JP7141153B1 - 液状食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】固形物が均一分散しているのではなく上部にできるだけ浮遊して、その浮遊状態をできるだけ維持し、しかも良好な食感を備えた液状食品を提供する。【解決手段】本発明に係る液状食品は、デキストリン溶液と不溶性固形物とを含有し、デキストリンの配合率が2.0~25.0質量%の液状食品であって、前記デキストリンは、重量平均分子量が5000~200000であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、液状食品に関する。
果肉、ゼリー、不溶性カルシウム、野菜などの固形物を含む飲料が知られている。通常、これらの固形物は不溶性物質が加わるため比重が重くなり、経時的に沈降してしまう。これらの沈降を防止して均一に分散させるべく、様々な検討が行われている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
また、固形物を浮遊させる方法として、気体や油脂などの比重の軽いものを含有させることが知られている(例えば、特許文献5,6参照)。
特開平9-275948号公報 特開2001-17129号公報 特開2002-186431号公報 特開2006-204262号公報 特開平6-14750号公報 特公平6-48972号公報
しかしながら、特許文献1~4においては、増粘多糖類が使用されているため、糊状感があり、食感的に好ましくない。さらに、固形物を上部に浮上させる効果は有してない。特許文献5に記載されている気泡を含有させる方法は、技術的に難しく安定性がない。殺菌飲料に用いた場合は、気泡部分の殺菌が不十分となり、微生物汚染の原因になる。特許文献6に記載されているように油脂を使用したものは、油脂の酸化により異臭が生じたり飲料中に油脂が移行し商品価値を損なうことがある。
このように固形物が液体の浮上している飲料は、最初の飲み口に特徴を有しているので需要があるにも関わらず、上述したような問題から製品化に至っていない。
そこで本発明は、固形物が均一分散しているのではなく上部にできるだけ浮遊して、その浮遊状態をできるだけ維持し、しかも良好な食感を備えた液状食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、不溶性固形物を含有する液状食品に、重量平均分子量、およびぶどう糖当量(DE)が所定範囲内にあるデキストリンを、所定量配合することによって、食感を損なうことなく不溶性固形物を液状食品の上部にできるだけ浮遊させ、その浮遊状態をできるだけ維持することが可能となることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る液状食品は、デキストリン溶液と不溶性固形物とを含有し、デキストリンの配合率が2.0~25.0質量%の液状食品であって、前記デキストリンは、重量平均分子量が5000~200000であることを特徴とする。
本発明によれば、固形物が均一分散しているのではなく上部にできるだけ浮遊して、その浮遊状態をできるだけ維持し、しかも良好な食感を備えた液状食品を提供することができる。
本発明の液状食品は、デキストリン溶液と不溶性固形物を含有する。不溶性固形物を含む従来の液状食品の場合、溶液に溶解している成分は、不溶性固形物に自由に移動することができる。成分が溶液中から不溶性固形物の組織内に移動することで、不溶性固形物の比重は溶液と等しくなり、場合によっては溶液より比重が大きくなる。溶液と不溶性固形物との比重差がなくなると、不溶性固形物は溶液中に均一に分散し、不溶性固形物の比重が溶液を超えた場合には、不溶性固形物は沈殿する。
本発明の液状食品においては、重量平均分子量5000~200000のデキストリンが含有されている。重量平均分子量5000~200000のデキストリンは、液状食品の液体に溶解しているが分子量が大きいため分子も大きく、不溶性固形物の組織を通過できない。このため、溶液から不溶性固形物の組織内に移動することなく、溶液中に存在し続ける。デキストリンの配合量に応じて、溶液の比重が不溶性固形物の比重より大きくなり、それによって不溶性固形物は上部に浮上する。本発明の液状食品は、こうした不溶性固形物の浮遊状態を可及的に維持することが可能である。
