JP6199814B2 - サーマルヘッドおよびサーマルプリンタ - Google Patents

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Description

本発明は、サーマルヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
従来、ファクシミリあるいはビデオプリンタ等の印画デバイスとして、種々のサーマルヘッドが提案されている。例えば、斜面を有する基板と、斜面上に設けられた第1蓄熱層と、第1蓄熱層上に設けられた発熱部と、発熱部に電気的に接続された電極とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1の図2参照)。上記のサーマルヘッドは、斜面上に第1蓄熱層を設けることにより、サーマルヘッドの熱応答性を向上させている。
特開平09−267502号公報
しかしながら、上記のサーマルヘッドは、斜面上に設けられた第1蓄熱層の放熱性が悪く、熱応答性が悪い問題がある。
本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドは、第1主面、該第1主面の反対側に設けられた第2主面、前記第1主面から傾斜した斜面、前記第1主面と前記斜面とを接続する第1角部、前記斜面と前記第2主面とを接続する端面、および、前記斜面と前記端面とを接続する第2角部を有する基板と、前記斜面上に設けられた第1蓄熱層と、該第1蓄熱層上に設けられた発熱部と、前記第1主面上に前記第1蓄熱層とは離間した状態で設けられた第2蓄熱層とを備えている。また、該第2蓄熱層の一部が、前記斜面上にまで設けられている。
本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタは、上記のいずれかに記載のサーマルヘッドと、前記発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、前記発熱部上に前記記録媒体を押圧するためのプラテンローラとを備えている。
本発明によれば、第1蓄熱層の放熱性を向上させることができ、サーマルヘッドの熱応答性を向上させることができる。
第1の実施形態に係るサーマルヘッドの平面図である。 図1に示すサーマルヘッドの側面図である。 図1に示すI−I線断面図である。 図3に示すサーマルヘッドの一部を拡大して示す断面図である。 第1の実施形態に係るサーマルプリンタの概略構成を示す概略図である。 第2の実施形態に係るサーマルヘッドを示し、図4に対応する断面図である。 第3の実施形態に係るサーマルヘッドを示し、図4に対応する断面図である。 第4の実施形態に係るサーマルヘッドを示し、図4に対応する断面図である。
<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜4を参照して説明する。図1においては、フレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)、保護層25、および第2被覆層27を一点鎖線にて省略して示している。図2においては、保護層25、および被覆部材29を省略して示している。図4においては、保護層25、および第1被覆層27を省略して示しており、図6〜8においても同様である。図6〜8において、第1蓄熱層13aの重心を通り斜面7eに対して垂直な直線L1と斜面7eとの交点は黒丸で示している。
サーマルヘッドX1は、放熱体1と、ヘッド基体3と、FPC5とを備えている。ヘッド基体3は放熱体1上に載置されている。FPC5は、一部がヘッド基体3上に載置されており、ヘッド基体3と電気的に接続されている。
放熱体1は、板状に形成されており、平面視して長方形状をなしている。放熱体1は、板状の台部1aと、台部1aから突出した突起部1bとを有している。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。また、台部1aの上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。なお、突起部1bは必ずしも設けなくてもよい。
ヘッド基体3は、平面視して、板状に形成されており、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体P(図5参照)に印画を行う機能を有する。
FPC5は、ヘッド基体3と電気的に接続されており、ヘッド基体3に電流および電気信号を供給する機能を有した配線基板である。FPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に、パターニングされたプリント配線5bが複数設けられている。FPC5にはコネクタ31が設けられており、FPC5と外部とを電気的に接続している。
FPC5のプリント配線5bは、導電性接合材23を介してヘッド基体3の接続電極21と接続されている。それにより、ヘッド基体3とFPC5とが電気的に接続されている。導電性接合材23は、半田材料あるいは電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電フィルム(ACF)を例示することができる。なお、導電性接合剤23として半田材料を用いる場合に、接続電極21にAu、Ni、あるいはPd等のメッキを設けることが好ましい。それにより半田材料の濡れ性を高めることができる。
