時に安定した環境性を実現できる光学機器を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明の光学フィルタの一態様は、
光透過性を有する基板と、
前記基板上に設けられて膜厚方向に屈折率変化する屈折率傾斜薄膜と、
前記屈折率傾斜薄膜上に設けられて光透過性および耐候性を含んだ多機能膜とを備え、
前記多機能膜の上には、可視光の波長よりも短いピッチの微細構造体を設け
前記屈折率傾斜薄膜は、膜厚方向に屈折率の前記屈折率変化の傾きの正負が変化し、前記基板側の終点及び前記微細構造体側の終点の少なくとも一方の屈折率に向かって単調に近づく屈折率変化となる変化点を含む特性を備え、
前記多機能膜においては、該多機能膜の屈折率と、前記屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の屈折率変化における前記微細構造体側の終点の屈折率との差は、該多機能膜と前記変化点との屈折率差よりも小さいことを特徴とする。
本発明の光学フィルタの他の態様は、
光透過性を有する基板と、
前記基板上に設けられて膜厚方向に屈折率変化する屈折率傾斜薄膜と、
前記屈折率傾斜薄膜上に設けられて光透過性および耐候性を含んだ多機能膜とを備え、
前記多機能膜の上には、可視光の波長よりも短いピッチの微細構造体を設け、
前記屈折率傾斜薄膜は、その膜厚方向において、
可視波長領域の分光透過特性が長波長側になるにつれて高くなる領域と、
可視波長領域の分光透過特性が長波長側になるにつれて低くなる領域と、
を有することを特徴とする
本願発明にかかる光学機器は、上記構成の光学フィルタを撮影光学系に用いたことを特徴とする光学機器である。
本発明によれば、耐環境性に優れ、反射を著しく低減した光学フィルタを得る事ができる。また、このような光学フィルタを特に撮像装置の光量絞り装置などに用いることにより、耐環境性において安定した、高画質化を可能とした装置を得る事が可能である。
本発明に係る屈折率傾斜薄膜の屈折率プロファイル例を示す図である。 本実施例1に記載の光学フィルタの構成例を示す図である。 本発明に係るTiOとTi23の分光透過率特性の例である。 多層膜と屈折率傾斜薄膜の電子顕微鏡図である。 本発明の実施に用いたスパッタ装置の概略平面図である。 本実施例1に記載の屈折率傾斜薄膜の屈折率プロファイルを示す図である。左方に基板が配置され、右方に微細構造体が配置される。 本実施例1により作製された光学フィルタの分光反射率特性を示す図である。 本実施例2に記載の光学フィルタの構成例を示す図である。 本実施例2に記載の光学フィルタの屈折率傾斜薄膜の屈折率プロファイルを示す図である。左方に基板が配置され、右方に微細構造体が配置される。 実施例3のNDフィルタを用いた光学撮影装置の光学系の説明図である。 本比較例により作製された光学フィルタの構成図である。
本発明にかかる光学フィルタは、光透過性を有する基板と、基板上に設けた屈折率傾斜薄膜と、屈折率傾斜薄膜上に設けた多機能膜と、多機能膜上に、可視光の波長よりも短いピッチで多数の微細構造を有する微細構造体を有する。特に、本発明は、微細構造体の下地として多機能膜を設けたことにより、詳細は後述するが、環境安定性に優れ、反射を著しく低減した光学フィルタを実現することができる。
ここで、基板としては、光学フィルタの基板としての強度や光学特性を有するものであり、屈折率傾斜薄膜及び反射防止構造体の形成用の基体として機能可能であるものが利用される。基板としては、BK7やSFL−6などガラス系の材料からなる基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PC(ポリカーボネート)、PO(ポリオレフィン)、PI(ポリイミド)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、及びTAC(トリアセチルセルロース)等から選択した少なくとも1種の樹脂材料からなる基板を用いることができる。また、ガラス基板と樹脂層との複合材料からなる基板や、有機材と無機材を混合させた有機無機ハイブリッド基板を用いることもできる。基板の光学特性として、可視光波長領域における全光線透過率89%以上が好ましく、91%以上がさらに好ましい。全光線透過率は、樹脂材料の基板を用いる際は、特に89%以上が好ましい。
屈折率傾斜薄膜は、その厚さ方向において基板と微細構造体との間に配置される。また、屈折率傾斜薄膜は、その厚さ方向において段階的ないし連続的かつ周期的に変化する屈折率変化を有することが好ましい。この屈折率変化は、
(i)前記基板側において、前記屈折率変化の前記基板側の終点まで、前記屈折率が前記基板の屈折率に近づくように変化する部分と、
(ii)前記反射防止構造体側において、前記屈折率変化の前記反射防止構造体側の終点まで、前記屈折率が前記微細構造体の屈折率に近づくように変化する部分と
を有する。また、(iii)前記屈折率変化の傾き(曲線での変化であれば接線の傾き)の正負が変化し、前記基板側の終点及び前記微細構造体側の終点の少なくとも一方の屈折率に向かって、単調に、すなわち、前記屈折率変化の傾きの正から負への、あるいは負から正への変化点を有することなく、近づく屈折率変化となる変化点を有しても良い。屈折率傾斜薄膜の屈折率変化が段階的である場合における屈折率変化の傾きとしては、屈折率が増加する変化であれば、かかる増加区間の開始点と終了点を結ぶ直線の傾きをとり、屈折率が減少する変化であれば、かかる減少区間の開始点と終了点を結ぶ直線の傾きをとることができる。また、屈折率傾斜薄膜の屈折率変化が段階的である場合においては、屈折率変化が、隣接する段階的な変化部分で光学フィルタにおいて許容される範囲の屈折率変化であればよく、傾きの正負が変化する変化点として、膜厚方向に所定膜厚屈折率が一定となる部分を有するように、すなわち膜厚方向に屈折率が変化しない部分により変化点のピークや底部が形成されているように設けてもよい。
本発明にかかる光学素子の基板側から微細構造体(例えば微細周期構造体)までの膜厚方向での屈折率の変化の一例を、図1(A)及び(B)に示す。上記の屈折率変化の基板側終点とは、例えば、図1(A)におけるAで示された点であり、微細構造体側の終点はBで示された点である。図1(A)に示す例では、屈折率分布の変化の基板側終点(あるいは起点)Aを含む末端部分において、この点Aを含む末端部分において屈折率傾斜薄膜の屈折率が基板の屈折率に近づくように変化している。屈折率分布の変化の微細構造体側終点(あるいは起点)Bを含む末端部分においても同様に、この点Bを含む末端部分において屈折率傾斜薄膜の屈折率が微細構造体の屈折率に近づくように変化している。なお、図1(A)に示す膜厚方向における屈折率プロファイルでは、多機能膜は省略されているが、基板側と微細構造体側の少なくとも一方に多機能膜が設けられる。
図1(B)は、基板側と微細構造体の両方に多機能膜を設けた場合における膜厚方向での屈折率の変化の一例を示している。