本明細書において不溶性固形物の浮遊とは、容器に収容された液状食品の液面から70%以内(容器底面から30%以上)の高さの領域に、配合した不溶性固形物の80%以上が分散(浮遊)している状態をいう。この状態が、「上部にできるだけ浮遊」に相当し、この状態が10日後まで保たれていることを「できるだけ維持」と定義する。不溶性固形物の浮遊は、例えば、容器に液状食品を収容し、目視により確認することができる。容器としては、例えば、透明なスタンドパウチ、栓付きガラス容器、ビーカー等が挙げられる。浮遊している不溶性固形物の割合は、例えば、不溶性固形物を吸い上げて取り出し、質量を測定することにより求めることができる。
本発明の液状食品には、所定のデキストリンが所定の配合率で用いられる。デキストリンは、澱粉を加水分解し低分子化することによって製造される。ただし、オリゴ糖のような低分子品とは異なるものである。一般的には、重量平均分子量500程度のものから、高度分岐環状デキストリンのように200000程度のものが知られている。デキストリンは澱粉より低分子であるので、冷水等の液体に溶解して比重を増加させる。
本発明においては、デキストリンの重量平均分子量(Mw)は5000~200000の範囲内である。デキストリンの重量平均分子量が5000未満の場合には、所望の効果を得ることができない。一方、200000より大きい場合には、冷水への溶解性が低下して液状食品の食感に悪影響を及ぼす。デキストリンの重量平均分子量は、5000~150000が好ましく、8500~150000がより好ましい。
重量平均分子量が5000~200000の範囲内にあるデキストリンは、分子量(重量平均分子量が5000未満)のデキストリンよりも固形物に含侵し難い。これは、次のような手法により確認することができる。具体的には、重量平均分子量の異なデキストリン(Mw5000~200000、Mw5000未満)を、10質量%の濃度で含有する溶液を調製する。
固形物としての2.0%寒天ゲル(2mm角)を、1:1の質量比となるように各デキストリン溶液と混合して、作製直後のBrix(糖度)を測定する。10日後のBrix(糖度)を測定し、その変化量から、固形物へのデキストリンの含侵状態を推測することができる。Brix(糖度)の変化量が少ないほど、固形物へのデキストリンの含侵は少ない。
一般的には、重量平均分子量が5000~200000のデキストリンは、ぶどう糖当量(DE)1~6に相当する。DEは、メーカー提供のデータから知ることができる。さらに、「デキストリン中の還元糖分の定量分析法 この定量分析法は、デキストリンとして輸入されるでん粉分解物で、関税率表第35類注2に規定されている“ぶどう糖として計算した還元糖の含有量”を求める必要があるものに適用する」方法により求めることができる。DEは、デキストリンの分子末端の還元糖量を規定したもので、分子鎖が短いほどDEは大きくなる。例えば、ぶどう糖はDE100となり澱粉は0となる。なお、重量平均分子量が8500~150000のデキストリンは、DE2~4に相当する。
液状食品中におけるデキストリンの配合率は、2.0~25.0質量%に規定される。液状食品中におけるデキストリンの配合率が2.0質量%未満の場合には、不溶性固形物を持続的に浮遊させることができない。一方、25.0質量%を超えて過剰に含有されると、糊状感が強くなって食感が損なわれてしまう。この場合には、口腔内への付着性も増大する。デキストリンの配合率は、4.0~20.0質量%が好ましく、5.0~15.0質量%がより好ましい。
所定の重量平均分子量およびDEを備えたデキストリンは、飲料、ドレッシング、液体調味料等に溶解してデキストリン溶液とすることができる。飲料のpHや糖度は特に限定されず、具体的には、果汁飲料、炭酸入り果汁飲料、各種お茶、コーヒー、ミルク飲料、コーラ、サイダーなどの炭酸飲料、ビール、発泡酒、酎ハイ、炭酸入り酎ハイ、その他のアルコール飲料などが挙げられる。
不溶性固形物は特に限定されず、食品に使用される任意のものを用いることができる。なお、本明細書において不溶性とは、デキストリンが含浸できない程度のマトリックス構造を有していることを指す。不溶性固形物の詳細については、追って説明する。
本発明の液状食品においては、重量平均分子量およびDEが所定範囲内にあるデキストリンが、所定の配合率で含有されているので、不溶性固形物は液状食品の上部に安定してできるだけ浮遊し続けることができ、加熱殺菌を経ても浮遊状態が乱れることはない。また、本発明の液状食品における不溶性固形物は、時間が経過した際も浮遊状態をできるだけ維持することができる。
デキストリン以外の糖、あるいは所定範囲外の重量平均分子量やDEを有するデキストリンが、不溶性固形物とともに液状食品中に含有された場合でも、作製直後であれば不溶性固形物は浮遊できる。しかしながら、これらの物質は経時的に不溶性固形物に含浸し、それによって不溶性固形物の比重が増大する。このため、不溶性固形物は浮遊状態を維持することができず、沈降してしまう。