なお、FPC5と放熱体1との間には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板(不図示)を設けてもよい。また、配線基板としてFPC5を用いた例を示したが、可堯性のあるFPC5でなく、硬質な配線基板を用いてもよい。硬質なプリント配線基板としては、ガラスエポキシ基板あるいはポリイミド基板等の樹脂により形成された基板を例示することができる。また、配線基板を設けずに、ヘッド基体3の接続電極21に、直接コネクタ31を電気的に接続してもよい。
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料、あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7は、第1主面7aと、第2主面7bと、第1端面7cと、第2端面7dと、斜面7eと、第1角部7fと、第2角部7gとを備えている。第1端面7cおよび斜面7eは、第1主面7aと第2主面7bとを接続しており、第2端面7dは第1主面7aと第2主面7bとを接続している。斜面7eは、第1主面7aと第1端面7cとを接続しており、第1主面7aに対して傾斜している。第1角部7fは、第1主面7aと斜面7eとを接続しており、第2角部7gは、第1端面7cと斜面7eとを接続している。斜面7eは、第1主面7aからの傾斜角が140〜170°であることが好ましく、言い換えると、断面視して、第1角部7fは、第1主面7aに対して140〜170°であり、第2角部7gは、第1端面7cに対して10〜40°であることが好ましい。
基板7は、断面視して、台形状をなしており、斜面7eの部位で基板7の厚みが薄くなっている。そのため、基板7の熱容量は、第1主面7aの領域に比べて斜面7eの領域が小さくなっている。すなわち、基板7は、熱容量の大きい第1主面7aの下方に位置する領域と、熱容量の小さい斜面7eの下方に位置する領域とを備えている。そして、基板7の厚みが第2角部7gに向かうにつれ小さくなることから、基板7の熱容量も第1角部7fから第2角部7gに向かうにつれ小さくなっている。そのため、基板7は、第2角部7g近傍の熱容量が小さく、第1角部7fおよび第1主面7a近傍の熱容量が大きい構成となる。
蓄熱層13は、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとを有している。斜面7e上には第1蓄熱層13aが形成されており、第1主面7a上には第2蓄熱層13bが形成されている。第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとはそれぞれ離間した状態で設けられている。
第1蓄熱層13aは、斜面7eの略全域にわたって設けられており、斜面7eに対して直交する方向に断面弧状をなして突出している。そして、第1蓄熱層13aの重心を通り斜面7eに対して垂直な直線L1と斜面7eとの交点(以下、交点と称する)が、第2角部7g側に配置されている。第1蓄熱層13aは、印画する記録媒体Pを、発熱部9上に形成された保護層25に良好に押し当てるように機能する。
第1蓄熱層13aは、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。それにより、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。特に、第1蓄熱層13aは、斜面7e上にのみ設けられているため、第1蓄熱層13aの体積は小さいものとなり、熱応答特性の優れたサーマルヘッドX1とすることができる。
第2蓄熱層13bは、第1主面7aの略全域にわたって設けられており、第1主面7aの表面を被覆する機能を有している。そのため、後述する個別電極19、および接続電極21の厚みが薄い場合においても、個別電極19、および接続電極21が断線する可能性を低減することができる。特に、近年、サーマルヘッドX1の高密度化に伴って、後述する駆動IC11の端子同士の距離が短くなっているため、個別電極19が断線する可能性を低減することができる。
また、第2蓄熱層13bは、第1蓄熱層13aと離間して配置されており、間隔33をあけた状態で配置されている。それにより、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとが、熱的に独立した状態で設けられている。そのため、斜面7eに設けられた第1蓄熱層13aの熱容量が大きくなることを低減することができる。
第1蓄熱層13a、および第2蓄熱層13bは、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストをそれぞれ印刷した後、ガラスペーストを焼成する
ことにより作製することができる。
第1蓄熱層13a、および第2蓄熱層13bの厚みは、30〜80μmであることが好ましい。それにより、サーマルヘッドX1の熱応答特性を確保しつつ、個別電極19、および接続電極21に断線が生じる可能性を低減することができる。
第2蓄熱層13bの厚みは、第1蓄熱層13aの厚みよりも厚いことが好ましい。それにより、サーマルヘッドX1の熱応答性を確保しつつ、個別電極19、および接続電極21が断線する可能性を低減することができる。また、第1蓄熱層13aの厚みが薄いことにより、基板7の第1主面7aと第1蓄熱層13aの上面との間で大きな段差が生じることを低減することができ、第1角部7f上の個別電極19が剥離する可能性を低減することができる。
第1被覆層8は、基板7の斜面7e、および第1主面7a上に設けられている。より詳細には、第1蓄熱層13a、基板7の第1主面7a、および第2蓄熱層13b上に設けられている。第1被覆層8は、後述する電気抵抗層、および各種電極をフォトエッチングにより配線パターンを形成する際に、エッチング液から第1蓄熱層13a、および第2蓄熱層13bがエッチングされることを抑制する耐エッチング層として機能している。
