本発明に係る微細構造体は、基板と、基板上に設けられた微細構造を有する。微細構造は、可視光の波長サイズよりも短いピッチで2次元状に配置した凹凸を有し、基板側の下部領域と下部領域上の上部領域とからなる。下部領域はその高さ方向に形状変化が無く、上部領域はその高さ方向に連続的若しくは段階的な形状変化を有する。微細構造のうち少なくとも下部領域に対応する部分、すなわち下部領域内にある部分の屈折率が、その高さ方向に、連続的若しくは段階的に変化している。
本発明に係る光学フィルタは、微細構造体のみから構成することができ、更に、所定の光学特性を発現する光学膜や光学機器にこの微細構造体を組み合わせた構成としても良い。
微細構造体や光学フィルタを形成する為の基板としては、微細構造体や光学フィルタの基板としての強度や、光透過性等の光学特性を有するものであれば良く、微細構造体の形成用の基体や、各種の光学膜の基体として機能可能であるものが利用される。このような基板としては、BK7やSFL−6などガラス系の材料からなる基板、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PC(ポリカーボネート)、PO(ポリオレフィン)、PI(ポリイミド)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、及びTAC(トリアセチルセルロース)等から選択した樹脂材料からなる基板を用いることができる。また、ガラス基板と樹脂層との複合材料からなる基板や、有機材と無機材を混合させた有機無機ハイブリッド基板などを用いることもできる。また、基板が、本発明の微細構造体を適用し得る各種の光学機器であってもよい。
光学膜は所望の光学特性を形成する膜であれば良く、例えば可視波長領域の光量を調整するND膜や、近赤外波長領域の光を低減するカメラなどに用いられるIRカット膜やUVカット膜などが挙げられる。これらの光学膜の形成では、真空蒸着法やスパッタ法、ゾルゲル法など各種の成膜手法を選択する事ができ、光学膜の種類や、生産性等を考慮し、適宜最適なプロセスを選択すれば良い。
以上のような基板上、または基板上に形成した光学膜上に凹凸からなる微細構造を形成して微細構造体を得ることができる。光学フィルタに利用する場合は、所望の光学フィルタの特性を得るために必要とされる、反射低減機能等を有するように微細構造体を作製する。可視光に対する反射防止機能を得るためには、微細構造体の有する微細構造を、可視光の波長よりも短いピッチで、基板平面に2次元状に配置する、いわゆるSWS(sub-wave structure)とすることが好ましい。
微細構造体の構成は、微細構造体に目的とする光学特性が得られるものであれば特に限定されない。例えば、所定のピッチで周期的に設けられた凹凸構造を用いることができる。このような凹凸構造としては、ランダムあるいは規則的に形成された針状体及び柱状体等の突起、階段形状に微細に形成された凹凸構造の突出部または凹部によって、大気や隣接する媒体との屈折率差を低減したもの等を挙げることができ、公知の微細構造から目的に応じて任意に選択したものを用いることができる。そのような微細構造の具体例としては、図1に示すような多数の突起部を所定のピッチで基板表面上に二次元状に配置した構造を挙げることができる。このような、基板を透過する光、例えば可視光の波長よりも短い周期で配置された多数の突起や凹凸構造などからなる微細構造体であれば、熱ナノインプリント法や光ナノインプリント法などの方法を用いる事で再現性良く、さらには生産性高く作製する事ができる。
さらに、本発明による構成の場合、微細構造体における微細構造と基板、または微細構造体と光学膜などの界面が形成されるが、反射低減効果を有する微細構造体を形成する場合は、微細構造体の、あるいは光学膜と微細構造体を組み合わせた構成の総体としての反射を低減する為に、異なる物質間での界面反射も低減する必要がある。従って、界面を形成する2つの物質間の屈折率差はできるだけ小さくする事が望ましい。
ここで、光の干渉効果を利用した、複数の薄膜を積層したタイプの光学膜を有する光学フィルタを形成し、さらには光学フィルタとして反射低減機能を必要とする場合には、光学膜の最表層上に微細構造を形成することが有効である。このような構成において、光学膜の積層構成は、光学膜の最表層と微細構造との界面での反射を無視した、それ以外の界面からの光干渉により総体的に形成される反射を可能な限り小さくする構成とする。これは以下の理由からである。まず、光学膜最表層と微細構造との屈折率差を小さくする事で、この界面での反射を可能な限り低減し、微細構造の反射低減効果を利用する事で、媒質(空気)から光学膜最表層までの反射を理想的に低減する。次に、光学膜における基板側に向かう最表層以降では、最表層と微細構造との界面以外の界面の光干渉効果により反射を低減する。そして、これら2つの反射低減構成を組合せる事により、光学フィルタ総体としての反射を低減させる。このようなタイプの光学フィルタにおいて、全ての界面の中で、最表層と、最表層との屈折率差が大きい空気などの入射媒質との界面での反射が、光学フィルタとしての反射に与える影響が最も大きい。そこで、この部分の反射を十分に低減し、さらに他の全ての界面の反射を相殺させる構成とする事で、光干渉効果により形成される反射を低減すれば、光学フィルタとしての総体的な反射をより小さくできる。従って、本発明の構成であれば、光学フィルタ総体としての反射を著しく低減させる事が可能となる。