多機能膜の屈折率ngb1、ngb2は、基板、屈折率傾斜薄膜、微細構造体の屈折率によって定まる範囲の屈折率である。多機能膜の屈折率ngb1、ngb2と、隣接する基板側終点Aの屈折率na及び隣接する微細構造体側終点Bの屈折率nbのそれぞれの屈折率差は、段階的ないし連続的に変化する屈折率変化の傾きの正負が変化する変化点の屈折率np1、np3と多機能膜の屈折率ngb1、ngb2のそれぞれの屈折率差より小さい。すなわち、以下の条件を満たす。
(1)|ngb1−(np1またはnp3)|>|ngb1−na|
(2)|ngb2−(np1またはnp3)|>|ngb2−nb|
(1)の条件は、基板側に設けられた多機能膜と屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の屈折率の変化の基板側の終点との屈折率差が、基板側に設けられた多機能膜と屈折率傾斜薄膜の屈折率変化の有する変化点との屈折率差よりも小さいことを示している。
(2)の条件は、微細構造体側に設けられた多機能膜と屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の屈折率の変化の微細構造体側の終点との屈折率差が、微細構造体側に設けられた多機能膜と屈折率傾斜薄膜の屈折率変化の有する変化点との屈折率差よりも小さいことを示している。
図1(B)に基づいて、屈折率傾斜薄膜の基板側と微細構造体側の両方に多機能膜を設けた場合について説明したが、多機能膜は屈折率傾斜薄膜の基板側と微細構造体側の一方のみに設けることができる。このように、基板側と微細構造体側の一方のみに屈折率傾斜薄膜を設けた場合においても、多機能膜と屈折率傾斜薄膜の屈折率変化を図1(B)に基づいて説明した条件(1)及び(2)とする。
また、図1(B)における屈折率傾斜薄膜の屈折率変化は、上述した変化点を3つ有するものであるが、かかる屈折率変化のプロファイルはこれに限定されず、屈折率変化の傾きが正から負へ変化する変化点を少なくとも1つ有する屈折率変化のプロファイルについて先に挙げた条件(1)及び/または(2)が適用される。
なお、屈折率傾斜薄膜の基板側または微細構造体側に多機能膜を設けない場合は、図1(A)に示すような屈折率の関係を用いて屈折率傾斜薄膜を基板または微細構造体と隣接させることが好ましい。多機能膜は、多機能膜の両面に隣接する構造体との屈折率差が0.05以下であることが好ましい。
一方、多機能膜の屈折率ngb1、ngb2は、対応する基板側の終点の屈折率na及び微細構造体側の終点の屈折率nbのそれぞれの屈折率から、隣接する基板及び反射防止構造体のそれぞれの屈折率に向かっている膜厚方向における屈折率のプロファイルを有していることが好ましい。すなわち、多機能膜が基板側に設けられている場合においては、多機能膜の屈折率は、屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の屈折率の変化における基板側の終点の屈折率から、隣接する前記基板の屈折率に向かっている。また、多機能膜が微細構造体側に設けられている場合においては、多機能膜の屈折率は、屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の屈折率の変化における微細構造体側の終点の屈折率から、隣接する微細構造体の屈折率に向かっている。この多機能膜の屈折率は、屈折率差が0.05以上の界面が形成されないような一定の屈折率または屈折率変化であればよい。例えば、屈折率傾斜薄膜の屈折率変化の界面での終点から変化点なしに連続的にあるいは所定の屈折率差で段階的に変化して基板または反射防止構造体の屈折率に至る場合や、変化点を含んで屈折率傾斜薄膜の屈折率変化の界面での終点から連続的にあるいは段階的に変化して基板または微細構造体の屈折率に至っても良い。また、屈折率が多機能膜で一定である場合や、変化点がなく隣接する構造体の屈折率に近づくことが好ましい。また、好ましくは、屈折率傾斜薄膜の屈折率変化の両終点とそれぞれ同等か、あるいは隣接する部分の構造体の屈折率との間の屈折率をとる(ngb1がnaとnsの間の屈折率をとる、またはngb2がnbとnarの間の屈折率をとる)と、屈折率傾斜薄膜への耐候性(例えばバリア効果)に加え、隣接する構造体との屈折率差を減らし界面反射を低減することができる。なお、多機能膜は、所定の範囲内で屈折率が変化してもよいが、好ましくは組成が安定で屈折率が一定となるのがよい。これらの好ましい形態は、基板側と反射防止構造体側の一方のみに屈折率傾斜薄膜を設けた場合においても、同様に用いることができる。
屈折率変化が段階的である場合は、屈折率変化が、隣接する部分で光学フィルタにおいて許容される範囲の屈折率変化であればよく、傾きの正負が変化する変化点として、膜厚方向に所定膜厚屈折率が一定となる部分を有するように設けてもよい。
図1(A)に示す点Aは屈折率傾斜薄膜の基板側界面に位置してもよい。また、点Bも屈折率傾斜薄膜の微細構造体側の界面に位置してもよい。
また、成膜方法によっては、基板側を起点として形成される厚さ方向における屈折率傾斜薄膜の最初の領域や、微細構造体側に位置する屈折率傾斜薄膜の最後の領域などで、屈折率が一定である部分が生じても良い。例えば、後述するとおり、基板上に屈折率傾斜薄膜を成膜する際に、複数の薄膜形成用材料の配合比を変化させて膜厚方向での屈折率の連続的な変化を形成する場合、一定の成膜材料濃度で成膜を開始してから、ある時間経過後に複数の薄膜形成用材料の配合比を変化させる場合には、上記のような厚さ方向における屈折率の変化がない部分が生じてもよい。
基板側の屈折率変化の終点における屈折率は、基板の屈折率と同じか、あるいは、基板の屈折率に対して、目的とする光学フィルタの特性において許容される屈折率差の範囲内の屈折率であればよい。微細構造体側の屈折率変化の終点における屈折率も同様に、微細構造体の屈折率と同じか、あるいは、微細構造体の屈折率に対して、透過光の波長または波長領域における目的とする光学フィルタの特性において許容される屈折率差の範囲内の屈折率であればよい。これらの屈折率差は0.05以下が好ましい。従って、上述した厚さ方向における屈折率の変化がない部分が基板側の界面に接して存在する場合についても、この屈折率変化のない部分の屈折率が、基板の屈折率に対して0.05以内の屈折率差を有することが好ましい。この点は、微細構造体側の界面に接して厚さ方向における屈折率の変化がない部分が存在する場合においても同様である。
また、屈折率傾斜薄膜の基板側の屈折率変化の終点と基板との屈折率差も、目的とする光学フィルタの特性において許容される屈折率差であればよく、0.05より小さいことが好ましい。
屈折率傾斜薄膜の厚さ方向の屈折率変化は、各種設定でき、SiO2からなる領域からガスバリア性の強いAl23からなる領域に変化させる場合は1.47〜1.65程度となる。また例えば酸素との結合割合によって光吸収性の変化する材料であるTiを含んだ3種類の元素Si、Ti、OよりSiO2とTiO2を構成し、これらの組成比を変化させ、SiO2からなる領域からTiO2からなる領域に変化させる場合は1.47〜2.70程度の範囲内で変化させることができる。
屈折率傾斜薄膜の膜厚は、目的とする機能に応じて適宜選択できる。屈折率傾斜薄膜の膜厚は、10〜4000nm、より好ましくは100〜1000nmとすることができる。
