JP4494517B1 - 寒天及びそれを含む食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ゲル強度が高く、かつ分子量分布の幅が狭い寒天を提供することを目的とする。
【解決手段】テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下であることを特徴とする寒天である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゲル強度が高く、かつ分子量分布の幅が狭い寒天及びそれを含む食品に関する。
寒天は、海藻のテングサやオゴノリなどより熱水抽出される天然多糖類であり、ゲル化剤として食品はもとより、医薬品、化粧品、及び化成品にも使用されている。このように使用されている従来の寒天は、ゲル強度400〜800g/cmが一般的である。特殊なタイプの寒天としては、低凝固力のゲル強度30g/cm程度のもの(特許文献1)や、比較的ゲル強度が高いと推定される寒天の製造方法(特許文献2)が知られている。一方、より高いゲル強度の寒天を従来の方法で製造すると、寒天の分子量分布の幅が広くなり、低濃度にした際の食感低下、還元糖による褐変、熱殺菌時において低分子部分の溶出による耐熱性の低下などの問題が生じる。
特許第3023244号 特許第2560027号
しかしながら、ゲル強度が高く、かつ分子量分布の幅が狭い寒天は、知られていない。ゲル強度が高いと、通常の寒天に比べて様々な機能を発揮することができる。そこで、本発明は、ゲル強度が高く、かつ分子量分布の幅が狭い寒天を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、熱水抽出時にpHを安定化させるために緩衝剤を使用する工程、及びゲル化物を水に浸漬する工程を設けることにより、寒天の低分子量領域を除去し、重量平均分子量とゲル強度が高く、かつ分子量分布の幅が狭い寒天を容易に製造できることを見出した。すなわち、本発明は、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下であることを特徴とする寒天である。また、本発明は、前記寒天を含むことを特徴とする食品である。
以上のように、本発明によれば、ゲル強度が高く、かつ分子量分布の幅が狭い寒天、及びそれを含む食品を提供することができる。
本発明に係る寒天は、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とする。テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属の海藻は、一般に用いられているものを制限なく用いることができる。
本発明に係る寒天は、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上であり、1600g/cm以上であることがより好ましく、1700g/cm以上であることがさらに好ましい。ゲル強度が1500g/cmより低いと、寒天ゲルマトリックス間の結合が弱く、寒天を低濃度で使用したゲルは、張りのない糊状感があるゲルとなってしまう。本発明に係る寒天を低濃度で用いたゲルは、ゲルに張りがあり独特のコリコリとした食感が得られる。
本発明に係る寒天は、重量平均分子量(Mw)が600000以上であり、700000以上であることがより好ましく、800000以上であることがさらに好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)が13以下であり、9以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。本発明においては、特に低分子量成分が少ないことが特長である。重量平均分子量(Mw)が600000未満であると、寒天の分子鎖が本発明の寒天の分子鎖より短いために、より強固な3次元のゲルマトリックス構造が形成できない。そのため、高いゲル強度が得られず、寒天を低濃度で使用した場合、張りのない糊状感があるゲルとなり、独特のコリコリとした食感を得ることができない。また、分子量分布が13を超えると、寒天の低分子量成分が多くなるため、高分子量成分による強固な3次元のゲルマトリックス構造の形成を阻害してしまい、張りのない糊状感があるゲルとなり、独特のコリコリとした食感を得ることができない。
分子量分布(Mw/Mn)は、Mwが重量平均分子量、Mnが数平均分子量を表し、次の式で求めることができる。
[式1]
(Mpは重合度Pの分子の分子量で、Npはこれが試料中に含まれる個数)
分子量分布Mw/Mnは、値が大きいものほど分子量分布が広いことを示している。
本発明に係る寒天は、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、アルカリ処理後水洗し、それを緩衝剤を含む熱水で抽出して濾過した後、濾液を冷却してゲル化させ、そのゲル化物を水に浸漬し、脱水及び乾燥させることにより得ることができる。以下、詳述する。
