<第1の実施形態>
以下、本発明のサーマルヘッドに係る第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1〜5に示すように、本実施形態に係るサーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に載置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に電気的に接続された、配線基板5とを備えている。なお、配線基板5としてフレキシブル配線基板(FPC)を用いて、以下説明する。
図1〜5に示すように、放熱体1は、導電性を有しており、平面視して長方形状である板状の基部1aと、基部1aの一面上に載置され、基部1aの一方の長辺に沿って延びる突起部1bとを備えている。なお、第1の実施形態に係るサーマルヘッドX1のように、1つの部材により一体的に放熱体1を形成してもよく、基部1aと突起部1bとを別体として設けてもよい。放熱体1は、伝熱効果を高めるために、例えば、鉄、銅、またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱するように機能している。
放熱体1は、上記のように金属により作製すると、70〜450(W/m・K)と熱伝導率が高く、伝熱効果が高いために外部に効果的に放熱することができる。
図1,2に示すように、ヘッド基体3は、平面視して長方形状の基板7を備えている。基板7は、発熱部9が設けられた第1端面7aと、第1端面7aの反対側に位置する第2端面7bと、駆動IC11が設けられる第1主面7cと、第1主面7cの反対側に位置する第2主面7dとにより構成されている。
また、ヘッド基体3は、基板7の長手方向に沿って延びる第1端面7a上に設けられ、基板7の長手方向に沿って配列された複数の発熱部9と、発熱部9の配列方向に沿って基板7の第1主面7c上に並べて配置された複数の駆動IC11とを備えている。
ヘッド基体3は、放熱体1の基部1aの突起部1bが設けられた面に、突起部1bと間隙8をあけて載置されており、第2端面7bが、放熱体1の突起部1bに対向して配置さ
れている。また、ヘッド基体3の下面、より詳細には、絶縁層である第3保護層29の下面と基部1aの上面とが両面テープ、あるいは絶縁性の樹脂等の接着剤12によって接着されており、これによってヘッド基体3が電気的に絶縁された状態で基部1aに載置されている。
接着剤12は、例えば、アクリル系粘着剤を使用した両面テープを用いることができる。また、ヘッド基体3と放熱体1とを接合させる機能を有していればよく、両面テープの代わりに、絶縁性の接着剤を用いてもよい。絶縁性の接着剤としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等を主成分とする樹脂系接着剤等を用いることができる。
基板7は、図3,4に示すように、第1端面7aが外側に突出している。基板7を形成する材料としては、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料、あるいは単結晶シリコーン等の半導体材料等を例示することができる。
図3、4に示すように、基板7の第1端面7aには、蓄熱層13が形成されている。基板7の第1端面7aは断面視で凸状の曲面形状を有しており、第1端面7a上に蓄熱層13が形成されている。また、蓄熱層13の表面も曲面形状となっている。蓄熱層13は、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された後述する第1保護層25に良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。なお、本実施形態では、図3、4に示すように蓄熱層13が基板7の第1端面7a上にのみ形成されており、発熱部9に近い位置で蓄熱することができるため、サーマルヘッドX1の熱応答特性をより効果的に向上させることできる。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の第1端面7a上に塗布し、これを焼成することにより形成される。
図3に示すように、基板7の第1主面7c上、蓄熱層13上、ならびに基板7の第2主面7dおよび第2端面7b上には、電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13と、一対の電極のうち一方の電極である個別電極19と、一対の電極のうち他方の電極である共通電極17との間に介在している。また、駆動IC11と配線基板5とを接続するIC−FPC接続電極21が第1主面7c上に設けられている。
基板7の第1主面7c上に位置する電気抵抗層15の領域は、図1に示すように平面視において、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21と同形状に形成されている。
蓄熱層13上に位置する電気抵抗層15の領域は、図2に示すように、側面視において、共通電極17および個別電極19と同形状に形成された領域と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の領域(以下、露出領域という)とを有している。
基板7の第2主面7d上に位置する電気抵抗層15の領域は、図3,4に示すように、基板7の第2主面7d全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
このように電気抵抗層15の各領域が形成されているため、図1では、電気抵抗層15
は、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21で隠れており、図示されていない。また、図2では、電気抵抗層15は、共通電極17および個別電極19で隠れており、露出領域のみ図示している。
