JP5605316B2 - 二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、航空機や二輪および四輪の自動車のファスナーとして適した、温度によって、変形方向が逆の、二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材及びその製造方法に関する。
形状記憶合金は、加工後に熱を加えることにより、加工前の形状に戻る特殊な合金であり、航空宇宙分野のほか、自動車や家電のアクチュエータ、歯列矯正ワイヤ、医療用具、携帯電話のアンテナ、めがねフレームなどに広く使用されている。
機能材料として現実、実用化されている形状記憶合金の1つに、チタンとニッケルの原子比が1:1である合金(ニチノール)があり、高強度、耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れている。このニチノールは、強加工、拘束加熱、トレーニング、拘束時効などの特別な処理を施すことにより、温度の変化だけで、高温、低温の形状が繰り返し可逆変化を有する、変形方向が逆の二方向形状記憶特性を発現することができる。
それに対し、チタン合金においても、形状記憶特性を有する合金が知られている。代表的な形状記憶特性を有する合金としては、Ti−10V−2Fe−3Al、Ti−15.4V−4Al、チタンとジルコニウムの両方または少なくとも1つの元素にニオブとタンタルを合計で10〜20元素%、かつ錫を3〜6元素%含有した合金(特許文献1)、チタンに10〜15質量%のモリブデンおよび5%以下のアルミニウムを含有させた合金(特許文献2)、Ti−Sc−X合金であって、1at%≦Sc≦30at%、1at%≦X≦15at%(但し、X=V,Nb,Mo,Taの内の一種若しくは数種の組み合わせ)からなる合金(特許文献3)、チタンに8重量%モリブデン及び5重量%錫にアルミニウムとジルコニウムと錫が合計で10質量%含有させた合金(非特許文献1)が知られている。
特許第3521253号公報 特許第1258024号公報 特許第4220772号公報
SIXTH WORLD CONFERENCE ON TITANIUM 1988 P.1069
形状記憶特性を有するチタン合金は、形状記憶特性を発現させるためβ相を安定化させる必要があり、Nb、V、Moといった比較的高価なβ安定化元素を多量に添加している。また、その形状記憶特性はほとんどの場合、一方向のみであり、二方向の形状記憶特性を有していない。
チタンとジルコニウムの両方または少なくとも1つの元素にニオブとタンタルを合計で10〜20元素%、かつ錫を3〜6元素%含有した合金では(特許文献1参照)、ニオブやタンタルを多量に含んでおり、コストが非常に高くなる。
また、チタンに10〜15質量%のモリブデンおよび5%以下のアルミニウムを添加した合金でも(特許文献2参照)、モリブデンを10%以上含んでおり、コストが非常に高い。また、モリブデンは多量に添加すると偏析しやすいため、溶解が非常に難しい。
また、Ti−Sc−X合金であって、1at%≦Sc≦30at%、1at%≦X≦15at%(但し、X=V,Nb,Mo,Taの内の一種若しくは数種の組み合わせ)からなる合金では(特許文献3参照)、Scは非常に高価で希少な金属であることから、%単位の合金元素として添加することは工業的に難しいと考えられる。
また、チタンに8重量%モリブデン及び5重量%錫にアルミニウムとジルコニウムと錫が合計で10質量%含有させた合金は(非特許文献1参照)、温度によって変形方向が逆の二方向性の形状記憶特性を有しているが、アルミニウムとジルコニウムと錫を合計で10質量%も含んでいるため、加工性が非常に悪い。
本発明は、二方向の形状記憶特性を有し、コストが安く、加工性などの点で製造が容易なチタン合金部材を提供することを目的とする。
本発明者は、比較的安価な元素であるFeを活用し、合金組成をMo当量からなる式にて調整することにより、温度によって変形方向が逆の二方向の形状記憶特性を有するチタン合金について、鋭意研究を重ねた。その結果、各元素の含有量をある所定内とすることで、二方向の形状記憶特性を発現することを見出した。
