<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係るサーマルヘッドX1について、図面を参照しつつ説明する。図1〜4に示すように、サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、図1では、FPC5の図示を省略し、FPC5が配置される領域を二点鎖線で示す。
図1〜4に示すように、放熱体1は、平面視して、矩形状の板状の台部1aと、台部1aの上面上に配置され、台部1aの一方の長辺に沿って延びる突起部1bとを備えている。放熱体1は、例えば、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。
図1,2に示すように、ヘッド基体3は、基板7と、基板7上に設けられた複数の発熱部9と、発熱部9の駆動を制御する駆動IC11とを備えている。基板7は、平面視して、矩形状をなしており、第1主面7cと、第1主面7cの反対側に位置する第2主面7dと、第1主面7cおよび第2主面7dに隣接して設けられた第1端面7aと、第1端面7aの反対側に設けられた第2端面7bとを有している。発熱部9は、第1端面7a上に、基板7の長手方向に沿って列状に設けられている。駆動IC11は、第1主面7c上に複数設けられている。
ヘッド基体3は、図1〜4に示すように、放熱体1の台部1aの上面上に配置されており、第2端面7bが、放熱体1の突起部1bに対向するように配置されている。また、ヘッド基体3の第2主面7dと台部1aの上面とが、熱伝導性を有する両面テープあるいは
接着剤等からなる接着層20によって接着されており、これによってヘッド基体3が台部1aに支持されている。そのため、第2主面7dが記録媒体の搬送方向の下流側に位置することとなる。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
図3,4に示すように、基板7の第1端面7a上には、蓄熱層13が形成されている。なお、図3、4においては、蓄熱層13を簡略的に示している。基板7の第1端面7aは断面視して凸状の曲面形状を有しており、第1端面7a上に蓄熱層13が形成されている。そのため、蓄熱層13の表面も曲面形状となっている。曲面形状である蓄熱層13は、発熱部9上に形成された後述する保護膜25に印画する記録媒体を良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスにより形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。そのため、印画時において、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めることができる。なお、本実施形態では、図3に示すように蓄熱層13が基板7の第1端面7a上にのみ形成されており、発熱部9に近い位置で蓄熱することができる。そのため、サーマルヘッドX1の熱応答特性をより効果的に向上させることできる。なお、蓄熱層13は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の第1端面7a上に塗布し、これを焼成することにより形成することができる。なお、図3,4においては、蓄熱層13の構成を一部省略して示している。
図3,4に示すように、基板7の第1主面7c上、蓄熱層13上、ならびに基板7の第2主面7d上および第2端面7b上には、電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13と、後述する共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21との間に介在している。
基板7の第1主面7c上に位置する電気抵抗層15の領域は、図1に示すように平面視して、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21と同形状に形成されている。
蓄熱層13上に位置する電気抵抗層15の領域は、図2に示すように側面視して、共通電極17および個別電極19と同形状に形成された領域と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の露出領域とを有している。
基板7の第2主面7d上に位置する電気抵抗層15の領域は、詳細には図示しないが、図3,4に示すように、基板7の第2主面7dの全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
基板7の第2端面7b上に位置する電気抵抗層15の領域は、詳細には図示しないが、図3,4に示すように、基板7の第2端面7bの全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
このように電気抵抗層15の各領域が形成されているため、図1では、電気抵抗層15は、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21で覆われており、図示していない。また、図2では、電気抵抗層15は、共通電極17および個別電極19で覆われており、露出領域のみ図示されている。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図2,3に示すように、蓄熱層13上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、図1,2では簡略化して記載しているが、例えば、180dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。また、図2に示すように、発熱部9は、蓄熱層13上で、基板7の厚さ方向の略中央に設けられている。以下、発熱部9が設けられている蓄熱層13の領域を、蓄熱層13の第1領域と称する。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱することとなる。
図1〜4に示すように、電気抵抗層15上には、共通電極17、複数の個別電極19および複数のIC−FPC接続電極21が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
複数の個別電極19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1〜3に示すように、各個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にわたって個別に帯状に延びている。
各個別電極19の他端部は、駆動IC11の配置領域に配置されており、各個別電極19の他端部が駆動IC11に接続されている。それにより、各発熱部9と駆動IC11との間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数のIC−FPC接続電極21は、駆動IC11とFPC5とを接続するためのものである。図1,3に示すように、各IC−FPC接続電極21は、基板7の第1主面7c上に帯状に延びており、一端部は駆動IC11の配置領域に配置されている。他端部は基板7の第1主面7c上の第2端面7b側に位置する、共通電極17の主配線部17aの近傍に配置されている。そして、複数のIC−FPC接続電極21は、一端部が駆動IC11に電気的に接続されるとともに、他端部がFPC5に電気的に接続されることにより、駆動IC11とFPC5とを電気的に接続している。
より詳細には、各駆動IC11に接続された複数のIC−FPC接続電極21は、異なる機能を有する複数の電極で構成されている。IC−FPC接続電極21を構成する電極としては、電源電極(不図示)と、グランド電極(不図示)と、IC制御電極(不図示)とを例示することができる。電源電極は、駆動IC11を駆動させ、サーマルヘッドX1を駆動させる電圧を印加する機能を有している。グランド電極は、駆動IC11および駆動IC11に接続された個別電極19のそれぞれを0〜1Vのグランド電位に保持する機能を有している。IC制御電極は、駆動IC11の内部に設けられたスイッチング素子のオン・オフ状態を制御するための信号を供給する機能を有している。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されている。そして、駆動IC11は、個別電極19の他端部とIC−FPC接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に有した複数のスイッチング素子(不図示)を切り替えることにより、各発熱部9の発熱駆動を制御している。
各駆動IC11は、各駆動IC11に接続された各個別電極19に対応するように、内部に複数のスイッチング素子が設けられている。そして、図3に示すように、各駆動IC11は、各スイッチング素子に接続された一方の接続端子11a(以下、第1接続端子11aと称する)が個別電極19に接続されている。各スイッチング素子に接続された他方の接続端子11b(以下、第2接続端子11bと称する)がIC−FPC接続電極21に接続されている。より詳細には、駆動IC11の第1接続端子11aおよび第2接続端子11bは、はんだ(不図示)により、個別電極19およびIC−FPC接続電極21上に形成された後述する被覆層30上にはんだ接合されている。これにより、駆動IC11の各スイッチング素子がオン状態のときに、各スイッチング素子に接続された個別電極19とIC−FPC接続電極21とが電気的に接続される。
駆動IC11は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材28によって被覆されることで封止されている。これにより、駆動IC11自体、および駆動IC11とこれらの配線との接続部を保護することができる。
共通電極17は、複数の発熱部9とFPC5とを電気的に接続するためのものである。共通電極17は、主配線部17aと、リード部17cを有している。主配線部17aは、図1,3,4に示すように、基板7の第2主面7dおよび第2端面7bの全体にわたって形成されるとともに、基板7の第1主面7c上において第2端面7bに沿って延びるように形成されている。リード部17cは、基板7の第1端面7a上に形成されており、一端部が基板7の第2主面7dに設けられた主配線部17aと、各発熱部9とを電気的に接続している。また、各リード部17cは、一端部が個別電極19に対向して配置されて各発熱部9に接続されている。
このようにして、共通電極17は、一端部が個別電極19の一端部に対向して配置され、発熱部9に接続されている。そして、基板7の第1端面7a上から、基板7の第2主面7d上、および基板7の第2端面7b上を介して、基板7の第1主面7c上にわたって延びている。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の形成方法について例示する。各々を構成する材料層を、蓄熱層13が形成された基板7上に、スパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層する。次に積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成することができる。また、電気抵抗層15の厚さは、例えば0.01μm〜0.2μmとし、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の厚さは、例えば0.05μm〜2.5μmとすることができる。なお、第1主面7c上の共通電極17の厚みと、第2主面7d上の共通電極17の厚みとが異なる構成としてもよく、電極の部位により厚みを異なるものとしてもよい。
保護膜25は、図1〜4に示すように、蓄熱層13上、ならびに基板7の第1主面7c
