JP2014058711A - TiPt系高温形状記憶合金及びその製造方法 - Google Patents

TiPt系高温形状記憶合金及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 TiPtにNi、Ir以外の第三元素を添加することにより高温強度を向上させ、高温で大きな形状回復を示す高温形状記憶合金及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 42〜63原子%のPt、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPt系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がHf、Zr、V、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換されている、前記Ptの一部がRu、Coのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜10原子%の範囲で置換されている、又は、前記Ptの一部がPd、Auのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜49.9原子%の範囲で置換されており、1000℃以下で変形後形状回復を示すことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、1000℃以下の温度で変形後形状回復を示すTiPt系高温形状記憶合金及びその製造方法に関するものである。
TiNiに代表される形状記憶合金は、動力を必要とせず温度変化を感知して動作するアクチュエイター等として利用されている。この形状記憶効果は、形状記憶合金のマルテンサイト変態温度に関連して発現するものであるが、従来材のTiNi系形状記憶合金のマルテンサイト変態温度が低いため、室温近傍から100℃程度の温度範囲でしか使用できないのが現状である。
一方、自動車エンジンやジェットエンジン等、高温部で使用するアクチュエイター等の部品には、高温で動作する形状記憶合金が必要である。
これまで、TiNiにZr、HfやPd、Pt等を添加することにより、またTiPtを用いた形状記憶効果に関連するマルテンサイト変態温度を上昇させる試みが行われてきた。
特許文献1には、MTi(100−A−B)の組成を有し、XはHf又はHfとZrであり、Mは本質的にNi並びにCu、Au、Pt、Fe、Mn、V、Al、Pd、Sn及びCoからなる群から選択される1種以上の元素であり、Aは50原子%より大きく51原子%までであり、Bは4から49原子%である高変態温度形状記憶合金が開示されている。
特許文献2には、(Ni+Pt+Y)Ti(100−y)の組成を有し、xが49〜55原子%の範囲であり、その中でPtが10〜30原子%の範囲であり、YはAu、Pd、Cuの1種以上の元素であって、0〜10原子%の範囲であり、さらに(Ni、Pt)Ti型の微細な析出物が生成する高温形状記憶合金が開示されている。
特許文献3には、Tiが50〜52原子%であり、Ptが10〜25原子%であり、5原子%以下のAu、Pd、Cuを1種以上含み、2原子%以下のCを含み、残部がNiであり、Ti(Ni、Pt)型の析出物が生成する高温形状記憶合金が開示されている。
特許文献4には、Pt-42〜63原子%Ti合金にIrが添加され、Ptの一部がIrで置換される高温形状記憶合金が開示されている。
特許文献5には、Pt-42〜63原子%Ti合金にIrが添加され、Ptの一部が50原子%未満のIrで置換される形状記憶特性と擬弾性を持ち合わせる合金が開示されている。
非特許文献1には、Ti50Ni30Pt20の熱サイクル試験の結果から336MPaの応力下までは完全な回復を示すことが示されている。
非特許文献2には、TiNiPtの高温形状回復について述べている。
非特許文献3には、TiPtIrの高温形状回復について述べている。
これらのこれまで開発されてきた高温形状記憶合金は、マルテンサイト変態温度が300℃以下のものが多く、なかにはそれ以上のマルテンサイト変態温度を示す合金も示されているが、これらについては回復率が明確に示されておらず、実際に回復を起こすかどうかは明らかではなかった。
特許文献1に記載の提案は、MTi(100−A−B)の組成を有し、XはHf又はHfとZrであり、Mは本質的にNi並びにCu、Au、Pt、Fe、Mn、V、Al、Pd、Sn及びCoからなる群から選択される1種以上の元素であると記載されているが、Mは本質的にNiであり、実施例もNi-Ti-Hfについてしか記述されておらず、実際にCu、Au、Pt、Fe、Mn、V、Al、Pd、Sn及びCoをNiのかわりに使用して、同様の形状記憶効果が得られるのかは明らかではない。また、Niは単独でも1種以上の前記他の金属とあわせても、42〜50原子%であるのが好ましいとの記載しかない。
