JP6133384B2 - 寒天乾燥物、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、寒天乾燥物、及びその製造方法に関するものであり、特に、溶解性が改善された寒天乾燥物、及びその製造方法に関する。
寒天は、通常、テングサ属、オゴノリ属などの海藻から寒天成分を抽出し、濾過、冷却、凝固、脱水、乾燥、粉砕の工程を経て製造される。このようにして製造された粉末寒天は強固なゲル化特性を有しているが、水への溶解性が低く、例えばその1%溶液を調製する場合、100℃の高温で約10分間の加熱を必要とする。そのため、現在までに寒天の溶解性を改善するいくつかの方法が検討されてきた。
例えば、水に溶解され混錬された寒天混錬物をエクストルーダーによって発泡処理する寒天の製造方法が知られている(特許文献1)。
特開2006−296354号公報
しかしながら、いずれの寒天の溶解性改善方法においても、80℃以上の加温によってはじめて溶けやすさが発現するものが殆どである。従って、嚥下食のようなポットのお湯(70℃程度)で溶解させる用途に適するゼリー強度を十分に発現できないのが現状である。これらの方法による易溶性寒天の殆どは、溶解する際に沈みやすいため、加熱時に焦げ付く問題が生じる。また、仮にゼリー強度が発現しても、すべてが溶けないため、口にした時にざらつきを感じて不快である。
一方、焦げ付き防止策として、上記特許文献1に記載の発明においては、発泡処理によってかさ比重が小さく、水に浮き、沈む前に溶けることから加熱時に焦げ付かないように改善されている。しかし、水に浮く(沈まない)ため、溶解時に攪拌機の軸に付着するなどの作業性不良が想像される。また、かさ比重が小さいため、計量時や混合機への投入時に粉の飛散が危惧される。
さらには、この寒天を他の素材と予め混合しようとした場合、かさ比重の違いから上手く混合せず、混合造粒するなどの二次加工が必要となり、混合製剤の開発には不向きな特性となる。
そこで、本発明は、沈みやすく、かつ、溶けやすい寒天及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明者は、押出成形機、及びその処理条件について鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
すなわち、本発明の寒天乾燥物の製造方法は、寒天100質量部に対して、水100〜300質量部の加水量で寒天を加水する工程と、加水した前記寒天を押出機で発泡させないように熱処理し、前記寒天を溶解し、固形化する工程と、前記固形化した寒天を粉砕乾燥機で粉砕、乾燥する工程とを、含むことを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記溶解し、固形化した後、前記寒天のランダムコイルの会合が生じる前に前記粉砕乾燥機で粉砕、乾燥することを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記寒天を溶解し、固形化する工程において、前記寒天を、1g/cm以上のかさ比重を有し、球状で、かつ、弾力性を有する吐出物とすることを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記粉砕、乾燥する工程において、前記吐出物を、0.46〜0.8g/cmのかさ比重を有する寒天乾燥物とすることを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記押出機は、タンデム型、1段型若しくは多段型、又は単軸若しくは2軸であることを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記2軸の場合において、前記押出機のスクリューは、同方向又は異方向回転スクリューであることを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記粉砕乾燥機は、気流粉砕乾燥機であることを特徴とする。
本発明の寒天乾燥物によれば、沈みやすく、かつ、溶けやすい(焦げ付かない)寒天を提供することが可能であり、例えば、嚥下食のようなポットのお湯で溶解した際にもざらつかない粒度に調整された寒天、及びその製造方法を提供することができるという有利な効果を奏する。