上記課題を解決するために本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)質量%で4.0%以上5.5%未満のAl、1.1%以上3.1%未満のFe、1.0%以上4.0%未満のCr、0.5%以上5.5%未満のMoを含有し、下記式で表されるMo当量が4.5以上9.4%未満であり、且つ、Si:0.1%未満、C :0.01%未満に抑制し、残部Ti及び不可避的不純物からなることを特徴とする、二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材。
Mo当量=2.9×[%Fe]+1.6×[%Cr]+[%Mo]−[%Al]
(2)光学顕微鏡組織で、α相が45面積%以下であり、残部がβ相またはβ相とマルテンサイト相、及び不可避的な相であることを特徴とする、前記(1)に記載の二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材。
(3)最終焼鈍工程において、β変態点−100℃からβ単相域上限までの温度範囲内から水冷以上の冷却速度で冷却することを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材の製造方法。
本発明によって、一般的な形状記憶チタン合金よりも安価であり、かつ、二方向の形状記憶特性を有するチタン合金を提供できるため、産業上の効果は計り知れない。
本発明材であって、水冷した試料の光学顕微鏡組織写真である。 化学成分は本発明に含まれるが、二方向の形状記憶特性が本発明に含まれない、空冷した試料の光学顕微鏡組織写真である。 曲げ試験による形状記憶特性結果の一例を示す図である。
以下に、本発明について詳しく説明する。以降、添加元素の含有量は「質量%」で示す。
本発明の材料指標について説明する。チタン合金において、β相を主とするβ型チタン合金において形状記憶特性を発現する。β相を確保する方法として従来は、共析型β安定化元素であるFe、Ni、Cr、Mn、全率固溶型β安定化元素であるV、Mo等の置換型固溶元素を多量に添加している。しかし、Ti材料においてβ相を室温で確保するためには、Mo当量において8%近く添加する必要がある。Moは比較的高価な元素であるため、Moのみでβ相を確保しようとすると合金コストが非常に高くなってしまう。そこで、本発明者はβ相安定化元素の添加量指針であるMo当量を維持できる上、比較的安価な元素であるFeを添加することを指針とした。且つ、形状記憶特性はβ相の加工誘起マルテンサイト変態により生じることから、β相量を確保する一方で、β相そのものの安定度をある程度低下させ、マルテンサイト変態させ易くする必要がある。
後述するように、本発明において、鋭意検討を進めた結果、二方向の形状記憶特性を得るに必要なβ相量を確保するために、Mo当量において4.5%以上必要であり、かつ、マルテンサイト変態させるβ相自体の安定度を適度にするためにMo当量を9.4%未満にする必要があることを見出した。また、形状記憶特性は上述したように、一般的にβ相により発現する一方で、α相は寄与せず、逆に塑性変形して、形状記憶特性の発現にとって支障となることから、α相の光学顕微鏡組織における面積率を45%以下にすることが必要であることを見出した。
[添加元素量の指標]
形状記憶特性を発現させるためには、多量のβ相を室温で安定にさせる必要がある。それに対して、β安定化元素の添加量を多くしすぎると、合金コストの上昇や、添加元素の凝固時の偏析、さらにはβ相が安定化になりすぎ形状記憶特性を発現しなくなるため、添加元素を適量添加する必要がある。本発明では添加元素の添加量を、β相安定度の指標として一般に用いられる、下記に示すMo当量により調整することとした。
Mo当量=2.9×[%Fe]+1.6×[%Cr]+[%Mo]−[%Al]
[Mo当量の指標]
