JP6883818B2 - 高温形状記憶合金およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、高温形状記憶合金およびその製造方法に関し、より詳しくは、高温における仕事量と繰り返し特性を向上させた高温形状記憶合金およびその製造方法に関するものである。
TiNiに代表される形状記憶合金は、動力を必要とせず温度変化を感知して動作するアクチュエイター等として利用されている。このような形状記憶合金に対する性能要求は様々であって、自動車エンジンやジェットエンジン等、数百℃〜千℃オーダーの高温部で使用するアクチュエイター等の部品には、そのような高温での使用環境でも動作する形状記憶合金が必要とされている。
そこで、これまでにも、TiNiにZr、HfやPd、Pt等を添加することにより、形状記憶効果に関連するマルテンサイト変態温度を上昇させる試みが行われてきた。例えば、特許文献1には、Tiが50〜52原子%であり、Ptが10〜25原子%であり、5原子%以下のAu、Pd、Cuを1種以上含み、2原子%以下のCを含み、残部がNiであり、Ti(Ni、Pt)型の析出物が生成する高温形状記憶合金が開示されている。
一方で、TiPtやTiPdを基本構成とした合金を用いた高温形状記憶合金の開発も行われてきた。例えば、特許文献2には、Pt-42〜63原子%Ti合金にIrが添加され、Ptの一部が50原子%未満のIrで置換される形状記憶特性と擬弾性を持ち合わせる合金が開示されている。特許文献3には、Pdが45〜55原子%、Hf、Zr、Ta、Nb、V、Mo、Wのうちの1種以上が0.1〜15原子%、残部がTiと不可避不純物からなり、200℃〜550℃までの温度範囲で形状回復を示す合金が開示されている。特許文献4には、Pdが45〜55原子%、及び残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がZr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上で全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換された合金であって、マルテンサイト双晶組織に特徴を有するものが開示されている。そして、非特許文献1には、TiPdの形状回復率に対するZrの添加効果について示されている。
形状記憶合金は、マルテンサイト相を有する状態で変形が加えられた後、マルテンサイト変態温度以上に加熱されることによって、マルテンサイト相から母相であるオーステナイト相へと変態して形状が回復する。そのため、高温で形状回復を起こすためには、マルテンサイト変態温度を高くする必要がある。
しかしながら、高いマルテンサイト変態温度近傍で変形、形状回復を繰り返すと、高温でマルテンサイト相に変形が加えられるため、しばしば永久に歪みが入る塑性変形を起こす。塑性変形を起こすと、永久歪みの分、形状が回復しないため回復率が落ちる。
