<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係るサーマルヘッドX1について、図面を参照しつつ説明する。図1〜4に示すように、サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、図1では、FPC5の図示を省略し、FPC5が配置される領域を二点鎖線で示す。また、図2において、第2放熱部材14を破線で示している。
図1〜4に示すように、放熱体1は、平面視して、矩形状の板状の台部1aと、台部1aの上面上に配置され、台部1aの一方の長辺に沿って延びる突起部1bとを備えている。放熱体1は、例えば、銅、鉄、あるいはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するようにヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱の一部を放熱する機能を有している。
図1,2に示すように、ヘッド基体3は、基板7と、基板7上に設けられた複数の発熱部9と、発熱部9の駆動を制御する駆動IC11とを備えている。基板7は、平面視して、矩形状をなしている。基板7は、第1端面7a、第2端面7b、第1主面7c、および第2主面7dを有している。第1端面7aは、第1主面7cおよび第2主面7dに隣接する面である。第2端面7bは、第1端面7aの反対側に位置する面である。第1主面7cは、第1端面7aおよび第2端面7bに隣接する面である。第2主面7dは、第1主面7cの反対側に位置する面である。発熱部9は、第1端面7a上に、基板7の長手方向に沿って列状に設けられている。駆動IC11は、第1主面7c上に複数設けられている。
ヘッド基体3は、図1〜4に示すように、放熱体1の台部1aの上面上に配置されており、第2端面7bが、放熱体1の突起部1bに対向するように配置されている。また、ヘッド基体3の第2主面7dと台部1aの上面とが、両面テープあるいは接着剤等からなる第1放熱部材12によって接着されている。これにより、ヘッド基体3が台部1aに支持されている。
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。なお、基板7は、平面視して矩形状をなしているが、基板7の角部に面取り等を行ったものも、本発明における平面視して矩形状の基板に含まれる。
図3,4に示すように、基板7の第1端面7a上には、蓄熱層13が形成されている。基板7の第1端面7aは断面視して凸状の曲面形状を有しており、第1端面7a上に蓄熱層13が形成されている。そのため、蓄熱層13の表面も曲面形状となっている。曲面形状である蓄熱層13は、発熱部9上に形成された後述する保護層25に印画する記録媒体
を良好に押し当てるように機能する。
蓄熱層13は、例えば、ガラスにより形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。なお、ガラスは、熱伝導性の低いガラスであることが好ましい。蓄熱層13は、印画時において、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。
なお、本実施形態では、図3に示すように蓄熱層13が基板7の第1端面7a上にのみ形成されており、発熱部9に近い位置で蓄熱することができる。そのため、サーマルヘッドX1の熱応答特性をより効果的に向上させることできる。なお、蓄熱層13は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の第1端面7a上に塗布し、これを焼成することにより形成することができる。
図3,4に示すように、基板7の第1主面7c上、蓄熱層13上、基板7の第2主面7d上および第2端面7b上には、電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13と、後述する共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21との間に介在している。
基板7の第1主面7c上に位置する電気抵抗層15の領域は、図1に示すように平面視して、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21と同形状に形成されている。
蓄熱層13上に位置する電気抵抗層15の領域は、図2に示すように側面視して、共通電極17および個別電極19と同形状に形成された領域と、共通電極17と個別電極19との間から露出した複数の露出領域とを有している。
基板7の第2主面7d上に位置する電気抵抗層15の領域は、詳細には図示しないが、図3,4に示すように、基板7の第2主面7dの全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