また、本発明では微細構造の高さ方向での形状変化を利用したみかけの屈折率変化に加え、微細構造の少なくとも一部においてその部分を形成する物質そのものの内部の屈折率(上部領域及び/または下部領域に対応する部分の屈折率)を意図的に分布させた。このような屈折率分布を得るには、種々の方法を用いることができる。例えば、屈折率の異なる複数の成分の混合比を微細構造の高さ方向に変化させて屈折率変化を得る方法を用いることができる。この混合比には、単一成分からなる場合、すなわち、複数の成分の内の1成分のみからなり、その他の成分の混合割合がゼロである場合を含む。特には、微細構造の主成分となる材料、例えば母材に、これとは屈折率の異なる1種類以上のドーパントを拡散させ、微細構造体内部で所定の濃度分布となるように制御する方法により、屈折率分布を得ることができる。この母材としては有機材料を含む材料を用いることができる。ナノプリント法により微細構造を形成する場合は、熱ナノプリント法に用いられる熱可塑性樹脂、光ナノインプリント法に用いられる紫外線硬化性樹脂などの各種樹脂を有機材料として用いることができる。ドーパントは、目的とする光学特性及び屈折率変化を得ることができるものであればよい。
以下、本発明の微細構造体、及び光学フィルタ、光学装置について実施例に基づき具体的に説明する。
(実施例1)微細構造体
透明基板平面上に微細構造を形成し、更に微細構造体内部の屈折率を変化させた微細構造体に関する実施例について、以下に詳しく記載する。
本実施例1では、図2(a)に示すように、基板10上に、基板10側の下部領域としての断面形状が膜厚方向で一定な形状となる一定部分13と、凹凸の凸部の頂上側の上部領域を有する微細構造11を設けた構成の微細構造体を作製した。この構成において、厚さ1.0mmのBK−7ガラスを基板10として、この基板10上に微細構造11を形成した。ここで、微細構造体総体として反射率を低減したい場合や、微細構造体を構成する各界面における反射の影響を取り除きたい場合は、基板10と微細構造11との界面など、影響を与える全ての界面での屈折率差を0.1以下とする事が望ましい。本実施例1においては、必ずしも反射低減を目的としていないが、前述の値となるように調整した。波長540nmにおける屈折率を例に取ると、基板10の屈折率は1.52、微細構造11の基板側界面での屈折率は約1.47であり、基板10と微細構造体11と界面での屈折率差は0.05となる構成とした。反射低減を目的とする場合は、このように、隣接した異なる物質間界面での屈折率差を0.1以下にする事で、この界面での反射を著しく低減する事が可能であり、より好ましくは本実施例1のように0.05以下となるように構成する。
本実施例1においては、微細構造11を、図1で示したような、基板平面上に2次元状に周期的に配置したピラーアレイ状の突起部を有する突起構造により周期的な凹凸を形成した構造とした。突起部は釣鐘型のモス・アイ形状で、高さ400nm、周期250nmとした。このような微細構造は、剛性や屈折率変化領域の確保などの観点から、前述の高さを周期で割ったアスペクト比が、0.8〜2.0の範囲である事が特に望ましい。さらに、突起部の配列に関して、正方配列や三方(六方)配列などが考えられるが、三方配列の方が基板側表面の露出面が少ない事などの理由から反射低減効果が高くなる。従って、本実施例では三方配列のピラーアレイとした。ここで、図2(a)で示したように、微細構造11は断面形状が膜厚方向(厚さ方向)で変わらない一定部分13(接合部)と、断面形状が膜厚方向に変化する変化部分14(微細形状部)とで構成されており、前述の突起部の高さはこの変化部分14の高さを指している。本実施例において、一定部分13の高さ(厚さ)は、80nm程度となるように調整して、微細構造を作製した。突起部の高さ方向は、基板の厚さ方向と同一方向である。
このような微細構造体の作製方法に関しては様々な作製方法が提案されているが、本実施例ではUV(紫外線)硬化樹脂を用いた光ナノインプリント法を選択した。微細構造体を、樹脂(有機材料)を用いたナノプリント法によって一定部分13と変化部分14とを一体的に作製する事で、生産性を飛躍的に高める事が可能となる。
