JP6119299B2 - 光ファイバ線引方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバ用ガラス母材を加熱溶融して、光ファイバを線引きする光ファイバ線引方法と線引装置に関する。
線引炉による光ファイバの線引は、ヒータなどで光ファイバ用ガラス母材(以下、ガラス母材という)を加熱溶融することにより行われる。線引炉の炉内の温度が2000℃以上と非常に高温になることから、ガラス母材を囲う炉心管等には、通常、カーボンが用いられる。このカーボンは、高温の酸素含有雰囲気中では、酸化して消耗する。これを防止するために、線引炉内には、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスや窒素ガス(以下、不活性ガス等という)が送り込まれる。
また、ガラス母材は、通常、上端がテーパ状に縮径され、径の小さいダミー棒(支持棒ともいう)を接続し、線引炉の炉心管内に吊り下げ支持されるが、径が大きく変化するテーパ状の部分およびダミー棒との連結部分のシールが難しく、線引炉内を不活性ガス等で満たすことが難しい。このため、炉心管を上方に延長する形態で線引炉の上方に上部チャンバを配し、テーパ状の部分及びダミー棒との連結部分を含めてガラス母材を上部チャンバ内に収容し、上部チャンバの上端でダミー棒の外周面をシールする方法がある。
しかし、この方法では、ガラス母材の線引きが進行して降下するにしたがって上部チャンバ内の空間容積が増大することから、炉内圧力が変動し、上記の炉心管内に送り込まれた不活性ガス等のガスの流れが時間的に変化し、これによりガラス母材の溶融部の熱伝達量が変化して線引中のガラスファイバ径の変動が発生する。
これに対し、例えば、特許文献1には、ガラス母材の上方にガラス母材と同径のパイプを配して、ガラス母材の線引が進行しても、上部チャンバ内の空間容積がほぼ一定に保たれるようにする方法が開示されている。
図5(A)は、上記特許文献1に開示の線引炉の例を示した図である。ガラス母材1は、直胴部1a(本体部)の上端がテーパ部1bを経て縮径された縮径部1c(シード棒ともいう)を有し、該縮径部1cに連結部材3等を用いてダミー棒2(シャフトまたは支持棒)が連結されて、吊り下げ支持される。ダミー棒2の外側には、ガラス母材1の直胴部1aの外径とほぼ等しい外径を有する石英パイプ10が配され、パイプ下端10aがガラス母材1のテーパ部1bの周縁に当たるようにされている。
加熱炉は、炉心管4の外側にヒータ5を配し、その外側を断熱材で覆って全体を炉筐体6で囲って構成され、炉筐体6の上面にはシールユニット7を備えた上部チャンバ9が設置されている。なお、炉心管4内への不活性ガス等の供給は、上部チャンバ9に設けたガス供給口9aから行われる。この図5(A)の構成によれば、ガラス母材1の降下と共に、同径の石英パイプ9も一体に降下するので、線引炉内の空間(容積)を一定に保つことができるとされている。
一方、例えば、特許文献2に開示されるように、上部チャンバを用いることなく径が大きく変化するガラス母材のテーパ状の部分およびダミー棒との連結部分を、連続的にシールする方法も知られている。
図5(B)は、上記特許文献2に開示の線引炉を模式的に示した図である。この線引炉は、加熱炉内への挿入口とガラス母材1との隙間をシールする第1のシールユニット7と、ガラス母材1の縮径したテーパ部1bが前記の挿入口を通過する際にテーパ部1bを覆うようにしてシールする第2のシールユニット8を備えている。
ガラス母材1は、図5(A)の例と同様に、直胴部1aの上方にテーパ部1bを経て縮径された縮径部1cを有し、該縮径部1cに連結部材3等を用いてダミー棒2が連結されて、吊り下げ支持される。加熱炉は、炉心管4の外側にヒータ5を配し、その外側を断熱材で覆って全体を炉筐体6で囲って構成される。
炉筐体6の上面には、ガラス母材1の直胴部1aがシールされる第1のシールユニット7が配される。そして、ガラス母材1の上端側には、テーパ部1bと縮径部1cおよび連結部材3を囲うようにして、ダミー棒2を挿通可能にシールするシール部8aを有するキャップ部材8(円筒部材)からなる第2のシールユニットが配される。なお、炉心管4内への不活性ガス等の供給は、第1のシールユニット7に設けたガス供給口7aから行われる。
