JP6422113B2 - 高温形状記憶合金およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高温形状記憶合金およびその製造方法に関し、より詳しくは、高温における仕事量と繰り返し特性を向上させた高温形状記憶合金およびその製造方法に関するものである。
TiNiに代表される形状記憶合金は、動力を必要とせず温度変化を感知して動作するアクチュエイター等として利用されている。このような形状記憶合金に対する性能要求は様々であって、自動車エンジンやジェットエンジン等、数百℃〜千℃オーダーの高温部で使用するアクチュエイター等の部品には、そのような高温での使用環境でも動作する形状記憶合金が必要とされている。
そこで、これまでにも、TiNiにZr、HfやPd、Pt等を添加することにより、形状記憶効果に関連するマルテンサイト変態温度を上昇させる試みが行われてきた。例えば、特許文献1には、Tiが50〜52原子%であり、Ptが10〜25原子%であり、5原子%以下のAu、Pd、Cuを1種以上含み、2原子%以下のCを含み、残部がNiであり、Ti(Ni、Pt)型の析出物が生成する高温形状記憶合金が開示されている。
一方で、TiPtやTiPdを基本構成とした合金を用いた高温形状記憶合金の開発も行われてきた。例えば、特許文献2には、Pt-42〜63原子%Ti合金にIrが添加され、Ptの一部が50原子%未満のIrで置換される形状記憶特性と擬弾性を持ち合わせる合金が開示されている。特許文献3には、Pdが45〜55原子%、Hf、Zr、Ta、Nb、V、Mo、Wのうちの1種以上が0.1〜15原子%、残部がTiと不可避不純物からなり、200℃〜550℃までの温度範囲で形状回復を示す合金が開示されている。そして、非特許文献1には、TiPdの形状回復率に対するZrの添加効果について示されている。
これらのこれまで開発されてきた高温形状記憶合金は、マルテンサイト変態温度が300℃以下のものが多かった。なかには300℃以上のマルテンサイト変態温度を示す合金も示されているが、これらについては回復率が明確に示されておらず、実際に回復を起こすかどうかは明らかではなかった。
形状記憶合金は、マルテンサイト相を有する状態で変形が加えられた後、マルテンサイト変態温度以上に加熱されることによって、マルテンサイト相から母相であるオーステナイト相へと変態して形状が回復する。そのため、高温で形状回復を起こすためには、マルテンサイト変態温度を高くする必要がある。
しかしながら、高いマルテンサイト変態温度近傍で変形、形状回復を繰り返すと、高温でマルテンサイト相に変形が加えられるため、しばしば永久に歪みが入る塑性変形を起こす。塑性変形を起こすと、永久歪みの分、形状が回復しないため回復率が落ちる。