ここで、基板10と微細構造11との密着性を向上させる必要がある場合は、プライマー処理を行い、図2(b)に示すように、基板10と微細構造11との界面に密着層12を設ける事も可能である。このようなプライマー処理用の溶液の例としては、シランカップリング剤をベースに、IPA(イソプロピルアルコール)や硝酸等を適量加え、さらに密着力を強化する目的で、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を加えたものなどを用いる事ができる。これを、0.2μm厚のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタを介し基板上に滴下し、スピンコートにより極薄膜となるように塗工した後、所定の条件で乾燥処理等を行い、密着層12を形成する。さらに、下地となる基板10に何らかの悪影響を与えない範囲であれば、プライマー液をより均一に塗工する為に、プライマー液塗工前に、UVオゾンなどによる親水化処理を施しても良い。また、このようなプロセスによる塗工を行う際、マスキングを施したり、プロセスをインクジェット法やグラビア法、マイクロコンタクトプリント法などに変えたりする事で、塗工領域を制限する事も可能である。この際、前述のように、反射低減を必要とする場合は、隣接する界面での屈折率差は0.1以下に調整される事が好ましく、0.05以下が更に望ましい。
また、このような微細構造11の形状による屈折率変化に加え、微細構造11を構成している物質内部で、物質そのものの屈折率を変化させた。本実施例1においては、微細構造11を形成する主成分としての母材AとなるUV硬化樹脂の他に、屈折率を調整する為に、母材Aとは異なる屈折率を持つドーパントBを混合させ、これらの濃度分布を所望の値となるように調整した。ここで、拡散を容易として滑らかな分布を得たい場合などは、このようなドーパントBは、主成分である母材Aと反応しないものを用いることが望ましい。
本実施例1では母材として各種様々なUV硬化樹脂を用いることができ、その中からフッ素化合物が添加された含フッ素アクリル系のUV硬化樹脂を選択した。しかし、これに限らず、フッ素化合物が添加されていないアクリル系のUV硬化樹脂を使用しても良いし、フッ素樹脂を含むUV硬化樹脂でも良い。更には条件によっては、有機無機ハイブリッドタイプの材料を使用する事も可能であり、このような有機材料を用いたナノインプリントプロセスにより、再現性を高め、さらには生産性を高める事ができる。
ドーパントとして使用可能な化合物としては、フタル酸エステル類、安息香酸エステル類、フェニル酢酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、リン酸化合物、ベンゼン系化合物、ナフタレン系化合物、ケトン類、パーフルオロアルカン類、パーフルオロアルキルアミン類、共役化合物、などが挙げられる。その他に、上記の化合物のフッ化物を用いることもできる。そのほかに金属キレート化合物や、TiやZr、またはこれらの化合物などで構成される金属ナノ粒子、金属化合物ナノ粒子の使用も可能であるが、これらに限定されず、母材中に混合分散できるものであればよい。また、樹脂として共重合体を用いる事も可能である。本実施例1においては、ドーパントとして、粒径サイズが小さく可視域で透明であり、比較的屈折率(約1.90)が高いTi系化合物のナノ粒子を選択した。
まず、母材Aに対しドーパントBの濃度を約10.9wt%とした液状の樹脂材料を調製し、これを基板上に適量滴下した後、スピンコート法により所定の膜厚となるように基板全面に1層目を塗工し、乾燥処理を行った。次に、ドーパントを含まないように調製したドーパント濃度0wt%の母材Aを含む液状の樹脂材料を適量滴下した後、1層目と同様にスピンコート法により所定の膜厚となるように基板全面に2層目を塗工し、乾燥処理を行った。その後、この基板上の2層構成のスピンコート形成面に、図1に示すピラーアレイ状の微細構造に対応するホールアレイ形状の型面に離型処理を施した石英モールドを、所定の位置まで押し当て保持しつつ、2つの層を20分程度150℃に加熱する処理を行った。この加熱処理によって、これら2層のドーパント濃度差を利用し、ドーパント成分を2つの層の間で拡散させ、連続的な濃度分布を形成した。その後、そのままの状態でUV光を照射する事で2つの層を硬化させて一体化し、図1に示す形状を持つ微細構造11を作製した。このように、ドーパントを拡散させた後にUV硬化させるプロセスとした事で、拡散スピードを早める事が可能である。しかし、これとは逆に、重合後にドーパントを拡散させる事も可能であり、ドーパント成分を界面側により偏在化させる事ができ、より急峻な濃度分布を得る事が可能となる。また、拡散時間を比較的短く設定する事などで、微細構造11の谷間部にドーパントを偏在させる事もでき、これらにより様々な濃度分布を得る事が可能である。微細構造11の谷間部にドーパントを偏在させることによって、基板平面に平行な方向の平面上に、物性や光学特性の変化を持たせることができる。屈折率変化を得る方法としては、例えば、後述する通り、ドーパントの種類数、これらの混合割合、スピンコート層の層数等を組み合せることによって種々の屈折率変化のパターンを得ることができる。