以上のことから、高温形状記憶合金を開発するためには、マルテンサイト変態温度を上昇させ、かつ、マルテンサイト変態温度近傍での強度を向上させる必要がある。
米国特許第7501032号明細書 特開2008−150705号公報 国際公開第2013/011959号 特開2016−6218号公報
M. Kawakita, M. Takahashi, S. Takahashi, Y. Yamabe-Mitarai: Mater. Letters, 2012, vol. 89, pp. 336-8.
本発明は、従来の高温形状記憶合金における上記の問題を解決するためになされたものであり、高温における仕事量と繰り返し特性を向上させた高温形状記憶合金およびその製造方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
(1)50原子%のPd、残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がZrで、全体組成に対して0.1〜18原子%の範囲で置換され、前記Pdの一部がNiで、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換されているTiPd系高温形状記憶合金。
(2)50原子%のPd、残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がZrで、全体組成に対して0.1〜18原子%の範囲で置換され、前記Pdの一部がCoで、全体組成に対して0.1〜22原子%の範囲で置換されているTiPd系高温形状記憶合金。
(3)50原子%のPd、残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がZrで、全体組成に対して0.1〜18原子%の範囲で置換され、前記Pdの一部がNiとCoの合計量として、全体組成に対して0.1原子%以上、下記の(1)式で示される案分割合で定められる上限値の原子%の範囲で置換されているTiPd系高温形状記憶合金。
[上限値]={15x[Ni]+22x[Co]}/{[Ni]+[Co]} (1)
ここで、[Ni]は前記NiとCoの合計量に対するNi成分の組成比率、[Co]は前記NiとCoの合計量に対するCo成分の組成比率である。
即ち、[Ni]が100%の場合は、[上限値]が15原子%となる。[Co]が100%の場合は、[上限値]が22原子%となる。[Ni]と[Co]が混在している場合は、[上限値]が両者の案分比により15原子%から22原子%の間になる。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1項に記載のTiPd系高温形状記憶合金において、50MPa以上かつ800MPa以下の応力下で3回以上加圧・熱サイクル試験(トレーニング)を行うことにより永久歪みが0%である機械的特性を有すると共に、前記熱サイクル試験の温度条件は、マルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させる加圧・熱サイクルである、
TiPd系高温形状記憶合金。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のTiPd系高温形状記憶合金において、マルテンサイト変態温度(マルテンサイト終了温度Mf)が100℃〜550℃であるTiPd系高温形状記憶合金。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1項に記載のTiPd系高温形状記憶合金を用いて作製されたTiPd系高温形状記憶合金アクチュエイター。
(7)(6)に記載のTiPd系高温形状記憶合金アクチュエイターを用いたジェットエンジン、自動車用エンジン、船舶用エンジン、又は飛翔体用エンジン。
(8)上記いずれかのTiPd系高温形状記憶合金の製造方法であって、溶製した前記形状記憶合金の原料を、マルテンサイト変態温度以上のB2型立方晶領域の温度から前記形状記憶合金の液相を生じる温度より100℃を下回る温度までの範囲内で、40%以上の圧縮変形をさせ、空冷したTiPd系高温形状記憶合金の製造方法。
本発明のTiPd系高温形状記憶合金によれば、B2型立方晶領域の温度から前記形状記憶合金の液相を生じる温度より100℃を下回る温度までの範囲内で、40%以上の圧縮変形をさせ、空冷を行うことにより、永久ひずみが0となる高温形状記憶合金を提供することができる。
Ti-40Pd-10Ni-5Zr合金に対して、15、50、100、150および200MPaの応力下で永久歪み測定試験を行った結果を示す温度−歪み曲線である。 Ti-40Pd-10Ni-5Zr合金に対して、200MPaで加圧・熱サイクル試験を1、3、17回行った温度−歪み曲線である。 Ti-40Pd-10Co-5Zr合金に対して、15、50、100、150および200MPaの応力下で永久歪み測定試験を行った結果を示す温度−歪み曲線である。 Ti-40Pd-10Co-5Zr合金に対して、700MPaで加圧・熱サイクル試験を1、5、9回行った温度−歪み曲線である。
<TiPd系高温形状記憶合金の合金組成>
