JP5417614B2 - ハイドロコロイド組成物及びそれを含む食品 - Google Patents

ハイドロコロイド組成物及びそれを含む食品 Download PDF

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本発明は、ゲル強度が高く、耐酸性及び耐冷凍性を有し、冷凍して解凍した後のゲル強度も高いゲルを作るハイドロコロイド組成物及びそれを含む食品に関する。
寒天に水を加え加熱溶解して、冷却凝固させて作製したゼリーは、広く流通している。しかし、寒天ゼリーは、酸性状態で分解されやすく、ゲル強度が低下してしまうという問題がある。これは、寒天の構成糖である1,3位で結合したβ−D−ガラクトピラノースと1,4位で結合した3,6アンヒドロ−α−L−ガラクトピラノースの結合が酸により分解されやすく、寒天の低分子化がおこるためのである。このため、酸性のゼリーやドリンクゼリーが作りにくく、また、酸性状態で熱殺菌を行うことによりゼリー強度が低下してしまうなどの問題がある。さらに、酸性状態では、経時変化で劣化しやすいため、長期の賞味期間表示が難しく、医薬品など3年間の使用期限が原則である商品への使用も難しいなどの問題がある。
また、寒天ゼリーは、寒天の特性である冷凍変性が大きく、冷凍により組織破壊して解凍したときにゼリーを復元できず離水して使用できないという問題がある。冷凍で流通できるゼリーが存在すれば、長期間保存できるため商業的価値は高く、熱に弱い香料などの成分も添加でき、食味的にも経時変化がなく良いものになる。耐冷凍性を高めるためには、高糖度にして固形分を上げたり、増粘剤成分を加えたりするなどの手法が考えられる。しかし、糖度を上げると甘味が強すぎて用途が限られる。一方、増粘剤を加えると、ゼリーの糊状感が強く食感が悪いものになってしまう。
特許文献1には、平均分子量10000〜200000の寒天と、ローカストビーンガム、タラガム、コンニャクマンナン及びカシアガムのうち少なくとも1種以上からなる糊料とを含むことを特徴とする寒天組成物が、冷凍耐性を有することが記載されている。
特開2003−23977
しなしながら、特許文献1に記載されている寒天組成物は、ゲル強度が低いという問題を有する。そこで、本発明は、ゲル強度が高く、耐酸性及び耐冷凍性を有し、冷凍して解凍した後のゲル強度も高いゲルを作るハイドロコロイド組成物及びそれを含む食品を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、従来にない高強度で、高分子量であり分子量分布の小さい寒天を作り出すことに成功し、この寒天とガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも1以上とを含ませると、強い相乗効果があることを発見した。このハイドロゲル組成物は、ゲル強度が高く、かつ耐酸性及び耐冷凍性にすぐれ、冷凍して解凍した後のゲル強度も高い特性を有している。すなわち本発明は、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布Mw/Mnが13以下である寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも1以上とを含むことを特徴とするハイドロコロイド組成物である。また、本発明は、前記ハイドロコロイド組成物を含む食品である。なお、本願明細書においては、ゲル組成物とはハイドロコロイド組成物を水に溶解して作製したゲルのことである。
以上のように、本発明によれば、ゲル強度が高く、耐酸性及び耐冷凍性を有し、冷凍して解凍した後のゲル強度も高いゲルを作るハイドロコロイド組成物及びそれを含む食品を提供することができる。
寒天とローカストビーンガムとの比率と、ゲル強度との関係を示すグラフである。
本発明において用いられる寒天は、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上であり、1600g/cm以上であることがより好ましく、1700g/cm以上であることがさらに好ましい。前記範囲よりゲル強度が低いと、ガラクトマンナンやグルコマンナンとの相乗作用が弱くなり、ゲル強度が下がるばかりかガラクトマンナンやグルコマンナンの持つ糊状感が出てしまう。