本発明の液状食品に不溶性固形物とともに含有されるデキストリンは、通常知られているデキストリンの中でも分子量が大きい。このようなデキストリンは、高分子であるため分子が大きく不溶性固形物の内部に浸透することができない。時間が経過しても、不溶性固形物の比重は増加することはないので、不溶性固形物は、液状食品の上部にできるだけ浮遊し続けることができる。
デキストリンは、他の多糖類と異なって電気的に中性であり、他の添加物との相互作用を有しない。しかも、粘性がなく、透明で不溶物を含まず、溶解性に優れている。加えて、若干の甘味がある程度で安価であり、安定した物性を備えている。このため、食品への添加剤としては良好な素材である。
ここで、不溶性固形物について説明する。不溶性固形物としては、例えば、果肉、さのう、野菜、粒状ゼリー、タピオカパール、不溶性カルシウムなどが挙げられる。香り付け等に用いられる有用植物(ハーブ)も、野菜に含まれる。特に、水等で戻されたゲルを用いた際、本発明の効果が有効に発揮される。ゲルとしては、例えば、特開平4-207174号公報、特許第3522952号公報、特許第3403532号公報、および特許第556884号公報に記載された食品具材を水等でゲルに復元したものである。
なかでも、水分と固形分とからなり、以下の要件を備えた食品具材を不溶性固形物として用いた場合、本発明の効果がよりいっそう発揮される。具体的には、食品具材における固形分は、アルギン酸2価カチオン塩およびアルギン酸1価カチオン塩を含むアルギン酸塩と、サイリウムシードガムとを所定の配合比で含有する。
この食品具材について、詳細に説明する。アルギン酸2価カチオン塩としては、例えばアルギン酸カルシウムが挙げられる。アルギン酸1価カチオン塩としては、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、およびアルギン酸アンモニウムが挙げられる。
アルギン酸塩における2価カチオンおよび1価カチオンの含有量は、アルギン酸塩のモノマー単位に対して、それぞれ所定の範囲内に規定される。アルギン酸塩のモノマー単位とは、アルギン酸を構成するβ-D-マンヌロン酸またはα-L-グルロン酸(すなわち、C6107で表すことができる単糖)1モルをさす。1価カチオンおよび2価カチオンのモル数は、ICP(誘電結合プラズマ)発光分析装置を使用して、含有量(質量%)を測定することにより算出することができる。
2価カチオンの含有量は、アルギン酸塩のモノマー単位(C6107)に対し、0.04~0.3倍モルである。2価カチオンの含有量がアルギン酸塩のモノマー単位1モルに対し0.04倍モル未満の場合には、最終製品としての食品具材に十分な耐熱性が付与されず、殺菌工程で溶けだしてしまう。一方、2価カチオンが0.3倍モルより多いと最終製品の吸水性が悪くなり、水または湯で戻しした際に所望の食感が得られない。2価カチオンの含有量は、アルギン酸塩のモノマー単位に対し、0.1~0.25倍モルであることが好ましく、0.15~0.20倍モルであることがより好ましい。
1価カチオンの含有量は、アルギン酸塩のモノマー単位に対し、0.1~0.7倍モルである。1価カチオンの含有量がアルギン酸塩のモノマー単位1モルに対して0.1倍モル未満の場合には、最終製品の吸水性が悪く、水または湯で戻した際に所望の食感が得られない。一方、1価カチオンが0.7倍モルより多い場合には、最終製品の耐熱性が不十分となって殺菌工程で溶け出してしまう。1価カチオンの含有量は、アルギン酸塩のモノマー単位に対し、0.3~0.5倍モルであることが好ましく、0.35~0.5倍モルであることがより好ましい。
さらに、アルギン酸塩における2価カチオンと1価カチオンとのモル比(2価カチオン:1価カチオン)は、1.0:0.35~1.0:8.7に規定される。2価カチオンの割合が多すぎる場合には、最終製品の吸水性が不十分となり、水または湯で戻した際に所望の食感が得られない。一方、2価カチオンの割合が少なすぎる場合には、最終製品の耐熱性が不十分となって殺菌工程で溶け出してしまう。モル比(2価カチオン:1価カチオン)は、1.0:0.9~1.0:5.0であることが好ましく、1.0:0.9~1.0:4.5であることがより好ましい。
