JP2015070020A - 光電変換装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光電変換効率の高い光電変換装置を提供する。
【解決手段】 光電変換装置11の製造方法は、電極層2上に、11族元素、インジウム元素、ガリウム元素およびセレン元素を含み、電極層2とは反対側の表面部において、インジウム元素とガリウム元素の合計原子濃度に対するガリウム元素の原子濃度比が電極層2とは反対側の主面に近づくほど高くなっている皮膜Mを作製する工程と、皮膜Mを硫黄元素を含む第1雰囲気で加熱してI−III−VI族化合物を含む半導体層3にする工程とを
具備する。
【選択図】 図2
【解決手段】 光電変換装置11の製造方法は、電極層2上に、11族元素、インジウム元素、ガリウム元素およびセレン元素を含み、電極層2とは反対側の表面部において、インジウム元素とガリウム元素の合計原子濃度に対するガリウム元素の原子濃度比が電極層2とは反対側の主面に近づくほど高くなっている皮膜Mを作製する工程と、皮膜Mを硫黄元素を含む第1雰囲気で加熱してI−III−VI族化合物を含む半導体層3にする工程とを
具備する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、I−III−VI族化合物を含む半導体層を用いた光電変換装置の製造方法に関
するものである。
するものである。
太陽光発電等に使用される光電変換装置として、CuInSe2(CIS)やCu(In,Ga)Se2(CIGS)等のI−III−VI族化合物を含む半導体層を光吸収層に用
い、この光吸収層上にII−VI族化合物等のバッファ層を形成したものがある。
い、この光吸収層上にII−VI族化合物等のバッファ層を形成したものがある。
このような光電変換装置は、光電変換効率の向上が要求されている。例えば特許文献1では、上記光吸収層の表面にCu(In,Ga)(Se,S)2(CIGSS)からなる、厚さが150nm程度の表面層を設け、この表面層における硫黄元素濃度をバッファ層側の表面から光吸収層の内部に向かって減少する濃度勾配にして、光吸収層とバッファ層との界面接合性を改善するにより、光電変換効率を向上することが提案されている。
この特許文献1では、光吸収層の表面に硫黄元素を導入するため、金属前駆体層をセレン元素を含む雰囲気で加熱してCIGS層を形成した後、このCIGS層を、硫黄元素を含む雰囲気中で加熱することによって、CIGS層の表面のセレン元素を硫黄元素に置換する方法を用いている。
しかしながら、上記のような方法では、CIGS層を、硫黄元素を含む雰囲気中で加熱する際、CIGS層からセレン元素が抜け、16族元素欠陥が生じやすくなる。そのため、光電変換効率をさらに高めることは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光電変換効率の高い光電変換装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る光電変換装置の製造方法は、電極層上に、11族元素、インジウム元素、ガリウム元素およびセレン元素を含み、前記電極層とは反対側の表面部において、前記インジウム元素と前記ガリウム元素の合計原子濃度に対する前記ガリウム元素の原子濃度比が前記電極層とは反対側の主面に近づくほど高くなっている皮膜を作製する工程と、該皮膜を硫黄元素を含む第1雰囲気で加熱してI−III−VI族化合物を含む半導体層にする工程とを具備する。
本発明によれば、光電変換効率の高い光電変換装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同一符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。
<(1)光電変換装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置11の一例を示す斜視図である。図2は、図1の光電変換装置11のXZ断面図である。なお、図1から図2および図4から図9には、光電変換セル10の配列方向(図1の図面視左右方向)をX軸方向とする右手系のXYZ座標系が付されている。
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置11の一例を示す斜視図である。図2は、図1の光電変換装置11のXZ断面図である。なお、図1から図2および図4から図9には、光電変換セル10の配列方向(図1の図面視左右方向)をX軸方向とする右手系のXYZ座標系が付されている。
