以下、本発明のサーマルヘッドの第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1〜図3に示すように、本実施形態のサーマルヘッドXは、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント基板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、第1の実施形態においてはFPC5上に設けられた電子部品は判別IC32を用いて説明する。
放熱体1は、板状に形成されており、平面視で長方形状を有している。この放熱体1は、例えば、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、本実施形態では、熱膨張係数が約23.0×10−6/℃となっている。そして、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。また、放熱体1の上面には、両面テープや接着剤等(図示せず)によってヘッド基体3が接着されている。
ヘッド基体3は、平面視で長方形状の基板7と、基板7上に設けられ、基板7の長手方向に沿って配列された複数(図示例では24個)の発熱部9と、発熱部9の配列方向に沿って基板7上に並べて配置された複数(図示例では3個)の駆動IC11とを備えている。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料や単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成することができる。本実施形態では、基板7は、アルミナセラミックスで形成されており、熱膨張係数が約7.3×10−6/℃となっている。この基板7の厚さは、例えば、0.5mm〜2mmとすることができる。
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。この蓄熱層13は、基板7の上面全体に形成された下地部13aと、複数の発熱部9の配列方向に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状の隆起部13bとを有している。この隆起部13bは、印画する記録媒体を、発熱部9上に形成された後述する第1保護層25に良好に押し当てるように作用する。
また、蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドXの熱応答特性を高めるように作用する。この蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを高温で焼成することで形成される。
図1、図2に示すように、蓄熱層13の上面には、電気抵抗層15が設けられている。この電気抵抗層15は、蓄熱層13と、後述する共通電極配線17、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21との間に介在し、図1に示すように、平面視において、これらの共通電極配線17、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21と同形状の領域(以下、介在領域という)と、共通電極配線17と個別電極配線19との間から露出した複数(図示例では、24箇所)の領域(以下、露出領域という)とを有している。なお、図1および図5では、この電気抵抗層15の介在領域は、共通電極配線17、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21で隠れている。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、この複数の露出領域(発熱部9)が、図1、図2に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1では簡略化して記載しているが、例えば、180dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極配線17と個別電極配線19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1、図2に示すように、電気抵抗層15の上面(より詳細には、上記の介在領域の上面)には、共通電極配線17、複数の個別電極配線19および複数の駆動IC−FPC接続配線21が設けられている。これらの共通電極配線17、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極配線17は、複数の発熱部9とFPC5とを接続するためのものである。図1に示すように、この共通電極配線17は、基板7の一方の長辺(図示例では左側の長辺)に沿って延びる主配線部17aと、基板7の一方および他方の短辺のそれぞれに沿って延び、一端部(図示例では左側の端部)が主配線部17aに接続された2つの副配線部17bと、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延び、先端部(図示例では右側の端部)が各発熱部9に接続された複数(図示例では24個)のリード部17cとを有している。共通電極配線17は、このように複数のリード部17cが各発熱部9に接続されていることにより、複数の発熱部に共通して接続されている。また、各副配線部17bの他端部(図示例では右側の端部)は、図1に示すように後述する第2保護膜27に被覆されておらず、この他端部が後述するFPC5の配線導体5bと接続される接続部17bsになっている。そして、この共通電極配線17は、この副配線部17bに形成された接続部17bsがFPC5の後述する配線導体5bに接続されることにより、FPC5と各発熱部9との間を電気的に接続している。