微細構造体は、所望の光学フィルタの光学特性を得るために必要とされる反射防止機能を有するものであればよい。微細構造体としては、可視光の波長よりも短いピッチで多数の微細な突起が配列された面を有する微細構造体、あるいは可視光の波長よりも短いピッチでの凹凸の繰り返しを設けた面を有する微細構造体を用いることができる。この微細構造体としては、ランダムに形成された針状体及び柱状体等の突起、階段形状に微細に形成された凹凸構造の突出部または凹部によって大気や隣接する媒体との屈折率差を低減したものも含む。この微細構造体としては、公知の微細構造体から目的に応じて選択したものを用いることができる。例えば、基板を透過する可視光の波長よりも短い繰返し周期で配置された多数の突起からなる周期構造、あるいは基板を透過する可視光の波長よりも短い繰返し周期の凹凸構造からなる周期構造を持つ微細周期構造体であれば、光ナノインプリントなどの方法を用いて再現性良く作成することができる。
なお、基板と、膜厚方向に屈折率が連続的に変化する屈折率傾斜薄膜と、所望の光の波長領域において反射防止効果を発現する微細構造体とを、それぞれこの順番に配置し、基板、屈折率傾斜薄膜及び微細構造体の屈折率の関係を上記の(i)及び(ii)のように設定する事で、光学フィルタ内での光の反射を著しく低減させることができる。
ここで、多機能膜としては、光透過性を含んだ多機能膜であり、より具体的には、光学フィルタとして屈折率傾斜薄膜に対する基板や反射防止構造体側からの水分や酸素などの影響を低減して屈折率傾斜薄膜に耐環境性を得るために、屈折率傾斜薄膜に隣接して設けられる。また、多機能膜は、上記のような耐候性膜として機能することから、目的とする耐環境性を屈折率傾斜薄膜に付与でき、かつ、このような耐候性膜としての役割に加えて、隣接する屈折率傾斜薄膜との界面、並びに反射防止構造体及び/または基板との界面における反射を低減し、目的とする光学フィルタの機能を実現することができる。
なお、このような多機能膜の構成材料としては、例えば、SiOx(x=1.5〜2.0程度)やSiAlxOy等を挙げることができ、膜厚方向で略一定の組成となるように構成されることが好ましい。
多機能膜の屈折率は、多機能膜に隣接する屈折率傾斜薄膜等の屈折率と同じか、あるいは、これらの屈折率差が、目的とする光学フィルタの特性において許容される範囲内にあればよい。
例えば、屈折率傾斜薄膜の微細構造体側に多機能膜を設ける場合については、多機能膜と接する屈折率傾斜薄膜の界面領域の屈折率と多機能膜の屈折率を同じとするか、これらの屈折率差を0.05以下とすることが好ましい。また、微細構造体とこれに隣接する多機能膜の屈折率を同じとするか、これらの屈折率差を0.05以下とすることが好ましい。
一方、屈折率傾斜薄膜の基板側に隣接して多機能膜を設ける場合については、多機能膜と隣接する屈折率傾斜薄膜の界面領域における屈折率と多機能膜の屈折率を同じとするか、これらの屈折率差を0.05以下とすることが好ましい。また、基板とこれに隣接する多機能膜の屈折率を同じとするか、これらの屈折率差を0.05以下とすることが好ましい。
多機能膜の厚さは、目的とする光透過性と耐候性が得られるように設定すればよく、より厚い方が良く、例えば、少なくとも10nm、好ましくは10〜100nmの範囲から選択することができる。
さらに多機能膜は1層だけでなく、複数層によって構成される事も可能である。例えば、Al23層を形成した後SiO2層を形成し、2層の多機能膜としても構成可能であるが、その場合は反射を考慮し、多機能膜を構成する層の各界面の屈折率差をできるだけ小さくする事が望ましい。この屈折率差としては0.05以下が好ましい。
なお、図1に示した屈折率プロファイルにおいて説明したような屈折率傾斜薄膜の材料組成が一定である領域の少なくとも一方を、多機能膜として機能する厚さで形成して多機能膜とすることもできる。このような構成とすることにより、多機能膜から屈折率傾斜薄膜までを、あるいは屈折率傾斜薄膜から多機能膜までを、連続して形成し、これらの屈折率傾斜薄膜と多機能膜との間での屈折率変化を連続的な変化とすることが可能となる。このような連続成膜法を用いて、屈折率傾斜薄膜がすくなくとも1種の金属若しくは半金属原子を含んでいる場合には、多機能膜を、屈折率傾斜薄膜に含まれる少なくとも1種の金属原子若しくは半金属原子を含む材料から形成することができる。あるいは、屈折率傾斜薄膜が少なくとも1種の酸化物を含むものである場合には、多機能膜を、屈折率傾斜薄膜を形成している少なくとも1種の酸化物の飽和酸化物から形成することができる。多機能膜を複数の金属または半金属元素を用いて形成すると屈折率設定の自由度を向上させ耐環境性と反射の低減を行い易い。
本発明にかかる光学フィルタの構成は、種々の光学フィルタに利用できる。
以下、本発明の光学フィルタについて、周囲雰囲気等の影響を受けると特性が大きく変化し易い吸収膜フィルタである、NDフィルタの作製について実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
図2のように構成した吸収タイプのNDフィルタについて、以下に詳しく記載する。なお、以下の各実施例における屈折率は、基板、屈折率傾斜薄膜、多機能膜及び微細構造体の構成材料から540nmの波長の光での屈折率として特定できるものである。
<NDフィルタについて>
光吸収を持つタイプの光学フィルタでは、吸収構造体を有する面の反射率を限りなくゼロに近づけておけば、光吸収特性を調整する事によって所望の透過特性を得る事が可能である。
固体撮像素子の更なる高感度化、高精細化等に伴い、撮像装置の絞りのハンチング現象や光の回折現象の対策には、NDフィルタが用いられている。真空成膜法により多層膜を透明基板に成膜したNDフィルタにおいても、フィルタ自身の反射に起因した、ゴーストやフレア等の撮影画像への不具合が生ずる可能性が高まってきており、可視光波長領域における分光反射率を従来以上に低減することが1つの大きな課題となっている。
図2(a)に示したように、本実施例では、基板13の片面側に他の多機能膜である多機能膜171を形成した後、その上に屈折率傾斜薄膜12を配置し、さらに屈折率傾斜薄膜12上に多機能膜172と微細周期構造体151をこの順に配置し、基板13の裏面にも反射防止構造体112を配置した。この光学フィルタは、屈折率傾斜薄膜12の組成を可視光領域で吸収を持つように組成を調整することにより、NDフィルタとして機能する。
図2(a)のような構成の場合、基板の反対面での反射が大きくなってしまう為、この面にも何らかの反射防止構造体112が必要となる場合が多い。このような反射防止構造体112としては、反射防止効果を持つ微細周期構造体や、複数層の薄膜で形成された反射防止膜更には微細周期構造体と反射防止膜を併用した構成などが挙げられるが、適宜最適な構成を選択すれば良い。
このような構成であれば、例えば撮像素子側にフィルタのどちらの面を向けても、フィルタの反射に起因したゴースト光の発生を抑制する事ができるなど、フィルタの方向を選ばす光学系内に配置する事も可能となる。