光電変換装置11は、基板1の上に複数の光電変換セル10が並設された構成を有している。図1では、図示の都合上、2つの光電変換セル10のみが示されているが、実際の光電変換装置11には、図面のX軸方向、或いは更に図面のY軸方向に、多数の光電変換セル10が平面的に(二次元的に)配列されている。
各光電変換セル10は、下部電極層2、I−III−VI族化合物を含む半導体層3(以下
では、I−III−VI族化合物を含む半導体層のことを第1の半導体層ともいう)、第2の
半導体層4、上部電極層5、および集電電極7を主に備えている。光電変換装置11では、上部電極層5および集電電極7が設けられた側の主面が受光面となっている。また、光電変換装置11には、第1〜3溝部P1,P2,P3といった3種類の溝部が設けられている。
では、I−III−VI族化合物を含む半導体層のことを第1の半導体層ともいう)、第2の
半導体層4、上部電極層5、および集電電極7を主に備えている。光電変換装置11では、上部電極層5および集電電極7が設けられた側の主面が受光面となっている。また、光電変換装置11には、第1〜3溝部P1,P2,P3といった3種類の溝部が設けられている。
基板1は、複数の光電変換セル10を支持するものであり、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、または金属等の材料で構成されている。例えば、基板1として、1〜3mm程度の厚さを有する青板ガラス(ソーダライムガラス)が用いられてもよい。
下部電極層2は、基板1の一主面の上に設けられた導電層であり、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、または金(Au)等の金属、あるいはこれらの金属の積層構造体からなる。また、下部電極層2は、0.2〜1μm程度の厚さを有し、例えば、スパッタリング法または蒸着法等の公知の薄膜形成方法によって形成される。
光吸収層としての第1の半導体層3は、下部電極層2の+Z側の主面(一主面ともいう)の上に設けられた、第1の導電型(ここではp型の導電型)を有する半導体層であり、1〜3μm程度の厚さを有している。第1の半導体層3はカルコパイライト系のI−III−VI族化合物を含む半導体層である。I−III−VI族化合物とは、11族元素(I−B族元素ともいう)と、13族元素(III−B族元素ともいう)と、16族元素(VI−B族元素ともいう)とを含んだ化合物である。そして、第1の半導体層3は16族元素として少なくともセレン(Se)元素および硫黄(S)元素とを含んでいる。このようなI−III−VI族化合物としては、例えば、Cu(In,Ga)(Se,S)2(二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム、CIGSSともいう)、CuIn(Se,S)2(二セレン・イオウ化銅インジウム、CISSともいう)、CuGa(Se,S)2(二セレン・イオウ化銅ガリウム、CGSSともいう)等が挙げられる。
そして、第1の半導体層3は、下部電極層2とは反対側の表面部3aにおいて、S元素の原子濃度MSとSe元素の原子濃度MSeとの合計原子濃度(MS+MSe)に対するS元素の相対原子濃度比MS/(MS+MSe)が、下部電極層2とは反対側の主面に近づくほど増加している。このような構成により、第2の半導体層4とpn接合を行なう第1の半導体層3の表面部3aにおいてバンドギャップを大きくすることができるため、pn接合性を良好にして界面再結合を抑制することができるとともに、開放電圧を大きくすることができる。その結果、光電変換装置11の光電変換効率を高めることができる。
第1の半導体層3の厚み方向の組成分布は、例えば図3に示すように表わされる。なお、第1の半導体層3の厚み方向の組成分布は、種々の元素分析法によって測定できる。例えば、S元素およびSe元素については、第1の半導体層3をスパッタリング法等によって厚み方向に削りながらX線電子分光分析法(XPS)で元素分析したり、あるいは第1の半導体層3の断面を、透過電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDS)で元素分析したりすることによって測定できる。
第1の半導体層3におけるS元素およびSe元素の濃度分布は、第1の半導体層3を厚み方向に3等分したときに、中央部における相対原子濃度比MS/(MS+MSe)の平均値が0〜0.5であり、第2の半導体層4側の表面部における相対原子濃度比MS/(MS+MSe)の平均値が0.02〜0.8であり、さらに第2の半導体層4側の表面部における相対原子濃度比MS/(MS+MSe)の平均値が中央部における相対原子濃度比MS/(MS+MSe)の平均値よりも0.02以上大きければよい。