複数の個別電極配線19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1に示すように、各個別電極配線19は、一端部(図示例では左側の端部)が発熱部9に接続され、他端部(図示例では右側の端部)が駆動IC11の配置領域に配置されるように、各発熱部9から駆動IC11の配置領域に向かって個別に帯状に延びている。そして、各個別電極配線19の他端部が駆動IC11に接続されることにより、各発熱部9と駆動IC11との間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極配線19は、複数の発熱部9を複数(図示例では3つ)の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数の駆動IC−FPC接続配線21は、駆動IC11とFPC5とを接続するためのものである。図1に示すように、各駆動IC−FPC接続配線21は、一端部(図示例では左側の端部)が駆動IC11の配置領域に配置され、他端部(図示例では右側の端部)が基板7の他方の長辺(図示例では右側の長辺)の近傍に配置されるように、帯状に延びている。駆動IC−FPC接続配線21の他端部は、図1、図2に示すように、共通電極配線17の副配線部17bの接続部17bsと同様、後述する第2保護膜27に被覆されておらず、この駆動IC−FPC接続配線21の他端部が、後述するFPC5の配線導体5bと接続される接続部21sになっている。そして、この複数の駆動IC−FPC接続配線21は、一端部が駆動IC11に接続されるとともに、他端部(接続部21s)がFPC5の後述する配線導体5bに接続されることにより、駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。
より詳細には、各駆動IC11に接続された複数の駆動IC−FPC接続配線21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。具体的には、この複数の駆動IC−FPC接続配線21は、例えば、駆動IC11を動作させるための電源電流を供給するため
のIC電源配線と、駆動IC11およびこの駆動IC11に接続された個別電極配線19をグランド電位(例えば0V〜1V)に保持するためのグランド電極配線と、後述する駆動IC11内のスイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11を動作させるための電気信号を供給するためのIC制御配線とで構成されている。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極配線19の他端部(図示例では右側の端部)と駆動IC−FPC接続配線21の一端部(図示例では左側の端部)とに接続されている。この駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に複数のスイッチング素子を有しており、各スイッチング素子がオン状態のときに通電状態となり、各スイッチング素子がオフ状態のときに不通電状態となる公知のものを用いることができる。
各駆動IC11は、各駆動IC11に接続された各個別電極配線19に対応するように、内部に複数のスイッチング素子(図示せず)が設けられている。そして、図2に示すように、各駆動IC11は、各スイッチング素子(図示せず)に接続された一方(図示例では左側)の接続端子11aが個別電極配線19に接続されており、この各スイッチング素子に接続されている他方(図示例では右側)の接続端子11bが駆動IC−FPC接続配線21の上記のグランド電極配線に接続されている。これにより、駆動IC11の各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極配線19と駆動IC−FPC接続配線21のグランド電極配線とが電気的に接続される。
上記の電気抵抗層15、共通電極配線17、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、この積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。
図1、図2に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極配線17の一部および個別電極配線19の一部を被覆する第1保護層25が形成されている。図示例では、この第1保護層25は、蓄熱層13の上面の左側の領域を覆うように設けられている。この第1保護層25は、発熱部9、共通電極配線17および個別電極配線19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食や、印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。この第1保護層25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。また、この第1保護層25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術や、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。また、この第1保護層25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。
また、図1に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、共通電極配線17、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21を部分的に被覆する第2保護層27が設けられている。図示例では、この第2保護層27は、蓄熱層13の上面の第1保護層25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。第2保護層27は、共通電極配線17、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21の被覆した領域を、大気との接触による酸化や、大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。なお、第2保護層27は、共通電極配線17および個別電極配線19の保護をより確実にするため、図2に示すように第1保護層25の端部に重なるようにして形成されている。第2保護層27は、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、この第2保護層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
なお、FPC5を接続する共通電極配線17の副配線部17bの端部(接続部17bs
)および駆動IC−FPC接続配線21の端部(接続部21s)は、第2保護層27から露出しており、後述するようにFPC5が接続されるようになっている。