図2(a)(b)中でも、反射低減及び基板からの水分、酸素の侵入防止の観点からは図2(a)に示したような構成にする事がより望ましい。特に、樹脂材料などで基板が吸湿性を持っている場合、基板側から屈折率傾斜薄膜への水分、酸素の侵入を大きく低減することができる。従って、本実施例では図2(a)の屈折率傾斜薄膜の基板側と微細構造体側に多機能膜を配置し、反射防止構造体112として、微細周期構造体を形成した。
このような光学フィルタを形成する基板13には厚さ0.1mmのアートンフィルム「ARTON(商品名、JSR株式会社製)フィルム」を使用した。本実施例ではアートンフィルムを使用したが、これらに限らずガラス系の材料でも良いし、他の樹脂系の材料を使用する事も可能である。
<屈折率傾斜薄膜について>
屈折率傾斜薄膜12は、メタモードスパッタ法により、SiO2とTiOx膜の成膜レートを調整しながら、この2種類を混合させ、屈折率を膜厚方向で連続的に変化させる事で、所望の吸収特性を得るように調整し作製した。基板と薄膜との密着性が問題となる場合は界面活性剤などで形成された密着層を挿入しても良い。但し、密着層と隣接する物質との屈折率差等に注意することが望ましい。ここで、上述した多機能膜は、ここでいう密着層を含めた膜を含むものとなる。すなわち、ここでの多機能膜は、所望の耐候性と光透過性に加え、基板と薄膜との密着性を含めた機能膜となる。
一例を示すと、xが1相当となるTiOでは可視波長領域での分光透過特性が図3中の(a)のように、長波長側につれ徐々に高くなるような特性になる傾向がある。xが1.5相当となるTi23では可視波長領域での分光透過特性が図3中の(b)のように、長波長側になるにつれ徐々に低くなるような特性になる傾向がある。そこで、これらのように、分散形状が相反する領域を屈折率傾斜薄膜12の膜厚方向に配置した組合せを1以上設ける事で、総体として分光透過特性を平坦に調整した。一般的な光学薄膜に使用される金属酸化物において金属と酸素の割合が変化する場合には同様な傾向を示す。金属酸化物のこの特性を利用して平坦性を改善にするように膜設計を行うことができる。ここで、xの値を可変させる事で、屈折率も変化する為、これを踏まえ、予め得た基礎デ−タより、SiO2との成膜比を決定し制御を行う必要がある。xの値を膜厚方向で可変させる具体的な手段については、酸化源のパワーを調整したり、成膜方法によっては導入するガス量を調整する事などで制御する事が可能である。
このような屈折率傾斜薄膜は、膜厚方向に対し、基板側から連続的に屈折率が増減するような変化を持っており、屈折率傾斜薄膜両端の界面に向かうにつれ、それぞれ隣接する構造体の屈折率に近づくような変化をとっている。更に、この界面領域を構成する材料は、光学特性への影響を考慮し可視域で透明であり、同時に隣接する物質からの酸素移動や、水蒸気の浸入を低減させる意図から、前記した材料で形成可能な組成の中でも飽和酸化物の組成を取るように調整した。より具体的には、微細構造体側及び基板側の両方の界面でSiO2の組成となるようにした。本実施例の成膜手法で作製されたSiO2膜の屈折率は1.47程度であり、基板の屈折率は1.52程度、微細構造体の屈折率は1.51程度であり、微細構造体側及び基板側の両方の界面で屈折率差が概ね0.05以下とした。そして、この飽和酸化物で形成された領域をガスバリアの機能を発現できる十分な厚さである50nmとする事で、多機能膜とした。
屈折率傾斜薄膜は、膜面に垂直な方向、つまり膜厚方向に屈折率が連続的、好ましくは連続的かつ周期的に変化している薄膜の事である。膜厚方向に屈折率が、連続的かつ周期的に変化している膜は、ルゲート膜、ルゲートフィルタなどと呼ぶことも可能である。図4に多層膜と屈折率傾斜薄膜の電子顕微鏡写真の模式図を示す。図4(a)は多層膜の膜厚方向断面の模式図であり、図4(b)が屈折率傾斜薄膜の断面の模式図である。例えば、色の濃い部分がSiO2で、色の薄い(白抜き)部分がTiO2とすると、多層膜では膜の界面が明確に分かれているのに対して、屈折率傾斜薄膜では、多層膜と異なり、膜の界面が明確に分かれていない。また、屈折率傾斜薄膜の屈折率変化の大きい部分ではコントラストが強くなる。
また、深さ方向分析によって得られた結果を、縦軸に濃度(強度)、横軸に深さ(膜厚など対応するパラメーター)を取ったプロットをデプス・プロファイルという。測定試料の表面から内側に向かって組成分布を調べる深さ方向分析において、ミクロンオーダー以下の分析には加速イオンを用いて表面を削り取りながら分析する手法が良く用いられる。この方法はイオンスパッタリング法と呼ばれ、X線光電子分光法(XPS)やオージェ電子分光法(AESまたはESCA)などとして知られている。屈折率傾斜薄膜中の膜厚方向における組成の変化を評価し、デプス・プロファイルを得る事により、所望の屈折率分布を得る事ができているのかを確かめる事が可能である。
このような屈折率傾斜薄膜の設計手法は以前より各種様々な方法が検討されており、連続的な変化とは異なり、階段状に徐々に屈折率が変化するステップ型の屈折率分布であっても、この屈折率分布を調整する事で、連続的なインデックス変化を持たせた膜と、略同様の光学特性を得る事も可能である事が判明している。しかし、反射低減などにおいては、連続的な屈折率変化を持った方が、より理想的な特性を得る事ができる。さらに薄膜中で界面が無くなり前後の膜組成が非常に近くなる事から、膜の密着強度の向上や、環境安定性の改善などの効果が現れる。このような観点からは、屈折率が連続的に変化する屈折率分布を選択する方が良い。
例えばスパッタ法においては、2種類の材料に対して同時に放電し、各材料の放電パワー、つまりターゲットへの投入パワーを変化させ、混合比を変える事で、2つの物質の間の屈折率を持つ、中間屈折率材料を作製する事が可能である。また、混合する種類は2種類以上であっても良い。このようなスパッタ法の場合、1つの材料を低パワーとしていくと、放電が不安定になったり、メタモードスパッタの場合は、反応モードになってしまったりするなどの不具合が生じる。従って、2物質間の全ての屈折率を実現する為には、例えばマスク法により成膜量をコントロールするなど、投入パワー以外の要素も並行して調整し、膜厚を制御する必要があるが、この場合は、装置の機構や、制御が少なからず複雑化する。
<スパッタ装置構成>
図5は、本実施例で示す屈折率傾斜薄膜を作製したスパッタ成膜装置の基板搬送装置の回転軸に直交する面での平面断面図である。
スパッタ成膜装置としては、薄膜が形成される基板51を保持する回転可能な円筒状の基板搬送装置52を真空槽53内に備え、基板搬送装置52の外周部とその外側の真空槽53との間の環状空間に、2箇所のスパッタ領域54、55と、反応領域57が設けられている装置を用いた。領域59から基板を搬入する。
基板51は成膜される面が外側を向くように基板搬送装置52に搭載させた。スパッタ領域54、55には、ACダブル(デュアル)カソードタイプのターゲット54a、55aが装備されている。真空槽53の外側に高周波電源56が配置されている。ターゲット材の形状は平板型に限らず、円筒型のシリンドリカルタイプであっても良い。また、これらの他に、別途領域58には、例えばグリッド電極を有する高周波励起によるイオンガングリッドや、基板への正イオンの電荷蓄積を防ぐために正イオンを中和する低エネルギー電子を放出するニュートラライザ等を設ける事も可能である。本発明に用いるスパッタ装置は、例えばスパッタ領域を3領域以上設けても良く、上記装置以外の構成でも実施可能である。
