<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜4を参照して説明する。図1においては、保護層25、被覆層27、被覆部材29、および保護部材18を省略して示している。また、図2では、コネクタ31、および保護部材18を省略して示している。さらに、図1,2では、第1幅狭部12の図示は省略している。
サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に実装されたコネクタ31とを備えている。なお、以下、外部との電気的な接続をするための接続部材としてコネクタ31を用いて説明するが、可堯性のあるフレキシブルプリント配線板、ガラスエポキシ基板あるいはポリイミド基板等、他の部材を用いてもよい。フレキシブルプリント配線板により外部と電気的な接続をする場合、フレキシブルプリント配線板と放熱体1との間には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板(不図示)を設けてもよい。
放熱体1は、板状に形成されており、平面視して長方形状をなしている。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。また、放熱体1の上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。
ヘッド基体3は、平面視して、板状に形成されており、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体(不図示)に印画を行う機能を有する。
コネクタ31は、図1,2に示すように、複数のコネクタピン31aと、複数のコネクタピン31aを収納するハウジング31bとを有している。複数のコネクタピン31aは、一方がハウジング31bの外部に露出しており、他方がハウジング31bの内部に収容されている。複数のコネクタピン31aは、ヘッド基体3の各種電極と、外部に設けられた例えば電源との電気的な導通を確保する機能を有しており、それぞれが電気的に独立している。コネクタ31として、表面実装コネクタを用いてもよい。
ハウジング31bは、各コネクタピン31aをそれぞれ電気的に独立された状態で収納する機能を有するため、絶縁性の部材により構成されている。そして、ハウジング31bは、外部に設けられたコネクタ(不図示)の着脱により、ヘッド基体3に電気を供給している。コネクタピン31aは、導電性を有する必要があるため、金属あるいは合金により形成されており、ハウジング31bは、例えば、熱硬化性の樹脂、紫外線硬化性の樹脂あるいは光硬化性の樹脂により形成されている。
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。蓄熱層13は、基板7の上面の左半分にわたり形成された下地部13aと、複数の発熱部9の配列方向(主走査方向と同じ方向。以下、配列方向と称する)に沿って帯状に延び、断面が略半楕円形状をなしている隆起部13bとを有している。下地部13aは、発熱部9の近傍に設けられており、後述す
る保護層25の下方に配置されている。隆起部13bは、記録媒体を、発熱部9上に形成された保護層25に良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することで形成される。
電気抵抗層15は、蓄熱層13の上面に設けられており、電気抵抗層15上には、外部端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。電気抵抗層15は、外部端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。この電気抵抗層15の露出領域は、図1に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。
複数の発熱部9は、説明の便宜上、図1で簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
図1〜3に示すように、電気抵抗層15の上面には、外部端子2、グランド電極4、共通電極17、複数の個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が設けられている。これらの外部端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀、パラジウム、および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
外部端子2は、基板7の他方の長辺7b側に複数個配列されており、基板7の配列方向の両端部に配置されている。外部端子2は、平面視して、矩形形状をなしており、それぞれの外部端子2の一端部に、共通電極17、IC−コネクタ電極21、およびグランド電極4の一端部が接続されている。