また、第2保護層27には、駆動IC11を接続する個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21の端部を露出させるための開口部(図示せず)が形成されており、この開口部を介してこれらの配線が駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極配線19および駆動IC−FPC接続配線21に接続された状態で、駆動IC11自体の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続部の保護のため、エポキシ樹脂やシリコン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることで封止されている。
FPC5は、図1に示すように、ヘッド基体3の基板7の縁に沿って延びており、上記のように共通電極配線17の副配線部17bおよび各駆動IC−FPC接続配線21に接続されている。このFPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に複数の配線導体5bが配線された周知のものであり、各配線導体5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。このような配線導体5bは、一般に、例えば、銅箔等の金属箔、薄膜成形技術によって形成された導電性薄膜、または厚膜印刷技術によって形成された導電性厚膜によって形成されている。また、金属箔や導電性薄膜等によって形成される配線導体5bは、例えば、これらをフォトエッチング等により部分的にエッチングすることによってパターニングされている。
より詳細にはFPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に形成された各配線導体5bがヘッド基体3側の端部で露出している。本実施形態では、樹脂層5aはポリイミド樹脂で形成されており、また、配線導体5bは、銅で形成されている。この配線導体5bの厚さは、例えば、15μm〜40μmとすることができる。FPC5全体として熱膨張係数は約25×10−6/℃となっている。そして、この各配線導体5bが、導電性接合材料、例えば、はんだ材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方導電性材料(ACF)等からなる接合材(図示せず)によって、共通電極配線17の副配線部17bの接続部17bsおよび各駆動IC−FPC接続配線21の接続部21sに接合されている。
配線導体5bは、後述する補強板33を貫通する接続端子(図示せず)によって、後述する補強板33におけるFPC5が接着された面とは反対側の面に固定されたコネクタ31に接続されている。
そして、FPC5の各配線導体5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、共通電極配線17は、正電位(例えば20V〜24V)に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続され、個別電極配線19は、駆動IC11および駆動IC−FPC接続配線21のグランド電極配線を介して、グランド電位(例えば0V〜1V)に保持された電源装置のマイナス側端子に電気的に接続されるようになっている。そのため、駆動IC11のスイッチング素子がオン状態のとき、発熱部9に電圧が印加され、発熱部9が発熱するようになっている。
また、同様に、FPC5の各配線導体5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されると、駆動IC−FPC接続配線21の上記のIC電源配線は、共通電極配線17と同様、正電位に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続されるようになっている。これにより、駆動IC11が接続された駆動IC−FPC接続配線21のIC電源配線とグランド電極配線との電位差によって、駆動IC11に駆動IC11を動作させるための電源電流が供給される。また、駆動IC−FPC接続配線21の上記のIC制御配線は、駆動IC11の制御を行う外部の制御装置に
電気的に接続される。これにより、制御装置から送信された電気信号が駆動IC11に供給されるようになっている。この電気信号によって、駆動IC11内の各スイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11を動作させることで、各発熱部9を選択的に発熱させることができる。
図2、図3に示すように、FPC5と放熱体1との間には補強板33が設けられている。この補強板33は、例えば、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の有機樹脂で形成することができる。また、本実施形態では、補強板33は、ガラスエポキシ樹脂で形成されており、熱膨張係数が約20×10−6/℃となっている。この補強板33の厚さは、例えば、0.6mm〜1.6mmである。この補強板33は、両面テープや接着剤等の接着層(図示せず)によって、FPC5の下面に接着されることにより、FPC5を補強するように作用している。
また、この補強板33は、放熱体1に対向する面(図3および図4では下側の面)が、放熱体1の上面に両面テープや接着剤等(図示せず)によって接着されている。これにより、FPC5が補強板33を介して放熱体1上に固定されている。
そして、FPC5の表面に判別IC32が樹脂34により固定されて設けられている。図3に示すように、FPC5は、判別IC32よりもヘッド基体3側に貫通孔36を有しており、貫通孔36は補強板33に設けられた穴部38と連通して設けられている。貫通孔36および穴部38には樹脂34が充填されており、樹脂34により判別IC32とFPC5とが接合されている。
判別IC32は、当該判別IC32が有するメモリ内にヘッド基体3の抵抗値データ等のそれぞれのヘッド基体3特有のデータが記憶されており、サーマルヘッドXの起動時あるいは作動時に、サーマルヘッドXが有するヘッド基体3が所定のものか否かを判別する機能を有している。
図3(b)に示すように、貫通孔36は、判別IC32の近傍に設けられており、判別IC32の中央部に対応する位置に設けられている。貫通孔36の径を判別IC32よりも小さく設けることでFPC5の強度が低下することを抑えることができる。
補強板33に設けられた穴部38は、図3(a)に示すように、貫通孔36の径と同じ大きさの開口38aが設けられており、補強板33の内部をくり抜くように設けられている。言い換えると、補強板33は、円柱形状にくり抜かれた穴部38を有することとなる。
