JP6156865B2 - 超弾性合金 - Google Patents
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Description
これまで、TiNiにZr、HfやPd等を添加することにより、形状記憶効果に関連するマルテンサイト変態温度を上昇させる試みが行われてきた。
特許文献2には、Zr含有量が6.5〜30原子%、Ni含有量が40〜50%、残部がTiからなる組成を有するTi-Zr-Ni系形状記憶合金薄膜が開示されている。
特許文献3には、MATi(100−A−B)XBの組成を有し、XはHf又はHfとZrであり、Mは本質的にNi並びにCu、Au、Pt、Fe、Mn、V、Al、Pd、Sn及びCoからなる群から選択される1種以上の元素であり、Aは50原子%より大きく51原子%までであり、Bは4から49原子%である高変態温度形状記憶合金が開示されている。
特許文献5には、Tiが50〜52原子%であり、Ptが10〜25原子%であり、5原子%以下のAu、Pd、Cuを1種以上含み、2原子%以下のCを含み、残部がNiであり、Ti4(Ni、Pt)3型の析出物が生成する高温形状記憶合金が開示されている。
特許文献6には、Au濃度が44から48mol%。Zr濃度が2から10mol%、残りTiである(Ti、Zr)Au金属間化合物にされていることを特徴とするTi-Au径形状記憶合金が開示されている。
非特許文献1には、Au50Ti50の形状記憶効果について述べられている。
非特許文献2には、Au50Ti50に第三元素Fe、Co、 Ni、 Cu、Ru、Rh、 Pd、Ag、Ir、Pt を添加した場合のマルテンサイト変態挙動について述べている。
また、マルテンサイト変態温度が300℃以上を示す合金もNi−(21〜31)Ti-(20〜30)Hf合金等5種類ほど示されているが、これらも含めて示されている合金が、実際に形状回復を起こすかどうかの記述は一切なく、これらの合金が高温形状記憶合金として機能するかどうかについての開示もない。
後述するように、高温で変形すると、永久歪みが残り形状回復が難しくなることから、高温形状記憶合金として機能するかどうかについては、回復率を見るまでわからず、マルテンサイト変態温度だけでは判断できない。
特許文献5では、マルテンサイト変態温度が100〜400℃の間であるとあるが、マルテンサイト変態温度が400℃以上を超えると永久歪みが残る塑性変形のため、形状回復率が小さくなり、ほとんど回復を示さなくなった。また、実施例としてあげられている100%の回復率を示す合金のマルテンサイト変態温度は300℃以下であった。
特許文献6では、室温で変形後、変態温度以上に加熱することにより100%の回復を示すことが示され、300から600℃に亘る高温領域での形状記憶機能が発揮される、と示されているが、高温で変形した後の形状回復については何も示されていない。そこで、高温で変形すると永久歪みが残り、形状回復が難しくなることから、高温形状記憶合金として機能するかどうかは、回復率をみるまではわからない。
非特許文献2には、Au50Ti50に第三元素Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt を添加した場合のマルテンサイト変態挙動について述べており、すべての添加元素において変態温度が下がることが明らかにされているが、添加による形状記憶効果については何も述べられておらず、これらの合金が形状記憶合金、又は超弾性合金として可能性があるかどうかについては不明である。
超弾性は、オーステナイト相が安定な温度域で応力を負荷、除荷することにより、応力によって誘起されるマルテンサイト相が生成することによって起こる。このため、通常の金属材料が塑性変形するような大きな歪みをかけても、弾性的に歪みが回復する。また、応力誘起マルテンサイト相が生成している間、同じ応力で大きな歪みを得ることができる。
しかし、高いマルテンサイト変態温度近傍で変形、形状回復を繰り返すと、高温でマルテンサイト相が変形されるため、しばしば永久に歪みが入る塑性変形を起こす。塑性変形を起こすと、永久歪みの分、形状が回復しないため回復率や超弾性が減少する。
以上のことから、高温形状記憶合金を開発するためには、マルテンサイト変態温度を上昇させ、変態温度近傍での材料の強度を向上させる必要がある。
第1に、Ti−50Au−10Zr(原子%)からなり、400℃以上で超弾性を示すことを特徴とする。
第2に、上記の超弾性合金において、変態温度以上で変形することにより2%以上の超弾性を示すことを特徴とする。
第3に、上記の高温形状記憶合金又は超弾性合金において、合金の結晶構造が、マルテンサイト変態温度以下ではB19型斜方晶であることを特徴とする。