ガラス母材1の線引きが進んで、ガラス母材1のテーパ部1bが第1のシールユニット7に達すると、第2のシールユニットであるキャップ部材8が点線で示すように第1のシールユニット7上に接して、テーパ部1bの上方の縮径部1cおよび連結部材3の部分がシールされる。この結果、ガラス母材1のテーパ部1bが第1のシールユニット7を通過した後も、シール状態を維持した状態で線引を継続することができる。
なお、その他のシールユニットとして、例えば、特許文献3に開示のような構造のように、複数のブレード部材を外周面に当接させる押圧機構を用いてシールするものもある。
特開2011−84409号公報 特開2009−62265号公報 特開2012−106915号公報
図5(A)の上部チャンバ9を用いる線引炉は、上部チャンバによる線引炉内の空間容積が大きく、炉内圧力の変動が生じやすいという問題がある。また、石英パイプ10を用いることにより線引炉内の空間容積を一定にすることはできるが、石英パイプ10がガラス母材1に溶着することによる後処理に手間を要し、また、石英パイプが長く、吊り重量が大きくなるため設備が大型になるという問題がある。石英パイプ10をガラス母材1に溶着させない場合は、石英パイプ10の内側空間と、線引炉内となる石英パイプ10の外側の空間とを分離できず、線引炉内の空間容積を小さくできない、という問題がある。
図5(B)のキャップ部材を用いる線引炉は、上記のような問題は解決されるが、第2のシールユニットであるキャップ部材8の下端周縁が、第1のシールユニット7上に接することでシールするので、ガラス母材1の挿入口におけるシール状態が不安定であるという問題がある。また、キャップ部材8によるシールが開始され、線引によりガラス母材1が消費されるにつれてキャップ部材内の空間容積が徐々に広がることから、線引炉内の空間容積が徐々に増加し、炉内圧力の変動が生じやすくなる、という問題もある。
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、線引炉内の空間容積を小さくして炉内圧力の変動を軽減すると共に、ガラス母材の挿入口側のシールを安定して行える光ファイバ線引方法と線引装置の提供を目的とする。
本発明による光ファイバ線引方法は、光ファイバ用ガラス母材をダミー棒に連結し、線引炉上部のシール機構によりシールしながら線引炉内に吊り下げ降下させて、光ファイバを線引する光ファイバ線引方法である。線引開始時は、シール機構の第1のシール部により光ファイバ用ガラス母材の外周面でシールし、光ファイバ用ガラス母材のテーパ部近傍が第1のシール部を通過し始める以降は、第1のシール部の上方に配された第2のシール部に切り替え、第2のシール部によりダミー棒の外周を囲って固定されたスリーブ部材の外周面でシールし、スリーブ部材は、線引終了まで前記光ファイバ用ガラス母材と一緒に下降するようにする。
そして、スリーブ部材の下端部から光ファイバ用ガラス母材のテーパ部までの距離をE、第1のシール部から第2のシール部までの距離をDとしたとき、「E≦D」とされている。
なお、スリーブ部材の外径は、光ファイバ用ガラス母材の外径の2/3以上であり、且つ前記第2のシール部の内径以下とされる。また、スリーブ部材の下部側は、第2のシール部を通過以降に線引炉内とつながる外側空間と、スリーブ部材の内側空間とが分離されるように閉塞されているのが好ましい。
本発明によれば、上部チャンバの高さを低く、且つスリーブ部材を炉内空間に挿入することによって線引炉内の空間容積を小さくすることができ、炉内圧力の変動を軽減することができる。また、ガラス母材の外周面をシールする第1のシール部とスリーブ部材をシールする第2のシール部は、同じ形態のシール機構を用いることもでき、安定なシールを実現することができる。
本発明による線引炉の概略を説明する図である。 本発明による他の線引炉の例を示す図である。 図1のシール機構の動作を説明する図である。 本発明で用いるスリーブ部材の種々の例を示す図である。 従来技術を説明する図である。
図1〜3により本発明の実施の形態を説明する。なお、以下ではヒータにより炉心管を加熱する抵抗炉を例に説明するが、コイルに高周波電源を印加し、炉心管を誘導加熱する誘導炉にも、本発明は適用可能である。図において、11はガラス母材、11aは直胴部、11bはテーパ部、11cは縮径部、12はダミー棒、13は連結部材、14は炉心管、15はヒータ、16は炉筐体、17は第1のシール部、17aはガス供給口、18は第2のシール部、18aはガス供給口、19は上部チャンバ、20はスリーブ部材、21は蓋部材、22は吊り部材を示す。