図3に示すように、外部端子2上には、導電部材23を介して、コネクタピン31aが配置されている。複数のコネクタピン31aは、それぞれ異なる外部端子2上に配置されており、そのため、各外部端子2が電気的に独立な状態を維持している。
なお、外部端子2の表面には、必要であれば、Ni、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。それにより、外部端子2と導電部材23との電気抵抗が大きくなる可能性を低減することができる。
共通電極17は、基板7の一方の長辺7aに沿って延びる主配線部17aと、基板7の一方の短辺7cおよび他方の短辺7dのそれぞれに沿って延びる2つの副配線部17bと、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びる複数のリード部17cとを有している。共通電極17は、一端部が複数の発熱部9と接続され、他端部が外部端子2に接続されることにより、コネクタ31と各発熱部9との間を電気的に接続している。共通電極17の他端部は、複数の外部端子2のうち両端部に配置されている外部端子2に接続さ
れている。
複数の個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、他端部がIC端子(不図示)に接続されることにより、各発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数のIC−コネクタ接続電極21は、一端部がIC端子に接続され、他端部が基板7の他方の長辺7b側に引き出された外部端子2に接続されている。そのため、コネクタ31を電気的に接続することにより、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数のIC−コネクタ接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。また、複数のIC−コネクタ接続電極21の他端部は、複数の外部端子2のうち、共通電極17に接続された外部端子2に隣り合う外部端子2と接続されている。複数のIC−コネクタ接続電極21が送る信号としては、クロック信号、ラッチ信号、vdd信号、あるいはストローブ信号をあげることができる。
複数のIC−IC接続電極26は、隣り合う駆動IC11同士を電気的に接続している。複数のIC−IC接続電極26は、それぞれIC−コネクタ接続電極21に対応するように設けられており、上述した各種信号を隣り合う駆動IC11に伝えている。なお、IC−IC接続電極26が本発明の第3電極の一実施形態となる。
グランド電極4は、配列方向に延在し、個別電極19と、IC−コネクタ接続電極21と、外部端子2との間に配置されており、広い面積を有している。グランド電極4は、0〜1Vのグランド電位に保持されており、各駆動IC11と、複数の外部端子2のうち端部に配置された外部端子2とに接続されている。
なお、電気抵抗層15上に形成されたグランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26が、本発明の第1電極にあたる。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19の他端部とIC−コネクタ接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いればよい。
上記の電気抵抗層15、外部端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、例えばスパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、外部端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26は、同じ工程によって同時に形成することができる。それにより、サーマルヘッドX1の製造コストを低減することができる。また、外部端子2、グランド電極4、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26を同時に形成し、外部端子2をコネクタ31等を用いて接続すればよいため、サーマルヘッドX1を容易に設けることができる。
基板7の中央部には、配列方向に延在する絶縁部材6が設けられている。絶縁部材6上には、接続電極8が配列方向に延在している。接続電極8は、他方の短辺7d側に設けられた外部端子2に接続された、IC−コネクタ接続電極21と、一方の短辺7c側に配置
された駆動IC11のIC端子とに接続されている。
