JP6162592B2 - 光電変換装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属カルコゲナイドを含む半導体層を用いた光電変換装置の製造方法に関するものである。
太陽光発電等に使用される光電変換装置として、CISやCIGS、CZTS等の金属カルコゲナイドによって光吸収層が形成されたものがある。このような光電変換装置は、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。
このような金属カルコゲナイドを用いた光電変換装置は、複数の光電変換セルが平面的に並設された構成を有する。各光電変換セルは、ガラス等の基板の上に、金属電極等の下部電極と、光吸収層やバッファ層等からなる光電変換層と、透明電極や金属電極等の上部電極とが、この順に積層されて構成される。また、複数の光電変換セルは、隣り合う一方の光電変換セルの上部電極と他方の光電変換セルの下部電極とが接続導体によって電気的に接続されることで、電気的に直列に接続されている。
このような金属カルコゲナイドを含む光吸収層は、下部電極上に金属カルコゲナイドの原料を含む皮膜が形成され、この皮膜が熱処理されることによって形成される。
CISやCIGS等のI−III−VI族化合物から成る金属カルコゲナイドの原料として
は、金属カルコゲナイドを構成する元素の塩や錯体等が用いられる。例えば特許文献3には、1つの有機化合物内にCuと、Seと、InもしくはGaとを存在させた金属錯体(Single Source Precursor)が金属カルコゲナイドの原料として用いられることが記載されている。
また、CZTS等のI−II−IV−VI族化合物から成る金属カルコゲナイドの原料としては、金属カルコゲナイドを構成する元素の塩や錯体等が用いられる。例えば特許文献4や特許文献5には、CuとZnとSeとを存在させた金属錯体や、CuとSnとSeとを存在させた金属錯体、CuとSeとを存在させた金属錯体、ZnとSeとを存在させた金属錯体、SnとSeとを存在させた金属錯体等が金属カルコゲナイドの原料として用いられることが記載されている。
特開2000−299486号公報 特開2011−146595号公報 米国特許第6992202号明細書 特開2013−26541号公報 国際公開第2013/129466号公報
金属カルコゲナイドを含む光電変換装置には、光電変換効率の向上が常に要求される。この光電変換効率は、光電変換装置において太陽光のエネルギーが電気エネルギーに変換される割合を示し、例えば、光電変換装置から出力される電気エネルギーの値が、光電変換装置に入射される太陽光のエネルギーの値で除されて、100が乗じられることで導出される。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光電変換装置における光電変換効率の向上を目的とする。
本発明の一態様に係る光電変換装置の製造方法は、金属元素に有機カルコゲン化合物が配位した金属錯体が有機溶媒に溶解された原料溶液を用意する第1工程と、電極層上に前記原料溶液を塗布することによって第1皮膜を形成した後、該第1皮膜を第1温度で加熱して前記第1皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第1熱分解膜を形成する第2工程と、該第2工程を1回以上繰り返して前記電極層上に前記第1熱分解膜の積層体を作製する第3工程と、前記積層体上に前記原料溶液を塗布することによって第2皮膜を形成した後、該第2皮膜を前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して前記第2皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第2熱分解膜を形成する第4工程と、前記積層体および前記第2熱分解膜をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱することによって金属カルコゲナイドを含む半導体層にする第5工程とを具備する。
本発明の他の態様に係る光電変換装置の製造方法は、金属元素に有機カルコゲン化合物が配位した金属錯体が有機溶媒に溶解された原料溶液を用意する第1工程と、電極層上に前記原料溶液を塗布することによって第1皮膜を形成した後、該第1皮膜を第1温度で加熱して前記第1皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第1熱分解膜を形成する第2工程と、前記第1熱分解膜上に前記原料溶液を塗布することによって第2皮膜を形成した後、該第2皮膜を前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して前記第2皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第2熱分解膜を形成する第3工程と、前記第1熱分解膜および前記第2熱分解膜をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱することによって金属カルコゲナイドを含む半導体層にする第4工程とを具備する。