図1は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水100%の場合である。 図2は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水200%の場合である。 図3は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水300%の場合である。 図4は、吐出物の断面を示す図である。空隙は認められないのが分かる。 図5は、紅藻類から抽出された寒天粉末と、本発明の寒天乾燥物(加水100%)との、性状の違いを示す図である。図5(a)は、紅藻類から抽出された寒天粉末、(b)は本発明の寒天乾燥物を、それぞれ示す。本発明の寒天乾燥物の寒天乾燥物は、同じメッシュパスを通して条件を同じくしても、前記紅藻類から抽出された寒天又は寒天粉末と比較して、サイズばらつきが大きいことが分かる。 図6は、一実施態様における本発明の寒天乾燥物(粉末化したもの) 3gを水200mlを入れた500ml容ビーカーに投入後、液面の粉末消失時間と粉末の粒度との関係を示す図である。
本発明の寒天乾燥物の製造方法は、寒天を加水する工程と、加水した前記寒天を押出機で発泡させないように熱処理し、前記寒天を溶解し、固形化する工程と、前記溶解した寒天を粉砕乾燥機で粉末化する工程とを、含むことを特徴とする。本発明において、寒天には、粉末状の寒天、すなわち寒天粉末も含まれる。また、寒天は、通常、紅藻類から抽出することができる。紅藻類とは、例えば、テングサ(天草)、オゴノリなどを含む。本発明において適用可能な寒天は、従来の製法により得られた寒天、すなわち、海藻の精製、配合、煮熟、ろ過、凝固、凍結、融解等を経て得られるものや、工業的に得られる粉末寒天を含む。
本発明に適用可能な粉砕、乾燥装置は、数マイクロメーターオーダーまで微細化することを目的とした微粉砕機に分類されるものが適しており、例として、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミルなどがある。これらにヒーターなどで加熱した、あるいは加熱していないエアを供給、または吸引させることにより、粉砕と乾燥を行うことができる。
また、好ましい態様において、前記粉砕乾燥機は、気流粉砕乾燥機であることを特徴とする。なお、気流粉砕乾燥機とは、例えば、気流を利用した粉砕機であり、円筒形槽に投入された原料を、ヒータで加熱し、ロータの打撃により円筒形槽の内部で飛散させ、この原料がロータの回転により発生する気流に伴い流動する過程で、原料は、相互に揉み合わされることにより更に細かい粉体となるよう粉砕される機械を挙げることができる。また、気流粉砕は、空気を同伴する粉砕方式ゆえ、粘弾性物質や熱可塑性のある物質の粉砕に適する利点を有する。なお、本発明においては、気流粉砕機でなくても、空気を同伴する粉砕方式のものであれば利用可能である。
本発明においては、寒天を加水する工程を含む。本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記加水量は、前記寒天100質量部に対して、水60〜300質量部であり、ざらつきをほとんど感じさせない程度に食感を向上させるという観点から、さらに好ましくは、前記加水量は、前記寒天100質量部に対して、水100〜300質量部である。
また、本発明においては、加水した前記寒天を押出機で発泡させないように熱処理し、前記寒天を溶解し、固形化する工程を含む。これは、発泡処理すると、特許文献1にあるように、寒天乾燥物は、水に浮く(沈まない)ため、攪拌機の軸に付着するなどの作業性不良が想像され、また、かさ比重が小さいため、計量時や混合機への投入時に粉の飛散が危惧され、さらには、この寒天を他の素材と予め混合しようとした場合、かさ比重の違いから均一に混合せず、混合造粒するなどの二次加工が必要となり、混合製剤の開発には不向きな特性となるためである。
一般に、寒天を加水して加熱、溶解した場合、寒天中に存在する鎖状高分子は単一鎖分子(ランダム状態)として比較的大きい自由度で挙動していることが判明している。このランダム状態から、冷却すると、温度降下によるゲル化過程の段階で二重らせん構造(ダブルへリックス)を組み、更にはそれらが集合して三次構造を構築して分子的に安定なゲル状態に移行していく。このように高次構造を組む段階で、溶解した寒天中に共存する水分子との水素結合により極めて強固な架橋構造を形成し、他に例を見ない安定な分子形態に変化して極めて特異的なゲル構造を構築していく。