電気抵抗層15の各露出領域は、電圧が印加されることにより発熱し、上記の発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図2に示すように、蓄熱層13上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、図2では簡略化して記載しているが、例えば、180dpi〜2400dpi等の密度で配置されている。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1〜4に示すように、電気抵抗層15上には、共通電極17、複数の個別電極19および複数のIC−FPC接続電極21が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
以下、これらの電極について図1〜6を用いて詳細に説明する。
複数の個別電極19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1,2に示すように、各個別電極19は、一端が発熱部9に接続され、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にわたって個別に帯状に延びている。
各個別電極19の他端は、駆動IC11の配置領域に配置されており、各個別電極19の他端が駆動IC11に接続されることにより、各発熱部9と駆動IC11との間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数のIC−FPC接続電極21は、駆動IC11と配線基板5とを接続するためのものであり、駆動IC11に電気的な信号を送るように形成されている。図1に示すように、各IC−FPC接続電極21は、基板7の第1主面7c上に帯状に延びており、一端が駆動IC11の配置領域に配置され、他端が基板7の第1主面7c上に位置する後述する共通電極17の主配線部17aの近傍に配置されている。
そして、複数のIC−FPC接続電極21は、一端が駆動IC11に接続されるとともに、他端が配線基板5に接続されることにより、駆動IC11と配線基板5との間を電気的に接続している。
より詳細には、各駆動IC11に接続された複数のIC−FPC接続電極21は、異なる機能を有する複数の電極で構成されている。具体的には、複数のIC−FPC接続電極21は、例えば、駆動IC11を動作させるための電圧を印加するためのIC電極(不図示)と、駆動IC11および駆動IC11に接続された個別電極19を、例えば0〜1Vのグランド電位に保持するためのグランド電極(不図示)と、駆動IC11内のスイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11を動作させる電気信号を供給するためのIC制御電極(不図示)と、測温部材(不図示)により測定された温度を信号として外部に供給する測温電極(不図示)等を備えている。
駆動IC11は、図1,2に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端と、IC−FPC接続電極21の一端とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に複数のスイッチング素子を有しており、各スイッチング素子(不図示)がオン状態のときに通電状態となり、各スイッチング素子がオフ状態のときに不通電状態となる公知のものを用いることができる。
各駆動IC11は、各駆動IC11に接続された各個別電極19に対応するように、内部に複数のスイッチング素子が設けられている。そして、図3に示すように、各駆動IC11は、各スイッチング素子に接続された第1接続端子11aが個別電極19に接続されており、各スイッチング素子に接続されている第2接続端子11bがIC−FPC接続電極21の上記のグランド電極に接続されている。
より詳細には、駆動IC11の第1接続端子11aおよび第2接続端子11bはそれぞれ、はんだ(不図示)により、個別電極19およびIC−FPC接続電極21上に形成された後述する被覆層30上にはんだ接合されている。これにより、駆動IC11の各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極19とIC−FPC接続電極21のグランド電極配線とが電気的に接続される。
共通電極17は、複数の発熱部9と配線基板5とを電気的に接続するためのものである。共通電極17は、図1〜4に示すように、基板7の第2主面7dおよび第2端面7bのほぼ全面にわたって形成されるとともに、基板7の第1主面7cにおいて第2端面7bに沿って延びるように形成されている主配線部17aと、基板7の第2主面7d上に位置する主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びるリード部17bとを有している。各リード部17bは、先端部が各発熱部9を介して個別電極19の一端に対向して配置されている。つまり、共通電極17は、放熱体1と対向する第2主面7cおよび第2端面7bのほぼ全面にわたって設けられることとなる。
このように、共通電極17は、一端が基板7の第1端面7a上にて発熱部9に接続されている。そして、基板7の第1端面7aから第2主面7dおよび第2端面7bを介して第1主面7cまで延びた状態で設けられている。共通電極17の他端は第1主面7cの一方の端部に配置されている。
共通電極17は、図1〜4に示すように、基板7の第1主面7c上に位置する主配線部17aが配線基板5の配線導体6bに接続されることにより、配線基板5と各発熱部9との間を電気的に接続している。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、例えば、各々を構成する材料層を、蓄熱層13が形成された基板7上に、スパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、本実施形態では、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、同じ工程によって同時に形成することができる。また、電気抵抗層15の厚さは、例えば0.01μm〜0.2μmとすることができる。共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の厚さは、例えば0.05μm〜2.5μmとすることができる。