本発明の上記実施形態によれば、光電変換効率の高い光電変換装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。 図1の光電変換装置の断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換装置の製造途中の様子を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法について、図面を参照しなが
ら説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同一符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。
<(1)光電変換装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置11の一例を示す斜視図である。図2は、図1の光電変換装置11のXZ断面図である。なお、図1から図13には、光電変換セル10の配列方向(図1の図面視左右方向)をX軸方向とする右手系のXYZ座標系が付されている。
光電変換装置11は、基板1の上に複数の光電変換セル10が並設された構成を有している。図1では、図示の都合上、2つの光電変換セル10のみが示されているが、実際の光電変換装置11には、図面のX軸方向、或いは更に図面のY軸方向に、多数の光電変換セル10が平面的に(二次元的に)配列されている。
各光電変換セル10は、下部電極層2、第1の半導体層3、第2の半導体層4、上部電極層5、および集電電極7を主に備えている。光電変換装置11では、上部電極層5および集電電極7が設けられた側の主面が受光面となっている。また、光電変換装置11には、第1〜3溝部P1,P2,P3といった3種類の溝部が設けられている。
基板1は、複数の光電変換セル10を支持するものであり、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、または金属等の材料で構成されている。例えば、基板1として、1〜3mm程度の厚さを有する青板ガラス(ソーダライムガラス)が用いられてもよい。
下部電極層2は、基板1の一主面の上に設けられた導電層であり、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、または金(Au)等の金属、あるいはこれらの金属の積層構造体からなる。また、下部電極層2は、0.2〜1μm程度の厚さを有し、例えば、スパッタリング法または蒸着法等の公知の薄膜形成方法によって形成される。
光吸収層としての第1の半導体層3は、下部電極層2の+Z側の主面(一主面ともいう)の上に設けられた、第1の導電型(ここではp型の導電型)を有する半導体層であり、1〜3μm程度の厚さを有している。第1の半導体層3は、金属カルコゲナイドを主として含む半導体層である。なお、金属カルコゲナイドを主として含むとは、金属カルコゲナイドを70mol%以上含んでいるものをいう。また、金属カルコゲナイドとは、金属元素とカルコゲン元素との化合物である。また、カルコゲン元素とは16族元素(VI−B族元素ともいう)のうちの硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)をいう。
金属カルコゲナイドとしては、11族元素(I−B族元素ともいう)と13族元素(III−B族元素ともいう)とカルコゲン元素との化合物であるI−III−VI族化合物、11族元素と12族元素(II−B族元素ともいう)と14族元素(IV−B族元素ともいう)とカルコゲン元素との化合物であるI−II−IV−VI族化合物および12族元素とカルコゲン元素との化合物であるII−VI族化合物等が採用され得る。
I−III−VI族化合物としては、例えば、CuInSe(二セレン化銅インジウム、
CISともいう)、Cu(In,Ga)Se(二セレン化銅インジウム・ガリウム、CIGSともいう)等が挙げられる。また、I−II−IV−VI族化合物としては、例えば、CuZnSnS(CZTSともいう)、CuZnSn(S,Se)(CZTSSeともいう)、およびCuZnSnSe(CZTSeともいう)が挙げられる。また、