サイリウムシードガムは、オオバコの一種であるPlantago種植物種子から採取された多糖類である。加熱により溶解して独特の粘性を示し、増粘剤や食物繊維として健康食品に利用されている。一般に流通している任意のサイリウムシードガムを用いることができ、特に制限されない。アルコール洗浄されたサイリウムシードガム、あるいは溶解ろ過後に粉末化した精製タイプのサイリウムシードガムを用いてもよい。
サイリウムシードガムの含有量は、アルギン酸塩の質量の1/20~1倍に規定される。すなわち、アルギン酸塩とサイリウムシードガムとの質量比は、1:1~20:1である。サイリウムシードガムが少なすぎる場合には、その効果が発揮されず食感の悪いものとなる。一方、サイリウムシードガムが多すぎる場合には、粘性が高くなって作業しにくくなるのに加え、食品具材の耐熱性が低下して殺菌工程で溶け出してしまう。アルギン酸塩とサイリウムシードガムとの割合は、1:1~20:5が好ましく、1:1~20:8が最も好ましい。
アルギン酸塩以外の2価カチオン塩としては、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。また、アルギン酸塩以外の1価カチオン塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化アンモニウム等が挙げられる。
こうした食品具材における水分含量は、保存上の観点から2%以上20%以下に規定される。水分含量は、3%以上18%以下が好ましく、3%以上16%以下がより好ましい。かかる食品具材においては、アルギン酸塩以外の2価カチオン塩および1価カチオン塩を除いた固形分全量の25%以上96%以下をアルギン酸塩が占める。アルギン酸塩の含有量が25%未満の場合には、柔らかくソフトな食感が得られない。加えて、最終製品の耐熱性が不十分となり、殺菌工程で溶けだしてしまう。アルギン酸塩の含有量は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
アルギン酸塩以外の2価カチオン塩および1価カチオン塩を除いた固形分全量の25%以上96%以下のアルギン酸塩、およびアルギン酸塩の1/20~1倍のサイリウムシードガムが含有されていれば、食品具材中には、デキストリン、結晶セルロース、馬鈴薯澱粉、グアーガム、またはコンニャク粉が含有されていてもよい。このような成分の含有量は、固形分全量の90%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。
食品具材は、アルギン酸塩およびサイリウムシードガムに加えて、寒天および難消化性デンプンの少なくとも1種を含有することができる。寒天および難消化性デンプンは、サイリウムシードガム同様、アルギン酸塩と2価カチオンとの反応ゲルの食感を改良する作用を有する。このため、寒天および難消化性デンプンの少なくとも1種を所定量添加することで、アルギン酸塩のゲル化をさらに弱めることができ、より柔らかい食感が得られる。
寒天の添加量は、アルギン酸塩に対し70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下が最も好ましい。寒天の種類は特に限定されず、任意の寒天を用いることができる。難消化性デンプンの添加量は、アルギン酸塩に対し200%以下が好ましく、150%以下がより好ましく、100%以下が最も好ましい。難消化性デンプンの種類は特に限定されず、アミロースを多く含むもの、架橋構造、湿熱処理など、任意のものを用いることができる。
寒天と難消化性デンプンとを併用してもよい。その場合、それぞれの添加量は、上述した範囲内とし、これらの合計量が、アルギン酸塩に対して270%以下であることが望まれる。
場合によっては、アルギン酸塩の一部を、カラギナン、ペクチン、ジェランガム、キサンタンガムなどから選択される他の多糖類で置き換えてもよい。ただし、こうした他の多糖類は、食品具材中の含有量が20%以下である。他の多糖類の含有量が食品具材の20%以下であれば、塩類、高糖度での吸水性が悪化することはなく、食感や耐熱性に悪影響を及ぼすおそれはない。
こうした食品具材は、アルギン酸塩とサイリウムシードガムとを水に溶解させて溶解液を得る工程と、前記溶解液に1価カチオンおよび2価カチオンを作用させて、アルギン酸塩およびサイリウムシードガムを含む混合ゲルを得る工程と、前記混合ゲルを乾燥する工程とを備える方法により製造することができる。混合ゲルを乾燥する工程は、冷凍、解凍、脱水、および乾燥の一連の処理を含むことが好ましい。こうして混合ゲルを乾燥させることによって、水戻しまたは湯戻しにより吸水させた際の食感が、より優れたものとなる。
アルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、およびアルギン酸アンモニウムから選択することができる。何れのアルギン酸塩でも同等の効果が得られるが、最も一般に流通しているアルギン酸ナトリウムが好ましい。アルギン酸塩におけるグルロン酸/マンヌロン酸比(G/M比)は特に限定されず、例えば0.5~2.0とすることができる。アルギン酸塩のG/M比は、0.5~1.7が好ましく、0.5~1.3がより好ましい。
アルギン酸塩の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)が100000以上800000未満であれば、成型性や戻りに問題のない食品具材が得られる。アルギン酸塩の重量平均分子量は、130000以上800000未満が好ましく、200000以上600000未満がより好ましい。
1価カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびアンモニウムイオンなどが挙げられる。1価カチオンは、アルギン酸塩と2価カチオンとの反応を調整して、得られるゲルに適切な吸水性を付与する。1価カチオンの供給源物質としては、金属封鎖作用(キレート効果)を有しないものが好ましく、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化アンモニウムが挙げられる。
2価カチオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、および鉄イオンなどが挙げられる。2価カチオンは、水溶液中のアルギン酸塩と反応して、耐熱性で吸水膨潤しないゲルを生成する。アルギン酸塩との反応性が優れていることから、カルシウムイオンが2価カチオンとして好ましい。カルシウムイオンの供給源物質としては、水溶性および水不溶性のいずれの物質を用いてもよい。
水に溶けてイオン化する物質としては、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、およびクエン酸カルシウムなどが挙げられる。水に不溶性のカルシウムとしては、例えば炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどが挙げられる。水に不溶性のカルシウムは、グルコノデルタラクトンなどの酸性物質と併用することにより徐々に溶解し、アルギン酸塩と反応して均一なゲルが作製される。
1価カチオンおよび2価カチオンは、種々の方法でアルギン酸塩とサイリウムシードガムを含む溶解液に作用させることができる。例えば以下のような方法が挙げられる。
・溶解液を、2価カチオンおよび1価カチオンを含有する混合カチオン溶液中に添加する方法
・溶解液を2価カチオンの溶液中に添加した後、ここに1価カチオンを添加する方法
・溶解液を2価カチオンの溶液中に添加した後、2価カチオン溶液を除去し、次いで、1価カチオンを添加する方法
・溶解液と2価カチオンとを反応させてゲル化物を作製後、ゲル化物を乾燥して乾燥物としたものに1価カチオンをスプレー等により添加する方法
最終製品における2価カチオン、1価カチオンの含有量やそれらの比が所定範囲内となれば、他の方法により作用させてもよい。
カチオンと反応した混合ゲルを乾燥させて、目的の食品具材が製造される。乾燥物が得られる任意の方法により乾燥することができるが、なかでも冷凍脱水法が好ましい。冷凍脱水により乾燥させた食品具材は、水戻しした際の食感が特に優れたものとなる。冷凍脱水するにあたっては、まず、生成した混合ゲルを冷凍させることにより氷晶を発達させる。こうして水分を分離した後、解凍することにより氷を溶解して脱水する。その後、必要に応じて熱風により最終乾燥してもよい。最終製品の水分含量は、2%以上20%以下とする。
食品具材は、目的とする食品に合わせて任意の形状とすることができる。形状としては、例えば、平均粒子径が150μm以上の粒子状、サイコロ状、フレーク状、板状、および短冊状等が挙げられる。粒子状の食品具材は、解砕機等を用いて整粒することにより製造することができる。サイコロ状のものは、混合ゲルの製造後、サイコロ状に切断することにより製造することができる。粒子状やサイコロ状の食品具材は、飲料に加えた際に、柔らかい白桃が添加されているようになり口腔内で崩れて、優れたのど越しとなる。
特に、平均粒子径が150μm以上であることにより、粒子状の食品具材は、食感が良好となる。粒子状とする場合、食品具材の平均粒子径は、500μm以上が好ましく、5000μm以上がより好ましい。