基板7の第2端面7b上に位置する電気抵抗層15の領域は、詳細には図示しないが、図3,4に示すように、基板7の第2端面7bの全体にわたって設けられており、共通電極17と同形状に形成されている。
このように電気抵抗層15の各領域が形成されているため、図1では、電気抵抗層15は、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21で覆われており、図示していない。また、図2では、電気抵抗層15は、共通電極17および個別電極19で覆われており、露出領域のみ図示されている。
電気抵抗層15の各露出領域は、上記の発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図2に示すように、蓄熱層13上に列状に配置されている。複数の発熱部9は、図2では簡略化して示しているが、例えば、180dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。また、図2に示すように、発熱部9は、蓄熱層13上で、基板7の厚さ方向の略中央部に設けられている。
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極17と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱することとなる。
共通電極17は、複数の発熱部9とFPC5とを電気的に接続するためのものである。共通電極17は、主配線部17aと、リード部17bとを有している。主配線部17aは、図1,3,4に示すように、基板7の第2主面7dおよび第2端面7bの全体にわたって形成されるとともに、基板7の第1主面7c上において第2端面7bに沿って延びるように形成されている。リード部17bは、基板7の第1端面7a上に形成されており、一端部が基板7の第2主面7d上に設けられた主配線部17aと、各発熱部9とを電気的に接続している。また、各リード部17bは、一端部が個別電極19に対向して配置されて各発熱部9に接続されている。
複数の個別電極19は、各発熱部9と駆動IC11とを接続するためのものである。図1〜3に示すように、各個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にわたって個別に帯状に延びている。
各個別電極19の他端部は、駆動IC11の配置領域に配置されており、各個別電極19の他端部が駆動IC11に接続されている。それにより、各発熱部9と駆動IC11との間が電気的に接続されている。より詳細には、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
複数のIC−FPC接続電極21は、駆動IC11とFPC5とを接続するためのものである。図1,3に示すように、各IC−FPC接続電極21は、基板7の第1主面7c上に帯状に延びており、一端部は駆動IC11の配置領域に配置されている。また、各IC−FPC接続電極21の他端部は基板7の第1主面7c上の第2端面7b側に位置する、共通電極17の主配線部17aの近傍に配置されている。そして、複数のIC−FPC接続電極21は、一端部が駆動IC11に電気的に接続されるとともに、他端部がFPC5に電気的に接続されることにより、駆動IC11とFPC5とを電気的に接続している。
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されている。そして、駆動IC11は、個別電極19の他端部とIC−FPC接続電極21の一端部とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御するためのものであり、内部に有した複数のスイッチング素子(不図示)を切り替えることにより、各発熱部9の発熱駆動を制御している。
駆動IC11は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材28によって被覆されている。これにより、駆動IC11自体、および駆動IC11とこれらの配線との接続部を保護することができる。
共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の形成方法について例示する。各々を構成する材料層を、蓄熱層13が形成された基板7上に、スパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層する。次に積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成することができる。
また、電気抵抗層15の厚さは、例えば0.01μm〜0.2μmとし、共通電極17、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の厚さは、例えば0.05μm〜2.5μmとすることができる。なお、第1主面7c上の共通電極17の厚みと、第2主面7d上の共通電極17の厚みとが異なる構成としてもよく、電極の部位により厚みを異なるものとしてもよい。
