<第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態に係るサーマルヘッドX1について、図面を参照しつつ説明する。図1〜5に示すように、サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、図1では、FPC5の図示を省略し、FPC5が配置される領域を二点鎖線で示す。
図1〜5に示すように、放熱体1は、平面視して、矩形状の板状の台部1aと、台部1aの上に配置され、台部1aの一方の長辺に沿って延びる突起部1bとを備えている。放熱体1は、例えば、銅、鉄、あるいはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。
図1,2に示すように、ヘッド基体3は、基板7と、基板7上に設けられた複数の発熱部9と、発熱部9の駆動を制御する駆動IC11とを備えている。基板7は、平面視して、矩形状をなしている。基板7は、第一端面7a、第二端面7b、第一主面7c、および第二主面7dを有している。第一端面7aは、第一主面7cおよび第二主面7dに隣接する面である。第二端面7bは、第一端面7aの反対側に位置する面である。第一主面7cは、第一端面7aおよび第二端面7bに隣接する面である。第二主面7dは、第一主面7cの反対側に位置する面である。発熱部9は、第一端面7a上に、基板7の長手方向に沿って列状に設けられている。駆動IC11は、第一主面7c上に複数設けられている。
ヘッド基体3は、放熱体1の台部1a上に配置されており、第二端面7bが、放熱体1の突起部1bに対向するように配置されている。また、ヘッド基体3の第二主面7dと台部1aの上面とが、両面テープあるいは接着剤等からなる接着部材33によって接着されている。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。なお、基板7は、平面視して矩形状をなしているが、基板7の角部に面取り等を施してもよい。
図3,4に示すように、基板7の第一端面7a上には、蓄熱層13が形成されている。基板7の第一端面7aは断面視して凸状の曲面形状を有しており、第一端面7a上に蓄熱層13が形成されている。そのため、蓄熱層13の表面も曲面形状となっている。曲面形状である蓄熱層13は、発熱部9上に形成された後述する保護層25に印画する記録媒体を良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、例えば、ガラスにより形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。なお、ガラスは、熱伝導性の低いガラスであることが好ましい。そのため、印画時において、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めることができる。また、蓄熱層13は、基板7の第一端面7a上にのみ形成されており、発熱部9に近い位置で蓄熱することができる。そのため、サーマルヘッドX1の熱応答特性をより効果的に向上させることできる。なお、蓄熱層13は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の第一端面7a上に塗布し、これを焼成することにより形
成することができる。
図3,4に示すように、基板7の第一主面7c上、蓄熱層13上、基板7の第二主面7d上および第二端面7b上には、電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13と、後述する共通電極17、個別電極19および接続電極21との間に介在している。
基板7の第一主面7c上に位置する電気抵抗層15の領域は、図1に示すように平面視して、共通電極17、個別電極19および接続電極21と同形状に形成されている。
蓄熱層13上に位置する電気抵抗層15の領域は、図2に示すように側面視して、共通電極17および個別電極19と同形状に形成された領域と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の露出領域とを有している。
基板7の第二主面7d上に位置する電気抵抗層15の領域は、詳細には図示しないが、図3,4に示すように、基板7の第二主面7dの全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
基板7の第二端面7b上に位置する電気抵抗層15の領域は、詳細には図示しないが、図3,4に示すように、基板7の第二端面7bの全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
このように電気抵抗層15の各領域が形成されているため、図1では、電気抵抗層15は、共通電極17、個別電極19および接続電極21で覆われており、図示していない。また、図2では、電気抵抗層15は、共通電極17および個別電極19で覆われており、露出領域のみ図示されている。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図2に示すように、蓄熱層13上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、図2では簡略化して示しているが、例えば、180dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。また、図2に示すように、発熱部9は、蓄熱層13上で、基板7の厚さ方向の略中央部に設けられている。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱することとなる。
図1〜4に示すように、電気抵抗層15上には、共通電極17、複数の個別電極19および複数の接続電極21が設けられている。共通電極17、個別電極19および接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
複数の個別電極19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1〜3に示すように、各個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、基板7の第一端面7a上から基板7の第一主面7c上にわたって個別に帯状に延びている。
各個別電極19の他端部は、駆動IC11の配置領域に配置されており、各個別電極19の他端部が駆動IC11に接続されている。それにより、各発熱部9と駆動IC11との間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数
の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数の接続電極21は、駆動IC11とFPC5とを接続するためのものである。図1,3に示すように、各接続電極21は、基板7の第一主面7c上に帯状に延びており、一端部は駆動IC11の配置領域に配置されている。また、各接続電極21の他端部は基板7の第一主面7c上の第二端面7b側に位置する、共通電極17の主配線部17aの近傍に配置されている。そして、複数の接続電極21は、一端部が駆動IC11に電気的に接続されるとともに、他端部がFPC5に電気的に接続されることにより、駆動IC11とFPC5とを電気的に接続している。
より詳細には、各駆動IC11に接続された複数の接続電極21は、異なる機能を有する複数の電極で構成されている。接続電極21を構成する電極としては、電源電極(不図示)と、グランド電極(不図示)と、IC制御電極(不図示)とを例示することができる。電源電極は、駆動IC11を駆動させ、サーマルヘッドX1を駆動させる電圧を印加する機能を有している。グランド電極は、駆動IC11および駆動IC11に接続された個別電極19のそれぞれを0〜1Vのグランド電位に保持する機能を有している。IC制御電極は、駆動IC11の内部に設けられたスイッチング素子のオン・オフ状態を制御するための信号を供給する機能を有している。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されている。そして、駆動IC11は、個別電極19の他端部と接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に有した複数のスイッチング素子(不図示)を切り替えることにより、各発熱部9の発熱駆動を制御している。
各駆動IC11は、各駆動IC11に接続された各個別電極19に対応するように、内部に複数のスイッチング素子が設けられている。そして、図3に示すように、各駆動IC11は、各スイッチング素子に接続された一方の接続端子11a(以下、第一接続端子11aと称する)が個別電極19に接続されている。各スイッチング素子に接続された他方の接続端子11b(以下、第二接続端子11bと称する)が接続電極21に接続されている。より詳細には、駆動IC11の第一接続端子11aおよび第二接続端子11bは、はんだ23により、個別電極19および接続電極21上に形成されたメッキ層(不図示)上にはんだ23により接合されている。これにより、駆動IC11の各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極19と接続電極21とが電気的に接続される。
駆動IC11は、個別電極19および接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることで封止されている。これにより、駆動IC11自体、および駆動IC11とこれらの配線との接続部を保護することができる。
共通電極17は、複数の発熱部9とFPC5とを電気的に接続するためのものである。共通電極17は、主配線部17a,17dと、副配線部17bと、リード部17cと、突出部17eとを有している。主配線部17aは、第二主面7dの全域にわたって設けられており、主配線部17dは、第二端面7bの全域にわたって設けられている。副配線部17bは、第一主面7aの第二端面7b側の縁に沿って設けられており、発熱部9の配列方向(以下、配列方向と称する場合がある)における両端部に、第一端面7a側に向けて突出した突出部17eを備えている。リード部17cは、基板7の第一端面7a上に形成されており、基板7の第二主面7dに設けられた主配線部17dと、各発熱部9とを電気的
に接続している。また、各リード部17cは、個別電極19に対向して配置されて各発熱部9に接続されている。共通電極17は、リード部17cと、主配線部17aと、主配線部17dと、副配線部17bとが連続的に形成されている。
このようにして、共通電極17は、一端部が発熱部9に接続されており、基板7の第一端面7a上から、基板7の第二主面7d上、および基板7の第二端面7b上を介して、基板7の第一主面7c上にわたって延びている。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19および接続電極21の形成方法について例示する。各々を構成する材料層を、蓄熱層13が形成された基板7上に、スパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層する。次に積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成することができる。また、電気抵抗層15の厚さは、例えば0.01μm〜0.2μmとし、共通電極17、個別電極19および接続電極21の厚さは、例えば0.05μm〜2.5μmとすることができる。なお、第一主面7c上の共通電極17の厚みと、第二主面7d上の共通電極17の厚みとが異なる構成としてもよく、電極の部位により厚みを異なるものとしてもよい。