以上のことから、高温形状記憶合金を開発するためには、マルテンサイト変態温度を上昇させ、かつ、マルテンサイト変態温度近傍での強度を向上させる必要がある。
米国特許第7501032号明細書 特開2008−150705号公報 国際公開第2013/011959号
M. Kawakita, M. Takahashi, S. Takahashi, Y. Yamabe-Mitarai: Mater. Letters, 2012, vol. 89, pp. 336-8.
本発明は、従来の高温形状記憶合金における上記の問題を解決するためになされたものであり、高温における仕事量と繰り返し特性を向上させた高温形状記憶合金およびその製造方法を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
(1)45〜55原子%のPd、および残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がZr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換されており、マルテンサイト双晶組織の、オーステナイト相に対するマルテンサイト相のバリアントの80%以上が同一方向を示すTiPd系高温形状記憶合金。
(2)上記TiPd系高温形状記憶合金において、前記Pdの一部がPt、Irのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜54.9原子%の範囲で置換されているTiPd系高温形状記憶合金。
(3)上記TiPd系高温形状記憶合金において、マルテンサイト変態温度が400℃〜1000℃であるTiPd系高温形状記憶合金。
(4)上記TiPd系高温形状記憶合金において、永久歪みが0.5%以下であるTiPd系高温形状記憶合金。
(5)上記TiPd系高温形状記憶合金において、仕事量が0.5J/cm以上であるTiPd系高温形状記憶合金。
(6)上記いずれかのTiPd系高温形状記憶合金を用いて作製されたTiPd系高温形状記憶合金アクチュエイター。
(7)上記いずれかのTiPd系高温形状記憶合金の製造方法であって、溶製した前記形状記憶合金の原料を、真空容器中に不活性ガスとともに封入した状態で、マルテンサイト変態温度以上のB2型立方晶領域の温度から前記形状記憶合金の液相を生じる温度より100℃を下回る温度までの範囲内で、0.5時間以上保持する溶体化処理を施した後、0℃以下の冷媒に入れて焼き入れし、目的とする応力以上かつ400MPa以下の応力下で、マルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させる加圧・熱サイクルを1回以上繰り返した後に目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うTiPd系高温形状記憶合金の製造方法。
本発明のTiPd系高温形状記憶合金によれば、一定応力下でマルテンサイト相が安定な温度から変態温度を超える温度の間で加圧・熱サイクルを行うことにより、高温における仕事量と繰り返し特性を向上させた高温形状記憶合金を提供することができる。
加圧・熱サイクルを行っていないTi-50Pd-5Zrに対して、25、50、100、150、200および250MPaの応力下で永久歪み測定試験を行った結果を示す温度−歪み曲線である。 25、50、100、150、200および250MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回ずつ行った後に、50MPaまたは100MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回行った(a)Ti-50Pd?5Zr、(b)Ti-50Pd?5Hf、(c)Ti-50Pd?5Nbの、50MPaまたは100MPaの応力下での永久歪み測定試験の結果を示す温度−歪み曲線である。 25、50、100、150、200および250MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回ずつ行った後に、100MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回行ったTi-50Pd-5Zrに対して、100MPaの応力下で永久歪み測定試験を5回行った結果を示す温度−歪み曲線である。 加圧・熱サイクルを行っていないTi-35Pd-15Pt-5Zrに対して、15、50、100、150および200MPaの応力下で永久歪み測定試験を行った結果を示す温度−歪み曲線である。 15、50、100、150および200MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回ずつ行った後に、150MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回行ったTi-35Pd-15Pt-5Zrの、150MPaの応力下での永久歪み測定試験の結果を示す温度−歪み曲線である。 (a)100MPa、(b)200MPa、(c)300MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回行った後に、100MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回行ったTi-35Pd-15Pt-5Zrの、永久歪み測定試験の結果を示す温度−歪み曲線である。 (a)加圧・熱サイクル前、および(b)15、50、100、150および200MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回ずつ行った後に150MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回行ったTi-35Pd-15Pt-5Zrの電子線後方散乱回折組織を示す方位マップおよび逆極点図である。