なお、電極ごとに電極の厚さを変えてもよい。例えば、個別電極19の厚さを0.05〜0.9μmとし、共通電極17の厚さを第1主面7c側は1〜5μm、第2主面7d側は1〜30μmとしてもよい。第2主面7d側の共通電極17の厚みを厚くすることで、第2主面7d側の共通電極17の電気抵抗を低減することができる。
また、上述した電極の材料にて、発熱部9、あるいは駆動IC11に接続されていないダミー電極(不図示)を設けてもよい。
図3,4に示すように、蓄熱層13上、ならびに基板7の第1主面7cおよび第2主面7d上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する第1保護層25が形成されている。第1保護層25は、蓄熱層13上の全体を覆うように設けられ、基板7の第2主面7dでは基板7の第1主面7cと対応する領域を覆うように設けられている。
第1保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。第1保護層25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。また、第1保護層25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術、あるいはスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
さらに、第1保護層25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。なお、第1保護層25は、共通電極17および個別電極19の表面と発熱部9の表面との段差によって、その表面に段差が生じ易いが、共通電極17および個別電極19の厚さを、例えば0.2μm以下程度に薄くすることによって、第1保護層25の表面に形成される段差をなくす、または小さくすることができる。
また、図1〜4に示すように、基板7の第1主面7c上には、個別電極19およびIC−FPC接続電極21を部分的に被覆する第2保護層27が設けられている。なお、説明の便宜上、図1では、第2保護層27の形成領域を一点鎖線で示し、図示を省略している。
第2保護層27は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。第2保護層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、第2保護層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
なお、図1に示すように、配線基板5を接続するIC−FPC接続電極21の端部は、第2保護層27から露出しており、その露出した領域と配線基板5の配線導体6bとが接続されるようになっている。
また、第2保護層27には、駆動IC11を接続する個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部を露出させるための開口部27a(図3参照)が形成されており、開口部27aにより露出したIC−FPC接続電極21を介してこれらの電極が駆動IC11に接続されている。より詳細には、開口部27aから露出した個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部上に、被覆層30が形成されており、被覆層30を介してこれらの電極が駆動IC11とはんだ接合されている。ここで、被覆層30はめっきにより形成されている。このように、駆動IC11を被覆層30上にはんだ接合することで、個別電極19およびIC−FPC接続電極21上への駆動IC11の接続強度を向上させることができる。
また、駆動IC11は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続された状態で、駆動IC11自体の保護、および駆動IC11とこれらの電極との接続部の保護の
ため、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材(不図示)によって被覆されることで封止されている。
図3,4に示すように、基板7の第2主面7d上には、共通電極17を部分的に被覆する第3保護層29が設けられている。第3保護層29は、基板7の第2主面7dの第1保護層25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。そのため、第3保護層29は、放熱体1と対向する部位に設けられた絶縁層として機能している。
第3保護層29は、共通電極17の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。第3保護層29は、第2保護層27と同様、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、第3保護層29は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。このように、第2保護層27および第3保護層29は、外部と電極とを絶縁する絶縁層として機能することとなる。より詳細には、第3保護層29は、放熱体1と基板7の第2主面7dとを絶縁する絶縁層として機能することとなる。そのため、図3,4に示すように、第2主面7dの第1保護層25が設けられていないほぼ全面にわたって設けられることが好ましい。あわせて、接着剤12を第2主面7dの第1保護層25が設けられていないほぼ全面にわたって設けてもよい。
図3、4に示すように、基板7の第1主面7cと第2端面7bとで形成される角部7e上、および基板の第2主面7dと第2端面7bとで形成される角部7f上に位置する共通電極17の領域は、被覆層30で被覆されている。より詳細には、被覆層30は、基板7の第1主面7cおよび第2端面7b上に位置する共通電極17の領域全体と、基板7の第2主面7d上に位置する共通電極17の第2端面7bの近傍の領域とを連続的に被覆している。
被覆層30は、例えば、周知の無電解めっき、あるいは電解めっき等によって形成することができる。また、被覆層30として、例えば、共通電極17上にニッケルめっきからなる第1被覆層(不図示)を形成し、第1被覆層上に金めっきからなる第2被覆層(不図示)を形成してもよい。その場合においては、第1被覆層の厚さを例えば1.5μm〜4μmとし、第2被覆層の厚さを例えば0.02μm〜0.1μmとすることができる。