保護層25は、図1〜4に示すように、蓄熱層13上、基板7の第一主面7cおよび第二主面7d上に、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆するように設けられている。図1,3,4に示すように、保護層25は、基板7の第一主面7cにおいては左側の領域を覆うように設けられている。保護層25は、蓄熱層13上においては全体を覆うように設けられている。保護層25は、基板7の第二主面7dにおいては基板7の第一主面7cと同様に左側の領域を覆うように設けられている。このようにして、保護層25は、基板7の第一端面7a上から基板7の第一主面7c上にわたって形成されているとともに、基板7の第一端面7a上から基板7の第二主面7d上にわたって形成されている。なお、説明の便宜上、図1では、保護層25の形成領域を一点鎖線で示し、図示を省略している。
保護層25は、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護する機能を有している。保護層25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。なお、AlあるいはTi等の他の元素を少量含有していてもよい。
保護層25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術あるいはスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。保護層25の厚さは、例えば3〜12μmとすることができる。また、保護層25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。
また、図1,3,4に示すように、基板7の第一主面7c上には、個別電極19および接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。被覆層27は、図1に示すように基板7の第一主面7c上の保護層25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。また、共通電極17の副配線部17bを覆うように設けられている。なお、説明の便宜上、図1では、被覆層27の形成領域を一点鎖線で示し、図示を省略している。
被覆層27は、個別電極19および接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有するものである。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料
で形成することができる。また、被覆層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。なお、被覆層27は電気絶縁性を有しており、上記のように個別電極19を被覆しても、隣接する個別電極19間が短絡しない構成を有している。
なお、図1,3に示すように、後述するFPC5を接続する接続電極21の端部は、被覆層27から露出して設けられており、この露出領域にてFPC5とヘッド基体3とが接続されており、露出領域が接続領域とされている。
また、被覆層27は、駆動IC11を接続する個別電極19および接続電極21の端部を露出させるための開口部27a(図3参照)が形成されている。個別電極19と接続電極21とは、開口部27aを介して駆動IC11に接続されている。
被覆層27は、共通電極17を被覆することにより、共通電極17の被覆した領域を、大気との接触による酸化あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有している。被覆層27は、被覆層27と同様、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、被覆層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。被覆層27の厚さは、例えば20〜60μmとすることができる。
FPC5は、図1,3,4に示すように、基板7の長手方向に沿って延びており、上記のように基板7の第一主面7c上に位置する共通電極17の主配線部17aおよび各接続電極21に接続されている。
FPC5は、絶縁性の樹脂層の内部に複数のプリント配線が配線された周知のものであり、各プリント配線がコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。
より詳細には、図3,4に示すように、FPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に形成された各プリント配線5bが第二端面7b側の端部で露出し、はんだ23によって接合されている。そして、FPC5のプリント配線5bは、基板7の第一主面7c上に位置する共通電極17の主配線部17aの端部および各接続電極21の端部に接続されている。
このようにして、FPC5の各プリント配線5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されている。なお、FPC5は、放熱体1の突起部1bの上面に、両面テープあるいは樹脂等の接着剤(不図示)によって接着されることにより、放熱体1上に固定されている。
