<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜5を参照して説明する。図1においては、保護層25、被覆層27、および第2接合部材12を省略して一点鎖線にて示している。また、図5(b)においては、第2接合部材12を省略して示している。
サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたコネクタ31とを備えている。コネクタ31は、第2接合部材12および第1接合部材14によりヘッド基体3に接合されている。なお、第2接合部材12および第1接合部材14が、本発明の接合部材である。
放熱体1は、直方体形状をなしており、基板7が載置される台部1aを有している。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。また、台部1aの上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。
ヘッド基体3は、平面視して、長方形状に形成されており、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体(不図示)に印字を行う機能を有する。
コネクタ31は、図3に示すように、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収納するハウジング10とを有している。複数のコネクタピン8は、一方がハウジング10の外部に露出しており、他方がハウジング10の内部に収容されている。複数のコネクタピン8は、ヘッド基体3の各種電極と、外部に設けられた例えば電源との電気的な導通を確保する機能を有しており、それぞれが電気的に独立している。
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
基板7は、放熱体1の台部1a上に配置されており、平面視して、矩形状をなしている。そのため、基板7は、一方の長辺7aと、他方の長辺7bと、一方の短辺7cと、他方の短辺7dとを有している。また、他方の短辺7b側に側面7eを有している。基板7は、例えば、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。蓄熱層13は、下地部13aと隆起
部13bとを備えている。下地部13aは基板7の上面の左半分にわたり形成されている。下地部13aは、発熱部9の近傍に設けられており、後述する保護層25の下方に配置されている。隆起部13bは複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状をなしている。隆起部13bは、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された保護層25に良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することで形成される。
電気抵抗層15は、蓄熱層13の上面に設けられており、電気抵抗層15上には、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。電気抵抗層15は、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。電気抵抗層15の露出領域は、図1に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。
複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1では簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、複数の個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。これらの接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極17は、主配線部17a,17dと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。主配線部17aは、基板7の一方の長辺7aに沿って延びている。副配線部17bは、基板7の一方の短辺7cおよび他方の短辺7dのそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びている。主配線部17dは、基板7の他方の長辺7bに沿って延びている。
共通電極17は、複数の発熱部9と、コネクタ31とを電気的に接続している。なお、主配線部17aの電気抵抗値を低下させるために、主配線部17aを他の共通電極17の部位より厚い厚電極部(不図示)としてもよい。
複数の個別電極19は、発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分けており、各群の発熱部9と各群に対応して設けられた駆動IC11とを電気的に接続している。
複数のIC−コネクタ接続電極21は、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数のIC−コネクタ接続電極21は、異な
る機能を有する複数の配線で構成されている。
グランド電極4は、個別電極19と、IC−コネクタ接続電極21と、共通電極17の主配線部17dとにより取り囲むように配置されており、広い面積を有している。グランド電極4は、0〜1Vのグランド電位に保持されている。
接続端子2は、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21およびグランド電極4をコネクタ31に接続するために、基板7の他方の長辺7b側に設けられている。接続端子2はコネクタピン8に対応して設けられており、コネクタ31に接続する際は、それぞれ電気的に独立するようにコネクタピン8と接続端子2とが接続されている。接続端子2は共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21およびグランド電極4と一体的に設けられている。