保護層25は、図1〜4に示すように、蓄熱層13上、基板7の第1主面7cおよび第2主面7d上に、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆するように設けられている。保護層25は、蓄熱層13上においては全体を覆うように設けられている。保護層25は、基板7の第1端面7a上から基板7の第1主面7c上にわたって形成されているとともに、基板7の第1端面7a上から基板7の第2主面7d上にわたって形成されている。なお、説明の便宜上、図1では、保護層25の形成領域を一点鎖線で示し、図示を省略している。
保護層25は、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護する機能を有している。保護層25は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。なお、AlあるいはTi等の他の元素を少量含有していてもよい。
保護層25は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術あるいはスクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。保護層25の厚さは、例えば3〜12μmとすることができる。また、保護層25は、複数の材料層を積層して形成してもよい。
また、図1,3,4に示すように、基板7の第1主面7c上には、個別電極19およびIC−FPC接続電極21を部分的に被覆する第1絶縁層27が設けられている。第1絶縁層27は、図1に示すように基板7の第1主面7c上の保護層25よりも右側の領域を部分的に覆うように設けられている。なお、説明の便宜上、図1では、第1絶縁層27の形成領域を一点鎖線で示し、図示を省略している。
第1絶縁層27は、個別電極19およびIC−FPC接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有するものである。第1絶縁層27は、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、第1絶縁層27は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。なお、第1絶縁層27は電気絶縁性を有しており、上記のように個別電極19を被覆しても、隣接する個別電極19間が短絡しない構成を有している。
なお、図1,3に示すように、後述するFPC5を接続するIC−FPC接続電極21の端部は、第1絶縁層27から露出して設けられており、FPC5と接続することができる。
また、第1絶縁層27は、駆動IC11を接続する個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部を露出させるための開口部27a(図3参照)が形成されている。個別電極19とIC−FPC接続電極21とは、開口部27aを介して駆動IC11に接続されている。本実施形態では、開口部27aから露出した個別電極19およびIC−FPC接続電極21の端部上に、後述する被覆層30が形成されている。そして、被覆層30を介して個別電極19およびIC−FPC接続電極21が、駆動IC11とはんだ接合されている。このように、駆動IC11を、めっきで形成された被覆層30上にはんだ接合す
ることで、個別電極19およびIC−FPC接続電極21上への駆動IC11の接続強度を向上させることができる。
図3,4に示すように、基板7の第2主面7d上には、基板7の第2主面7d上の共通電極17を部分的に被覆する第2絶縁層29が形成されている。第2絶縁層29は、基板7の第2主面7dの略全体を覆っている。
第2絶縁層29は、共通電極17を被覆することにより、共通電極17の被覆した領域を、大気との接触による酸化あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護する機能を有している。第2絶縁層29は、第1絶縁層27と同様、例えば、エポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、第2絶縁層29は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。第2絶縁層29の厚さは、例えば20〜60μmにすることができる。
