<第1の実施形態>
図1(a)は、本発明のサーマルヘッド用基板X1の第1の実施形態を示す平面図であ
り、(b)は図1にて一点鎖線で囲んだ領域を拡大して示す平面図である。
図1(a)、(b)に示すように、サーマルヘッド用基板X1は、複数の発熱部9と、発熱部9の発熱を制御する制御部である駆動IC11aを実装するための制御端子11bを複数形成してなる制御端子群11cと、発熱部9と制御端子11bとを接続する複数の第1電極パターンである個別電極19と、制御端子11bと外部基板(不図示)とを接続する複数の第2電極パターンであるIC−FPC接続電極21と、測温部材28a等の電子部品を実装するための電子部品用端子である測温端子28bを複数形成してなる電子部品用端子群である測温端子群28cとを備えている。なお、サーマルヘッド用基板X1に駆動IC11aおよび測温部材28aについては実装されていないが、実装する位置を1点鎖線で示している。
図1(b)を用いてさらに説明すると、サーマルヘッド用基板X1は、発熱部9、1つの制御端子群11c、複数の個別電極19、IC電極22と、グランド電極24と、IC制御電極26とにより構成される複数のIC−FPC接続電極21、および1つの測温端子群28cから構成されたCで囲まれた領域の区画14を有している。そして、区画14が、発熱部9の配列方向、図1においては、左右方向に、同等かつ繰り返して複数配置されている。
また、一端が発熱部9に接続され他端が外部基板に接続される共通電極17が、発熱部9と反対側に設けられている。共通電極17は、発熱部9の配列方向の一端から他端にわたって延びる主配線部17aと、主配線部17aからグランド電極24側に突出した突出部17bを有している。
そして、区画14の両端部に配置された突出部17bと、グランド電極24とが詳細は後述するが第1補強部材8となっている。
このようなサーマルヘッド用基板X1を分割することにより、サーマルヘッドY1を作製することができる。具体的には、任意の切断する部位にマーキングを行ない、レーザーカットすることにより分割することができる。また、レーザー加工により、マーキングした箇所にスクライブと呼ばれる溝を設けて、その後、押圧して分割して作製してもよい。
そして分割したサーマルヘッド用基板X1に、駆動IC11a、測温部材28a、コンデンサ(不図示)、抵抗体(不図示)あるいはコイル(不図示)等の電子部品を実装することにより、サーマルヘッドY1を作製することができる。
このように、同等かつ繰り返し区画14が形成されたサーマルヘッド用基板X1を分割して、サーマルヘッドY1を作製することができることから、任意の長さのサーマルヘッドY1を容易に作製することができる。また、区画14が測温端子群28cを有することからサーマルヘッド用基板X1を分割した後に、測温端子群28cに目的に合わせて任意の測温部材28a等を実装することができる。そのため、サーマルヘッドY1の構造を容易に変更することができ、サーマルヘッドY1の設計変更を容易にすることができる。
以下、本発明のサーマルヘッド用基板X1を構成する各部材について、サーマルヘッド用基板X1を図1(a)に示す一点鎖線Aで分割して作製したサーマルヘッドY1を用いて説明する。
図2〜図5に示すように、サーマルヘッドY1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続された、フレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、図2では、FPC5の図示を省略し、FPC5が配置される領域を一点鎖線で示す。図3(b)では、放熱体1の突起部1bを省略して示す。
図2〜図5に示すように、放熱体1は、平面視で長方形状である板状の台部1aと、この台部1aの上面上に配置され、台部1aの一方の長辺(図1では右側の長辺)に沿って延びる突起部1bとを備えている。なお、放熱体1を板状の台部1aのみで構成してもよい。この放熱体1は、例えば、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱するようになっている。
図1および図2に示すように、ヘッド基体3は、平面視で長方形状の基板7と、基板7の長手方向に沿って延びる一方の端面7a(以下、第1端面7aという)上に設けられ、基板7の長手方向に沿って配列された複数の発熱部9と、発熱部9の配列方向に沿って基板7の第1主面7c上に並べて配置された複数の駆動IC11aとを備えている。
そして基板7は、発熱部9が設けられた第1端面7aと、第1端面7aの反対側に位置する他方の端面7b(以下、第2端面7bという)と、駆動IC11aが設けられる第1主面7cと、第1主面7cの反対側に位置する第2主面7dとにより構成されている。
このヘッド基体3は、放熱体1の台部1aの上面上に配置されており、第2端面7bが、放熱体1の突起部1bに対向して配置されている。また、ヘッド基体3の下面、より詳細には、後述する第3保護層29の下面と台部1aの上面とが両面テープ12によって接着されており、これによってヘッド基体3が台部1aに支持されている。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料や単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
図4および図5に示すように、基板7の第1端面7aには、蓄熱層13が形成されている。基板7の第1端面7aは断面視で凸状の曲面形状を有しており、この第1端面7a上に蓄熱層13が形成されている。そのため、蓄熱層13の表面も曲面形状となっている。この蓄熱層13は、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された後述する第1保護層25に良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短く
し、サーマルヘッドY1の熱応答特性を高めるように機能する。なお、本実施形態では、図4に示すように蓄熱層13が基板7の第1端面7a上にのみ形成されており、発熱部9に近い位置で蓄熱することができるため、サーマルヘッドY1の熱応答特性をより効果的に向上させることできる。この蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の第1端面7a上に塗布し、これを焼成することにより形成される。
図4に示すように、基板7の第1主面7c上、蓄熱層13上、ならびに基板7の第2主面7dおよび第2端面7b上には、電気抵抗層15が設けられている。この電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13と、個別電極19と、共通電極17との間に介在している。また、IC−FPC接続電極21が第1主面7cに設けられている。