複数のIC−IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11を電気的に接続している。複数のIC−IC接続電極26は、それぞれIC−コネクタ接続電極21に対応するように設けられており、各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。
上記の電気抵抗層15、接続端子2、共通電極17、個別電極19、グランド電極4、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、接続端子2、共通電極17、個別電極19、グランド電極4、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、同じ工程によって同時に形成することができる。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部とIC−コネクタ接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いればよい。
駆動IC11は、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21に接続された状態で、駆動IC11の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続部の保護のため、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなるハードコート29によって封止されている。
図1,2に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。保護層25は、SiN、SiO2、SiON、SiC、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができ、保護層25を単層で構成してもよいし、これらの層を積層して構成してもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
また、図1,2に示すように、基板7上には、共通電極17、個別電極19およびIC−コネクタ接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。被覆層27は、共通電極17、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等
の付着による腐食から保護するためのものである。
なお、被覆層27は、共通電極17および個別電極19の保護をより確実にするため、図2に示すように保護層25の端部に重なるようにして形成されることが好ましい。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
被覆層27は、駆動IC11と接続される個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21を露出させるための開口部27aが形成されている。そして、開口部27aから露出したこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、被覆層27は、基板7の他方の長辺7b側に、接続端子2を露出させるための開口部27bが設けられている。開口部27bから露出した接続端子2は、コネクタピン8と電気的に接続される。
図2〜5を用いて、コネクタ31、およびコネクタ31とヘッド基体3との接合について詳細に説明する。図3(b)は、コネクタ31が基板7に装着された状態を示しており、第2接合部材12および第1接合部材14は省略している。
コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収容するハウジング10とを備えている。
図3,4に示すように、コネクタピン8は、上部コネクタピン8aと、下部コネクタピン8bと、連結部8cと、引き出し部8dとを備えている。コネクタピン8は、主走査方向に間隔をあけて複数配列されている。コネクタピン8同士は、互いに離間しており、隣り合うコネクタピン8は、電気的に絶縁されている。
上部コネクタピン8aは、接続端子2(図1参照)上に配置されている。下部コネクタピン8bは、ヘッド基体3の基板7の下方に配置されている。そして、上部コネクタピン8aと下部コネクタピン8bとにより、ヘッド基体3を挟持している。連結部8cは、上部コネクタピン8aと下部コネクタピン8bとを連結しており、厚み方向に延びるように設けられている。引き出し部8dは、ヘッド基体3から離れる方向に引き出されており、下部コネクタピン8bから連続的に設けられている。
コネクタピン8は、上部コネクタピン8aと、下部コネクタピン8bと、連結部8cと、引き出し部8dとが一体的に設けられており、上部コネクタピン8aと、下部コネクタピン8bとにより形成された空間に、ヘッド基体3が挿入されることにより、コネクタ31とヘッド基体3とが連結されている。
コネクタピン8は、導電性を有する必要があるため、金属あるいは合金により形成することができ、金属あるいは合金の板からプレス加工で打ち抜くことにより、上部コネクタピン8aと、下部コネクタピン8bと、連結部8cと、引き出し部8dとが一体的に形成されたコネクタピン8を製造することができる。
ハウジング10は、各コネクタピン8をそれぞれ電気的に独立された状態で収納する機能を有する。外部に設けられたケーブル(不図示)等の着脱により、ヘッド基体3に電気を供給している。
ハウジング10は、上面10aと、下面10bと、側面10cと、前面10dと、を備えている。ハウジング10は、上面10aと、下面10bと、側面10cと、前面10dとにより、全体として、コネクタピン8の引き出し部8d側が開口した箱形状をなしてい
