JP6160769B2 - トルクセンサ用軟磁性部品、それを用いたトルクセンサ - Google Patents
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Description
また、前記Mが、質量%で3.5%〜6.0%のCrであってよい。
また、前記Mが、質量%で、1.5%〜6.0%のMoと、0.5%〜3.0%のTiとの組合せであってよい。
また、前記Mが、質量%で、1.0%〜4.5%のMoと、2.5%〜5.0%のNbとの組合せであってよい。
また、前記Mが、質量%で、1.5%〜4.5%のMoと、1.0%〜3.0%のTiと、0.2%〜1.0%のWとの組合せであってよい。
また、前記軟磁性材料は、最大比透磁率が100000以上であることが好ましい。
また、トルクセンサ用ヨークに用いられることが好ましい。
また、前記トルクセンサは、電動パワーステアリング(EPS)に用いられることが好ましい。
トルクセンサ用としての軟磁性材料において、NiおよびFeは、本発明のトルクセンサ用軟磁性部品に適用可能な所定の磁気特性および機械的強度を得るために必要な元素であって、軟磁性材料の素地を生成する元素である。また、磁歪に加え、例えば、保磁力、最大比透磁率、初比透磁率、実効比透磁率、最大磁束密度などの軟磁性材料の基本的な磁気特性は、NiとFeの含有比率によって概ね決定される。本発明においては、Niに対し、Feを、質量比の百分率でFe/(Fe+Ni)が10.0%〜16.0%の範囲になるように制御することにより、軟磁性材料の各種の磁気特性(特に保磁力と最大比透磁率)を安定化させる。例えば、当該軟磁性材料の全質量に対してNiを質量%で75.0%〜85.0%の範囲とし、上式に従ってFe/(Fe+Ni)が10.0%〜16.0%の範囲となるように、Feを質量%で概ね8.3%〜16.2%の範囲から選択して含有させることにより、トルクセンサ用として所望される軟磁性材料の基本的な磁気特性を得ることができる。
本発明においては、上述した軟磁性材料の基本的な磁気特性が得られるNiおよびFeに対し、さらに質量%で3.5%〜7.5%のM(但し、前記Mは、Mo、Nb、Cr、Cu、Ti、Wから選択された1種以上の元素)を添加することが重要である。この前記Mの含有により、トルクセンサ用として所望される磁気特性や機械的特性を実用的な磁性焼鈍条件の範囲で調整できるようになる。つまり、前記Mで表す1種以上の元素が、軟磁性材料に必要な磁性焼鈍条件や磁気特性の安定化に影響を及ぼすのである。前記Mを含有して実用的な磁性焼鈍を経た軟磁性材料は、上述した基本的な磁気特性を有し、かつ、零よりも小さい「−4.0ppm以上0ppm未満」の飽和磁歪を有することができるため、トルクセンサ用軟磁性部品に好適な軟磁性材料となる。
例えば、前記MとしてMoのみ1種を選択する場合は、質量%で、3.5%〜6.5%であってよい。Moは、上述したNiとFeで得られる軟磁性材料の基本的な磁気特性をトルクセンサ用としてより好ましくする効果を有し、そのために必要な磁性焼鈍の所定の冷却速度の有効範囲を広げる効果を有する。Moが6.5%を超えると磁気特性への影響が大きくなるため、含有量のバラツキの管理をより厳しくするなど、取扱いに留意する必要がある。また、Moが3.5%未満では、飽和磁歪が正値になることがあったり、他の磁気特性の向上効果が低減したり、冷却速度に係る効果が不十分になる。
また、例えば、前記MとしてNbのみ1種を選択する場合は、質量%で、5.0%〜6.5%であってよい。Nbは、上述したNiとFeで得られる軟磁性材料の基本的な磁気特性をトルクセンサ用としてより好ましくする効果に加え、軟磁性材料の機械的強度を向上させる効果を有する。Nbが6.5%を超えると磁気特性への影響が大きくなるため、含有量のバラツキの管理をより厳しくするなど、取扱いに留意する必要がある。また、Nbが5.0%未満では磁気特性や機械的強度の向上効果が低減する傾向がある。
また、例えば、前記MとしてCrのみ1種を選択する場合は、質量%で、3.5%〜6.0%であってよい。Crは、軟磁性材料の耐食性を向上させることができるが、磁束密度の立ち上がりを遅くする傾向があるため透磁率などの磁気特性に悪影響を及ぼすことがある。Crが6.0%を超えると磁気特性への影響が大きくなるため、含有量のバラツキの管理をより厳しくするなど、取扱いに留意する必要がある。また、Crが3.5%未満になると、耐食性の向上効果が不十分になるばかりか、飽和磁歪が正値になることがある。