また、マルテンサイト変態温度が300℃以上を示す合金もNi−(21〜31)Ti-(20〜30)Hf合金等5種類ほど示されているが、これらも含めて示されている合金が、実際に形状回復を起こすかどうかの記述は一切なく、これらの合金が高温形状記憶合金として機能するかどうかについての開示もない。
後述するように、高温で変形すると、永久歪みが残り形状回復が難しくなることから、高温形状記憶合金として機能するかどうかについては、回復率を見るまでわからず、マルテンサイト変態温度だけでは判断できない。
特許文献2に記載の提案は、100%の回復率を示すが、マルテンサイト変態温度が300℃以下であった。
特許文献3に記載の提案は、マルテンサイト変態温度が100〜400℃の間であるとあるが、マルテンサイト変態温度が400℃以上を超えると永久歪みが残る塑性変形のため、形状回復率が小さくなり、ほとんど回復を示さなくなった。また、実施例としてあげられている100%の回復率を示す合金のマルテンサイト変態温度は300℃以下であった。
特許文献4に記載の提案は、変態温度は1000℃以上と高いものの、具体的に回復率が示されておらず、形状記憶合金として機能するかどうか判断できない。
特許文献5に記載の提案は、変態温度が1000℃以上と高く、900℃で変形後、2%の回復歪みを示したが、負荷した歪みが20%以上と大きく、回復率は10%程度であった。
非特許文献1には、Ti50Ni30Pt20の熱サイクル試験の結果から336MPaの応力下までは完全な回復を示すことが示されているが、変態温度は300℃であった。
非特許文献2には、TiNiPtの高温形状回復について述べられているが、Ptが30原子%を超えると、永久歪みが入り、形状記憶合金として使えないと述べている。ここではTiNiPtはPt量30原子%まで、300℃以下でのみ使用可能であると結論されている。
非特許文献3では、TiPtIrの形状回復率が、850℃の変形後、Ir添加量が12.5から25原子%の間で最大60%であった。
形状記憶合金は、マルテンサイト相を有する材料が変形後、マルテンサイト変態温度以上に加熱されることによって、マルテンサイト相から母相であるオーステナイト相へと変態して形状が回復する。そのため、高温で形状回復を起こすためには、マルテンサイト変態温度を高くする必要がある。
しかしながら、高いマルテンサイト変態温度近傍で変形、形状回復を繰り返すと、高温でマルテンサイト相が変形されるため、しばしば永久に歪みが入る塑性変形を起こす。塑性変形を起こすと、永久歪みの分、形状が回復しないため回復率が落ちる。
以上のことから、高温形状記憶合金を開発するためには、マルテンサイト変態温度を上昇させ、かつ、変態温度近傍での材料の強度を向上させる必要がある。
従来の高温形状記憶合金は、マルテンサイト変態温度が室温近傍であるTiNiに別の元素を添加し、TiNiで起こるマルテンサイト変態を利用しているため、200℃以上の変態温度を示す合金は少なかった。また、変態温度が200℃以上であっても、塑性変形がおこりやすくなるため、これまで300℃以上で機能する材料は見いだされなかった。
特開平5−43969号公報 米国特許公報US2007/0204938号 米国特許第7501032号 特開2004−162178号公報 特開2008−150705号公報
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本発明は、従来の高温形状記憶合金における上記の問題を解決するためになされたものであり、TiPtにNi、Ir以外の第三元素を添加することにより高温強度を向上させ、高温で大きな形状回復を示す高温形状記憶合金及びその製造方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
(1)42〜63原子%のPt、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPt系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がHf、Zr、V、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換されており、1000℃以下で変形後形状回復を示すTiPt系高温形状記憶合金。
(2)42〜63原子%のPt、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPt系高温形状記憶合金であって、前記Ptの一部がRu、Coのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜10原子%の範囲で置換されており、1000℃以下で変形後形状回復を示すTiPt系高温形状記憶合金。