図3,4に示すように、基板7の第1主面7cと第2端面7bとで形成される角部7e上、および基板の第2主面7dと第2端面7bとで形成される角部7e上に位置する共通電極17の領域は、めっきで形成された被覆層30で被覆されている。より詳細には、本実施形態では、被覆層30は、基板7の第1主面7cおよび第2端面7b上に位置する共通電極17の領域全体と、基板7の第2主面7d上に位置する共通電極17の全域と、第2主面7dおよび第2端面7bとで形成される角部7f上に位置する共通電極17の領域とを連続的に被覆している。
被覆層30は、金属または合金により形成することができ、例えば、周知の無電解めっき、あるいは電解めっきによって形成することができる。また、被覆層30として、例えば、共通電極17上にニッケルめっきからなる第1被覆層を形成し、第1被覆層上に金めっきからなる第2被覆層を形成してもよい。この場合、第1被覆層の厚さを例えば1.5μm〜4μmとし、第2被覆層の厚さを例えば0.02μm〜0.1μmとすることができる。
また、本実施形態では、図3に示すように、めっきで形成された被覆層30が、後述するFPC5を接続するIC−FPC接続電極21の端部上にも形成されている。これにより、後述するように、FPC5が被覆層30上に接続されている。
FPC5は、図1,3,4に示すように、基板7の長手方向に沿って延びており、上記のように基板7の第1主面7c上に位置する共通電極17の主配線部17aおよび各IC−FPC接続電極21に接続されている。FPC5は、絶縁性の樹脂層の内部に複数のプリント配線が配線された周知のものであり、各プリント配線がコネクタ31を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。このようなプリント配線は、例えば、銅箔等の金属箔、薄膜成形技術によって形成された導電性薄膜、または厚膜印刷技術によって形成された導電性厚膜によって形成されている。
また、金属箔あるいは導電性薄膜等によって形成されるプリント配線は、例えば、これらをフォトエッチング等により部分的にエッチングすることによってパターニングされている。
より詳細には、図3,4に示すように、FPC5は、絶縁性の樹脂層5aの内部に形成された各プリント配線5bが第2端面7b側の端部で露出し、接合材32によって接合されている。接合材32としては、導電性接合材料、はんだ材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電材料(ACF)等を例示することができる。そして、FPC5のプリント配線5bは、基板7の第1主面7c上に位置する共通電極17の
主配線部17aの端部および各IC−FPC接続電極21の端部に接続されている。
また、FPC5は、放熱体1の突起部1bの上面に、両面テープあるいは樹脂等の接着剤(不図示)によって接着されることにより、放熱体1上に固定されている。
ヘッド基体3と放熱体1とは第1放熱部材12により接着されている。第1放熱部材12は、図3,4に示すように基板7の第2主面7dと放熱体1との間に配置されている。第1放熱部材12は、例えば、熱伝導率の高い熱伝導性粒子を内部に備えた樹脂、あるいは熱伝導性粒子を含有する粘着テープ等を例示することができる。熱伝導性粒子としては、金属または合金の金属粒子、あるいは炭化珪素等のセラミックス粒子を例示することができる。
第1放熱部材12は、熱伝導率が、1.0(W/m・K)以上であることが好ましい。熱伝導率は、例えば、JISR1611で規格されるフラッシュ法により測定することができる。また、DSC法により熱伝導率を測定してもよい。
第2放熱部材14は、基板7の発熱部9の近傍から第1放熱部材12上、および放熱体1の側面にわたって設けられている。第2放熱部材14の熱放射率は、第1放熱部材12よりも高く、0.5以上であることが好ましい。熱放射率は、測定面での測定波長の光の反射率を測定して、1から反射率を引くことにより求めることができる。また、熱伝導率が100(W/m・K)以上であることが好ましい。
第2放熱部材14としては、熱放射性粒子を含有する樹脂をシート状に成形した熱放射シート、あるいは熱放射性粒子を溶媒に溶解させて、溶液をスプレー塗布して熱放射コートを設けてもよい。熱放射性粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、あるいは窒化アルミニウムを例示することができる。なお、本明細書においては、第1放熱部材12は、接着剤をかねる放熱性接着剤を用い、第2放熱部材14は、熱放射シートを用いて説明する。
サーマルヘッドX1は、第2放熱部材14が、第1放熱部材12よりも熱放射率が高く、第1放熱部材12に接して配置されていることから、第1放熱部材12の熱を第2放熱部材14により空気中に熱放射することができる。
つまり、発熱部9により印画に寄与しない熱が、基板7または放熱体1に熱伝導され、基板7または放熱体1から第1放熱部材12に熱伝導される。第1放熱部材12に熱伝導した熱は、第1放熱部材12に接して配置された第2放熱部材14に熱伝導され、第2放熱部材14から空気中に熱放射されることとなる。それにより、基板7または放熱体1の熱を放熱することができ、サーマルヘッドX1の放熱性を向上させることができる。