また、被覆層30が、配線基板5を接続するIC−FPC接続電極21の端部(第2保護層27から露出した端部)上にも形成されている。これにより、後述するように、配線基板5を被覆層30上に接続するようになっている。
さらに、図3に示すように、被覆層30が、第2保護層27の開口部27aから露出した個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部上にも形成されている。これにより、上記のように、駆動IC11が被覆層30を介して個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続されている。
次に、図3〜5を用いてサーマルヘッドX1を構成する配線基板5について説明する。配線基板5は、ベース部材6aと、ベース部材6a上に設けられており、かつヘッド基体3の共通電極17、あるいはIC−FPC電極21等と電気的に接続された配線導体6bと、配線導体6bを覆うようにベース部材6a上に設けられたカバー部材6cとを有している。配線基板5は、図5(b)に示すように、平面視してほぼ矩形状の形状を有しており、中央部に第1貫通穴10を有している。
配線基板5は、発熱部9の配列方向に沿って延びており、上記のように基板7の第1主面7c上に設けられた共通電極17の主配線部17a、および各IC−FPC接続電極2
1に接続されている。放熱体1とヘッド基体3との間の間隙8を覆うように設けられている。そして、配線基板5は、各配線導体6bがコネクタ31を介して外部の電源装置(不図示)および制御装置(不図示)等に電気的に接続されるようになっている。
そして、配線基板5の各配線導体6bがコネクタ31を介して外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、共通電極17は、例えば20〜24Vの正電位に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続され、個別電極19は、駆動IC11およびIC−FPC接続電極21のグランド電極を介して、0〜1Vのグランド電位に保持された電源装置のマイナス側端子に電気的に接続されるようになっている。そのため、駆動IC11のスイッチング素子がオン状態のとき、発熱部9に電圧が印加され、発熱部9が発熱するようになっている。
配線基板5を構成するベース部材6aは、例えば、ポリイミド等の絶縁性の有機樹脂を用いることができる。なお、配線基板5は、実施形態にあわせて剛性の高いもの、あるいは低いものを用いればよい。また、剛性の高いリジッド基板と剛性の低いフレキシブル基板を組み合わせたリジッド配線基板を用いてもよい。
配線導体6bは、ベース部材6a上に設けられている。このような配線導体6bは、一般に、例えば、銅箔等の金属箔、薄膜成形技術によって形成された導電性薄膜、または厚膜印刷技術によって形成された導電性厚膜によって形成されている。また、金属箔、あるいは導電性薄膜等によって形成される配線導体6bは、例えば、フォトエッチング等により部分的にエッチングすることによってパターニングされている。配線導体6bは、ヘッド基体3と電気的に接続するための複数の配線電極を有しており、図5(b)の一点鎖線で示す接続領域にて、ヘッド基体3の各種電極と配線基板5の配線電極とが接続されている。なお、配線導体6bは、熱硬化性樹脂等の接着剤により、ベース部材6aに接着されている。
カバー部材6cは、配線導体6bを覆うようにベース部材6a上に設けられている。カバー部材6cは、絶縁性を有しており上述したベース部材6aと同様の材料により形成することができる。カバー部材6cは、ベース部材6aに対応した形状を有しており、配線導体6bが外部に露出しないように配線導体6bを被覆している。そして、配線導体6bの配線電極として機能する部位のカバー部材6cは切り欠かれており、配線電極は外部に露出した状態で配線基板5が形成されている。カバー部材6cは、エポキシ性熱硬化樹脂等の接着剤により、ベース部材6aに接着されている。
図5(b)に示すように、配線基板5は、接続領域のヘッド基体3側およびコネクタ31側のそれぞれに配線パターンが形成されている。配線基板5は、ベース部材6aの両主面に配線導体6bが設けられており、両主面の配線導体6b上にカバー部材6cが設けられている。そのため、配線導体6bを両主面に形成することができる。
第1貫通穴10は、接続領域に隣り合う位置に配置されている。そして、間隙8と対向する配線基板5の領域に第1貫通穴10が設けられている。そのため、第1貫通穴10に隣り合う位置に配置された接続領域の配線電極は、第1貫通穴10側に配線導体6bを引き出すことができない。そのため、配線基板5のヘッド基体3側に配線導体6bを引き出して、電気的導通を確保している。なお、図5では、第1貫通穴10に隣り合う接続領域の配線電極が、ヘッド基体3の各電極を構成する例を示したが、例えば、ヘッド基体3の各電極と電気的に接続せずに、電気的に独立した構成としたダミー電極としてもよい。ダミー電極を設けることで、ヘッド基体3の各電極と、配線基板5の配線電極との接続強度を向上させることができる。
なお、配線基板5を形成する各部材の厚みあるいは積層数等は、絶縁性、加工性、あるいは費用等を考慮して適宜設定すればよい。
図3,4を用いて放熱体1、ヘッド基体3、および配線基板5の接合状態について説明する。
サーマルヘッドX1は、図3に示すように、放熱体1の突起部1bと、ヘッド基体3の第2端面7bと、配線基板5の第1貫通穴10に囲まれた間隙8に接合剤14が設けられている。この接合剤14により放熱体1と、ヘッド基体3と、配線基板5とが一体的に接合されている。
接合剤14は、絶縁性の材料により形成されることが好ましく、例えば、エポキシ等の有機樹脂を用いることができる。また、放熱性の材料により形成することもできる。放熱性の材料により接合剤14を形成することで、ヘッド基体3の熱を効率的に放熱体1に伝熱することができる。なお、熱伝導率を向上させるために、フィラー、あるいは金属製の充填材等を有機樹脂に含有させてもよい。