そこで、本発明者らは、寒天を溶解した段階、すなわち、ランダムコイルを形成させている状態で、脱水、乾燥、粉砕することに着目して、易溶性寒天を完成させることを見出したものである。本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記溶解し、固形化した後、前記寒天のランダムコイルの会合が生じる前に前記気流粉砕乾燥機で粉砕、乾燥することを特徴とする。
なお、本発明の好ましい実施態様において、押出機吐出物を直ちに粉砕することが好ましい。直ちに行わない場合には、製造効率、易溶化度ともに低下する虞がある。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記寒天を溶解し、固形化する工程において、図4に示すように、前記寒天を、1g/cm以上のかさ比重を有し、球状で、かつ、弾力性を有する吐出物とする。なお、この吐出物は、弾力性を有し、空隙が認められないことが分かる。この吐出物は、後述する一定のかさ比重を有する寒天乾燥物を得るのに、非常に有利に働く。前記吐出物は、1g/cm以上のかさ比重を有し、球状で、かつ、弾力性を有するのに対して、発泡処理された吐出物は、通常、棒状に連続して金型から押し出されるものであるため、発泡処理のものは切断処理が必要である。一方、本発明において、吐出物は、切断は不要であり、効率的に粉砕、乾燥工程に供することができる。なお、かさ比重の測定については、例えば、筒井理化学器械(株)製(装置:A.B.D.粉体特性測定器 ABD-100型)を用いて行うことができる。かさ比重の測定は、例えば、以下の通りである。1)安息角の測定の時と同様にサンプルを試料用ホッパーに投入し、ヘラにてよく撹拌する。2)試料排出ロートをセットする。3)測定円台に試料容器、例えば、100mL(予め、試料容器の重量を測定)をのせ、供給調節ダイヤルを0にして、供給スイッチをONにする。4)約30〜60秒で試料容器がいっぱいになるように、供給調節ダイヤルを調整して、供給を行う。5)試料容器がいっぱいになったら、供給スイッチをOFFにする。試料容器の山になった部分をすり切りヘラですり切り、試料容器の周りに付着したサンプルを払落し、重量を電子天秤にて計量する。
疎充填かさ密度(かさ比重)=試料の重量(g)/試料容器の容量(100mL)(g/mL)
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記粉末化する工程において、前記吐出物を、0.46〜0.8g/cmのかさ比重、好ましくは、0.52〜0.73g/cmのかさ比重を有する寒天乾燥物とすることを特徴とする。このようなかさ比重を有する本発明の寒天乾燥物は、水に沈むため、攪拌機の軸に付着するなどの作業性不良が軽減され、また、計量時や混合機への投入時に粉の飛散も低減され、さらには、この寒天を他の素材と予め混合しようとした場合、混合造粒するなどの二次加工も不要で、扱いやすい特性を有する。なお、かさ比重の測定方法については、上述の説明を参照することができる。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記紅藻類から抽出された寒天と比較して、前記寒天乾燥物のサイズばらつきが大きいことを特徴とする。一般に、寒天は、造粒処理されているか、造粒処理されていない場合にあっても、上述のように、高次構造を組む段階で、溶解した寒天中に共存する水分子との水素結合により極めて強固な架橋構造を形成し、他に例を見ない安定な分子形態に変化(会合ヘリックス化)して極めて特異的なゲル構造を構築している関係上、同じメッシュパスを用いて、粒度調整しても、サイズのばらつきが小さい特性を有する。
