<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係るサーマルヘッドX1について、図面を参照しつつ説明する。なお、図1では、FPC5、保護層25、および被覆層27の図示を省略し、FPC5、保護層25、および被覆層27が配置される領域を二点鎖線で示している。また、図4では、保護層25の図示を省略して示しており、図6〜9についても同様である。
図1〜4に示すように、サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。
図1〜4に示すように、放熱体1は、平面視して、矩形状の板状の台部1aと、台部1aの上に配置され、台部1aの一方の長辺に沿って延びる突起部1bとを備えている。放熱体1は、例えば、銅、鉄、あるいはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。
ヘッド基体3は、放熱体1の台部1a上に配置されており、第2端面7bが、放熱体1の突起部1bに対向するように配置されている。また、ヘッド基体3と台部1aの上面とが、両面テープあるいは接着剤等により接着されている。
FPC5は、ヘッド基体3に外部から電流を供給する機能を有しており、絶縁性の樹脂層5aと、プリント配線5bとを備えている。図3に示すように、ヘッド基体3とFPC5とは導電性接合材23により電気的に接合されている。導電性接合材23としては、導電性接合材料、はんだ材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電フィルム(ACF)等を例示することができる。FPC5にはコネクタ31が接合されており、各プリント配線5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置、および制御装置に電気的に接続されている。
FPC5は、放熱体1の突起部1bの上面に、両面テープあるいは樹脂等の接着剤(不図示)によって接着されており、放熱体1に固定されている。なお、放熱体1には必ずしも固定しなくてもよい。
次に、ヘッド基体3を構成する各部材について図1〜4を用いて説明する。
基板7は、ヘッド基体3を構成する各部材を保持する機能を有しており、平面視して、
略矩形状をなしている。基板7は、第1端面7a、第2端面7b、第1主面7c、および第2主面7dを有している。第1端面7aは、第1主面7cおよび第2主面7dに隣接する面である。第2端面7bは、第1端面7aの反対側に位置する面である。第1主面7cは、第1端面7aおよび第2端面7bに隣接する面である。第2主面7dは、第1主面7cの反対側に位置する面である。第1端面7aは、第2端面7bと反対側に凸状の曲面形状をなしており、第2端面7b、第1主面7c、および第2主面7dは、平坦面形状をなしている。
第1端面7aの主走査方向における両端部に面取面2が設けられている。面取面2は、主走査方向に対して交差するように設けられている。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
図3に示すように、基板7の第1端面7a上には、蓄熱層13が形成されている。基板7の第1端面7aは断面視して凸状の曲面形状を有しており、第1端面7a上に蓄熱層13が形成されている。そのため、蓄熱層13の表面も曲面形状となっている。曲面形状である蓄熱層13は、発熱部9上に形成された後述する保護層25に、印画する記録媒体P(図5参照)を良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、例えば、ガラスにより形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。なお、ガラスは、熱伝導性の低いガラスであることが好ましい。そのため、印画時において、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めることができる。
また、蓄熱層13は、基板7の第1端面7a上にのみ形成されており、発熱部9に近い位置で蓄熱することができる。そのため、サーマルヘッドX1の熱応答特性をより効果的に向上させることできる。なお、蓄熱層13は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の第1端面7a上に塗布し、これを焼成することにより形成することができる。
図3,4に示すように、基板7の第1主面7c上、蓄熱層13上、および基板7の第2主面7d上には、電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13と、後述する共通電極17、個別電極19および接続電極21との間に介在している。
基板7の第1主面7c上に位置する電気抵抗層15の領域は、図1に示すように平面視して、共通電極17、個別電極19および接続電極21と同形状に形成されている。また、第2主面7d上に位置する電気抵抗層15は、第2主面7dの略全体にわたって設けられている。
蓄熱層13上に位置する電気抵抗層15の領域は、図2に示すように側面視して、共通電極17および個別電極19と同形状に形成された領域と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の露出領域とを有している。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図2に示すように、蓄熱層13上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、図2では簡略化して示しているが、例えば、180dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。また、図2に示すように、発熱部9は、蓄熱層13上で、基板7の厚さ方向の略中央部に設けられている。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱することとなる。
図1〜4に示すように、電気抵抗層15上には、共通電極17、複数の個別電極19および複数の接続電極21が設けられている。共通電極17、個別電極19および接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
共通電極17は、主配線部17aと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。共通電極17は、FPC5と発熱部9とを電気的に接続している。主配線部17aは、基板7の第2主面7d上に設けられており、複数の発熱部9に対して電気抵抗値に差が出ないように、大きな電気容量を備えている。副配線部17bは、基板7の第1主面7c、第1端面7a、および第2主面7d上に設けられており、FPC5を介して外部と電気的に接続されている。リード部17cは、第1端面7aに設けられており、主配線部17aから各発熱部9に向けてそれぞれ延びている。
そのため、外部から供給された電流は、副配線部17bから主配線部17aに供給される。主配線部17aに供給された電流は、リード部17cを介してそれぞれの発熱部9に供給される。このようにして、各発熱部9に電流が供給されている。
複数の個別電極19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1〜3に示すように、各個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にまで個別に帯状に延びている。
各個別電極19の他端部は、駆動IC11に電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数の接続電極21は、駆動IC11とFPC5とを接続するためのものである。図1,3に示すように、各接続電極21は、基板7の第1主面7c上に帯状に延びており、一端部が駆動IC11に電気的に接続されるとともに、他端部がFPC5に電気的に接続されている。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されている。そして、駆動IC11は、個別電極19の他端部と接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に有した複数のスイッチング素子(不図示)を切り替えることにより、各発熱部9の発熱駆動を制御している。
駆動IC11は、個別電極19および接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることで封止されている。これにより、駆動IC11、および駆動IC11とこれらの配線との接続部を保護することができる。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19および接続電極21の形成方法について例示する。各々を形成する材料層を、蓄熱層13が設けられた基板7上に、スパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層する。次に積層体を従来周知の
フォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成することができる。
また、電気抵抗層15の厚さは、例えば0.01μm〜0.2μmとし、共通電極17、個別電極19および接続電極21の厚さは、例えば0.05μm〜2.5μmとすることができる。なお、共通電極17の主配線部17aの厚みと、共通電極17の副配線部b17b、およびリード部17cの厚みとが異なる構成としてもよく、電極の部位により厚みを異なるものとしてもよい。
保護層25は、図1〜3に示すように、基板7の第1端面7a、第1主面7c、および第2主面7d上に設けられている。保護層25は、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆するように設けられている。図1,3に示すように、保護層25は、基板7の第1主面7cにおいては左側の領域を覆うように設けられている。保護層25は、基板7の第2主面7dにおいては基板7の第1主面7cと同様に左側の領域を覆うように設けられている。
そのため、保護層25は、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にわたって形成されているとともに、基板7の第1端面7a上から基板7の第2主面7d上にわたって形成されている。
保護層25は、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護する機能を有している。保護層25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。なお、AlあるいはTi等の他の元素を少量含有していてもよい。
保護層25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術あるいはスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。保護層25の厚さは、例えば3〜12μmとすることができる。また、保護層25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。
また、図1,3に示すように、基板7の第1主面7c上には、個別電極19および接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。被覆層27は、図1に示すように基板7の第1主面7c上の保護層25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。また、共通電極17の副配線部17bを覆うように設けられている。