<TiPd系高温形状記憶合金の合金組成>
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、TiPd化合物を基本的な構成としている。Ti、Pdの二元系状態図によると、Pdの割合が45〜55原子%の組成範囲でTiPd化合物が安定に存在することが確認でき、Pdの好ましい組成範囲は45〜55原子%であることがわかる。以上のことを前提として、以下に本発明のTiPd系高温形状記憶合金の実施形態についてさらに詳細に説明する。
本発明のTiPd系高温形状記憶合金の第一の実施形態では、TiPd化合物に対し、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上が、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲でTiの一部を置換するように添加される。
上記の元素は、TiPd化合物の高温強度を向上させるのに有効な元素である。また、これらの元素は、Tiと似た性質を持つ、周期律表の4〜6族の元素であり、Tiの一部を置換しても、結晶中に大きな欠陥は生成しない。
TiPd化合物の高温強度を向上させるためには、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上を、全体組成に対して0.1原子%以上添加する必要がある。一方で、TiPd化合物に固溶できる組成範囲は限られており、上記の元素の全体組成に対する割合が15原子%を超えると、別の相の割合が多くなる場合がある。
また、本発明のTiPd系高温形状記憶合金の第二の実施形態では、上記のTiPd系高温形状記憶合金に対し、Pt、Irのうちの1種以上が、全体組成に対して0.1〜54.9原子%の範囲でPdの一部を置換するように添加されることが好ましい。
上記の元素は、TiPd化合物の高温強度を向上させるのに有効な元素である。また、Pt、Irについては、Pdと全率固溶するため、54.9原子%までの範囲で添加可能である。
<TiPd系高温形状記憶合金の特性>
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、マルテンサイト変態温度が400℃〜1000℃であることが好ましい。また、本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、400℃〜1000℃のマルテンサイト変態温度近傍で変形、形状回復を繰り返した場合であっても、永久歪みが0.5%以下の繰り返し特性を有することが好ましい。そして、本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、400℃〜1000℃という高温のマルテンサイト変態温度であっても形状回復を起こし、0.5J/cm以上の仕事量を有することが好ましい。
<TiPd系高温形状記憶合金の組織構造>
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、マルテンサイト双晶組織の、オーステナイト相に対するマルテンサイト相のバリアントの80%以上が同一方向を示す。従来の製造方法によって製造された形状記憶合金では、マルテンサイト双晶組織におけるマルテンサイト相のバリアントの方向性にはバラつきがあり、一定の規則性は見出されていなかった。本発明のTiPd系高温形状記憶合金では、バリアントの80%以上が同一方向を示すことにより、マルテンサイト相からオーステナイト相への逆変態を促進することによって、合金の繰り返し特性が向上すると考えられる。
このようなバリアントの規則的な配列は、本発明のTiPd系高温形状記憶合金を製造する過程において、一定の応力を負荷することによってマルテンサイト相に変形が生じ、マルテンサイト双晶組織内のマルテンサイトバリアントの再配列が惹起され、一つの結晶粒を占めるバリアントが一定方向に優先的に成長するためであると考えられる。
<TiPd系高温形状記憶合金の製造方法>
以下に、本発明の高温形状記憶合金の製造工程の一実施形態について説明する。
まず、本発明の高温形状記憶合金の原料を溶解して溶製する。溶解には、一般的なTi材料溶解に用いられる各種溶解法を採用することができ、特に制限されるものではなく、これらの方法としては、例えば、アーク溶解法、電子ビーム溶解法、高周波溶解法等の溶解法を挙げることができる。
次に、溶製した原料を、真空容器中に、アルゴンガス等の不活性ガスとともに封入した状態で、マルテンサイト変態温度以上のB2型立方晶領域の温度から前記形状記憶合金の液相を生じる温度より100℃を下回る温度までの範囲内で、0.5時間以上保持する溶体化処理を施す。
