JP6927767B2 - サーマルヘッドおよびサーマルプリンタ - Google Patents

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Description

本発明は、サーマルヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
従来、ファクシミリあるいはビデオプリンタ等の印画デバイスとして、種々のサーマルヘッドが提案されている。例えば、基板と、基板上に位置する蓄熱層と、少なくとも一部が蓄熱層上に位置する発熱部と、基板上に設けられ、発熱部に電気的に繋がっている電極とを備えるサーマルヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平4−338557号公報
本開示のサーマルヘッドは、基板と、蓄熱層と、発熱部とを備えている。前記蓄熱層は、前記基板上に位置する。前記発熱部は、少なくとも一部が前記蓄熱層上に位置する。前記電極は、前記基板上に位置し、前記発熱部に電気的に繋がっている。また、前記発熱部は、第1部位と第2部位とを有している。前記第1部位は、前記基板との間に前記蓄熱層が位置する。前記第2部位は、前記基板との間に前記蓄熱層が位置していない。
本開示のサーマルプリンタは、上記サーマルヘッドと、搬送機構と、プラテンローラとを備えている。前記搬送機構は、前記発熱部上を通過するように記録媒体を搬送する。前記プラテンローラは、前記録媒体を押圧する。
図1は、サーマルヘッドX1の概略を示す平面図である。 図2は、図1に示すII−II線断面図である。 図3は、図1に示すサーマルヘッドX1の発熱部近傍を拡大して示す断面図である。 図4は、図1に示すサーマルヘッドX1の発熱部近傍を拡大して示す模式図である。 図5は、サーマルヘッドX1の製造過程を示す断面図である。 図6は、サーマルプリンタZ1の概略構成を示す概略図である。 図7は、サーマルヘッドX2の発熱部近傍を拡大して示す断面図である。 図8は、サーマルヘッドX2の発熱部近傍を拡大して示す模式図である。
従来のサーマルヘッドは、発熱部が蓄熱層上に位置しており、発熱部の熱を蓄熱層が蓄熱することにより、サーマルヘッドを所望の温度まで昇温させる時間を短くすること(以下、昇温特性と称する)ができた。
近年、サーマルヘッドは、高速印画が求められており、蓄熱層において蓄熱性を維持しつつ、次の印画に備えて発熱部の熱を効率よく放熱する必要がある。しかしながら、従来のサーマルヘッドでは、発熱部の放熱性が十分ではなかった。
本開示のサーマルヘッドは、蓄熱層の蓄熱性を維持しつつ、発熱部の熱を効率よく放熱することができる。以下、本開示のサーマルヘッドおよびそれを用いたサーマルプリンタ
について、詳細に説明する。
<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜5を参照して説明する。図1では、フレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)、保護層25、およびコネクタ31を一点鎖線にて省略して示している。図4では、保護層25を省略して示しており、電気抵抗層15の下方に位置する蓄熱層13をハッチングにて示している。
サーマルヘッドX1は、放熱体1と、ヘッド基体3と、FPC5とを備えている。ヘッド基体3は放熱体1上に載置されている。FPC5は、一部がヘッド基体3上に載置されており、ヘッド基体3と電気的に接続されている。
放熱体1は、板状に形成されており、平面視して長方形状をなしている。放熱体1は、台部1aと、突起部1bとを有している。台部1aは、板状であり、上面には両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。突起部1bは、台部1aから上方に向けて突出している。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。
ヘッド基体3は、平面視して、板状に形成されており、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体P(図6参照)に印画を行う機能を有する。
FPC5は、ヘッド基体3と電気的に接続されており、絶縁性の樹脂層5aの内部に、パターニングされた配線5bが複数設けられており、ヘッド基体3に電流および電気信号を供給する配線基板である。FPC5にはコネクタ31が設けられており、コネクタ31が、FPC5と外部とを電気的に接続している。
FPC5の配線5bは、導電性接合材23を介してヘッド基体3に電気的に接続されている。それにより、ヘッド基体3とFPC5とが電気的に接続されている。導電性接合剤23は、半田材料あるいは電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電性樹脂を例示することができる。なお、導電性接合剤23として半田材料を用いる場合に、後述する接続電極21にAu、Ni、あるいはPd等のメッキを設けてもよい。それにより、半田材料の濡れ性を高めることができる。
FPC5と放熱体1との間には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板(不図示)を設けてもよい。補強板は、FPC5の下面に両面テープあるいは接着剤等によって接着されることにより、FPC5を補強する。