図5を用いて、ヘッド基体3とFPC5との接合について説明する。図5(a)は、第一端面7aから第二端面7b側を見たときの右端部を示しており、図5(b)は、第一端面7aから第二端面7b側を見たときの左端部を示している。図5に示す領域は、被覆層27から露出した接続領域であり、はんだ23を介してヘッド基体3とFPC5とが接続されている。
図5に示すように、配列方向の両端部に共通電極17の突出部17eが配置されており、突出部17e上に第一はんだ2が設けられている。また、配列方向の両端部以外の部位に接続電極21が配置されており、接続電極21上に第二はんだ4が設けられている。第一はんだ2および第二はんだ4上には、FPC5のプリント配線5bが引き出されており、これにより、ヘッド基体3とFPC5とが電気的に接続されている。
第一はんだ2は、BiまたはInを主成分とするSn−Bi系、あるいはSn−In系のはんだ材料を例示することができる。なお、BiまたはInを主成分にするとは、BiまたはInが50原子%以上含有されていることを示す。第一はんだ2にAg等の添加元素を加えていてもよい。なお、第一はんだ2の融点は110〜130℃と低い構成になっている。
第二はんだ4は、Snを主成分とするSn系のはんだ材料を例示することができる。なお、Snを主成分にするとは、Snが50原子%以上含有されていることを示す。第一はんだ2にAg、Cu、Bi等の添加元素を加えていてもよい。第二はんだ4の融点は220〜240℃と高い構成になっている。以下、第一はんだ2を、Biを主成分とするSn−Bi系はんだを用いて説明し、第二はんだ4を、Snを主成分とするSn系はんだを用いて説明する。
ここで、FPCは、ヘッド基体の基板よりも熱膨張係数が大きく、この熱膨張係数の違いに起因して、基板よりも大きく熱膨張することとなる。そのため、配列方向の端部において、共通電極とFPCのプリント配線とを電気的に接続する第一はんだに、大きな応力が生じることとなり、第一はんだが破壊され、共通電極とFPCとが剥離を生じる可能性がある。
これに対して、サーマルヘッドX1は、配列方向の両端部に第一はんだ2が配置されており、配列方向の端部以外の部位に第二はんだ4が配置されており、第一はんだ2の融点が、第二はんだ4の融点よりも低いことから、第一はんだ2が第二はんだ4に比べてやわらかい構成となる。このため、第一はんだ2により、配列方向の端部に生じる応力を効果的に緩和することができる。
そのため、共通電極17の突出部17eと、FPC5とが剥離を生じる可能性を低減することができる。それにより、ヘッド基体3とFPC5とが断線する可能性を低減することができ、信頼性の向上したサーマルヘッドX1を提供することができる。
また、第一はんだ2よりも融点の高い第二はんだ4を用いて、配列方向の両端部以外の領域を電気的に接続するため、第二はんだ4により接続信頼性を確保することができる。
つまり、サーマルヘッドX1は、融点が高く、硬い第二はんだ4により、ヘッド基体3とFPC5との接続信頼性を確保しつつ、融点が低く、やわらかい第一はんだ2により、配列方向の端部に生じる応力を緩和することができる。
なお、第一はんだ2および第二はんだ4の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。また、第一はんだ2および第二はんだ4の引きはがし強度は、マイクロオートグラフを用いて測定することができる。試験法としては、JEITA ET−7409/101、あるいはJIS Z 3198を例示することができる。
さらに、第一はんだ2が共通電極17上に設けられていることから、FPC5に変形が生じた場合においても、第一はんだ2が変形することにより、共通電極17の突出部17eとプリント配線5bとの接触面積が小さくなる可能性を低減することができる。それにより、比較的大きな電圧が印加される共通電極17において、突出部17eとプリント配線5bとの接触面積を確保することができ、第一はんだ2おける電気抵抗値が高くなる可能性を低減することができる。その結果、第一はんだ2の温度が上昇する可能性を低減することができる。また、接触面積を確保することができるため、基板7への放熱性を向上させることができる。
第一はんだ2および第二はんだ4は略同等の高さを有している。つまり、接続電極21からプリント配線5bまでの距離と、突出部17eからプリント配線5bまでの距離とが略同等となっている。そのため、配列方向において、FPC5の基板3からの高さがほぼ均一となっている。
なお、第一はんだ2および第二はんだ4の材料は上述したものに限られるものではない。例えば、第一はんだ2をInを主成分とする材料により形成し、第二はんだ4をSnを主成分とする材料により形成した場合においても、第一はんだ2の融点を第二はんだ4の融点よりも低くすることができる。
また、第一はんだ2および第二はんだ4がともにBiを含有し、第一はんだ2に含有されるBiの含有量が、第二はんだ4に含有されるBiの含有量よりも多い構成としてもよい。その場合においても、第一はんだ2の融点を第二はんだ4の融点よりも低くすることができる。
つまり、第一はんだ2と第二はんだ4とを比較して、第一はんだ2が、融点が低い構成となっていれば、第一はんだ2が、第二はんだ4よりも柔らかい構成となり、FPC5の変形に柔軟に追従することができる。それにより、接続信頼性の向上したサーマルヘッドX1を提供することができる。