そして、平面視して、判別IC32の発熱部9の配列方向における両端部、ヘッド基体3側および判別IC32とFPC5との間の空間に樹脂34が配置されており、樹脂34により判別IC32とFPC5とが接合されている。樹脂34により、発熱部9の配列方向における両端部が接合されていることにより、判別IC32とFPC5の配線導体5bとを電気的に接続する端子を封止することができ、端子の破損を抑えることができる。
また、樹脂34は、FPC5の貫通孔36および補強板33の穴部38に充填されており、FPC5の貫通孔36および補強板33の穴部38に充填された樹脂34は、判別IC32の発熱部9の配列方向における両端部、ヘッド基体3側の三方を接合する樹脂34と一体的に設けられている。
樹脂34としては、上述した第2保護層27を形成するエポキシ樹脂やウレタン樹脂等の有機樹脂材料で形成することができる。また、熱を加えて硬化する際に収縮する樹脂を
用いてもよい。つまり、硬化収縮率の高い樹脂を用いることで、硬化する際に、判別IC32のFPC5に対する接合強度を向上させることができる。硬化収縮率の高い樹脂としては、2液性のエポキシ樹脂あるいはウレタン製の樹脂を例示することができる。
樹脂34による判別IC32の接合方法について説明する。FPC5に例えばレーザー照射により貫通孔36を設け、補強板33に例えば切削加工により穴部38を設ける。そして、貫通孔36と補強板38とが連通するように、補強板33上にFPC5を配置して、例えば両面テープによりFPC5と補強板33とを接合する。
次に、例えばディスペンサーにより、判別IC32の3方に樹脂を塗布する。3方から塗布することにより、樹脂32を設けない方向である判別IC32のコネクタ31側から、空気が逃げることができ、判別IC32と樹脂34との間に充填された樹脂に気泡が生成される可能性を低減することができる。それにより、サーマルヘッドの作動時における熱により、樹脂34の内部に形成された気泡の膨張により、判別IC32が破損する可能性あるいは判別IC32が剥離する可能性を低減することができる。
本発明の第1の実施形態に係るサーマルヘッドによれば、FPC5に設けられた貫通孔36と、補強板33に設けられた穴部38とが連通しており、判別IC32とFPC5とを接合する樹脂34が、貫通孔36および穴部38に充填されていることから、樹脂34と補強板33とが強固に接合されることとなる。それにより、FPC5上に配置された判別IC32がサーマルヘッドに強固に接合されることとなる。そのため、判別IC32の剥離する可能性を低減することができる。
また、判別IC32が、平面視して発熱部9の配列方向における両端部およびヘッド基体3側の3方により固定されているため、例えば、判別IC32に発熱部9の配列方向に外力が加えられても、判別IC32が剥離することを抑えることができる。さらに、発熱部9の配列方向に垂直な方向に外力が働いても、判別IC32が剥離することを抑えることができる。それにより、判別IC32とFPC5との接合が強固なため判別IC32の剥離する可能性を低減することができる。
貫通孔36および穴部38が、判別IC32のヘッド基体3側に設けられていることから、判別IC32のコネクタ31側の領域に樹脂34を配置しなくてもよく、樹脂34を配置するのに必要な領域がなくなるため、サーマルヘッドXを小型化することができる。
なお、第1の実施形態ではFPC5として有機樹脂からなるフレキシブルプリント基板を用いる例を示したが、セラミックスあるいはガラス等の無機材料からなる基板を用いてもよい。また、図3では穴部38が放熱体33を貫通しない例を示したが、穴部38が補強板33を貫通していてもよい。穴部38が補強板33を貫通するように設けられることにより、補強板33の下方に位置する放熱体1の表面にまで樹脂34が配置されることになる。それにより、判別IC32とFPC5との接合強度をさらに高めることができる。
また、穴部38に樹脂34が充填されていると表現しているが、穴部38に樹脂が充填されていない空間があってもよい。
なお、第1の実施形態では、穴部38は、平面視して円形状をなしている例について示したが、これに限定されるものではない。例えば、穴部38は、平面視して三角形状あるいは四角形状の多形状であってもよく、楕円形状であってもよい。穴部38に樹脂34を隙間なく充填しやすい点から、角のない円形状であることが好ましい。
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図4を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図4に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドXは、サーマルプリンタZの筐体に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、このサーマルヘッドXは、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向、言い換えると主走査方向であり、図4においては紙面に直交する方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図4の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドXの複数の発熱部9上、より詳細には保護膜25上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドXの発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドXの発熱部9上に押圧するためのものであり、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
なお、本実施形態では、記録媒体Pの幅は、サーマルヘッドXにおける蓄熱層13の隆起部13bの長さよりも大きくなっている。また、プラテンローラ50の長さ、より詳細には、弾性部材50bの長さは、サーマルヘッドXにおける蓄熱層13の隆起部13bの長さよりも長くなっている。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドXの発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給するためのものである。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドXの発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給するためのものである。