ここで、母材に対するドーパントの濃度や、母材AとドーパントBとの相関関係や拡散プロセス条件により、ドーパントの拡散係数が大きく異なる為、予め予備的な基礎実験を行い、濃度依存を考慮した正確な拡散係数を把握しておく事で、より精度の高い制御が可能となる。本実施例においても、予め得た基礎データより所望の分布を得る為に、初期濃度や拡散時間、加熱温度、2つの層の膜厚等、拡散プロセス条件を調整した。これにより、微細構造において、母材Aに対するドーパントBの濃度が、微細構造の高さ方向の基板側から表層側に向け連続的に低くなるような分布を持つ微細構造を形成する事ができた。この濃度分布と屈折率分布とは相関関係がある為、濃度分布に伴ったプロファイルを持つ屈折率分布を得る事ができる。
このように、本実施例1では、屈折率の異なる2つの物質A(母材)と物質B(ドーパント)を混合させ所望の屈折率分布を得たが、2種類に限る事なく、3種類でも、それ以上であっても良い。また、濃度変化も単調的な増加や減少に限らず、増加した後に減少、減少した後に増加、またはこれらを複数回繰り返すなど、複雑な屈折率のプロファイルを形成する事も可能である。
また、本実施例1のように微細構造11に一定部分13を設け、一定部分13の基板界面側の屈折率は基板10の屈折率に近い値に調整し、微細構造の高さ方向に徐々に屈折率を小さくする事で、基板10との界面で発生する反射を低減する事が可能であり、総体としての反射を低減する事ができる。
本実施例1で作製された微細構造体は、微細構造の有する高さ方向での形状変化に加え、微細構造内部での屈折率を意図的に変化させ、これら2つの効果を合わせる事で屈折率分布を形成したものである。この本実施例1で作製された微細構造体と、微細構造の内部は均一な屈折率で本実施例1と同様の微細構造の形状を持つ、微細構造の形状変化のみの効果で屈折率分布を形成した微細構造体について、これらの2つの屈折率分布の理論値を比較した。結果が図3である。図3(a)で示すように、微細構造の変化部分14の高さ約400nmの領域に対し、図中の破線で示した形状のみによる屈折率変化の場合、屈折率は1.00から1.42へ変化しており、屈折率の変化量は0.42となった。一方で、図中に直線で示した微細構造の形状に加え微細構造の上部領域及び下部領域に対応する部分の屈折率を変化させたサンプルでは、屈折率が1.00から1.47へ変化しており、屈折率の変化量は0.47となった。ここで、前述した母材Aに対するドーパントBの微細構造内部での濃度分布については図3(b)に示すように基板側の一定部分13を経て変化部分14の底部から突起頂部に向かってドーパント濃度が低下している分布形状となっている。つまり、微細構造の上部領域及び下部領域に対応する部分の屈折率は変化部分14の連結部として一体的に設けられた一定部分13から変化部分14にかけてシームレスに変化している。すなわち、複数の変化部分14の土台となる一定部分13によって、微細構造体として一体化されている。以上の結果より、本実施例1の条件の基では、形状効果に屈折率変化に加え、微細構造の内部の屈折率を変化させたサンプルの方が、屈折率の変化量が0.05ほど大きくなる結果となった。従って、この屈折率変化量や屈折率分布の差分を利用する事で、微細構造の形状や高さなどを変化させる事が可能となり、例えばアスペクト比を低減する事で剛性を高めつつ、反射特性を維持する事などができる。さらには、この差分を利用し、反射低減効果をより高める事なども可能である。
また、微細構造の内部濃度分布を図3(b)以外の分布に制御する事も可能であり、本実施例であれば、母材AとドーパントBや、そのプロセスを調整する事で、屈折率を単調に増加させたり、単調に減少させたりするだけではなく、意図するプロファイルに制御する事も可能となる。
また、本実施例1では、ドーパント濃度の異なる2層を形成し、2層間でのドーパント成分の拡散により濃度分布、つまり屈折率分布を形成したが、2層に限らず、3層以上であっても良い。さらには、層数を増やし、段階的に濃度変化させるよう初期配置する事で、意図した屈折率分布を得やすく、拡散時間を短縮する事ができる。
さらに、図3で示したように、本実施例1では微細構造の上部領域及び下部領域に対応する部分の屈折率が連続的に変化する分布としたが、ステップ状の段階的な屈折率分布であっても、連続的な屈折率分布に近い効果を得る事が可能である。
さらにまた、本実施例1では基板片面のみに微細構造を形成したが、基板両面に同様の微細構造を形成する事も可能である。この基板両面に微細構造を有する構成は、例えば、本実施例1で作製した微細構造の基板裏面側で本実施例1と同様のプロセスを繰り返す事で作製する事が可能である。この時、基板表裏にスピンコートによる初期層の形成を行った後、基板両面で同時に熱拡散プロセスを行う事も可能であるし、基板両面で同時にUVナノインプリントプロセスを行う事も可能である。以上のような作製方法により、基板両面に本実施例1と同様の微細構造体を形成する事ができる。
これらに加え、他の構成として、図2(c)で示したように、一定部分13のみに、材料内部での屈折率分布を持たせ、変化部分14の材料内部では屈折率分布を持たせない構造を作製する事も可能である。この場合、形状による屈折率変化と実際の屈折率変化が連続的に変化することになり、反射を低減しやすい。