光ファイバの線引炉は、図1に示すように、吊下げ支持される光ファイバ用のガラス母材11の下部を加熱し、溶融された下端部からガラスファイバが所定の外径となるように溶融垂下させる構造のものである。
なお、以下では、ガラス母材11とダミー棒12とを連結部材13等で連結し、ダミー棒12を把持して線引する形態を例に説明するが、本発明は、この例に限られない。例えば、図2(A)(B)に示すように、ダミー棒12の下端をガラス母材11に直接溶接し、連結部材13無しで、ダミー棒12を把持して線引するものであっても良い。
ガラス母材11は、例えば、図1に示すように、直胴部11a(本体部)の上端部分がテーパ部11bを経て縮径された縮径部11c(シード棒ともいう)を有し、該縮径部1cに連結部材13等を用いてダミー棒12が連結される。そして、ガラス母材11は、ダミー棒12の上端部を吊り支持装置(図示省略)で把持することで、上下方向に移動可能に吊り下げ支持され、線引炉内に挿入供給される。
線引炉の主体となる加熱炉は、ガラス母材11が挿入供給される炉心管14を囲むようにして、加熱用のヒータ15を配し、このヒータ15の熱が外部に放散されないようにカーボン等の断熱材で囲い、その外側全体を炉筐体16で囲って構成される。炉筐体16の上部側には、炉心管14の上端部でガラス母材11が挿入される挿入口14aを有する。
本発明は、上述の線引炉内の空間容積を縮小すると共に空間容積の増加変動を抑制し、且つ、ガラス母材11の直胴部11aからテーパ部11bおよび縮径部11cに至る部分を、効果的にシールするシール機構を備えた線引炉と線引方法を提供することにある。
このための本発明のシール機構として、まずガラス母材11の挿入口14aにおいて、ガラス母材11の直胴部11aとの間の隙間をシールするように、炉筐体16の上面に第1のシール部17が設置される。
第1のシール部17の上には、図5(A)に示した上部チャンバと比べて高さが低くされた円筒状の上部チャンバ19が設けられる。この上部チャンバ19の上端には、第1のシール部17と同様なシール機能を有する第2のシール部18が配される。なお、第1のシール部17および第2のシール部18のそれぞれには、不活性ガス等を炉心管14内に供給するガス供給口17a,18aを設けることができる。
また、ダミー棒12には、ダミー棒の外周を囲ってスリーブ部材20が配される。このスリーブ部材20は、耐熱性のある石英ガラス、金属、カーボン、SiCコートされたカーボンなどで形成され、その外径がガラス母材11の外径と同径、もしくは母材外径の2/3以上の外径を有している。また、その外径は、ガラス母材11の外径変動と同程度以上の精度を有するように研削する等、加工されていることが好ましい。
なお、スリーブ部材20は、図2(B)に示すように、スリーブ上方部分20aを石英ガラスまたは金属とし、下方部分20bを耐熱性のあるカーボンとするようにしてもよい。
このスリーブ部材20は、例えば、蓋部材21や連結部材13等を用いてダミー棒12の外周を囲うように同心状に係止するなどして、ガラス母材の縮径部11cの上方に配される。なお、スリーブ部材20は、ダミー棒12に対して軸方向に移動しないように固定され、かつ、スリーブ部材20の内側空間が線引炉内とつながる外側空間と分離され、密封的に配されていることが好ましい。
第1のシール部17および第2のシール部18は、貫通孔を軸方向に移動するガラス母材11やスリーブ部材20の外周面を環状に封止し、貫通孔との隙間から外気が侵入しないようにするものである。また、内部のガスが外部に漏出するのを抑制することもできる。例えば、ガラス母材11やスリーブ部材20の外周面を環状に囲むように配されたカーボンシートやカーボンフェルト等のシール部材を、シールガスの圧力によりガラス母材やスリーブ部材の外周に付勢してシールする構造のものを用いることができる。
また、ガラス母材11やスリーブ部材20を囲むように、複数のブレード部材を外周面に当接させる押圧機構を用いてシールする特許文献3に開示の構造のものを用いることができる。この他、特許文献2に示されるようなシールガス供給スペーサに環状シール体等を配した構成のものを用いることもできる。
なお、第1のシール部17と第2のシール部18とは、同じシール構造であってもよいが、異なるシール構造であってもよい。
図3は、上述した線引炉のシール機構の動作状態を説明する図である。図3(A)は、ガラス母材11の直胴部11aの上部が、第1のシール部17の上方にあって、直胴部11aの外周を第1のシール部17で直接シールし、炉心管14内に外気が入り込むのを阻止している状態を示している。なお、この段階での炉心管14内への不活性ガス等の供給は、例えば、第1のシール部17に設けられたガス供給口17aから行われる。