本実施例では図5で示したスパッタ装置を用い、スパッタ領域54にSiターゲット、スパッタ領域55にTiターゲットを配置し、反応領域57には酸素を導入した構成で屈折率傾斜薄膜を形成した。基板搬送装置52に固定された基板51を高速回転させ、スパッタ領域54、55において、基板51上にSiとTiの極薄膜を形成した後、反応領域57でSiとTiの極薄膜を酸化させる。これにより、SiとTiの酸化膜を形成し、この動作を繰り返す事でSi酸化膜とTi酸化膜の混合膜を作製した。さらに、各スパッタ領域でのスパッタレートや酸化レートを、成膜中に連続的に変化させる事で、膜厚方向において連続的に屈折率が変化する屈折率傾斜薄膜を形成した。また、SiOとTiOのそれぞれ単独での成膜条件を基に、SiとTiのスパッタレート、及び酸化レートを制御する事で、SiOとTiO相当となる混合膜を作製する事も可能である。また、SiO膜単体の屈折率からTiO膜単体の屈折率まで、屈折率を連続的に変化させる場合には、投入パワーを低くすると放電が不安定になる事がある為、酸化レートの制御時に、投入電力の制御だけではなくカソード上に設けたマスク機構を併用した。
このような連続的な屈折率プロファイルを持つ屈折率傾斜薄膜の例が図1である。図1では、比較的高屈折率を持つ基板から、屈折率傾斜薄膜、多機能膜、微細構造体の順に積層されている。そして、膜厚方向に対し、基板側から連続的に屈折率が増減するような変化を持っており、屈折率傾斜薄膜両端の界面に向かうにつれ、それぞれ隣接する構造体の屈折率に近づくような変化をとっている。
以上より、メタモードスパッタ法においては、放電を安定的に維持、制御できる範囲内で屈折率を変化させた。また、膜厚方向に屈折率を連続的に変化させる事に加え、TiOxのxを膜厚方向で変化させ、消衰係数も変化させることも可能である。このように、本実施態様の構成においては、屈折率傾斜薄膜の膜厚方向において、Ti、Si、Oの3種元素の組成比を連続的に変化させる事で、屈折率及び消衰係数を連続的に変化させる事ができる。他の物質を使用した場合や、屈折率傾斜薄膜を構成する物質の種類が増えた場合であっても、同様に調整する事が可能である。また、薄膜の密度を連続的に変化させる事でも組成を連続変化させる事が可能である。
本実施例においては、屈折率傾斜薄膜12は、図6(a)で示すような屈折率のプロファイルを持つ構成とした。図6(a)中の山谷を複数形成したような図6(b)に示すプロファイルを形成する事も可能であるが、制御の容易性などを考慮して、複雑化しないように設計した。
図6(a)の屈折率プロファイルにおいて、基板側の界面点P0から点P1にかけては、TiOxのxは約1.5で固定されており、SiO2との組成比を変化させる事で連続的な屈折率変化を形成した。
次に、点P1から点P2を通過し点P3に近づくにつれ、TiOxのxは1.5から1.0に連続的に変化させている。これと同時にSiO2との組成比を変化させ、点P1から点P2に近づくにつれTiOxに対しSiO2の組成比を増やし、更に点P2から点P3に近づくにつれ、TiOxに対しSiO2の組成比を減少させる事で連続的な屈折率変化を形成した。
さらに、点P3から反射防止構造体側の界面点P4にかけては、TiOxのxは約1.0で固定されており、SiO2との組成比を変化させる事で連続的な屈折率変化を形成した。
点P1付近ではTi23の影響を大きく受けた分光透過を示し、点P3付近ではTiOの影響を大きく受けた分光透過を示す。従って、このように構成する事で、屈折率傾斜薄膜中に、可視波長領域において図3で例示したような異なる分散特性を持つ領域を混在させ、膜厚や組成比により影響度を調整する事で、所望の透過特性を得る事が可能となる。本実施例においては、可視波長領域において分光透過特性が平坦な形状となるように、これらを調整した。
図7に示すような吸収を持たすために、基板13の屈折率から屈折率を2.1まで上昇させ下降させる山が2つとなる屈折率プロファイルとした。屈折率傾斜薄膜12の終点では、反射防止と環境安定性の観点からSiO2となるように構成した。そのため、屈折率傾斜薄膜12の終点の屈折率は、およそ1.47となる。
TiOの影響を強く受けた分光透過を示す領域と、Ti23の影響を強く受けた分光透過を示す領域とを、屈折率傾斜薄膜中に構成した。その結果、可視波長領域において図6で例示したような異なる分散特性を持つ領域を混在させる事で、所望の透過特性を得る事が可能となる。
また、基板と微細構造体の界面は、屈折率差が生じ易い。反射防止の観点から基板と微細構造体に近い領域は、屈折率変化が緩やかな膜設計を行った。反射防止の観点からは図1に示した概念図のように屈折率差をできるだけ生じさせないように設計することが好ましい。しかしながら、本実施例のような吸収フィルタの場合は、所望の吸収を得るために屈折率が高い領域が必要となる。そのため、屈折率傾斜薄膜は基板に近い方から屈折率が緩やかに上昇し、変曲点を経て、微細構造体に向かって微細構造体の屈折率に緩やかに近づくことが好ましい。
一方、基板と屈折率傾斜薄膜との界面、および屈折率傾斜薄膜と微細構造体との界面においても、屈折率が異なるとその屈折率差に応じて反射が発生する。そこで、これらの界面での反射が問題となる場合は、屈折率差は出来るだけ小さくする事が望ましい。本実施例では、予め多機能膜と基板、及び多機能膜と微細構造体との屈折率差を考慮して、各構造体を形成する材料を選定する事で、2つの界面での屈折率差をそれぞれで0.05以下となるように調整した。また、屈折率傾斜薄膜12の膜厚は800nmとした。屈折率傾斜薄膜の膜厚は、薄い方が基板から微細構造体までの屈折率の変化率が急峻になる。そのため、反射防止の観点からは、膜厚が厚い方が好ましい。
<反射防止構造体について>
前述のように、同一プロセスで連続的に屈折率傾斜薄膜12上に他の多機能膜である多機能膜172を形成した後、UV硬化樹脂を用いた光ナノインプリント法により、多機能膜172上と、基板13の裏面側に、反射防止効果を持つサブミクロンピッチの反射防止構造体としての微細周期構造体151と反射防止構造体112を形成した。
反射防止効果を持つ微細周期構造体は、モス・アイ構造体などとも呼ばれ、構造体の形状を擬似的に屈折率の変化が連続的となる形状とする事で、物質間の屈折率差に起因した反射の低減を図ったものである。
基板上にピラーアレイ状に円錐体が配置することや、ホールアレイ状に配置した微細周期構造体の形成も可能である。このような構造体は、真空成膜法などで薄膜を単層、または複数層積層する事により作製する反射防止膜とは別の手段として、例えば物質表面などに生成される事が多い。
このような微細周期構造体の作製に関しては、様々な方法が提案されているが、本実施例ではUV硬化樹脂を用いた光ナノインプリント法を用いた。