II−VI族化合物としては、例えば、CdTe等が挙げられる。
第2の半導体層4は、第1の半導体層3の一主面の上に設けられた半導体層である。この第2の半導体層4は、第1の半導体層3の導電型とは異なる導電型(ここではn型の導電型)を有している。第1の半導体層3と第2の半導体層4との接合によって、第1の半導体層3で光電変換されて生じた正負キャリアが良好に電荷分離される。なお、導電型が異なる半導体とは、伝導担体(キャリア)が異なる半導体のことである。また、上記のように第1の半導体層3の導電型がp型である場合、第2の半導体層4の導電型は、n型でなく、i型であっても良い。更に、第1の半導体層3の導電型がn型またはi型であり、第2の半導体層4の導電型がp型である態様も有り得る。
第2の半導体層4は、例えば、硫化カドミウム(CdS)、硫化インジウム(In)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化インジウム(InSe)、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等の化合物半導体によって構成されている。そして、電流の損失が低減される観点から言えば、第2の半導体層4は、1Ω・cm以上の抵抗率を有するものとすることができる。なお、第2の半導体層4は、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。
また、第2の半導体層4は、第1の半導体層3の一主面の法線方向に厚さを有する。この厚さは、例えば10〜200nmに設定される。
上部電極層5は、第2の半導体層4の上に設けられた、n型の導電型を有する透明導電膜であり、第1の半導体層3において生じた電荷を取り出す電極である。上部電極層5は、第2の半導体層4よりも低い電気抵抗率を有する物質によって構成されている。上部電極層5には、いわゆる窓層と呼ばれるものも含まれ、この窓層に加えて更に透明導電膜が設けられる場合には、これらが一体の上部電極層5とみなされても良い。
上部電極層5は、禁制帯幅が広く且つ透明で低抵抗の材料を主に含んでいる。このような材料としては、例えば、ZnO、InおよびSnO等の金属酸化物半導体等が採用され得る。これらの金属酸化物半導体には、Al、B、Ga、InおよびF等のうちの何れかの元素が含まれても良い。このような元素が含まれた金属酸化物半導体の具体例としては、例えば、AZO(Aluminum Zinc Oxide)、BZO(Boron Zinc Oxide)、G
ZO(Gallium Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine tin Oxide)等がある。
上部電極層5は、スパッタリング法、蒸着法、または化学的気相成長(CVD)法等によって、0.05〜3.0μmの厚さを有するように形成される。ここで、第1の半導体層3から電荷が良好に取り出される観点から言えば、上部電極層5は、1Ω・cm未満の抵抗率と、50Ω/□以下のシート抵抗とを有するものとすることができる。
第2の半導体層4および上部電極層5は、第1の半導体層3が吸収する光の波長領域に対して光を透過させ易い性質(光透過性ともいう)を有する素材によって構成され得る。これにより、第2の半導体層4と上部電極層5とが設けられることで生じる、第1の半導体層3における光の吸収効率の低下が低減される。
また、光透過性が高められると同時に、光反射のロスが防止される効果と光散乱効果とが高められ、更に光電変換によって生じた電流が良好に伝送される観点から言えば、上部電極層5は、0.05〜0.5μmの厚さとなるようにすることができる。更に、上部電極層5と第2の半導体層4との界面で光反射のロスが低減される観点から言えば、上部電極層5と第2の半導体層4との間で絶対屈折率が略同一となるようにすることができる。
集電電極7は、Y軸方向に離間して設けられ、それぞれがX軸方向に延在している。集電電極7は、導電性を有する電極であり、例えば、銀(Ag)等の金属からなる。
集電電極7は、第1の半導体層3において発生して上部電極層5において取り出された電荷を集電する役割を担う。集電電極7が設けられれば、上部電極層5の薄層化が可能となる。
集電電極7および上部電極層5によって集電された電荷は、第2溝部P2に設けられた接続導体6を通じて、隣の光電変換セル10に伝達される。接続導体6は、例えば、図2に示されるように集電電極7のY軸方向への延在部分によって構成されている。これにより、光電変換装置11においては、隣り合う光電変換セル10の一方の下部電極層2と、他方の集電電極7とが、第2溝部P2に設けられた接続導体6を介して電気的に直列に接続されている。なお、接続導体6は、これに限定されず、上部電極層5の延在部分によって構成されていてもよい。
