JP5821514B2 - 光ファイバ母材のシール構造 - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバ線引炉体の上端部における光ファイバ母材のシール構造に関するものである。
光ファイバは、石英を主成分として形成された光ファイバ母材を線引炉にて加熱して引き出される。この線引炉体の内部には内部の材料の酸化を防ぐために不活性ガスまたは窒素ガス(以下、不活性ガス等と称す)が充填されているが、この不活性ガス等は、線引炉体の下端部における線引後の光ファイバの導出口から排出されるだけでなく、線引炉体の上端部における光ファイバ母材の導入口の隙間からも漏れることになる。従って、不活性ガス等の補充量を少なくするためには、上記導入口の隙間から不活性ガス等が漏れにくいようにシールする必要がある。
上記導入口のシール構造に関し、母材径の変動が小さければ、その母材径に合わせて線引炉体の上端部の挿入孔と光ファイバ母材との隙間を単に塞いでおけば、十分なシール効果が得られる。
しかし、母材径の変動が、例えば±10mm程度より大きいような場合には、上記隙間の間隔が大きく変動するため、その隙間の変動分を加味しながらシールできるシール構造が必要となる。
特許文献1には、シール構造をもった光ファイバの線引装置が開示されている。
この線引装置は、光ファイバ母材を通す挿通口を設けたX−Yテーブルと、その挿通口の内周部に配置された内径可変形のシール機構と、X−Yテーブルの直上にあり、光ファイバ母材の外径を計測する外径計測手段と、X−YテーブルのX方向中心に対する光ファイバ母材のずれ量及びY方向中心に対するずれ量を計測するずれ量計測手段とを備えている。ここで、外径計測手段及びずれ量計測手段としてはCCDカメラが設けられている。
さらに、この線引装置は、ずれ量計測手段の計測データを元に、X−Yテーブルの中心位置が光ファイバ母材の中心に一致すべくX−Yテーブルの移動制御を行うとともに、外径計測手段の計測データを元に、シール機構の内径を光ファイバ母材の外径に対し常時一定のクリアランスに保持すべく縮開制御を行う制御手段を備えている。
また、特許文献2には、光ファイバ母材の周りを囲むように線引炉体の上端部に設置する上部シールリングと、その外周に上部シールリングの中心方向に力を作用させる伸縮機構とを備え、上部シールリングが光ファイバ母材に常に密着するように線引炉体の上端部の隙間をシールするシール構造が開示されている。ここで、上部シールリングは、複数の内側シールリング片を連結して構成された内側シールリングと、その外周に配置される複数の外側シールリング片を連結して構成された外側シールリングと、から構成されており、且つ内側シールリング片の連結部と外側シールリング片の連結部とが重ならないように配置されている。
特開平10−167751号公報 特開2006−342030号公報
しかしながら、特許文献1に記載のシール構造では、内径を一様に変形することが可能な内径可変形のシール機構としてシャッタ板が設けられており、CCDカメラでの計測結果に基づきそのシャッタ板の開口径を縮開させるといった電子制御を行う必要があるだけでなく、周方向の径変動が大きい光ファイバ母材、つまり非円形の光ファイバ母材には対応しにくい構造となっている。
また、特許文献2に記載のシール構造では、各シールリング片が連結された構造であるため、同様に、周方向の径変動が大きい光ファイバ母材、つまり非円形の光ファイバ母材には対応しにくい構造となっている。また、長手方向の径変動が大きい場合は、その径変動に追従させることが難しい。
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、光ファイバ線引炉体における上端部に設けられた光ファイバ母材の貫通孔と光ファイバ母材との間に生じる隙間を、簡易な構造でシールすることが可能で、且つ径変動が大きい光ファイバ母材の線引にも対応することが可能なシール構造を提供することにある。