また、例えば、前記Mとして、MoとCuの2種を選択する場合は、質量%で、前記Mが3.5%〜7.5%の範囲において、3.5%〜5.0%のMoと、1.5%〜2.5%のCuとの組合せであってよい。Cuは、磁場の印加によって磁場の逆向きに磁化される反磁性の性質を有するため、3.5%〜5.0%のMoに対し、Cuを1.5%以上含有することにより、軟磁性材料の保磁力を小さくする効果が期待できる。しかし、(Mo+Cu)が7.5%を超えると、トルクセンサ用としての磁気特性が不十分になる。
また、例えば、前記Mとして、MoとTiの2種を選択する場合は、質量%で、前記Mが3.5%〜7.5%の範囲において、1.5%〜6.0%のMoと、0.5%〜3.0%のTiとの組合せであってよい。MoとTiの組合せは、上述したNiとFeで得られる軟磁性材料の基本的な磁気特性をトルクセンサ用としてより一層好ましくする効果を有する。Moは、上述したように磁性焼鈍の所定の冷却速度の有効範囲を広げる効果を有する。Tiは、軟磁性材料の機械的強度を向上させる効果などを有する。しかし、(Mo+Ti)が7.5%を超えると、もしくは3.5%未満であると、トルクセンサ用としての好適な磁気特性が得られないことがある。
また、例えば、前記Mとして、MoとNbの2種を選択する場合は、質量%で、前記Mが3.5%〜7.5%の範囲において、1.0%〜4.5%のMoと、2.5%〜5.0%のNbとの組合せであってよい。MoとNbの組合せは、上述したNiとFeで得られる軟磁性材料の基本的な磁気特性をトルクセンサ用としてより一層好ましくする効果を有する。Moは、上述したように磁性焼鈍の所定の冷却速度の有効範囲を広げる効果を有する。Nbは、上述したように軟磁性材料の機械的強度を向上させる効果を有する。しかし、(Mo+Nb)が7.5%を超えるとトルクセンサ用としての好適な磁気特性が得られないことがあり、(Mo+Nb)が3.5%未満であるとトルクセンサ用としての磁気特性および機械的強度の向上効果が得られないことがある。
また、例えば、前記Mとして、MoとTiとWの3種を選択する場合は、質量%で、前記Mが3.5%〜7.5%の範囲において、1.5%〜4.5%のMoと、1.0%〜3.0%のTiと、0.2%〜1.0%のWとの組合せであってよい。Mo、Ti、Wの組合せは、上述したNiとFeで得られる軟磁性材料の基本的な磁気特性をトルクセンサ用としてより一層好ましくする効果に加え、軟磁性材料の機械的強度を向上させる効果を有する。しかし、(Mo+Ti+W)が7.5%を超えるとトルクセンサ用としての好適な磁気特性が得られないことがあり、(Mo+Ti+W)が3.5%未満であるとトルクセンサ用として磁気特性および機械的強度の向上効果が得られないことがある。
また、例えば、前記Mとして、NbとWとTiの3種を選択する場合は、質量%で、前記Mが3.5%〜7.5%の範囲において、2.5%〜3.5%のNbと、1.5%〜2.5%のWと、0.5%〜1.5%のTiとの組合せであってよい。Nb、W、Tiの組合せは、上述したNiとFeで得られる軟磁性材料の基本的な磁気特性をトルクセンサ用としてより一層好ましくする効果に加え、軟磁性材料の機械的強度を向上させる効果を有する。しかし、(Nb+W+Ti)が7.5%を超えるとトルクセンサ用としての好適な磁気特性が得られないことがあり、(Nb+W+Ti)が3.5%未満であると飽和磁歪が正値になることがある。
保磁力は、トルクセンサの感度、応答性、ヒステリシスに影響を及ぼす。また、トルク検出に際しては、入力(トルク値)に対する出力(電圧値)すなわち感度(V/kgf・m)がより大きく、ヒステリシスがより小さい(ヒステリシス曲線内の面積がより小さい)ことが所望される。そのため、本発明における樹脂モールド前の軟磁性材料の保磁力は、好ましくは2.0(A/m)以下、より好ましくは1.6(A/m)以下、さらに好ましくは1.3(A/m)以下であり、理想的には零である。この順に、ヒステリシスを小さく抑制することができる。
最大比透磁率は、トルクセンサの応答性、分解能に影響を及ぼす。トルク検出に際しては、目的とする制御量(トルク値)を小さくするために高い分解能が所望される。一般に最大比透磁率が大きいと分解能を高めやすいため、本発明においては樹脂モールド前の軟磁性材料の最大比透磁率が100000以上であることが好ましい。
(初比透磁率)
初比透磁率は、最大比透磁率と同様に、トルクセンサの応答性、分解能に影響を及ぼす。そのため、初比透磁率の値はできるだけ高いことが好ましい。特に、樹脂モールド前の軟磁性材料の初比透磁率(μ0.4)が30000以上であることが好ましく、トルクセンサの応答性や分解能の向上に有効である。ここで、初比透磁率(μ0.4)とは、JIS規格(JIS−C2531)に基づいた磁場0.4(A/m)における比透磁率をいう。