なお、配線基板としてFPC5を用いた例を示したが、可撓性のあるFPC5でなく、硬質な配線基板を用いてもよい。硬質なプリント配線基板としては、ガラスエポキシ基板あるいはポリイミド基板等の樹脂により形成された基板を例示することができる。また、FPC5を設けずに、コネクタ31をヘッド基体3に直接接続してもよい。
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料、あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7は、上面7aと、下面7bと、第1側面7cと、第2側面7dと、斜面7eと、
を備えている。第1側面7cおよび斜面7eは、上面7aと下面7bとを接続しており、第2側面7dは上面7aと下面7bとを接続している。斜面7eは、上面7aと第1側面7cとを接続しており、上面7aに対して傾斜している。上面7aと斜面7eとのなす角は、190〜230°とすることができる。
基板7上には、蓄熱層13が設けられている。具体的には、上面7a上には第1蓄熱層13aが形成されており、第1側面7c上には第2蓄熱層13bが形成されている。
第1蓄熱層13aは、上面7a上に設けられており、主走査方向に沿って、斜面7eと隣り合うように設けられている。第1蓄熱層13aは、斜面7e上には設けられていない。第1蓄熱層13aは、発熱部9を通り、上面7aに対して直交する方向の断面において、上面7aより上方に突出して設けられており、第1蓄熱層13aの上面が弧状をなしている。そして、第1蓄熱層13aの上面は、斜面7eと連続的に形成されている。
第2蓄熱層13bは、第1側面7c上に設けられており、主走査方向に沿って、斜面7eと隣り合うように設けられている。第2蓄熱層13bは、斜面7e上に設けられていない。第2蓄熱層13bは、発熱部9を通り、第1側面7cに対して直交する方向の断面において、第1側面7cより側方に突出して設けられており、第2蓄熱層13bの上面が弧状をなしている。そして、第2蓄熱層13bの上面は、斜面7eと連続的に形成されている。第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bは、発熱部9で発生した熱を一時的に蓄熱する機能を有する。
第2蓄熱層13bは、第1蓄熱層13aと離間して配置されており、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとが、熱的に独立した状態で設けられている。それにより、蓄熱層13全体として熱容量が大きくなりすぎず、放熱性が低下しにくい。
第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bは、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。それにより、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めることができる。
第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bは、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストをそれぞれ印刷した後、ガラスペーストを焼成することにより作製することができる。
電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13上に設けられている。すなわち、電気抵抗層15は、基板7の上面7a、斜面7e、第1側面7c、下面7b、第2側面7dおよび蓄熱層13上に設けられている。電気抵抗層15上には、共通電極17、個別電極19、および接続電極21が設けられている。電気抵抗層15は、共通電極17、個別電極19、および接続電極21と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。
電気抵抗層15の露出領域は、第1蓄熱層13a、斜面7e、および第2蓄熱層13b上に列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。すなわち、電気抵抗層15のうち、共通電極17と個別電極19とが設けられていない領域が、発熱部9を構成している。複数の発熱部9は、説明の便宜上、簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されて
いる。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、共通電極17、複数の個別電極19、および複数の接続電極21が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19および接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極17は、主配線部17a、17d、17eと、副配線部17bと、リード部17cと、端子部17fとを備えている。主配線部17aは、第1側面7c上に設けられており、主走査方向に延びるように設けられている。主配線部17dは、下面7b上に設けられており、下面7bの略全域にわたって設けられている。主配線部17eは、第2側面7d上に設けられており、第2側面7dの略全域にわたって設けられている。