溶体化処理は、溶解中に生成した不均一な組織を均質にするために、マルテンサイト変態温度以上のB2型立方晶領域の温度で一定時間以上行う必要がある。
マルテンサイト変態温度は合金組成によって異なるが、本発明の高温形状記憶合金が高融点の元素で構成されているため、オーステナイト相であるB2型立方晶領域の温度で熱処理することにより十分に拡散し、均質化が行われるため望ましい。また、B2型立方晶領域は融点まで続くが、融点近傍で熱処理をすると結晶の規則状態が保たれなくなる可能性があることから、溶体化処理温度は、その合金の液相を生じる温度から100℃を下回る温度を上限とする。
溶体化処理時間は0.5時間以上、好ましくは0.5〜500時間の範囲である。溶体化時間が0.5時間以上であれば、均質化が十分に行われ、組織が均一状態となるため望ましい。一方、溶体化処理時間は構成元素が十分に拡散した後は、組織に変化が起こらないため、長すぎると不経済であることも考慮して、上限を500時間とする。
次に、溶体化処理後、合金を0℃以下の氷水等の冷媒中へ導入して焼き入れを行う。
0℃以下の条件で焼き入れを行うことにより、マルテンサイト変態が起こり、B19型斜方晶の相が生成することにより、ミクロ組織がマルテンサイト双晶組織となる。冷却速度が遅い場合、B2型立方晶の相が完全に変態せず残留することがあるため、できるだけ瞬時に0℃以下の冷媒中への焼き入れを行うことにより、B19型斜方晶相が体積率で90%以上を占める高温形状記憶合金を製造することができる。なお、残部の相はTiPd系金属間化合物相領域から外れた際に生成する第二相で構成される。
その後、目的とする応力以上かつ400MPa以下の応力下でマルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させる加圧・熱サイクルを1回以上繰り返す。そして、目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うことにより、繰り返し特性向上に必要な双晶組織を生成することができる。400MPa以上の応力をかけると、回復不可能な大きな歪みが導入される場合があることから、400MPaを上限とする。ここで、「目的とする応力」とは、本発明の高温形状記憶合金が仕事量と繰り返し特性を発揮する最大応力をいう。すなわち、本発明において、目的とする応力は、400MPaを上限として、所望の目的、用途等に応じて、種々設定することができる。目的とする応力としては、例えば、50MPa、100MPa、150MPaなどと設定することができるが、これらに限定されない。
上記製造方法により、高温での仕事量と繰り返し特性に優れた本発明の高温形状記憶合金を製造することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。もちろん本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
Ti−50Pd−5Zr、Ti−50Pd−5Hf、Ti−50Pd−5Nb、Ti−35Pd−15Pt-5Zr(原子%)についての各合金組成の高純度元素を真空状態でアーク溶解法により溶解し、ボタン状の合金20gを溶製した。
次に、この溶製した合金をTi箔で包み、真空にした石英管中にアルゴンガス雰囲気で封じ込めた。石英管中に封じ込めた合金を1000℃で3時間溶体化処理後、氷水中で急冷して合金試料を作製した。
本実施例においては、合金試料に関する各種物性の測定、評価は、それぞれ以下のようにして行った。
<マルテンサイト変態温度の測定>
各合金試料の試験片を、大気中で、1分間に10℃の昇温降温速度の条件でDSC(示差走査型熱分析装置)により示差熱分析を行い、マルテンサイト変態温度を測定した。
<永久歪みの測定>
各合金試料の試験片について、一定の応力下でマルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させた(永久歪み測定試験)結果から温度−歪み曲線を作成し、試験前後の歪みの差(%)を測定した。なお、加圧・熱サイクルの結果からも同様の温度−歪み曲線を作成することができる。
<仕事量の測定>
各合金試料の試験片について、上記の永久歪み測定試験の結果から温度−歪み曲線を作成し、昇温時のマルテンサイト変態開始温度における歪みと、昇温時のマルテンサイト変態終了温度における歪みとの差を算出し、変態歪み(%)を測定した。この変態歪み(%)に対して、負荷した応力(MPa)を乗算することにより、単位面積当たりの仕事量(J/cm)を算出した。
[比較例1]
図1に、加圧・熱サイクルを行っていないTi−50Pd−5Zrに対して、25MPa、50MPa、100MPa、150MPa、200MPaおよび250MPaの応力下で、室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で永久歪み測定試験を行った結果を示す。試験片は3x3x6mmの角柱を用いた。マルテンサイト変態温度は440から500℃であった。すべての応力条件において、永久歪みが残り、永久歪みは25MPaで1%程度、250MPaで5%程度であった。