第2の半導体層4は、第1の半導体層3の一主面の上に設けられた半導体層である。この第2の半導体層4は、第1の半導体層3の導電型とは異なる導電型(ここではn型の導電型)を有している。第1の半導体層3と第2の半導体層4との接合によって、第1の半導体層3で光電変換されて生じた正負キャリアが良好に電荷分離される。なお、導電型が異なる半導体とは、伝導担体(キャリア)が異なる半導体のことである。また、上記のように第1の半導体層3の導電型がp型である場合、第2の半導体層4の導電型は、n型でなく、i型であっても良い。更に、第1の半導体層3の導電型がn型またはi型であり、第2の半導体層4の導電型がp型である態様も有り得る。
第2の半導体層4は、例えば、硫化カドミウム(CdS)、硫化インジウム(In2S3)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化インジウム(In2Se3)、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等の化合物半導体によって構成されている。そして、電流の損失が低減される観点から言えば、第2の半導体層4は、1Ω・cm以上の抵抗率を有するものとすることができる。なお、第2の半導体層4は、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。
また、第2の半導体層4は、第1の半導体層3の一主面の法線方向に厚さを有する。この厚さは、例えば10〜200nmに設定される。
上部電極層5は、第2の半導体層4の上に設けられた透明導電膜であり、第1の半導体
層3において生じた電荷を取り出す電極である。上部電極層5は、第2の半導体層4よりも低い抵抗率を有する物質によって構成されている。上部電極層5には、いわゆる窓層と呼ばれるものも含まれ、この窓層に加えて更に透明導電膜が設けられる場合には、これらが一体の上部電極層5とみなされても良い。
層3において生じた電荷を取り出す電極である。上部電極層5は、第2の半導体層4よりも低い抵抗率を有する物質によって構成されている。上部電極層5には、いわゆる窓層と呼ばれるものも含まれ、この窓層に加えて更に透明導電膜が設けられる場合には、これらが一体の上部電極層5とみなされても良い。
上部電極層5は、禁制帯幅が広く且つ透明で低抵抗の材料を主に含んでいる。このような材料としては、例えば、ZnO、In2O3およびSnO2等の金属酸化物半導体等が採用され得る。これらの金属酸化物半導体には、Al、B、Ga、InおよびF等のうちの何れかの元素が含まれても良い。このような元素が含まれた金属酸化物半導体の具体例としては、例えば、AZO(Aluminum Zinc Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、
IZO(Indium Zinc Oxide)、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine tin Oxide)等がある。
IZO(Indium Zinc Oxide)、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine tin Oxide)等がある。
上部電極層5は、スパッタリング法、蒸着法、または化学的気相成長(CVD)法等によって、0.05〜3.0μmの厚さを有するように形成される。ここで、第1の半導体層3から電荷が良好に取り出される観点から言えば、上部電極層5は、1Ω・cm未満の抵抗率と、50Ω/□以下のシート抵抗とを有するものとすることができる。
第2の半導体層4および上部電極層5は、第1の半導体層3が吸収する光の波長領域に対して光を透過させ易い性質(光透過性ともいう)を有する素材によって構成され得る。これにより、第2の半導体層4と上部電極層5とが設けられることで生じる、第1の半導体層3における光の吸収効率の低下が低減される。
また、光透過性が高められると同時に、光反射のロスが防止される効果と光散乱効果とが高められ、更に光電変換によって生じた電流が良好に伝送される観点から言えば、上部電極層5は、0.05〜0.5μmの厚さとなるようにすることができる。更に、上部電極層5と第2の半導体層4との界面で光反射のロスが低減される観点から言えば、上部電極層5と第2の半導体層4との間で絶対屈折率が略同一となるようにすることができる。
