<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜7を参照して説明する。図1では、保護層25、被覆層27、および被覆部材12を省略して一点鎖線にて示している。また、図7では、保護層25、被覆層27、および被覆部材12を省略しており、第2接合部材16の位置をドットにより示しており、図9〜12でも同様である。
サーマルヘッドX1は、放熱板1と、放熱板1上に配置されたヘッド基体3と、放熱体1とヘッド基体3とを接合するための第1接合部材14と、放熱体1とヘッド基体3とを接合するための第2接合部材16と、ヘッド基体3に接続されたコネクタ31とを備えている。
放熱板1は、直方体形状をなしており、基板7が載置される台部1aを有している。放熱板1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。台部1aの上面には、第1接合部材14によってヘッド基体3が接着されている。
ヘッド基体3は、平面視して、長方形状に形成されており、ヘッド基体3を構成する基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体P(図8参照)に印字を行う機能を有する。
第1接合部材14は、放熱体1とヘッド基体3との間に配置されており、放熱体1の上面とヘッド基体3とを接合している。
第2接合部材16は、放熱体1の側面に隣り合うように配置されており、放熱体1の側面とヘッド基体3とを接合している。
コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収納するハウジング10とを有している。複数のコネクタピン8は、一方がハウジング10の外部に露出しており、他方がハウジング10の内部に収容されている。複数のコネクタピン8は、ヘッド基体3の各種電極と、外部に設けられた電源との電気的な導通を確保する機能を有しており、それぞれが電気的に独立している。なお、ハウジング10は必ずしも設けなくてもよい。
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
基板7は、放熱板1の台部1a上に配置されており、平面視して、矩形状をなしている。基板7は、一方の長辺7aと、他方の長辺7bと、一方の短辺7cと、他方の短辺7dとを有している。また、他方の長辺7b側に側面7eを有している。基板7は、例えば、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。蓄熱層13は、下地部13aと隆起部13bとを備えている。下地部13aは、基板7の上面の左半分にわたり形成されている。また、下地部13aは、発熱部9の近傍に設けられており、後述する保護層25の下方に配置されている。隆起部13bは、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状をなしている。また、隆起部13bは、印画する記録媒体Pを、発熱部9上に形成された保護層25に良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。そのため、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することにより形成される。
電気抵抗層15は、蓄熱層13の上面に設けられており、電気抵抗層15上には、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。電気抵抗層15は、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。電気抵抗層15の露出領域は、図1に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。
複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1では簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、接続端子2、グランド電極4、共通電極17、複数の個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。これらの接続端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極17は、主配線部17a,17dと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。主配線部17aは、基板7の一方の長辺7aに沿って延びている。副配線部17bは、基板7の一方の短辺7cおよび他方の短辺7dのそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びている。主配線部17dは、基板7の他方の長辺7bに沿って延びている。それにより、共通電極17は、複数の発熱部9と、コネクタ31とを電気的に接続している。
複数の個別電極19は、発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また
、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分けており、各群の発熱部9と各群に対応して設けられた駆動IC11とを電気的に接続している。
複数のIC−コネクタ接続電極21は、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数のIC−コネクタ接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。
グランド電極4は、個別電極19と、IC−コネクタ接続電極21と、共通電極17の主配線部17dとにより取り囲むように配置されており、0〜1Vのグランド電位に保持されている。