そして、サーマルヘッドX1は、接着剤12により、ヘッド基体3の第2主面7dと放熱体1の基部1aとが接合されており、突起部1bと離間してヘッド基体3が貼り合わされている。貼り合わせる方法としては、両面テープあるいは接着剤を例示することができ、配線基板5の一面と放熱体1の突起部1bの上面とが接合されている。
サーマルヘッドX1の放熱体1、ヘッド基体3、および配線基板5の接合方法を説明する。まず、ヘッド基体3の共通電極17、あるいはIC−FPC電極21等の電極と、配線基板5の配線電極とを、導電性接合材料、例えば、はんだ材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方導電性材料(ACF)等からなる導電部材32によって接続する。それにより、ヘッド基体3と配線基板5とを電気的に接続することができる。
次に、放熱体1の基部1aに接着剤12を接着して、配線基板5と一体となったヘッド基体3を放熱体1の基部1aに載置する。
そして、ヘッド基体3の第2端面7bと、放熱体1の突起部1bと、配線基板5の第1貫通穴10に囲まれる間隙8の間に接合剤14を介在させることにより、放熱体1、ヘッド基体3、および配線基板5を接合して、サーマルヘッドX1を作製することができる。
接合剤14は、配線基板5に設けられた第1貫通穴10から供給することにより、間隙8に配置することができる。図3(b)においては、第1貫通穴10が設けられた発熱部9の配列方向における、配線基板5の中央部にのみ接合剤14を設けた例を示しているが、接合剤14が、発熱部9の配列方向において、サーマルヘッドX1の一端から他端にかけて設けられていてもよい。
接合剤14は、図3に示すように、配線基板5の上面における第1貫通穴10の周縁近傍においても設けられている。つまり、配線基板5は、間隙8と対向する領域に第1貫通穴10を有しており、間隙8内の接合剤14が第1貫通穴10を通って、配線基板10の上面にまで一体的に設けられている。言い換えると、配線基板5の上面、第1貫通穴10の内部、および間隙8に設けられている。また、配線基板5を平面視したときに、接合剤14は、第1貫通穴10よりも大きな面積を有している。また、図3(b)に示す間隙8におけるヘッド基体3を覆うように充填されている。
なお、配線基板5は、放熱体1の突起部1bの上面に、両面テープ、あるいは接着剤等(不図示)によって接着して、放熱体1上に固定する例を示したが、固定しなくともよい。
第1の実施形態に係るサーマルヘッドX1によれば、突起部1bとヘッド基体3との間隙8に、接合剤14が設けられていることから、サーマルヘッドX1に押圧力が生じた場合においても、ヘッド基体3が放熱体1との張り合わせの位置からずれて、ヘッド基体3と放熱体1とが接触する可能性を低減することができる。特に、サーマルヘッドX1のように、第1端面7aに発熱部9が配列されている場合においては、第2端面7b側に押圧力が生じることとなるため、有効にヘッド基体3と、放熱体1とが接触することを抑制できる。
それにより、ヘッド基体3と放熱体1とが接触して、ヘッド基体3あるいは放熱体1が破損する可能性を低減することができる。また、ヘッド基体3に設けられた共通電極17等の各電極が、放熱体1と接触することにより短絡する可能性を低減することができる。それゆえ、サーマルヘッドX1の信頼性を向上させることができる。
また、接合剤14が、ヘッド基体3と、放熱体1と、配線基板5とを一体的に接合固定することにより、ハンドリング性の向上したサーマルヘッドX1とすることができる。また、配線基板5の上面における第1貫通穴10の周縁近傍に接合剤14が配置されていることから、配線基板5の上下方向における変形、あるいは配線基板5が移動することを抑えることができ、配線基板5の接続領域が剥離する可能性を低減することができる。
さらに、配線基板5に第1貫通穴10が設けられていない場合においては、間隙8に接合剤14を配置するためには、例えば、放熱体1の基部1aに貫通穴(図示せず)を設けて、接合剤14を充填する必要があるが、配線基板5に第1貫通穴10を設けておくことにより、放熱体1に接合剤14を充填するための貫通穴を設ける必要がない。また、配線基板5に設けられた第1貫通穴10から目視により、接合剤14の充填状況を確認することができるため、接合剤14の充填工程の作業性を向上させることができ、サーマルヘッドX1を容易に作製することができる。
配線基板5は、第1貫通穴10が発熱部9の配列方向における、中央部に設けられている。そして、配線基板5は、発熱部9の配列方向における、両端部では放熱体1と接合されていない。そのため、配線基板5と放熱体1との熱膨張係数が異なる場合においても、配線基板5の両端部が固定されず、配線基板5の両端部に過剰な応力が生じる可能性を低減することができる。それにより、配線基板5が、放熱体1から剥離する可能性を低減することができる。
特に、接合剤14が配線基板5の上面にも配置されており、上面に配置された接合剤14と間隙8に配置された接合剤14が一体的に設けられていることから、配線基板5とヘッド基体3と放熱体1との接合強度を向上させることができる。
また、配線基板5は、第1貫通穴10が発熱部9の配列方向に直交する方向の中央部に設けられている。そして、配線導体6bが、配線電極の接続領域のヘッド基体3側およびコネクタ31側に設けられている。そのため、配線基板5の発熱部9の配列方向に直交する方向の長さを過剰に長くすることなく、接続領域を配線基板の5の中央部に近づけることができる。それにより、配線基板5の接続領域よりもヘッド基体3側の部位が、ヘッド基体3の上方に配置されることとなる。それにより、サーマルヘッドX1の発熱部9の配列方向に直交する方向の長さを短くすることができ、サーマルヘッドX1を小型化することができる。
なお、サーマルヘッドX1では、第1貫通穴10が、発熱部9の配列方向における中央部に設けられた例を示したが、間隙8の上方に位置していれば、中央部でなくともよい。