本発明において用いられる寒天は、重量平均分子量Mwが600000以上であり、700000以上であることがより好ましく、800000以上であることがさらに好ましい。上記範囲より重量分子量が低いと、ガラクトマンナンやグルコマンナンとの相乗作用が弱くなり、ゲル強度が下がる。分子量分布はMw/Mnが13以下であり、9以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。本発明においては、特に低分子量成分が少ないことが特長である。上記範囲より分子量分布が広いと、ガラクトマンナンやグルコマンナンとの相乗作用が悪い。
分子量分布(Mw/Mn)は、Mwが重量平均分子量、Mnが数平均分子量を表し、次の式で求めることができる。
〔式1〕
(Mpは重合度Pの分子の分子量で、Npはこれが試料中に含まれる個数)
分子量分布(Mw/Mn)は、値が大きいものほど分子量分布が広いことを示している。
本発明において用いられる寒天は、例えば、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、アルカリ処理後よく水洗し、それを緩衝剤を含む熱水で抽出して濾過した後、濾液を冷却してゲル化させ、そのゲル化物を水に浸漬し、脱水及び乾燥させることにより得ることができる。以下、詳述する。
第1に、海藻原料をアルカリ処理する。一般的には、海藻原料を0.5〜20重量%のNaOHやKOHなどの強アルカリ水溶液中に温度20〜100℃にて0.5〜48時間浸漬する。
第2に、アルカリ処理により、原料の海藻に浸透したり付着したりしたアルカリ液を水を用いて洗浄処理し、アルカリ成分を除去する。
第3に、寒天成分を熱水抽出する。一般的には、pH7.4〜8.0、温度70〜120℃に調整した熱水を用いて、1〜3時間熱水にて寒天を抽出する。このときpHは、抽出開始直後は前記調整したpH範囲であるが、抽出が進むにつれて徐々に低下してpH7.4以下なってしまう。このため、寒天の加水分解が生じ、低分子化される。この低分子量成分により、生成する寒天のゲル強度が下がり、重量平均分子量も小さくなり、さらには分子量分布の幅も広くなる。特に工業生産において大量の海藻から寒天を抽出する場合、pHは抽出釜内で時間差変動があり、均一にコントロールすることは非常に難しい。その手段として、抽出中もpH7.4〜8.0の値に常に維持し安定化するために、熱水にpH変動を小さくする目的で緩衝剤を添加するのが好ましい。緩衝剤としては、弱酸性と強アルカリ性の塩、又は弱アルカリ性の塩、及びそれらの組合せ、並びに弱アルカリ性の塩と弱酸性の塩との組合せなどが挙げられ、具体的には、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、リン酸二カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第一リンナトリウム、第一リン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロピン酸四カリウム、ピロリン酸水素ナトリウム、ピロリン酸水素カリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、及びクエン酸ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤は、熱水のpHが変動しないようにできる程度の量を添加すればよい。これにより、従来の強アルカリである水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用したpH調整よりも、pHの変動が少なく、アルカリによる着色褐変化が少なくなる。
第4に、抽出物を濾過する。濾過は、例えば、フィルタープレス等で加圧濾過を行い、濾液を分離する。
第5に、濾液を冷却する。冷却することにより、濾液は、ゲル化する。
第6に、ゲル化したゲル化物を水に浸漬する。浸漬時間は12〜48時間であるのが好ましい。水は適当な時間に入れ替えてもよい。ゲル化物を水に浸漬することにより、熱水抽出することにより生じた低分子量成分を水相に溶出させ、ゲル化物から除去することができる。これにより、分子量分布の狭い寒天を得ることができる。従来、寒天中の低分子量成分を積極的に除去することは、実際の生産スケールの規模では難しく、行われていない。このため、通常の寒天には低分子量成分が多く存在し、褐変、食感低下などの問題が生じている。本発明において用いられる寒天は、ゲル化物を水に浸漬するという生産スケールでも行える方法により、低分子量成分が除去されている。ゲルの水漬けによる低分子量成分の除去が有効なのは、熱水抽出の際に緩衝剤を用いているため、高いゲル強度を有する高分子量のゲル化物となり、水漬けで崩壊や溶解せずゲル状態を維持できるからである。ゲル化物を低濃度にするとゲルの網目構造は大きなマトリックスとなり、水溶性に近い低分子量成分が抜けやすくなる。水漬けの際のゲル化物の濃度は、0.2〜2.0重量%であることが好ましく、0.4〜1.2重量%であることがさらに好ましい。0.2重量%より低いと水漬けにおいてゲルを維持できず、2.0重量%を超えると低分子量成分が抜け難くなる。水漬けの際のゲル化物の濃度は、例えば、熱水抽出後に水を加える等によって調整することができる。