微細周期構造体は円錐体を周期的に配置したピラーアレイ状とし、NDフィルタの用途を考慮し、少なくても可視波長領域の反射率は低減できる構造となるように、高さ350nm、周期250nmとなるように設計した。突起構造体の配列に関して、正方配列や、三方(六方)配列などが考えられる。三方配列の方が密度が高く、基板材料の露出面が少ない事などから、反射防止効果が高いため本実施例では三方配列のピラーアレイとした。
先に設計された形状を反転させたホールアレイ形状を持つモールドとしての石英基板に、UV硬化樹脂を適量滴下した。その後、インプリントを施す基板に石英モールドを押し付けた状態でUV光を照射する事で樹脂を硬化させ、サブミクロンピッチのピラーアレイ状の微細周期構造体151および反射防止構造体112としての微細構造体を作製した。各種のUV硬化樹脂を用いることができるがここでは、硬化後の屈折率を1.50に調整した東洋合成社製PAK−01―CL(商品名)を用いた。
ここで、屈折率傾斜薄膜と微細周期構造体との密着性を向上させるために、プライマー処理を行い、屈折率傾斜薄膜上と微細周期構造体との間に密着層を設けた。ここでは、多機能膜は、上記密着層を含めた膜を含むものとなる。すなわち、ここでの多機能膜は、所望の耐候性と光透過性に加え、屈折率傾斜薄膜と微細周期構造体との密着性を含めた機能膜となる。プライマー液としては、界面活性剤である信越化学社製のKBM−503(商品名)をベースに、IPA(イソプロピルアルコール)や硝酸を適量加え、塗工後の硬化した密着層の屈折率が1.45となるように調整したものを用いた。これを、0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタを介し屈折率傾斜薄膜上に滴下し、スピンコートにより極薄膜となるように塗工した後、120℃10分間の乾燥処理をおこなって密着層を形成した。更に密着力を強化する必要がある場合は、前述のプライマー液の成分に更にTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)などを加えても良い。また、プライマー液をより均一に塗工する為に、プライマー液塗工前に、基板にはUVオゾンによる親水化処理を施す事がより好ましい。さらに、基板両面に形成する場合は、濃度を適宜調整し、ディップコートにより塗工しても良いし、スピンコートで片面塗工した後に基板の表裏を変え、もう一方の面を再度スピンコートで塗工しても良いが、本実施例では後者を選択した。密着層と隣接する構造体との屈折率差も0.05以内とすることが好ましい。
ここで、NDフィルタのように可視波長全域に吸収を持つフィルタの場合、紫外域にも吸収を持っている場合が多い。従って、使用するUV光の波長によっては、フィルタの基板側から光を照射した場合、NDフィルタがその光の少なくとも一部を吸収してしまい、十分な光が樹脂まで届かない場合がある。従って、そのような場合はモールド側からUV光を照射する必要があり、必要なUV光の波長を十分に透過する材質のモールドを選択する必要がある。
更に、光ナノインプリントのプロセスを考慮すると、基板13の片面にインプリントを施し、その後もう一方の面にインプリントすると、最初に形成した微細周期構造体に欠けやクラックなどのダメージを与えてしまう場合も想定される。従って、基板両面にそれぞれインプリント用のモールドを配置し、両面同時に光ナノインプリントを実施する手法を選択した。この場合、UV光源も基板両面に2つ配置することで生産性を高めることができる。
なお、本実施例では、屈折率傾斜薄膜とこの上に形成される微細周期構造体との間に多機能膜を設けているが、光学フィルタとして所望の光透過性を確保しつつ環境安定性を高めるためには、上述した通り、基板と屈折率傾斜薄膜との間にも、光透過性を有する防湿性膜(バリア膜)、光透過性を有するガスバリア膜等の多機能膜(他の多機能膜)を設けるのがよい。この場合、それぞれの多機能膜は、所望の光透過性と環境安定性(耐候性)とを持たせるのがよく、特に、屈折率傾斜薄膜と微細周期構造体との間の多機能膜については、微細周期構造体の構成を考慮した所望の密着性を持たせるのがよい。したがって、多機能膜は、光学フィルタの用途に適した光透過性を持ち合わせ、さらに環境安定性を高めるためのバリア性と、必要に応じて密着性を兼ね備えた複合的な機能を持つ膜となる。なお、多機能膜は、1つ(単一)の膜から構成してもよいし、複数の層を積層した膜構成としてもよい。
<光学フィルタの特性>
このようなNDフィルタサンプルの、分光反射率特性、及び分光透過率特性が図6である。濃度は約0.75程度である。測定には、(株)日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U4100を用いた。
このように作製されたNDフィルタ複数個を60℃、湿度90%の高温高湿試験に投入し、1000時間経過後の波長540nmでの透過率を試験前後で比較した。透過率変化は全サンプルの平均で、17.9%から18.3%となった。後述する比較例に対して優れた耐環境性を得ることができた。
なお、本実施例においては、本構成での効果を明確化する為に、比較的酸化し易いとされるTiを使用したが、より酸化し難い材料、例えばNbやNiなどを用いる事で、より透過率変化を小さくする事が可能な場合もある。また、スパッタ法を用いることで、蒸着法などと比べて、密度の高い薄膜を安定的に形成することができる。更に、本実施例において、屈折率の制御に酸化物を用いたが窒化物でも良く屈折率傾斜薄膜として、連続的、周期的に屈折率が変化すれば各種の化合物を用いることができる。
多機能膜の上にはバッファ層を設けても良い。バッファ層として密着層を設ける場合における密着層形成用の材料としては、シランカップリング剤の他には、Cr、Ti、TiOx、TiNx、SiOx、SiNx、AlOx、SiOxNyなどの無機材料や各種の有機材料が挙げられる。密着性を高める層の材質に応じて公知の材料から密着層形成用の材料を適宜選択して用いることができる。密着層の膜厚は、目的とするフィルタの光学的機能及び密着性が得られるように設定すればよい。密着層は、例えば10nm以下の薄膜として形成してもよい。
(比較例)
実施例1での環境安定性の効果を考察する為に、屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の両界面では実施例1と同じ材料組成だが、数十nm程度の一定膜厚を持った多機能膜は形成せず、その他は実施例1と同様となるように作製した光学フィルタ24について以下に記載する。
実施例1と同様に、図11に示すように、基板23の片面側に、屈折率傾斜薄膜22を形成した後、屈折率傾斜薄膜22上と、基板裏面に微細周期構造体251、252を光ナノインプリント法により形成した。多機能膜は形成していないが、界面材料は同じである為、光学特性は実施例1と略同様となった。
このようなNDフィルタ23を形成する基板21には厚さ0.1mmのArton(商品名)フィルムを使用した。SiO2とTiOxはメタモードスパッタ法により形成した。このように作製した複数個のNDフィルタを60℃、湿度90%の高温高湿試験に投入し、1000時間経過後の波長540nmでの透過率の上昇率を確認したところ、その透過率変化は平均で、17.9%から18.8%となった。特に実施例1で作製されたNDフィルタと比較すると、大きな変化を示す結果となった。