集電電極5は、良好な導電性が確保されつつ、第1の半導体層3への光の入射量を左右する受光面積の低下が最小限にとどめられるように、50〜400μmの幅を有するものとすることができる。
<(2)光電変換装置の製造方法>
図3から図13は、光電変換装置11の製造途中の様子をそれぞれ模式的に示す断面図である。なお、図3から図13で示される各断面図は、図2で示された断面に対応する部分の製造途中の様子を示す。
まず、洗浄された基板1の略全面に、スパッタリング法等を用いて、Mo等からなる下部電極層2を成膜する。そして、下部電極層2の上面のうちのY方向に沿った直線状の形成対象位置からその直下の基板1の上面にかけて、第1溝部P1を形成する。第1溝部P1は、例えば、YAGレーザー等によるレーザー光を走査しつつ形成対象位置に照射することで溝加工を行なう、スクライブ加工によって形成することができる。図3は、第1溝部P1を形成した後の状態を示す図である。
第1溝部P1を形成した後、図4に示すように、下部電極層2の上に原料溶液を塗布することによって第1皮膜3xを形成する。この原料溶液は、金属元素に有機カルコゲン化合物が配位した金属錯体を有機溶媒に溶解したものである。金属錯体に用いられる金属元素は、第1の半導体層3に含まれる金属カルコゲナイドを構成する金属元素である。原料溶液に混合された金属錯体は1種類のものであってもよく、複数種の混合体であってもよい。また、有機カルコゲン化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物であり、炭素元素とカルコゲン元素との共有結合を有する有機化合物である。有機カルコゲン化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、テルロール、テルリド、ジテルリド等がある。
第1の半導体層3が金属カルコゲナイドとして、例えばI−III−VI族化合物を含む場
合、原料溶液には11族元素および13族元素が含まれている。この場合、金属錯体としては、1つの錯体分子中に複数種の金属元素を含む多元金属錯体(ここでは11族元素および13族元素をともに含む多元金属錯体である)を用いてもよく、あるいは、11族元素を含む11族金属錯体と13族元素を含む13族金属錯体との混合物を用いてもよい。多元金属錯体としては、例えば、特許文献2に示すような、1つの錯体分子中に11族元素および13族元素を含み、これらの元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した単一源前駆体等がある。また、11族金属錯体としては、例えば、1
1族元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した金属錯体がある。また、13族金属錯体としては、例えば、13族元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した金属錯体がある。
また、第1の半導体層3が金属カルコゲナイドとしてI−II−IV−VI族化合物を含む場合、原料溶液には11族元素、12族元素および14族元素が含まれている。この場合、金属錯体としては、例えば、特許文献4や特許文献5に示すような、1つの錯体分子中に11族元素および12族元素を含み、これらの元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した多元金属錯体や、1つの錯体分子中に11族元素および14族元素を含み、これらの元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した多元金属錯体、11族元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した11族金属錯体、12族元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した12族金属錯体、14族元素にチオールまたはセレノール等の有機カルコゲン化合物が配位した14族金属錯体等を適宜組み合わせて用いることができる。
また、第1の半導体層3が金属カルコゲナイドとしてII−VI族化合物を含む場合、原料溶液には12族元素が含まれている。この場合、金属錯体として、12族元素に有機配位子が配位した12族金属錯体を用いることができる。