図7を用いてサーマルヘッドX1の変形例であるサーマルヘッドX2について説明する。サーマルヘッドX2は、配線基板5が、第1貫通穴10を有しておらず放熱体1に貫通穴(不図示)が設けられている。このように、配線基板5が第1貫通穴10を有していなくとも、放熱体1に貫通穴を設けることで、接合剤14を間隙8に配置することができる。また、接合剤14が、配線基板5の下面と接合していることにより、配線基板5と接合剤14との接合強度を向上させることができる。さらにまた、接合剤14が、発熱部9の配列方向における、間隙8の一端部から他端部にわたって設けられている。それにより、ヘッド基体3と放熱体1との接合強度を向上させるとともに、ヘッド基体3と放熱体1とが直接接触する可能性を低減することができる。
また、ヘッド基体3と放熱体1との間に位置する間隙8に、ヘッド基体3の厚み方向の全域にわたって接合剤14が設けられている。そのため、ヘッド基体3と放熱体1との直接接触する可能性をさらに低減することができる。
さらに、接合剤14が間隙8に充填されていることから、ヘッド基体3と放熱体1とが接触する可能性を低減することができる。また、接合剤14が間隙8に充填されていることから、接合剤14が緩衝剤として機能するため、ヘッド基体3に押圧力が生じた場合においても、接合剤14がヘッド基体に生じた押圧力を緩衝することで、サーマルヘッドX2が破損する可能性を低減することができる。
次に、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZについて、図6を参照しつつ説明する。図6は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図6に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX1、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向言い換えると主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、感熱紙、受像紙、カード等の記録媒体Pを図6の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上(より詳細には、第1保護層25上)に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが受像紙、あるいはカード等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧するためのものであり、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給するためのものである。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給するためのものである。
本実施形態のサーマルプリンタZは、図6に示すように、搬送機構40によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に搬送しつつ、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることで、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙、あるいはカード等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
<第2の実施形態>
図8を用いて本発明の第2の実施形態に係るサーマルヘッドX3について説明する。図8に示すサーマルヘッドX3は、配線基板5が第2貫通穴16を有する点で、第1の実施形態に係るサーマルヘッドX1と構成が異なり、その他の構成は同様である。なお、同様の部材については同一の符号を付し、説明を省略する。
図9(a)に示すように、配線基板5は、第1貫通穴10が接続領域の一方側に隣接して設けられており、接続領域の他方側に隣接して第2貫通穴16が設けられている。そのため、接続領域の両端側に、貫通穴である第1貫通穴10および第2貫通穴16が設けられることとなる。第1貫通穴10および第2貫通穴16には、接合剤14が充填されている。
図9(b)に示すように、第1貫通穴10は、発熱部9の配列方向における中央部に配置されている。そして、第2貫通穴16は、発熱部9の配列方向において、第1貫通穴10と入れ子式に配置されている。このように、第1貫通穴10と第2貫通穴16とが入れ子式に配置されていることから、第1貫通穴10または第2貫通穴16に隣り合う接続領域の配線電極を配線パターンと接続することができる。なお、配線パターンは図9(b)に限定されるものではない。
サーマルヘッドX3は、接続領域の一方側に隣接して第1貫通穴10が設けられており、接続領域の他方側に隣接して第2貫通穴16が設けられている。そのため、第1貫通穴10により、接合剤14を間隙8に充填して、ヘッド基体3と放熱体1とを接合するとともに、第2貫通穴16にも接合剤14が充填されており、配線基板5とヘッド基体3とを接合することができる。そのため、配線基板5の厚み方向に応力が生じた場合においても、配線基板5のヘッド基体3側がヘッド基体3より剥離する可能性を低減することができる。
なお、サーマルヘッドX3においては、第2貫通穴16を第1貫通穴10の両端部に設けた例を示したが、片側にのみ設けてもよい。また、第1貫通穴10を1つ、第2貫通穴16を2つ設けた例を示したが、第1貫通穴10および第2貫通穴16を複数設けてもよい。また、第2貫通穴16に充填する接合剤14は第1貫通穴10に供給する接合剤14と同じものを用いてもよく、他のものを用いてもよい。
<第3の実施形態>
図10〜13を用いて第3の実施形態に係るサーマルヘッドX4について説明する。サーマルヘッドX4は、配線基板5の中央部および両端部に、間隙8に延びる絶縁性の延在部18が設けられている。そして、延在部18は接合剤14により固定されている。その他の構成は、サーマルヘッドX3と同様であり説明を省略する。