第1被覆層8は、例えば、SiC、SiN、あるいはSiALON等の材料を用いて、スパッタリング等の薄膜形成技術により形成することができる。第1被覆層8の厚みは、0.01〜1μmであることが好ましい。それにより、耐エッチング性を確保することができる。なお、第1被覆層8は必ずしも設ける必要はない。
電気抵抗層15は第1被覆層8の上面に設けられており、電気抵抗層15上には、共通電極17、個別電極19、および接続電極21が設けられている。電気抵抗層15は、共通電極17、個別電極19、および接続電極21と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。
電気抵抗層15の露出領域は、第1蓄熱層13a上に列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1,2では簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、共通電極17、複数の個別電極19、および複数の接続電極21が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19および接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極17は、主配線部17a,17d、17eと、副配線部17bと、リード部17cと、端子部17fとを備えている。主配線部17aは、基板7の第1端面7c上に設けられており、主走査方向に延びるように設けられている。主配線部17dは、基板7の第2主面7b上に設けられており、第2主面7bの略全域にわたって設けられている。主配線部17eは、基板7の第2端面7d上に設けられており、第2端面7dの略全域にわ
たって設けられている。
副配線部17bは、第2端面7dの近傍における基板7の第1主面7a上に設けられており、副走査方向に沿って設けられている。端子部17fは、基板7の第1主面7aの主走査方向における両端部に配置されており、副配線部17bから副走査方向に延びるように設けられている。端子部17fは、FPC5の配線パターン5bと電気的に接続される。リード部17cは、基板7の斜面7e上に設けられており、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びるように設けられている。
共通電極17は、斜面7e上から、第1端面7c、第2主面7b、および第2端面7dをわたって第1主面7aに引き出されており、端子部17fにより外部と電気的に接続されている。
複数の個別電極19は、基板7の斜面7e、および第1主面7aに設けられており、発熱部9と駆動IC11とを電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数の接続電極21は、基板7の第1主面7a上に設けられており、駆動IC11とFPC5とを電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数の接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部と接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いればよい。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、例えば、各々を構成する材料層を第1被覆層8上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、同じ工程によって同時に形成することができる。
図1,3に示すように、基板7の斜面7e、第1主面7aの一部、第1端面7c、および第2主面7bの一部上に、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。
保護層25は、発熱部9、共通電極17、および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。保護層25は、SiN、SiO、SiON、SiC、SiCN、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができる。保護層25は、本実施形態のように単層で構成してもよく、複数の層を積層して構成してもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
また、図1,3に示すように、基板7の第1主面7a、第2主面7b、および第2端面7d上には、共通電極17、個別電極19および接続電極21を部分的に被覆する第2被覆層27が設けられている。
第2被覆層27は、共通電極17、個別電極19および接続電極21の被覆した領域を
、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。第2被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
第2被覆層27には、駆動IC11と接続される個別電極19、および接続電極21を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、開口部を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19および接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって封止されている。