図2,3に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。保護層25は、SiN、SiO、SiON、SiC、あるいはダイヤモンドライクカーボン等を用いて形成することができ、保護層25を単層で構成してもよいし、これらの層を積層して構成してもよい。このような保護層25はスパッタリング法等の薄膜形成技術あるいはスクリーン印刷等の厚膜形成技術を用いて作製することができる。
また、図1,2に示すように、基板7上には、共通電極17、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。また、被覆層27は、絶縁部材6の一部および接続電極8も被覆している。
被覆層27は、被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。なお、被覆層27は、共通電極17および個別電極19の保護をより確実にするため、図2に示すように保護層25の端部に重なるようにして形成されている。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
被覆層27は、IC端子および外部端子2を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、開口部を介してこれらの電極は駆動IC11に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19、IC−IC接続電極26およびIC−コネクタ接続電極21に接続された状態で、駆動IC11の保護、および駆動IC11とこれらの配線との接続部の保護のため、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29(図3参照)によって被覆されることで封止されている。
図2に示すように、コネクタ31は、基板7上に設けられており、外部端子2と、コネクタピン31aとは、導電部材23により電気的に接続されている。導電部材23は、例えば、はんだ、あるいは電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電接着剤等の、加熱することにより電気的に接続するものを例示することができる。本実施形態においては、リフローする際に熱を加えるはんだを用いて説明する。コネクタピン31aは、導電部材23に覆われることにより電気的に接続されている。
サーマルヘッドX1は、コネクタ31の少なくとも一部を保護するための保護部材18(図3参照)が設けられている。保護部材18は、コネクタピン31a、ハウジング31bの上面の一部、および被覆層27の一部を覆うように設けられている。
保護部材18は、例えば、熱硬化性樹脂、熱軟化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂により形成することができる。また、各外部端子2が、電気的に独立する必要がある場合は、絶縁性であることが好ましい。
また、保護部材18は、コネクタ31のコネクタピン31aを覆うことにより電気的な導通を保護しているが、ハウジング31bの上面の一部にも設けられることが好ましい。これにより、コネクタピン31aの全領域を保護部材18により覆うことができ、さらに
電気的な導通を保護することができる。
また、保護部材18は、ハウジング31bと基板7の端面7aとの間に設けられることが好ましい。これにより、コネクタ31の上面に設けられた保護部材18により、基板7の厚み方向の接合強度を高めるとともに、ハウジング31bと基板7の他方の長辺7bとの間に設けられた保護部材18により、コネクタピン31aの延びる方向の接合強度を高めることができる。そのため、基板7とコネクタ31との接合強度をさらに高めることができる。特に、ハウジング31bの上面の一部に保護部材18を設けることにより、剥離が生じやすいハウジング31bの上面の接合強度を向上させることができる。なお、基板7の他方の長辺7bとハウジング31bとの間に隙間を設けずに、基板7の他方の長辺7bとハウジング31bとが接触する構成としてもよい。
図1〜4を用いて、絶縁部材6および接続電極8について詳細に説明する。
図4(a)は、サーマルヘッドX1の配線パターンを示す概略平面図であり、絶縁部材6を一点鎖線にて示し、接続電極8を点鎖線にて示し、被覆部材29を2点鎖線にて示している。図4(b)は、サーマルヘッドX1の配線パターンの一部を拡大して示す拡大平面図であり、絶縁部材6を一点鎖線にて示し、接続電極8を点鎖線にて示し、被覆部材29を2点鎖線にて示している。
図2に示すように、絶縁部材6は、平面視して、矩形状をなしており、駆動IC11と発熱部9との間に配置されている。絶縁部材6は、一定の厚みを有し、配列方向に延在するように設けられており、個別電極19の一部、IC−コネクタ接続電極21の一部、およびIC−IC接続電極26の一部の上に設けられている。