(実施例2)
光学フィルタを構成する実施例1以外の他の構成例として、例えば図8(a)(b)に示すように、基板両面に屈折率傾斜薄膜、微細構造体、多機能膜をそれぞれ配置する事も可能であり、これを各種の光学フィルタに適用する事が可能である。多機能膜は屈折率傾斜薄膜の膜厚方向における両方の界面に形成される事が望ましいが、基板がBK7やSFL−6などのガラス系材料の場合などは、微細構造体側のみに配置しても十分な効果が得られる場合がある。
実施例1では多機能膜を完全飽和酸化物となるSiO2としたが、ガスバリア効果と透明性、隣接物質との屈折率差などを所望の値で制御できれば良く、更には屈折率傾斜薄膜と同じ作製プロセスで連続的に形成可能である事がより望ましく、これらの条件を満足すれば、SiOxにおいてxは2に固定される必要はなく、例えばx=1.5〜2.0程度であっても良いし、透明性が不要な場合は、xは目的とする屈折率とガスバリア機能に応じて任意の値を取る事も可能であるし、SiNxなどの窒素化合物を選択する事も可能である。また、SiOxCyを選択する事も可能である。また、多機能膜を形成する他の材料としては、透明性、ガスバリア性、連続プロセスでの作製などを考慮すると、SiOxだけではなく、Al23や、Al23とSiO2の混合膜、若しくはAlOx、さらにはAlOxとSiOyの混合膜やSiOxNy膜、さらにはこれらを組合せた膜などが特に望ましい(x及びyは各組成で飽和状態を形成する範囲までの内、目的とするガスバリア機能及び屈折率等に応じて選択できる)。
例えば、図8(b)の構成で、屈折率傾斜薄膜が図9(a)に示すような屈折率プロファイルを持つように、BK7基板上にAl23とSiO2を混合させた厚さ50nmの多機能膜371をメタモードスパッタプロセスで作製した。その後各材料の酸価を変化させつつ同プロセスで連続して膜厚が800nmの屈折率傾斜薄膜を形成した後、更に同一プロセスで連続的にAl23とSiOxを混合させ、多機能膜372を形成した。多機能膜372は屈折率が1.52となるようにAl23とSiOxの組成比を調整した。多機能膜372の形成後、基板33を反転させ多機能膜371、屈折率傾斜薄膜321、多機能膜372と同様な光学特性となるように、多機能膜373、屈折率傾斜薄膜322、多機能膜374を形成した。その後、実施例1と同様の光ナノインプリント法により同様に、微細周期構造体351、352を形成した。このように作製された光学フィルタは、その基板の屈折率が約1.52であり、微細周期構造体の屈折率が約1.51であり、屈折率傾斜薄膜と多機能膜は連続的に形成されている為、各層界面での屈折差は0.05以下に調整された。
実施例1と非常に近い分光特性を得られるように制御し作製した複数個のNDフィルタを60℃、湿度90%の高温高湿試験に投入し、1000時間経過後の波長540nmでの透過率の上昇率を確認したところ、一例であるが、その透過率変化は平均で、18.0%から18.3%となった。
更に別の作製例として、図8(b)の構成で、屈折率傾斜薄膜が図9(b)に示すような基板側終点から単調に上昇し屈折率変化の傾きが正から負に変化する変化点、負から正に変化する変化点、屈折率変化の傾きが正から負に変化する変化点から単調に反射防止側終点の屈折率に近づくように変化する構成とした。このような屈折率プロファイルを持つように、PETフィルム基板上にAl23をメタモードスパッタプロセスで厚さ50nm作製し多機能膜371を形成し、その後TiOxの酸価を変化させつつ同プロセスで連続して膜厚が800nmの屈折率傾斜薄膜321を形成した後、更に同一プロセスで連続的にAl23とSiOxを混合させた膜を50nm形成する事で多機能膜372を作製した。多機能膜371は屈折率が約1.65であり、多機能膜372は1.52程度となるようにAl23とSiOyの組成比を調整した。本例のように多機能膜371と多機能膜372とが異なる材料や、異なる組成比で構成されても良い。多機能膜372の形成後、実施例1と同様の光ナノインプリント法により微細周期構造体を形成した。このように作製された光学フィルタは、その基板の屈折率が約1.61であり、微細周期構造体の屈折率が約1.51であり、屈折率傾斜薄膜と多機能膜は連続的に形成されている為、各層界面での屈折差は0.05以下に調整された。
実施例1に近い分光特性を得られるように制御し作製した複数個のNDフィルタを60℃、湿度90%の高温高湿試験に投入し、1000時間経過後の波長540nmでの透過率の上昇率を確認したところ、一例であるが、その透過率変化は平均で、17.2%から17.5%となった。
また、実施例1、実施例2ではメタモードスパッタ法によりSiO2とTiOxの2種材料の混合膜を作製し、膜厚方向でその混合比率を変える事で連続的な屈折率を持つ傾斜薄膜を形成したが、材料はこれに限らず、NbOxやTaOx、ZrOx、AlOx、MoSiOx、MoOx、WOxなど、様々な金属または半金属の酸化物などを使用する事が可能である。前述したような屈折率傾斜薄膜と界面をなす構造体の屈折率などの関係から、必要とされる屈折率を実現できる材料であれば良く、プロセス上の制約などを考慮し、時々で最適な材料を選択すれば良い。また、3種類以上の金属または半金属の元素を含んだ材料を組合せても良い。3種類以上の材料を組合せると安定的に屈折率を傾斜させることが可能となり、吸収の低減など消衰係数の調整も行い易くなり設計の自由度が広がる。この際、酸化物に限らず窒化物でも同様に設計の自由度を広げることができる。
さらに、反応性蒸着やスパッタなどを用いる場合は、その導入ガスを制御し、屈折率や消衰係数を制御する事で傾斜薄膜を形成する事も可能である。膜厚方向で傾斜薄膜中の一部に吸収を持たせる構成でも良いし、全体的に吸収を持ちつつ屈折率を連続的に変化させても良い。成膜手法もメタモードスパッタ法だけに限らず、他のスパッタ法や、各種の蒸着法などでも良い。
本実施例のように形成された屈折率傾斜薄膜は、高密度の膜となり膜応力が問題となる事がある。その場合は、剛性の高いガラスなどの基板を用いると膜応力による反りなどの不具合を低減できる。また、屈折率傾斜薄膜を基板の両面に設けることで、それぞれの膜応力を打ち消しあい安定した光学フィルタを製造することができる。
特に、本実施例に用いた基板の両面に屈折率傾斜薄膜、微細周期構造体を設ける構成とすることにより、膜応力に対する基板の安定性を得ることができる。基板両面に成膜することによる基板の反り防止効果は、厚さの薄い樹脂材料の基板を用いる場合に、大きくなる。加えて、微細周期構造体を両面から光ナノインプリントにより一連の連続または同時の工程で形成することができるため生産性に優れる。