一方、本発明の寒天乾燥物は、サイズばらつきが大きく、より細かい粒子も多数存在して、処理前の前記紅藻類から抽出された寒天と比較して、寒天表面の全表面積は大きい点を挙げることができる。なお、本発明の寒天乾燥物においては、最終製品の寒天が、ざらつかないように、粒度を規定することも可能である。すなわち、本発明においては、易溶性のほかに、利点として、ポットのお湯で溶かす場合に、操作中に時間を要したり、ポットの加温、保温機能の差によって、お湯の温度にばらつきが生じて溶け残ることが容易に想定されるが、そのような場合でも不快なざらつき感がないように粒度を調整することが可能である。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記押出機は、タンデム型、1段型若しくは多段型、又は単軸若しくは2軸であることを特徴とする。なお、本発明においては、寒天を発泡させないようにするという観点から、極力加圧を避けることが好ましい。押出時に、圧力を加えると、寒天が加圧発泡する虞があり、水に浮いてしまって所望の効果を発揮できない虞がある。
また、本発明の寒天乾燥物の製造方法の好ましい実施態様において、前記2軸の場合において、前記押出機のスクリューは、同方向又は異方向回転スクリューであることを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物は、発泡しておらず、水に沈む寒天乾燥物であって、前記紅藻類から抽出された寒天又は寒天粉末と比較して、前記寒天乾燥物のサイズばらつきが大きいことを特徴とする。一般に、寒天又は寒天粉末は、造粒処理されているか、造粒処理されていない場合にあっても、上述のように、高次構造を組む段階で、溶解した寒天中に共存する水分子との水素結合により極めて強固な架橋構造を形成し、他に例を見ない安定な分子形態に変化(会合ヘリックス化)して極めて特異的なゲル構造を構築している関係上、同じメッシュパスを用いて、粒度調整しても、サイズのばらつきが小さい特性を有する。
一方、本発明の寒天乾燥物は、サイズばらつきが大きく、より細かい粒子も多数存在して、処理前の前記紅藻類から抽出された寒天と比較して、寒天表面の全表面積は大きい点を挙げることができる。
また、本発明の寒天乾燥物の好ましい実施態様において、前記寒天乾燥物は、0.46〜0.8g/cmのかさ比重、好ましくは、0.52〜0.73g/cmのかさ比重を有することを特徴とする。
また、本発明の寒天乾燥物の好ましい実施態様において、前記寒天乾燥物の粉末の粒度は、38μmパス〜670μmパスの間、より好ましくは200μmパス以下であることを特徴とする。このような粒度範囲にすれば、一定時間内に沈むように調整でき、沈降しても焦げ付く前に溶解可能である。また、好ましい態様において、ポットのお湯で溶け残ってもざらつきをより確実に感じにくくするという観点から、前記寒天乾燥物の粉末の粒度は、より好ましくは100μmパス以下とする。
ここで、本発明の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
実施例1〜4
まず、紅藻類から抽出された寒天粉末を、60、100、200、300%加水した場合について、調べた。寒天粉末((株)タイショーテクノス TS寒天ISP-9)に所定量の水を加えて湿潤混和した後、二軸同方向回転の押出機に供給し、発泡させないように熱処理した。熱処理条件は170℃、スクリュー回転数は200rpmとした。熱処理した寒天はカッターなどにより切断することなく、本実施例に係る空隙を含まず弾力性を有する球状の寒天を得た。出来上がった本実施例に係る球状の寒天は、押出機から吐出後、直ちに乾燥粉砕機で乾燥粉砕を行った。乾燥粉砕条件は乾燥温度80℃とした。乾燥粉砕した寒天は振動篩機で篩別し、180μm以下となるように調製した。寒天又は寒天粉末を溶解した。前記溶解した寒天又は寒天粉末を気流粉砕乾燥機で粉末化した。上記寒天乾燥粉砕物について、下記[寒天乾燥粉砕物の溶解性評価基準]に従って評価を行った。比較例1としてTS寒天ISP−9も試験した。これらの結果を表1に示す。
なお、表1中の溶解性I及びIIについては以下の通りである。
[寒天乾燥粉砕物の溶解性評価基準]
(1)溶解性I
評価対象である寒天5gを濃度1重量%となるように調製し、100℃に達するまで、ならびに80℃で10分間溶解する。次にステンレスカップ5つに分注し、時計皿をのせて20℃の水槽中で2時間冷却する。その後、20℃の恒温槽で15時間保管し、凝固させたゲルについて、レオメーターを用い、表面積1cmのプランジャーにて破断強度(ゲル強度)を測定する。即ち、寒天の溶解性は、上記ゲル強度(g/cm)から下記の式に従って算出した。
溶解性I(%)=(80℃、10分間溶解時のゲル強度)/(100℃に達するまで溶解時のゲル強度)×100