第1に、原料である海藻をアルカリ処理する。一般的には、原料である海藻を0.5〜20重量%のNaOHやKOHなどの強アルカリ水溶液中に温度20〜100℃にて0.5〜48時間浸漬する。
第2に、アルカリ処理により原料である海藻に付着や浸透したアルカリを、水を用いて洗浄処理し、アルカリを除去する。
第3に、寒天成分を熱水抽出する。一般的には、pH7.4〜8.0、温度70〜120℃に調整した熱水を用いて、1〜3時間熱水抽出し寒天成分を抽出する。pHは、抽出開始直後は前記調整したpH範囲であるが、抽出が進むにつれて徐々に低下してpH7.4以下なってしまう。このため、寒天成分の加水分解が生じ、低分子量成分ができる。この低分子量成分により、生成する寒天のゲル強度が下がり、重量平均分子量も小さくなり、さらには分子量分布の幅も広くなる。特に工業生産において大量の海藻から寒天を抽出する場合、pHは抽出釜内で時間差変動があり、均一にコントロールすることは非常に難しい。その手段として、抽出中もpH7.4〜8.0の値に常に維持し安定化するために、熱水にpH変動を小さくする目的で緩衝剤を添加するのが好ましい。緩衝剤としては、弱酸性と強アルカリ性の塩、弱アルカリ性の塩、及びそれらの組合せ、並びに弱アルカリ性の塩と弱酸性の塩との組合せなどが挙げられ、具体的には、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、リン酸二カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第一リンナトリウム、第一リン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロピン酸四カリウム、ピロリン酸水素ナトリウム、ピロリン酸水素カリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、及びクエン酸ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤は、熱水のpHが変動しないようにできる程度の量を添加すればよい。これにより、従来の強アルカリである水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用したpH調整よりも、pHの変動が少なく、アルカリによる着色褐変化が少なくなる。
第4に、抽出物を濾過する。濾過は、例えば、フィルタープレス等で加圧濾過を行い、濾液を分離する。
第5に、濾液を冷却する。冷却することにより、濾液は、ゲル化する。
第6に、ゲル化したゲル化物を水に浸漬(以下、水漬けという場合がある。)する。浸漬時間は12〜48時間であるのが好ましい。水は適当な時間に入れ替えてもよい。ゲル化物を水に浸漬することにより、熱水抽出で生じた低分子量成分を水相に溶出させ、ゲル化物から除去することができる。これにより、分子量分布の狭い寒天を得ることができる。従来、寒天中の低分子量成分を積極的に除去することは、実際の生産スケールの規模では難しく、行われていない。このため、通常の寒天には低分子量成分が多く存在し、褐変、食感低下などの問題が生じている。本発明は、ゲル化物を水に浸漬するという生産スケールでも行える方法を考案し、低分子量成分を除去することを可能にしている。ゲルの水漬けによる低分子量成分の除去が有効なのは、熱水抽出の際に緩衝剤を用いているため、高いゲル強度を有する高分子量のゲル化物となり、水漬けで崩壊や溶解せずゲル状態を維持できるからである。ゲル化物を低濃度にするとゲルの網目構造は大きなマトリックスとなり、水溶性に近い低分子量成分が抜けやすくなる。水漬けの際のゲル化物の濃度は、0.2〜2.0重量%であることが好ましく、0.4〜1.2重量%であることがさらに好ましい。0.2重量%より低いと水漬けにおいてゲルを維持できず、2.0重量%を超えると低分子量成分が抜け難くなる。水漬けの際のゲル化物の濃度は、例えば、熱水抽出後に水を加える等によって調整することができる。
第7に、ゲル化物を脱水及び乾燥する。脱水する方法としては、ゲル化物を冷凍・解凍して脱水する方法、及びゲル化物を圧搾することにより脱水する方法などが挙げられる。乾燥する方法としては、一般的な乾燥方法が挙げられる。ゲル化物中の水分は、乾燥により、寒天が粉末として安定する平衡水分値(22重量%以下)まで蒸発させるのが好ましい。
以上のようにして、本発明に係る寒天を得ることができる。得られた寒天は、粉砕機等を使用して粉末状やフレーク状に調整してもよい。
本発明に係る寒天は、高融点であるため常圧においては沸騰させても完全溶解しない。完全溶解させるためには、加圧下100℃以上にて溶解する必要がある。これを常圧で溶解できるようにして使いやすくさせるために、特公昭63−005053、特開平6−153873、又は特開平01−153067等に記載の方法により易溶性にすることもできる。