基板7の第1主面7c上に位置する電気抵抗層15の領域は、図1に示すように平面視において、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21と同等の形状に形成されている。
蓄熱層13上に位置する電気抵抗層15の領域は、図3(a)に示すように側面視において、共通電極17および個別電極19と同形状に形成された領域と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の領域(以下、露出領域という)とを有している。
基板7の第2主面7d上に位置する電気抵抗層15の領域は、図4および図5に示すように、基板7の第2主面7d全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
図3では、電気抵抗層15は、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21で隠れており、図示されていない。また、図3では、電気抵抗層15は、共通電極17および個別電極19で隠れており、露出領域のみ図示されている。
電気抵抗層15の各露出領域は、電圧が印加されることにより発熱し、上記の発熱部9を形成している。そして、この複数の露出領域が、図3に示すように、蓄熱層13上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図3では簡略化して記載しているが、例えば、180dpi〜2400dpi等の密度で配置される。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール熱によって発熱部9が発熱する。
図1〜図5に示すように、電気抵抗層15上には、共通電極17、複数の個別電極19および複数のIC−FPC接続電極21が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
以下、これらの電極について図1〜5を用いて詳細に説明する。
複数の個別電極19は、各発熱部9と制御端子11bとを接続するためのものである。図1〜図3に示すように、各個別電極19は、一端が発熱部9に接続され、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にわたって個別に帯状に延びている。
各個別電極19の他端は、駆動IC11aの配置領域に配置されており、この各個別電極19の他端が制御端子11bに接続されることにより、各発熱部9と制御端子11bとの間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、制御端子11bを複数形成してなる制御端子群11cとにより電気的に接続されている。なお、制御素子群11cとは、1つの駆動IC11aに接続される制御端子11bの群を示す。
複数のIC−FPC接続電極21は、制御端子11bとFPC5とを接続するためのものであり、制御端子11bに実装された駆動IC11aに電気的な信号を送るように形成されている。図1および図2に示すように、各IC−FPC接続電極21は、基板7の第1主面7c上に帯状に延びており、一端が駆動IC11aの配置領域に配置され、他端が基板7の第1主面7c上に位置する後述する共通電極17の主配線部17aの近傍に配置されている。そして、この複数のIC−FPC接続電極21は、一端が制御端子11bに接続されるとともに、他端がFPC5に接続されることにより、制御端子11bとFPC5との間を電気的に接続している。
より詳細には、各制御端子11bに接続された複数のIC−FPC接続電極21は、異なる機能を有する複数の電極で構成されている。具体的には、図1(b)を用いて説明するが、この複数のIC−FPC接続電極21は、例えば、駆動IC11aを動作させるための電圧を印加するためのIC電極22と、制御端子11bおよびこの制御端子11bに接続された個別電極19をグランド電位(例えば0V〜1V)に保持するためのグランド電極24と、駆動IC11a内のスイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11aを動作させる電気信号を供給するためのIC制御電極26とを備えている。これら、IC電極22、グランド電極24、およびIC制御電極26等が第2電極パターンにより形成されており、IC−FPC接続電極21ということができる。
測温端子28bは、実装された測温部材28aとFPC5とを電気的に接続するための端子であり、測温端子28bを複数形成してなる測温端子群28cに、実装された測温部材28aが電気的に接続されている。なお、測温端子群28cは、測温端子28bが複数形成されてなるものであり、測温端子群28cとは、1つの測温部材28aに接続される測温端子28bの群を示す。
駆動IC11aは、図1および図2に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端と、IC−FPC接続電極21の一端とに接続されている。この駆動IC11aは、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に複数のスイッチング素子を有しており、各スイッチング素子がオン状態のときに通電状態となり、各スイッチング素子がオフ状態のときに不通電状態となる公知のものを用いることができる。なお、制御部として駆動IC11aを例示したが、制御部は、発熱部9の通電状態を制御できれば良く駆動ICに限定されるものではない。
各駆動IC11aは、各駆動IC11aに接続された各個別電極19に対応するように、内部に複数のスイッチング素子(不図示)が設けられている。そして、図4に示すように、各駆動IC11aは、各スイッチング素子(不図示)に接続された一方の接続端子11a(以下、第1接続端子11dという)が個別電極19に接続されており、この各スイッチング素子に接続されている他方の接続端子11b(以下、第2接続端子11e)がIC−FPC接続電極21の上記のグランド電極24に接続されている。より詳細には、駆動IC11aの第1接続端子11dおよび第2接続端子11eはそれぞれ、図示しないはんだにより、個別電極19およびIC−FPC接続電極21上に形成された後述する被覆層30上にはんだ接合されている。これにより、駆動IC11aの各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極19とIC−FPC接続電