副配線部17bは、第2側面7dの近傍における上面7a上に設けられており、副走査方向に沿って設けられている。端子部17fは、上面7aの主走査方向における両端部に配置されており、副配線部17bから副走査方向に延びるように設けられている。端子部17fは、FPC5の配線パターン5bと電気的に接続される。リード部17cは、斜面7e上に設けられており、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びるように設けられている。
共通電極17は、斜面7e上から、第1側面7c、下面7b、および第2側面7dをわたって上面7aの第2側面7d側に引き出されており、端子部17fにより外部と電気的に接続されている。
複数の個別電極19は、斜面7eから上面7aに引き出されており、発熱部9と駆動IC11とを電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数の接続電極21は、上面7a上に設けられており、駆動IC11とFPC5とを電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数の接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部と接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有するスイッチングICを用いることができる。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、例えば、各々を構成する材料層を基板7上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、同じ工程によって同時に形成することができる。
図2,3に示すように、基板7の斜面7e、上面7aの一部、第1側面7c、および下面7bの一部上に、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。
保護層25は、発熱部9、共通電極17、および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。保護層25は、SiN、SiO、SiON、SiC、SiCN、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができる。保護層25は、本実施形態のように単層で構成してもよく、複数の層を積層して構成してもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
また、図2,3に示すように、基板7の上面7a、下面7b、および第2側面7d上には、共通電極17、個別電極19および接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。
被覆層27は、共通電極17、個別電極19および接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
被覆層27は、駆動IC11と接続される個別電極19、および接続電極21を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、開口部を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19および接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって封止されている。
図3〜5を用いて、発熱部9および蓄熱層13について詳細に説明する。
蓄熱層13は、第1蓄熱層13aと第2蓄熱層13bとを有している。第1蓄熱層13aは、上面7a上に設けられており、第2蓄熱層13bは第1側面7c上に設けられている。そして、第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bは互いに離間しており、斜面7e上には蓄熱層13は設けられていない。
発熱部9は、電気抵抗層15のうち、共通電極17と個別電極19との間に位置する部位である。電気抵抗層15は基板7の上面7a、斜面7e、および第1側面7cにわたって設けられており、発熱部9においても、基板7の上面7a、斜面7e、および第1側面7cにわたって設けられている。
発熱部9は、第1部位9aおよび第2部位9bを有している。第1部位9aは、基板7との間に蓄熱層13(第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13b)が位置している。第2部位9bは、基板7との間に蓄熱層13(第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13b)が位置しておらず、基板7上に設けられている。
そのため、第1部位9aは、基板7との間にある蓄熱層13により、発熱部9の熱を蓄熱することができ、発熱部9の熱を保持することができる。それにより、次の印画時までに発熱部9の温度が下がりにくくなり、サーマルヘッドX1の昇温特性を向上させることができる。