集電電極7は、Y軸方向に離間して設けられ、それぞれがX軸方向に延在している。集電電極7は、導電性を有する電極であり、例えば、銀(Ag)等の金属からなる。
集電電極7は、第1の半導体層3において発生して上部電極層5において取り出された電荷を集電する役割を担う。集電電極7が設けられれば、上部電極層5の薄層化が可能となる。
集電電極7および上部電極層5によって集電された電荷は、第2溝部P2に設けられた接続導体6を通じて、隣の光電変換セル10に伝達される。接続導体6は、例えば、図2に示されるように集電電極7のY軸方向への延在部分によって構成されている。これにより、光電変換装置11においては、隣り合う光電変換セル10の一方の下部電極層2と、他方の集電電極7とが、第2溝部P2に設けられた接続導体6を介して電気的に直列に接続されている。なお、接続導体6は、これに限定されず、上部電極層5の延在部分によって構成されていてもよい。
集電電極5は、良好な導電性が確保されつつ、第1の半導体層3への光の入射量を左右する受光面積の低下が最小限にとどめられるように、50〜400μmの幅を有するものとすることができる。
<(2)光電変換装置の製造方法>
図4から図9は、光電変換装置11の製造途中の様子をそれぞれ模式的に示す断面図で
ある。なお、図4から図9で示される各断面図は、図2で示された断面に対応する部分の製造途中の様子を示す。
図4から図9は、光電変換装置11の製造途中の様子をそれぞれ模式的に示す断面図で
ある。なお、図4から図9で示される各断面図は、図2で示された断面に対応する部分の製造途中の様子を示す。
まず、洗浄された基板1の略全面に、スパッタリング法等を用いて、Mo等からなる下部電極層2を成膜する。そして、下部電極層2の上面のうちのY方向に沿った直線状の形成対象位置からその直下の基板1の上面にかけて、第1溝部P1を形成する。第1溝部P1は、例えば、YAGレーザー等によるレーザー光を走査しつつ形成対象位置に照射することで溝加工を行なう、レーザースクライブ加工によって形成することができる。図4は、第1溝部P1を形成した後の状態を示す図である。
第1溝部P1を形成した後、下部電極層2の上に、11族元素、In元素、Ga元素およびSe元素を含み、下部電極層2とは反対側の表面部において、In元素とGa元素の合計原子濃度に対するGa元素の原子濃度比が下部電極層2とは反対側の主面に近づくほど高くなっている皮膜Mを作製する(以下では、皮膜Mの下部電極層2とは反対側の表面部のことを単に皮膜Mの表面部ともいう)。Ga元素の原子濃度をMGaとし、In元素とGa元素との合計の原子濃度をMIIIとしたときに、皮膜Mの厚み方向におけるGa元
素の原子濃度比(MGa/MIII)は、例えば図10のような分布であってもよい。ある
いは、図11のような分布であってもよい。図11は、皮膜Mの表面部において、Ga元素の原子濃度の分布が、図10と同じような濃度勾配を有することに加え、残部において、下部電極層2に近づくほどGa元素の原子濃度比が高くなっている濃度勾配を有している。図11のような分布であれば、下部電極層2側に近づくほどGa元素の原子濃度比が高くなる第1の半導体層3を作製しやすくなる。
素の原子濃度比(MGa/MIII)は、例えば図10のような分布であってもよい。ある
いは、図11のような分布であってもよい。図11は、皮膜Mの表面部において、Ga元素の原子濃度の分布が、図10と同じような濃度勾配を有することに加え、残部において、下部電極層2に近づくほどGa元素の原子濃度比が高くなっている濃度勾配を有している。図11のような分布であれば、下部電極層2側に近づくほどGa元素の原子濃度比が高くなる第1の半導体層3を作製しやすくなる。
11族元素、In元素、Ga元素およびSe元素の各元素は、それぞれ皮膜M中に化合物の状態、合金の状態、および単体の状態のいずれの状態で存在していてもよい。
皮膜MにおけるGa元素の濃度は、皮膜Mを厚み方向に3等分したときに、表面部におけるIn元素とGa元素との合計原子濃度(MIII)に対するGa元素の原子濃度(MG
a)の比率(MGa/MIII)の平均値が0.1〜0.4であり、中央部におけるMGa
/MIIIの平均値が表面部におけるMGa/MIIIの平均値の0〜0.9倍であればよい。
a)の比率(MGa/MIII)の平均値が0.1〜0.4であり、中央部におけるMGa
/MIIIの平均値が表面部におけるMGa/MIIIの平均値の0〜0.9倍であればよい。