る。
側面10cは、図3(b)に示すように、前面10dよりも基板7側に配置されている。そのため、ハウジング10のうち側面10cの位置決め部10fが最も基板7側に配置されており、位置決め部10fに基板7をつき当てることにより、基板7とコネクタ31との位置合わせを行っている。
図4(a)に示すように、前面10dは、凹部10d1と凸部10d2とを備えている。凹部10d1および凸部10d2は、基板7の厚み方向に前面10dの一端から他端にわたって設けられている。そして、図3(b),図4(a)に示すように、凹部10d1にコネクタピン8の連結部8cが収容されており、連結部8cの一部は、凹部10d1よりも基板7側に向けて突出している。また、連結部8cの一部は、凸部10d2よりも基板7側に向けて突出している。
ハウジング10は、絶縁性の部材により形成することができ、例えば、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、ナイロン66、ガラス入りナイロン66などの樹脂により形成することができる。
図4(b)に示すように、第1接合部材14は、ハウジング10の前面10dから突出した連結部8cを封止するように、主走査方向にわたって設けられている。図2,5(b)に示すように、第1接合部材14は、基板7と前面10dとの間の領域、および基板7と連結部8cとの間の領域に配置されている。そのため、連結部8cは、前面10dに設けられた凹部10d1と、第1接合部材14とにより封止されている。
第1接合部材14は、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により形成することができる。第1接合部材14は、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により形成されることが好ましい。それにより、生産性を向上させることができる。
図1,2,5(a)に示すように、コネクタ31とヘッド基体3とは、コネクタピン8、半田23、および第2接合部材12により固定されている。
図1,2に示すように、グランド電極4の接続端子2およびIC−コネクタ接続電極21の接続端子2上には、コネクタピン8が配置されている。図2に示すように、接続端子2と、コネクタピン8とは、半田23により電気的に接続されている。
コネクタピン8は、半田23に覆われることにより、接続端子2と電気的に接続されている。なお、半田23と接続端子2との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。それにより、接続端子2と半田23との濡れ性を高めることができる。
第2接合部材12は、図2,5(a)に示すように、上部コネクタピン8a、ハウジング10の上面10a、ヘッド基体3の上面、および第1接合部材14上に配置されている。
第2接合部材12は、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により形成することができる。第2接合部材12は、エポキシ系の熱硬化性の樹脂により形成されることが好ましい。それにより、ヘッド基体3とコネクタ31との接合強度を強固なものとすることができる。
ヘッド基体3とコネクタ31との接合方法について説明する。まず、ハウジング10に複数のコネクタピン8が収容されたコネクタ31を準備する。次に、コネクタ31の前面10d側から第1接合部材14を塗布する。第1接合部材14は、半田23(図2参照)が連結部8cを伝わって下方に流出することを抑えるように配置されており、具体的には、第1接合部材14は、前面10dから突出している連結部8c上を、主走査方向に延びるように塗布される。なお、第1接合部材14を塗布する際は、ハウジング10の位置決め部10fよりも突出しないように塗布する。そして、第1接合部材14を硬化させ、連結部8cに第1接合部材が設けられたコネクタ31を作製する。
次に、連結部8cに第1接合部材が設けられたコネクタ31とヘッド基体3とを接合する。コネクタ31の上部コネクタピン8aと下部コネクタピン8bとの間の空間に、基板7を挿通し、基板7を位置決め部10fにつき当てる。このとき、上部コネクタピン8aは、接続端子2(図1参照)上に配置されるように、基板7を挿通する。
次に、半田23を上部コネクタピン8a上に塗布する。半田23は、各コネクタピン8が導通しないように、コネクタピン8ごとに塗布する。そして、基板7の下面より加熱して半田23を溶融させ、上部コネクタピン8aと接続端子2とを導通させる。なお、半田をリフローにより、上部コネクタピン8aと接続端子2とを導通させてもよい。
次に、上部コネクタピン8aを封止するように、コネクタ31の上面10aから基板7上まで第2接合部材12を塗布する。そして、第2接合部材12を硬化することにより、ヘッド基体3とコネクタ31とを接合することができる。なお、第2接合部材12は、上部コネクタピン8a上に設けられていればよく、必ずしも封止する必要はない。
そして、コネクタ31が接合されたヘッド基体3を、上面に両面テープが設けられた放熱体1上に載置することにより、サーマルヘッドX1を作製することができる。
ここで、開口部27bの近傍に配置された接続端子2に、未硬化の被覆層27がにじみ出す場合がある。それにより、接続端子2上に被覆層27のにじみが形成される場合がある。
そして、接続端子2上に位置する上部コネクタピン8a上に半田23を設けて、半田23を溶融させた場合、被覆層27のにじみ等の存在により接続端子2の濡れ性が低下する可能性がある。その結果、溶融した半田23は、上部コネクタピン8aと一体的に形成された連結部10cを介して、下部コネクタピン8bまで流れ出る可能性があり、上部コネクタピン8aと接続端子2との導通を確保できない場合がある。