接続端子2は、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21およびグランド電極4をコネクタ31に接続するために、基板7の他方の長辺7b側に設けられている。接続端子2はコネクタピン8に対応して設けられており、コネクタ31に接続する際は、それぞれ電気的に独立するように、コネクタピン8と接続端子2とが接続されている。なお、接続端子2は、各種電極に接続されていてもよく、各種電極の一部により形成されていてもよい。
複数のIC−IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11を電気的に接続している。複数のIC−IC接続電極26は、それぞれIC−コネクタ接続電極21に対応するように設けられており、各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。
上記の電気抵抗層15、接続端子2、共通電極17、個別電極19、グランド電極4、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、接続端子2、共通電極17、個別電極19、グランド電極4、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、同じ工程によって同時に形成することができる。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部とIC−コネクタ接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いればよい。
駆動IC11は、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる封止樹脂29によって封止されている。
図1,2に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。保護層25は、SiN、SiO2、SiON、SiC、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができ、保護層25を単層で構成してもよいし、これらの層を積層して構成してもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
また、基板7上には、共通電極17、個別電極19およびIC−コネクタ接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。被覆層27は、共通電極17、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
被覆層27は、駆動IC11と接続される個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21を露出させるための開口部27aが形成されている。そして、開口部27aから露出したこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、被覆層27は、基板7の他方の長辺7b側に、接続端子2を露出させるための開口部27bが設けられている。開口部27bから露出した接続端子2は、コネクタピン8と電気的に接続されている。
コネクタ31とヘッド基体3とは、コネクタピン8、半田23、および被覆部材12により固定されている。図1,2に示すように、グランド電極4の接続端子2およびIC−コネクタ接続電極21の接続端子2上には、コネクタピン8が配置されている。図2に示すように、接続端子2と、コネクタピン8とは、半田23により電気的に接続されている。
半田23は、Pb系の半田を例示することができる。コネクタピン8は、半田23に覆われることにより、接続端子2と電気的に接続されている。なお、半田23と接続端子2との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。
図3〜6に示すように、コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、複数のコネクタピン8を収容するハウジング10とを備えている。コネクタ31は、コネクタピン8により基板7を挟持することにより、基板7と接合されている。
コネクタピン8は、第1コネクタピン8aと、第2コネクタピン8bと、連結部8cと、引出部8dとを備えている。コネクタピン8は、第1コネクタピン8aと第2コネクタピン8bとが連結部8cにより連結されており、連結部8cから基板7とは反対側に引出部8dが引き出されている。複数のコネクタピン8は、主走査方向に間隔をあけて配列されている。コネクタピン8同士は、互いに離間しており、異なる信号が送られる隣り合うコネクタピン8は、互いに電気的に絶縁されている。
第1コネクタピン8aは、接続端子2(図1参照)上に配置されている。第2コネクタピン8bは、ヘッド基体3の基板7の下方に配置されており、第1コネクタピン8aと第2コネクタピン8bとにより基板7を挟持している。連結部8cは、第1コネクタピン8aと第2コネクタピン8bとを連結しており、基板7の厚み方向に延びるように設けられている。引出部8dは、ヘッド基体3から離れる方向に引き出されており、ハウジング10に接合されている。
第2コネクタピン8bは、第1部位8b1と、第2部位8b2と、接触部8b3とを有している。第1部位8b1は、連結部8cから遠ざかる方向に延びている。第2部位8b2は、第1部位8b1から連続して設けられ、第1部位8b1に対して傾斜しつつ連結部8cに近づく方向に延びている。接触部8b3は、基板7の下面と接触している。そのため、第2コネクタピン8bは、第1部位8b1と第2部位8b2とが連続的に形成されており、第1部位8b1と第2部位8b2との接続領域で湾曲した形状をなしている。
連結部8cは、第1コネクタピン8aと第2コネクタピン8bとを連結しており、基板