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、TiPd化合物を基本的な構成としている。Ti、Pdの二元系状態図によると、Pdの割合が45〜55原子%の組成範囲でTiPd化合物が安定に存在することが確認でき、Pdの好ましい組成範囲は45〜55原子%であることがわかる。一方、添加元素であるNiやCoもTiと化合物を作り、TiNiやTiCoを生成する。結晶構造はTiPdと同様にB2構造である。この事実はTi-Pd-NiやTi-Pd-Coの三元系状態図を考えた時に、PdとNiやCoが全率固溶する可能性を示している。すなわち、Tiを50原子%に固定し、Pd+Ni=50あるいはPd+Co=50原子%の範囲内であればB2構造を示す。以上のことを前提として、以下に本発明のTiPd系高温形状記憶合金の実施形態についてさらに詳細に説明する。
また、このTiPd系高温形状記憶合金に対し、Zrが、全体組成に対して0.1〜18原子%の範囲でTiの一部を置換するように添加される。
Zrは、TiPd化合物の高温強度を向上させるのに有効な元素である。また、Zrは、Tiと似た性質を持つ、周期律表の4族の元素であり、Tiの一部を置換しても、結晶中に大きな欠陥は生成しない。
TiPd化合物の高温強度を向上させるためには、Zrを、全体組成に対して0.1原子%以上添加する必要がある。一方で、マルテンサイト変態終了温度を100℃以上に保持するためには、Zr添加量は18原子%を超えてはならない。さらに好ましくは、強度向上の効果と変態温度の高さという観点から、全体組成に対して5〜15原子%であり、最も好ましくは7〜12原子%である。
また、本発明のTiPd系高温形状記憶合金では、TiPd化合物に対し、Niが、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲でPdの一部を置換するように添加される。Pdは白金族に属し、希少で高価な貴金属であるため、Niによる置換率は高い方が良い。
Niは、TiPd化合物の変態温度を低下させるが、Niは形状記憶合金の仕事量に関わる変態歪みを大きくする効果がある。また、Niは、Pdと似た性質を持つ、周期律表の10族の元素であり、Pdの一部を置換しても、結晶中に大きな欠陥は生成しない。Niは変態歪みの制御には必要であるが、変態温度を下げる効果があるため、添加量が大きいと変態温度(マルテンサイト変態終了温度)が100℃以下となり、高温形状記憶合金として機能しなくなる。マルテンサイト変態終了温度を100℃以上にするためには15原子%を超える添加はできない。前記Pdの一部がNiで置換される範囲は、さらに好ましくは、全体組成に対して9〜15原子%であり、最も好ましくは13〜15原子%である。
また、本発明のTiPd系高温形状記憶合金では、TiPd化合物に対し、Niに代えてCoが、全体組成に対して0.1〜22原子%の範囲でPdの一部を置換するように添加されてもよい。Pdは白金族に属し、希少で高価な貴金属であるため、Coによる置換率は高い方が良い。
Coは、TiPd化合物の変態温度を低下させるが、Coは形状記憶合金の仕事量に関わる変態歪みを小さくするが、より高い温度で形状回復を有効にする元素である。また、Coは、Pdと似た性質を持つ、周期律表の9族の元素であり、Pdの一部を置換しても、結晶中に大きな欠陥は生成しない。Coは変態歪みの制御には必要であるが、変態温度を下げる効果があるため、添加量が大きいと変態温度(マルテンサイト変態終了温度)が100℃以下となり、高温形状記憶合金として機能しなくなる。マルテンサイト変態終了温度を100℃以上にするためには22原子%を超える添加はできない。前記Pdの一部がCoで置換される範囲は、さらに好ましくは、全体組成に対して16〜22原子%であり、最も好ましくは20〜22原子%である。
<TiPd系高温形状記憶合金の特性>
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、マルテンサイト変態終了温度が100℃〜550℃であることが好ましい。また、本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、100℃〜550℃でのマルテンサイト変態温度近傍で変形、形状回復を繰り返した場合であっても、永久歪みが0%であるの繰り返し特性を有することが好ましい。
<TiPd系高温形状記憶合金の組織構造>
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、最も好ましくは、製造時に40%以上の圧縮変形を施すことにより、転位が導入され、これが安定的に配置することにより形状回復の安定性を保つ。
これは、40%以上の圧縮変形後、B2領域の温度範囲で熱処理を施し、転位構造を回復させると、変態ひずみが明確に見えなくなり、回復しなくなることからも変形による転位構造が形状回復に有効であることを示す。本発明のTiPd系高温形状記憶合金に対する製造時の圧縮変形範囲は、さらに好ましくは、20〜90%であり、好ましくは40〜80%である。
<TiPd系高温形状記憶合金の製造方法>
以下に、本発明の高温形状記憶合金の製造工程の一実施形態について説明する。
まず、本発明の高温形状記憶合金の原料を溶解して溶製する。溶解には、一般的なTi材料溶解に用いられる各種溶解法を採用することができ、特に制限されるものではなく、これらの方法としては、例えば、アーク溶解法、電子ビーム溶解法、高周波溶解法等の溶解法を挙げることができる。
次に、溶製した合金を、マルテンサイト変態温度以上のB2型立方晶領域の温度から前記形状記憶合金の液相を生じる温度より100℃を下回る温度までの範囲内で、40%以上の圧縮変形を施す。