これに対して、サーマルヘッドX1は、第1接合部材14が、半田23が連結部8cを伝わって下方へ流出することを抑えるように配置されている。そのため、上部コネクタピン8aを通じて移動した半田23は、ハウジング10と第1接合部材14とに堰き止められることとなり、半田23が下部コネクタピン8bに流れ出る可能性を低減することができる。その結果、接続端子2と上部コネクタピン8aとの電気的な導通を確保することができる。
すなわち、第1接合部材14とハウジング10とが、連結部8cの周方向に隙間なく設けられた環状部を形成しており、この環状部により半田23を堰き止めることができ、接続端子2と上部コネクタピン8aとの電気的な導通を確保することができる。なお、連結部8cを封止するとは、連結部8cのすべての面が露出しないように第1接合部材14およびハウジング10を配置することである。
また、サーマルヘッドX1は、ヘッド基体3とコネクタ31とが、第1接合部材14および第2接合部材12により接合されている。そのため、半田23の流出を防止する機能と、接合強度を確保する機能とを、第1接合部材14および第2接合部材12にそれぞれ持たせることができる。
すなわち、サーマルヘッドX1は、第1接合部材14が半田23の流出を防止するように機能し、第2接合部材12がヘッド基体3とコネクタ31との接合強度を確保するように機能する構成となる。その結果、接続端子2と上部コネクタピン8aとの導通を確保しつつ、ヘッド基体3とコネクタ31とを強固に接合することができる。
また、第1接合部材14を光硬化性の樹脂により形成し、第2接合部材12を熱硬化性の樹脂により形成することが好ましい。連結部8cを封止する第1接合部材14として光硬化性の樹脂を用いることにより生産性を向上させることができ、ヘッド基体3とコネクタ31とを接合する第2接合部材12として熱硬化性の樹脂を用いることにより接合強度を向上させることができる。
また、連結部8cは、一部がハウジング10の前面10dに埋設されている。そのため、コネクタ31に外力が加わり、コネクタピン8に応力が生じた場合においても、ハウジング10dの前面10dがコネクタピン8の移動を抑制し、コネクタ31がヘッド基体3から剥離する可能性を低減することができる。
そして、ハウジング10から露出した連結部8cに第1接合部材14が設けられていることから、第1接合部材14上に設けられた第2接合部材12が、下方へ流れ出る可能性を低減することができる。それにより、コネクタ31上に設けられた第2接合部材12が不足する可能性を低減することができ、コネクタ31とヘッド基体3との接合強度を確保することができる。
なお、上部コネクタピン8aに半田を塗布する例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、接続端子2上にめっき層を設け、めっき層上に半田23を形成した後に、上部コネクタピン8aを載置してもよい。その場合においても、半田23の流出を抑制することができる。
また、サーマルヘッドX1では、連結部8cがハウジング10の前面10dに埋設されている例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、連結部8cがハウジング10の前面10dに当接し、連結部8cのうち前面10dに当接していない部位に、半田23の流出を抑えるように第1接合部材14が設けられていてもよい。少なくとも、ハウジング10と第1接合部材14とが、連結部8cの周方向に連結部8cの周囲を被覆するように環状に設けられていればよく、環状に設けられた第1接合部材14の下方に位置する連結部8cが露出していてもよい。
なお、第1接合部材14とハウジング10とが、連結部8cの全体を封止することが好ましい。すなわち、連結部10cが、ハウジング10の前面10dと、第1接合部材14により封止される構成とすることで、上部コネクタピン8aを通じて移動した半田23は、ハウジング10と第1接合部材14とにより完全に堰き止められることとなる。その結果、半田23が下部コネクタピン8bに流れ出る可能性を低減することができ、サーマルヘッドX1の信頼性を向上させることができる。
次に、サーマルプリンタZ1について、図6を参照しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1
と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図6の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタZ1は、図6に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
図7を用いてサーマルヘッドX2について説明する。なお、サーマルヘッドX1と同一の部材については同一の符号を付し、以下同様とする。
図7に示すように、コネクタ131は、前面110dに、縦溝110d3が設けられている。コネクタピン8は、前面110dの凹部110d1に埋設されており、凹部110d1と連結部8cとの間に隙間が生じていない構成となっている。また、連結部8cは、前面110dから突出しないように設けられている。
凹部110d1は、前面110において、基板7の厚み方向の一端から他端にわたって設けられている。凹部110d1の主走査方向の幅は、コネクタピン8の主走査方向の幅と略等しく設けられており、凹部110d1と連結部8cとの間に隙間が生じていない構成となっている。
縦溝110d3は、前面110において、基板7の厚み方向の一端から他端にわたって設けられている。縦溝110d3は、平面視して、隣り合うコネクタピン8の間に配置されている。また、縦溝110d3は、平面視して、側面110cと、側面110cと隣り合うコネクタピン8との間にも配置されている。
サーマルヘッドX2は、例えば以下のようにして作製することができる。まず、ヘッド基体3をコネクタ131の上部コネクタピン8aと下部コネクタピン8bとの間に挿通し、上面131a側から第1接合部材114を塗布した後に、第1接合部材114を硬化させる。次に、第2接合部材12(図5参照)を塗布、硬化することにより作製することができる。