チタン合金では、α+β高温領域またはβ単相領域での加熱後、冷却することによりβ相を多量に残留させることができる。一般的にチタン合金において形状記憶特性はβ相が加工時に加工誘起マルテンサイト変態により変形したものが、熱処理により逆変態しβ相に戻ることにより生じる。したがって、β相量を一定量以上確保する一方で、加工誘起マルテンサイト変態を生じさせ易くするために、β相自体の安定度をある程度低下させる必要がある。しかしながら、上述のMo当量が低過ぎると、必要なβ相量を確保できないばかりか、冷却時にβ相の大部分がマルテンサイト相を生成してしまうため、好ましくない。冷却時にβ相を残留させるために熱処理温度を下げすぎると、α相の面積率が上昇する。後述するように、二方向の形状記憶特性を発現させるためにはα相の面積率を45%以下にする必要がある。このため、本発明の成分系の近傍およびその範囲内における実験室レベルの100g真空アーク溶解試料20チャージを用いた検討試験において、β相安定化の指標であるMo当量の下限を4.5%以上とする必要があることが判明した。しかし、逆にMo当量が高くなりすぎると、β相が安定になりすぎ、変形時に加工誘起マルテンサイト変態が生じなくなり、二方向の形状記憶特性を発現しない。前記検討試験では、Mo当量の上限を9.4%とする必要のあることが判明した。
[Alの添加量]
Alはα安定化元素であり、β相を安定にするためには極力添加量を少なくする必要がある。しかしながら、Alはβ相内のω相の生成を抑制することから4.0%以上とした。しかしながら、添加量を多くすると、β安定化元素の添加量も多くなること、また、冷間加工性が劣化することから、上限を5.5%とした。
[Fe、Cr、Moの添加量]
β相を室温で安定化させ、且つ、二方向の形状記憶特性を発現させるためには、β安定化元素の添加量を適切な範囲に制限する必要がある。β安定化元素としては、汎用合金のTi−6Al−4Vに代表されるようにVが有名であるが、Vは人体に毒性を示す元素であり、特に医療用に用いるのに適さない。そこで、本発明ではβ安定化元素として、Vを用いず、Fe、Cr、Moを用いることとした。Feは、β安定化置換型固溶元素であり、添加量にしたがって室温でのβ相の安定化度が増していく。比較的高価な添加元素を極力低減するためには1.1%以上の添加が必要である。しかしながら、凝固時に偏析しやすいため、添加量を多くするとその影響が顕著にあらわれる。そのため、添加量の上限を3.1%とした。CrはMoに比べ、β安定化能が高い元素であり、添加量をより少なくすることができる。そのため、0.5%以上のCrを含有させる。しかしながら、Crは凝固時に偏析しやすいため、添加の上限を4.0%とした。Moは0.5%以上添加することで、本発明の低度なβ安定化能を確保することができる。一方、Moは凝固時に偏析しやすく部位による特性のばらつきを招くとともに、比較的高価な元素であることから、上限を5.5%とした。
[SiとCの含有量]
不純物元素として、SiとCは多量に含有すると室温延性、冷間加工性、熱間加工性を低下させてしまう場合があり、Siは0.1%未満、Cは0.01%未満であれば、問題ないレベルであることを見出し、各々の上限とした。なお、Si、Cは不可避的不純物であとして含有が避けられないことから、実質的な含有量の下限値は、通常、Siで0.005%以上、Cで0.0005%以上である。
[α相粒の面積率]
二方向の形状記憶特性は、β相の残留量によって変化する。たとえば、工業生産条件から外れるような、α単相域の比較的低温で長時間焼鈍した場合は、β相が50%を大きく下回ることがあり、その状態で部材を変形させると、α相が塑性変形(不可逆変形)してしまい、これに力学的に拘束され、部材全体として二方向の形状記憶特性は発現しない。
まず、β相の残留量の指標を検討した。その結果、初析α相粒の面積率を用いることが適切であることを見出した。但し、この初析α相とは高温熱処理時に生成しているα相であり、二方向の形状記憶特性を得るためにはβ相粒内にα相が析出していない、或いは、その析出量が面積率で非常に少ないことが前提である。これに対して、冷却中にβ相粒内に微細なα相が多く析出した場合、硝フッ酸水溶液(硝酸濃度が約12%、フッ酸濃度が約1.5%)で室温にてエッチングした光学顕微鏡試料を100〜1000倍で光学顕微鏡観察するとβ相粒内が黒色を呈しており、さらに、針状のα相が観察される。このような針状のα相が観察されると、初析α相の面積率が小さくても、初析α相の面積率にこの針状のα相の面積率も加えてα相の面積率としたとき、α相の面積率が45%を明瞭に超えると、二方向の形状記憶特性は発現しなくなってしまう。