そして、発熱部9が、第2部位9bをさらに有することから、発熱部9の熱を第2部位9bから基板7へ放熱することができ、発熱部9の熱を効率よく放熱することができる。その結果、放熱性の向上したサーマルヘッドX1とすることができる。
すなわち、発熱部9が第1部位9aおよび第2部位9bを有することにより、印画され
ない程度の熱を保持しつつ、放熱性を向上させることにより、サーマルヘッドX1の昇温特性を維持しつつ、精細な印画を行うことができる。
なお、第1部位9aと上面7aとの間に第1蓄熱層13aが位置するとは、第1蓄熱層13aが設けられた上面7aに対して垂直な方向に位置する第1蓄熱層13a上に、発熱部9が位置することを意味する。第1部位9aと第1側面7cとの間に第2蓄熱層13bが位置するとは、第2蓄熱層13bが設けられた第1側面7cに対して垂直な方向に位置する第2蓄熱層13b上に、発熱部9が位置することを意味する。
発熱部9の副走査方向における長さは、75〜150μmとすることができる。また、第1部位9aの副走査方向における長さは、例えば、25〜75μmとすることができる。また、第2部位9bの副走査方向における長さは、例えば、50〜150μmとすることができる。また、第1部位9aは、発熱部9の全体に対して30〜70%であり、第2部位9bは、発熱部9の全体に対して30〜70%であることにより、昇温特性を維持しつつ、放熱性を高めることができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、第1部位9aは、発熱部9における副走査方向の両端部に位置していてもよい。このような構成を有するときには、発熱部9に生じる温度分布をより緩和することができる。
すなわち、第1部位9aが、発熱部9における副走査方向の両端部に位置することにより、発熱部9における副走査方向の両端部の蓄熱性を高めることができる。その結果、発熱部9における副走査方向の温度分布を均一なものに近付けることができ、高精細な印画を行うことができる。
なお、発熱部9における副走査方向の端部とは、発熱部9全体のうち、副走査方向の端部から、それぞれ40%程度の領域を示している。そして、蓄熱層13は、副走査方向の端部のうち、一部に形成されていればよく、端部全体にわたって形成されていてもよい。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、第2部位9bは、第1部位9a同士の間に位置していてもよい。このような構成を有するときには、蓄熱層13により蓄熱された熱の一部を、効率よく基板7に放熱することができる。さらに、発熱部9における副走査方向の中央部に位置してもよい。この場合、発熱部9に生じるヒートスポットによる温度分布を緩和することができる。
すなわち、発熱部9は、副走査方向における中央部に発熱部9により生じた熱が集中し、ヒートスポットが生じて、副走査方向において、中央部が高くなる不均一な温度分布が生じやすい。
しかしながら、第2部位9bが、発熱部9における副走査方向の中央部に位置することにより、第2部位9bが発熱部9の熱を効率よく放熱することができ、ヒートスポットを緩和することができる。それにより、副走査方向において、発熱部9の温度分布を均一なものに近づけることができ、高精細な印画を行うことができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、基板7が、上面7aと、上面
aに隣り合う斜面7eと、斜面7eに隣り合う第1側面7cとを有しており、第2部位9bは、斜面7e上に位置している。このような構成を有するときには、効率的に発熱部9の熱を放熱することができる。
すなわち、基板7は、斜面7eに対応する部位が、疑似的に基板7の体積が小さくなっ
ているため、熱容量が小さく放熱しにくい構成となっているが、第2部位9bが、斜面7e上に位置することにより、発熱部9の熱を、蓄熱層13を介することなく、基板7に放熱することができ、効率よく発熱部9の熱を放熱することができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、第2蓄熱層13bの熱容量が、第1蓄熱層13aの熱容量よりも大きくなっている。このような構成を有するときには、精細な印画を行うことができる。
すなわち、記録媒体Pが、第1蓄熱層13a側から第2蓄熱層側13bに向けて搬送された場合に、サーマルヘッドX1では、記録媒体Pが剥離する第2蓄熱層13b側の発熱部9の温度が低下しにくくなり、記録媒体Pが剥離する際にも、記録媒体Pに供給される熱量が不足されにくく、印画かすれが生じにくくなる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、第1蓄熱層13aの基板7からの高さが、第2蓄熱層13bの基板7からの高さよりも低い。このような構成を有するときには、記録媒体Pの搬送経路を確保しつつ、発熱部9の熱の蓄熱を確保することができる。
すなわち、第1蓄熱層13aの基板7からの高さを第2蓄熱層13bの基板7からの高さより低くすることにより、第1蓄熱層13aが記録媒体Pの搬送経路を阻害しにくくなるとともに、第2蓄熱層13bにより、発熱部9の熱の蓄熱を確保することができる。それにより、記録媒体Pとの接触状態を良好に保ちつつ、発熱部9の熱を効率よく蓄熱することができる。