(2)溶解性II
評価対象である寒天0.7gをデキストリン2.8gと混合し、ポットのお湯を想定した73℃のお湯37.5gに加え、20秒間攪拌する。次に室温(25℃)の牛乳107gを加えて再び20秒間攪拌し、ステンレスカップ2つに分注し、20℃の水槽中で20分間冷却する。凝固させたゲルについて、レオメーターを用い、表面積1cmのプランジャーにて破断強度(ゲル強度)を測定する。
表1に示した実施例1〜4、比較例1について、溶解性IIでゲル化した実施例2〜4に関して、ゲル化物を試食した結果、いずれも多少のざらつきを感じた。
また、表1から、前述の押出条件においては、加水率については、寒天に対して60%加水(寒天100に水60)して押出機で処理して易溶性化しなかった(実施例1)のに対して、100、200、300%加水した寒天を押出機で処理した結果、すべて易溶性化し、そのなかでも100%加水が最良であった。
次に、前記の実施例2〜4について追加試験データを表2に示す。即ち、実施例2〜4の寒天について、150μm、120μm、100μmの篩網で篩別し、篩網パス品について溶解性IIを再度試験し、ゲル化物を試食してざらつき感が残るかを確認した。
表2の結果、180μmパスではざらつきが感じられたが、150μmパス、より好ましくは100μmパスとすることで、ざらつきは殆ど感じられなくなり、また、溶解性IIについても良好な強度が得られた。
次に、前記の実施例2〜4について追加データを図1〜3に示す。
まず、吐出物の特徴について調べた。実施例2〜4のように製造した吐出物について、加水100%、200%、及び300%の様子を、図1〜図3に示す。図1は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水100%の場合である。図2は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水200%の場合である。図3は、本発明の一実施態様における吐出物を示す。加水300%の場合である。図1〜3から、実施例1〜3のように製造した本発明の吐出物は、球状で弾力性を有する。また、いずれの吐出物の比重も、1g/cmであり、水に浮かない性質を有していた。
また、図4は、吐出物の断面を示す図である。空隙は認められないのが分かる。これは、本発明においては、発泡処理を行わないためである。上記の水に浮かない性質はこのためである。
次に、前記の実施例2〜4について追加データを示す。前記の表2に示した180μmパスと100μmパスの寒天について、かさ比重を測定した。かさ比重とは、単位見かけ容積当たりの寒天の重量のことをいい、容積がわかる容器に寒天を自然落下により投入して重量を測定し、その重量を容積により割ることによって求めることができる。篩別して得られた180μmパスの本発明の寒天乾燥物のかさ比重は、0.54〜0.73g/cm3であり、篩別して得られた100μmパスの本発明の寒天乾燥物のかさ比重は、0.52〜0.60g/cm3であった。よって、粒度を小さくすることで、かさ比重の値も小さくなる傾向が確認された。一方、従来文献によると、かさ比重が0.45g/cm3よりも大きい場合は吸水により寒天が容易に沈むと記載されており、本発明の寒天乾燥物は、水に沈みやすい性質であると類推され、図4に示したとおり、発泡処理による空隙が形成していないことがこの要因であると考える。
また、本発明の寒天乾燥物について、液面の粉末消失時間と粉末の粒度との関係について調べた。図6は、一実施態様における本発明の寒天乾燥物(粉末化したもの)3gを200mlの室温の水に投入後、液面の粉末消失時間と粉末の粒度との関係を示す図である。その結果、本発明の寒天乾燥物は、溶解性IIでざらつきを感じない100μm程度までは液面の粉末が消失する時間も短時間であるが、100μm以下になると液面の粉末が消失する時間が急激に長くなる傾向(水に浮きやすい傾向)が確認できる。従って、粒度は100μmパスが最も望ましく、水に沈みやすい性質を保持するためには、かさ比重が0.5g/cm3以下とならないようにすることが望ましい。