粒子径は、任意の形状で作製した食品具材を、粉砕機等により粉砕して調整することができる。粉砕機としては、目的の粒子径に調整可能な任意のものを用いることができ、特に選定されない。ハンマーミル、ジェットミル、スピードミル、摩砕式、衝撃型など目的とする平均粒子径に合わせて選択し、適切な篩でふるい分けして、粒子状の食品具材を得ることができる。
フレーク状のものは、混合ゲルの製造後、適切な形に切断することにより製造することができ、板状のものは、混合ゲルの製造後、板状に切断することにより製造することができる。フレーク状や板状のものは、吸水により柔らかい魚肉や畜肉風になって、口腔内で崩れて無くなる脂肪分を多く含むトロや和牛をイメージさせる食感となる。短冊状のものは、混合ゲルの製造後、短冊状に切断することにより製造することができる。短冊状にすれば、くちどけの良い和菓子や洋菓子に応用できる。
このように用途に合わせて、自由に形状を変えることができるのも食品具材の利点の一つである。
なお、寒天を含有する組成とする場合には、アルギン酸塩とサイリウムシードガムと寒天との混合物をゲル化させた後、2価カチオンおよび1価カチオンを作用させることができる。この場合には、様々な形状に容易に調整することができる。所望の形状に成型した後、2価カチオンおよび1価カチオンを作用させればよい。
食品具材は、アルギン酸塩とサイリウムシードガムとを特定の割合で含有する溶解液を調製し、特定の割合の2価カチオン(例えばカルシウムイオン)と1価カチオン(例えばナトリウムイオン)を作用させた後、乾燥させることによって製造される。アルギン酸の2価カチオン塩(例えばアルギン酸カルシウム)と1価カチオン(例えばナトリウムイオン)との平衡作用により、ゲルにおけるアルギン酸と2価カチオンとの結合力が低下する。こうしたゲルを乾燥して得られた食品具材は、水やお湯でも吸水膨潤して戻ることができる。
しかも、食品具材には、独特の食感を有するゲルとなるサイリウムシードガムが含有されている。サイリウムシードガム分子は、アルギン酸分子中に入り込んで、混合マトリックスを生成する。アルギン酸の2価カチオン塩と1価カチオンとの平衡作用に加えて、アルギン酸の2価カチオン塩とサイリウムシードガムとを含む混合ゲルマトリックス混合作用が生じる。こうした相乗作用によって、水、熱湯、高糖度、高塩度、低pHのいずれの溶液においても吸水し、サイリウムシードガムに起因した食感を有する柔らかく、口腔内で溶けるような食感が達成される。
寒天が含有される組成の場合には、アルギン酸の2価カチオン塩とサイリウムシードガムとの混合ゲルマトリックス中に、さらに寒天が取り込まれて、アルギン酸の2価カチオン塩とサイリウムシードガムと寒天との混合ゲルマトリックス混合作用が生じる。これにより、前述の相乗効果がよりいっそう高められて、より柔らかい優れた食感を得ることができる。
難消化性デンプンが含有される組成の場合には、アルギン酸の2価カチオン塩とサイリウムシードガムとの混合ゲルマトリックス中に、さらに難消化性デンプンが取り込まれて、アルギン酸の2価カチオン塩とサイリウムシードガムと難消化性デンプンとの混合ゲルマトリックス混合作用が生じる。これにより、前述の相乗作用がよりいっそう高められて、より柔らかい優れた食感が得られる。
特に難消化性デンプンは、アミロース含量が多く、加熱により溶解し難い構造を有していることにより、優れた特性を付与することができる。すなわち、一部が溶解しているだけなので、溶解時に粘性が生じることはなく作業性が良好である。しかも、溶解した部分が、アルギン酸の2価カチオン塩と1価カチオンとの反応によるゲル中に入り込むだけなので、澱粉の粘りのある食感とはならない。その結果、水、お湯、高糖度、高塩度溶液でも戻りの良い乾燥物が得られる。
食品具材は、水や湯を加えることにより吸水膨潤し、柔らかな口腔内でとろけるような食感のゲル状となる。吸水膨潤させる方法としては、浸漬、噴霧などがあるが特に限定されない。こうした食品具材は、糖度50以上の高糖度溶液、食塩濃度3%以上の高塩度溶液、pH4.0以下という低pH溶液でも戻すことが可能である。例えば、糖度60、食塩濃度5%、あるいはpH3.0のような条件の溶液にも戻すことができる。これらは、サイリウムシードガムの効果、2価および1価のカチオンバランス、アルギン酸塩の割合等が所定範囲内に規定されていることに起因するものである。