また、サーマルヘッドX1は、第2放熱部材14の熱伝導率が、第1放熱部材12の熱伝導率よりも高いことから、第1放熱部材12の熱を第2放熱部材14に効率よく熱伝導させることができる。それにより、第2放熱部材14から空気中に熱を効率よく熱放射することができ、サーマルヘッドX1の放熱性を向上させることができる。
さらにまた、図3,4に示すように、第2放熱部材14は、基板7の発熱部9の近傍から、第1放熱部材12上および放熱体1の側面にかけて設けられている。そのため、第1放熱部材12の熱を第2放熱部材14に熱伝導させることができるとともに、基板7の発熱部9近傍の熱、および放熱体1の側面の熱を第2放熱部材14に熱伝導させることができる。そして、第1放熱部材12の熱、基板7の発熱部9近傍の熱、および放熱体1の側面の熱が、第2放熱部材14に熱伝導されると、第2放熱部材14が、熱伝導された熱を
空気中に熱放射することができる。
このように、熱伝導率の高い第2放熱部材14を用いた場合においては、第2放熱部材14の第1放熱部材12上以外の領域が、ヘッド基体3または放熱体1上に直接設けられることにより、第2放熱部材14に熱伝導させることができ、ヘッド基体3または放熱体1の熱を効率よく放熱することができる。
次に、本発明のサーマルプリンタの一実施形態について、図5を参照しつつ説明する。図5は、本実施形態のサーマルプリンタZの概略構成図である。
図5に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZは、上述のサーマルヘッドX1、搬送機構40、プラテンローラ50、電源装置60および制御装置70を備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZの筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うように、取付部材80に取り付けられている。そのため、サーマルヘッドX1においては、基板7の第1主面7c側が記録媒体Pの搬送方向の上流側となり、基板7の第2主面7d側が記録媒体Pの搬送方向の下流側となる。
搬送機構40は、感熱紙、受像紙、カード等の記録媒体Pを図5の矢印S方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,45,47,49を有している。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送するようになっている。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧する機能を有している。そして、プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電圧および駆動IC11を動作させるための電圧を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
本実施形態のサーマルプリンタZは、搬送機構40によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に搬送しつつ、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させる。それにより、記録媒体Pに所定の印画を行うことができる。なお、記録媒体Pが受像紙あるいはカード等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行うことができる。
<第2実施形態>
図6,7を用いて、第2の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。サーマルヘッドX2は、ヘッド基体3と放熱体1とが、放熱樹脂20と接着剤18とにより接
合されており、ヘッド基体3を覆うようにヘッドカバー16が設けられている。
ヘッドカバー16は、放熱体1とともにヘッド基体3を挟持固定する機能を有しており、表面にねじ穴(不図示)が設けられており、放熱体1と一体的に固定されている。ヘッドカバー16は、例えば、金属あるいは合金等の薄板により形成することができる。
放熱樹脂20は、上述した熱伝導性粒子を含有する樹脂により形成されている。放熱樹脂20は、基板7の第1端面側7aに設けられており、放熱樹脂20が設けられていない領域には、接着剤18が設けられている。なお、接着剤18としては、粘着テープを例示することができる。このように、ヘッド基体3と放熱体1とを、放熱樹脂20と接着剤18とにより接合することから、サーマルヘッドX2の放熱性を向上させることができるとともに、サーマルヘッドX2の接合強度を向上させることができる。