本実施形態のサーマルプリンタZは、図4に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体をサーマルヘッドXの発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることで、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、図示しないが記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルムのインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
図5、図6を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るサーマルヘッドXは、コネクタ31が、FPC5の両端部の2か所で接合されていること、FPC5の発熱部9の配列方向における中央部に判別IC32が配置されていること、および貫通孔36と穴部38とが判別IC32の下方に設けられている。
図6に示すように、平面視して、穴部38の径が補強板33の内部に向かうにつれて大きくなっている。言い換えると、穴部38は断面視して台形形状を有している。それにより、穴部38の開口38aよりも外側の領域にある樹脂34により、判別IC32の接合を強固にすることができる。
また、第2の実施形態においては、補強板33として、放熱体1を突出させた突出部1bを用いている。それにより、放熱体1と補強板33とを一体的に設けることができ、サーマルヘッドXを構成する部品数を低減することができる。
図6(b)に示すように、樹脂34は、発熱部9の配列方向における両端部に配置されている。そして、判別IC32の下方に設けられた貫通孔36および穴部38に樹脂34が充填されており、判別IC32とFPC5とを接合している。
第2の実施形態によれば、判別IC32が貫通孔36および穴部38により、FPC5の発熱部9の配列方向における中央部に設けられていることから、サーマルヘッドXの作動時の熱によるFPC5の変形をFPC5の発熱部9の配列方向における中央部で固定することとなる。そのため、特に変形量の大きいFPC5の両端部に生じる応力を低減することができる。
さらに、平面視して、穴部38の径が補強板33の内部に向かうにつれて大きくなることから、穴部38の開口28aの外側に位置する樹脂34により、補強板33から樹脂34が剥離しにくくなる。そのため、判別IC32がFPC5から剥離することを抑えることができる。
なお、穴部38の径を補強板33の内部に向かうにつれて大きくするとともに、穴部38の開口28aの径を貫通孔26の径よりも大きくするとさらに樹脂34とFPC5との接合強度を強くすることができる。
また、放熱体1と補強板33とを一体的に設けた例を示したが、放熱体1と補強板33とを別体として設けてもよい。その場合において、補強板33に貫通する穴部38を設けて、穴部38と連通するように放熱体1にも穴部38を設けてもよい。つまり、補強板33を貫通して、放熱体1までわたって穴部38を設けてもよい。放熱体1まで穴部38を設けることにより、判別IC32の接合強度をさらに高めることができ、判別IC32の剥離を抑えることができる。
補強板33および放熱体1に穴部38を設ける場合に、補強板33に設けられた穴部38の開口28aより放熱体1に設けられた穴部38の開口28aを大きくすることで、さらに樹脂34の接合強度を高めることができる。また、補強板33に設けられた穴部38の形状を円柱形状として、放熱体1に設けられた穴部38の形状を断面視して台形形状としてもよい。その場合においても、樹脂34の接合強度を高めることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、図7(a)に示すように、補強板33に穴部38と連通するように収容部38bを設けてもよい。平面視して、収容部38bを穴部38よりも外側に配置して樹脂34を充填することにより、補強板33と樹脂34との接合強度を高めることができ、樹脂34が補強板33から剥離しにくくなる。それにより、判別IC32とFPC5との接合強度を高めることができる。また、収容部38bを補強板33の裏面に設けることにより、簡単に収容部38bを補強板33に設けることができる。
また、補強板33と放熱体1とを一体的に設ける場合には、放熱体1の内部に収容部38bを設けてもよい。それにより、放熱体1と樹脂34との接合強度を高めることができる。さらに、補強板33と放熱体1とを別体として設ける場合に、放熱体1の上面に収容
部38bを設けてもよい。その場合においても、補強板33と樹脂34との接合強度を高めることができる。
収容部38bは、平面視して穴部38よりも外側に設けられていればよく、その形状は限定されるものではない。例えば、平面視して、円形状であってもよく、矩形状であってもよい。
さらに図7(b)で示すように、ヘッド基体3と補強板33とが所定の空間39を有して並置されており、補強板33が、空間39に向けて連通する連通部38cを有しており、連通部38cおよび空間39に樹脂34を充填してもよい。その場合においても、連通部38cが樹脂34と補強板33との接合強度を高めるため、判別IC32とFPC5との接合強度を高めることができる。また、空間39に樹脂34が充填されていることから、補強板33と基板7との接合強度を高めることができる。そのため、補強板33が基板7に強固に固定されることにより、FPC5と基板7とが固定されることとなる。それにより、判別IC32がサーマルヘッドXに強固に接合されることとなる。
なお、図7(b)においては、空間39と穴部38とが1つの連通部38cにより連通している例を示したが、空間39と穴部38とが複数の連通部38cにより連通されていてもよい。その場合においても、複数の連通部38cにより補強板33と樹脂4とが接合されるため、判別IC32と補強板33との接合強度を向上させることができる。
また、図5に示すサーマルヘッドXでは、1つのFPC5に1つの補強板33を接着しているが、これに限定されるものではなく、1つのFPC5に接着する補強板33の数は、任意の数にすることができる。
なお、FPC5上に設ける電子部品の例として、判別IC32を用いて説明したが、これに限定されるものではない。電子部品としては、例えば、駆動IC、抵抗体、コンデンサ等を例示することができる。これらの電子部品においても、FPC5に設けられた貫通孔36と、補強板33に設けられた穴部38とが連通しており、電子部品とFPC5とを接合する樹脂34が、貫通孔36および穴部38に充填されるように設けることで、FPC5と電子部品との剥離を生じる可能性を低減することができる。