および第2主面7d上に、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆するように設けられている。図1,3,4に示すように、保護膜25は、基板7の第1主面7cにおいては左側の領域を覆うように設けられている。保護膜25は、蓄熱層13上においては全体を覆うように設けられている。保護膜25は、基板7の第2主面7dにおいては基板7の第1主面7cと同様に左側の領域を覆うように設けられている。このようにして、保護膜25は、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にわたって形成されているとともに、基板7の第1端面7a上から基板7の第2主面7d上にわたって形成されている。なお、説明の便宜上、図1では、保護膜25の形成領域を一点鎖線
で示し、図示を省略している。
保護膜25は、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護する機能を有している。保護膜25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。なお、AlあるいはTi等の他の元素を少量含有していてもよい。
保護膜25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術あるいは、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。保護膜25の厚さは、例えば3〜12μmとすることができる。また、保護膜25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。
また、保護膜25は、上記のように共通電極17および個別電極19の腐食あるいは摩耗を抑制する機能を有することに加え、熱伝導性を有している。そのため、発熱部9で発生した熱を、印画する記録媒体へ効率良く伝えることができる。
また、図1,3,4に示すように、基板7を被覆する第1絶縁膜27が設けられている。第1絶縁膜27は、図1に示すように基板7の第1主面7c上の保護膜25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。なお、説明の便宜上、図1では、第1絶縁膜27の形成領域を一点鎖線で示し、図示を省略している。
第1絶縁膜27は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有するものである。第1絶縁膜27は、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、第1絶縁膜27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。なお、第1絶縁膜27は電気絶縁性を有しており、上記のように個別電極19を被覆しても、隣接する個別電極19間が短絡しない構成を有している。
なお、図1,3に示すように、後述するFPC5を接続するIC−FPC接続電極21の端部は、第1絶縁膜27から露出して設けられており、FPC5と接続することができる。
図3,4に示すように、基板7の第2主面7d上には、基板7の第2主面7d上の共通電極17を部分的に被覆する第2絶縁膜29が形成されている。第2絶縁膜29は、基板7の第2主面7dの略全体を覆いながら、基板7の長手方向に延びるように設けられている。より詳細には、第2絶縁膜29は、第2主面7dの第2端面7b側から、第2主面7dの第1端面7a側の保護膜25にわたって延びるように設けられている。そして、基板7の第2主面7d上の保護膜25よりも右側の共通電極17の領域を被覆するように形成されている。
第2絶縁膜29は、共通電極17を被覆することにより、共通電極17の被覆した領域を、大気との接触による酸化あるいは、大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有している。第2絶縁膜29は、第1絶縁膜27と同様、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、第2絶縁膜29は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。第2絶縁膜29の厚さは、例えば20〜60μmにすることができる。
図3,4に示すように、第2絶縁膜29はさらに、基板7の第2主面7d上から蓄熱層
13上にわたって延びている。そして、第2絶縁膜29の蓄熱層13上の端部が、蓄熱層13の上記第1領域よりも基板7の第2主面7d側の蓄熱層13の領域(以下、第2領域という)上に位置する保護膜25上に位置している。なお、本実施形態において、第2絶縁膜29の蓄熱層13上の端部が、蓄熱層13の第2領域上に位置する保護膜25上に位置しているとは、第2絶縁膜29の端部が、蓄熱層13の第2領域の表面に対向する領域に位置することをいう。
図3,4に示すように、基板7の第1主面7cと第2端面7bとで形成される角部7e上、および基板の第2主面7dと第2端面7bとで形成される角部7e上に位置する共通電極17の領域は、めっきで形成された被覆層30で被覆されている。より詳細には、本実施形態では、被覆層30は、基板7の第1主面7cおよび第2端面7b上に位置する共通電極17の領域全体と、基板7の第2主面7d上に位置する共通電極17の全域と、第2主面7dおよび第2端面7bとで形成される角部7f上に位置する共通電極17の領域とを連続的に被覆している。
被覆層30は、金属または合金により形成することができ、例えば、周知の無電解めっき、あるいは電解めっきによって形成することができる。また、被覆層30として、例えば、共通電極17上にニッケルめっきからなる第1被覆層を形成し、第1被覆層上に金めっきからなる第2被覆層を形成してもよい。この場合、第1被覆層の厚さを例えば1.5μm〜4μmとし、第2被覆層の厚さを例えば0.02μm〜0.1μmとすることができる。
また、本実施形態では、図3に示すように、めっきで形成された被覆層30が、後述するFPC5を接続するIC−FPC接続電極21の端部上にも形成されている。これにより、後述するように、FPC5が被覆層30上に接続されている。