サーマルヘッドX2は、隣り合うコネクタピン8の間に縦溝110d3が配置されていることにより、上面110a側から第1接合部材112を塗布しても、連結部8cとヘッド基体3との間に第1接合部材112を配置することができる。
すなわち、第1接合部材112は、縦溝110d3を通ることにより、前面110dとヘッド基体3との間の領域に導かれることとなり、連結部8cとヘッド基体3との間に第1接合部材112が配置されることになる。その結果、連結部8cを前面110dと第1接合部材112とにより封止することができ、半田の流出を抑制することができる。
また、コネクタ231をヘッド基体3に接合させた後に、第1接合部材114を塗布することで、コネクタ231とヘッド基体3との間に隙間なく第1接合部材114を充填することができる。それにより、連結部8cをさらに封止することができる。
<第3の実施形態>
図8を用いてサーマルヘッドX3について説明する。また、図8(b)はコネクタピン8近傍の断面図を示し、図8(c)は縦溝210d3近傍の断面図を示している。図8(b),(c)は、コネクタ231と第1接合部材214のみ示しており、図9においても同様である。
コネクタ231は、前面210dに、凹部210d1と、縦溝210d3と、横溝210d4とを備えている。凹部210d1は、サーマルヘッドX2と同様であり説明を省略する。
横溝210d4は、主走査方向に沿って延びるように設けられており、前面210dの一端から他端にわたって設けられている。縦溝210d3は、基板7の厚み方向に延びるように設けられており、前面210dの上端から横溝210d4まで設けられている。そのため、横溝210d4は、連結部8cに対応する部位にも設けられている。
サーマルヘッドX3は、主走査方向に沿って延びる横溝210d4を備えている。そのため、第1接合部材214が、横溝210d4の内部を通って、前面210dと、連結部8cまたはヘッド基体3との間に配置されることとなる。その結果、連結部8cをさらに封止することができ、半田の流出を抑えることができる。
特に、前面210dと連結部8cとの間に第1接合部材214を配置することができ、半田が連結部8cの前面210d側に回り込んだ場合においても、第1接合部材214により堰き止めることができる。
また、サーマルヘッドX3は、横溝210d4に繋がった状態で縦溝210d3が設けられている。そのため、上面210aから塗布された第1接合部材214は、縦溝210
d3を通って、前面210dとヘッド基体3との間に導かれ、横溝210d4を通って主走査方向に広がることとなる。その結果、連結部9cをさらに封止することができる。
なお、横溝210d4に繋がった縦溝210d3を設けた例を示したが、縦溝210d3は必ずしも設けなくともよい。
<第4の実施形態>
図9を用いてサーマルヘッドX4について説明する。
サーマルヘッドX4は、コネクタ331の前面310が、凹部310d1と、縦溝310cと、横溝310d4と、穴部310d5とを備えている。穴部310d5を備える点以外、サーマルヘッドX3と同一であり説明を省略する。
穴部310d5は、コネクタピン8に対応して設けられている。すなわち、正面視して、コネクタピン8の背後に穴部310d5が配置されている。穴部310d5は、横溝310d4に連通して設けられており、横溝310d4よりも深さが深くなっている。
サーマルヘッドX4は、コネクタピン8に対応する部位に穴部310d5を有している。そして、穴部310d5には、第1接合部材312が充填されている。そのため、コネクタピン8の連結部8cの周囲に位置する第1接合部材312の量を増加させることができる。その結果、連結部8cの封止性をさらに向上することができる。
なお、正面視して、穴部310d5の形状が円形状をなしている例を示したがこれに限定されるものではない。穴部310d5は、正面視して、楕円形状、矩形状、あるいは三角形状であってもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X4をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X4を組み合わせてもよい。
サーマルヘッドX1〜X4では、コネクタ31が、配列方向の中央部に配置された例を示したが、配列方向の両端部に設けてもよい。
また、サーマルヘッドX1では、蓄熱層13に隆起部13bが形成され、隆起部13b上に電気抵抗層15が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13に隆起部13bを形成せず、電気抵抗層15の発熱部9を、蓄熱層13の下地部13a上に配置してもよい。また、蓄熱層13を基板7の上面の全域にわたって設けてもよい。
また、サーマルヘッドX1では、電気抵抗層15上に共通電極17および個別電極19が形成されているが、共通電極17および個別電極19の双方が発熱部9(電気抵抗体)に接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を構成してもよい。
さらにまた、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示して示したが、これに限定されるものではない。例えば、各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成することにより、発熱部9の厚い厚膜ヘッドに本発明
を用いてもよい。さらに、発熱部9を基板の端面に形成する端面ヘッドに本技術を用いてもよい。
なお、第2接合部材12を、駆動IC11を被覆するハードコート29とを同じ材料により形成してもよい。その場合、ハードコート29を印刷する際に、第2接合部材12が形成される領域にも印刷して、ハードコート29と第2接合部材12とを同時に形成してもよい。