なお、線引の初期段階においては、第2のシール部18がガラス母材11の直胴部11aの位置に当たることも有るため、第1のシール部17でガラス母材11の外周面をシールするのと同時に、第2のシール部18で、ガラス母材11の外周面をシールする場合も有り得る。その場合は、線引炉内圧と上部チャンバ19内の圧力とが略等しくなるように適宜ガス流量を調整しておくことが好ましい。
また、この図3(A)の段階においては、ダミー棒12に配されたスリーブ部材20は、第2のシール部18から離れた上方に位置し、ガラス母材11のテーパ部11b、縮径部11cおよび連結部材13等は、外気中に露出された状態にある。したがって、この段階でのシール機構は、第1のシール部17のみが機能し、第2のシール部18はシール動作を行なっていないが、次のステップで上部チャンバ19内を不活性ガス等で満たす必要があるため、例えば17a,18aから導入される不活性ガス等で上部チャンバ19内が満たされていることが好ましい。
図3(B)は、ガラス母材11の線引が進行して、テーパ部11bが、第1のシール部17に近接し通過する直前の状態を示している。一方、ダミー棒12に配されたスリーブ部材20は、その下端部が第2のシール部18に達して、第2のシール部18によりスリーブ部材20の外周面に対するシールが開始される状態となる。次いで、テーパ部11bが第1のシール部17の位置に達すると、第1のシール部17によるシールが解除される。
この段階で、炉心管14内への不活性ガス等の供給は、第1のシール部17側のガス供給口17aから第2のシール部18側に設けられたガス供給口18aに切り替えても良いが、切り替えなくてもよい。また、上記したように、第1のシール部17によるシールが解除される前から、ガス供給口18aより不活性ガス等を供給していても良い。いずれにしろ、この図3(B)の状態の時には、線引炉内圧と上部チャンバ19内の圧力とが略等しくなるように適宜ガス流量を調整しておくことが好ましい。
図3(C)は、シール機構のシール動作が第1のシール部17から第2のシール部18に切り替わった後、さらにガラス母材の線引が進行して、テーパ部1bの近傍まで溶融が生じている状態の一例を示している。図3(B)から図3(C)に至る段階では、第2のシール部18のみが機能し、ダミー棒12と一体に下方に移動するスリーブ部材20の外周面を直接シールし、線引炉内に外気が入り込むのを阻止する。
なお、ガラス母材11の溶融がどの位置まで来たときに線引終了とするかは、任意に設定することができる。スリーブ部材20の材質によっては、炉心管14に近接もしくは挿入される状態になると、これらの部材が溶融損傷されるおそれがあるため、再利用が難しくなる可能性があるが、第1のシール部にスリーブ部材20が達し、第1のシール部でスリーブ20の外周面をシールする場合も有り得る。なお、スリーブ部材を石英ではなく、カーボン等の耐熱材質にすれば、溶融損傷を防ぐことは可能である。また、図2(B)に示したように、スリーブ部材20は、石英とカーボンなど、違う材質を上下に組み合わせた構造としても良い。下部に耐熱性のあるカーボンなどを用いることにより、スリーブ部材20を、よりテーパ部11b近傍まで配することができ、空間容積を小さくできることができる。
上記の図3(A)から図3(C)に至る線引において、ガラス母材11の径が大きく変化しても、上部のシールが解除されることなく連続的に行われ、且つ、連結部材13およびスリーブ部材20の再使用を可能にすることが好ましい。
ここで、図1に戻って、第1のシール部17と第2のシール部18の実質的なシール動作を行う位置の離間距離をD、ガラス母材11の外径変化が生じるテーパ部11bの始端部分とスリーブ部材20の下端との距離をEとする。
線引中にガラス母材11の上部におけるシールが途中で解除されることなく連続的に行われるには、スリーブ部材20は、第1のシール部17によるガラス母材11のシールが解除される前に、第2のシール部18によりシールされるように配置されている必要がある。このためには、テーパ部11bとスリーブ部材との上記の距離Eは、第1のシール部17と第2のシール部18の上記の離間距離D以下となるように設定される。