皮膜Mは、11族元素、In元素、Ga元素およびSe元素のうち、いずれか1種または複数種を含む原料を用いて、これらを所望の組成比となるように組み合わせて作製することができる。具体的には、上記原料を含む原料溶液を塗布することによって、あるいは、スパッタリング法や蒸着法等によって、皮膜Mを形成することができる。皮膜Mは複数層から成る積層体であってもよい。
皮膜Mを所望の組成で容易に作製できるという観点から、上記皮膜Mを、原料溶液を用いて作製してもよい。原料溶液は、11族元素、In元素、Ga元素およびSe元素が溶媒中に溶解されている。反応性を高くして結晶性を高めるという観点からは、11族元素、In元素およびGa元素の少なくとも1種に有機セレン化合物が配位した有機錯体を含む原料溶液を用いてもよい。このような有機錯体であれば、金属元素とSe元素とが接近した状態となるため、反応性が高くなる。
なお、有機セレン化合物とは、Se元素を含む有機化合物であり、炭素(C)元素とSe元素との共有結合を有する有機化合物である。有機セレン化合物としては、例えば、セレノールや、セレニド、ジセレニド等を用いることができる。有機セレン化合物が配位した有機錯体の具体例としては、銅元素や銀元素等の11元素に有機セレン化合物が配位した有機錯体、In元素やGa元素等の13族元素に有機セレン化合物が配位した有機錯体、または、有機セレン化合物が11族元素および13族元素の両方に配位して1つの分子中に11族元素と13族元素とSe元素とを有する単一源有機錯体(米国特許第7341917号明細書参照)等を用いることができる。
また、上記皮膜MにさらにS元素を含ませておいてもよい。これによって、皮膜M中にS元素をさらに良好に取り込ませることができる。S元素を皮膜Mに含ませる場合、S元素を、11族元素、インジウム元素およびガリウム元素の少なくとも1種に配位した有機硫黄化合物として皮膜Mに含ませておいてもよい。これにより、金属元素とS元素とが接近した状態となるため、反応性が高くなる。
なお、有機硫黄化合物とは、S元素を含む有機化合物であり、C元素とS元素との共有結合を有する有機化合物である。有機硫黄化合物としては、例えば、チオールや、スルフィド、ジスルフィド等を用いることができる。有機硫黄化合物が配位した有機錯体の具体例としては、銅元素や銀元素等の11元素に有機硫黄化合物が配位した有機錯体、In元素やGa元素等の13族元素に有機硫黄化合物が配位した有機錯体、または、有機硫黄化合物が11族元素および13族元素の両方に配位して1つの分子中に11族元素と13族元素とS元素とを有する単一源有機錯体(米国特許第7341917号明細書参照)等を用いることができる。
原料溶液を塗布することによって皮膜Mを作製する場合、例えば以下のようにすればよい。まず、上述した有機錯体等の原料を、ピリジンやアニリン等の有機溶媒に溶解して原料溶液を作製する。そして、この原料溶液を、例えば、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレー、ダイコータ等によって下部電極層2上に膜状に被着し、溶媒を乾燥によって除去する。この工程を異なる組成の原料溶液を用いて繰り返して積層皮膜を形成することにより、11族元素、In元素、Ga元素およびSe元素を含むとともに、厚み方向の中央部よりも下部電極層2とは反対側の表面部にGa元素を多く含む皮膜Mを作製することができる。図5は、皮膜Mを形成した後の状態を示す図である。
次にこの皮膜Mを、S元素を含む第1雰囲気で加熱することによって、16族元素としてSe元素およびS元素を含み、下部電極層2とは反対側の表面部3aにおいて、相対原子濃度比MS/(MS+MSe)が下部電極層2から離れるに従って増加しているI−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を欠陥の少ない良好な状態で作製することができ
る。
る。
これは以下の理由によると考えられる。11族元素、In元素、Ga元素およびSe元素を含む皮膜Mを第1雰囲気で加熱すると、皮膜M中のSe元素は各金属元素と反応し結晶化が進行する。一方、第1雰囲気と接触している皮膜Mの表面部にはGa元素が多く存在するが、Ga元素はIn元素よりも硫化物の結晶を生じやすい傾向があるため、皮膜Mの表面部に多く存在するGa元素とS元素とが良好に反応して、表面部にS元素が良好に取り込まれることとなる。つまり、皮膜Mの全体におけるセレン化と表面部における硫化とを同じ工程でともに進行させることができるため、表面部3aにおいてS元素の濃度勾配を有する第1の半導体層3を欠陥が少ない状態で良好に作製することができる。このように表面部3aでS元素の濃度勾配を有するとともに欠陥の少ない良好な第1の半導体層3とすることで、光電変換装置11の光電変換効率を良好に高めることができる。なお、第1雰囲気における皮膜Mの加熱温度は、例えば、400〜650℃とすることができる。図6は、第1の半導体層3を形成した後の状態を示す図である。