前記の実験室レベルの100g真空アーク溶解試料20チャージを用いた検討試験において、α相の面積率が45%を超えると、部材に与えられた変形によって、金属組織内のα相が塑性変形を生じて、部材を力学的に拘束し、二方向性形状記憶特性は発現しなくなる。したがって、本発明の目的を達成するために、α相の面積率は45%以下であることが必要である。
二方向性形状記憶が実用的に意味のある、両方向に5%以上の二方向性形状記憶変形能を示すためには、α相の面積率は35%以下であることが望ましい。
図1のように、β相粒内に微細なα相がほとんど析出していない場合には、初析α相面積率がα相面積率と等しくなる。そこで、初析α相粒の面積率の測定方法について説明する。この初析α相は、板厚断面の全厚埋め込み研磨試料を前記硝フッ酸水溶液でエッチングした光学顕微鏡写真で容易に判別できる。図1に光学顕微鏡写真の例を示す。図1は、本発明の請求項1の例として900℃から水冷した試料である。なお、図1ではエッチングに硝酸濃度が約12%、フッ酸濃度が約1.5%の硝フッ酸水溶液を用いた。図1にて実線矢印で示した粒径約5μmの白抜けしている(母相のβ相よりもコントラストの薄い)部分が、結晶粒がα相である。一般的な画像解析装置を用いて、1000倍の観察測定視野(板面方向88μm×板厚方向71μm)を全厚埋め込み研磨試料の各部位からランダムに合計25視野観察し、それぞれの視野における初析α相粒が占有する総面積率を計測し、その値の平均値をα相粒の面積率とした。
なお、本発明では図1のように、β相粒内に微細なα相がほとんど析出していないため、硝フッ酸水溶液でエッチングした断面組織にてβ相粒が黒く見えないそのため、初析α相面積率がα相面積率と等しくなる。一方、本発明に該当しない、図2に示す900℃から空冷した断面組織では、β相粒内に微細なα相が析出しているため、硝フッ酸水溶液でエッチングするとβ相粒が光学顕微鏡で黒く見え、さらに、針状のα相の析出がみえる。α相面積率は、初析α相面積率にこの針状のα相の面積率も加えた値となるので、初析α相の面積率と合わせて、α相の面積率は45%を明瞭に超える。
[β相とマルテンサイト組織]
上述したように、形状記憶特性を発現させるためにはβ相をある程度不安定にする必要がある。そのため、合金組成ないし熱処理温度によりβ相のマルテンサイト変態温度(Ms温度)が室温付近になるようにする必要がある。但し、マルテンサイト単相となると形状記憶特性は発現しなくなる。そのため、合金成分系ないし熱処理条件により、初析α相以外の相は、β相単相ないしβ相とマルテンサイト相の2相とする必要がある。なお、β相もしくはマルテンサイト相の有無は光学顕微鏡ないしX線回折により容易に判別することができる。
[チタン合金の製造方法]
本発明のチタン合金は、上記チタン合金の組成を含有した上で、最終焼鈍工程において、β変態点−100℃よりも高温から水冷以上の冷却速度で冷却することにより、45%未満の初析α相と残部がβ相単相もしくβ相とマルテンサイト相及び不可避的な相とすることができる。β変態点温度については、示差熱分析計を用いて求めることができる。
表1に示す成分のチタン合金をアーク溶解し約100gインゴットを作成し、これらを900〜930℃に加熱し、厚み約3mmの板材に熱間鍛造した。さらにこの材料をβ変態点−100℃より高温で30分の大気焼鈍した後、水冷した場合の、構成組織および初析α相の面積率を表2に示す。この熱処理条件では、表2のNo.1〜6およびNo.8〜10のいずれのチタン合金においても、β変態点−100℃より高温から水冷している。一方、表2のNo.7はβ変態点−100℃より低温から水冷している。表1および表2において、本発明範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。