ここで、両端部とは、配列方向におけるそれぞれの端から10%までの領域を示しており、言い換えると、サーマルヘッドX1の両端から10%ずつの領域が両端部であり、残りの80%の領域が中央部となっている。そのため、サーマルヘッドX1では、複数のはんだ2,4のうち、配列方向における両端に位置する共通電極17上に、第一はんだ2を配置しているが、共通電極17に隣り合う接続電極21上に、第一はんだ2を設けてもよい。
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図6を参照しつつ説明する。図6は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図6に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うように、取付部材80に取り付けられている。そのため、サーマルヘッドX1においては、基板7の第一主面7c側が記録媒体Pの搬送方向の上流側となり、基板7の第二主面7d側が記録媒体Pの搬送方向の下流側となる。
搬送機構40は、感熱紙、受像紙、カード等の記録媒体Pを図6の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧する機能を有している。そして、プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向
に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電圧および駆動IC11を動作させるための電圧を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
本実施形態のサーマルプリンタZは、搬送機構40によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に搬送しつつ、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させる。それにより、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
<第二の実施形態>
図7,8を用いてサーマルヘッドX2について説明する。サーマルヘッドX2は、第一はんだ102の構成がサーマルヘッドX1と異なっており、その他の構成は同様であるため説明を省略する。なお、同一の部材については同一の符号を付し、以下同様とする。
サーマルヘッドX2は、図8(c)に示すように、配列方向の両端部に第一はんだ102が配置されており、配列方向の両端部以外に第二はんだ4が配置されている。そして、図7(a)に示すように、第一はんだ102の高さh1が、第二はんだ4の高さh2よりも高い構成となっている。
そのため、FPC5が熱膨張して配列方向に延びた場合においても、第一はんだ102が、FPC5の伸びの変位に追従することができ、FPC5のプリント配線5bと、第一はんだ102との間で剥離が生じる可能性を低減することができる。
特に、サーマルヘッドX2は、駆動時に熱を発するため、サーマルヘッドX2の駆動に伴う温度サイクルにより、FPC5に伸びあるいは縮みが生じる場合がある。これに対して、サーマルヘッドX2は、第二はんだ4にてFPC5の伸びあるいは縮みによる変位を低減させるとともに、FPC5の変位に追従することができ、接続信頼性の向上したサーマルヘッドX2とすることができる。
第一はんだ102の高さh1は、第二はんだ4の高さh2の1.3〜2倍であることが好ましい。これにより、第一はんだ102がFPC5の変形に追従することができる。なお、第一はんだ102の高さh1は、共通電極17の突出部17eと、プリント配線5bとの距離を示しており、第二はんだ4の高さh2は、接続電極21と、プリント配線5bとの距離を示している。
図8を用いて、サーマルヘッドX2の作製方法について説明する。
まず、接続電極21および共通電極17がパターニングされたヘッド基体3と、配線パターン5bが設けられたFPC5と、ヒーターバー10とを準備する。FPC5の配線パターン5bには、あらかじめ第一はんだ102および第二はんだ4が設けられている。ヒーターバー10は、FPC5に設けられた第一はんだ102および第二はんだ4を溶融させるために、熱を与える部材であり、配列方向における両端部に切欠部12を備えている
。切欠部12は傾斜するように設けられており、ヒーターバーの圧着面10aが、配列方向の両端部において、斜めに傾斜することとなる。
次に、ヘッド基体3とFPC5との位置合わせを行う。位置合わせは、ヘッド基体3の接続電極21上に第二はんだ4が配置され、ヘッド基体3の共通電極17上に第一はんだ102が配置されるように、FPC5の位置を調整する。
そして、ヘッド基体3とFPC5との位置合わせが完了した複合体の被覆層27から露出した露出領域に、300〜360℃に加熱したヒーターバー10を、3(F)の押圧力で20秒押し当てて、第一はんだ102および第二はんだ4を溶融させ、ヘッド基体3とFPC5とを電気的に接続する。
このとき、ヒーターバー10の配列方向における両端部に切欠部12が設けられているため、配列方向における中央部の押圧力に比べて、配列方向における両端部の押圧力が小さくなることとなる。それにより、第一はんだ102の高さh1を第二はんだ4の高さh2よりも高い構成とすることができる。
なお、FPC5に第一はんだ102および第二はんだ4を設けた例を示したが、ヘッド基体3に第一はんだ102および第二はんだ4を設けて、ヒーターバー10により熱圧着してもよい。
<第三の実施形態>