なお、上記方法で生成する第1の半導体層3の厚み方向におけるGa元素の濃度(MGa/MIII)は、皮膜Mのときの濃度分布を有しているとは限らない。つまり、Ga元素
よりもIn元素の方がセレン化物の結晶を生じやすい傾向があるため、皮膜Mの加熱の際、Se元素との反応性の低いGa元素は下部電極層2側へ移動しやすくなる傾向がある。そのため、皮膜Mの加熱時間や加熱温度、皮膜M中のSe元素の濃度、第1雰囲気中のS元素の濃度等を変えることによって、Ga元素の濃度分布を異ならせることができる。例えば、皮膜Mと同様に第1の半導体層3の表面部3aにおいてGa元素が下部電極層2とは反対側の主面(第2の半導体層4側の主面)に近づくほど濃度が高くなるような濃度分布を有するようにすることもでき、あるいは、部電極層2とは反対側の主面(第2の半導体層4側の主面)から下部電極層2側の主面に向かってGa元素の濃度が増加するような濃度分布を有するようにすることもできる。
よりもIn元素の方がセレン化物の結晶を生じやすい傾向があるため、皮膜Mの加熱の際、Se元素との反応性の低いGa元素は下部電極層2側へ移動しやすくなる傾向がある。そのため、皮膜Mの加熱時間や加熱温度、皮膜M中のSe元素の濃度、第1雰囲気中のS元素の濃度等を変えることによって、Ga元素の濃度分布を異ならせることができる。例えば、皮膜Mと同様に第1の半導体層3の表面部3aにおいてGa元素が下部電極層2とは反対側の主面(第2の半導体層4側の主面)に近づくほど濃度が高くなるような濃度分布を有するようにすることもでき、あるいは、部電極層2とは反対側の主面(第2の半導体層4側の主面)から下部電極層2側の主面に向かってGa元素の濃度が増加するような濃度分布を有するようにすることもできる。
第1雰囲気は、S元素を硫黄蒸気や硫化水素等の状態で含んでいる。第1雰囲気は、皮膜Mの硫化反応を制御しやすくするため、非酸化性ガス中にS元素を含んだものであってもよい。なお、非酸化性ガスとは、窒素やアルゴン等の不活性ガスまたは水素等の還元性ガスをいう。特に、皮膜M中の有機成分を良好に分解除去しやすいという観点からは、第1雰囲気として水素ガス中にS元素を含んだものを用いてもよい。非酸化性ガス中に含まれるS元素の量としては、非酸化性ガスを構成する分子のモル数をGとしたときに硫黄原子のモル数が、例えばGの10−6倍〜5×10−2倍程度、より好ましくはGの10−5倍〜5×10−3倍であればよい。このような範囲であれば、S元素を皮膜M中に良好に取り込むことができるとともに、皮膜Mの硫化を所望の程度に制御しやすくなる。
また、第1雰囲気で皮膜Mを加熱する前に、Se元素を含む雰囲気で先に皮膜Mの加熱を行なってもよい。これにより、生成する第1の半導体層3中のSe元素の減少を低減でき、Se元素の濃度を所望のものに調整しやすくなる。なお、第1雰囲気で皮膜Mを加熱する前にSe元素を含む雰囲気で先に皮膜Mを加熱する場合、Se元素を含む雰囲気での加熱により、皮膜Mの表面部におけるGa元素の濃度勾配(下部電極層2とは反対側の主面に近づくほどGa元素の原子濃度比が高くなる濃度勾配)が無くならないようにする。
また、第1雰囲気において皮膜Mを加熱する際、第1雰囲気中のS元素の濃度を加熱時間とともに増加させてもよい。これにより、加熱開始時ではS元素の少ない状態あるいはS元素のない状態として、皮膜Mの硫化が進行する前に皮膜M中に残存している有機成分をより良好に分解除去することができる。その結果、不純物の少ない良好な第1の半導体層3とすることができる。
また、皮膜Mを第1雰囲気で加熱する前に、皮膜Mに含まれる有機成分(有機錯体の有機成分や、有機セレン化合物あるいは有機硫黄化合物等の有機成分)を熱分解により除去しておいてもよい。このような工程を行なうことによって、第1の半導体層3の結晶化をより良好に行なうことができ、より欠陥の少ない第1の半導体層3を作製することができる。なお、皮膜Mの有機成分の除去方法としては、例えば、皮膜Mを不活性ガス中で100〜350℃に加熱すればよい。
第1の半導体層3を形成した後、第1の半導体層3の上に、第2の半導体層4および上部電極層5を順に形成する。
第2の半導体層4は、溶液成長法(CBD法ともいう)によって形成することができる。例えば、酢酸カドミウムとチオ尿素とをアンモニア水に溶解し、これに第1の半導体層3の形成まで行なった基板1を浸漬することで、第1の半導体層3の上にCdSを含む第2の半導体層4を形成することができる。