配線基板5は、延在部18を有している。図13(b)に示すように、延在部18は、ベース部材6a、配線導体6dおよびカバー部材6cが重畳した状態で形成されている。また、配線基板5は可曉性を有するため、延在部18は容易に上下方向(図12,13においては紙面に垂直な方向)に変形させることができる。図12では延在部18が折り曲げられた状態を図示しており、図13では延在部18が折り曲げられていない状態を図示している。そして、延在部18は、ベース部材6aおよびカバー部材6cにより覆われて形成されているため、絶縁性を有している。延在部10は、熱硬化性樹脂等の接着剤により、ベース部材6aとカバー部材6cとが接着されて形成されている。
サーマルヘッドX4は、図10,11に示すように、発熱部9の配列方向における両端部および中央部において、放熱体1の突起部1bと対向する面である第2端面7bに設けられた共通電極17と、放熱体1の突起部1bとの間に、配線基板5のベース部材6a、配線導体6bおよびカバー部材6cにより形成された絶縁性の延在部18が入り込んでいる。そのため、ヘッド基体3に押圧力が生じた場合においても、第2端面7bに設けられた共通電極17が、導電性の放熱体1と接触する可能性をさらに低減することができる。
図11に示すように、サーマルヘッドX4は、延在部18が間隙8に収納され、延在部18を介して接合剤14によりヘッド基体3と放熱体1とが接合されている。図11(b)に示すように、延在部18は、発熱部9の配列方向における両端部が、接合剤14と接合されている。延在部18の両端部が接合剤14により接合されていることにより、延在部18を接合剤14が強固に固定することができ、配線基板5の上下方向の変形をさらに抑えることができる。
図13(b)に示すように、配線導体6bは、配線基板5のヘッド基体1およびコネクタ31側に形成されている。そして、配線パターンから電気的に独立した配線導体6dがそれぞれの延在部18に設けられている。また、一部の接続領域に位置する配線電極は配線パターンを形成する配線電極を兼ねている。
サーマルヘッドX4の製造方法としては、まずヘッド基体3と配線基板5とを圧着して電気的に接続する。次に延在部18を折り曲げて間隙8に収容されるように加工する。そして、延在部18を間隙8に収容し、延在部18を折り曲げることにより作製された第1貫通穴10から接合剤14を供給して、ヘッド基体3と放熱体と配線基板5とを接合する。なお、延在部18に両面テープを接着させておき、延在部18を折り曲げ加工した際に放熱体1の突起部1bに接合してもよい。
第3の実施形態に係るサーマルヘッドX4によれば、配線基板5の延在部18が、ヘッド基体3の共通電極17と放熱体1の突起部1bとの間に入り込んでいることから、ヘッド基体3に押圧力が生じた場合においても、共通電極17が、導電性の放熱体1と接触する可能性を低減することができる。それにより、サーマルヘッドX4が、短絡する可能性を低減することができ、信頼性の向上したサーマルヘッドX4とすることができる。
また、サーマルヘッドX4は、延在部18が放熱体1とヘッド基体3とを電気的に絶縁している。そのため、接合剤14のみにより放熱体1とヘッド基体3とを電気的に絶縁する場合に比べて、放熱体1とヘッド基体3とを絶縁できる可能性を高めることができる。
さらに、配線基板5の延在部18が、発熱部9の配列方向における両端部に設けられていることから、サーマルヘッドX4の第1端面7aに押圧力が生じた場合においても、ヘッド基体3が、平面視して斜めに傾くことを抑えることができる。それにより、放熱体1とヘッド基体3とを電気的に絶縁することができ、サーマルヘッドX4が短絡する可能性
を低減することができる。特に、発熱部9の配列方向における長さが長い長尺状のサーマルヘッドにおいては、サーマルヘッドが短絡する可能性を有効に低減することができる。
また、配線基板5の一部である絶縁性の延在部18を、ヘッド基体3と放熱体1との間に入り込むように配置することで、簡単な構成によりヘッド基体3と放熱体1との絶縁性を向上させることができる。
延在部18は、ベース部材6a、配線導体6bおよびカバー部材6cが積層されて形成されていることから、延在部18の厚みを確保することができ、ヘッド基体3と放熱体1との接触する可能性を抑えることができる。また、延在部18が配線導体6bを備えていることから、延在部18を折り曲げた際に、変形した状態である折り曲げた状態を保持しやすくなる。そのため、変形する可能性の低減したサーマルヘッドX4とすることができる。
さらに、延在部18を折り曲げることにより作製することで、第1貫通穴10を容易に作製することができ、延在部18を間隙8に収容した状態で、接合剤14を供給する間隙8を目視にて確認することができ、ヘッド基体3と放熱体1との接合工程の作業性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、延在部18が、ベース部材6a、配線導体6bおよびカバー部材6cが積層されて形成された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、ベース部材6aのみで延在部10を構成してもよく、カバー部材6cのみで延在部10を構成してもよい。さらにまた、延在部18は、ベース部材6aおよびカバー部材6cが熱硬化性樹脂により接着されていなくてもよい。
さらにまた、延在部18が、配線基板5のヘッド基体3側から延在する例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、延在部18が、配線基板5のヘッド基体3側から延在せずに、配線基板5のコネクタ31側から延在していてもよい。
なお、配線基板5の中央部および両端部に延在部18を設けた例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、配線基板の中央部のみに設けてもよく、両端部のみに設けてもよい。両端部のみに延在部18を設けた場合に、両端部にてヘッド基体3と配線基板5の延在部10とが接触した場合に、図3に示すように、発熱部9の配列方向における中央部においては、ヘッド基体3と放熱体1の突起部1bとが延在部10の厚み分、所定の距離をあけて離間することとなる。そのため、発熱部9の配列方向における中央部においても、第2端面7bに設けられた共通電極17が、導電性の放熱体1と接触する可能性を低減することができる。