更に、屈折率傾斜薄膜を、上述した少なくとも1種の金属または半金属の酸化物から形成した場合には、屈折率傾斜薄膜を構成する少なくとも1種の金属または半金属元素を含む材料から構成したり、あるいは屈折率傾斜薄膜に含まれる少なくとも1種の酸化物の飽和酸化物(酸素原子を飽和状態まで含む酸化物)を含む材料から構成することで、屈折率傾斜薄膜から多機能膜までの屈折率変化を段階的ないし連続的に、変化させてこれらの界面での反射を効果的に低減することが可能となる。屈折率変化が段階的である場合は、屈折率変化が、隣接する部分で光学フィルタにおいて許容される範囲の屈折率変化であればよく、傾きの正負が変化する変化点として、膜厚方向に所定膜厚屈折率が一定となる部分を有するように設けてもよい。
(実施例3)
次に、本発明のNDフィルタを備える光量絞り装置を光学装置(ビデオカメラ)に適用した実施例について図10を用いて説明する。図10において、41はレンズユニット41A〜41Dを有する撮影光学系である。42はCCD等の固体撮像素子であり、撮影光学系41によって形成される光線a、bの像を受光し、電気信号に変換する。43は光学ローパスフィルタである。撮影光学系41は、図10に示したNDフィルタ44、絞り羽根45,46、地板47で構成される光量絞り装置を有している。
以上の実施例の構成によれば、解像度低下の少ないNDフィルタを提供することができる。NDフィルタ44に本実施例1及び2で作成した屈折率傾斜薄膜を用いたNDフィルタを用いたものは、組み立て後に撮影した画像と組み立てから1ヶ月経過した画像を比較してもカラーバランスの違いは認識できなかった。
これにより作製された光量絞り装置は、フィルタの反射に起因したゴーストなどの不具合を著しく低減する事ができ、優れた耐環境性を有する。
これに限らず、他の光学装置であっても、実施例1や実施例2で作製されたような光学フィルタを用いることで、耐環境性に優れ、フィルタの反射に起因した装置上の不具合を著しく低減する事が可能である。
(他の実施例)
実施例1、2で記載したNDフィルタ以外の光学フィルタにおいても、同様の効果を期待でき、例えば撮像素子やポスターなど対象物を保護するようなフィルタには、所望とする波長領域の反射を低減する為の反射防止の保護フィルムや保護板として応用可能である。タッチパネル等に設けられる保護板に用いることで、表示部の視認性を向上させた電子機器とすることができる。また吸収を持つタイプの光学フィルタであれば例えばカラーフィルタやIRカットフィルタ、蛍光フィルタなど、様々なバンドパスフィルタ、エッジフィルタなどに応用する事が可能である。これらの光学フィルタに本発明を適用する事で、反射率を低減する事が可能となる。また、これらの光学フィルタを搭載する事で、前述の不具合を改善した各種の光学装置を得る事が可能となる。
24 光学フィルタ
112 反射防止構造体
12、22、321、322 屈折率傾斜薄膜
13、23、33 基板
151、251、252、351、352 微細周期構造体
171、172、371、372、373、374 多機能膜
41 撮影光学系
42 固体撮像素子
43 光学ローパスフィルタ
44 NDフィルタ
45、46 絞り羽根
47 地板

Claims (13)

  1. 光透過性を有する基板と、
    前記基板上に設けられて膜厚方向に屈折率変化する屈折率傾斜薄膜と、
    前記屈折率傾斜薄膜上に設けられて光透過性および耐候性を含んだ多機能膜とを備え、
    前記多機能膜の上には、可視光の波長よりも短いピッチの微細構造体を設け
    前記屈折率傾斜薄膜は、膜厚方向に屈折率の前記屈折率変化の傾きの正負が変化し、前記基板側の終点及び前記微細構造体側の終点の少なくとも一方の屈折率に向かって単調に近づく屈折率変化となる変化点を含む特性を備え、
    前記多機能膜においては、該多機能膜の屈折率と、前記屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の屈折率変化における前記微細構造体側の終点の屈折率との差は、該多機能膜と前記変化点との屈折率差よりも小さいことを特徴とする光学フィルタ。
  2. 前記基板と、前記屈折率傾斜薄膜の前記基板側との間に他の多機能膜を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
  3. 前記基板側に設けられる前記他の多機能膜においては、該他の多機能膜の屈折率と、前記屈折率傾斜薄膜の膜厚方向の屈折率変化における前記基板側の終点の屈折率との差は、該他の多機能膜と前記変化点との屈折率差よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の光学フィルタ。
  4. 前記屈折率傾斜薄膜の前記多機能膜側の屈折率変化の終点と前記多機能膜との屈折率差、及び前記多機能膜と前記微細構造体との屈折率差は0.05以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  5. 前記屈折率傾斜薄膜は、金属または半金属の酸化物により構成され、
    前記多機能膜は、少なくとも前記屈折率傾斜薄膜を形成している酸化物の飽和酸化物により形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  6. 前記多機能膜が、Al、Siのうち少なくともどちらか一方を含んだ酸化物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  7. 前記多機能膜が、Al及びSiを含んだ酸化物であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルタ。
  8. 前記多機能膜が、複数の金属または半金属元素を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  9. 前記微細構造体は、可視光の波長よりも短いピッチの周期構造を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  10. 光透過性を有する基板と、
    前記基板上に設けられて膜厚方向に屈折率変化する屈折率傾斜薄膜と、
    前記屈折率傾斜薄膜上に設けられて光透過性および耐候性を含んだ多機能膜とを備え、
    前記多機能膜の上には、可視光の波長よりも短いピッチの微細構造体を設け、
    前記屈折率傾斜薄膜は、その膜厚方向において、
    可視波長領域の分光透過特性が長波長側になるにつれて高くなる領域と、
    可視波長領域の分光透過特性が長波長側になるにつれて低くなる領域と、
    を有することを特徴とする光学フィルタ。
  11. 前記多機能膜は、前記微細構造体の密着膜としての機能を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学フィルタ。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学フィルタを撮影光学系に用いたことを特徴とする光学機器。
  13. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学フィルタを表示部に用いたことを特徴とする電子機器。
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