本発明に係る寒天は、一般的に入手可能なテングサ属、オゴノリ属、又はオバクサ属の海藻原料を用いて容易に製造することができる。
本発明に係る寒天は、ゲル強度1500g/cm以上と強度が高く低濃度でも強度を出すことができるためコスト的にも有利になる。また、ゲルに張りがあり独特のコリコリした食感を出すことができる。さらに、少量で使えるため他の素材の物性を妨げることなくゲル化剤として複合して使用することができる。またさらに、従来の寒天にはなかった硬さを出せるため、寒天では作ることが出来なかった新規用途に使用できる等の利点を有している。
また、本発明に係る寒天は分子量分布を狭めることにより、より高強度である食感を強調することができる。寒天の強度を高くする手段として、従来の強度の寒天を高濃度で使うことも可能であるが、低分子量成分が入っていると、食感のハリが出ないので、本発明に係る寒天とは全く違ったものになってしまう。
さらに、本発明に係る寒天は、分子量分布の幅が狭く低分子量成分が少ないので、低濃度にした際に、より瑞々しく歯切れの良い食感となり食感低下、還元糖による褐変、熱殺菌時において低分子部分の溶出による耐熱性の低下などの問題が生じにくい。
またさらに、本発明に係る寒天は、0.1重量%に調整された寒天ゲル組成物であっても、10℃におけるゼリー強度が、テクスチャーアナライザー(TAXT−Plus,英弘精機社製、プランジャー:1cm円柱状、進入速度20mm/分、測定温度10℃)での測定で少なくとも20g/cm以上であり、かつその濃度におけるゲル化温度が30℃以下とすることができ、種々の用途に応用できる。
本発明に係る寒天を含む食品としては、例えば、従来の用途で品質を向上させた、殺菌タイプのトコロテン、みつ豆、ドリンクゼリー、デザートゼリー、プリン、杏仁豆腐、滝川豆腐、羊羹、錦玉、及びゲル入り飲料等、うどん、そば、ラーメン、及びスパゲティーなどの麺、パスタ、マカロニ、はるさめ、及びパンの食感改良剤、缶詰製品、及び肉の結着剤、ゲルの漬物、珍味、チーズなどの乳製品、米飯のイミテーション、餅生地、並びに葛きりなどを挙げることができる。寒天の配合量は、食品の種類によって適宜選択できる。
(実施例1:寒天1)
テングサ(日本産)1kgを90℃の5重量%NaOH溶液20kgに2時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このテングサを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第二リン酸ナトリウムを6g添加し、pHを7.8に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して実施例1に係る寒天(寒天1)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
ゲル強度:日寒水式(寒天濃度 1.5重量%,溶解条件110℃,10分)に従って測定した。
重量平均分子量(Mw):HPLCによるGPC法に従って測定した。具体的には、寒天0.3gを200mLの蒸留水に溶解(110℃,5分)し、カラム(TOSOH TSK−GEL for HPLC, TSK−GEL GMPWXL)を使用して測定した。
分子量分布(Mw/Mn):重量平均分子量/数平均分子量により求めた。(1に近いほど分子量分布が狭い)なお、Mnも同様にしてHPLC法により求めた。
食感:寒天0.3gを水100gに分散させ、110℃で5分間加温し、溶解させた。これを10℃に冷却してゲル化させ、パネラーにより食感を確認した。
褐変度:寒天1.0gを水100gに分散させ、110℃で5分間加温し、溶解させた。これを90℃にて18時間放置後、溶液の660nmにおける透過率を吸光光度計(UV−mini1240,島津科学社製)で調べることにより褐変度の指標とした。
還元糖量(%):寒天0.01gを水100gに分散させ、110℃で5分間加温し、寒天を溶解させた溶解液についてPark−Johnson法により還元糖量を測定した。なお、検量線はガラクトースを使用して作製した。
耐熱性:寒天0.4gを水100gに分散させ、110℃で5分間加温し、溶解させた。この溶液を冷却してゲル化させた後、約8mm角の立方体に切断し、同質量の水を加え、85℃で30分間の加熱処理を行った。これを20℃に冷却後、ゲル化物を取り出し、重量を測定し、水に溶け出した重量から以下の式により溶出率を算出した。
溶出率(%)=((加熱処理前のゲル重量−加熱処理後のゲル重量)/加熱処理前のゲル重量)×100
水漬け時の溶出率(%):得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加した際の水100gを、ゲル化物に浸漬した後に取り出し、蒸発乾固しゲル化物から溶出した固形分を測定し、下記式により求めた。