第7に、ゲル化物を脱水及び乾燥する。脱水する方法としては、ゲル化物を冷凍・解凍して脱水する方法、及びゲル化物を圧搾することにより脱水する方法などが挙げられる。乾燥する方法としては、一般的な乾燥方法が挙げられる。ゲル化物中の水分は、乾燥により、規定値(22重量%以下)まで水分を蒸発させるのが好ましい。
以上のようにして、本発明において用いられる寒天を得ることができる。得られた寒天は、粉砕機等を使用して粉末状やフレーク状に調整してもよい。
本発明において用いられる寒天は、高融点であるため、常圧においては沸騰させても完全溶解しない。完全溶解させるためには、加圧下100℃以上にて溶解する必要がある。これを常圧で溶解できるようにして使いやすくさせるために、特公昭63−005053、特開平6−153873、又は特開平01−153067等に記載の方法により易溶性にすることもできる。
本発明に係るハイロドロゲル組成物は、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも1以上を含む。ガラクトマンナンとしては、カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、及びこれらの低分子化物が挙げられる。グルコマンナンとしては、こんにゃく粉、及びこの低分子化物が挙げられる。低分子化物は、酵素や酸を使用して低分子化したものである。ガラクトマンナン又はグルコマンナンは、精製品でも未精製品であってもよい。
海藻から作られるカラギナンは、主にカッパ,イオタ,ラムダタイプに分類されるが、特にカッパタイプは、ガラクトマンナンやグルコマンナンと相乗作用を示しゲル強度が増すことが知られている。また、微生物から製造されるキサンタンガムも、ガラクトマンナンやグルコマンナンと相乗作用を示しゲル強度が増すことが知られているが、カラギナンはカリウムやカルシウムと反応しゲル強度が増すため、添加する素材により安定したゲルが作りにくいという問題がある。また、キサンタンガムとガラクトマンナンやグルコマンナンの溶液は粘性が高く、凝固点も高いため使用範囲が限られる。これらに対し、寒天は中性多糖類に属し、ガラクトマンナンやグルコマンナンを組み合わせても相乗作用を有さず、大幅にゲル強度が増すことがないと考えられていたが、本発明においては、特定の寒天を用いることにより、予想外にガラクトマンナンやグルコマンナンと相乗作用を示し、ゲル強度を高くすることができる。なお、特許文献1に示されているように、低強度寒天を使用した場合には、ガラクトマンナンと相乗作用を示し、ゲル強度が増すことが知られているが、これは、寒天強度がかなり低い特殊な場合であり、通常の寒天(ゲル強度400〜800g/cm程度)においては、相乗作用は示さずゲル強度は下がる。
本発明で用いられる寒天とガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも1以上とを含むことにより、相乗作用を示しゲル強度が増加する理由については、次のように考えられる。すなわち、高分子量で高ゲル強度の強固で大きなポアサイズを持つ3次元寒天分子鎖マトリックスに、ガラクトマンナンやグルコマンナン分子鎖が入り込む結果、寒天に適度な柔軟性を与えると共に、ガラクトマンナンやグルコマンナンの親水性が付加され、ハイドロゲル組成物に、ゲル強度、耐熱性、耐酸性、及び耐冷凍性が付与されることになる。重量平均分子量が600000より小さい寒天や、ゲル強度が1500g/cmより小さい寒天では、寒天の3次元ゲルマトリックスにガラクトマンナンやグルコマンナン分子が入り込むスペースがなく、寒天の分子鎖のマトリックス形成を弱めてしまい、構造に柔軟性を与えることができず、ゲル強度の低下が優先してしまうためと考えられる。
本発明に係るハイドロコロイド組成物中の寒天の配合量は、寒天、ガラクトマンナン、及びグルコマンナンの合計質量に対して、寒天が5〜95重量%であることが好ましく、40〜90重量%であることがさらに好ましく、60〜90重量%であることが特に好ましい。