7の厚み方向に延びるように設けられている。連結部8cには、引出部8dが接続されており、外部からケーブル(不図示)を引出部8dに接続することにより、サーマルヘッドX1に電圧が供給される。
コネクタピン8は、導電性を有する必要があるため、金属あるいは合金により形成することができる。また、コネクタピン8は、第1コネクタピン8aと、第2コネクタピン8bと、連結部8cと、引出部8dとが一体的に形成されていることが好ましく、例えば、金属の薄板を打ち抜き加工することにより形成することができる。
ハウジング10は、上壁10aと、下壁10bと、側壁10cと、前壁10dと、支持部10eと、位置決め部10fとを備えている。ハウジング10は、上壁10aと、下壁10bと、側壁10cと、前壁10dとにより、コネクタピン8の引出部8d側に開口部分を形成している。位置決め部10fは、挿通されたヘッド基体3の位置決めを行う機能を有している。
支持部10eは、側壁10cから基板7の下方へ向けて突出した状態で設けられており、支持部10eと基板7とは離間した状態で配置されている。また、支持部10eは、コネクタピン8よりもハウジング10から突出している。
ハウジング10の前壁10dには、引出部8dを引き出すための貫通孔(不図示)が設けられている。また、ハウジング10を正面視すると、貫通孔をとおりハウジング10の厚み方向に沿った溝(不図示)が設けられている。そして、連結部9cが溝に収容されており、コネクタピン8の一部がハウジング10に埋設される構造となっている。
ハウジング10は、絶縁性の部材により形成することができ、例えば、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、ナイロン66、ガラス入りナイロン66などの樹脂により形成することができる。なお、ハウジング10は、必ずしも設ける必要はない。その場合、クリップ式のコネクタピン8を用いればよい。
被覆部材12は、接続端子2、および第1コネクタピン8aが外部に露出しないように設けられており、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂、熱軟化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂、あるいは可視光硬化性の樹脂により形成することができる。
被覆部材12は、接続端子2および第1コネクタピン8aの電気的な接続を強固なものとするとともに、接続端子2および第1コネクタピン8aの接続部が腐食することを抑えるために設けられている。
被覆部材12は、第1コネクタピン8a上および第2コネクタピン8bの下方に設けられている。第1コネクタピン8a側に設けられた被覆部材12は、ハウジング10の上壁10a、側壁10c、および基板7の被覆層27上にも設けられている。そのため、接続端子2、および第1コネクタピン8aが外部に露出しないように設けられており、第2コネクタピン8bの一部が露出した状態で配置されている。
また、第2コネクタピン8b側に設けられた被覆部材12は、支持部10e、および側壁10c上にも設けられている。第2コネクタピン8b側に設けられた被覆部材12は、主走査方向における両端部および中央部に、ハウジング10から突出するように設けられている。
図7を用いて第1接合部材14と第2接合部材16について詳細に説明する。
第1接合部材14は、基板7の下面と、放熱体1の上面との間に配置されており、基板7の下面と、放熱体1の上面とを接合している。第1接合部材14は、基部14aと、切欠部14bとを備えている。第1接合部材14は、放熱体1側から見て、放熱体1の背後に位置するように設けられている。
基部14aは、基板7の主走査方向の全域にわたって配置されており、放熱体1の副走査方向の全域にわたって配置されている。
切欠部14bは、基部14aのコネクタ31側に位置する長辺に設けられており、主走査方向に基部14aから切り欠かれて複数設けられている。切欠部14bは、主走査方向において、コネクタ31が配置されていない領域に設けられている。また、切欠部14bは、基板7の下面と放熱体1の上面との間に配置されている。
第1接合部材14としては、基材上に接着剤が設けられた両面テープ、あるいは、基材レスの両面テープ等を用いることができる。第1接合部材14の厚みとしては、20〜50μmとすることができる。このような厚みとすることにより、毛細管現象により第2接合部材16を切欠部14b内に収容することができる。
第2接合部材16は、基板7の側面に隣り合うように配置されており、基板7の側面と、放熱板1とを接合している。第2接合部材16は、第1部位16aと、第2部位16bとを備えており、切欠部14bに隣り合うように配置されている。第2接合部材16の一部が切欠部14bに収容されており、第1部位16aとなっている。また、第2接合部材16のうち切欠部14bに収容されていない部位が第2部位16bとなっている。
第2接合部材16は、基板7の側面に隣り合うように配置されており、基板7の副走査方向におけるずれが生じる可能性を低減する機能を有している。第2接合部材16としては、エポキシ、あるいはシリコーン系の樹脂材料を用いることができる。また、熱硬化性樹脂、熱軟化性樹脂、あるいは紫外線硬化性樹脂を用いることができる。
以下、サーマルヘッドX1の各部材の接合について説明する。
まず、ヘッド基体3をコネクタ31の第1コネクタピン8aと第2コネクタピン8bとの間に、第2コネクタピン8bを押圧した状態で挿入し、位置決め部10fに基板7を突き当てる。そして、第2コネクタピン8bに対する押圧力を解除し、第2コネクタピン8bの弾性変形により、第1コネクタピン8aと接続端子2とを接触させる。次に、第1コネクタピン8aに半田23を印刷により塗布、リフローしてヘッド基体3とコネクタ31とを接合する。