さらに、本実施形態では、図3に示すように、めっきで形成された被覆層30が、第1絶縁膜27の開口部27aから露出した個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部上にも形成されている。これにより、上記のように、駆動IC11が被覆層30を介して個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続されている。
FPC5は、図1,3,4に示すように、基板7の長手方向に沿って延びており、上記のように基板7の第1主面7c上に位置する共通電極17の主配線部17aおよび各IC−FPC接続電極21に接続されている。FPC5は、絶縁性の樹脂層の内部に複数のプリント配線が配線された周知のものであり、各プリント配線がコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。このようなプリント配線は、一般に、例えば、銅箔等の金属箔、薄膜成形技術によって形成された導電性薄膜、または厚膜印刷技術によって形成された導電性厚膜によって形成されている。また、金属箔あるいは導電性薄膜等によって形成されるプリント配線は、例えば、これらをフォトエッチング等により部分的にエッチングすることによってパターニングされている。
より詳細には、図3,4に示すように、FPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に形成された各プリント配線5bが第2端面7b側の端部で露出し、接合材32によって接合されている。接合材32としては、導電性接合材料、例えば、はんだ材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電材料(ACF)等を例示することができる。そして、FPC5のプリント配線5bは、基板7の第1主7c上に位置する共通電極17の主配線部17aの端部および各IC−FPC接続電極21の端部に接続されている。
なお、本実施形態では、基板7の第1主面7c上に位置する共通電極17上には、上記のように被覆層30が形成されているため、共通電極17に接続されるプリント配線5bが、接合材32を介して被覆層30上に接続されている。また、被覆層30が、各IC−FPC接続電極21の端部上にも形成されているため、各IC−FPC接続電極21に接続されるプリント配線5bも接合材32を介して被覆層30上に接続されている。このように、プリント配線5bを、めっきで形成された被覆層30上に接続することにより、プリント配線5bと、共通電極17およびIC−FPC接続電極21との接続強度を向上させることができる。
そして、FPC5の各プリント配線5bがコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されている。それにより、共通電極17は、例えば20〜24Vの正電位に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続される。また、個別電極19は、駆動IC11およびIC−FPC接続電極21のグランド電極を介して、例えば0〜1Vのグランド電位に保持された電源装置のマイナス側端子に電気的に接続される。そのため、駆動IC11のスイッチング素子がオン状態のとき、発熱部9に電圧が印加され、発熱部9が発熱するようになっている。
また、同様に、IC−FPC接続電極21の上記のIC電源配線は、共通電極17と同様に、正電位に保持された電源装置のプラス側端子に電気的に接続される。これにより、駆動IC11が接続されたIC−FPC接続電極21のIC電源電極とグランド電極との電位差によって、駆動IC11に駆動IC11を動作させるための電源電流が供給される。また、IC−FPC接続電極21の上記のIC制御電極は、駆動IC11の制御を行う外部の制御装置に電気的に接続される。これにより、制御装置から送信された電気信号が駆動IC11に供給されるようになっている。電気信号によって、駆動IC11内の各スイッチング素子のオン・オフ状態を制御するように駆動IC11を動作させることで、各発熱部9を選択的に発熱させることができる。
また、FPC5は、放熱体1の突起部1bの上面に、両面テープあるいは樹脂等の接着剤(不図示)によって接着されることにより、放熱体1上に固定されている。
図5〜7を用いてサーマルヘッドX1の蓄熱層13について具体的に説明する。図5は、第1端面7a側から見た平面図を示しており、保護膜25が省略された状態で示してい
る。なお、図6,7においては、共通電極17および個別電極19の厚みによる保護層25の突出を省略して示している。
図5,6で示すように、サーマルヘッドX1は、蓄熱層13が第1蓄熱層14と第2蓄熱層16により構成されている。第1蓄熱層14は、基板7の第1端面7aの略全体にわたって設けられている。第1蓄熱層14上には、第2蓄熱層16が設けられている。第1蓄熱層14および第2蓄熱層16上に電気抵抗層15が設けられており、電気抵抗層15上に共通電極17および個別電極19が設けられている。そして、共通電極17および個別電極19から露出した電気抵抗層15が発熱部9となっている。なお、第1蓄熱層14
および第2蓄熱層16は、上述した蓄熱層13と同様の材料により形成されている。また、第1蓄熱層14と第2蓄熱層16とを異なる材料により形成してもよい。
図5,6に示すように、サーマルヘッドX1は、隣り合う発熱部9において、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13aの重心と、他方の発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13bの重心とが、平面視してずれている。
詳細に説明すると、第1蓄熱層14は、第1端面7a上に、複数の発熱部9の配列方向に沿って延びるように設けられており、第2蓄熱層16は、第1蓄熱層14上に設けられ