マルテンサイト変態温度は合金組成によって異なるが、本発明の高温形状記憶合金が高融点の元素で構成されているため、オーステナイト相であるB2型立方晶領域の温度で熱処理することにより十分に拡散し、均質化が行われるため望ましい。また、B2型立方晶領域は融点まで続くが、融点近傍で熱処理をすると結晶の規則状態が保たれなくなる可能性があることから、溶体化処理温度は、その合金の液相を生じる温度から100℃を下回る温度を上限とする。
その後、目的とする応力以上かつ800MPa以下の応力下でマルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させる加圧・熱サイクルを1回以上繰り返す。そして、目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うことにより、繰り返し特性向上に必要な双晶組織を生成することができる。800MPa以上の応力をかけると、回復不可能な大きな歪みが導入される場合があることから、800MPaを上限とする。ここで、「目的とする応力」とは、本発明の高温形状記憶合金が仕事量と繰り返し特性を発揮する最大応力をいう。すなわち、本発明において、目的とする応力は、800MPaを上限として、所望の目的、用途等に応じて、種々設定することができる。目的とする応力としては、例えば、50MPa、100MPa、150MPa、200MPaなどと設定することができるが、これらに限定されない。
上記製造方法により、高温での仕事量と繰り返し特性に優れた本発明の高温形状記憶合金を製造することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。もちろん本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
Ti−40Pd−10Ni-5Zr、Ti−30Pd−20Ni-5Zr、Ti−40Pd−10Co-5Zr、(原子%)についての各合金組成の高純度元素を真空状態でアーク溶解法により溶解し、ボタン状の合金20gを溶製した。
次に、この溶製した合金を1000℃の試験機に設置し、20分均質化処理後、厚さ方向に40%の圧縮を施し、その後、空冷した。
本実施例においては、合金試料に関する各種物性の測定、評価は、それぞれ以下のようにして行った。
<マルテンサイト変態温度の測定>
各合金試料の試験片を、大気中で、1分間に10℃の昇温降温速度の条件でDSC(示差走査型熱分析装置)により示差熱分析を行い、マルテンサイト変態温度を測定した。
<永久歪みの測定>
各合金試料の試験片について、一定の応力下でマルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させた(永久歪み測定試験)結果から温度−歪み曲線を作成し、試験前後の歪みの差(%)を測定した。なお、加圧・熱サイクルの結果からも同様の温度−歪み曲線を作成することができる。
<仕事量の測定>
各合金試料の試験片について、上記の永久歪み測定試験の結果から温度−歪み曲線を作成し、昇温時のマルテンサイト変態開始温度における歪みと、昇温時のマルテンサイト変態終了温度における歪みとの差を算出し、変態歪み(%)を測定した。この変態歪み(%)に対して、負荷した応力(MPa)を乗算することにより、単位面積当たりの仕事量(J/cm)を算出した。
表1にDSCで測定した変態温度を示す。As, Af, Ms, Mfはそれぞれ、オーステナイト変態開始温度、オーステナイト変態終了温度、マルテンサイト変態開始温度、マルテンサイト変態終了温度である。Ti−30Pd−20Ni-5Zrは室温以上では変態が現れなかったため、変態温度は室温以下であると考えられる。Ni、Co添加により低下する変態温度からマルテンサイト変態温度終了温度が100℃以上になるNi又はCo添加量を計算したところ、Niは15原子%以下、Coは22原子%以下であった。
ちなみに、マルテンサイト変態温度終了温度が150℃以上になるNi又はCo添加量を計算したところ、Niは13原子%以下、Coは20原子%以下であった。また、マルテンサイト変態温度終了温度が200℃以上になるNi又はCo添加量を計算したところ、Niは9原子%以下、Coは16原子%以下であった。
Figure 0006883818
[比較例3]
図1にTi-40Pd-10Ni-5Zr合金に対して、15、50、100、150および200MPaの応力下で永久歪み測定試験を行った結果を示す温度−歪み曲線である。50MPaまでは永久ひずみが入らないが、100MPa以上では永久ひずみが入っている。
[実施例1]
Ti-40Pd-10Ni-5Zr合金では、一定荷重で複数回加圧・熱サイクル(トレーニング)する熱加工をしないで永久歪み測定試験を行うと永久歪みが入る。これに対して、図1に示すように一定荷重として200MPaで複数回加圧・熱サイクル(トレーニング)をかけると、Ti-40Pd-10Ni-5Zr合金の永久歪みが0になる。
図2に、200MPaで1、3、17回加圧・熱サイクル試験を施した時の温度−歪み曲線を示す。1回目のサイクルでは0.1%程度永久ひずみが入っているが、3回目の加圧・熱サイクル試験では、永久ひずみが0%となり、完全に回復している。その後も永久ひずみは0のまま安定であり、17回の試験によっても、永久ひずみは導入されなかった。
[実施例2]
図3にTi-40Pd-10Co-5Zr合金に対して、15、50、100、150および200MPaの応力下で永久歪み測定試験を行った結果を示す温度−歪み曲線を示す。この合金は200MPa負荷しても永久ひずみが導入されなかった。