被覆層27は、個別電極19および接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有するものである。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、被覆層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。被覆層27の厚さは、例えば20〜60μmとすることができる。
なお、図1,3に示すように、FPC5と接続される接続電極21、および副配線部17bの端部は、被覆層27から露出して設けられており、この露出領域にてFPC5とヘッド基体3とが接続されている。
また、被覆層27は、駆動IC11を接続する個別電極19および接続電極21の端部を露出させるための開口部(不図示)が形成されている。個別電極19と接続電極21とは、開口部を介して駆動IC11に接続されている。
なお、共通電極17、個別電極19、および接続電極21のうち、駆動IC11またはFPC5と接続される領域にメッキ層(不図示)を設けてもよい。メッキ層は、金属または合金により形成することができ、例えば、周知の無電解めっき、あるいは電解めっきによって形成することができる。また、メッキ層として、例えば、共通電極17上にニッケルめっきからなる第1被覆層を形成し、第1被覆層上に金めっきからなる第2被覆層を形成してもよい。この場合、第1被覆層の厚さを例えば1.5μm〜4μmとし、第2被覆層の厚さを例えば0.02μm〜0.1μmとすることができる。
図1,2,4に示すように、面取面2は、基板7の第1端面7aに設けられている。面取面2は、第1端面7aの主走査方向における両端部に設けられており、第1端面7aに対して交差するように設けられている。面取面2は、共通電極17の副配線部17b上に設けられており、副配線部17bの一部を切り欠いている。
面取面2は、第1端面7a側からみて、副走査方向の中央部が発熱部9に向けて突出した形状をなしている。本実施形態では、第1端面7a側からみると三角形状をなしている。図示していないが、面取面2から、蓄熱層13の表面、基板7、および副配線部17bの表面が露出している。そのため、記録媒体Pが搬送される際に、蓄熱層13、基板7、蓄熱層13の順に接触することとなり、記録媒体Pの搬送を円滑に行うことができる。
サーマルヘッドX1は、第1端面7aに面取面2を有することから、記録媒体PがサーマルヘッドX1に強く押し当てられた場合においても、サーマルヘッドX1により記録媒体Pにキズが生じる可能性を低減することができる。
第1端面7aと面取面2との交差角度は、5〜70°であることが好ましく、10〜45°であることがさらに好ましい。第1端面7a側との交差角度がこのような範囲にあることにより、記録媒体Pにキズが生じる可能性を低減することができる。
面取面2は、サーマルヘッドX1のヘッド基体3を作成した後に、やすり、ダイヤモンドカッター、あるいはダイヤモンド砥石等によりサーマルヘッドX1を研磨することにより形成することができる。
副配線部17bは、面取面2と発熱部9との間に切欠部4を有している。切欠部4は、スリット形状をなしており、副走査方向に延びるように設けられている。切欠部4は、副配線部17bのうち第1端面7a上に位置する領域に設けられている。切欠部4は、副配線部17bを切り欠いている。切欠部4は、例えば、摺沿おうさ方向の長さを10〜100μmの幅で設けることができる。なお、切欠部4は、副配線部17bのみ切り欠くのではなく、副配線部17bの下方に位置する蓄熱層13(図3参照)も切り欠いてもよい。
ここで、面取面2を形成するためにサーマルヘッドX1を研磨すると、面取面2の近傍において摩擦熱が生じることとなる。それにより、面取面2に隣り合うように設けられた副配線部17bが摩擦熱により温められることとなる。副配線部17bは、蓄熱層13あるいは基板7に比べて熱膨張率が高く、副配線部17bの伸びが蓄熱層13あるいは基板7の伸びよりも大きくなり、副配線部17bが剥離する可能性がある。特に、第1端面7aの稜線上に位置する副配線部17bは密着性が低く、副配線部17bの剥離は、第1端面7aの稜線に沿って進行していく。言い換えると、副配線部17bの剥離は、主走査方向の中央部に向かって進行しやすくなっている。
これに対して、副配線部17bは面取面2と発熱部9との間に切欠部4を有しているため、面取り時に生じた摩擦熱は、切欠部4によって主走査方向の中央部に伝わりにくくな
る。そのため、切欠部4よりも発熱部9側に位置する副配線部17bは、摩擦熱の影響を受けにくくなり、伸びが生じにくい構成となる。その結果、副配線部17bが剥離する可能性を低減することができる。
なお、面取面2は、第1端面7aからみて、副走査方向の中央部が発熱部9に向けて突出した形状をなしていなくてもよい。また、面取面2が第1端面7aのみに設けられた例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、面取面2が第1主面7cまたは第2主面7dにも形成されていてもよい。
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図5を参照しつつ説明する。図5は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図5に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX1、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うように、取付部材80に取り付けられている。そのため、サーマルヘッドX1においては、基板7の第1主面7c側が記録媒体Pの搬送方向の上流側となり、基板7の第2主面7d側が記録媒体Pの搬送方向の下流側となる。