絶縁部材6としては、被覆層27と同様の材料により形成することができ、これらの材料を印刷塗布した後に硬化することにより、形成されている。絶縁部材6は、厚みが10〜20μmであり、絶縁部材6の厚みが10〜20μmであることにより、個別電極19、IC−コネクタ接続電極21、およびIC−IC接続電極26と、接続電極8との絶縁性を確保することができる。
接続電極8は、絶縁部材6上に設けられており、配列方向に延在している。接続電極8は、平面視して、矩形状をなしており、一定の厚みで設けられている。接続電極8の厚みは、0.5〜2.0μmであることが好ましい。接続電極8の厚みが0.5~2.0μm
であることにより、接続電極8の配線抵抗を小さくすることができる。
図2に示すように、接続電極8の一端部は、基板7の他方の短辺7d側に位置する外部端子2に接続されたIC−コネクタ接続電極26に接続されており、他端部は、基板7の一方の短辺7c側に位置する駆動IC11のIC端子(不図示)に接続されている。それにより、基板7の他方の短辺7d側と、基板7の一方の短辺7c側とを電気的に接続することができる。
これらのIC−コネクタ接続電極26、およびIC端子との接続は、絶縁部材6の一部にビアホール(不図示)を設けて、露出したIC−コネクタ接続電極26、またはIC端子と、接続電極6とをビアホールにて電気的に接続する。
接続電極8は、信号を送る機能を有しており、例えば、クロック信号、ラッチ信号、vdd信号、あるいはストローブ信号を送ることができる。
接続電極8は、アルミニウム、金、銀、パラジウム、および銅のうちのいずれか一種の
金属またはこれらの合金により形成することができる。絶縁部材6を硬化させた後、スパッタ等の薄膜形成技術により形成してもよく、スクリーン印刷等の厚膜形成技術により形成してもよい。なお、絶縁部材6上に形成された接続電極8が、本発明の第2電極の一実施形態となる。
図4に示すように、個別電極19は、一部が絶縁部材6の下方に配置されており、接続電極8の下方の領域に第1幅狭部12を有している。なお、接続電極8の下方に位置する領域とは、平面視して、接続電極8の下方に位置する領域である。
第1幅狭部12は、配列方向に沿った段差部14を有しており、個別電極19の他の部位に比べて幅が狭くなっている。第1幅狭部12の幅は、例えば発熱部9が200dpiの密度で配置された場合、10〜20μmとすることができる。なお、個別電極19の他の部位における幅は30〜50μmとすることができる。
サーマルヘッドX1は、個別電極19が、接続電極8の下方に位置する領域に第1幅狭部12を有している。そのため、接続電極8と個別電極19とが絶縁部材6を挟持する面積を小さくすることができる。その結果、絶縁部材6に蓄積される電荷の量を低減することができ、接続電極8が絶縁部材6を介して個別電極19と対向することで発生する、個別電極19と接続電極8との間の静電容量(以下、静電容量と称する)を小さくすることができる。それにより、接続電極8を流れる各種信号の立ち上がりが遅くなる可能性を低減することができ、サーマルヘッドX1に誤作動が生じる可能性を低減することができる。
また、サーマルヘッドX1は、高精細化の要求に従って、個別電極19が、高密度に形成されている。そのため、個別電極19に第1幅狭部12を設けないと、接続電極8の下方に位置する領域に存在する個別電極19の面積が大きくなることとなる。
しかしながら、サーマルヘッドX1は、個別電極19が第1幅狭部12を有していることにより、接続電極8の下方に位置する領域に存在する個別電極19の面積が大きくなることを低減することができる。
また、第1幅狭部12は、発熱部9側に、配列方向に沿った段差部14を備えている。そのため、粘性を有する被覆部材29をサーマルヘッドX1に塗布すると、被覆部材29が、段差部14により堰き止められることとなる。その結果、被覆部材29の縁29aが、段差部14上に配置されることとなり、被覆部材29が、発熱部9に向けて流れ込む可能性を低減することができる。それにより、発熱部9に被覆部材29が付着して不良品となる可能性を低減することができる。なお、被覆部材29の縁29aとは、平面視した際の被覆部材29の端部を意味する。また、段差部14が配列方向に沿った例を示したがこれに限定されるものではなく、配列方向に対して傾斜していてもよい。
また、サーマルヘッドX1は、各種電極の高密度化に伴って、IC−IC接続電極26の一部が、絶縁部材6の下方に配置されており、接続電極8がIC−IC接続電極26の上方に設けられていない構成となっている。そのため、接続電極8の下方に位置する電極の面積が大きくなることを低減することができる。なお、IC−IC接続電極26は、全ての部位が絶縁部材6の下方に設けられていなくともよい。
図5を用いてサーマルヘッドX1の変形例であるサーマルヘッドX2,X3について説明する。
図5(a)に示す、サーマルヘッドX2は、IC−IC接続電極26の一部が絶縁部材
6の下方に設けられており、IC−IC接続電極26の一部が、接続電極8の下方に位置する領域に、第2幅狭部16を有している。その他の構成は、サーマルヘッドX1と同様であり説明を省略する。