ており、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aと、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層16bとが、平面視して、ずれた状態となっている。そのため、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13aの重心4aと、他方の前記発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13bの重心4bとが、平面視して、ずれた状態となる。言い換えると、第1端面7aからみて、ずれた状態となっている。
それにより、発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の蓄熱が、複数の発熱部9の配列方向に対して偏ることとなる。蓄熱層13の蓄熱の偏りに起因して、発熱部9に発生するいわゆるヒートスポット2が、複数の発熱部9の配列方向に対して偏ることになる。すなわち、図5に示すように、ヒートスポット2が、複数の発熱部9の配列方向に対してずれた状態となる。
このため、複数の発熱部9のそれぞれのヒートスポット2を、記録媒体Pの搬送方向にずらすことができる。それにより、サーマルヘッドX1にスティッキングが生じる可能性を低減することができる。
なお、発熱部9の下方に位置する蓄熱層13とは、図6においては一点鎖線により囲まれた蓄熱層13を示し、発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の重心とは、一点鎖線により囲まれた蓄熱層13の重心を示す。
また、図6,7に示すように、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13aの形状と、他方の発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13bの形状とが異なっている。より詳細には、一方の発熱部9aの下方に位置する第1蓄熱層14aの形状と、他方の発熱部9bの下方に位置する第1蓄熱層14bの形状とは同じであるが、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aの形状と、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層16bの形状とが異なっている。
詳細に説明すると、第1蓄熱層14は、第1端面7a上に、複数の発熱部9の配列方向に沿って延びるように設けられており、第2蓄熱層16は、第1蓄熱層14上に設けられており、平面視して、複数の発熱部9の配列方向における縁が波形形状をなしている。そのため、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aの重心と、他方の前記発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層16bの重心とを、複数の発熱部9の配列方向にずらすことができる。
それにより、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13aの重心4aと、他方の前記発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13bの重心4bとが、平面視して、ずれた状態となる。それにより、サーマルヘッドX1にスティッキングが生じる可能性を低減することができる。
また、サーマルヘッドX1は、図6に示すように、一方の発熱部9a上に設けられた保護膜25の頂部6aの基板7からの高さHaが、他方の発熱部9b上に設けられた保護膜
25の頂部7bの基板7からの高さHbと略等しい構成を有している。なお、Haは、保護膜25の頂部6aの下方に位置する基板7の第1端面7aから、記録媒体Pと接する保護膜25の頂部6aまでの長さを示し、Hbは、頂部6aの下方に位置する基板7の第1端面7aから、記録媒体Pと接する保護膜25の頂部6bまでの長さを示す。
そのため、サーマルヘッドX1をサーマルプリンタZ(図8参照)に搭載した場合に、複数の発熱部9の配列方向において、記録媒体PとサーマルヘッドX1との接触を均一化することができ、印画ムラが生じる可能性を低減することができる。
さらに、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13aの質量と、他方の発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13bの質量とが略等しい構成となっている。
このような構成を有することにより、それぞれの発熱部9上に位置する保護膜25の頂部6a,6bと基板7との長さと、発熱部9a,9bの下方に位置する蓄熱層13a,13bの質量とを略等しくすることができる。それにより、発熱部9に与えられたエネルギーが等しい場合、記録媒体P(インクリボンR)に等価な熱を供給することができる。つまり、それぞれの発熱部9がばらつきなく等しい熱を記録媒体Pに供給することができる。そのため、印画のばらつきを抑えることができる。
さらにまた、サーマルヘッドX1は、平面視して、第2蓄熱層16の縁が波形形状をなしていることから、保護膜25の記録媒体Pと接触される部位である頂部6a,6bが、記録媒体の搬送方向に対してずれた構成を有している。
つまり、図7に示すように、記録媒体Pの搬送方向において、一方の発熱部9aに対応する保護膜25の頂部6aと、他方の発熱部9bに対応する保護膜25の頂部6bとがずれた状態となる。すなわち、記録媒体Pの搬送方向のある位置において、一方の発熱部9aに対応する保護膜25の頂部6aでは、記録媒体P(インクリボンR)と接触するものの、同じ位置における他方の発熱部9bに対応する保護膜25の頂部6bでは記録媒体P(インクリボンR)と接触しない構成となる。