(3)42〜63原子%のPt、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPt系高温形状記憶合金であって、前記Ptの一部がPd、Auのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜49.9原子%の範囲で置換されており、1000℃以下で変形後形状回復を示すTiPt系高温形状記憶合金。
(4)前記TiPt系高温形状記憶合金において、変態温度以下での変形後、マルテンサイト変態温度以上に加熱することにより10%以上の回復率を示すTiPt系高温形状記憶合金。
(5)前記TiPt系高温形状記憶合金において、TiPt系高温形状記憶合金の結晶構造が、マルテンサイト変態温度以下ではB19型斜方晶であるTiPt系高温形状記憶合金。
(6)前記TiPt系高温形状記憶合金において、TiPt系高温形状記憶合金の結晶構造が、マルテンサイト変態温度以上ではB2型立方晶であり、冷却によりマルテンサイト変態によりB19型斜方晶に変化することにより、そのミクロ組織がマルテンサイト双晶組織となるものであるTiPt系形状記憶合金。
(7)TiPt系高温形状記憶合金の結晶構造に関して、該マルテンサイト双晶組織が体積率で90%以上存在するTiPt系高温形状記憶合金を提供する。
(8)上記いずれかのTiPt系高温形状記憶合金の製造方法であって、溶製した前記形状記憶合金の原料を、真空容器中に不活性ガスとともに封入した状態で、600℃以上の温度で、かつマルテンサイト変態温度以上であるB2型立方晶領域で、その合金の液相を生じる温度から100℃を下回る温度域で、0.5時間以上保持する溶体化処理を施した後、0℃以下の冷媒に入れて焼き入れするTiPt系高温形状記憶合金の製造方法を提供する。
本発明のTiPt系高温形状記憶合金によれば、高温における強度を改善し、1000℃以下で変形後、変態温度以上に加熱することにより形状回復を示す高温形状記憶合金を提供することができる。
Ti-Ptの二元状態図である。 Ti-50Pt-5Zrを、1250℃、168時間溶体化処理後、氷水で焼き入れした後の組織の写真である。 Ti-50Pt-5Zrの高温形状記憶合金のX線回折図である。
<本発明のTiPt系高温形状記憶合金の合金組成>
本発明の高温形状記憶合金は、TiPt化合物を基本的な構成としており、図1に示すTi、Ptの二元系状態図によると、広い組成域でTiPt化合物が安定に形成されることがわかる。
また、この二元系状態図ではPtの割合が42〜63原子%の組成範囲で特に安定に存在することが確認でき、Ptの好ましい組成範囲は42〜63原子%であることがわかる。
以上のことを前提として、以下に本発明のTiPt系高温形状記憶合金についてさらに詳細に説明する。
まず、本発明のTiPt系高温形状記憶合金では、TiPt化合物に対し、TiPt化合物の高温強度を向上させるのに有効な元素であるHf、Zr、V、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上が0.1〜15原子%の全体組成に対しての範囲でTiの一部を置換するように添加される。
これは、これらの元素が、Tiと似た性質を持つ、周期律表の4〜6族の元素だからである。Tiの一部を置換するのは、Tiを置換しても結晶中に大きな欠陥は生成しないが、Ptを置換すると結晶中に大きな欠陥を生成し、形状回復率を下げるためである。
また、本発明のTiPt系高温形状記憶合金では、TiPt化合物に対し、TiPt化合物の高温強度を向上させるのに有効な元素であるRu、Coのうちの1種以上が0.1〜10原子%の全体組成に対しての範囲でPtの一部を置換するように添加される。
これらの添加元素は、より好ましくは2〜10原子%の範囲でPtと置換される。Ru、Coは、Ptと似た性質を持つ8族、9族の元素であり、Ptと置換することにより大きな形状回復率を示す。
また、本発明のTiPt系高温形状記憶合金では、TiPt化合物に対し、TiPt化合物の高温強度を向上させるのに有効な元素であるPd、Auのうちの1種以上が0.1〜49.9原子%の全体組成に対しての範囲でPtの一部を置換するように添加される。
Pd、Auは、Ptと似た性質を持つ10族、11族の元素であり、Ptと置換することにより大きな形状回復率を示す。
なお、高温強度を向上させるためには、Hf、Zr、V、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上を0.1原子%以上添加する必要があるが、TiPt化合物に固溶できる組成範囲は限られており、15原子%を超えると別の相の割合が多くなる場合がある。
Coについては10原子%を超えると急に変態温度や融点が下がるため、高温形状記憶合金として使用できなくなる場合があり、Ruについては10原子%を超えると溶解時の不均一な組織の均質化が難しくなり形状回復を損なうことがあるため、10原子%は超えるべきではない。