図4に、Ti-40Pd-10Co-5Zr合金に対して、700MPaで加圧・熱サイクル試験を1、5、9回行った温度−歪み曲線を示す。700MPa負荷すると、1回目の加圧・熱サイクル試験では、0.1%程度の永久ひずみが導入されるが、5回目の加圧・熱サイクル試験では、永久ひずみは0になり9回試験しても0のまま安定に回復した。
なお、上記の実施例においては、TiPd系高温形状記憶合金において、ZrとNi並びにZrとCoで一部組成元素を置換した4元元素合金の場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ZrとNi及びCoで一部組成元素を置換した5元元素合金の場合でもよい。この場合には、マルテンサイト変態温度終了温度が100℃以上になるように、NiとCoの合計量として、下記の(1)式で示される案分割合で定められる上限値の原子%の範囲でPdが置換されているTiPd系高温形状記憶合金としてもよい。
[上限値]={15x[Ni]+22x[Co]}/{[Ni]+[Co]} (1)
ここで、[Ni]は前記NiとCoの合計量に対するNi成分の組成比率、[Co]は前記NiとCoの合計量に対するCo成分の組成比率である。
NiとCoを添加することで、TiPd系高温形状記憶合金の強化が期待できると共に、変態ひずみの制御も期待できる。
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、高温で起こるマルテンサイト変態を利用して形状回復を起こす材料であり、自動車やジェットエンジン等の高温部のアクチュエイター等に利用可能である。また、これら以外にも100から550℃以下の温度範囲で動作するアクチュエイター、高温流体の流量や圧力制御部等に使用することも可能である。

Claims (8)

  1. 50原子%のPd、残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、
    前記Tiの一部がZrで、全体組成に対して0.1〜18原子%の範囲で置換され、
    前記Pdの一部がNiで、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換されていると共に、PdとNiの合計含有量が全体組成に対して50原子%であるTiPd系高温形状記憶合金。
  2. 50原子%のPd、残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、
    前記Tiの一部がZrで、全体組成に対して0.1〜18原子%の範囲で置換され、
    前記Pdの一部がCoで、全体組成に対して0.1〜22原子%の範囲で置換されていると共に、PdとCoの合計含有量が全体組成に対して50原子%であるTiPd系高温形状記憶合金。
  3. 50原子%のPd、残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、
    前記Tiの一部がZrで、全体組成に対して0.1〜18原子%の範囲で置換され、
    前記Pdの一部がNiとCoの合計量として、全体組成に対して0.1原子%以上、下記の(1)式で示される案分割合で定められる上限値の原子%の範囲で置換されていると共に、PdとNi及びCoの合計含有量が全体組成に対して50原子%であるTiPd系高温形状記憶合金。
    [上限値]={15x[Ni]+22x[Co]}/{[Ni]+[Co]} (1)
    ここで、[Ni]は前記NiとCoの合計量に対するNi成分の組成比率、[Co]は前記NiとCoの合計量に対するCo成分の組成比率である。
  4. 上記TiPd系高温形状記憶合金において、
    50MPa以上かつ800MPa以下の応力下で3回以上加圧・熱サイクル試験(トレーニング)を行うことにより永久歪みが0%である機械的特性を有すると共に、
    前記熱サイクル試験の温度条件は、マルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させる加圧・熱サイクルである、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載のTiPd系高温形状記憶合金。
  5. 上記TiPd系高温形状記憶合金において、マルテンサイト変態温度(マルテンサイト終了温度Mf)が100℃〜550℃である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のTiPd系高温形状記憶合金。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のTiPd系高温形状記憶合金を用いて作製されたTiPd系高温形状記憶合金アクチュエイター。
  7. 請求項6に記載のTiPd系高温形状記憶合金アクチュエイターを用いたジェットエンジン、自動車用エンジン、船舶用エンジン、又は飛翔体用エンジン。
  8. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のTiPd系高温形状記憶合金の製造方法であって、溶製した前記形状記憶合金の原料を、マルテンサイト変態温度以上のB2型立方晶領域の温度から前記形状記憶合金の液相を生じる温度より100℃を下回る温度までの範囲内で、40%以上の圧縮変形をさせ、空冷したTiPd系高温形状記憶合金の製造方法。
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