図9を用いてサーマルヘッドX3について説明する。サーマルヘッドX3は、第一はんだ202の構成がサーマルヘッドX1と異なっている。また、共通電極17上に第一メッキ6が設けられている。また、接続電極21上に第二メッキ8が設けられている。そして、第一メッキ6上に第一はんだ202が設けられ、第二メッキ8上に第二はんだ4が設けられている。
第一メッキ6および第二メッキ8は、Au,Ag,Ni,Pd等の金属または合金により形成することができ、例えば、周知の無電解メッキ、あるいは電解メッキによって形成することができる。また、Niメッキからなる第一被覆層を形成し、第一被覆層上にAuメッキからなる第二被覆層を形成してもよい。この場合、第一被覆層の厚さを例えば1.5μm〜4μmとし、第二被覆層の厚さを例えば0.02μm〜0.1μmとすることができる。
第一メッキ6および第二メッキ8は、図示していないが、平面視して、矩形状に形成されており、配列方向に直行する方向(副走査方向)の長さは、略均一に形成されている。そして、図9(a),(b)に示すように、配列方向における第一メッキ6の長さW1(以下、幅W1と称する場合がある。)が、配列方向における第二メッキ8の長さW2(以下、幅W2と称する場合がある。)よりも短い構成となっている。
第一はんだ202および第二はんだ4は、第一メッキ6および第二メッキ8が設けられた領域に形成されるため、第一メッキ6の幅W1が、第二メッキ8の幅W2よりも小さいことに起因して、配列方向における第一はんだ202の長さW3(以下、幅W3と称する場合がある。)が、配列方向における第二はんだ4の長さW4(以下、幅W4と称する場合がある。)よりも短いこととなる。
第一はんだ202の幅W3が、第二はんだ4の幅W4よりも短いことから、第一はんだ202が、共通電極17に強固に固定されることがなくなり、FPC5の変形に対して先に追従しやすい構成とすることができる。
第一メッキ6の幅W1は、第二メッキ8の幅W2の1.3〜2倍であることが好ましい。それにより、第一はんだ204の幅W3を、第二はんだ4の幅W4よりも小さくすることができ、FPC5の変形に追従しやすい構成とすることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第一の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZを示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2,X3をサーマルプリンタZに用いてもよい。また、サーマルヘッドX1〜X3を適宜に組み合わせてもよい。
例えば、サーマルヘッドX2とサーマルヘッドX3を組み合わせて、第一はんだ2が第二はんだ4よりも高さが高く、幅が狭い構成としてもよい。この場合、第一はんだ2は、FPC5の変形に対して柔軟に追従することができる。
サーマルヘッドX1では、共通電極17は、基板7の第一端面7a上から、基板7の第二主面7d上、および基板7の第二端面7b上を介して、基板7の上面上にわたって延びているが、これに限定されるものではない。例えば、共通電極17を基板7の第一端面7aおよび第二主面7d上にのみ形成してもよい。この場合、基板7の第二主面7d上に形成された共通電極17とFPC5のプリント配線5bとを、別途設けたジャンパー線によって接続すればよい。また、共通電極17は、第一端面7aおよび第一主面7cのみに設けてもよい。
また、追従性のある半田材料である第一はんだ2にて、ヘッド基体3と基板7とを熱圧着方式にて接合する場合に、熱膨張係数差によって発生する基板7の湾曲形状も、この両端の半田組成を低融点化する事により改善できる。
また、サーマルヘッドX1では、FPC5を介してヘッド基体3の基板7上に設けられた共通電極17および接続電極21を外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続しているが、これに限定されるものではない。例えば、FPC5のように可撓性を有するフレキシブルプリント配線板ではなく、硬質のプリント配線板を介してヘッド基体3の各種配線を外部の電源装置等に電気的に接続してもよい。また、接続電極21に直接コネクタ31を接続してもよい。この場合、例えば、ヘッド基体3の共通電極17および接続電極21とコネクタ31のコネクタピン(不図示)とを第一はんだ2および第二はんだ4によって接続すればよい。
また、サーマルヘッドX1では、図3,4に示されるように、電気抵抗層15が、蓄熱層13上のみならず、基板7の第一主面7cおよび第二主面7d上にも設けられているが、基板7の第一端面7a上のリード部17cと個別電極層19とに接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13上にのみ設けられていてもよい。また、基板7の第一端面7a上の共通電極17および個別電極19を蓄熱層13上に直接形成し、蓄熱層13上の共通電極17の先端部と個別電極19の先端部との間の領域にのみ電気抵抗層15が設けられていてもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドX1では、図3,4に示すように、基板7の第一端面7aが凸状の曲面形状を有しているが、基板7の第一端面7aの表面形状および傾斜角度は特に限定されるものではなく、任意の形態をとることができる。例えば、基板7の第一端面7aは、平面形状であってもよいし、屈曲した面で形成されていてもよい。また、基板7の第一主面7cおよび第二主面7dと基板7の第一端面7aとのなす角度が直角ではなく、鈍角または鋭角であってもよい。
さらにまた、発熱部9が基板7の第一端面7aに設けられた例を示したがこれに限定されるものではない。発熱部9が、第一主面7cに設けられた平面ヘッドにおいても、本発明を適用することができる。