原料溶液に用いる有機溶媒としては、金属錯体を溶解あるいは分散可能なものを用いることができる。金属錯体を良好に溶解して良好な第1皮膜3xを形成することが可能になるという観点からは、アミン系有機溶媒等の極性溶媒を用いても良い。特に、溶解性が高いとともに安定した濃度の原料溶液の調整が容易で取扱性がよいという観点からは、ピリジンやアニリン等のフェニル基を有するアミン系有機溶媒を用いてもよい。
下部電極層2の上への第1皮膜3xの形成方法としては、原料溶液を、例えばスピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレーまたはダイコータ等によって下部電極層2の上に膜状に塗布する方法を用いることができる。
第1皮膜3xを形成した後、この第1皮膜3xを第1温度で加熱して第1皮膜3xに含まれる有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第1熱分解膜3aを形成する。この加熱工程において、第1温度は280〜340℃であり、雰囲気としては、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることができる。この工程によって、第1熱分解膜3a中に含まれる炭素元素の含有率が金属カルコゲナイドに対して5mol%以下となる。図5は、第1熱分解膜3aを形成した後の状態を示す図である。
次に、この第1熱分解膜3a上に、上記の工程と同様にして、図6に示すように第1皮膜3yを形成した後、これを第1温度で加熱して第1熱分解膜3bにすることによって第1熱分解膜3a、3bの積層体を作製する。図7は積層体が2層の第1熱分解膜3a、3bから成る例を示しているが、上記工程を繰り返して3層以上の第1熱分解膜から成る積層体としてもよい。
次に、この第1熱分解膜3a、3bの積層体上に、上記の工程と同様にして、図8に示すように第2皮膜3zを形成する。そして、この第2皮膜3zを、上記第1温度よりも高い第2温度で加熱して第2皮膜3zに含まれる有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第2熱分解膜3cを形成する。この加熱工程において、第2温度は第1温度の1.1〜1.5倍とすることができる。図9は、第2熱分解膜3cを形成したあとの状態を示す図である。なお、以下では、第1熱分解膜3a、3bから成る積層体および第2熱分解膜3cを合わせて前駆体層3PLという。
次に、上記の前駆体層3PLを、カルコゲン元素を含む雰囲気で加熱することによって、金属カルコゲナイドを含む第1の半導体層3にする。つまり、前駆体層3PL中の金属元素が、前駆体層3PL中のカルコゲン元素あるいは雰囲気中のカルコゲン元素と反応して金属カルコゲナイドが生成する。
カルコゲン元素を含む雰囲気は、硫黄蒸気、セレン蒸気、テルル蒸気、硫化水素、セレン化水素またはテルル化水素等のガス雰囲気であってもよく、あるいは、非酸化性ガス中に上記のようなカルコゲン元素の蒸気あるいはカルコゲン元素の水素化物を含む混合ガス雰囲気であってもよい。なお、非酸化性ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスや水素等の還元性ガスが挙げられる。特に有機成分の第1の半導体層3中への残存率をより低減するという観点からは、非酸化性ガスとして水素を用いてもよい。この場合、雰囲気中に含まれるカルコゲン元素の量としては、単位体積当たりの水素分子のモル数をGとしたときにカルコゲン元素が原子のモル数として、例えばGの10−6倍〜5×10−2倍程度、より好ましくはGの10−5倍〜5×10−3倍であればよい。
また、カルコゲン元素を含む雰囲気における前駆体層3PLの加熱温度は、例えば400〜650℃であり、加熱時間は、例えば0.5〜5時間である。図10は、第1の半導体層3を形成した後の状態を示す図である。
このように前駆体層3PLの作製において、最表層の第2熱分解膜3cを他の第1熱分解膜3a、3bよりも高い温度で加熱処理して、有機成分の熱分解を行なうことによって、第1の半導体層3の光電変換効率を高めることができる。これは以下の理由による。原料溶液を用いて金属カルコゲナイドを含む第1の半導体層3を作製する場合、1〜10μm程度の厚みの第1の半導体層3とするためには、原料溶液を用いて皮膜を形成し、これを乾燥するという工程を繰り返して、複数層の皮膜の積層体とする必要がある。この皮膜の積層体を形成する際には、有機成分が残存しないように、各皮膜を形成する毎に有機成分を熱分解除去しておき、皮膜を熱分解膜にしておくのがよい。このとき、熱分解させる温度を比較的低くするほど欠陥が少なくて光電変換効率の高い第1の半導体層3が得られやすくなるものの、クラックが生じやすくなってリークを起こすために全体としての光電変換効率を向上させるのが困難となる傾向がある。一方、熱分解させる温度を比較的高くするほどクラックが生じ難くなるものの、欠陥が多くなって光電変換効率が低くなる傾向がある。これに対し、上記のように、最表層の第2熱分解膜3cを他の第1熱分解膜3a、3bよりも高い温度で加熱処理して、有機成分の熱分解を行なうことによって、第2熱分解膜3cが前駆体層3PL全体のクラックを抑制することができるとともに、比較的低い温度で加熱処理した第1熱分解膜3a、3bによって欠陥の少ない第1の半導体層3にすることができる。その結果、光電変換装置11の光電変換効率が向上する。