食品具材を水戻しまたは湯戻しして吸水膨潤させた場合、食品具材の形状や戻す条件等に応じて、果肉様、肉様、麺様など様々な食感の食品とすることができる。さらに、食品具材は、耐熱性や耐酸性を有するため、殺菌工程を伴う様々な食品にも応用可能である。具体的には、柔らかい果肉(桃果肉様)、口腔内で物理的に崩壊し溶けるような食感(トロ等)、柔らかいぶどう果肉、トロピカルカットフルーツなど様々な食感が得られる。こうした食品具材は、吸水膨潤させるために用いる液体の糖度やpHも任意に設定できるため、応用範囲が広い。
上述した食品具材等の不溶性固形物とデキストリン溶液とを含有する本発明の液状食品には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、他の糖が含有されていてもよい。糖の種類に応じて、配合率は適宜選択することができる。所定のデキストリンが所定の量で配合されている限り、本発明の効果は何ら損なわれることはなく発揮される。他の糖としては、単糖、2糖、3糖、各種オリゴ糖、糖アルコールいずれでもよく、具体的には、ブドウ糖、ショ糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、オリゴ糖、マルチトール、エリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
本発明においては、従来のような気泡を含有させるといった特殊な方法や装置を必要とせず、また油脂のような経時的に不安定な物質を使用しなくても、所定のデキストリンを配合するだけで不溶性固形物を上部にできるだけ浮遊させて、その浮遊状態をできるだけ維持することが可能となった。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。特に指定がない限り、%は質量%を示している。
液状食品としての飲料の製造に用いる材料を、下記表に示す。
Figure 0007141153000001
試作品(i):デキストリン6を10%重量%で精製水に溶解後、95℃で2時間放置後、ドラムドライヤー(日空工業(株)製)で粉末化した(表面温度120℃)。分子量はGPC法により測定した。残りの材料については、メーカー記載の分子量およびDEを記載した。
用いる不溶性固形物を以下に示す。
果肉:白桃(約3mmの立方体)
さのう:温州ミカン
野菜:人参カット品(一辺約2mm立方体)
粒状ゼリー:寒天(かんてんクック:伊那食品工業)を1.0%濃度で溶解し冷却後、一辺約3mmに切断。
タピオカパール:市販品(サイズ小)をお湯戻し(煮沸)して使用。
不溶性カルシウム:リン酸1水素カルシウム(太平化学)
水等で戻されたゲル:
ゲル1~ゲル4は、下記文献に記載された方法にて水戻しして使用する。
ゲル1:特開平4-207174号公報:実施例1
ゲル2:特許3522952号公報:実施例1
ゲル3:特許3403532号公報:実施例1
ゲル4:特許5561884号公報:実施例1
ゲル5には、アルギン酸塩としてのイナゲルGS-30(伊那食品工業、Mw250000)と、サイリウムシードガムとしてのイナゲルA-400(伊那食品工業)とを用いて、以下の方法により製造された食品具材を使用する。アルギン酸塩とサイリウムシードガムとを、20:20の質量比で配合して、水に分散後、沸騰させて加熱溶解した(作製量1000g)。
この溶液を、0.12%の塩化カルシウム溶液1000gに滴下し、直径約5mmの粒状物を作製した。その後、さらに5時間浸漬してゲル化させ、粒状ゲルを得た。浸漬後、粒状ゲルを取り出し冷凍後、解凍して脱水後60℃にて乾燥した。得られた乾燥物に、食塩0.5gを水10gに溶解した溶液を噴霧した後、さらに乾燥させて、食品具材としての乾燥物を作製した。こうして得られた乾燥物を水戻しして、ゲル5とする。
得られた食品具材においては、アルギン酸塩における2価カチオンの含有量が、アルギン酸塩のモノマー単位に対し0.25倍モルであり、アルギン酸塩における1価カチオンの含有量が、アルギン酸塩のモノマー単位に対し0.22倍モルである。さらに、2価カチオンと1価カチオンとのモル比(2価カチオン:1価カチオン)が、1.0:0.88であり、アルギン酸塩の含有量は、アルギン酸塩以外の2価カチオン塩および1価カチオン塩を除いた固形分全量の50%である。
<実験例1:糖類の比較>
下記表2に示した配合により、果肉入り飲料を作製した。糖類としては、下記表3に示すものをそれぞれ用いた。飲料の製造にあたっては、まず、クエン酸、クエン酸ナトリウム、糖類を水に溶解した後、果肉を添加した。さらに、スタンドパックに充填して密封して、容器入り飲料(作製量300g)を得た。スタンドパックのサイズは、180mm(チャック下)×120mm(袋巾)×35mm(ガゼット)である。これを恒温槽に収容し、85℃で30分間の加熱殺菌を行った。