第1のシール部17と第2のシール部18の上記の離間距離Dは、上部チャンバ20の高さにも関連し、設備の設計値として設定される。一方、距離Eは、ガラス母材11によって、テーパ部11bのテーパ角や縮径部11cの長さによって異なる場合があるが、上記の離間距離Dより小さくなるように調整される。なお、スリーブ部材20の下端との距離Eをあまり小さくすると、上記したように材質によっては溶融損傷して再利用が難しくなるおそれがあるが、図2(B)に示したように、スリーブ部材20の下方部分を耐熱性のカーボンとするなどの構造とすることにより溶融損傷しにくくすることができ、好ましい。
スリーブ部材20の取付け位置の調整、すなわち距離Eの調整は、例えば、蓋部材21を用いてスリーブ部材20を係止する場合には、図3(A)に示すような吊り部材22を用いて、蓋部材21の取付け位置を調整することができる。スリーブ部材20は、蓋部材21等を用いてダミー棒12に固定されるので、蓋部材21の取付け位置を変えることにより比較的容易に位置調整を行うことができる。
なお、図1,3,4では、スリーブ部材20の下端が、ダミー棒12を連結する連結部材13に接するように配した例で示しているが、スリーブ部材20の下端は、連結部材13から離れた上方位置にあってもよく、また、連結部材13をスリーブ部材20内に取り込んで、連結部材13の下方に位置するようにしてもよい。また、スリーブ部材20を連結部材13に載置させるようにして係止することとしてもよいが、蓋部材21に係止させても良い。
上記のような構成とすることで、第1のシール部17から第2のシール部18に切り替わる際の空間容積の変動を最小限に抑えることができる。なお、空間容積の変動が発生する際の炉内圧力の変動を抑えるために、上部チャンバ19内の圧力と炉内圧力とをモニターしておき、シール部が切り替わる際に圧力変動が生じないよう上部チャンバ19内に供給する不活性ガス流量、若しくは上部チャンバ19内のガス排気量を調整し、圧力を調整しておくことが好ましい。
図4は、スリーブ部材の種々の例を示す図である。図4(A)に示すスリーブ部材23は、外周面23aに同心の貫通孔23bを有する円筒状に形成された例で、下端面23c、上端面23dを有している。外周面23aは、ガラス母材の直胴部の外径と等しいか、もしくは、母材外径の2/3以上の外径で形成され、ガラス母材と同程度以上の精度で形成されていることが好ましい。貫通孔23bは、ダミー棒12が挿通しうる程度の径で形成される。スリーブ部材23は、例えば、下端面23cを連結部材13に当接させ、上端面を蓋部材26を介するか介することなく、クランプ部材27などでダミー棒12の外周を囲うようにして取付け固定される。
図4(B)に示すスリーブ部材24は、厚さを薄くした外側スリーブ24aと内側スリーブ24bで形成され、内側スリーブの下端に一体的に設けたフランジ24cで、スリーブ部材24の下端を閉塞した例である。外側スリーブ24aの外周面は、図4(A)の例と同様にガラス母材の直胴部の外径と等しいか、もしくは、母材外径の2/3以上の外径で形成され、ガラス母材と同程度以上の精度で形成されていることが好ましい。また、内側スリーブ24bの内径はダミー棒12が挿通しうる程度の内径を有するように形成され、内側スリーブ24b、フランジ24cにより閉塞される。
内側と外側スリーブの上端面24dは蓋部材26により閉塞され、図4(A)と同様にクランプ部材27などでダミー棒12の外周を囲うようにして取付け固定される。この構成は、図4(A)のスリーブ部材23と比べて、空洞部24eを有し、この分の軽量化を図ることができるが、この空洞部24eは、線引炉内とつながる外側空間と分離され、密封されていることが必要である。なお、図4(B)のスリーブ部材の構造では、線引炉外となる上方に対しては、空洞部24eのガス抜きができるよう、ガス抜き穴が設けられていることが好ましい。
図4(C)に示すスリーブ部材25は、厚さを薄くしたスリーブ25aと、該スリーブの下端に一体的に設けたフランジ25cとで形成され、フランジ25cでスリーブ部材25の下端を閉塞した例である。スリーブ25aの外周面は、図4(A)の例と同様にガラス母材の直胴部の外径と等しいか、もしくは、母材外径の2/3以上の外径で形成され、ガラス母材と同程度以上の精度で形成されていることが好ましい。また、フランジ25cにはダミー棒12が挿通しうる程度の径で形成された挿通孔25bが設けられ、挿通孔25b、フランジ25cにより閉塞される。