第1の半導体層3を形成した後、第1の半導体層3の上に、第2の半導体層4および上部電極層5を順に形成する。
第2の半導体層4は、溶液成長法(CBD法ともいう)によって形成することができる。例えば、塩化インジウムとチオアセトアミドとを塩酸で酸性にした水に溶解し、これに第1の半導体層3の形成まで行なった基板1を浸漬することで、第1の半導体層3の上にInを含む第2の半導体層4を形成することができる。
上部電極層5は、例えば、Snが含まれた酸化インジウム(ITO)等を主成分とする透明導電膜であり、スパッタリング法、蒸着法、またはCVD法等で形成することができる。図11は、第2の半導体層4および上部電極層5を形成した後の状態を示す図である。
上部電極層5を形成した後、上部電極層5の上面のうちのY方向に沿った直線状の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて、第2溝部P2を形成する。第2溝部P2は、例えば、40〜50μm程度のスクライブ幅のスクライブ針を用いたスクライビングを、ピッチをずらしながら連続して数回にわたって行なうことで形成できる。また、スクライブ針の先端形状が第2溝部P2の幅に近い程度にまで広げたうえでスクライブすることによって第2溝部P2を形成しても良い。あるいは、2本または2本を超えるスクライブ針を相互に当接または近接した状態で固定し、1回から数回のスクライブを行なうことによって第2溝部P2を形成しても良い。図12は、第2溝部P2を形成した後の状態を示す図である。第2溝部P2は、第1溝部P1よりも若干X方向(図中では+X方向)にずれた位置に形成する。
第2溝部P2を形成した後、集電電極7および接続導体6を形成する。集電電極7および接続導体6については、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散した導電性を有するペースト(導電ペーストともいう)を、所望のパターンを描くように印刷し、これを乾燥し、固化することで形成できる。図13は、集電電極7および接続導体6を形成した後の状態を示す図である。
集電電極7および接続導体6を形成した後、上部電極層5の上面のうちの直線状の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて、第3溝部P3を形成する。第3溝部P3の幅は、例えば、40〜1000μm程度とすることができる。また、第3溝部P3は、第2溝部P2と同様に、メカニカルスクライビングによって形成することができる。このようにして、第3溝部P3の形成によって、図1および図2で示された光電変換装置11を製作したことになる。
<(3)光電変換装置の製造方法の他の例>
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
例えば、上述の実施の形態では、前駆体層3PLにおける第2熱分解膜3cが1層の例を示したが、第2熱分解膜3cが2層以上であってもよい。
また、上記第1皮膜3xを加熱して第1熱分解膜3aにする際の雰囲気、上記第1皮膜3yを加熱して第1熱分解膜3bにする際の雰囲気、ならびに上記第2皮膜3zを加熱して第2熱分解膜3cにする際の雰囲気に水(水蒸気)を含ませてもよい。このような雰囲気としては、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス中に水蒸気を分圧比で50〜1000ppmv含ませることができる。この場合、このように水を含む雰囲気で有機成分を熱分解して除去することによって、金属元素がある程度酸化された状態となる。その結果、金属酸化物の生成によって、第1熱分解膜3a、第1熱分解膜3bおよび第2熱分解膜3cの強度を高め、クラックの発生や下部電極層2からの剥離等をさらに低減することができる。
また、上述の実施の形態では、前駆体層3PLにおける第1熱分解膜が複数層(第1熱分解膜3a、3b)の例を示したが、第1熱分解膜が1層であってもよい。この場合も上記と同様の原料溶液を採用することができ、また、同様の加熱条件を採用することができる。
1:基板
2:下部電極層
3:第1の半導体層