本発明に係る光ファイバ母材のシール構造は、光ファイバの線引炉体の上端部において、円形断面の光ファイバ母材を線引炉体に貫通させるために設けられた貫通孔と、光ファイバ母材との間に生じる隙間をシールするシール構造であって、上下に互い違いに2段以上で配されている複数のブレード部材と、上記複数のブレード部材を支持する支持機構と、押圧機構とを備えている。そして、押圧機構は、複数のブレード部材の先端を光ファイバ母材の側面に当接させるように、複数のブレード部材を個別に線引炉体の径方向に押圧する機構である。
上記ブレード部材は200℃以上の耐熱性をもつことが好ましく、また、上記ブレード部材はカーボンからなることが好ましい
上記押圧機構は、上記複数のブレード部材の後端にそれぞれ一端が固定され、且つ他端が上記支持機構の一部にそれぞれ保持された複数の棒状部材と、上記複数の棒状部材のそれぞれに沿って設けられた複数のバネ部材とを有し、上記複数のバネ部材の弾性力により、上記複数のブレード部材を個別に上記光ファイバ母材に当接させるようにしてもよい。
また、上記押圧機構は、複数のバネ部材の代わりに複数のエアシリンダを用い、複数のエアシリンダの付勢力により、上記複数のブレード部材を個別に上記光ファイバ母材に当接させるようにしてもよい。
上記ブレード部材の先端は、上記光ファイバ母材の半径として想定される最大値に合うような曲率をもつ円弧の形状になっていることが好ましい。
さらに、上記シール構造は、上記複数のブレード部材、上記支持機構、及び上記押圧機構から構成されるシール機構を載せたステージが上記線引炉体の上部に載置され、上記光ファイバ母材の中心位置の移動に応じて前記ステージが上記線引炉体上を水平面上に移動可能となっているようにすることが好ましい。
本発明に係る光ファイバ母材のシール構造によれば、光ファイバ線引炉体における上端部に設けられた光ファイバ母材の貫通孔と光ファイバ母材との間に生じる隙間を、簡易な構造でシールすることが可能で、且つ径変動が大きい光ファイバ母材の線引にも対応することが可能になる。
本発明に係るシール構造と光ファイバ線引炉体の概略を説明するための図である。 本発明に係るシール構造の一例を示す図で、図1中のシール構造の詳細を示す上面図である。 図2のシール構造の斜視図である。 図2のシール構造におけるブレード部材の動作を説明するための図である。 本発明に係るシール構造の他の一例を示す図で、図1中のシール構造の詳細を示す斜視図である。 本発明に係るシール構造において、光ファイバ母材が中心位置からずれた場合のシール機構の動作を説明するための図である。
図1は、本発明に係るシール構造の一例と光ファイバ線引炉体を示し、図中、1は光ファイバ母材、10は光ファイバ線引炉体(以下、単に線引炉体という)である。
図1に示すように、線引炉体10は、炉筐体11と、その内部に設けられた炉心管12と、炉心管12の外周に設けられた筒状のヒータ13、ヒータ13の外周に設けられた断熱材14とを備える。また、線引炉体10には図示しない不活性ガス等の供給機構が設けられており、炉心管12内やヒータ13の周りに酸化や劣化防止のために不活性ガス等を供給するようになっている。
また、線引炉体10において、光ファイバ母材1は、別途設けた移動機構により線引方向(下側方向)に移動させることが可能となっており、光ファイバ母材1の上側には、その光ファイバ母材1を上側から吊り下げて支持するための支持棒2が連結されている。この支持棒2は、光ファイバ母材1と一体に形成されたものでもよいが、光ファイバ母材1の断面よりは小さい断面をもつものとする。支持棒2の断面形状としては円形が挙げられるが、それに限ったものではない。また、支持棒2と光ファイバ母材1とを接続するために別途、接続部(嵌合部)を設けてもよい。
このような線引炉体10における光ファイバ線引工程を概略的に説明する。線引炉体10では、炉内の光ファイバ母材1の下部を炉心管12内でヒータ13により加熱し、加熱溶融されて細径となった光ファイバ母材1の下端から光ファイバ3を溶融垂下させて、炉筐体11の下端部に設けられた排出孔16からその光ファイバ3を引き出す。そして、線引が進むに連れて、光ファイバ母材1を移動機構により徐々に下げていく。