次に、第1コネクタピン8aおよび接続端子2を被覆するように、被覆部材12をスクリーン印刷、あるいはディスペンサーにより塗布、硬化する。第1コネクタピン8a側の被覆部材12が硬化した状態で、第2コネクタピン8bの一部が露出するように被覆部材12をスクリーン印刷、あるいはディスペンサーにより塗布、硬化する。
続いて、放熱板1の上面に第1接合部材14を接着させ、コネクタ31が接合されたヘッド基体3を第1接合部材14上に載置する。次に、放熱体1側から、切欠部14bに隣り合うように第2接合部材16をディスペンサーにより塗布、硬化する。このようにして、サーマルヘッドX1の各部材を接合することができる。
サーマルヘッドX1は、第2接合部材16が、切欠部14bに隣り合うように配置され
ており、第2接合部材16の一部が切欠部14bに配置される構成を有している。そのため、第2接合部材16を塗布した際に、第2接合部材16が主走査方向に沿って流動する可能性を低減することができる。それにより、第2接合部材16を所望の位置に留まらせることができる。
すなわち、サーマルヘッドX1は、第2接合部材16を所望の位置に留まらせることができるため、設計した位置にて基板7の側面と放熱体1とを第2接合部材16により接合することができる。また、第2接合部材16が主走査方向に沿って流動する可能性を低減することから、第2接合部材16の厚み方向における高さが小さくなる可能性を低減することができる。そのため、基板7の副走査方向に対するずれが生じる可能性を低減することができる。
また、第2接合部材16が切欠部14bに収容された第1部位16aを有することから、第1接合部材14に加えて第2接合部材16の第1部位16aにより、基板7の下面と放熱体1の上面とを接合することができる。そのため、ハンドリング性の良い第1接合部材14により基板7の下面と放熱体1の上面を接合しつつ、接合力の高い第2接合部材16により、基板7の下面と放熱体1の上面との接合をさらに強固なものとすることができる。
また、切欠部14bは、第2接合部材16により充填されている。そのため、基板7の下面と放熱体1の上面との接合領域の全域にわたって、第1接合部材14および第2接合部材16を配置することができ、基板7と放熱体1との接合を強固なものとすることができる。
なお、切欠部14bが充填されているとは、切欠部14bと、基板7の下面と、放熱体1の上面とにより囲まれる空間のうち、第2接合部材16が90%以上の割合で配置されているものも含む概念である。
なお、サーマルヘッドX1では、切欠部14bが第2接合部材16により充填されている例を示したが、切欠部14bが第2接合部材16により充填されていなくてもよい。第2接合部材16の一部のみが切欠部14bに配置されていてもよい。
また、切欠部14bを主走査方向に複数設けた例を示したがこれに限定されるものではない。切欠部14bは、主走査方向に1つのみ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。また、切欠部14bをコネクタ31に対応しない領域に設けた例を示したが、これに限定されるものではない。切欠部14bをコネクタ31に対応する領域に設けてもよい。
次に、サーマルプリンタZ1について、図8を参照しつつ説明する。
図8に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図8の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機
能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタZ1は、図8に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
図9を用いてサーマルヘッドX2について説明する。なお、同一の部材については同一の符号を付し、以下同様とする。
サーマルヘッドX2は、ヘッド基体3と、放熱体1と、コネクタ31と、第1接合部材114と、第2接合部材116とを有している。第1接合部材114は、基部114aと切欠部114bとを備えており、平面視して、切欠部114bが円弧状をなしている。
平面視して、切欠部114bが円弧状をなしているため、第2接合部材116を塗布した場合に、第2接合部材116が切欠部114b内に流動していくと同時に、切欠部114bの内部に存在した空気が、切欠部114bの円弧に沿って外部に流動することとなる。それゆえ、切欠部114bの内部に気泡が残存する可能性を低減することができ、基板7と放熱体1との接合強度が低下する可能性を低減することができる。
なお、サーマルヘッドX2では、切欠部114bが楕円の一部を形成する円弧状をなしている例を示したがこれに限定されるものではない。切欠部114bが円の一部を形成する円弧状をなしていてもよい。
<第3の実施形態>
図10を用いてサーマルヘッドX3について説明する。
サーマルヘッドX3は、ヘッド基体3と、放熱体1と、コネクタ31と、第1接合部材214と、第2接合部材216とを有している。第1接合部材214は、基部214aと切欠部214bと、突出部214cとを備えている。
突出部214cは、平面視して、切欠部214bに隣り合うように配置されており、放熱体1から、コネクタ31側に向けて突出するように設けられている。そのため、放熱体1側から見て、放熱体1と、第1接合部材214と、ヘッド基体3とを接合すると、突出部214cが放熱体1から突出した形状となる。
そのため、第2接合部材216を塗布した場合に、第2接合部材216が突出部214cにより堰きとめられることとなり、第2接合部材216を切欠部214b内に効率よく収容することができる。
突出部214cの突出長さは、例えば、1〜3.5mmであることが好ましく、突出部214cの主走査方向における長さは、例えば、4.0〜7.0mmであることが好ましい。この寸法とすることで、第2接合部材216が主走査方向へ流動する可能性を低減することができる。
また、突出部214c上に第2接合部材216の一部が設けられていてもよい。それにより、突出部214cにめくれが生じにくくなり、第1接合部材216が基板7から剥離する可能性を低減することができる。