このような図2(c)に示す構成を有する微細構造体は、以下の方法により作製することができる。
まず、母材Aとしてのフッ素化合物が添加された含フッ素アクリル系のUV硬化樹脂に対しドーパントBの濃度を約10.9wt%とした液状樹脂材料を調製し、これを基板上に適量滴下した後、スピンコート法により所定の膜厚となるように基板全面に1層目を塗工し、乾燥処理を行った。次に物質Bを含まないように調製したドーパント濃度0wt%の母材Aを含む液状樹脂材料を適量滴下した後、1層目と同様にスピンコート法により所定の膜厚となるように2層目を塗工し、乾燥処理を行った。その後、これら2層の濃度差を利用し、2つの層を形成している樹脂を20分程度150℃に加熱する事でドーパント成分を2つの層の間で拡散させ、連続的な濃度分布を形成した。さらにその後、ドーパント物質を加えない、母材Aを含む液状樹脂材料をスピンコート法により所定の膜厚となるように一定部分13上全面に塗工し、これにホールアレイ形状に離型処理を施した前述の石英モールドを押し当て、保持した後、そのままの状態でUV光を照射する事で樹脂を硬化させ、微細構造11を作製した。また、熱によるドーパント成分拡散後にUV硬化を行う事で一定部分13を形成した後、前述と同様の方法で変化部分14を形成しても良い。以上の方法により、図2(c)のような一定部分13のみに、材料内部での屈折率分布を持たせた構造を持つ微細構造体11を作製する事も可能であり、このような構成とする事で、基板との屈折率差を調整する事ができ、例えばこれらの物質界面での反射を低減する事ができる。
また、本実施例1で作製した一定部分13は、意図せず形成されてしまう所謂残膜とは異なり、基板10と微細構造11との間の屈折率変化を小さくする目的で意図的に設けた層であり、屈折率変化領域としての役割を考慮し、本実施例1のように40nm以上となる事が好ましい。
(実施例2)NDフィルタ
多層薄膜により構成された、光量調整用の光学膜であるND膜上に、反射低減効果を発現する微細構造体を設けたNDフィルタを作製した実施例について、以下に詳しく記載する。
近年における固体撮像素子の高感度化、高精細化等に伴う、撮影装置の絞りのハンチング現象や光の回折現象の対策として、真空成膜法などにより多層薄膜を透明基板に形成し作製されたNDフィルタが用いられている。このような光学系に用いられているNDフィルタなどの光学フィルタにおいて、フィルタ自身の反射に起因した、ゴーストやフレア等の撮影画像への不具合が生ずる可能性が高まってきており、可視光波長領域における分光反射率を従来以上に低減することが1つの大きな課題となっている。
このようなNDフィルタについて、図4に示すように、基板20上に設けられたND膜21上に微細構造22を配置し、NDフィルタ23を形成した。図4の構成では、基板20は、微細構造体の基板を兼ねている。図4に示す構成において、厚さ1.0mmのBK−7ガラスを基板20として、この基板20上にND膜21を形成し、この上に微細構造22を形成した。本実施例のような光学フィルタであるNDフィルタ23に用いる基板の光学特性としては、可視光波長領域における全光線透過率89%以上が好ましく、91%以上がさらに好ましい。
最初に、基板20の片面側に、真空蒸着法により複数の薄膜を積層したND膜21を形成した。真空蒸着法は、膜厚を比較的に容易に制御でき、かつ可視光波長領域において散乱が非常に小さく、分光透過率の波長依存性を小さい値に制御することが可能な利点を有している。しかし、真空蒸着法に限定されず、スパッタリング法、IAD法、IBS法、イオンプレーティング法、クラスタ蒸着法等の成膜方法においても成膜が可能であり、目的や条件等を考慮し、最も適当な成膜方法を選択すればよい。
ND膜21を構成する薄膜材料として、SiO2やAl2O3などの誘電体層と、Ti、Nb、Ta、Zr、Ni、Cr、W、Mo、Au、Ag、Cu、Mg、Alなどの金属単体、またはこれらの合金や金属化合物により構成された光吸収層に加え、最表層の反射低減を目的として、比較的屈折率が低く環境性にも優れるMgF2などを用いる事が可能である。本実施例では図5で示すような積層構造とした。ここで、ND膜21の最表層は本実施例2ではSiO2層としたが、これに限らず、先に挙げたMgF2やSiO2に加え、例えばAl2O3や、SiOなど酸価を変えたもの、SiNなど、SiやAl、Mgの金属化合物や、これらを混合させた層を適宜選択する事が可能であり、Ti、Nb、Ta、Zr、Ni、Cr、W、Mo、Au、Ag、Cuなどの金属化合物であっても良い。
ここで、このようなND膜21の膜構成において、本実施例2では、ND膜21の最表層となるSiO2層と微細構造22との界面での反射を無視し、それ以外の界面での反射を光干渉効果により相殺させる事で、それ以外の界面での総体的な反射を可能な限り小さくする膜構成とした。