次に、図4を用いて蓄熱層13について詳細に説明する。
蓄熱層13は、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとを有している。斜面7e上には第1蓄熱層13aが形成されており、第1主面7a上には第2蓄熱層13bが形成されている。第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとはそれぞれ離間した状態で設けられている。第1蓄熱層13aは、第2角部7g上にも設けられている。
第1蓄熱層13aは、基板7の熱容量の小さな基板7の斜面7e上に設けられている。そして、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとを備えており、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとが互いに離間している。
第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとが一体になっている場合は、蓄熱層13の全体の熱容量が大きくなるため、熱応答性が悪く高速化に不向きであるが、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとが互いに離間しているため、発熱部9近傍の第1蓄熱層13aを小さくでき、熱容量が大きくなることを抑制できるため、熱応答特性が低下することを抑えることができる。また、発熱部9の下方に位置する第1蓄熱層13aが基板7の斜面7eのみに形成されていることから、印画に尾引きが生じる可能性を低減することができる。
第2蓄熱層13bは、その大部分が第1主面7a上に設けられており、第1蓄熱層13aと離間した状態で、一部が斜面7e上にまで設けられている。
これにより、発熱部9に生じた熱が、第1蓄熱層13aを熱伝達して基板7の斜面7eに伝わり、基板7の斜面7eの熱を第2蓄熱層13bが第1主面7aに熱伝達させることができる。その結果、基板7の斜面7eの放熱性を向上させることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を向上させることができる。
また、第2蓄熱層13bが、第1蓄熱層13aの縁と100〜1000μmの間隔33をあけて配置されることが好ましい。それにより、プラテンローラ50(図5参照)とサーマルヘッドX1との接触状態が良好となり、個別電極19への応力が緩和されることとなる。
すなわち、サーマルヘッドX1の印画時において、プラテンローラ50は、第1蓄熱13aのみならず第2蓄熱層13bの斜面7e上に設けられた端部にも接触することとなる。その結果、プラテンローラ50の押圧力を分散させることができ、第1角部7f上に生じる応力を緩和することができる。また、第2蓄熱層13bが、第1蓄熱層13aの縁と100μm以上の間隔33をあけて配置されていることにより、大きな押圧力が第2蓄熱層13bに生じる可能性を低減することができる。
また、サーマルヘッドX1の高速化が求められており、発熱部9の下方に位置する第1
蓄熱層13aの熱容量を小さくすることが検討されている。しかしながら、第1蓄熱層13aの熱容量を小さくするために、第1蓄熱層13aの高さを低くすると、サーマルヘッドX1と記録媒体P(図5参照)との接触状態が悪くなり、精細な印画を行えない可能性がある。また、第1蓄熱層13aの熱容量を小さくしても、サーマルヘッドX1全体の熱容量は、放熱体1まで熱経路の合計となるため、基板7の熱容量にも依存している。
サーマルヘッドX1は、第1蓄熱層13aが斜面7e上に設けられており、交点と第2角部7gまでの距離La(以下、距離Laと称する)が、交点と第1角部7fまでの距離(以下、距離Lbと称する)よりも短い構成を有している。
そのため、第1蓄熱層13aが、基板7のうち厚みの薄い第2角部7g側に配置されることとなる。そのため、第1蓄熱層13aと放熱体1との距離を近づけることができ、第1蓄熱層13aの熱を放熱体1へ早く熱伝達することができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を向上させることができる。
また、第1蓄熱層13aの厚みを確保した場合でも、放熱体1までの距離が近いため第1蓄熱層13aおよび基板7の発熱部9の下方に位置する領域の熱容量を小さくすることができ、記録媒体Pとの良好な接触状態を確保しつつ、サーマルヘッドX1の熱応答性を向上させることができる。それにより、高速駆動が可能なサーマルヘッドX1を提供することができる。
また、第1蓄熱層13aが第2角部7g上に設けられている。それにより、第1蓄熱層13aが第2角部7gを覆うような構成となり、記録媒体Pが第2角部7gと接触して記録媒体Pにキズが生じる可能性を低減することができる。これは、記録媒体Pを放熱体1側(図4に示す下方)に引き剥がすように、記録媒体Pを搬送する場合に、特に大きな効果を奏する。
なお、第1蓄熱層13aが斜面7e上から第1端面7c上にまでわたって設けられていてもよい。その場合、第1蓄熱層13aが第2角部7gを完全に被覆する構造となり、記録媒体Pにキズが生じる可能性をさらに低減することができる。