ヘッドカバー16は、放熱樹脂20を介して基板7に接続されており、ヘッドカバー16の上面に第2放熱部材14が設けられている。第2放熱部材14は、平面視して、ヘッドカバー16よりも小さく構成されている。サーマルヘッドX2において、放熱樹脂20およびヘッドカバー16を第1放熱部材12とみなすことができる。
サーマルヘッドX2は、ヘッドカバー16の上面に第2放熱部材14を設けることにより、ヘッドカバー16の熱が第2放熱部材14に熱伝導されることとなる。第2放熱部材14に熱伝導した熱は、第2放熱部材14により空気中に熱放射されることとなる。
また、ヘッドカバー16の一部が放熱樹脂20を介して基板7に接続されているため、基板7の熱をヘッドカバー16に効率よく熱伝導することができる。それにより、基板7の熱を効率よく空気中に熱放射することができる。
また、ヘッドカバー16は、上面が外部へ向けて配置されている。そのため、ヘッドカバー16の上面に第2放熱部材14を設けることで、サーマルヘッドX2の熱を外部へ効率よく熱放射することができる。
なお、第2放熱部材14をヘッドカバー16の上面の全域にわたって設けた例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッドカバー16の上面のみならず、下面に第2放熱部材14を設けてもよい。この場合においても、ヘッドカバー16の熱を第2放熱部材14により効率よく空気中に熱放射することができる。
<第3の実施形態>
図8,9を用いて他の実施形態に係るサーマルヘッドX3について説明する。サーマルヘッドX3は、第2放熱部材14が、ヘッド基体3とFPC5との接続部R1上に配置されたFPC5に設けられている。ヘッド基体3の共通電極17と、FPC5の配線パターンとは、接続部R1にて電気的に接続されている。そして、接続部R1の上方に第2放熱部材14が設けられている。そのため、接続部R1は、FPC5と、第2放熱部材14とがこの順に設けられており、FPC5と接合材32とが第1放熱部材12として機能している。
サーマルヘッドX3では、共通電極17とFPC5の配線パターンとの接続部R1には大電流が流れる場合がある。そして、共通電極17とFPC5の配線パターンの配線抵抗に起因して、接続部Rにおける共通電極17とFPC5の配線パターンとが発熱する場合があり、接続部R1の温度が上昇する場合がある。
サーマルヘッドX3は、接続部R1上において、接続部R1の熱が、FPC5に熱伝導
され、FPC5に熱伝導した熱を第2放熱部材14により空気中に熱放射されることとなる。そのため、接続部R1の熱を効率よく放熱することができる。
さらに、FPC5の上面に第1放熱部材12を別途設け、第1放熱部材12上に第2放熱部材14を設けてもよい。また、FPC5の上面の全域にわたって、第1放熱部材12および第2放熱部材14を設けてもよい。その場合においても、FPC5の熱を効率よく放熱することができ、サーマルヘッドX3の放熱性を向上させることができる。
また、サーマルヘッドX3においては、接合材32およびFPC5が第1放熱部材12として機能している。特に、接合材32は、導電性粒子が金属あるいは合金により形成されているため、接合材32の熱伝導率が高くなっており、第1放熱部材12として有効に機能している。
なお、接続部R1上に配置されたFPC5の領域のみに、第1放熱部材12および第2放熱部材14をこの順に配置して、他の領域は第2放熱部材14のみを配置してもよい。この場合、接続部R1に生じた熱を第1放熱部材12により効率よく第2放熱部材14に熱伝導させることができ、第2放熱部材14の面積が大きいことに起因して、第2放熱部材14に熱伝導した熱を空気中に効率よく熱放射することができる。
<第4の実施形態>
図10を用いてサーマルヘッドX4について説明する。サーマルヘッドX4は、基板7の第1主面7c上に第1放熱部材12および第2放熱部材14がこの順に設けられている。また、FPC5の接続部(不図示)上の領域に第1放熱部材12および第2放熱部材14がこの順に設けられている。また、基板7の第1端面7aから第2主面7dにわたって第1放熱部材12が設けられており、基板7の第1端面7a近傍の第1放熱部材12上に、第2放熱部材14が設けられている。
そのため、印画に寄与しない熱を第1放熱部材12および第2放熱部材14により、効率よく空気中に熱放射することができる。特に、発熱部9の近傍における第1主面7c上および第2主面7dに第1放熱部材12および第2放熱部材14を設けることで、サーマルヘッドX4の放熱性を向上させることができる。
また、サーマルヘッドX4は、FPC5の上に設けられた第1放熱部材12が離間して配置されており、2つの第1放熱部材12を覆うように第2放熱部材14が設けられている。そのため、隣り合う第1放熱部材12同士に空間が設けられることとなり、第2放熱部材14が上面のみならず下面も露出する構成となる。それにより、第2放熱部材14の露出面積、言い換えると空気と接触する面積を増加させることができ、さらに放熱性を向上させることができる。