そのため、保護膜25と記録媒体Pとが、記録媒体Pの搬送方向において、ずれた位置にて接触することとなる。それにより、スティッキングが生じにくくなるとともに、図7の例においては、インクリボンRが、サーマルヘッドX1から容易に剥離することが可能となる。
さらに、記録媒体Pの搬送方向において、第2蓄熱層16の幅が、発熱部9の幅よりも小さい構成となっている。そのため、隣接する発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の形状を変えることによりヒートスポット2をずらすことができ、サーマルヘッドX1にスティッキングが生じる可能性を低減することができる。
記録媒体Pの搬送方向における発熱部9の長さが150〜250μmの場合、記録媒体Pの搬送方向における第2蓄熱層16の長さは、75〜125μmであることが好ましい。
なお、サーマルヘッドX1では、第1蓄熱層14および第2蓄熱層16を設けて蓄熱層13を形成した例を示したがこれに限定されるものではない。蓄熱層13として、第2蓄熱層16を設けずに第1蓄熱層14のみにより形成してもよく、第1蓄熱層14を設けずに第2蓄熱層のみ16により形成してもよい。第2蓄熱層16を設けずに第1蓄熱層14のみにより形成する場合、第1蓄熱層14を平面視して、波形形状をなしている構成とすることにより、同等の効果を得ることができる。また、サーマルヘッドX1では、すべての隣り合う発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の重心がずれた状態を示したが、少なくとも一部の隣り合う発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の重心がずれていてもよい。この場合においても、ヒートスポット2の位置をずらすことができ、スティッキングを抑えることができる。
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図8を参照しつつ説明する。図8は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図8に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX1、
搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うように、取付部材80に取り付けられている。そのため、サーマルヘッドX1においては、基板7の第1主面7c側が記録媒体Pの搬送方向の上流側となり、基板7の第2主面7d側が記録媒体Pの搬送方向の下流側となる。
搬送機構40は、感熱紙、受像紙、カード等の記録媒体Pを図8の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧する機能を有している。そして、プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電圧および駆動IC11を動作させるための電圧を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
本実施形態のサーマルプリンタZは、搬送機構40によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に搬送しつつ、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させる。それにより、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
<第2実施形態>
図9,10を用いて、第2の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。サーマルヘッドX2は、第2蓄熱層16が、共通電極17および個別電極19の間に位置しており、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13aおよび他方の発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13bが、それぞれ共通電極17または個別電極19に向けて突出した突出部8a,8bを備えている。その他の点においては、サーマルヘッドX1と同等であり、説明を省略する。
サーマルヘッドX2は、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aが、個別電極19に向けて突出する突出部8aを有しており、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層16bが、個別電極19に向けて突出する突出部8bを有している。それにより、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16の個別電極19側の質量が大きくなり、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層16の共通電極17側の質量が大きくなることとなる。
そのため、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aの重心4aが個別電極19側に移動することとなり、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層13bの重心4bが共通電極17側に移動することとなる。
それゆえ、一方の発熱部9aのヒートスポット2aが、共通電極17側に移動することとなり、他方の発熱部9bのヒートスポット2bが、個別電極19側に移動することとなる。そのため、サーマルヘッドX2にスティッキングが生じる可能性を低減させることができる。
突出部8a,8bは、蓄熱層13の質量を増大させる機能を有しており、第2蓄熱層16に突出部8a,8bを設けることにより、発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の質量を調整することができる。