第2幅狭部16は、第1幅狭部12と同様に、配列方向に沿った段差部(不図示)を有しており、IC−IC接続電極26の他の部位に比べて幅が狭くなっている。第2幅狭部16の幅は、例えば発熱部9が200dpiの密度で配置された場合、10〜20μmと
することができる。なお、IC−IC接続電極26の他の部位における幅は30〜50μmとすることができる。
サーマルヘッドX2は、IC−IC接続電極26が、接続電極8の下方に位置する領域に第2幅狭部16を有している。そのため、接続電極8とIC−IC接続電極26とが絶縁部材6を挟持する面積を小さくすることができる。その結果、絶縁部材6に蓄積される電荷の量を低減することができ、静電容量を小さくすることができる。それにより、接続電極8を流れる各種信号の立ち上がりが遅くなる可能性を低減することができ、サーマルヘッドX2に誤作動が生じる可能性を低減することができる。
また、図5(b)に示すサーマルヘッドX3のように、IC−IC接続電極26の主走査方向に沿う部位16´を第2幅狭部16´としてもよい。この場合においても、接続電極8とIC−IC接続電極26とが絶縁部材6を挟持する面積を小さくすることができる。
なお、接続電極8が各種信号を送る信号電極の例を用いて説明したがこれに限定されるものではない。例えば、サーマルヘッドX1にサーミスタあるいはコンデンサ等の電子部品を実装して、この電子部品を接続する電子部品用の接続電極としてもよい。
次に、サーマルプリンタZ1について、図6を参照しつつ説明する。
図3に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向S(副走査方向)に直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図6の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護膜25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステ
ンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
サーマルプリンタZ1は、図6に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
<第2の実施形態>
図7を用いて他の実施形態に係るサーマルヘッドX4について説明する。なお、同一の部材については同一の符号を付しており、以下同様とする。
サーマルヘッドX4は、サーマルヘッドX1と同様に、個別電極19上に絶縁部材6aが設けられており、絶縁部材6a上に接続電極8aが設けられている。個別電極19は、接続電極8aの下方に位置する領域に第1幅狭部12が設けられている。また、グランド電極4上に絶縁部材6bが設けられており、絶縁部材6b上に接続電極8bが設けられている。グランド電極4は、接続電極8bの下方に位置する領域に切欠部20が設けられている。
切欠部20は、平面視して、矩形状をなしており、配列方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。切欠部20は、駆動IC11とは反対側に段差部20aを有しており、段差部20aは、配列方向に沿って設けられている。
サーマルヘッドX4は、接続電極8bの下方に位置する領域に切欠部20が設けられている。そのため、接続電極8とグランド電極4とが絶縁部材6を挟持する面積を小さくすることができる。その結果、絶縁部材6に蓄積される電荷の量を低減することができ、静電容量を小さくすることができる。それにより、接続電極8を流れる各種信号の立ち上がりおよび立ち下がりが遅くなる可能性を低減することができ、サーマルヘッドX4に誤作動が生じる可能性を低減することができる。
切欠部20が、配列方向に所定の間隔を空けて複数設けられていることから、切欠部20によるグランド電極4への電気抵抗の増加が、配列方向において均一なものとなる。そのため、配列方向において、サーマルヘッドX4の印画にムラが生じる可能性を低減することができる。
また、切欠部20は、駆動IC11とは反対側に段差部20aを有しており、段差部20aは、配列方向に沿って設けられていることから、粘性を有する被覆部材29をサーマルヘッドX4に塗布した場合おいても、被覆部材29が、段差部20aにより堰き止められることとなる。その結果、被覆部材29の縁29aが、段差部20a上に設けられることとなり、被覆部材29が、駆動IC11の反対側に流れていく可能性を低減することができる。それにより、駆動IC11を被覆する被覆部材29の量が不足して、駆動IC11が露出する可能性を低減することができる。また、被覆部材29の量が不足して、被覆部材29の強度が低下する可能性を低減することができる。