本発明に係るハイドロコロイド組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、ジェランガム、澱粉、ゼラチン、プルラン、CMC−Na、及び添加剤が挙げられる。添加剤としては、甘味料、調味料、香料、酸味料、及び機能性成分などが挙げられる。
本発明に係るゲル組成物は、例えば、水に本発明に係るハイドロコロイド組成物を添加して、公知の方法によりゲル化させることにより得ることができる。
本発明に係るゲル組成物中の寒天の配合量は、一般的には、0.05〜2重量%である。ガラクトマンナン及びグルコマンナンの配合量は、一般的には、0.1〜2重量%である。
本発明に係るハイドロコロイド組成物を含むゲル組成物は、冷凍状態から解凍状態にした後のゲル強度が冷凍状態前の50%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましい。冷凍状態から解凍状態にした後のゲル強度とは、ゲル組成物100gを−20℃で24時間冷凍し、この冷凍品を20℃で解凍した後のゲル強度である。
本発明に係るハイドロコロイド組成物は、ハイドロコロイド組成物を1.5重量%含み、pH3.8に調製されたゲル組成物において、85℃にて30分の加熱処理を行った場合、ゲル強度残存率が70%以上であることが好ましい。ゲル強度残存率とは、((加熱処理後のゲル強度)/(加熱処理前のゲル強度))×100により求められる。
本発明に係る食品としては、デザートゼリー、アスピックゼリー、トコロテン、みつ豆、葛きり、冷凍食品、ドリンクゼリー、調味料ゼリー、フルイドゲル(固形物沈降防止)、細かいサイコロ状ゲル入り飲料、及びナパージュが挙げられる。
実施例及び比較例においては、以下の原料を用いた。
ウルトラ寒天AX−30:伊那食品工業社製 分子量50000,ゲル強度30g/cm
伊那寒天ZH:伊那食品工業社製 分子量360000,ゲル強度600g/cm
伊那寒天大和:伊那食品工業社製 分子量780000,ゲル強度600g/cm
伊那寒天S−7:伊那食品工業社製 分子量350000,ゲル強度700g/cm
伊那寒天S−8:伊那食品工業社製 分子量320000,ゲル強度800g/cm
伊那寒天S−10:伊那食品工業社製 分子量360000,ゲル強度1000g/cm
伊那寒天M−13:伊那食品工業社製 分子量550000,ゲル強度1300g/cm
伊那寒天T−1:伊那食品工業社製 分子量670000,ゲル強度1000g/cm
ローカストビーンガム:イナゲルL−15(精製品,伊那食品工業社製)
ローカストビーンガムA:イナゲルL−85(未精製品,伊那食品工業社製)
カシアガム:紀文フードケミファ社製
タラガム:タラガムA(伊那食品工業社製)
グアーガム:GR−10(伊那食品工業社製)
グアーガム(低分子):グアーガムGR−10(重量平均分子量796000)を50g秤量し、水3000gに溶解した。これにクエン酸2.5gを溶解し、90℃で5時間保持した後、1重量%のNaOH溶液で中和し、ドラムドライヤー(楠木機械社製、表面温度115℃)により乾燥し、粉砕して作製した。重量平均分子量は110000であった。
グルコマンナン:マンナン180(伊那食品工業社製)
キサンタンガム:ケルトロール(CPケルコ社製)
ゼラチン:GBL−250FM(新田ゼラチン社製)
(製造例1:寒天1)
テングサ(日本産)1kgを90℃の5重量%NaOH溶液20kgに2時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このテングサを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第二リン酸ナトリウムを6g添加し、pHを7.8に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して製造例1に係る寒天(寒天1)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
(製造例2:寒天2)
オゴノリ(日本産)1kgを90℃の5重量%NaOH溶液20kgに2時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このオゴノリを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第三リン酸ナトリウム3.5g及び第一リン酸ナトリウム2.5gを添加し、pHを7.5に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して製造例2に係る寒天(寒天2)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