水漬け時の溶出率(%)=(蒸発乾固した固形分重量/100)×100
水漬け水に溶出した分子量(Mw’):水漬けの水に溶け出した低分子寒天の重量平均分子量をHPLCによるGPC法により測定した。
(比較例1:比較寒天1)
緩衝剤を加えず抽出を行い、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る寒天(比較寒天1)を得た。なお、実施例1においては、抽出時のpHは、抽出し始めと抽出終了時で変化がなかったのに対し、比較例1においては、抽出し始めのpHは7.5であり、抽出終了時はpH6.2と低下していた。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示す。
表1より、抽出時に第二リン酸Naを添加し、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加することにより低分子量成分を除去したものは、ゲル強度が高く、分子量分布が狭く、食感、褐変、耐熱性に優れていることが分かる。
(実施例2:寒天2)
オゴノリ(日本産)1kgを90℃の5重量%NaOH溶液20kgに2時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このオゴノリを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第三リン酸ナトリウム3.5g及び第一リン酸ナトリウム2.5gを添加し、pHを7.5に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して実施例2に係る寒天(寒天2)を得た。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表2に示す。
(比較例2:比較寒天2)
緩衝剤を加えず抽出を行い、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして比較例2に係る寒天(比較寒天2)を得た。なお、実施例2においては、抽出時のpHは、抽出し始めと抽出終了時で変化がなかったのに対し、比較例2においては、抽出し始めのpHは7.6であり、抽出終了時はpH5.9と低下していた。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表2に示す。
表2より、抽出時に第三リン酸ナトリウム及び第一リン酸ナトリウムを添加し、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加することにより低分子量成分を除去したものは、ゲル強度が高く、分子量分布が狭く、食感、褐変、耐熱性に優れていることが分かる。
(実施例3:寒天3)
オバクサ(日本産)1kgを90℃の5重量%KOH溶液20kgに2時間浸漬した。KOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このオバクサを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第二リン酸カリウム5.0g及び第一リン酸カリウム1.0g添加し、pHを7.9に調整した後、95℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して実施例3に係る寒天(寒天3)を得た。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表3に示す。
(比較例3:比較寒天3)
緩衝剤を加えず抽出を行い、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加しなかった以外は、実施例3と同様にして比較例3に係る寒天(比較寒天3)を得た。なお、実施例3においては、抽出時のpHは、抽出し始めと抽出終了時で変化がなかったのに対し、比較例3においては、抽出し始めのpHは7.5であり、抽出終了時はpH6.1と低下していた。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表3に示す。
表2より、抽出時に第二リン酸カリウム及び第一リン酸カリウムを添加し、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加することにより低分子部分を除去したものは、ゲル強度が高く、分子量分布が狭く、食感、褐変、耐熱性に優れていることが分かる。
(実施例4〜8:寒天4〜8)