以下に各々の測定条件と試験条件を説明する。全厚断面の光学顕微鏡観察用の樹脂埋め込み研磨材料を硝フッ酸水溶液(硝酸濃度が約12%、フッ酸濃度が約1.5%)を用いて室温でエッチングした後に観察した。構成相の同定はX線回折より行った。β変態温度は、示差熱分析計を用い、各試料を徐々に昇温する試験で測定した。なお、β変態温度以上で実際に析出する相がβ相であることは、別途粉末にした試料をβ変態温度+30〜100℃の温度に保持し、X線回折装置を用いて確認した。
表1の熱間鍛造した材料を表2に示す各々の温度にて大気焼鈍した後、水冷した場合の、β相の面積率を示す。以下に各々の測定条件と試験条件を説明する。β相の面積率は前記のエッチングした埋め込み試料を用いて、一般的な画像解析装置にて測定した。
二方向の形状記憶特性の測定方法について説明する。本発明では二方向の形状記憶特性を有するかどうかを調べるために曲げ試験を行った。板状の試験片を切出した後、直径が5mmとなるように室温でU字型に曲げ加工を行った。その後、100〜500℃まで、50℃ごとに5分間加熱炉に保持した後、曲げ試験片の曲げ角を測定することにより、二方向の形状記憶特性を評価した。
表2より、請求項1に記載の本発明の合金成分である実施例のNo.1〜5において、β変態点−100℃より高温で熱処理したものは、初析α相の面積率がいずれも45%未満となっている。また、表2に示すように、いずれも100−250℃の間で熱処理を施すことにより、形状記憶特性を示している。また、さらに高温の300−500℃で熱処理を施すことにより、曲げ方向と同一方向への形状記憶特性示しており、二方向の形状記憶特性を示している。
一方で、表2の比較例のNo.6は、Mo当量が低いため、光学顕微鏡組織がマルテンサイト単相となっており、表2で示すように二方向の形状記憶特性を有していない。
また、表2の比較例のNo.7は、Mo当量は所定値内であるが、熱処理温度がβ変態点−100℃より低温となっており、初析α相の面積率が55%と高くなり、表2に示すように二方向の形状記憶特性を示さない。
また、表2の比較例No.8はMo当量が2.9と非常に低くなっており、β相が冷却中にすべてマルテンサイト相に変態しており、表2に示すように二方向の形状記憶特性を示さない。
また、表2の比較例No.9は、Mo当量が12.9と高くβ相が安定となりすぎており、表2に示すように二方向の形状記憶特性を有していない。
また、表2の比較例No.10は、Feの含有量が少なく、それに伴いMo当量もー2.2と非常に小さくなっている。そのため、表2に示すように二方向の形状記憶特性を示さない。
本発明の形状記憶特性を有するチタン合金は、その加熱条件を変えてやることにより、二方向の形状記憶特性を発現する。また、従来の形状記憶チタン合金よりも高価な添加元素であるNb、V、Mo等の添加元素量が少なく、コスト面でも非常に有利である。そのため、自動車または二輪車、更には構造用材料のファスナーとして利用することに適しており、これら部品材の軽量化に寄与する。

Claims (3)

  1. 質量%で4.0%以上5.5%未満のAl、1.1%以上3.1%未満のFe、1.0%以上4.0%未満のCr、0.5%以上5.5%未満のMoを含有し、下記式で表されるMo当量が4.5以上9.4%未満であり、且つ、Siを0.1%未満、Cを0.01%未満に抑制し、残部Ti及び不可避的不純物からなることを特徴とする、二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材。
    Mo当量=2.9×[%Fe]+1.6×[%Cr]+[%Mo]−[%Al]
  2. 光学顕微鏡組織で、α相が45面積%以下であり、残部がβ相またはβ相とマルテンサイト相、及び不可避的な相であることを特徴とする、請求項1に記載の二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材。
  3. 最終焼鈍工程において、β変態点−100℃からβ単相域上限までの温度範囲内から水冷以上の冷却速度で冷却することを特徴とする、請求項1又は2に記載の二方向の形状記憶特性を有するチタン合金部材の製造方法。
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