(製造例3:寒天3)
オバクサ(日本産)1kgを90℃の5重量%KOH溶液20kgに2時間浸漬した。KOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このオバクサを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第二リン酸カリウム5.0g及び第一リン酸カリウム1.0g添加し、pHを7.9に調整した後、95℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して製造例3に係る寒天(寒天3)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
(製造例4:寒天4)
テングサ(日本産)1kgを95℃の7重量%NaOH溶液20kgに2.5時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このテングサを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝材として第二リン酸ナトリウムを6.5g添加し、pHを7.9に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して製造例1に係る寒天(寒天4)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
(製造例5:寒天5)
寒天1の5重量%分散液を高圧釜にて溶解し(115℃,5分)、ドラムドライヤー(楠木機械社製,ドラム表面温度121℃)にて乾燥後、粉砕することにより製造例5に係る寒天(寒天5)を得た。寒天5の1gを水100gに分散し97℃で5分間溶解したところ、目視により溶解が確認された。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
ゲル強度:日寒水式(寒天濃度 1.5重量%,溶解条件 110℃,10分)に従って測定した。
重量平均分子量(Mw):HPLCによるGPC法に従って測定した。具体的には、寒天0.3gを200mLの蒸留水に溶解しカラム(TOSOH TSK−GEL for HPLC, TSK−GEL GMPWXL)を使用して測定した。
分子量分布(Mw/Mn):重量平均分子量/数平均分子量により求めた。(1に近いほど分子量分布が狭い)なお、なお、Mnも同様にしてHPLC法により求めた。
(実施例1〜15,比較例1〜26)
表2乃至12に示した寒天及びローカストビーンガムを表2乃至12に示した配合量にて水99.5gに添加し、加熱溶解し(寒天1乃至4、及び伊那寒天M−13は110℃で5分間、寒天5、伊那寒天S−8、伊那寒天S−10、ウルトラ寒天AX−30、伊那寒天ZH、及び伊那寒天大和は97℃で10分間)、直径50mm、高さ60mmの容器に充填した。20℃で24時間放置して、ゲル組成物を得た。得られたゲル組成物について、ゲル強度、破断歪、耐熱性、耐酸性、及び耐冷凍性を以下のように測定した。結果を表2乃至12に示す。また、寒天とローカストビーンガムとの比率と、ゲル強度との関係をグラフにしたものを図1に示す。
ゲル強度:レオメーター(COMPAC−100,サン科学社製、プランジャー:1cm円柱、進入速度:20mm/分、測定温度:20℃)を使用して測定した。
破断歪:ゲル強度測定において、破断した時点における歪を以下の式により求めた。
破断歪=破断したときのプランジャーの進入距離(mm)/ゲル高さ60(mm)
耐熱性:ゲル組成物を110℃,10分間加熱して溶解し、溶解液を121℃で30分放置後、20℃に冷却しゲル強度を測定した。
耐酸性:ゲル組成物を110℃,10分間加温して溶解し、溶解後80℃にてクエン酸0.2重量%、クエン酸Na0.1重量%を添加することによりpH3.8とした後、85℃で30分放置後、20℃に冷却しゲル強度を測定した。
耐冷凍性:ゲル組成物100gを容器に充填し、−20℃で24時間冷凍し、この冷凍品を20℃で解凍した。解凍品のゲル強度をレオメーター(COMPAC−100,サン科学社製、プランジャー:1cm円柱、進入速度:20mm/分、測定温度:20℃)により求め、また、離水の状態を目視にて観察した。冷凍ゲル強度残存率を下記のようにして求めた。