極21のグランド電極配線24とが電気的に接続される。
共通電極17は、複数の発熱部9とFPC5とを接続するためのものである。この共通電極17は、図1、図4および図5に示すように、基板7の第2主面7dおよび第2端面7bの全体にわたって形成されるとともに、基板7の第1主面7cにおいて第2端面7bに沿って延びるように形成されている主配線部17aと、図1および図2に示すように、基板7の第1主面7cに形成され、基板7の発熱部9の配列方向における端部に位置する主配線部17aから突出した突出部17bと、図3に示すように基板7の第2主面7d上に位置する主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びるリード部17cとを有している。各リード部17cは、先端部が各発熱部9を間に介して個別電極19の一端に対向して配置されている。
このように、共通電極17は、一端が基板7の第1端面7a上にて発熱部9に接続されている。そして、基板7の第1端面7aから第2主面7dおよび第2端面7bを介して第1主面7cまで延びた状態で設けられている。共通電極17の他端は第1主面7cの一方の端部に配置されている。
そして、共通電極17は、図1、図3および図4に示すように、基板7の第1主面7c上に位置する主配線部17a、および共通電極17の端部に位置する突出部17bがFPC5に接続されることにより、FPC5と各発熱部9との間を電気的に接続している。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、例えば、各々を構成する材料層を、蓄熱層13が形成された基板7上に、スパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、この積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、本実施形態では、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、同じ工程によって同時に形成することができる。また、電気抵抗層15の厚さは、例えば0.01μm〜0.2μmとし、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の厚さは、例えば0.05μm〜2.5μmとすることができる。
図1(b)を用いて基板7の第1主面7cに形成された電極のパターンについて説明する。
図1(b)に示すように、一点鎖線Cで囲った領域が、サーマルヘッド用基板X1に形成された区画14である。また、サーマルヘッド用基板X1を分割して作製するサーマルヘッドY1においても、同様の区画14が形成されている。区画14は、制御端子群11cが中央部に配置され、制御部11に接続された個別電極19が基板7の一方側の発熱部(不図示)に向けて延びている。また、制御端子群11cに接続されたIC−FPC電極21が基板7の他方側に向けて延びている。共通電極17が、基板7の第2端面7bからつながった状態で、第1主面7cの他方側に延出している。
そして、制御端子群11cと共通電極17との間に、測温端子群28cが設けられており、その周囲をIC電極22、グランド電極24、およびIC制御電極26がそれぞれ取り囲むように配置されている。
図1(a)で示すように、区画14は、1つの制御部11、複数の個別電極19、複数のIC−FPC電極21、および1つの測温端子群28cにより構成されており、この区画14は、発熱部9の配列方向に、同等かつ繰り返し設けられている。また、第1主面7c上には、第2端面7bから連続して共通電極17の主配線部17aが、発熱部9の配列方向の一端部から他端部にわたって設けられている。そして、発熱部9の配列方向におけ
る区画14の一端部および他端部に突出部17bが設けられている。
すなわち、サーマルヘッド用基板X1を区画14ごとに分割してサーマルヘッドY1を作製すると、サーマルヘッドY1は、発熱部9の配列方向の一端部および他端部における第1主面7c、第2主面7dおよび第2端面7bにそれぞれ突出部17bが設けられることとなる。それにより、発熱部9の配列方向における基板7の両端部に共通電極17が設けられていることになり、そのため、基板7の両端部の強度を向上させるように機能する。それゆえ、発熱部9の配列方向における基板7の両端部に生じる欠けやクラックの発生を抑えることができる。つまり、共通電極17の一部である基板7の両端部に設けられた共通電極17が、第1補強部材8として機能することになる。
また、第1主面7c上には、IC電極22、グランド電極24、IC制御電極26および測温端子群28cが設けられている。図3に示すようにグランド電極24が、IC電極22、IC制御電極26および測温端子群28cを取り囲むように配置されている。そして、グランド電極24は、第1主面7cの発熱部9の配列方向における一端から他端にわたって設けられている。すなわち、発熱部9の配列方向における基板7の両端部にグランド電極24が設けられていることとなり、グランド電極24は基板7の両端部の強度を向上させるように作用する。つまり、基板7の両端部の設けられたグランド電極24も、第1補強部材8として機能することになる。
測温端子群28cに設けられる測温部材28aは、サーマルヘッドY1の温度を測温するために設けられており、測温部材28aにより測定された温度に基づいて、駆動IC11aを制御して、サーマルヘッドY1を制御している。このように、基板7の第1主面7cに測温部材28aを設けることにより、サーマルヘッドY1の温度を精度よく測定することができる。
測温部材28aは、温度を測定する機能を有する部材を用いることができ、例えば、サーミスタ等の部材を用いることができる。
また、測温端子群28cに他の部材を実装してもよい。実装する他の部材としては、コンデンサ、抵抗体あるいはコイル等を例示することができる。測温端子群28cにコンデンサを実装し、FPC5側の配線にて回路を形成し、IC−FPC電極21に生じるノイズを低減することができる。
また、抵抗体を実装した場合には、コンデンサと同様にIC−FPC電極21に生じるノイズを低減することができる。さらに、FPC5側の配線にて回路を形成し、IC−FPC電極21に直列に接続することで、IC−FPC電極21に流れる電流を制御することができる。さらに、測温端子群28cとコンデンサ等の双方ともを実装してもよい。
図1〜図5に示すように、蓄熱層13上、ならびに基板7の第1主面7cおよび第2主面7d上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する第1保護層25が形成されている。この第1保護層25は、蓄熱層13上の全体を覆うように設けられ、基板7の第2主面7dでは基板7の第1主面7cと対応する領域を覆うように設けられている。