更に、反射低減の観点からND膜21の最表層であるSiO2層と微細構造22との屈折率差をそれぞれ0.1以下となるように構成した。波長540nmのおける屈折率を例に取ると、微細構造22のND膜との界面付近での屈折率は約1.51、ND膜21の最表層であるSiO2層の屈折率は1.46であり、ND膜21と微細構造22と界面での屈折率差は0.05となる構成とした。このように、隣接した、異なる物質間界面での屈折率差を0.1以下にする事で、この界面での反射を著しく低減する事が可能であり、より好ましくは本実施例2のように0.05以下となるように構成する。
以上のように作製されたND膜21上に微細構造22を形成した。本実施例2における微細構造22は、実施例1と同様に、突起構造を周期的に配置したピラーアレイ状とし、少なくても可視波長領域の反射率は低減できる構造となるように、構造体は釣鐘型のモス・アイ形状で高さ400nm、周期250nmの三方(六方)配列の構造体とした。ここで、図4で示したように、微細構造22は断面形状が膜厚方向で変わらない一定部分25と、断面形状が膜厚方向に変化する変化部分26とで構成されている。前述の構造体高さはこの変化部分26を指しており、本実施例2において、一定部分25の高さは80nm程度となるように調整し、作製した。
このような微細構造体の作製方法に関しては、本実施例2においてはUV硬化樹脂を用いた光ナノインプリント法を選択した。
ここで、ND膜21と微細構造22との密着性を向上させる必要がある場合は、プライマー処理を行い、図4(b)に示すように、ND膜21と微細構造体22との界面に密着層24を設ける事も可能である。このようなプライマー処理用の溶液を、0.2μm厚のPTFEフィルタを介し基板上に滴下し、スピンコートにより極薄膜となるように塗工した後、所定の条件で乾燥処理等を行い、密着層24を形成する。さらに、下地となるND膜21に何らかの悪影響を与えない範囲であれば、プライマー液をより均一に塗工する為に、プライマー液塗工前に、UVオゾンなどによる親水化処理を施しても良い。この際、隣接する界面での屈折率差は0.1以下に調整される事が好ましく、0.05以下が更に望ましい。
また、このような微細構造22の形状による屈折率変化に加え、微細構造22を構成している物質内部で、物質そのものの屈折率を変化させた。本実施例2においては、微細構造22を形成する主成分としての母材AとなるUV硬化樹脂の他に、屈折率を調整する為に、母材Aとは異なる屈折率を持つドーパントBを混合させ、これらの濃度分布を所望の値となるように調整した。ここで、拡散を容易として滑らかな分布を得たい場合などは、このようなドーパントBは、主成分である母材Aと反応しないものを用いることが望ましい。
本実施例2では母材として各種様々なUV硬化樹脂を用いることができるが、その中からアクリル系のUV硬化樹脂を選択した。しかし、これに限らず、適宜最適な樹脂を選択する事が可能であり、このような有機材料を用いたナノインプリントプロセスにより、再現性を高め、さらには生産性を高める事ができる。また、ドーパントとしては、母材よりも低屈折率(約1.38)である化合物BFB(ビストリフルオロメチルベンゼン)を選択したが、母材中に分散できるもので、所定の屈折率を得られる物質であればこれに限らず、適宜選択する事ができる。
まず、微細構造をナノインプリントする際、母材Aに対しドーパントBの濃度を約16.6wt%とした液状樹脂材料を調製し、これを基板上に適量滴下した後、スピンコート法により所定の膜厚となるように基板全面に1層目を塗工し、乾燥処理を行った。そして、次に物質Bを含まないように調製したドーパント濃度0wt%の母材Aを含む液状樹脂材料を適量滴下した後、1層目と同様にスピンコート法により所定の膜厚となるように基板全面に2層目を塗工し、乾燥処理を行った。その後、この基板に、ホールアレイ形状に離型処理を施した前述の石英モールドを押し当て、保持した後、これら2層の濃度差を利用し、2つの層を20分程度150℃に加熱する事でドーパント成分を2つの層の間で拡散させ、連続的な濃度分布を形成した後、そのままの状態でUV光を照射する事で樹脂を硬化させて一体化し、前述のような形状を持つ微細構造22を作製した。このように、本実施例2では、ドーパントを拡散させた後にUV硬化させるプロセスとしたが、これとは逆に、重合後にドーパントを拡散させる事も可能である。ここで、母材及びドーパントの濃度や母材AとドーパントBとの相関関係と、拡散プロセス条件により、ドーパントの拡散係数が大きく異なる為、予備的な基礎実験を行い、予め得た基礎データより所望の分布を得る為に、初期濃度や拡散時間、加熱温度、2つの層の膜厚等、拡散プロセス条件を調整した。
これにより、微細構造の高さ方向において、物質A(母材)と物質B(ドーパント)の混合比が、基板側から表層側に向け連続的に低くなるような分布を持つ微細構造を形成する事ができる。この濃度分布と屈折率分布とは相関関係がある為、濃度分布に伴ったプロファイルを持つ屈折率分布を得る事ができる。