本発明に係るシール構造20は、線引炉体10の上端部11aにおいて光ファイバ母材1を貫通(緩挿)させるために設けられた貫通孔と、光ファイバ母材1との間に生じる隙間15をシールするための構造である。そして、シール構造20は、線引炉体10の上端部11aに設置される。光ファイバ母材1の断面形状は、基本的に真円を目指して生成されたものとするが、その精度を問わず一部で凸凹が存在してもよく、また楕円形であってもよい。また、上記貫通孔の断面は円形としておけばよいが、この精度は問わない。
なお、図1では炉心管12の内壁の上端部がそのまま線引炉体10の上端部11aの上記貫通孔を形成している例を挙げているが、これに限ったものではない。例えば、炉心管12の内径dよりさらに狭い貫通孔となる上蓋を炉心管12の上側に設けてもよく、この場合にシール対象となる隙間は、この狭い貫通孔と光ファイバ母材1との間に生じる隙間となる。
以下、図2〜図4を参照して、本発明のシール構造20について詳細に説明する。
図2はシール構造20の詳細を示す上面図で、図3はその斜視図である。また、図4は、シール構造20におけるブレード部材の動作を説明するための図である。
本発明のシール構造20は、耐熱性をもった複数のブレード部材24,25と、ブレード部材24,25を支持する支持機構の一部となる円筒21と、押圧機構とを備える。以下、後述する外側円筒22と区別するために、円筒21を内側円筒21と呼ぶ。なお、外側円筒22も、ブレード部材24,25を支持する支持機構の一部をなす。
内側円筒21は、その中心軸に対して径方向に直線的に複数のブレード部材24,25を移動させるための複数のガイド孔を、その内側円筒21の円周上に互い違いに2段設けている。複数のガイド孔は内側円筒21に対して放射状に設けられているため、ブレード部材24,25も放射状に移動可能に設置されることになる。図2〜図4では、ガイド孔を内側円筒21に直接設けるのではなく、内側円筒21にブレード部材24,25を収納するための円盤状の収納部23を設け、その収納部23に各ガイド孔を設けた例を挙げている。
ブレード部材24,25は、例えば移動方向に垂直な面での断面形状が略長方形となる、略直方体形状とする。なお、ブレード部材24,25の厚みは、薄くてもよく、例えば厚さ1mm程度であってもよい。上述のガイド孔はブレード部材24,25の断面形状に合った形状の孔となっている。
ブレード部材24,25の先端は、後述のように押圧機構によって押圧された時に、光ファイバ母材1の側面に当接される。従って、ブレード部材24,25の先端は、当接時に光ファイバ母材1の側面を傷付けないようにするために、光ファイバ母材1の半径として想定される最大値(つまり使用される光ファイバ母材1の最大径)に合うような曲率をもつ円弧の形状にしておくことが好ましい。このような円弧を採用した例は図2〜図4で図示している。
また、ブレード部材24,25の材料はカーボンであることが好ましい。カーボンは、耐熱性に優れるだけでなく、摩擦係数を小さく加工することができる(やわらかい素材である)ため光ファイバ母材1を傷付ける心配もないためである。また、カーボンは、プレス成型により容易に成型することができる点でも好ましい。ブレード部材24,25の材料としては、例えばガラス(石英)、SiCコートカーボン(但し先端部分は軟質カーボン)などを採用することもできる。また、他の硬質の材料を用いた場合でも、先端部分のみ例えば軟質のカーボンを使用することで光ファイバ母材1を傷付けることはない。
なお、ブレード部材24,25は、線引炉の熱で溶けない材質であることが必要であり、200℃程度以上の耐熱性を持つことが好ましい。ブレード部材24,25に耐熱性が無い場合は、ブレード部材24,25を冷却するような機構(例えば水冷方式)を持つようにさせてもよい。
また、ブレード部材24,25としてカーボンを使用する場合は、酸化や劣化を防止するため、不活性ガスをブレード部材24,25に噴き付けるようにするなどして、ブレード部材24,25の周囲を不活性ガス雰囲気としておくことが望ましい。