搬送機構40は、感熱紙、受像紙、カード等の記録媒体Pを図5の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧する機能を有している。そして、プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電圧および駆動IC11を動作させるための電圧を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
本実施形態のサーマルプリンタZは、搬送機構40によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に搬送しつつ、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させる。それにより、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
<第2の実施形態>
図6,7を用いてサーマルヘッドX2について説明する。なお、サーマルヘッドX1と同一の部材については同一の番号を付し、以下同様とする。
切欠部104は、面取面2と隣り合う第1切欠部104aと、発熱部9と隣り合う第2切欠部104bとを有している。第1切欠部104aと第2切欠部104bとは互いに離間した状態で配置されている。
第1切欠部104aは、一端が第1端面7aから第1主面7cにまで伸びており、他端が第1端面7aから第2主面7dにまで伸びている。そのため、サーマルヘッドX2は、第1端面7aからみて、第2切欠部104bの長さが第1切欠部104aの長さよりも短い構成を有している。より詳細には、第1端面7aからみて、副走査方向における第2切欠部104bの長さが、副走査方向における第1切欠部104aの長さよりも短くなっている。
第1切欠部104aが、第1端面7aから第1主面7cおよび第2主面7dにまで延びていることにより、面取面2の近くに配置されている第1切欠部104aが、研磨時の摩擦熱を第1主面7c上に位置する副配線部17bに放熱することができる。また、研磨時の摩擦熱を第2主面7d上に位置する主配線部17aにも放熱することができる。
その結果、研磨時に生じた摩擦熱を第1主面7c上に位置する副配線部17b、および第2主面7d上に位置する主配線部17aに放熱することができ、主走査方向の中央部に向かって摩擦熱が熱伝導する可能性を低減することができる。そのため、副配線部17bが剥離する可能性をさらに低減することができる。
また、切欠部104は発熱部9に隣り合う第2切欠部104bを有している。そのため、第2切欠部104bが第1切欠部104aを回り込んできた摩擦熱を伝わらせないように機能し、主走査方向における中央部に摩擦熱が伝わる可能性を低減することができる。
さらに、第1端面7aからみて、第2切欠部104bの長さが第1切欠部104aの長さよりも短くなっていることから、発熱部9に隣り合う第2切欠部104bが副配線部17bを切り欠く面積を小さくすることができる。その結果、副配線部17bの発熱部9側の電気容量が小さくなることを抑えることができ、発熱部9に供給される電流が少なくなる可能性を低減することができる。
なお、第1切欠部104aおよび第2切欠部104bの両方が、第1主面7cおよび第2主面7dにまで延びていてもよい。
図7を用いて、サーマルヘッドX2の変形例であるサーマルヘッドX2aについて説明する。サーマルヘッドX2aは、切欠部204の構成がサーマルヘッドX2の切欠部104と異なっている。
切欠部204は、第1切欠部204aと第2切欠部204bとを有しており、第2切欠部204bは、切欠部104の第2切欠部104bと同一であり説明を省略する。
第1切欠部204aは、第1端面7cから第1主面7cにまで延びるように設けられており、第2主面7dまでは延びていない。すなわち、第1切欠部204aは、第1端面7cと第1主面7cとに設けられている。
図1,3に示すように、主配線部17aの電気容量は、副配線部17bの電気容量に比べて大きくなっている。すなわち、主配線部17aの体積は副配線部17bの体積よりも
大きく、主配線部17aの熱容量も副配線部17bの熱容量よりも大きくなっている。そのため、研磨時に生じた摩擦熱を主配線部17aに放熱することが熱効率の観点から好ましい。
第1切欠部204aは、第1主面7cに設けられた第1切欠部204aの長さが、第2主面7dに設けられた第2切欠部204bの長さよりも長くなっている。そのため、摩擦熱を第1切欠部204aにより第2主面7dに向けて伝熱することができる。その結果、第2主面7dに設けられた熱容量の大きな主配線部17aに摩擦熱を伝熱することができ、副配線部17bに伸びが生じる可能性を低減することができる。
なお、第1切欠部204aが第2主面7dに設けられていない例を示したがこれに限定されるものではない。第1切欠部204aを第1端面7a、第1主面7c、および第2主面7dにわたるように設け、第1主面7cに設けられた第1切欠部204aの長さが、第2主面7dに設けられた第1切欠部204aの長さよりも長くなるように設ければよい。
<第3の実施形態>
図8を用いてサーマルヘッドX3について説明する。
サーマルヘッドX3は、切欠部304の構成がサーマルヘッドX2の切欠部104と異なっており、その他の点は同一である。
切欠部304は、第1切欠部304aと、第2切欠部304bとを有している。第1切欠部304aは、第1端面7a上に設けられており、スリット形状をなしている。第1切欠部304aは、副走査方向における中央部が発熱部9に向けて突出している。また、第2切欠部304bは、第1端面7a上に設けられており、スリット形状をなしている。第2切欠部304bは、副走査方向における中央部が発熱部9に向けて突出している。
面取面2は、副走査方向における中央部が発熱部9に向けて突出している。そのため、第1切欠部304aおよび第2切欠部304bは、第1端面7aからみて、面取面2に沿うように設けられている。