実効比透磁率は、保磁力と同様に、トルクセンサの感度、応答性、ヒステリシスに影響を及ぼす。そのため、実効比透磁率の値はできるだけ高いことが好ましい。なお、実効比透磁率は磁気特性の他に、印加される周波数と、軟磁性材料を軟磁性部品に形成したときの板厚の影響を受ける。つまり、実効比透磁率の好ましい値は、トルクセンサとして使用される際の諸条件に対応して変化することになるため、一義に規定することは困難である。一般に、保磁力が低くなる程、透磁率が高くなる程、実効比透磁率は高くなる傾向がある。また、印加される周波数が高いほど軟磁性部品の厚さの影響が大きくなるため、高い周波数を印加する場合は軟磁性部品の厚さを薄肉化しておく方が有利である。
最大磁束密度は、トルクセンサ用軟磁性部品の小型化や軽量化に関係し、例えばリングコアやヨークの形状サイズ(特に体積)に影響を及ぼす。最大磁束密度が高い軟磁性材料を用いたトルクセンサ用軟磁性部品は体積当たりに通過可能な磁束の量が大きいため、トルクセンサの磁気回路で発生する磁束を少ない体積で通すことが可能となり、トルクセンサ用軟磁性部品の体積を低減することができる。本発明においては樹脂モールド前の軟磁性材料の最大磁束密度が0.6(T)以上であることが好ましく、トルクセンサ用軟磁性部品の小型化や軽量化に寄与でき、それを用いたトルクセンサの小型化や軽量化にも寄与できる。
[実施例]
まず、表1に示す化学成分を有する実施例1〜19並びに比較例1〜4の軟磁性材料について、適切な原料を溶解して鋳造することによって得られたそれぞれのインゴットを用いて、熱間鍛造および熱間加工、さらには冷間圧延などの冷間加工を実施することにより、それぞれについて複数個の表2中に示す厚さの平板を作製した。そして、作製した平板をプレス打抜きによって穴あき平板(外径10mm、内径6mm)に形成し、それぞれの穴あき平板に対して磁性焼鈍を表2に示す熱処理条件で実施した。
Claims (12)
- Niと、質量比の百分率でFe/(Fe+Ni)が10.0%〜14.8%の範囲となるFeと、質量%で3.5%〜7.5%のM(但し、前記Mは、Moと、Nb、TiおよびWから選択された1種以上の元素、Mo単体、または、Cr単体)と、を含み、飽和磁歪が−4.0ppm以上0ppm未満である軟磁性材料が樹脂モールドされて形成されている、トルクセンサ用軟磁性部品。
- 前記Mが、質量%で3.5%〜6.5%のMoである、請求項1に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- 前記Mが、質量%で3.5%〜6.0%のCrである、請求項1に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- 前記Mが、質量%で、1.5%〜6.0%のMoと、0.5%〜3.0%のTiとの組合せである、請求項1に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- 前記Mが、質量%で、1.0%〜4.5%のMoと、2.5%〜5.0%のNbとの組合せである、請求項1に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- 前記Mが、質量%で、1.5%〜4.5%のMoと、1.0%〜3.0%のTiと、0.2%〜1.0%のWとの組合せである、請求項1に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- 前記軟磁性材料は、保磁力が2.0(A/m)以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- 前記軟磁性材料は、最大比透磁率が100000以上である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- トルクセンサ用リングコアに用いられる、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- トルクセンサ用ヨークに用いられる、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のトルクセンサ用軟磁性部品。
- 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のトルクセンサ用軟磁性部品を用いて構成されている、トルクセンサ。
- 電動パワーステアリングに用いられる、請求項11に記載のトルクセンサ。
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