冷凍ゲル強度残存率(%)=(冷凍して解凍した後のゲル強度/冷凍前のゲル強度)×100
表2乃至12より、寒天1乃至5のいずれかとローカストビーンガムとは反応性が良く、得られたゲル組成物は、ゲルの粘弾性(破断歪)が増し、耐熱性、耐酸性、耐冷凍性にも優れていることが分かる。比較例に係る寒天は、ローカストビーンガムとの反応によりゲル強度の低下率が大きく、破断歪も本発明に比べ大きくならないことが分かる。
(実施例16〜22,比較例30〜36)
表13又は14に示す5gの寒天と表13又は14に示すガラクトマンナン又はグルコマンナン10gとを水1000gに分散し、加熱溶解(115℃,10分)し、直径50mm、高さ60mmの容器に充填した。20℃で24時間放置して、ゲル組成物を得た。実施例1と同様にして、ゲル強度、破断歪、耐熱性、耐酸性、及び耐冷凍性を測定した。結果を表13及び14に示す。
表13及び表14より、寒天3を使用したものは、ガラクトマンナン又はグルコマンナンとの相乗作用によりゲルの粘弾性(破断歪)が増し、耐熱性、耐酸性、及び耐冷凍性にも優れていることが分かる。伊那寒天S−7を使用したものは、反応によりゲル強度の低下率が大きく、破断歪も大きくならないことが分かる。
(実施例23〜34)
寒天2とローカストビーンガム又はグルコマンナンとの配合量を表15又は16に示した以外は、実施例1と同様にして、ゲル組成物を得た。実施例1と同様にして、ゲル強度、破断歪、耐熱性、耐酸性、及び耐冷凍性を測定した。結果を表15及び16に示す。
表15及び16より、寒天とガラクトマンナン又はグルコマンナンの配合割合を変えても、本発明の効果が得られることが分かる。
(実施例35,比較例37)
表17に示す配合にてトコロテンを作製した。具体的には、表17に記載の寒天、ローカストビーンガム、及びキサンタンガムを表17の配合量で水に分散させ、加熱溶解(110℃,10分)した。これをステンレスバットに充填し、4℃にて冷却後、トコロテン突きにてトコロテン状にした。それとは別に食酢200mLに水1000mLを加えシロップを作製し、トコロテン100g,シロップ50gの割合で袋詰めし、85℃で20分間殺菌処理し、冷却して食感と状態をパネラーにより調べた。
実施例35に係るトコロテンは粘弾性があり、殺菌による劣化も少なかった。比較例37に係るトコロテンは、殺菌により溶け出しがあり、トコロテンの付着があった。食感も実施例35に比べ脆かった。
(実施例36,比較例38)
表18に示した配合にてゼリーを作製した。具体的には、表18に記載の寒天、グルコマンナン、及びキサンタンガムを水に分散させ、加熱溶解(97℃,10分)した。これに砂糖を溶解し、80℃にてクエン酸とクエン酸Naとを添加した。この溶液のpHは3.8であった。これをプラスチックカップに充填密封後、85℃で25分加熱殺菌した。これを4℃に冷却した後、殺菌前と殺菌後のゲル強度と耐冷凍性を実施例1と同様に測定した。結果を表18に示す。
表18より、実施例36に係るゼリーは殺菌後も弾力があり耐冷凍・解凍性がよいことが分かる。
(実施例37,比較例39)
表19示した配合にてフルイドゲル(ゲルをミキサーで破壊し液状にしたもの)を作製した。具体的には、表19に記載の寒天、及びローカストビーンガムを水に分散させ、加熱溶解(97℃,10分)した。クエン酸、クエン酸Na、及び砂糖を加え、pH3.8とし、4℃に冷却してゲル化させた後、高速撹拌機(バーミックス,チェリーテラス社製)にて粉砕し液状とした。このフルイドゲルにみかんのさのうを加え、85℃で25分の熱殺菌を行った。
実施例37においては、寒天とローカストビーンガムが反応し、耐熱性のあるミクロゲルとなっているため、さのうの沈降が見られなかった。これに対し、比較例39においては、寒天とローカストの反応が弱く、ミクロゲルの耐熱性がないため、加熱によりゲルが溶解し始め、さのうが沈降した。
(実施例38,比較例40)
表20に示す配合にて葛きり風ゼリーを作製した。具体的には、表20に記載の寒天、ローカストビーンガム、及びキサンタンガムを水に分散させ、加熱溶解(97℃,10分)した。これに砂糖、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムを加えpH4.0とし、これをステンレスバットに充填し4℃にて冷却後、トコロテン突きにてトコロテン状にした。それとは別に砂糖200g、クエン酸5g、及びクエン酸ナトリウム3gを溶解し、pH4.0にしたシロップを作製した。シロップ40gにトコロテン状にしたゲル80gを充填し、85℃で25分加熱殺菌処理し、冷却して食感と状態をパネラーにより調べた。