Pd、Auについては、Ptと全率固溶するため、49.9原子%まで添加可能である。
上記の構成とする本発明のTiPt系高温形状記憶合金によれば、1000℃以下、好ましくは室温〜1000℃の範囲で変形後形状回復を示すことが可能となる。なお、本発明における室温とは、10〜30℃を意味する。
<本発明の高温形状記憶合金の製造方法>
以下に、本発明の高温形状記憶合金の製造工程の一実施形態について説明する。
まず、本願発明のTiPt系高温形状記憶合金の原料を溶解して溶製する。溶解には、一般的なTi材料溶解に用いられる各種溶解法を採用することができ、特に制限されるものではなく、これらの方法としては、例えば、アーク溶解法、電子ビーム溶解法、高周波溶解法等の溶解法を挙げることができる。
次に、溶製した原料を、真空容器中に、アルゴンガス等の不活性ガスとともに封入した状態で、600℃以上、好ましくは600〜1800℃の温度範囲で、かつマルテンサイト変態温度以上であるB2型立方晶領域で、その合金の液相を生じる温度から100℃を下回る温度域で、0.5時間以上保持する溶体化処理を施す。
溶体化処理は、溶解中に生成した不均一な組織を均質にするために、マルテンサイト変態温度以上であるB2型立方晶領域で一定時間以上行う必要がある。
なお、本発明のTiPt系高温形状記憶合金が高融点の元素で構成されているため、通常、溶体化処理温度を1000℃以上とすることによりマルテンサイト変態温度以上となり、十分に拡散して均質化するが、マルテンサイト変態温度は合金組成によって異なるため、本発明で規定する第三元素の添加を考慮した場合、600℃以上、好ましくは600〜1800℃の温度範囲とすることにより、確実に拡散して均質化を行うことができる。
また、B2型立方晶領域は融点まで続くが、融点近傍で熱処理をすると結晶の規則状態が保たれなくなる可能性があることから、溶体化処理温度はその合金の液相を生じる温度から100℃を下回る温度を上限とする。
溶体化処理時間は0.5時間以上、好ましくは0.5〜500時間の範囲である。溶体化時間が0.5時間以上であれば、均質化が十分に行われ、組織が均一状態となるため望ましい。一方、溶体化処理時間は構成元素が十分に拡散した後は、組織に変化が起こらないため、長すぎると不経済であるため上限を500時間とする。
次に、溶体化処理後、合金を0℃以下の氷水等の冷媒中へ導入して焼き入れを行う。
0℃以下条件で焼き入れを行うことにより、マルテンサイト変態が起こり、B19型斜方晶の相が生成することにより、ミクロ組織がマルテンサイト双晶組織となる。冷却速度が遅い場合、B2型立方晶の相が完全に変態せず残留することがあるため、できるだけ瞬時に0℃以下の冷媒中への焼き入れが必要となる。
上記製造方法により、B19型斜方晶相が体積率で90%以上を占める、本発明の高温形状記憶合金を製造することができる。なお、残部の相はTiPt系金属間化合物相領域から外れた際に生成する第二相で構成される。
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。もちろん本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
表1に示すTi−Pt、Ti−Pt−Zr、Ti−Pt−Hf、Ti−Pt−Ru、Ti−Pt−Co(原子%)についての各合金組成の高純度元素を真空状態でアーク溶解法により溶解し、ボタン状の合金20gを溶製した。
次に、この溶製した合金をTi箔で包み、真空にした石英管中にアルゴンガス雰囲気で封じ込めた。石英管中に封じ込めた合金を1250℃で168時間溶体化処理後、氷水中で急冷して合金試料を作成した。
図2に、Ti-50Pt-5Zrを1250℃で3時間熱処理後、氷水で焼き入れした後の組織の写真を示す。
この図2の組織写真より、合金全体に微細な双晶組織が形成され、典型的なマルテンサイト組織を確認することができる。写真中の直径:約数μmの黒い粒状体以外は、マルテンサイト双晶組織であり、面積比からの推計により、体積率で約90%が相当すると把握できる。黒い粒状体は、TiPt系金属間化合物相領域から外れた際に生成する第二相である。
他の実施例の合金でも、同様の検討から、マルテンサイト双晶組織の体積率は、90%ないしそれ以上であることが確認されている。
また、図3に示したX線回折図によりB19型斜方晶で構成されていることが確認された。
<マルテンサイト変態温度の測定>
マルテンサイト変態温度の測定用に、各合金試料について3×3×1mmの試験片を作製した。この試験片を大気中で、1分間に10℃の昇温降温速度の条件で示差熱分析を行い、マルテンサイト変態温度を測定した。その結果を表1に示す。
ここで、A、A、M、Mは、それぞれ昇温時の変態開始温度(A)、昇温時の変態終了温度(A)、降温時の変態開始温度(M)、降温時の変態終了温度(M)である。第三元素の添加によって、変態温度は下がるが、すべての実施例について840℃以上であることが確認された。