第4に、上記の高温形状記憶合金又は超弾性合金において、高温形状記憶合金の結晶構造がマルテンサイト変態温度以上ではB2型立方晶であって、冷却によりマルテンサイト変態によりB19型斜方晶に変化することにより、ミクロ組織がマルテンサイト双晶組織となり、該マルテンサイト双晶組織が体積率で90%以上存在することを特徴とする。
また、Zrを10原子%添加することにより、TiAu化合物のマルテンサイト変態温度を大きく下げることなく、高温度強度上昇の効果をさらに改善することができ、300〜600℃の温度範囲での安定した形状記憶効果を発現することが可能となる。また、400℃以上の変態温度以上で変形中に、2%以上の超弾性を発現することが可能となる。
本発明の高温形状記憶合金の代表的な製造工程は次のとおりである。まず、本願発明の高温形状記憶合金の原料を溶解して溶製する。溶解には、一般的なTi材料溶解に用いられる各種溶解法を採用することができ、特に制限されるものではなく、これらの方法としては、例えば、アーク溶解法、電子ビーム溶解法、高周波溶解法等の溶解法を挙げることができる。
溶体化処理は、溶解中に生成した不均一な組織を均質にするために、マルテンサイト変態温度以上であるB2型立方晶領域で一定時間以上行う必要がある。
溶体化処理時間は0.5時間以上、好ましくは0.5〜500時間の範囲である。溶体化時間が0.5時間以上であれば、均質化が十分に行われ、組織が均一状態となるため望ましい。一方、溶体化処理時間は構成元素が十分に拡散した後は、組織に変化が起こらないため、長すぎると不経済であるため上限を500時間とする。
0℃以下条件で焼き入れを行うことにより、マルテンサイト変態が起こり、B19型斜方晶の相が生成することにより、ミクロ組織がマルテンサイト双晶組織となる。冷却速度が遅い場合、B2型立方晶の相が完全に変態せず残留することがあるため、できるだけ瞬時に0℃以下の冷媒中への焼き入れが必要となる。
上記製造方法により、B19型斜方晶相が体積率で90%以上を占める、本発明の高温形状記憶合金を製造することができる。なお、残部の相はTiAu系金属間化合物相領域から外れた際に生成する第二相で構成される。
表1に示すTi−Au−Zr(原子%)についての各合金組成の高純度元素を真空状態でアーク溶解法により溶解し、ボタン状の合金20gを溶製した。
次に、この溶製した合金をTi箔で包み、真空にした石英管中にアルゴンガス雰囲気で封じ込めた。石英管中に封じ込めた合金を1000℃で168時間溶体化処理後、氷水中で急冷して合金試料を作成した。
図2の組織写真では、合金全体に微細な双晶組織が形成され、典型的なマルテンサイト組織を確認することができる。
図3に、Ti-50Au-10Zrを1000℃で168時間熱処理後、氷水で焼き入れした後のX線回折図形を示す。X線回折によりB19型斜方晶で構成されていることが確認された。
マルテンサイト変態温度の測定用に、各合金試料について3×3×1mmの試験片を作製した。この試験片を大気中で、1分間に10℃の昇温降温速度の条件で示差熱分析を行い、マルテンサイト変態温度を測定した。その結果を表1に示す。
形状記憶回復率を求めるため、Ti−50Au−10Zrについて高温圧縮試験用試料として、直径3mm、長さ6mmの円柱の試験片を切り出した。
この試験片に対し、393℃で1.2×10−4m/sの歪み速度の条件で圧縮試験を行い、変形後の試験片長さを測定後、試験片をマルテンサイト変態温度以上である700℃で1時間加熱処理し、室温まで炉冷し、再び試験片長さを測定して形状記憶回復率を求めた。形状記憶回復率は、圧縮試験後に得られた試験片の歪みと加熱処理後に回復した試験片の歪みの割合である。
Claims (4)
- Ti−50Au−10Zr(原子%)からなり、400℃以上で超弾性を示すことを特徴とする超弾性合金。
- 変態温度以上で変形することにより2%以上の超弾性を示すことを特徴とする請求項1に記載の超弾性合金。
- 合金の結晶構造が、マルテンサイト変態温度以下ではB19型斜方晶であることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の超弾性合金。
- 合金の結晶構造がマルテンサイト変態温度以上ではB2型立方晶であって、冷却によりマルテンサイト変態によりB19型斜方晶に変化することにより、ミクロ組織がマルテンサイト双晶組織となり、該マルテンサイト双晶組織が体積率で90%以上存在することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の超弾性合金。
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