上部電極層5は、例えば、Snが含まれた酸化インジウム(ITO)等を主成分とする透明導電膜であり、スパッタリング法、蒸着法、またはCVD法等で形成することができる。図7は、第2の半導体層4および上部電極層5を形成した後の状態を示す図である。
上部電極層5を形成した後、上部電極層5の上面のうちのY方向に沿った直線状の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて、第2溝部P2を形成する。第2溝部P2は、例えば、スクライブ針を用いたメカニカルスクライビング加工によって形成することができる。図8は、第2溝部P2を形成した後の状態を示す図である。第2溝部P2は、第1溝部P1よりも若干X方向(図中では+X方向)にずれた位置に形成する。
第2溝部P2を形成した後、集電電極7および接続導体6を形成する。集電電極7および接続導体6については、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散した導電性を有するペースト(導電ペーストともいう)を、所望のパターンを描くように印刷し、これを加熱することで形成できる。図9は、集電電極7および接続導体6を形成した後の状態を示す図である。
集電電極7および接続導体6を形成した後、上部電極層5の上面のうちの直線状の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて、第3溝部P3を形成する。第3溝部P3の幅は、例えば、40〜1000μm程度とすることができる。また、第3溝部P3は、第2溝部P2と同様に、メカニカルスクライビング加工によって形成することができる。このようにして、第3溝部P3の形成によって、図1および図2で示された光電変換装置11を製作したことになる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。例えば、上記の光電変換装置の製造方法の例では、皮膜Mを、S元素を含む第1雰囲気で加熱することによって、あるいは皮膜Mを、Se元素を含む雰囲気で加熱した後にS元素を含む第1雰囲気で加熱することによって第1の半導体層3を作製したが、皮膜Mを第1雰囲気で加熱した後に、Se元素を含む雰囲気で加熱してもよく、あるいは第1雰囲気にSe元素を含めてもよい。
1:基板
2:下部電極層
3:第1の半導体層
4:第2の半導体層
5:上部電極層
6:接続導体
7:集電電極
10:光電変換セル
11:光電変換装置
M:皮膜
2:下部電極層
3:第1の半導体層
4:第2の半導体層
5:上部電極層
6:接続導体
7:集電電極
10:光電変換セル
11:光電変換装置
M:皮膜
Claims (6)
- 電極層上に、11族元素、インジウム元素、ガリウム元素およびセレン元素を含み、前記電極層とは反対側の表面部において、前記インジウム元素と前記ガリウム元素の合計原子濃度に対する前記ガリウム元素の原子濃度比が前記電極層とは反対側の主面に近づくほど高くなっている皮膜を作製する工程と、
該皮膜を硫黄元素を含む第1雰囲気で加熱してI−III−VI族化合物を含む半導体層にす
る工程と
を具備する光電変換装置の製造方法。 - 前記セレン元素を、前記11族元素、前記インジウム元素および前記ガリウム元素の少なくとも1種に配位した有機セレン化合物として前記皮膜に含ませる、請求項1に記載の光電変換装置の製造方法。
- 前記皮膜にさらに硫黄元素を含ませる、請求項1または2に記載の光電変換装置の製造方法。
- 前記硫黄元素を、前記11族元素、前記インジウム元素および前記ガリウム元素の少なくとも1種に配位した有機硫黄化合物として前記皮膜に含ませる、請求項3に記載の光電変換装置。
- 前記第1雰囲気中の硫黄元素の濃度を加熱時間とともに増加させる、請求項1乃至4のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
- 前記皮膜を前記第1雰囲気で加熱する前に、前記皮膜に含まれる有機成分を熱分解により除去する、請求項1乃至5のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
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JP2013201169A JP2015070020A (ja) | 2013-09-27 | 2013-09-27 | 光電変換装置の製造方法 |
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