また、内側円筒21の内径やブレード部材24,25の移動方向の長さは、上記隙間15を埋められるように適宜決めておけばよい。図1の例では、隙間15の幅は炉心管12の直径dから光ファイバ母材1の直径φを引いて半分にした値となる。しかし、実際には光ファイバ母材1の径には変動があるため、上記隙間15として想定される距離(好ましくは想定される最大距離)に基づき、内側円筒21の内径やブレード部材24,25の移動方向の長さを決定すればよい。なお、例えば光ファイバ母材1の直径φが90mmで±10mmの径変動で形成されている場合には、炉心管12の直径dが120mm程度であればよいため、隙間15の幅は10〜20mm程度となる。
また、ブレード部材24,25の幅(内側円筒21の接線方向に平行な長さ)や枚数は、使用する光ファイバ母材1の外径や外径変動量や曲がり量などに応じて、適宜選べばよい。基本的にブレード部材24,25の枚数が多いほど、気密がとり易い。
そして、上記押圧機構は、複数のガイド孔のそれぞれに複数のブレード部材24,25を挿入した状態で、複数のブレード部材24,25の先端を光ファイバ母材1の側面に当接させるように、複数のブレード部材24,25を個別に線引炉体10の径方向(より正確には内側円筒21や収納部23の径方向)に押圧する。この押圧力は、光ファイバ母材1の径が大きくなっても、光ファイバ母材1の下降を阻害しない程度に弱いものとする。
上述したように、内側円筒21には複数のガイド孔がその円周上に互い違いに2段設けており、これらのガイド孔にブレード部材24,25が移動可能な状態で挿入される。従って、ブレード部材24は内側円筒21の円周上に複数、等間隔に設けられ、ブレード部材25も内側円筒21の円周上に複数個、等間隔に設けられる。そして、図3,図4で示すように、ブレード部材24とブレード部材25との間は上下方向に間隔が生じないようにする。さらにブレード部材24,25は、隣接するブレード部材24で生じる隙間をブレード部材25で埋めて、隣接するブレード部材25で生じる隙間をブレード部材24で埋めるように、すなわち隣接するブレード部材24間の隙間と隣接するブレード部材25間の隙間とが重ならないように配置されている。これにより、隙間15を、より強固にシールすることができる。
このように、本発明では、複数のブレード部材24,25を2層構造で互い違いに重ね合わせることが好ましい。このような構造により、ブレード部材24,25の先端を光ファイバ母材1に接触させることで、線引炉体10の開口した上部に生じる隙間15を閉鎖する。そして、各ブレード部材24,25は、水平面で炉中心方向に沿って独立してスライド可能に設置されている。
例えば、想定される最小径(直径Da)の光ファイバ母材1が使用された場合、各ブレード部材24,25は図4(A)のようになって、ブレード部材24の先端同士やブレード部材25の先端同士が接触する程度まで出てくるよう設計しておけばよい。一方で、想定される最大径(直径Db)の光ファイバ母材1が使用された場合、各ブレード部材24,25は図4(B)のようになって、ブレード部材24やブレード部材25が収納部23にほぼ収納されるように設計しておけばよい。そして、各ブレード部材24や各ブレード部材25は、個々に図4(A)と図4(B)とで例示する間の範囲をスライドすることで、光ファイバ母材1の径変動を吸収することができる。
上記押圧機構は、例えば、図2に示すように、内側円筒21の外側に設けられた外側円筒22と、複数のブレード部材24,25の後端にそれぞれ一端が固定され、且つ他端が上記支持機構の一部としての外側円筒22にそれぞれ保持された複数の棒状部材26と、複数の棒状部材26のそれぞれに沿って設けられた複数のバネ部材27とで構成することができる。ここで、外側円筒22で例示しているが、円筒に限らず多角形の筒状部材であっても外壁として機能できればよい。
そして、この押圧機構は、複数の棒状部材26を、外側円筒22に固定された固定部材28に開けられた緩挿孔にそれぞれ挿入し、放射方向に移動可能としている。そして、複数のバネ部材27を棒状部材26に沿って配置し、それぞれ複数のブレード部材24,25と外側円筒22の内側(固定部材28)とに当接させておく。従って、この押圧機構は、外側円筒22の内面に一端が位置するバネ部材27の付勢力によって、複数のブレード部材24,25を個別に光ファイバ母材1側に押圧することができる。