また、吐出後、連続的に粉砕乾燥しない場合は、吐出物の品温が低下し、水分が蒸発して粉砕しにくくなる虞があることが判明した。これは加水100、200、300%の試験のときに、微粉の割合が100<200<300の順に多くなっており、保水量が多ければ球状寒天が柔らかくなり、粉砕されやすい、と考えられる。吐出物を乾燥させた(かなり硬化した)後に同じ粉砕機で粉砕すると、粉砕効率が悪化することも判明した。
実施例5
また、紅藻類から抽出された寒天粉末と、本発明の寒天乾燥物(加水100%)との、性状の違いについて調べた。図5は、紅藻類から抽出された寒天粉末と、本発明の寒天乾燥物(加水100%)との、性状の違いを示す図である。図5(a)は、紅藻類から抽出された寒天粉末、(b)は本発明の寒天乾燥物を、それぞれ示す。本発明の寒天乾燥物の寒天乾燥物は、同じメッシュパスを通して条件を同じくしても、前記紅藻類から抽出された寒天又は寒天粉末と比較して、サイズばらつきが大きいことが分かる。
実施例6
また、寒天((株)タイショーテクノス TS寒天ISP−9)に300%の水を加えて湿潤混和した後、単軸タンデム型の押出機に供給し、発泡させないように熱処理した。熱処理条件は170℃、スクリュー回転数は200rpmとした。熱処理した寒天はカッターなどにより切断することなく、本実施例に係る空隙を含まず弾力性を有する球状の寒天を得た。出来上がった本実施例に係る球状の寒天は、押出機から吐出後、直ちに乾燥粉砕機で乾燥粉砕を行った。乾燥粉砕条件は乾燥温度80℃とした。乾燥粉砕した寒天は振動篩機で篩別し、180μm以下となるように調製した。上記寒天乾燥粉砕物について、下記[寒天乾燥粉砕物の溶解性評価基準]に従って評価を行った結果、溶解性Iが93%、溶解性IIが18g/cm2であった。よって、押出機のタイプによらず、本発明の易溶性寒天が得られることが分かった。
また、寒天乾燥物の粒度は前述の水に浮く、或は、かさ比重に関係するほか、ポットのお湯で溶かす嚥下食、流動食プディング材のような用途において、ポットのお湯の温度が低下しすぎた場合に、寒天の粒度が粗いと溶け残りやすく、しかも、口の中でざらつきを感じる場合がある。
このように、本発明の一実施態様によれば、乾燥粉末寒天を加水後、押出成形機で発泡させないように熱処理する工程と、粉砕乾燥機で微粉末化する工程を連続的に行い、粉砕品の粒度を100μm以下、かさ比重を0.5g/cm以上に管理することで、水に沈みやすく、ポットのお湯(73℃付近)にも容易に溶解し、寒天を含む対象物が良好にゲル化する寒天乾燥物であって、仮にポットのお湯の温度が低下しすぎた場合でも、溶け残った寒天が口の中でざらつきを感じることのない、易溶性寒天、ならびにその製造方法を提供することが可能であることが判明した。
近年、寒天成分については、嚥下食のような用途が要求され、広範な分野において応用可能である。

Claims (7)

  1. 寒天100質量部に対して、水100〜300質量部の加水量で寒天を加水する工程と、加水した前記寒天を押出機で発泡させないように熱処理し、前記寒天を溶解し、固形化する工程と、前記固形化した寒天を粉砕乾燥機で粉砕、乾燥する工程とを、含む寒天乾燥物の製造方法。
  2. 前記溶解し、固形化した後、前記寒天のランダムコイルの会合が生じる前に前記粉砕乾燥機で粉砕、乾燥することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記寒天を溶解し、固形化する工程において、前記寒天を、1g/cm以上のかさ比重を有し、球状で、かつ、弾力性を有する吐出物とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記粉砕、乾燥する工程において、前記吐出物を、0.46〜0.8g/cmのかさ比重を有する寒天乾燥物とすることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 前記押出機は、タンデム型、1段型若しくは多段型、又は単軸若しくは2軸である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記2軸の場合において、前記押出機のスクリューは、同方向又は異方向回転スクリューである請求項5記載の方法。
  7. 前記粉砕乾燥機は、気流粉砕乾燥機である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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