次に、図14にて示す、サーマルヘッドX4の変形例について説明する。サーマルヘッドX4とは延伸部18の中央部に切欠部20が設けられている。その他の点はサーマルヘッドX4と同様であり説明を省略する。
サーマルヘッドX4は、図14(b)に示すように、延伸部18に設けられた切欠部20に接合剤14が充填される構成となっている。そのため、延伸部18の切欠部20に充填された接合剤14が食い込むように機能して、延伸部18の固定をより強固なものとすることができ、配線基板5が放熱体1から剥離することを抑えることができる。
また、サーマルヘッドX5においては、延在部18が切欠部20により形成された例を示したが、これに限定されるものではなく、延在部18に凹部を形成してもよい。切欠部20と凹部との違いは延在部18を貫通するか否かの点であり、貫通するものを切欠部2
0、貫通しないものを凹部とすることができる。また、延在部18に凹部および切欠部の両方を設けてもよい。
<第4の実施形態>
図15,16を用いて第4の実施形態に係るサーマルヘッドX5について説明する。
図15に示すように、サーマルヘッドX5は、放熱体1上にヘッド基体3が載置されており、ヘッド基体3と接合された配線基板5が折り返され、ヘッド基体3上に設けられている。そして、放熱体1の突起部1bの上面と配線基板5とが接続されている。配線基板5の中央部には貫通穴10が設けられている。
構成を詳しく説明すると、ヘッド基体3と接合された配線基板5は、ヘッド基体の第1端面7a側に向かって延び、所定の距離を進むとコネクタ31側に折り返されている。図16に示すように、配線基板5の一端は、ヘッド基体3と放熱体1との間の間隙8に配置されており、他端は、放熱体1の突起部1b状に接続されている。そして、配線基板5の一端および他端は接合剤14によりそれぞれ放熱体1と接合されている。
放熱体1は、図16に示すようにヘッド基体3と放熱体1との間隙8に凹部22が設けられている。凹部22は、間隙8を下方向に延在するように放熱体1の基部1aに設けられている。また、凹部22は、ヘッド基板3の上面と同じ高さに位置する放熱体1の突起部1bにも設けられている。
このように、配線基板5を折り返すような構成とすることで、サーマルヘッドX5を小型化することができる。また、サーマルヘッドX5のような構成をとった場合においても、配線基板5が貫通穴10を有していることから、貫通穴10を通じて、配線基板5を接合固定することができ、配線基板5の接合工程の作業性を向上させることができる。
なお、発熱部9の配列方向における凹部22の幅は、延在部18の幅よりも大きいことが好ましく、凹部22の厚みは、延在部18の厚みよりも厚いことが好ましい。また、凹部22の深さは、延在部18の先端が収納されるのに十分な深さがあることが好ましいため、延在部18の長さよりも1mm程度長いことが好ましい。
それにより、サーマルヘッドX5は、延在部18の長さが、放熱体1の突起部1bの高さよりも長かった場合においても、延在部18の先端が凹部22内に収納され、延在部18の先端を凹部22に配置することができ、延在部18にたわみが生じる可能性を低減することができる。それにより、ヘッド基体3を強固に放熱体1に載置固定することができる。
また、放熱体1が凹部22を有することにより、放熱体1にヘッド基体3および配線基板5を載置する際に、凹部14が延在部18をリードするように機能するため、延在部18の先端が凹部22内に導かれることにより、放熱体1にヘッド基体3および配線基板5を容易に載置することができる。
なお、凹部20の形状は円形状に限定されるものではない。例えば、発熱部9の配列方向に溝を設けて凹部22を形成してもよい。また、凹部22を基部1aのヘッド基体3を載置する面に設けた例を示したが、これに限定されるものではない。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、実施形態X1〜X5を任意に組み合わせてもよい。
図17(a)に示すサーマルヘッドX6は、示すように凹部22を、放熱体1の基部1aおよび突起部1bに凹部22が設けられている。放熱体1の基部1aに凹部22が設けられていることから、貫通穴10から供給した接合剤14の量が多かった場合に、凹部22内に収容することができ、サーマルヘッドX6から接合剤14がはみ出す可能性を低減することができる。また、放熱体1の突起部1bに凹部22を設けたことから、凹部22に接合剤14を収容することにより、接合剤14と放熱体1との接合面積を増加させることができ、放熱体1と配線基板5との接合強度を向上させることができる。
上述した実施形態のサーマルヘッドX1〜X6では、図3、4に示されるように、電気抵抗層15が、蓄熱層13上のみならず、基板7の第1主面7cおよび第2主面7d上にも設けられているが、基板7の第1端面7a上の共通電極17(より詳細には、リード部17b)と個別電極層19とに接続されている限り、これに限定されるものではなく、例えば、蓄熱層13上にのみ設けられていてもよい。また、基板7の第1端面7a上の共通電極17および個別電極19を蓄熱層13上に直接形成し、蓄熱層13上の共通電極17の先端部と個別電極19の先端部との間の領域にのみ電気抵抗層15が設けられていてもよい。
また、他のサーマルヘッドの構成として、例えば、共通電極17は、基板7の第1端面7a上から基板7の第2主面7d上に延び、基板7の第2主面7d上で折り返すようにして、基板7の第1端面7a上を介して基板7の第1主面7c上に延びていてもよい。
さらにまた、上記実施形態のサーマルヘッドX1〜X6では、図3に示すように、基板7の第1端面7aが凸状の曲面形状を有しているが、基板7の第1端面7aの表面形状および傾斜角度は特に限定されるものではなく、任意の形態をとることができる。例えば、基板7の第1端面7aは、平面形状であってもよいし、屈曲した面で形成されていてもよい。また、基板7の第1主面7cおよび第2主面7dと基板7の第1端面7aとのなす角度が直角ではなく、鈍角または鋭角であってもよい。
また、サーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZの例について説明したが、サーマルヘッドX1に代えて、サーマルヘッドX2〜X6のいずれかを採用してサーマルプリンタZを構成してもよい。