特に、サーマルヘッドX4では、第1幅狭部12が段差部14を有しており、切欠部20が段差部20aを有していることから、被覆部材29を所望の位置に設けやすく容易に駆動IC11に被覆部材29を被覆することができる。
なお、切欠部20の形状は図7に示したものに限定されるものではない。例えば、切欠部20は、平面視して、円形状、楕円形状、あるいは多角形状でもよい。また、配列方向に沿って複数設けた例を示したが、切欠部20を配列方向に沿って延在した形状としてもよい。
<第3の実施形態>
図8を用いて第3の実施形態に係るサーマルヘッドX5について説明する。
サーマルヘッドX5は、個別電極19が、主走査方向に対して直交する副走査方向に対して傾斜する傾斜部Aと、副走査方向に沿った非傾斜部Bとを有している。個別電極19は、中央部に非傾斜部Bを有し、両端部に傾斜部Aを有している。なお、IC−IC接続電極26も、非傾斜部Bを有している。
接続電極8は、個別電極19の傾斜部Aに略直交する傾斜領域8Aと、個別電極19の非傾斜部Bに略直交する非傾斜領域Bとを有している。そのため、接続電極8は、平面視して、波形状に設けられている。なお、傾斜部Aに略直交するとは、個別電極19の傾斜部Aと接続電極8の傾斜領域8Aとのなす角が、90±10°であることを示し、製造誤差を含む概念である。非傾斜部Bに略直交するも同義である。
このように、接続電極8が、個別電極19の傾斜部Aに略直交する傾斜領域8Aと、個別電極19の非傾斜部Bに略直交する非傾斜領域Bとを有していることから個別電極19と接続電極8とは、直交した状態で、絶縁部材6を挟持することとなる。そのため、接続電極8と個別電極19とが絶縁部材6を挟持する面積を小さくすることができる。また、個別電極19は、非傾斜部Bを備えることにより、駆動IC11同士の間の領域を大きくすることができる。その結果、IC−IC接続電極26を配置するスペースを確保することができ、IC−IC接続電極26が絶縁部材6の下方に配置されることを低減することができる。
また、第1幅狭部12および第2幅狭部16は、配列方向に沿った段差部(不図示)を備えていることから、被覆部材29の縁29aは段差部の上方に配置されることとなる。それにより、被覆部材29の縁29aは、平面視して、波形状をなすこととなる。そのため、記録媒体(不図示)が被覆部材29に接触した場合においても、点接触とすることができ、記録媒体が被覆部材29に密着する可能性を低減することができる。
なお、接続電極8が、個別電極19の傾斜部Aに略直交する傾斜領域8Aと、個別電極19の非傾斜部Bに略直交する非傾斜領域Bとを有する場合を示したが、個別電極19の傾斜部Aに略直交する傾斜領域8Aのみを有してもよく、個別電極19の非傾斜部Bに略直交する非傾斜領域Bのみを有する構成としてもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X5をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X5を組み合わせてもよい。
上記では、コネクタ31が配列方向における両端部に設けた例を示したが、コネクタ31を配列方向における中央部に設けてもよい。また、保護部材18と、駆動IC11を被覆する被覆部材29とを同じ材料により形成してもよい。また、駆動IC11を基板7の他方の長辺7bに近接して設けてもよい。その場合、被覆部材29を印刷する際に、保護部材18が形成される領域にも印刷することで、被覆部材29と保護部材18とを同時に形成することができ、サーマルヘッドを容易に作製することができる。
また、サーマルヘッドX1では、蓄熱層13に隆起部13bが形成され、隆起部13b上に電気抵抗層15が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13に隆起部13bを形成せず、電気抵抗層15の発熱部9を、蓄熱層13の下地部13a上に配置してもよい。または、蓄熱層13を基板7の上面の全域にわたって設けてもよい。
また、サーマルヘッドX1では、電気抵抗層15上に共通電極17および個別電極19が形成されているが、共通電極17および個別電極19の双方が発熱部9(電気抵抗体)に接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13上に共通電極17および個別電極19を形成し、共通電極17と個別電極19との間の領域のみに電気抵抗層15を形成することにより、発熱部9を構成してもよい。
さらにまた、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示して示したが、これに限定されるものではない。例えば、各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成することにより、発熱部9の厚い厚膜ヘッドに本発明を用いてもよい。