またここで、NDフィルタのように可視波長全域に吸収を持つフィルタの場合、紫外域にも吸収を持っている場合が多い。従って、使用するUV光の波長によっては、フィルタの基板側から光を照射した場合、NDフィルタがその光の少なくとも一部を吸収してしまい、十分な光が樹脂まで届かない場合がある。従って、そのような場合はモールド側からUV光を照射する必要があり、必要なUV光の波長を十分に透過する材質のモールドを選択する必要がある。
以上のように本実施例2で作製された微細構造体は、微細構造高さ方向での形状変化に加え、微細構造の内部での屈折率を意図的に変化させ、これら2つの効果を合わせる事で屈折率分布を形成したものとなっている。この本実施例2で作製された微細構造体と、微細構造の内部は均一な屈折率で本実施例1と同様の微細構造の形状を持つ、形状変化のみの効果で屈折率分布を形成した微細構造体について、2つの屈折率分布の理論値を比較した。結果が図6である。図6(a)で示すように、微細構造の変化部分26の高さ約400nmの領域に対し、図中の破線で示した形状のみによる屈折率変化の場合、屈折率は1.00から1.51へ変化しており、屈折率の変化量は0.51となった。一方で、図中に直線で示した微細構造の形状に加え微細構造の上部領域及び下部領域に対応する部分の屈折率を変化させたサンプルでは、屈折率が1.00から1.49へ変化しており、屈折率の変化量は0.49となった。また、一定部分25においても、僅かながらも屈折率が減少している。
ここで、前述した母材Aに対するドーパントBの微細構造内部での濃度分布については図6(b)に示すように、一定部分25において基板側から変化部分26との界面に向かってドーパント濃度が低下する分布形状となっている。以上の結果より、本実施例2の条件の基では、形状効果による屈折率変化に加え、構造体内部の屈折率を変化させたサンプルの方が、屈折率の変化量が0.02ほど小さくなる結果となった。従って、この屈折率変化量や屈折率分布の差分を利用する事で、例えば、微細構造体による反射低減効果を維持しつつ、構造体高さを低くして、剛性の高い形状へ改善する事などが可能となる。さらに、構造体内部濃度分布を図6(b)以外の分布に制御する事も可能であり、意図する屈折率分布を得る事も可能である。
以上によって作製されたNDフィルタ23の分光反射率特性を(株)日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U4100を用い測定したところ、可視波長領域における反射率が0.1%以下にとなり、非常に低い反射率を実現できた。
また、本実施例2では、濃度の異なる2層を形成し、2層間でのドーパント成分の拡散により屈折率分布を形成したが、3層以上であっても良いし、更に層数を増やし、段階的に濃度変化させるよう初期配置する事も可能である。
さらに、図6で示したように、本実施例2では微細構造の内部の屈折率が連続的に変化する分布としたが、ステップ状の段階的な屈折率分布であっても、連続的な屈折率分布に近い効果を得る事が可能である。
また更に、本実施例2で作製したNDフィルタのように、特に所定の波長領域に吸収を持つ光学フィルタ等の場合、必要があれば微細構造の内部に吸収を持たせる事も可能である。例えば、本実施例2で作製された微細構造体であれば、屈折率を調整する為に混合したドーパントBに、所望の波長領域に吸収を持った物質を選択する事で、微細構造体に吸収を持たせる事ができる。同様に、微細構造内に、母材A、ドーパントBに加え、第2のドーパントCを加え、これに吸収を持たせる事で、微細構造の内部に吸収を持たせる事ができる。
また、本実施例2では基板片面のみにND膜と微細構造体を形成したが、基板両面にND膜と微細構造体を形成する事も可能である。更に、基板片面にND膜と微細構造体を形成し、その反対側の面に、微細構造体またはND膜を単独で形成してもよい。
これらに加え、他の構成例として、本実施例1と同様に、図4(c)で示したように、一定部分25のみに、材料内部での屈折率分布を持たせ、変化部分26の材料内部では屈折率分布を持たせない構造を作製する事も可能である。
このような図4(c)に示す構成を有する微細構造体は、以下の方法により作製することができる。
まず、母材Aに対しドーパントBの濃度を約16.6wt%とした液状樹脂材料を調製し、これをND膜21上に適量滴下した後、スピンコート法により所定の膜厚となるように全面に1層目を塗工し、乾燥処理を行った。次にドーパントBを含まないように調製したドーパント濃度0wt%の母材Aを含む液状樹脂材料を適量滴下した後、1層目と同様にスピンコート法により所定の膜厚となるように2層目を塗工し、乾燥処理を行った。その後、これら2層の濃度差を利用し、2つの層を20分程度150℃に加熱する事でドーパント成分を2つの層の間で拡散させ、連続的な濃度分布を形成した。さらにその後、ドーパント物質を加えない母材を含む液状樹脂材料をスピンコート法により所定の膜厚となるように一定部分25上全面に塗工し、これにホールアレイ形状に離型処理を施した前述の石英モールドを押し当て、保持した後、そのままの状態でUV光を照射する事で樹脂を硬化させ、微細構造22を作製した。以上の方法により、図4(c)のような一定部分25のみに、材料内部での屈折率分布を持たせた構造を持つNDフィルタ23を作製する事も可能であり、このような構成とする事で、ND膜21の最表層との屈折率差を調整する事ができ、例えばこれらの物質界面での反射を低減する事ができる。