第1保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食や、印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。この第1保護層25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。また、この第1保護層25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術や、スクリーン印刷法
等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。また、この第1保護層25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。なお、第1保護層25は、共通電極17および個別電極19の表面と発熱部9の表面との段差によって、その表面に段差が生じ易いが、共通電極17および個別電極19の厚さを、例えば0.2μm以下程度に薄くすることによって、第1保護層25の表面に形成される段差をなくすまたは小さくすることができる。
また、図1、図4および図5に示すように、基板7の第1主面7c上には、個別電極19およびIC−FPC接続電極21を部分的に被覆する第2保護層27が設けられている。なお、説明の便宜上、図1では、第2保護層27の形成領域を一点鎖線で示し、図示を省略している。
この第2保護層27は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化や、大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。第2保護層27は、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、この第2保護層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
なお、図1に示すように、後述するFPC5を接続するIC−FPC接続電極21の端部は、第2保護層27から露出しており、その露出した領域と基板7とが接続されるようになっている。
また、第2保護層27には、駆動IC11aを接続する個別電極19、IC−FPC接続電極21の端部、および測温端子群28cを露出させるための開口部27a(図4参照)が形成されており、この開口部27aを介してこれらの電極が制御端子11bに接続されている。より詳細には、この開口部27aから露出した個別電極19、IC−FPC接続電極21の端部、および測温端子群28c上に、後述する被覆層30が形成されており、上記のようにこの被覆層30を介してこれらの電極が駆動IC11aとはんだ接合されている。このように、駆動IC11aを、めっきで形成された被覆層30上にはんだ接合することで、個別電極19およびIC−FPC接続電極21上への駆動IC11aの接続強度を向上させることができる。
また、測温端子群28cのすべてに測温部材28aを実装してもよいが、測温部材28aではなく上述したコンデンサ等を実装してもよい。また、測温部材28a、コンデンサ等が実装されていない測温端子群28cがあってもよい。
駆動IC11aは、個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続された状態で、駆動IC11a自体の保護、および駆動IC11aとこれらの電極との接続部の保護のため、エポキシ樹脂やシリコン樹脂等の樹脂からなる被覆部材(不図示)によって被覆されることで封止されている。
図4および図5に示すように、基板7の第2主面7d上には、共通電極17を部分的に被覆する第3保護層29が設けられている。この第3保護層29は、基板7の第2主面7dの第1保護層25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。
この第3保護層29は、共通電極17の被覆した領域を、大気との接触による酸化や、大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。第3保護層29は、第2保護層27と同様、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、この第3保護層29は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
なお、図4および図5に示すように、基板7の第2主面7d上に位置する共通電極17の第2端面7bの近傍の領域は、第3保護層29には被覆されておらず、被覆層30によって被覆されるようになっている。
図4および図5に示すように、基板7の第1主面7cと第2端面7bとで形成される角部7e上、および基板の第2主面7dと第2端面7bとで形成される角部7f上に位置する共通電極17の領域は、めっきで形成された被覆層30で被覆されている。より詳細には、この被覆層30は、基板7の第1主面7cおよび第2端面7b上に位置する共通電極17の領域全体と、基板7の第2主面7d上に位置する共通電極17の第2端面7bの近傍の領域とを連続的に被覆している。
被覆層30は、例えば、周知の無電解めっきや電解めっきによって形成することができる。また、この被覆層30として、例えば、共通電極17上にニッケルめっきからなる第1被覆層を形成し、この第1被覆層上に金めっきからなる第2被覆層を形成してもよい。その場合においては、第1被覆層の厚さを例えば1.5μm〜4μmとし、第2被覆層の厚さを例えば0.02μm〜0.1μmとすることができる。
また、本実施形態では、図3に示すように、めっきで形成された被覆層30が、後述するFPC5を接続するIC−FPC接続電極21の端部(第2保護層27から露出した端部)上にも形成されている。これにより、後述するように、FPC5をこの被覆層30上に接続するようになっている。
さらに、本実施形態では、図3に示すように、めっきで形成された被覆層30が、第2保護層27の開口部27aから露出した個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部上にも形成されている。これにより、上記のように、駆動IC11aがこの被覆層30を介して個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続されている。