なお、サーマルヘッドX4において、第1放熱部材12および第2放熱部材14を発熱部9の配列方向に延びるように設けた例を示したが、それに限定されるものではない。例えば、第2放熱部材14を発熱部9の配列方向における中央部にのみ設けてもよい。その場合においても、高温になりやすい発熱部9の配列方向における中央部の温度を放熱することができ、発熱部9の配列方向における温度分布のばらつきを低減することができる。
<第5の実施形態>
図11,12を用いてサーマルヘッドX5について説明する。サーマルヘッドX5は、ヘッドカバー16上に第2放熱部材14が設けられており、ヘッドカバー16が、接続部R2にて、放熱樹脂20を介してヘッド基体3に接続されている。
ヘッドカバー16は、平面により形成された主面16aと、ヘッド基体3と接続される接続部16bと、主面16aおよび接続部16bを接続する斜面16cと、主面16aに接続され、下方に向けて突出する突出部16dとを有している。
第2放熱部材14は、接続部R2の上方に位置するヘッドカバー16の上面に設けられており、ヘッドカバー16の長辺の全域にわたって設けられている。また、第2放熱部材14は、ヘッドカバー16の上面から、ヘッド基体3の側面を通過して、放熱体1の側面にまで延在して設けられている。
また、第2放熱部材14は、放熱体1の一方の側面から、ヘッド基体3の一方の側面、ヘッドカバー16の上面、ヘッド基体3の他方の側面、および放熱体1の他方の側面にわたって設けられている。そして、第2放熱部材14は、接着剤(不図示)によりサーマルヘッドX5を構成する各部材に接続されている。
サーマルヘッドX5は、ヘッドカバー16に設けられた第2放熱部材14が、放熱体1上にまで延びており、放熱体1に接続されている。そのため、ヘッド基体3からヘッドカバー16に熱伝導した熱を、第2放熱部材14により放熱体1に向けて熱伝導させつつ、空気中に熱放射させることができる。
また、サーマルヘッドX5は、第2放熱部材14が、ヘッドカバー16の接続部16bに設けられていることから、ヘッド基体3からヘッドカバー16に熱伝導した熱を、第2放熱部材14により効率よく熱放射することができる。
また、サーマルヘッドX5は,第2放熱部材14が、放熱体1の一方の側面から、ヘッドカバー16の上面を通って、放熱体1の他方の側面にまで設けられている。それにより、第2放熱部材14と、ヘッド基体3および放熱体1との接着面積が増加することにより、第2放熱部材14が強固に固定されることになる。
特に、ヘッドカバー16の上面には、記録媒体(不図示)が搬送されることとなり、記録媒体と第2放熱部材14とが接触すると、第2放熱部材14がヘッドカバー16から剥離する可能性がある。しかしながら、サーマルヘッドX5は、第2放熱部材14が、記録媒体が搬送される面とは異なる面である、放熱体1の一方の側面および他方の側面上に形成されている。それにより、第2放熱部材14が剥離する可能性を低減することができる。
<第6の実施形態>
図13、14を用いてサーマルヘッドX6について説明する。
サーマルヘッドX6は、ヘッドカバー16が、主面16aと、接続部16bと、斜面16cと、突出部16と、発熱部9の配列方向における両端部に延伸部16eとを備えている。そして、ヘッドカバー16の接続部16b、主面16d、および延伸部16e上に第2放熱部材14が設けられている。
ヘッドカバー16は、延伸部16eが、発熱部9の配列方向における両端部に配置されており、主面16a、接続部16b、および斜面16cに接続されている。そのため、ヘッドカバー16は、箱形形状をなしている。
延伸部16eは、放熱体1の台部1a上に接するように配置されており、放熱体1の突起部1bに合わせた形状に切欠部(不図示)を有しており、切欠部に放熱体1の突起部1bが接するように放熱体1上に配置されている。そのため、ヘッド基体3は、放熱体1と
ヘッドカバー16とに取り囲むように設けられており、封止されている。なお、放熱体1と延伸部16eとを接着材により接合してもよい。
第2放熱部材14は、ヘッドカバー16の接続部16bおよび主面16a上に設けられており、一端部が放熱体1の一方の側面に接続され、他端部が放熱体1の他方の側面に接続されている。それにより、第2放熱部材14と、ヘッド基体3および放熱体1との接着面積が増加することにより、第2放熱部材14が強固に固定することができる。
また、サーマルヘッドX6は、記録媒体(不図示)と接触しやすい部位である斜面16cに、第2放熱部材14が設けられていない。そのため、第2放熱部材14と記録媒体とが接触して、第2放熱部材14が剥離する可能性を低減することができる。