突起部8a,8bは、発熱部9の配列方向における幅が、10〜60μm、記録媒体の搬送方向における長さが、5〜30μmであることが好ましい。なお、突出部8a,8bは、共通電極17または個別電極19まで突出していることが好ましい。突出部8a,8bが、共通電極17または個別電極19まで突出していることにより、発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の質量を容易に調整することができる。
<第3の実施形態>
図11,12を用いて、第3の実施形態に係るサーマルヘッドX3について説明する。サーマルヘッドX3は、第2蓄熱層16の複数の配列方向に沿う縁に切欠部10a,10bを備えている。その他の点においては、サーマルヘッドX1と同等であり、説明を省略する。
サーマルヘッドX3は、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aの個別電極19側の縁に切欠部10aが設けられており、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層16bの共通電極17側の縁に切欠部10bが設けられている。それにより、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16の個別電極19側の質量が小さくなり、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層16の共通電極17側の質量が小さくなることとなる。
そのため、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aの重心4aが共通電極17側に移動することとなり、他方の発熱部9bの下方に位置する第2蓄熱層13bの重心4bが共通電極17側に移動することとなる。
それゆえ、一方の発熱部9aのヒートスポット2aが、個別電極19側に移動することとなり、他方の発熱部9bのヒートスポット2bが、共通電極17側に移動することとなる。そのため、サーマルヘッドX3にスティッキングが生じる可能性を低減させることができる。
切欠部10a,10bは、蓄熱層13の質量を減少させる機能を有しており、第2蓄熱層16に切欠部10a,10bを設けることにより、発熱部9の下方に位置する第2蓄熱層16の質量を調整することができる。
なお、切欠部10a,10bは、発熱部9の配列方向における幅が、10〜50μm、記録媒体の搬送方向における長さが、5〜25μmであることが好ましい。このような範囲とすることで、ニップ幅の領域に切欠部10a、10bが存在せず、印画ムラが生じる可能性を低減することができる。
<第4の実施形態>
図13,14を用いて、第4の実施形態に係るサーマルヘッドX4について説明する。サーマルヘッドX4は、第2蓄熱層16または第1蓄熱層13の表面に窪み部12a,12bを有している。その他の点においては、サーマルヘッドX1と同等であり、説明を省略する。
サーマルヘッドX4は、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16aの個別電極19側に窪み部12aが設けられており、他方の発熱部9bの下方に位置する第1蓄熱層14bの共通電極17側に窪み部12bが設けられている。それにより、一方の発熱部9aの下方に位置する第2蓄熱層16の個別電極19側の質量が小さくなり、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13の質量が小さくなることとなる。また、他方の発熱部9bの下方に位置する第1蓄熱層14bの共通電極17側の質量が小さくなることとなり、他方の発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13の共通電極17側の質量が小さくなることとなる。
そのため、一方の発熱部9aの下方に位置する蓄熱層13の重心4aが共通電極17側に移動することとなり、他方の発熱部9bの下方に位置する蓄熱層13の重心4bが共通電極17側に移動することとなる。
それゆえ、一方の発熱部9aのヒートスポット2aが、個別電極19側に移動することとなり、他方の発熱部9bのヒートスポット2bが、共通電極17側に移動することとなる。そのため、サーマルヘッドX4にスティッキングが生じる可能性を低減させることができる。
窪み部12a,12bは、蓄熱層13の質量を減少させる機能を有しており、蓄熱層13に窪み部12a,12bを設けることにより、発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の質量を調整することができる。
窪み部12a,12bは、第1端面7aから見て、円形状を有している。窪み部12a,12bの直径は15〜30μm、深さは0.5〜3.5μmであることが好ましい。
窪み部12a,12bは、発熱部9のヒートスポット2近傍に設けることが好ましい。それにより、容易にヒートスポット2の位置を記録媒体の配列方向にずらすことができる。
なお、窪み部12a,12bが、蓄熱層13を貫通する孔状のものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、窪み部12a,12bが、蓄熱層13の途中まで設けられて窪みを形成するものでもよい。また、第2蓄熱層16のみを貫通し、第1蓄熱層14を貫通しない構成としてもよい。それらの場合においても、発熱部9の下方に位置する蓄熱層13の質量を調整することができ、サーマルヘッドX4にスティッキングが生じる可能性を低減することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZを示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X4をサーマルプリンタZに用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X4を組み合わせてもよい。