そのため、面積効率よく副配線部17bに第1切欠部304aおよび第2切欠部304bを設けることができる。
また、副配線部17bは、副走査方向における中央部にて発生し、主走査方向における中央部に向かって剥離が進行やすいが、第1切欠部304aおよび第2切欠部304bが副走査方向における中央部が発熱部9に向けて突出することから、剥離の進行を有効に抑制することができる。
<第4の実施形態>
図9を用いてサーマルヘッドX4について説明する。サーマルヘッドX4は、切欠部404の構成がサーマルヘッドX1の切欠部4と異なっており、その他の点は同一である。
切欠部404は、第1端面7a上に設けられており、副走査方向における両端部が発熱部9に向けて突出する形状をなしている。切欠部404は、切欠部404を構成する辺のうち面取面2側に位置する辺の曲率が、切欠部404を構成する辺のうち発熱部9側に位置する辺の曲率よりも小さい構成を有している。そのため、第1端面7aからみて、切欠部404は、三日月形状をなしている。
ここで、面取面2は、第1端面7aからみて、副走査方向における中央部が発熱部9に
向けて突出している。そのため、研磨時の摩擦熱が、副走査方向における中央部にて最も伝わりやすい構成となっている。
切欠部404は、副走査方向における両端部が発熱部9に向けて突出していることから、副走査方向における中央部により、研磨時の摩擦熱の熱伝導を抑制しつつ、副走査方向における両端部に向けて摩擦熱を伝熱することができる。すなわち、面取面2に生じた摩擦熱は、切欠部404により副走査方向の両端部に向けて伝熱されることとなる。その結果、主走査方向における中央部に向けて熱伝導する可能性を低減することができる。
また、切欠部404は、切欠部404を構成する辺のうち面取面2側に位置する辺の曲率が、切欠部404を構成する辺のうち発熱部9側に位置する辺の曲率よりも小さい構成を有している。そのため、切欠部404を構成する辺のうち面取面2側に位置する辺に熱応力が生じた場合においても、面取面2側に位置する辺から剥離が生じる可能性を低減することができる。
<第5の実施形態>
図10を用いてサーマルヘッドX5について説明する。なお、図10においては、保護層25を二点鎖線にて示している。
保護層25は、第1端面7aと、第1主面7cの一部と、第2主面7dの一部を覆うように設けられている。そのため、保護層25の形成領域は、第1端面7aの全域と、第1主面7cのうち第1端面7aの近傍の領域と、第2主面7dのうち第1端面7aの近傍の領域となる。
切欠部504は、第1端面7a上に設けられており、第1主面7c、および第2主面7dにも設けられている。そして、第1主面7cに形成された切欠部504が、保護層25の形成領域よりも突出しており、第2主面7dに形成された切欠部504が、保護層25の形成領域よりも突出している。つまり、第1主面7cからみて、切欠部504は、保護層25から突出した状態で設けられている、また、第2主面7dからみて、切欠部504は、保護層25から突出した状態で設けられている。
ここで、保護層25は、上述したような無機材料により形成されており、熱伝導率が副配線部17bに比べると小さくなっている。そのため、面取面2に生じた摩擦熱が、保護層25に蓄熱し、保護層25に蓄熱した熱により副配線部17bに伸びが生じる場合がある。
これに対して、切欠部504は、第1主面7cに形成された切欠部504が、保護層25の形成領域よりも突出しており、第2主面7dに形成された切欠部504が、保護層25の形成領域よりも突出しているため、面取面2に生じた熱を、切欠部504により保護層25の形成領域の外側へ伝熱することができる。それにより、保護層25に熱が蓄熱しにくくなり、副配線部17bに伸びが生じる可能性を低減することができる。
なお、切欠部504は、第1主面7cに形成された切欠部504のみが、保護層25の形成領域よりも突出していてもよく、第2主面7dに形成された切欠部504のみが、保護層25の形成領域よりも突出していてもよい。
以上、複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZを示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X5をサーマルプリンタZに用いてもよい。ま
た、サーマルヘッドX1〜X5を適宜に組み合わせてもよい。
サーマルヘッドX1では、共通電極17は、基板7の第1主面7c上にてFPC5と接続される例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、基板7の第2主面7d上に形成された主配線部17aとFPC5のプリント配線5bとを、別途設けたジャンパー線によって接続すればよい。
また、サーマルヘッドX1では、FPC5を介してヘッド基体3の基板7上に設けられた共通電極17および接続電極21を外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続しているが、これに限定されるものではない。例えば、FPC5のように可撓性を有するフレキシブルプリント配線板ではなく、硬質のプリント配線板を介してヘッド基体3の各種配線を外部の電源装置等に電気的に接続してもよい。また、接続電極21に直接コネクタ31を接続してもよい。
また、サーマルヘッドX1では、図3に示すように、基板7の第1端面7aが凸状の曲面形状を有した例を示したが、基板7の第1端面7aの表面形状および傾斜角度は特に限定されるものではなく、任意の形態をとることができる。
さらにまた、発熱部9が基板7の第1端面7aに設けられた例を示したがこれに限定されるものではない。発熱部9が、第1主面7cに設けられた平面ヘッドにおいても、本発明を適用することができる。また、電気抵抗層15を印刷により形成した厚膜方式のサーマルヘッドにも適用することができる。