また、本実施例2で作製した一定部分25は、意図せず形成されてしまう所謂残膜とは異なり、基板20と微細構造22との間の屈折率変化を小さくする目的で意図的に設けた層であり、屈折率変化領域としての役割を考慮し、本実施例2のように40nm以上となる事が好ましい。
(実施例3)他の光学フィルタ
先の本実施例2においては、微細構造体を備えたNDフィルタについて述べたが、この他の光学フィルタにおいても、同様の効果を得る事が可能である。
例えば、IR(赤外線)カットフィルタ、UV(紫外線)カットフィルタ、UVIRカットフィルタ、カラーフィルタ、蛍光フィルタ、その他のバンドパスフィルタやエッジフィルタなどへ適用できる。
これらの光学膜上に反射低減効果を発現する本発明に係る微細構造を形成し、微細構造との界面層と微細構造との屈折率差を小さく構成し、更に各光学膜は、光学膜の最表層と微細構造との界面での反射を無視した、それ以外の界面からの光干渉効果により形成される反射を可能な限り小さくする積層構成とする事で、光学フィルタ総体として非常に低い反射特性を得る事が可能である。更に微細構造体内部で、微細構造体を形成する物質そのものの屈折率分布を形成する事で、例えば微細構造体が形成する屈折率差をより大きくしたり、微細構造体形状を剛性の高い形状に変化させたりする事が可能となる。これにより、微細構造体の形状や屈折率分布などの自由度を大きく拡大させる事ができ、より高精度化が可能な光学フィルタを得る事ができる。
また、これらの微細構造体は反射低減効果を発現するものに限らず、屈折率変化を利用する事で何らかの効果を発現する構造体であれば、様々な種類の構造体に適用する事が可能であり、同様に微細構造体に関する形状や屈折率分布などの自由度を大きく拡大させる事ができる。
(実施例4)光量絞り装置
次に、本実施例2、3で作製した光学フィルタを備える光量絞り装置に適用した実施例について図7を用いて説明する。
図7に光量絞り装置を示す。ビデオカメラあるいはデジタルスチルカメラ等の撮影系に使用するに適した光量絞り装置の絞りは、CCDやCMOSセンサと言った固体撮像素子への入射光量を制御するために設けられているものである。被写界が明るくなるにつれ、絞り羽根31を制御し、より小さく絞り込まれていく構造になっている。このとき、小絞り状態時に発生する像性能の劣化に対する対策として、絞りの近傍にNDフィルタ34を配置し、被写界の明るさが同一であっても、絞りの開口をより大きくできる構造にしている。入射光がこの光量絞り装置33を通過し、固体撮像素子(不図示)に到達する事で電気的な信号に変換され画像が形成される。
この光量絞り装置33に、本実施例2で作製されたNDフィルタを配置する。または本実施例3で示されたようなUVIRカットフィルタやIRカットフィルタを配置する。更には、NDフィルタ34の位置に、NDフィルタに替わりこれらの他の光学フィルタを配置する事も可能であるし、絞り羽根支持板32に固定するように配置する事も可能である。この場合、光学フィルタを配置する位置や、光量絞り装置33の機械的な機構にも依存するが、本実施例で作製したフィルタと必要な外形が異なる場合も想定されるが、最適な形状を選択すればよい。これにより作製された光量絞り装置33を撮像光学系に配置する事で、より高精度化を実現できる。
(実施例5)撮像光学系
次に、本実施例2、3で作製した光学フィルタを搭載しているビデオカメラ等の撮像装置に適用した実施例について図8を用いて説明する。
図8は、ビデオカメラなどの撮像装置で、絞り羽根55、56、光学レンズ系51A〜51Dなどで構成された撮像光学系51を透過した光線を、光学ローパスフィルタ53で固体撮像素子52の特性に合わせて制限し、適正な画像を得るようになっている。例えば、本実施例3で示されたようなUVIRカットフィルタやIRカットフィルタを光学ローパスフィルタ53の部分に配置する。これらのフィルタは出し入れ自由に駆動する事も可能である。より具体的には、撮像光学系51を透過して撮像素子52に結像した光量を判断して、光学ローパスフィルタ53を駆動する。入射した光量が通常の撮影に十分な量であるときは、固体撮像素子52にかかるように光学ローパスフィルタ53を移動させる。光量が不十分なときは、固体撮像素子52にかからないように光路外に退避させる。光学ローパスフィルタ53の有無により、結像する光線に光路差が発生してしまい、画像が劣化してしまう事があるが、このような場合には光学フィルタの基材と同じ材質の基材をダミーとして挿入する事で、画像劣化を十分に低減可能である。これにより作製された撮像装置は、反射を低減しつつ、耐久性を改善する事が可能である。
これに限らず、他の光学装置であっても、実施例2、3で作製されたような、微細構造体の屈折率分布や形状の自由度が拡大された光学フィルタを用いることで、高精度化を実現する事が可能である。