第1蓄熱層13a、および第2蓄熱層13bの高さは、それぞれ5〜90μmとすることができる。
なお、第1蓄熱層13aの基板7からの高さとは、図3に示すように、発熱部9を通るように副走査方向に沿って厚み方向に切断し、第1蓄熱層13aの上面7aから最も遠くにある部位の高さを測定して求めることができる。また、第2蓄熱層13bの基板7からの高さとは、上記の断面において、第2蓄熱層13bの第1側面7cから最も遠くにある部位の高さを測定して求めることができる。なお、いずれの高さの測定においても、例えば、サーマルヘッドX1を上記のように3箇所において切断し、それぞれの断面にて測定した高さを平均して求めることができる。
また、記録媒体Pが、第2蓄熱層13b側から第1蓄熱層側13aに向けて搬送される場合に、記録媒体Pが、第2蓄熱層13bにより温められることとなり、記録媒体Pの印画開始時においても、記録媒体Pに供給される熱量が不足されにくくなり、印画かすれが生じにくくなる。
なお、第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bの熱容量の大小関係は、図3に示すように、発熱部9を通るように副走査方向に沿って厚み方向に切断し、第1蓄熱層13aの断面積、および第2蓄熱層13bの断面積を測定することにより確認することができる。すなわち、上記断面において、第2蓄熱層13bの断面積が、第1蓄熱層13aの断面積よりも大きければよい。
第1蓄熱層13a、第2蓄熱層13bおよび斜面7eの形成方法について、図5を用いて説明する。
まず、矩形状の基板7を準備する。そして、基板7の上面7aおよび第1側面7cにより形成される角部を、ガラスペーストに浸漬し、ディップコーティングした後にガラスペ
ーストを焼成して、図5に破線で示すように蓄熱層を形成する。続いて、斜面7eを形成するように、面取り加工を施し、基板7の角部、および蓄熱層の一部を研磨する。それにより、第1蓄熱層13a、第2蓄熱層13bおよび斜面7eの形成することができる。
次に、サーマルプリンタZ1について、図6を参照しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上を通過するように図6の矢印S方向に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが、インクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタZ1は、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、発熱部9上を通過するように記録媒体Pを搬送機構40によって搬送する。そして、サーマルプリンタZ1は、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
図6を用いて第2の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。なお、サーマルヘッドX1と同一の部材については同一の符号を付し、以下同様とする。
サーマルヘッドX2は、基板7と電気抵抗層15との間に耐エッチング層208を有している点で、サーマルヘッドX1と構成が異なっている。
耐エッチング層208は、上面7a、斜面7e、および第1側面7c上にわたって設けられている。より詳細には、耐エッチング層208は、上面7a、第1蓄熱層13a、斜面7e、第2蓄熱層13bおよび第1側面7c上に設けられている。耐エッチング層208は、後述する電気抵抗層、および各種電極をフォトエッチングにより配線パターンを形成する際に、エッチング液から第1蓄熱層13a、および第2蓄熱層13bがエッチングされることを抑制する耐エッチング層として機能している。
耐エッチング層208は、例えば、SiC、SiN、あるいはSiALON等の材料を用いて、スパッタリング等の薄膜形成技術により形成することができる。耐エッチング層208の厚みは、0.01〜1μmとすることにより、耐エッチング性を確保することができる。
本実施形態のサーマルヘッドX2では、耐エッチング層208が、斜面7e上に形成されており、耐エッチング層208上に第1部位9aが位置している。このような構成を有するときには、耐エッチング層208により、斜面7eの表面が平滑に覆われることとなり、第1部位9aを均一に形成することができる。それにより、精細な印画を行うことができる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX2では、耐エッチング層208が、第1蓄熱層13a、斜面7e、および第2蓄熱層13bを被覆しており、耐エッチング層208の端部は、第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bをこえて位置している。言い換えると、耐エッチング層208の端部は、第1蓄熱層13aよりも発熱部9から遠い側まで配置されており、耐エッチング層208の端部は、第2蓄熱層13bよりも発熱部9から遠い側まで配置されている。