[実施例1]
図2に、25MPa、50MPa、100MPa、150MPa、200MPaおよび250MPaの応力下で、室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で加圧・熱サイクルを1回ずつ行った後に、50MPaまたは100MPaの応力下で、室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で加圧・熱サイクルを1回行ったTi−50Pd−5Zr、Ti−50Pd−5Hf、Ti−50Pd−5Nbの、50MPaまたは100MPaの応力下での永久歪み測定試験の結果を示す。試験片は3x3x6mmの角柱を用いた。これらのマルテンサイト変態温度は400〜500℃の間であった。Ti−50Pd−5ZrおよびTi−50Pd−5Nbでは、温度−歪み曲線は完全なクローズループを形成し、永久歪みを残さずに回復した。Ti−50Pd−5Hfでは0.3%程度の永久歪みが残った。また、このグラフから計算された仕事量(負荷した応力(MPa)×変態歪み(%))は、Ti−50Pd−5Zrでは1.91J/cm、Ti−50Pd−5Hfでは1.17J/cm、Ti−50Pd−5Nbでは0.6J/cmであった。この結果から、目的とする一定の応力以上の加圧条件で加圧・熱サイクルを1回以上行った後に目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うことによって、目的とする応力下で永久歪みが0.5%以下の、400℃以上の高温で仕事量を示す合金が得られることがわかった。なお、「永久歪みを残さない」とは、永久歪みが全く生じないか、または永久歪みが0.1%未満であることをいうものとする。
[実施例2]
図3に、25MPa、50MPa、100MPa、150MPa、200MPaおよび250MPaの応力下で、室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で加圧・熱サイクルを1回ずつ行った後に、100MPaの応力下で、加圧・熱サイクルを1回行ったTi-50Pd-5Zrに対して、100MPaの応力下で永久歪み測定試験を5回行った結果を示す。試験片は3x3x6mmの角柱を用いた。この結果から、温度−歪み曲線において一度クローズループが得られると、そのあとも安定してクローズループが得られることがわかり、目的とする一定の応力以上の加圧条件で加圧・熱サイクルを1回以上行った後に目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うことによって、目的とする応力下での繰り返し特性が向上した合金が得られることがわかった。
[比較例2]
図4に、加圧・熱サイクルを行っていないTi−35Pd−15Pt-5Zrに対して、15MPa、50MPa、100MPa、150MPaおよび200MPaの応力下で、室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で永久歪み測定試験を行った結果を示す。試験片は3x3x6mmの角柱を用いた。マルテンサイト変態温度は500℃近傍であり、Ti−50Pd−5Zr、Ti−50Pd−5Hf、Ti−50Pd−5Nbよりも高かった。すべての応力条件において、1.5%以下の永久歪みが残った。15MPaの小さい応力条件の場合であっても、永久歪みは0.5%を超えていた。
[実施例3]
図5に、15MPa、50MPa、100MPa、150MPaおよび200MPaの応力下で、室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で加圧・熱サイクル試験を1回ずつ行った後に、150MPaの応力下で、加圧・熱サイクルを1回行ったTi-35Pd-15Pt-5Zrの、150MPaの応力下での永久歪み測定試験の結果を示す。試験片は3x3x6mmの角柱を用いた。グラフ中の数字は永久歪み測定試験の回数を示す。この結果から、目的とする一定の応力以上の加圧条件で加圧・熱サイクルを1回以上行った後に目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うことによって、温度−歪み曲線においてクローズループを示し、目的とする応力下で永久歪みを残さずに仕事量を示す合金が得られることがわかった。仕事量は1.8J/cmであった。
[実施例4]
図6に、100MPa、200MPaまたは300MPaの応力下で室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で加圧・熱サイクルを1回行った後、100MPaの応力下で、室温から昇温時の変態終了温度(A)+30℃の間で加圧・熱サイクルを10回行ったTi-35Pd-15Pt-5Zrの、永久歪み測定試験の結果を示す。試験片は3x3x6mmの角柱を用いた。グラフ中の数字は、試験片に対して行った加圧・熱サイクルの回数を示す。各図面の一番下のグラフは、加圧・熱サイクル前の試験片に対する100MPa、200MPaまたは300MPaの応力下での永久歪み測定試験の結果である。この段階では、永久歪みの程度が大きかった。しかし、その後、100MPaで加圧・熱サイクルを1回行うことによって、温度−歪み曲線はクローズループを形成し、このクローズループはそれ以降の永久歪み測定試験中安定していた。また、このグラフから計算された仕事量(負荷した応力(MPa)×変態歪み(%))は、2.0J/cmであった。この結果から、目的とする一定の応力以上の加圧条件で加圧・熱サイクルを1回以上行った後に目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うことによって、目的とする応力下での合金の繰り返し特性が向上し、400℃以上の高温で仕事量を示す合金が得られることがわかった。