また、サーマルヘッドX1は、第2蓄熱層13bの第1主面7aからの高さHb(以下、高さHbと称する)が、第1蓄熱層13aの斜面7eからの高さHa(以下、高さHaと称する)よりも高い構成を有している。また、第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bは主走査方向へ延びるように形成されている。
それにより、第2蓄熱層13bの熱容量が、第1蓄熱層13aの熱容量よりも大きな構成となる。そのため、発熱部9に生じた熱を第2蓄熱層13bに効率よく熱伝達することができ、大きな熱容量を持つ第1主面7aを形成する基板7に熱伝達させることができる。その結果、サーマルヘッドX1の熱効率をさらに向上させることができる。
高さHbは、30〜100μmであることが好ましく、高さHaは、10〜30μmであることが好ましい。それにより、発熱部9の発熱を効率よく熱伝達することができる。
なお、電気抵抗層15の一部が発熱部9を形成する例を示したがこれに限定するものではない。例えば、共通電極17と個別電極19との間にのみ電気抵抗層15を設けて発熱部9を形成してもよい。また、第1被覆層8を設けた例を示したが、第1被覆層8は必ずしも設ける必要はない。また、第2蓄熱層13bは、主走査方向におけるすべての第1角部7f上に設けられていなくてもよい。例えば、第2蓄熱層13bの縁を波形状に形成し、凸部のみ斜面7e上に設けてもよい。
次に、サーマルプリンタZ1について、図5を参照しつつ説明する。
図5に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図5の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタZ1は、図5に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
図6を用いてサーマルヘッドX2について説明する。なお、サーマルヘッドX1と同一の部材については同一の符号を付し、以下同様とする。また、図6にて、第1蓄熱層213aの縁を黒丸で示している。
サーマルヘッドX2は、蓄熱層113の構成がサーマルヘッドX1の蓄熱層13の構成と異なっている。蓄熱層113は、第1蓄熱層113aと第2蓄熱層13bとを備えており、第2蓄熱層13bについて説明は省略する。
第1蓄熱層113aは斜面7e上に設けられており、第1角部7f上には設けられてお
らず、第1角部7fと離間した状態で配置されている。それにより、第1蓄熱層113aが、基板7のうち熱容量の大きな第1角部7f近傍と離間した状態で配置されることとなる。そのため、第1蓄熱層113aの熱容量が大きくなることを抑えることができ、熱応答特性の向上したサーマルヘッドX2とすることができる。
また、第1蓄熱層113aは斜面7e上に設けられており、第1角部7fおよび第2角部7g上には設けられておらず、第1角部7fおよび第2角部7gと離間した状態で配置されている。そして、サーマルヘッドX2は、第1蓄熱層113aの縁と第2角部7gとの距離が、第1蓄熱層113aの縁と第1角部7fとの距離よりも短い構成を有している。
それにより、第1蓄熱層113aが、第1角部7fと離間した状態で配置されるとともに、第1蓄熱層113aの重心が第2角部7g側に設けられやすくなる。そのため、サーマルヘッドX2の熱応答特性をさらに向上させることができる。
また、第1蓄熱層113aが、第1角部7fおよび第2角部7gと離間していることにより、第1蓄熱層113aの主走査方向における直線性を維持することができ、第1蓄熱層113aが主走査方向において第1蓄熱層113aの量が変化する可能性を低減することができる。すなわち、第1角部7fおよび第2角部7g上に設けられた第1蓄熱層113aでは、印刷の際に製造上のばらつきで第1角部7fおよび第2角部7gにマスクがしっかり接触せず、第1端面7cと第1主面7aに第1蓄熱層113aが垂れる可能性があるため、第1蓄熱層113aが、第1角部7fおよび第2角部7gと離間していることにより、直線性が維持され第1蓄熱層113aを断面視して、凸形状を均一にすることができる。
なお、サーマルヘッドX2では、第1蓄熱層113aが第1角部7fおよび第2角部7gから離間した例を示したが、第1蓄熱層213aが第1角部7f上に設けられ、第2角部7gと離間するように配置してもよい。
<第3の実施形態>
図7を用いて、サーマルヘッドX3について説明する。サーマルヘッドX3は、蓄熱層213を備えており、蓄熱層213は、第1蓄熱層213aと、第2蓄熱層13bとを備えている。
サーマルヘッドX3は、第1蓄熱層213aの斜面7eからの高さHaが、第2蓄熱層13bの第1主面7aからの高さHbよりも高くなっている。
また、個別電極219およびリード部217cの配置がサーマルヘッドX1と異なっている。具体的には、斜面7eに設けられた個別電極219の長さが短くなり、斜面7eに設けられたリード部217cの長さが長くなり、発熱部209が、平面視して、斜面7eの第1角部7f側に配置されている。
そして、発熱部209の下方に位置する第1蓄熱層213aが、第1主面7aを延長した仮想線よりも高い位置に配置されている。そのため、サーマルヘッドX3を平置きした場合においても、記録媒体P(図5参照)を第1主面7aに対して沿った方向に搬送することができる。
その結果、従来の平置きのいわゆる平面ヘッドと同じ機構で記録媒体Pを搬送し、印画を行うことができる。その結果、平面ヘッドの機構のまま、斜面7eに発熱部209を設けたサーマルヘッドX3に置き換えることができる。
<第4の実施形態>
図8を用いてサーマルヘッドX4について説明する。