このような構成を有するときには、発熱部9の熱は、第1部位9aから斜面7eに向けて放熱するとともに、斜面7e上に位置する耐エッチング層208を介して、上面7aおよび第1側面7cから放熱されることとなる。その結果、発熱部9の熱を効率よく放熱することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1、X2を組み合わせてもよい。
サーマルヘッドX1では、電気抵抗層15上に共通電極17および個別電極19が形成されている例を示したが、共通電極17および個別電極19の双方が発熱部9に接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成したものでもよく、この場合、電気抵抗層15の領域が発熱部9となる。
また、第1部位9aは、発熱部9における副走査方向の両端部のうち一方の端部に位置していてもよい。このような場合においては、発熱部9における副走査方向の端部の蓄熱性を高めることができる。
つまり、発熱部9の熱は、共通電極17または個別電極19に放熱されやすく、発熱部9における副走査方向の端部の温度が低下しやすいおそれがあるが、副走査方向のうち一方の端部に、蓄熱層13が位置することにより、発熱部9の熱を蓄熱することができる。その結果、発熱部9における副走査方向の温度分布を均一なものに近づけることができ、
高精細な印画を行うことができる。
また、電気抵抗層15を厚膜抵抗体により形成した厚膜ヘッドに本発明を適用してもよい。この場合、共通電極17と個別電極19とを櫛歯状に形成し、共通電極17と個別電極19とをまたがるように厚膜抵抗体を形成すればよい。なお、その場合、発熱部9は、共通電極17と個別電極19との間に位置し、下方に共通電極17と個別電極19とが形成されていない領域となる。
また、共通電極17が、基板7の上面7a上に、副配線部17bおよび端子部17fを設ける例を示したが、これに限定されるものではない。基板7の上面7a上に、副配線部17bおよび端子部17fを設けずに、基板7の下面7b上に設けられた主配線部17dと、FPC5とをジャンパー線により電気的に接続してもよい。
また、基板7が斜面7eを有する構成を示したが、これに限定されるものではない。基板7が斜面7eを有さずに、発熱部9が上面7aに設けられた平面ヘッドに用いてもよい。発熱部9を上面9aに設ける場合に、1つの第1蓄熱層13aを設けてもよく、複数の第1蓄熱層13aを設けてもよい。
なお、サーマルヘッドX1では、第1蓄熱層13aおよび第2蓄熱層13bを形成した例を示したが、これに限定されるものではない。第1蓄熱層13aのみを形成してもよく、第2蓄熱層13bのみを形成してもよい。また、蓄熱層13が斜面7eに形成されない例を示したが、蓄熱層13を斜面7eに形成してもよい。
X1〜X2 サーマルヘッド
Z1 サーマルプリンタ
1 放熱体
3 ヘッド基体
5 フレキシブルプリント配線板(FPC)
7 基板
7a 上面
7b 下面
7c 第1側面(側面)
7d 第2側面
7e 斜面
9 発熱部
第1部位 9a
第2部位 9b
13 蓄熱層
13a 第1蓄熱層
13b 第2蓄熱層
15 電気抵抗層
17 共通電極
19 個別電極
21 接続電極
23 導電性接合材
25 保護層
27 被覆層
29 被覆部材
208 耐エッチング層

Claims (5)

  1. 基板と、
    前記基板上に位置する蓄熱層と、
    少なくとも一部が前記蓄熱層上に位置する発熱部と、
    前記基板上に位置し、前記発熱部に電気的に繋がっている電極と、を備え、
    前記発熱部は、前記基板との間に前記蓄熱層が位置する第1部位と、前記基板との間に前記蓄熱層が位置しない第2部位とを有しており
    前記第1部位は、前記発熱部における副走査方向の両端部のうち一方の端部に位置することを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 前記基板は、上面と、下面と、前記上面および前記下面の間に位置する斜面とを有しており、
    前記第2部位は、前記斜面上に位置する、請求項1に記載のサーマルヘッド。
  3. 基板と、
    前記基板上に位置する蓄熱層と、
    少なくとも一部が前記蓄熱層上に位置する発熱部と、
    前記基板上に位置し、前記発熱部に電気的に繋がっている電極と、を備え、
    前記発熱部は、前記基板との間に前記蓄熱層が位置する第1部位と、前記基板との間に前記蓄熱層が位置しない第2部位とを有しており、
    前記基板は、上面と、下面と、前記上面および前記下面の間に位置する斜面および側面とを有しており、
    前記第2部位は、前記斜面上に位置しており、
    前記蓄熱層は、前記上面上に位置する第1蓄熱層と、前記側面上に位置する第2蓄熱層と、を有しており、
    前記第2蓄熱層の熱容量が、前記第1蓄熱層の熱容量よりも大きい、サーマルヘッド。
  4. 前記第1蓄熱層の前記上面からの高さが、前記第2蓄熱層の前記側面からの高さよりも低い、請求項に記載のサーマルヘッド。
  5. 請求項1〜のうちいずれか一項に記載のサーマルヘッドと、
    前記発熱部上を通過するように記録媒体を搬送する搬送機構と、
    前記記録媒体を押圧するプラテンローラと、を備えることを特徴とするサーマルプリン
    タ。
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