<形状記憶回復率>
形状記憶回復率を求めるため、各合金試料について高温圧縮試験用試料として、直径3mm、長さ6mmの円柱の試験片を切り出した。
この試験片に対し、Aより低い温度で1.2×10−4m/sの歪み速度の条件で圧縮試験を行い、変形後の試験片長さを測定後、試験片をマルテンサイト変態温度以上である1250℃で10分間加熱処理し、室温まで炉冷し、再び試験片長さを測定して形状記憶回復率(以下、回復率という)を求めた。その結果を表2に示す。
回復率は、圧縮試験後に得られた試験片の歪みと加熱処理後に回復した試験片の歪みの割合である。
比較合金であるTi−50Ptは11%の回復率を示した。また、Irを5原子%添加した合金についても10%の回復率であった。一方、Zr、HfをTiに対して置換した合金1、2は57、58%の回復率を示した。
また、Ru、CoをPtに対して置換した合金3、4は、45、36%の回復率を示した。比較合金と比べると、同じ添加量でも、Zr、Hf、Ru、Coは形状回復の向上に対して効果があることが確認された。
本発明の高温形状記憶合金は、高温で起こるマルテンサイト変態を利用して形状回復を起こす材料であり、自動車やジェットエンジン等の高温部のアクチュエイター等に利用可能である。また、これら以外にも1000℃以下の温度範囲で動作するアクチュエイター、高温流体の流量や圧力制御部等に使用することも可能である。

Claims (8)

  1. 42〜63原子%のPt、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPt系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がHf、Zr、V、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換されており、1000℃以下で変形後形状回復を示すことを特徴とするTiPt系高温形状記憶合金。
  2. 42〜63原子%のPt、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPt系高温形状記憶合金であって、前記Ptの一部がRu、Coのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜10原子%の範囲で置換されており、1000℃以下で変形後形状回復を示すことを特徴とするTiPt系高温形状記憶合金。
  3. 42〜63原子%のPt、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPt系高温形状記憶合金であって、前記Ptの一部がPd、Auのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜49.9原子%の範囲で置換されており、1000℃以下で変形後形状回復を示すことを特徴とするTiPt系高温形状記憶合金。
  4. 前記TiPt系高温形状記憶合金において、変態温度以下での変形後、マルテンサイト変態温度以上に加熱することにより10%以上の回復率を示すことを特徴とするTiPt系高温形状記憶合金。
  5. 前記TiPt系高温形状記憶合金において、TiPt系高温形状記憶合金の結晶構造が、マルテンサイト変態温度以下ではB19型斜方晶であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のTiPt系高温形状記憶合金。
  6. 前記TiPt系高温形状記憶合金において、TiPt系高温形状記憶合金の結晶構造が、マルテンサイト変態温度以上ではB2型立方晶であり、冷却によりマルテンサイト変態によりB19型斜方晶に変化することにより、そのミクロ組織がマルテンサイト双晶組織となるものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のTiPt系高温形状記憶合金。
  7. TiPt系高温形状記憶合金の結晶構造に関して、該マルテンサイト双晶組織が体積率で90%以上存在することを特徴とする請求項6に記載のTiPt系高温形状記憶合金。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載のTiPt系高温形状記憶合金の製造方法であって、溶製した前記TiPt系高温形状記憶合金の原料を、真空容器中に不活性ガスとともに封入した状態で、600℃以上の温度で、かつマルテンサイト変態温度以上であるB2型立方晶領域で、その合金の液相を生じる温度から100℃を下回る温度域で、0.5時間以上保持する溶体化処理を施した後、0℃以下の冷媒に入れて焼き入れすることを特徴とするTiPt系高温形状記憶合金の製造方法。
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