スリーブ25の上端面25dは蓋部材26aにより閉塞され、図4(A)と同様にクランプ部材27などでダミー棒12の外周を囲うようにして密封的に取付け固定される。この構成は、図4(B)の内側スリーブを省略した構造となるため、さらに、この分の軽量化を図ることができるが、図4(B)の構造と同様に、空洞部25eは、線引炉内となる外側空間と分離され、密封されていることが必要である。なお、図4(C)のスリーブ部材の構造でも、線引炉外とつながる上方に対しては、空洞部25eのガス抜きができるよう、ガス抜き穴が設けられていることが好ましい。
上記のスリーブ部材23〜25は、その下端面が何れも閉塞され、ダミー棒12との間の隙間が小さくなるようにされている。これにより、図3(B)から図3(C)に線引が進行する際に、上部チャンバ19内の空間容積が変動するのを効率よく減じることができる。また、スリーブ部材23〜25は、ダミー棒12に対して軸方向の移動が固定されるように保持されていればよく、ダミー棒12の外周面を把持する簡単な形状のクランプ部材27や吊り具などで簡単に固定することができる。また、スリーブ部材23〜25の少なくとも上端側では、ダミー棒12との間の隙間をシールする必要があるが、Oリング等のシール部材を介在させること等で、容易に実現することができる。
上述した本発明による線引方法と、図5(A)、図5(B)に記した方法で線引した場合とで、各々炉内ガスの種類を変えて線引した際の、線引中のガラスファイバ径変動を測定した結果を表1に示す。
Figure 0006119299
本発明による方法で線引した場合は、炉内ガスをHe100%(線引条件1)、Ar50%,He50%(線引条件4)、Ar100%(線引条件5)、で線引した場合のいずれも、ガラスファイバ径変動は0.15μm未満とすることができた。
一方、図5(A)、図5(B)に記した方法で線引した場合は、炉内ガスをHe100%(線引条件2,3)で線引きした場合は問題が生じないものの、Ar50%,He50%(線引条件6,8)で線引した場合は、本発明で線引した場合に比べ、ガラスファイバ径変動が大きくなった。Ar100%(線引条件7,9)で線引した場合は、図5(A)の方法ではガラスファイバ径変動は±0.18μmとなり、石英管がガラスに溶着すると言う問題が生じた。また、図5(B)の方法では、ガラス外径変動が最大±2.2μmにまで悪化した。
11…ガラス母材、11a…直胴部、11b…テーパ部、11c…縮径部、12…ダミー棒、13…連結部材、14…炉心管、15…ヒータ、16…炉筐体、17…第1のシール部、17a…ガス供給口、18…第2のシール部、18a…ガス供給口、19…上部チャンバ、20,23,24,25…スリーブ部材、21,26,26a…蓋部材、22…吊り部材、27…クランプ部材。

Claims (4)

  1. 光ファイバ用ガラス母材をダミー棒に連結し、線引炉上部のシール機構によりシールしながら前記線引炉内に吊り下げ降下させて、光ファイバを線引する光ファイバ線引方法であって、
    線引開始時は、前記シール機構の第1のシール部により前記光ファイバ用ガラス母材の外周面でシールし、前記光ファイバ用ガラス母材のテーパ部近傍が前記第1のシール部を通過し始める以降は、前記第1のシール部の上方に配された第2のシール部に切り替え、前記第2のシール部により前記ダミー棒の外周を囲って固定されたスリーブ部材の外周面でシールし、前記スリーブ部材は、線引終了まで前記光ファイバ用ガラス母材と一緒に下降することを特徴とする光ファイバ線引方法。
  2. 前記スリーブ部材の下端部から前記光ファイバ用ガラス母材のテーパ部までの距離をE、前記第1のシール部から前記第2のシール部までの距離をDとしたとき、「E≦D」とすることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ線引方法。
  3. 前記スリーブ部材の外径は、前記光ファイバ用ガラス母材の外径の2/3以上であり、且つ前記第2のシール部の内径以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ線引方法
  4. 前記スリーブ部材の下部側は、前記第2のシール部を通過以降に前記線引炉内とつながる外側空間と、前記スリーブ部材の内側空間とが分離されるように閉塞されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の光ファイバ線引方法
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