FPC5は、図1、図4および図5に示すように、発熱部9の配列方向に沿って延びており、上記のように基板7の第1主面7c上に設けられた共通電極17の主配線部17a、共通電極17の突出部17b、および各IC−FPC接続電極21に接続されている。このFPC5は、絶縁性の樹脂層の内部に複数のプリント配線5bが配線された周知のものであり、各プリント配線5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。このようなプリント配線5bは、一般に、例えば、銅箔等の金属箔、薄膜成形技術によって形成された導電性薄膜、または厚膜印刷技術によって形成された導電性厚膜によって形成されている。また、金属箔や導電性薄膜等によって形成されるプリント配線5bは、例えば、これらをフォトエッチング等により部分的にエッチングすることによってパターニングされている。
より詳細には、図4および図5に示すように、FPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に形成された各プリント配線5bが、ヘッド基体3側の端部で露出し、導電性接合材料、例えば、はんだ材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方導電性材料(ACF)等からなる接合材32によって、共通電極17およびIC−FPC接続電極21と接続されている。
なお、サーマルヘッドY1では、基板7の第1主面7c上に位置する共通電極17上には、上記のように被覆層30が形成されているため、共通電極17に接続されるプリント配線5bが、接合材32を介してこの被覆層30上に接続されている。また、図4に示すように、被覆層30が各IC−FPC接続電極21の端部上にも形成されているため、各IC−FPC接続電極21に接続されるプリント配線5bが、接合材32を介してこの被覆層30上に接続されている。このように、プリント配線5bを、めっきで形成された被
覆層30上に接続することで、共通電極17およびIC−FPC接続電極21上へのプリント配線5bの接続強度を向上させることができる。
そして、FPC5の各プリント配線5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、共通電極17は、正電位(例えば20V〜24V)に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続され、個別電極19は、制御端子群11cおよびIC−FPC接続電極21のグランド電極24を介して、グランド電位(例えば0V〜1V)に保持された電源装置のマイナス側端子に電気的に接続されるようになっている。そのため、駆動IC11aのスイッチング素子がオン状態のとき、発熱部9に電圧が印加され、発熱部9が発熱するようになっている。
また、同様に、FPC5の各プリント配線5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、IC−FPC接続電極21の上記のIC電極22は、共通電極17と同様、正電位に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続されるようになっている。これにより、駆動IC11aが接続されたIC−FPC接続電極21のIC電極22とグランド電極24との電位差によって、制御端子群11cに駆動IC11aを動作させるための電圧が印加される。また、IC−FPC接続電極21の上記のIC電極22は、駆動IC11aの制御を行う外部の制御装置に電気的に接続される。これにより、制御装置から送信された電気信号が制御端子群11cに供給されるようになっている。この電気信号によって、駆動IC11a内の各スイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11aを動作させることで、各発熱部9を選択的に発熱させることができる。
また、FPC5は、放熱体1の突起部1bの上面に、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によって接着されることにより、放熱体1上に固定されている。
第1の実施形態に係るサーマルヘッド用基板X1によれば、各区画14に、複数の発熱部9、1つの制御端子群11c、複数の個別電極19、複数のIC−FPC接続電極21、および1つの測温端子群28cが設けられていることから、区画14単位で分割することにより、任意の有効記録幅を有するサーマルヘッドY1を容易に作製することができる。それにより、サーマルヘッドY1を構成する区画14ごとにサーマルヘッド用基板X1を分割することができ、サーマルヘッドY1の作製時における自由度を高めることができる。なお、有効記録幅とはサーマルヘッドが印字できる幅を示す。
また、サーマルヘッド用基板X1を構成する区画14の一部に、制御端子群11c、個別電極19、IC−FPC接続電極21、および測温端子群28cに短絡あるいはショートの発生、保護膜30に異物が含まれる等の不良が生じている場合においても、その区画14を含まないように、サーマルヘッド用基板X1を分割することにより、サーマルヘッドY1作製時の不良により生じるロスを少なくすることができる。つまり、1つの区画14に対してサーマルヘッドY1が大きいことから、サーマルヘッド用基板X1から少ないロスでサーマルヘッドY1を作製することができる。
さらにまた、各区画14に発熱部9、制御端子群11c、個別電極19、IC−FPC接続電極21、および測温端子群28cが設けられており、サーマルヘッド用基板X1からサーマルヘッドY1を分割した後に、測温端子群28cに目的に合わせて任意の測温部材28a等を実装することができる。そのため、サーマルヘッドY1の構造を容易に変更することができ、サーマルヘッドY1の設計変更を容易にすることができる。
また、測温端子群28cに、任意の測温部材28a等を実装することができるとともに、サーマルヘッドY1において、任意の位置の測温端子群28cに測温部材28a等を実
装することができる。そのため、サーマルヘッドY1の態様に合わせて簡単に測温部材28a等を実装することができる。
ここで、サーマルヘッド用基板を分割してサーマルヘッドを作製する場合に、サーマルヘッドの発熱部の配列方向における基板の端部に欠けやクラックが生じる場合があった。また、サーマルヘッドを放熱体に実装する際やサーマルプリンタにサーマルヘッドを実装する際に、発熱部の配列方向における基板の端部が他の部材と衝突することにより、サーマルヘッドの発熱部の配列方向における基板の端部に欠けやクラックが生じる場合があった。