第2被覆層327は、第2蓄熱層13b上に設けられており、その大部分が第1主面7a上に設けられている。そして、第2被覆層327の第1蓄熱層13a側の端部が、斜面7e上に設けられている。言い換えると、第2被覆層327は、第1主面7a上から、一部が斜面7e上にまで設けられている。
サーマルヘッドX4は、第2被覆層327が第2蓄熱層13b上に設けられており、平面視して、第2被覆層327の一部が第1蓄熱層13a上に配置されている。そのため、第2被覆層327が、発熱部9から第1蓄熱層13aに熱伝達した熱を、第2蓄熱層13bに熱伝達させることができる。その結果、発熱部9に生じた熱を第2蓄熱層13bに効率よく熱伝達させることができ、サーマルヘッドX4の熱応答特性をさらに向上させることができる。
また、第2被覆層327の第1端面7c側の端部と、発熱部9とは所定の距離をあけて離間していることが好ましい。それにより、記録媒体P(図5参照)が発熱部9に向けて搬送された際に、記録媒体Pと第2被覆層327とが接触する可能性を低減することができる。それゆえ、記録媒体Pの搬送状態が悪くなる可能性を低減することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X4をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X4を組み合わせてもよい。
サーマルヘッドX1では、電気抵抗層15上に共通電極17および個別電極19が形成されている例を示したが、共通電極17および個別電極19の双方が発熱部9に接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を構成してもよい。
また、共通電極17および個別電極19を形成した後に、印刷等により電気抵抗層15を形成する厚膜ヘッドに本発明を適用してもよい。
また、共通電極17が、基板7の第1主面7a上に、副配線部17bおよび端子部17fを設ける例を示したがこれに限定されるものではない。基板7の第1主面7a上に、副配線部17bおよび端子部17fを設けずに、基板7の第2主面7b上に設けられた主配線部17dと、FPC5とをジャンパー線により電気的に接続してもよい。また、共通電極17が主配線部17aを有さずに、隣り合う発熱部9同士を接続させた折り返し電極構造としてもよい。
X1〜X4 サーマルヘッド
Z1 サーマルプリンタ
L1 第1蓄熱層の重心を通り斜面に対して主直な直線
C 交点
1 放熱体
3 ヘッド基体
5 フレキシブルプリント配線板(FPC)
7 基板
7a 第1主面
7b 第2主面
7c 第1端面
7d 第2端面
7e 斜面
7f 第1角部
7g 第2角部
9 発熱部
11 駆動IC
13 蓄熱層
13a 第1蓄熱層
13b 第2蓄熱層
15 電気抵抗層
17 共通電極
19 個別電極
21 接続電極
23 導電性接合材
25 保護層
27 第2被覆層
29 被覆部材

Claims (9)

  1. 第1主面、該第1主面の反対側に設けられた第2主面、前記第1主面から傾斜した斜面、前記第1主面と前記斜面とを接続する第1角部、前記斜面と前記第2主面とを接続する端面、および、前記斜面と前記端面とを接続する第2角部を有する基板と、
    前記斜面上に設けられた第1蓄熱層と、
    該第1蓄熱層上に設けられた発熱部と、
    前記第1主面上に前記第1蓄熱層とは離間した状態で設けられた第2蓄熱層と、を備え、
    該第2蓄熱層の一部が、前記斜面上にまで設けられていることを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 前記第1蓄熱層の重心を通り前記斜面に対して垂直な直線および前記斜面の交点と、前記第2角部との距離が、前記交点と前記第1角部との距離よりも短い、請求項1に記載のサーマルヘッド。
  3. 前記第1蓄熱層が、前記第1角部と離間している、請求項1または2に記載のサーマルヘッド。
  4. 前記第1蓄熱層が、前記第2角部と離間しており、前記第1蓄熱層の縁と前記第2角部との距離が、前記第1蓄熱層の縁と前記第1角部との距離よりも短い、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
  5. 前記第1蓄熱層が、前記第2角部上に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
  6. 前記第2蓄熱層の前記第1主面からの高さが、前記第1蓄熱層の前記斜面からの高さよりも高い、請求項1〜5のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
  7. 前記第1蓄熱層の前記斜面からの高さが、前記第2蓄熱層の前記第1主面からの高さよりも高い請求項1〜5のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
  8. 前記第2蓄熱層上に設けられた被覆層をさらに備え、
    前記第1主面を平面視して、前記被覆層の一部が前記第1蓄熱層上に配置されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のサーマルヘッドと、
    前記発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、
    前記発熱部上に前記記録媒体を押圧するプラテンローラと、を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。

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