例えば、サーマルヘッドX1は、図3,4に示すように、第2絶縁膜29が、基板7の
第2主面7d上に形成された保護膜25上に形成されている。また、基板7の第2主面7d上の保護膜25よりも右側の共通電極17の領域を被覆するように形成されている。しかしながら、本実施形態のサーマルヘッドX1は、基板7の第2主面7d上の保護膜25上に少なくとも形成されている限り、これに限定されるものではない。例えば、図示しないが、図3,4で第2絶縁膜29によって被覆された共通電極17の領域を、保護膜25で被覆し、保護膜25上に第2絶縁膜29を形成してもよい。
上記実施形態のサーマルヘッドX1では、共通電極17は、基板7の第1端面7a上から、基板7の第2主面7d上、および基板7の第2端面7b上を介して、基板7の上面上にわたって延びているが、これに限定されるものではない。例えば、共通電極17を基板7の第1端面7aおよび第2主面7d上にのみ形成してもよい。この場合、基板7の第2主面7d上に形成された共通電極17とFPC5のプリント配線5bとを、別途設けたジャンパー線によって接続すればよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドX1では、FPC5を介してヘッド基体3の基板7上に設けられた共通電極17およびIC−FPC接続電極21を外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続しているが、これに限定されるものではない。例えば、FPC5のように可撓性を有するフレキシブルプリント配線板ではなく、硬質のプリント配線板を介してヘッド基体3の各種配線を外部の電源装置等に電気的に接続してもよい。この場合、例えば、ヘッド基体3の共通電極17およびIC−FPC接続電極21とプリント配線板のプリント配線とをワイヤーボンディング、ACF接続あるいは半田接続等によって接続すればよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドX1では、図3,4に示されるように、電気抵抗層15が、蓄熱層13上のみならず、基板7の第1主面7cおよび第2主面7d上にも設けられているが、基板7の第1端面7a上のリード部17cと個別電極層19とに接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13上にのみ設けられていてもよい。また、基板7の第1端面7a上の共通電極17および個別電極19を蓄熱層13上に直接形成し、蓄熱層13上の共通電極17の先端部と個別電極19の先端部との間の領域にのみ電気抵抗層15が設けられていてもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドX1では、共通電極17は、基板7の第1端面7a上から、基板7の第2主面7d上、および基板7の第2端面7b上を介して、基板7の第1主面7a上にわたって延びているが、これに限定されるものではない。例えば、サーマルヘッドX5のように、共通電極17は、基板7の第1端面7a上から基板7の第2主面7d上に延び、基板7の第2主面7d上で折り返すようにして、基板7の第1端面7a上を介して基板7の第1主面7a上に延びていてもよい。より詳細には、図15,16に示すように、共通電極17は、基板7の第1端面7a上にて、各リード部17cの一端部が発熱部9に接続されている。他端部が基板7の第2主面7dに向かって延びている。各リード部17cが、基板7の第2主面7d上で基板7の第2主面7dの全体にわたって形成された主配線部(不図示)に接続されている。そして、基板7の第2主面7dの主配線部から基板7の第1端面7a上を介して基板7の上面上に副配線部17bが延びている。副配線部17bは、基板7の長手方向の両側の端部の近傍に帯状に延びている。このように形成された共通電極17は、図15に示すように、基板7の上面上で副配線部17bの端部がFPC5に接続されるようになっている。
また、図15,16に示すサーマルヘッドX5では、共通電極17のリード部17cが基板7の第1端面7a上から基板7の第2主面7dにわたって形成され、基板7の第2主面7d上の主配線部(不図示)に接続されているが、これに限定されるものではない。例えば、図16に示すように、リード部17cを基板7の第1端面7a上にのみ形成すると
ともに、主配線部17aを発熱部9の配列方向に沿って基板7の第1端面7a上にのみ形成し、主配線部17aに各リード部17cを接続してもよい。この場合、図17に示すサーマルヘッドX6のように、主配線部17aの両端部に副配線部17bが接続される。
また、図17に示すサーマルヘッドX6では、複数の発熱部9の全てが共通電極17に共通して接続されているが、これに限定されるものではない。例えば、図18に示すサーマルヘッドX7のように、共通電極17の代わりに、隣接する2つの発熱部9ごとに発熱部9を接続する発熱部接続配線18によって、複数の発熱部9を接続してもよい。この場合、詳細な説明は省略するが、発熱部接続配線18に接続された隣接する2つの発熱部9に接続された2本の個別電極19の間に電圧が印加されるように、駆動ICあるいは各種配線の構成を変更することで、発熱部9を発熱させることができる。
また、上記実施形態のサーマルヘッドX1では、図3,4に示すように、基板7の第1端面7aが凸状の曲面形状を有しているが、基板7の第1端面7aの表面形状および傾斜角度は特に限定されるものではなく、任意の形態をとることができる。例えば、基板7の第1端面7aは、平面形状であってもよいし、屈曲した面で形成されていてもよい。また、基板7の第1主面7cおよび第2主面7dと基板7の第1端面7aとのなす角度が直角ではなく、鈍角または鋭角であってもよい。
さらにまた、発熱部9が基板7の第1端面7aに設けられた例を示したがこれに限定されるものではない。発熱部9が、第1主面7cに設けられた平面ヘッドにおいても、本発明を適用することができる。