サーマルヘッドX6は、延伸部16eが放熱体1に接続された状態で、放熱体1上にヘッドカバー16が設けられている。そのため、体積が小さく熱容量の小さいヘッドカバー16と、体積が大きく熱容量の大きい放熱体1とを熱的に接続することができる。それにより、ヘッドカバー16の熱容量を見かけ上増加させることができ、ヘッド基体3からヘッドカバー16に効率よく熱伝導させることができる。その結果、ヘッドカバー16上に設けられた第2放熱部材14により、効率よく熱放射することができる。
また、サーマルヘッドX6は、ヘッド基体3が、ヘッドカバー16と放熱体1とにより封止されている。そのため、印字カスあるいはゴミがヘッド基体3の側面から侵入する可能性を低減することができる。
また、第2放熱部材14が延伸部16e上に設けられており、ヘッドカバー16から放熱体1に熱伝導する間に、第2放熱部材14により空気中に熱放射させることができる。
なお、延伸部16eは、例えば、接続部16bおよび斜面16cから、放熱体1に向けて下方に延びる形状としてもよく、延伸部16eの長さは、ヘッドカバー16から放熱体1の上端までの長さであってもよく、ヘッドカバー16から放熱体1の下端までの長さであってもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZを示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X6をサーマルプリンタZに用いてもよい。また、サーマルヘッドX1〜X6を適宜に組み合わせてもよい。
例えば、共通電極17を基板7の第1端面7aおよび第2主面7d上にのみ形成してもよい。この場合、基板7の第2主面7d上に形成された共通電極17とFPC5のプリント配線5bとを、別途設けたジャンパー線によって接続すればよい。
また、サーマルヘッドX1では、FPC5を介してヘッド基体3の基板7上に設けられた共通電極17およびIC−FPC接続電極21を外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続しているが、これに限定されるものではない。例えば、FPC5のように可撓性を有するフレキシブルプリント配線板ではなく、硬質のプリント配線板を介してヘッド基体3の各種配線を外部の電源装置等に電気的に接続してもよい。この場合、例えば、ヘッド基体3の共通電極17およびIC−FPC接続電極21とプリント配線板のプリント配線とをワイヤーボンディング、ACF接続あるいは半田接続等によって接続すればよい。また、FPC5あるいはプリント配線板を設けずに、基板7に直接コネクタを接続してもよい。
また、サーマルヘッドX1では、図3,4に示されるように、電気抵抗層15が、蓄熱層13上のみならず、基板7の第1主面7cおよび第2主面7d上にも設けられているが、基板7の第1端面7a上のリード部17cと個別電極層19とに接続されている限り、これに限定されるものではない。例えば、蓄熱層13上にのみ設けられていてもよい。また、基板7の第1端面7a上の共通電極17および個別電極19を蓄熱層13上に直接形成し、蓄熱層13上の共通電極17の先端部と個別電極19の先端部との間の領域にのみ電気抵抗層15が設けられていてもよい。
また、図2に示すサーマルヘッドX1では、複数の発熱部9の全てが共通電極17に共通して接続されているが、これに限定されるものではない。例えば、共通電極17の代わりに、隣接する2つの発熱部9ごとに発熱部9を接続する発熱部接続配線(不図示)によって、複数の発熱部9を接続してもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドX1では、発熱部9が、蓄熱層13上で、基板7の厚さ方向の略中央に設けられているが、蓄熱層13の第1領域よりも基板7の第2主面7d側に、発熱部9が設けられていない蓄熱層13の第2領域を設けることができる限り、これに限定されるものではない。例えば、発熱部9が蓄熱層13上で、基板7の厚さ方向の略中央から基板7の第1主面7c側にずれた位置に配置されていてもよい。
また、上記実施形態のサーマルヘッドX1では、図3,4に示すように、基板7の第1端面7aが凸状の曲面形状を有しているが、基板7の第1端面7aの表面形状および傾斜角度は特に限定されるものではなく、任意の形態をとることができる。例えば、基板7の第1端面7aは、平面形状であってもよいし、屈曲した面で形成されていてもよい。また、基板7の第1主面7cおよび第2主面7dと基板7の第1端面7aとのなす角度が直角ではなく、鈍角または鋭角であってもよい。
さらにまた、発熱部9が基板7の第1端面7aに設けられた例を示したがこれに限定されるものではない。発熱部9が、第1主面7cに設けられた平面ヘッドにおいても、本発明を適用することができる。
また、本明細書において、発熱部9を薄膜形成技術により形成する薄膜ヘッドを用いて説明したが、発熱部9を厚膜形成技術により形成する厚膜ヘッドに本発明を用いてもよい。