3x、3y:第1皮膜
3z:第2皮膜
3a、3b:第1熱分解膜
3c:第2熱分解膜
3PL:前駆体層
4:第2の半導体層
5:上部電極層
6:接続導体
7:集電電極
10:光電変換セル
11:光電変換装置

Claims (10)

  1. 金属元素に有機カルコゲン化合物が配位した金属錯体が有機溶媒に溶解された原料溶液を用意する第1工程と、
    電極層上に前記原料溶液を塗布することによって第1皮膜を形成した後、該第1皮膜を第1温度で加熱して前記第1皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第1熱分解膜を形成する第2工程と、
    該第2工程を1回以上繰り返して前記電極層上に前記第1熱分解膜の積層体を作製する第3工程と、
    前記積層体上に前記原料溶液を塗布することによって第2皮膜を形成した後、該第2皮膜を前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して前記第2皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第2熱分解膜を形成する第4工程と、前記積層体および前記第2熱分解膜をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱することによって金属カルコゲナイドを含む半導体層にする第5工程と
    を具備する光電変換装置の製造方法。
  2. 前記金属錯体として11族元素および13族元素をともに含む多元金属錯体を用い、前記金属カルコゲナイドにI−III−VI族化合物を含ませる、請求項1に記載の光電変換装
    置の製造方法。
  3. 前記金属錯体として、11族元素を含む11族金属錯体および13族元素を含む13族金属錯体を用い、前記金属カルコゲナイドにI−III−VI族化合物を含ませる、請求項1
    または2に記載の光電変換装置の製造方法。
  4. 前記第2工程および前記第3工程における前記第1皮膜を加熱する際の雰囲気ならびに前記第4工程における前記第2皮膜を加熱する際の雰囲気に水を含ませる、請求項1乃至3のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
  5. 前記第5工程における雰囲気に水素を含ませる請求項1乃至4のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
  6. 金属元素に有機カルコゲン化合物が配位した金属錯体が有機溶媒に溶解された原料溶液を用意する第1工程と、
    電極層上に前記原料溶液を塗布することによって第1皮膜を形成した後、該第1皮膜を第1温度で加熱して前記第1皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第1熱分解膜を形成する第2工程と、
    前記第1熱分解膜上に前記原料溶液を塗布することによって第2皮膜を形成した後、該第2皮膜を前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して前記第2皮膜に含まれる前記有機カルコゲン化合物の有機成分を熱分解除去することによって第2熱分解膜を形成する第3工程と、
    前記第1熱分解膜および前記第2熱分解膜をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱することによって金属カルコゲナイドを含む半導体層にする第4工程と
    を具備する光電変換装置の製造方法。
  7. 前記金属錯体として11族元素および13族元素をともに含む多元金属錯体を用い、前記金属カルコゲナイドにI−III−VI族化合物を含ませる、請求項6に記載の光電変換装
    置の製造方法。
  8. 前記金属錯体として、11族元素を含む11族金属錯体および13族元素を含む13族金属錯体を用い、前記金属カルコゲナイドにI−III−VI族化合物を含ませる、請求項6
    または7に記載の光電変換装置の製造方法。
  9. 前記第2工程における前記第1皮膜を加熱する際の雰囲気ならびに前記第3工程における前記第2皮膜を加熱する際の雰囲気に水を含ませる、請求項6乃至8のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
  10. 前記第4工程における雰囲気に水素を含ませる請求項6乃至9のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
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