テングサ(地中海産)1kgを95℃の5重量%NaOH溶液20kgに2時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。この海藻を水20kgに入れ、表4に示した緩衝剤を表4に示された量添加し、pHを表4の開始に示されている値に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲルに対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して実施例4乃至8に係る寒天(寒天4乃至8)を得た。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表5に示す。
(比較例4:比較寒天4)
緩衝剤を加えず抽出を行い、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加しなかった以外は、実施例4乃至8と同様にして比較例4に係る寒天(比較寒天4)を得た。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表5に示す。
表4及び5より、抽出時に緩衝剤を添加し、得られたゲル化物に対し同質量の水(水漬けの水)を添加することにより低分子量成分を除去したものは、ゲル強度が高く、分子量分布が狭く、食感、褐変、耐熱性に優れていることが分かる。
(実施例9:寒天9)
寒天1の5重量%分散液を高圧釜にて溶解し(115℃,5分)、ドラムドライヤー(楠木機械社製,ドラム表面温度121℃)にて乾燥後、粉砕することにより実施例9に係る寒天(寒天9)を得た。1gの寒天9を水100gに分散させ、97℃で5分間加温し、溶解させた。目視により溶解が確認されたため冷却して、ゲル化させた。得られた寒天の物性を実施例1と同様に測定し、その結果を表6に示す。
実施例9より、寒天1を100℃以上にしなくても溶解するように易溶化しても、ゲル強度が高く、分子量分布が狭く、食感、褐変、耐熱性に優れていることが分かる。
(実施例10,比較例5)
比較寒天1を用いた以外は、実施例9と同様にして比較寒天5を得た。1gの寒天9及び比較寒天5をそれぞれ水100gに分散させ、97℃で5分間加温し、溶解させた。寒天9及び比較寒天5について実施例1同様に耐熱性を調べた。また、耐熱性測定後の立方体のゲルを10℃に冷却し、パネラーにより食感を確認した。結果を表7に示す。
表7より、易溶化したものについても、同様に耐熱性が認められた。また、加熱処理後のゲルについても実施例10は殺菌前同様にハリのある食感であったのに対し、比較例5は、殺菌により水への溶け出し部分が多く、食感の劣化も認められた。
(実施例11,比較例6)
表8に示した配合にてみつ豆ゲルを作製した。具体的には、水に寒天を膨潤させ、高圧釜にて115℃で10分間加熱し、溶解させた。溶解後、そこに砂糖を添加して溶解させ、温度を70℃にしてクエン酸及びクエン酸ナトリウムを添加してpHを3.8とした。その後、10℃に冷却してゲル化させた後、ゲル化物を約8mm角の立方体に切断し、砂糖200g、クエン酸3g、及びクエン酸ナトリウム1.8gを水800gに溶解したシロップ(pH3.8)に1:1の割合で充填した。85℃で30分間加熱殺菌し、10℃に冷却してシロップ充填されたみつ豆ゲルを得た。高圧釜での寒天溶解後の溶解液の着色の有無、加熱殺菌後のゲル化物の食感、及び加熱殺菌後のシロップ状態を5名のパネラーにより調べた。結果を表9に示す。
表9より、本発明に係る寒天を使用することにより、加熱殺菌を行っても、着色が少なく、食感の良好な、耐熱性のあるみつ豆ゲルを作製することができることが分かる。
(実施例12,比較例7)
表10に示した配合にてゲル入り飲料を作製した。具体的には、水に寒天を膨潤させ、高圧釜にて115℃で10分間加熱し、溶解させた。溶解後、そこに砂糖を添加して溶解させ、温度を70℃にしてクエン酸、クエン酸ナトリウム、及びオレンジ香料を添加してpHを3.8とした。その後、10℃に冷却してゲル化させた後、ゲル化物を約3mm角の立方体に切断した。この立方体ゲルを、市販のオレンジジュース200g,立方体ゲル30gの割合で混ぜ合わせ、85℃で30分間加熱殺菌し、10℃に冷却してゲル入り飲料を得た。高圧釜での寒天溶解後の溶解液の着色の有無、加熱殺菌後のゲル化物の食感、及び加熱殺菌後のオレンジジュースの状態を5名のパネラーにより調べた。結果を表11に示す。
表11より、本発明に係る寒天を使用することにより、加熱殺菌を行った後でも、つぶ感が飲料とマッチしていて良好な、耐熱性のあるゲル入り飲料を作製することができることが分かる。

Claims (2)

  1. テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下であることを特徴とする寒天。
  2. テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下である寒天を含むことを特徴とする食品。
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