第1の実施形態に係るサーマルヘッド用基板X1によれば、共通電極17が、発熱部9の配列方向における基板7の端部の第1主面7c、第2端面7b、および第2主面7dに設けられており、この共通電極17の突出部17bが第1補強部材8として機能することとなる。それにより、発熱部9の配列方向における基板7の端部に欠けやクラックが生じる可能性を低減することができる。そのため、サーマルヘッドY1の信頼性を向上させることができる。サーマルヘッド用基板X1から複数のサーマルヘッドY1を分割して作製した場合においてもサーマルヘッドY1の発熱部9の配列方向における基板7の端部に欠けやクラックを生じる可能性を低減させることができる。
また、第1補強部材8を共通電極17の突出部17bの一部として形成されているため、別途製造工程を設けて、第1補強部材8を設ける必要がなく、容易に第1補強部材8が設けられたサーマルヘッドY1を製造することができる。
さらに、共通電極17が、基板7の第1端面7aから、第2主面7d、第2端面7b、および第1主面7cにわたって設けられており、第2主面7dおよび第2端面7bの全面にわたって設けられていることから、共通電極17の面積を大きくすることができ、共通電極17の配線抵抗を低減することができる。また、共通電極17の面積を大きくすることにより、共通電極17の電流容量を大きくすることができる。さらに、第1補強部材8を共通電極17の一部として形成する場合に、一体的に共通電極17を設けることで、第1補強部材8が、基板7の第1端面7aから、第2主面7d、第2端面7b、および第1主面7cにわたって設けられることとなる。そのため、発熱部9の配列方向における基板7の端部をさらに補強することができ、欠けやクラックが発生する可能性を抑えることができる。
また、第1補強部材8として、共通電極19あるいはグランド電極24を用いることで、別途パターンを設けることなく容易に基板7に第1補強部材8を設けることができる。
さらに、測温端子群28cが、平面視して、IC−FPC電極21に囲まれて配置されていることから、測温部材28aにより測定された温度信号に対するノイズの影響を小さくすることができる。
第1の実施形態では、共通電極17が、第2主面7dの全面にわたって設けられた例を示したが、第2主面7dの全面にわたって設けなくてもよい。
なお、本実施形態であるサーマルヘッド用基板X1においては、区画14を構成する共通電極17が、区画14の一端部および他端部に突出部17bを設けた例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、区画14の一端部のみに設けてもよいし、区画14の一端部および他端部に設けなくてもよい。つまり、サーマルヘッド用基板X1が突出部17bを有していなくてもよい。
<サーマルプリンタ>
次に、第1の実施形態であるサーマルヘッドY1を用いたサーマルプリンタZについて、図6を参照しつつ説明する。図6は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図6に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドY1、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドY1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、このサーマルヘッドY1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向言い換えると主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、感熱紙、受像紙、カード等の記録媒体Pを図6の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドY1の複数の発熱部9上(より詳細には、保護層25上)に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが受像紙やカード等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドY1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドY1の発熱部9上に押圧するためのものであり、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドY1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11aを動作させるための電流を供給するためのものである。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドY1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11aの動作を制御する制御信号を制御端子群11c供給するためのものである。
本実施形態のサーマルプリンタZは、図6に示すように、搬送機構40によって記録媒体PをサーマルヘッドY1の発熱部9上に搬送しつつ、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることで、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙やカード等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
<第2の実施形態>
図7、8を用いて本発明の第2の実施形態のサーマルヘッド用基板X2について説明する。
図7に示すサーマルヘッド用基板X2は、発熱部9の配列方向における両端部に第2補強部材10が設けられている。そして、共通電極17の主配線部17aから測温端子群28cに向けて突出した突出部17bをさらに有している。
図7(b)に示すように、1点鎖線Dによって囲まれた部位が第2補強部材10として機能している。第2補強部材10は、IC−FPC接続電極21が設けられており、それぞれ前述したように、IC電極22、グランド電極24、IC制御電極26、第2補強部材10を構成している。さらに、測温端子群28cも第2補強部材10を構成している。そして、その他の構成は第1の実施形態に係るサーマルヘッド用基板X1と同様である。
このように、発熱部9の配列方向における端部に第2補強部材10を備えていることから、分割してサーマルヘッドY2を作製した場合に、サーマルヘッドY2の端部に第2補強部材10を設けることができる。
また、サーマルヘッド用基板X2を図7(a)で示すB線にて分割して作製したサーマルヘッドY2について説明する。