第2接合部材216は、第1部位216aと第2部位216bとを有しており、第2部位216bの体積が、第1部位216aの体積よりも大きくなっている。そのため、第2接合部材216が、基板7の副走査方向におけるずれが生じる可能性を小さくするとともに、基板7と放熱体1との接合強度を向上させることができる。
なお、第1部位216aの体積は、切欠部214aと、放熱体1の上面と、基板7の下面とにより囲まれた空間に位置する第2接合部材216の体積であり、第2部位216bの体積は、第1部位216a以外の第2接合部材216の体積である。
<第4の実施形態>
図11を用いてサーマルヘッドX4について説明する。
サーマルヘッドX4は、ヘッド基体3と、放熱体1と、コネクタ31と、第1接合部材314と、第2接合部材216とを有している。第1接合部材314は、基部314aと切欠部314bと、突出部314cとを備えている。
切欠部314bは、第1切欠部314b1と、第2切欠部314b2とを有しており、第1切欠部314b1と、第2切欠部314b2とは、主走査方向に配列されている。突出部314cは、第1突出部314c1と、第2突出部314c2とを有している。
第1突出部314c1は、第1切欠部314b1に隣り合うように設けられており、第2突出部314c2は、第2切欠部314b2に隣り合うように設けられている。そして、第1突出部314c1と第2突出部314c2とが、主走査方向に連結され突出部314cを形成している。
言い換えると、第1突出部314cは、主走査方向に延びるように設けられており、主走査方向における両端部に設けられた突出部314cも、主走査方向に延びるように設けられている。
そのため、突出部314cと基板7との接触面積を増加させることができ、突出部314cが基板7から剥離しにくい構成となる。その結果、突出部314cから第1接合部材
314が剥離し始める可能性を低減することができ、第1接合部材316が基板7から剥離する可能性を低減することができる。
また、突出部314cが、主走査方向に延びるように設けられており、突出部314cが設けられていない領域に切欠部314bが設けられている。そのため、突出部314cが第2接合部材216を堰きとめることにより、切欠部314b内に効率よく第2接合部材216を流動させるとともに、第2接合部材216を副走査方向へ流動させることができる。その結果、副走査方向に基板7のずれが生じる可能性を低減することができる。
<第5の実施形態>
図12を用いてサーマルヘッドX5について説明する。なお、図12(a)に示す第1接合部材414は他の部材と接合前の状態を示しており、図12(b)に示す第1接合部材414は他の部材と接合する際の状態を示している。また、撥水膜418の位置を網掛にて示している。
サーマルヘッドX5は、ヘッド基体3と、放熱体1と、コネクタ31と、第1接合部材414と、第2接合部材216とを有している。第1接合部材414は、サーマルヘッドX4の第1接合部材314上に設けられた撥水膜418を有している。
撥水膜418は、平面視して、第1接合部材314と同形状をなしており、基部418aと、切欠部418bと、突出部418cと、切れ込み部418dとを有している。基部418aは基部318aと同形状をなしており、切欠部418bは切欠部318bと同形状をなしており、突出部418cは突出部318cと同形状をなしている。
切れ込み部418dは、突出部418c上に設けられており、主走査方向に延びるように設けられている。そして、切れ込み部418dから基部418a側の撥水膜418は、サーマルヘッドX5を接合する際に取り除き、切れ込み部418dから突出部418c側の撥水膜418は、取り除かずにサーマルヘッドX5を接合する。そのため、突出部418c上に撥水膜418が設けられた構成となる。
そのため、基板7と放熱体1とから露出した第1接合部材418の突出部418cに、水などが付着した場合においても、撥水膜418により撥水することができる。そのため、突出部418cが外部環境により劣化する可能性を低減することができ、サーマルヘッドX5の長期信頼性を向上することができる。
また、突出部418cに撥水膜418が設けられることにより、第2接合部材216が突出部418c上に載置されにくくなる。その結果、第2接合部材216が主走査方向に流動する可能性をさらに低減することができる。
撥水膜418としては、紙あるいはフィルムに剥離剤を塗布したものを例示することができ、例えば、上質紙にポリエチレンラミネート加工したものを例示することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X5をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X5を組み合わせてもよい。
また、蓄熱層13に隆起部13bを形成せず、電気抵抗層15の発熱部9を、蓄熱層13の下地部13a上に配置してもよい。また、蓄熱層13を基板7の上面の全域にわたっ
て設けてもよい。
また、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を構成してもよい。
さらにまた、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示して示したが、これに限定されるものではない。例えば、各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成することにより、発熱部9の厚い厚膜ヘッドに本発明を用いてもよい。さらに、発熱部9を基板の端面に形成する端面ヘッドに本技術を用いてもよい。
なお、被覆部材12を、駆動IC11を被覆する封止樹脂29とを同じ材料により形成してもよい。その場合、封止樹脂29を印刷する際に、被覆部材12が形成される領域にも印刷して、封止樹脂29と被覆部材12とを同時に形成してもよい。