<組織構造の解析>
図7に、加圧・熱サイクル前(a)、および15MPa、50MPa、100MPa、150MPaおよび200MPaの応力下での加圧・熱サイクルを1回ずつ行った後に150MPaの応力下で加圧・熱サイクルを1回行った後(b)のTi-35Pd-15Pt-5Zrの電子線後方散乱回折から得られた方位マップおよび逆極点図を示す。試験片は3x3x6mmの角柱を用い、試験片の任意の3ヶ所を選択して方位マップを作成した。ここでは、結晶方向をより視覚的に捉えやすくするために、結晶方向が同じものを同じ色で着色し、結晶方向の異なるものを別の色で示している。加圧・熱サイクル前の組織は、様々なマルテンサイトバリアントによりランダムに双晶が形成されていたが、加圧・熱サイクル後は一つの結晶粒を占めるバリアントの方位の80%以上が同じ方位となっており、加圧・熱サイクル中にある方向のバリアントが優先的に成長したことがわかる。方位マップの右に、結晶方位の割合を示す逆極点図を示す。赤が80%以上の割合を示し、青は、その方位がほとんど存在しないことを示す。加圧・熱サイクル前は、場所により様々な方位のマルテンサイトバリアントが生成していることがわかるが、加圧・熱サイクル後は、[010]に近い方向に赤い色が示され、ほとんどのバリアントが[010]に近い方向を向いていることがわかる。詳細に解析すると、マルテンサイトの[010]方向は、圧縮応力に対して応力を緩和する方向であった。マルテンサイト相は変形中にバリアントの再配列を起こすことが知られており、加圧・熱サイクル中にバリアントの再配列を起こしたと考えられる。このようにバリアントが再配列した組織がマルテンサイト相からオーステナイト相への逆変態を促進することによって、合金の繰り返し特性が向上すると考えられる。
本発明のTiPd系高温形状記憶合金は、高温で起こるマルテンサイト変態を利用して形状回復を起こす材料であり、自動車やジェットエンジン等の高温部のアクチュエイター等に利用可能である。また、これら以外にも1000℃以下の温度範囲で動作するアクチュエイター、高温流体の流量や圧力制御部等に使用することも可能である。

Claims (8)

  1. 45〜55原子%のPd、および残部がTiと不可避不純物からなるTiPd系高温形状記憶合金であって、前記Tiの一部がZr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜15原子%の範囲で置換されており、マルテンサイト双晶組織の、オーステナイト相に対するマルテンサイト相のバリアントの80%以上が同一方向を示すことを特徴とするTiPd系高温形状記憶合金。
  2. 前記Pdの一部がPt、Irのうちの1種以上で、全体組成に対して0.1〜54.9原子%の範囲で置換されていることを特徴とする請求項1に記載のTiPd系高温形状記憶合金。
  3. 前記Pt、Irのうちの1種以上の元素の全体組成に対する割合が0.1〜15原子%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のTiPd系高温形状記憶合金。
  4. マルテンサイト変態温度が400℃〜1000℃であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のTiPd系高温形状記憶合金。
  5. 永久歪みが0.5%以下であることを特徴とする請求項1からのうちのいずれか一項に記載のTiPd系高温形状記憶合金。
  6. 仕事量が0.5J/cm以上であることを特徴とする請求項1からのうちのいずれか一項に記載のTiPd系高温形状記憶合金。
  7. 請求項1からのうちのいずれか一項に記載のTiPd系高温形状記憶合金を用いて作製されたことを特徴とするTiPd系高温形状記憶合金アクチュエイター。
  8. 請求項1からのうちのいずれか一項に記載のTiPd系高温形状記憶合金の製造方法であって、溶製した前記形状記憶合金の原料を、真空容器中に不活性ガスとともに封入した状態で、マルテンサイト変態温度以上のB2型立方晶領域の温度から前記形状記憶合金の液相を生じる温度より100℃を下回る温度までの範囲内で、0.5時間以上保持する溶体化処理を施した後、0℃以下の冷媒に入れて焼き入れし、目的とする応力以上かつ400MPa以下の応力下で、マルテンサイト相が安定な温度からオーステナイト相に変態が終了する温度以上の温度に上昇させた後、マルテンサイト相が安定な温度に降温させる加圧・熱サイクルを1回以上繰り返した後に目的とする応力下で加圧・熱サイクルを行うことを特徴とするTiPd系高温形状記憶合金の製造方法。
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