図8に示すサーマルヘッドY2は、二点鎖線Dで囲った部位において、第2補強部材10が設けられている。IC−FPC接続電極21および測温端子群28cとが、第2補強部材10を構成している。そして、測温端子群28cの位置でサーマルヘッド用基板X2が分割され、サーマルヘッドY2が作製されている。さらに、共通電極17は、測温端子群28cに向けて突出する突出部16をさらに備えている。その他の構成は、第1の実施形態に係るサーマルヘッドY1と同様である。
第2の実施形態においても、発熱部9の配列方向における基板7の端部に、共通電極17が設けられている。そのため、共通電極17が第1補強部材8となり、発熱部9の配列方向における基板7の端部の強度を向上させることができる。
第2の実施形態に係るサーマルヘッドY2は、共通電極17の他端においてFPC5と基板7とが電気的に接続される。より詳細には、主配線部17aおよび突出部17bにて電気的に接続される。同様に、IC−FPC接続電極21の他端とFPC5とが電気的に接続される。より詳細には、IC電極22、グランド電極24、IC制御電極26、および測温端子群28cとFPC5とが電気的に接続される。
ここで、基板7と、FPC5とは上述した材料により形成すると形成される材料の違いにより、熱膨張率が異なり、サーマルヘッドY1の作動時において、基板7に比べてFPC5が発熱部9の配列方向に延びる変形を生じる場合がある。そして、その変形により生じる応力が原因となり、FPC5が基板7から剥離する場合がある。これは、特に変形量の大きい発熱部9の配列方向における基板7の端部にて生じるおそれがある。 サーマルヘッドY2は、発熱部9の配列方向における少なくとも一方の端部に第2補強部材10が設けられていることから、第2補強部材10を含むようにサーマルヘッド用基板X2を分割して得られたサーマルヘッドY2の端部に第2補強部材10が設けられていることとなる。IC−FPC接続電極21と、FPC5のプリント配線5bとが、はんだにより接続する場合、はんだにてFPC5の変形により生じる応力を緩和することができ、基板7とFPC5との剥離が生じる可能性を抑えることができる。つまり、第2補強部材10を設けていない場合に比べて、基板7とFPC5との接合面積を増やすことができ、基板7とFPC5とを接続する各はんだに生じる応力を分散することができる。それゆえ、基板7とFPC5との剥離が生じる可能性を抑えることができる。
さらに、発熱部9の配列方向における基板7の端部に第1補強部材8としての共通電極17が設けられていることにより、特に剥離の生じやすい発熱部9の配列方向における基板7の端部に発生する応力を低減することができる。それにより、基板7とFPC5との剥離が生じる可能性をおさえることができる。
また、異方導電性接着剤を用いるACF接続により基板7とFPC5とを接続する場合においても、第2補強部材10としての共通電極17あるいはIC−FPC接続電極21が設けられていることにより、発熱部9の配列方向における異方導電性接着材の厚みを均一に近づけることができる。つまり、第2補強部材10を設けないと、第2補強部材10の厚みと同等の厚み分、発熱部9の配列方向における基板7の端部の厚みが薄くなり、発
熱部9の配列方向における基板7の端部の接合強度が弱くなってしまう。しかしながら、第1補強部材8を設けることにより、発熱部9の配列方向における異方導電性接着材の厚みを均一に近づけることができる。そのため、基板7とFPC5との接続強度を向上させることができる。
さらに、サーマルヘッド用基板X2を測温端子群28cの位置にて分割してサーマルヘッドY2を作製することにより、容易にサーマルヘッドY2に第2補強部材10を設けることができる。また、第2補強部材10を設けることで、第2補強部材10の隣に位置する区画14の電気的な導通が切断されにくくなり、サーマルヘッドY2の信頼性を向上させることができる。
測温端子群28cの位置にて分割してサーマルヘッドY2を作製することで、測温端子群28cをマーカーとして用いることができる。そのため、分割する位置をマーキングした後にサーマルヘッド用基板X2を分割する必要がなく、サーマルヘッドY2の製造工程を簡略化することができる。
また、共通電極17は、測温端子群28cに向けて突出する突出部16を備えていることから、密集したIC−FPC電極21に熱がこもり、温度が上昇した場合においても、発生した熱を突出部16を通じて、基板7の第2主面7dに逃がすことができる。それにより、温度測定部材33の測定する温度を正確なものとすることができ、サーマルヘッドY2の制御を精度よくすることができる。
なお、基板7とFPC5との接続方法は、はんだによる接続およびACF接続に限定されるものではない。例えば、はんだの代わりに導電性接着剤を用いて接合した場合においても、第2補強部材により基板とFPCとの接続を強固なものにすることができる。
<第3の実施形態>
図9に示すように、第3の実施形態に係るサーマルヘッド用基板X3は、図9で示す上面に発熱部9を有しており、区画14の構成が上述した実施形態とは異なるものである。また、複数の区画14が、発熱部9の配列方向および発熱部9の配列方向に垂直な方向に設けられている。
図示していないが、共通電極17は、サーマルヘッド用基板X3の第2主面の全域にわたって設けられており、およびサーマルヘッド用基板X3の第1主面の発熱部9側に、主配線部17aが設けられている。そして第2主面に設けられた共通電極17がビアホール導体によりサーマルヘッド用基X3の第1主面に引き出されて、主配線部17aと電気的に接続されているとともに、発熱部9の反対側においてもサーマルヘッド用基板X3の第1主面に引き出されており、この部位にてFPC5と接続されて、電気的な導通を得ている。電気的な導通方法として、サーマルヘッド用基板X3を分割して切断した後に、スパッタリング、印刷等の成膜により、共通電極17を形成することで、サーマルヘッド用基板X3から、サーマルヘッドY3を作製することができる。
なお、サーマルヘッド用基板X3の発熱部9の配列方向における分割はレーザー加工により行ない、サーマルヘッド用基板X3の発熱部9の配列方向と垂直な方向における分割はスクライブを形成して分割してもよい。この場合においても、方向により分割する方法を変えてもよい。
このように、基板7の第1主面7cに発熱部9を設けた構成を有する区画14を複数備えるサーマルヘッド用基板X3においても、容易に任意のサーマルヘッドY3を作製することができる。
図10を用いて第3の実施形態に係るサーマルヘッド用基板X3をE線により分割して作製されたサーマルヘッドY3について説明する。
基板7の第1主面7cに複数の発熱部9が配列されており、第1主面7c上にて発熱部19と共通電極17の主配線部17aが接続されている。