実施例38に係る葛きり風ゼリーは粘弾性があり、殺菌による劣化も少なかった。比較例40に係る葛きり風ゼリーは、殺菌により溶け出しがあり付着があった。食感も実施例38に比べ脆かった。
(実施例39,比較例41)
表21に示す配合にてさいの目ゼリー入りドリンクを作製した。具体的には、表21記載の寒天、タラガム、及びキサンタンガムを水に分散させ、加熱溶解(97℃,10分)した。これに砂糖、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムを加えpH4.0とし、これをステンレスバットに厚さ4mmで充填し、4℃にて冷却後、カットを行い4mm×4mmの立方体状のさいの目ゼリーを作製した。それとは別に、砂糖100g、クエン酸8g、及びクエン酸ナトリウム4gを溶解し、pH3.8にしたシロップを作製した。シロップ100gにさいの目ゼリー20gを充填し、85℃で25分加熱殺菌処理し、冷却させてさいの目ゼリー入り飲料を得た。得られたさいの目ゼリー入り飲料について、食感と状態をパネラーにより調べた。
実施例39に係るさいの目ゼリーは、通常の寒天では得られない粘弾性を有し、殺菌による劣化が少なく、溶け出しもなく、飲料にした際には、飲みやすかった。比較例41に係るさいの目ゼリーは、殺菌による溶け出しがあり、さいの目ゼリーが付着してしまい、飲料としての形態をなさないものになっていた。
(実施例40,比較例42〜43)
表22に示す配合にてさいの目アスピックゼリーを作製した。具体的には、表22に記載の寒天、タラガム、及びキサンタンガムを水に分散させ、加熱溶解(97℃,10分)した。これに砂糖、及び醤油を加えた。これをステンレスバットに厚さ4mmで充填し、4℃にて冷却後、カットを行い4mm×4mmの立方体状のアスピックゼリーを作製した。得られたアスピックゼリーについて、食感と状態をパネラーにより調べた。また、−20℃にて24時間冷凍したのち、10℃で解凍後の食感と、得られたアスピックゼリーを20℃で12時間放置した状態をパネラーにより調べた。
実施例40に係るアスピックゼリーは、通常の寒天では得られない粘弾性のあるさいの目ゼリーであり、冷凍して解凍した後も、同様なゼリーであったのに対し、比較例42に係るアイスピックゼリーは、冷凍により組織が破壊され、解凍の際に離水が発生した。比較例43に係るアイスピックゼリーは、20℃において溶解してしまった。
(実施例41〜50,比較例44〜51)
表23乃至25に示した配合にて、寒天、又は寒天およびローカストビーンガムを水1000gに溶解(115℃,5分)し、80℃に冷却後、クエン酸3g、クエン酸ナトリウム1.8gを添加し、pH3.8に調整した。これを容器に充填し、85℃で30分間殺菌後、20℃にて24時間放置した。その後、実施例1と同様にゲル強度を測定し、殺菌前のゲル強度と殺菌後のゲル強度の比較を、ゲル強度残存率:劣化率=((殺菌後強度/殺菌前強度)×100)を求めて行った。結果を表23乃至25に示す。
表23乃至25より、ゲル組成物は、pH3.8において、85℃で30分間殺菌後においてもゲル強度の劣化率は、70%以上あり耐酸性があることが分かる。

Claims (4)

  1. テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下である寒天と、
    ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも1以上とを含むことを特徴とするハイドロコロイド組成物。
  2. 前記ハイドロコロイド組成物を含むゲル組成物は、冷凍状態から解凍状態にした後のゲル強度が冷凍状態前の50%以上であることを特徴とする請求項1記載のハイドロコロイド組成物。
  3. 前記ハイドロコロイド組成物を1.5重量%含み、pH3.8に調製されたゲル組成物において、85℃にて30分の加熱処理を行った場合、ゲル強度残存率が70%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のハイドロコロイド組成物。
  4. 請求項1乃至3いずれか記載のハイドロコロイド組成物を含む食品。
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