飲料が収容された容器を静置して、果肉の状態を目視により観察した。観察は、作製直後、加熱殺菌後、および10日後の飲料について行い、以下の基準で評価した。その結果を、用いた糖類とともに下記表3にまとめる。
評価:固形物の100%が浮上した場合、液面から70%以内にすべて収まる固形物の添加量において判断する。
A:固形物の80%以上が、液面から70%以内(底面から30%以上)の領域に浮遊している。
B:固形物の80%以上が、液面から80%以内の領域に浮遊している、あるいは、液面から70%以内の領域に浮遊している固形物が、60~80%
C:固形物は全体に均一に分散している。
D:固形物は沈降している。なお沈降とは、固形物の90%以上が、底面から30%以内の領域に存在していることを指す。
評価は、“A”が合格であり、“B”も許容範囲である。
Figure 0007141153000002
Figure 0007141153000003
作製直後は、実施例および比較例のいずれも、固形物の浮遊が確認された。実施例の飲料は、10日後においても、固形物は安定した浮遊していた。これは、用いたデキストリンが固形物に含侵できないので固形物の比重が増大せず、固形物を浮遊させるための比重差が保たれたことに起因するものと推測される。
低分子の糖を用いた飲料中の固形物は、殺菌直後に沈降した(比較例5~9)。低分子のデキストリンを用いた飲料中の固形物は、時間が経過すると全体に分散している状態になった(比較例1~4)。比較例においては、低分子の糖類が固形物に含侵して固形物の比重が増大し、固形物を浮遊させるに十分な比重差が失われたものと推測される。
<実験例2:デキストリンの配合率>
下記表4に示した配合にて、実験例1と同様の手法により果肉入り飲料を作製した。デキストリンの配合率は、下記表5に示すように種々変更した。得られた飲料を、実験例1と同様に評価し、その結果を下記表6にまとめる。
Figure 0007141153000004
Figure 0007141153000005
Figure 0007141153000006
デキストリンの配合率が20質量%以上となると、10日後に糊状感が生じるものの、概ね良好な結果である。デキストリンの配合率が少なすぎる場合には、加熱殺菌後に固形物が沈降し、多すぎる場合には食感が損なわれることが確認された。
<実験例3:液体の種類>
下記表7に示した配合により、固形物入り飲料を作製した。液体としては、下記表8に示したものをそれぞれ用いた。得られた固形物入り飲料を、実験例1と同様の手法により評価した。ただし、発泡するものは加熱殺菌を行わず、缶に充填して密封し冷蔵保存した。その結果を、下記表9にまとめる。
Figure 0007141153000007
Figure 0007141153000008
Figure 0007141153000009
いずれの飲料を使用した場合でも、10日後まで固形物の浮遊状態が維持されることが確認された。
<実験例4:固形物の種類>
下記表10に示した配合にて、実験例1と同様の手法により固形物入り飲料を作製した。固形物としては、下記表11に示したものをそれぞれ用いた。得られた固形物入り飲料を、実験例1と同様の手法により評価し、その結果を下記表12にまとめる。
Figure 0007141153000010
Figure 0007141153000011
Figure 0007141153000012
いずれの固形物を使用しても、10日後まで固形物の浮遊状態が維持されることが確認された。
<実験例5:他の糖と併用>
下記表13に示した配合にて、実験例1と同様の手法により固形物入り飲料を作製した。その他の糖としては、下記表14に示したものをそれぞれ用いた。得られた固形物入り飲料を、実験例1と同様の手法により評価し、その結果を下記表15にまとめる。
Figure 0007141153000013
Figure 0007141153000014
Figure 0007141153000015
他の糖が8.0質量%混在していても、10日後まで固形物の浮遊状態が維持されることが確認された。

Claims (1)

  1. デキストリン溶液と不溶性固形物とを含有し、デキストリンの配合率が2.0~25.0質量%の液状食品であって、
    前記デキストリンは、重量平均分子量が5000~200000であり、
    前記不溶性固形物は、乾燥物からなる食品具材を水戻しして得られたゲルであ
    ことを特徴とする液状食品。
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