また、図示していないが、共通電極17は、基板7の第2主面7dの全域にわたって設けられており、および基板7の第1主面7cの発熱部9側に、主配線部17aが設けられている。そして第2主面7dに設けられた共通電極17がビアホール導体により基板7の第1主面7cに引き出されて、主配線部17aと電気的に接続されているとともに、発熱部9の反対側においても基板7の第1主面7cに引き出されており、この部位にてFPC5と接続されて、電気的な導通を得ている。
図11を用いて、本発明の他の実施形態であるサーマルヘッドY4、Y5について説明する。図11(a)に示すサーマルヘッドY4は、6つの区画14により構成されており、中央部に配置された1つの区画14の測温端子群28cに測温部材28aが設けられている。このように、サーマルヘッドY4は、サーマルヘッド用基板X3から分割した後に、駆動IC11および測温部材28aを設けることができ、任意の位置に測温部材28a等を実装することができる。それにより、サーマルヘッドの大きさや求められる特性に従い、測温部材28a等を実装することができる。そのため、作製時における自由度の高いサーマルヘッドY5とすることができる。
図11(b)に示すサーマルヘッドY5は、9つの区画14により構成されており、中央部に配置された1つの区画14、および発熱部9の配列方向における両端部に位置する区画14の測温端子群28cに測温部材28aがそれぞれ設けられている。
ここで、サーマルヘッドの発熱部の配列方向における長さが長い場合、発熱部の配列方向における長さ方向において、両端部が中央部よりも温度の低い温度分布が生じて、サーマルヘッドに印字むらが生じる場合がある。
サーマルヘッドY5は、発熱部9の配列方向における両端部および中央部に測温部材28aが設けられていることから、発熱部9の配列方向における温度分布を精度よく把握することができる。それにより、両端部に中央部よりも多くの電圧を印加させることで、発熱部9の配列方向における温度分布を平滑に近づけることができる。
また、発熱部9の配列方向における両端部の測温端子群28cに、抵抗体を設けてもよい。その場合においては、抵抗体に発熱するように電圧を印加することで、発熱部9の配列方向における温度分布を平滑に近づけることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、第1補強部材8を共通電極17の一部として形成するのではなく、第1補強部材8を別部材として形成してもよい。その場合、第1補強部材としては、例えば、第2保護層27あるいは第1保護層25と同等の材料により形成することができる。
別部材として第1補強部材8を設けることにより、第1補強部材8を所定の形状に設けやすくなり、さらに、電極としての機能を有する必要がないため、絶縁部材により作製することもできる。第1補強部材8の形成方法としては、印刷、スパッタリングあるいはディップ等を例示することができ、形成する材料により所定の方法を用いて形成すればよい
。
また、共通電極17の一部により第1補強部材8を形成し、さらに別部材で第1補強部材8を設けてもよい。それにより、基板7の端部の強度をさらに向上させることができる。
また、上記のサーマルヘッドY1では、FPC5を介してヘッド基体3の基板7上に設けられた共通電極17およびIC−FPC接続電極21を外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続しているが、これに限定されるものではなく、例えば、FPC5のように可撓性を有するフレキシブルプリント配線板ではなく、硬質のプリント配線板を介してヘッド基体3の各種配線を外部の電源装置等に電気的に接続してもよい。この場合、例えば、ヘッド基体3の共通電極17およびIC−FPC接続電極21とプリント配線板のプリント配線とをワイヤーボンディング等によって接続すればよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドY1では、図4および図5に示されるように、電気抵抗層15が、蓄熱層13上のみならず、基板7の第1主面7cおよび第2主面7d上にも設けられているが、基板7の第1端面7a上の共通電極17と個別電極層19とに接続されている限り、これに限定されるものではなく、例えば、蓄熱層13上にのみ設けられていてもよい。また、基板7の第1端面7a上の共通電極17および個別電極19を蓄熱層13上に直接形成し、蓄熱層13上の共通電極17の先端部と個別電極19の先端部との間の領域にのみ電気抵抗層15が設けられていてもよい。
また、他のサーマルヘッドの構成として、例えば、共通電極17は、基板7の第1端面7a上から基板7の第2主面7d上に延び、この基板7の第2主面7d上で折り返すようにして、基板7の第1端面7a上を介して基板7の第1主面7c上に延びていてもよい。
さらにまた、上記実施形態のサーマルヘッドYでは、図3、4に示すように、基板7の第1端面7aが凸状の曲面形状を有しているが、基板7の第1端面7aの表面形状および傾斜角度は特に限定されるものではなく、任意の形態をとることができる。例えば、基板7の第1端面7aは、平面形状であってもよいし、屈曲した面で形成されていてもよい。また、基板7の第1主面7cおよび第2主面7dと基板7の第1端面7aとのなす角度が直角ではなく、鈍角または鋭角であってもよい。
上記実施形態のサーマルヘッドでは、共通電極17は、基板7の第1端面7a上から、基板7の第2主面7d上、および基板7の第2端面7b上を介して、基板7の第1主面7c上にわたって延びているが、これに限定されるものではない。例えば、共通電極17を基板7の第1端面7aおよび第2主面7d上にのみ形成してもよい。この場合、この基板7の第2主面7d上に形成された共通電極17とFPC5のプリント配線5bとを、別途設けたジャンパー線によって接続すればよい。
なお、本明細書に示した実施形態においては、発熱部9の配列方向における両端部に第1補強部材8を設けた例を示したが、どちらか一方にのみ設けてもよい。その場合においても、第1補強部材8が基板7の欠けやクラックの生じる可能性を抑えることができる。なお、基板7に欠けやクラックが生じることを抑える点では、発熱部9の配列方向における基板7の両端部に設けることが好ましい。
また、第1補強部材8を発熱部9の配列方向に直交する基板7の端面に設けてもよい。その場合においても、発熱部9の配列方向における基板7の端部の強度をさらに向上させることができる。
なお、サーマルヘッドY4、Y5においては、すべての区画14の測温端子群28cに測温部材28a等を実装していない例を示したが、すべての区画14の測温端子群28cに測温部材28aを実装してもよい。