以上説明したように、シール構造20では、光ファイバ母材1の径変動が大きくても光ファイバ母材1と炉心管12との隙間15をシールすることができ、形成される光ファイバ3の径変動が大きくならずに線引することが可能になり、炉内ガスとして安価なNやArを用いることもできる。また、ブレード部材24,25として耐熱性がある部材を用いるため、熱で溶けたりすることもない。
また、シール構造20では、光ファイバ母材1が太い所ではブレード部材24,25が外側円筒22の方に向かって放射状に移動し、細い所では内側円筒21の中心に向かって放射状に移動するといった簡易な構造で隙間15をシールすることが可能で、光ファイバ母材1の径変動も自動的に吸収できる。
さらに、本発明に係るシール構造20は、複数のブレード部材24,25のそれぞれが独立してスライドする構造をもつため、光ファイバ母材1の径が同一断面上で一定でない場合、つまり非円形の断面をもつ場合にも対応させることができる。
また、図1に示したように光ファイバ母材1に支持棒2が設けられた構成では、線引工程の進行により、支持棒2が炉心管12の位置まで下がる場面、つまり支持棒2が線引炉体10の上端部11aより下に位置する場面がある。
そのような場面でも炉内をシールし続けるために、本発明に係る光ファイバ母材のシール構造は、図1に示したようにシール構造20の他に蓋体30を有することが好ましい。蓋体30は、支持棒2を貫通し光ファイバ母材1の上側に載置される蓋であり、図示したように、支持棒2用の貫通孔30aと肩部30bとを有する。蓋体30の材料としては、例えば石英や金属などが挙げられる。
蓋体30を設けておくことで、光ファイバ3の線引が進み光ファイバ母材1及び支持棒2が下降しても、ブレード部材24,25から光ファイバ母材1が離脱する前に、蓋体30の下端面がシール構造20に接する状態に移行して、シール状態を維持することができる。
なお、蓋体30が肩部30bを有することを前提として説明したが、蓋体30は単なる円盤に支持棒2の貫通孔30aを開けただけの形状であってもよい。このような形状でも、上述したような状態間の移行は同様に可能である。
以下、図5を参照して、本発明のシール構造20の別の例について詳細に説明する。
図5は図1のシール構造20の別の例として適用可能なシール構造の詳細を示す斜視図である。
図5で例示する本発明のシール構造40は、図2や図3のブレード部材24,25に相当する複数のブレード部材44,45と、内側円筒21に相当する内側円筒41と、押圧機構とを備える。ここで、内側円筒41は、図2や図3の外側円筒22に相当する外側円筒42とともに、ブレード部材44,45を支持する支持機構の一部をなす。また、収納部43は図2や図3の収納部23に相当する部位である。
シール構造40における押圧機構は、複数のエアシリンダによって構成されている。各エアシリンダは、図2及び図3の棒状部材26及びバネ部材27の代わりに設けられるものである。各エアシリンダは、線引炉体の径方向(より正確には内側円筒41や収納部43の径方向)に長さを伸縮可能な部材であり、ピストンロッドと、シリンダチューブ47とで構成され、伸びる方向に付勢力をもっている。ピストンロッドは、複数のブレード部材44,45に固定するために細径のロッド46aを有するとともに、そのロッド46aに固定されたより大きい外径のロッド46bを有し、ロッド46bがシリンダチューブ47から挿出、シリンダチューブ47に挿入されることで、エアシリンダが伸縮する。
そして、各エアシリンダは、複数のブレード部材44,45の後端にそれぞれ一端(ロッド46aの一端)が固定され、且つ他端(シリンダチューブ47におけるロッド46a,46bとは反対側の端部)がそれぞれ外側円筒42を突き抜けるように固定部材48により取り付けられている。勿論、各エアシリンダは、上記他端が外側円筒42の内側に固定されていてもよい。これらエアシリンダの付勢力により複数のブレード部材44,45を個別に光ファイバ母材側に押圧することができる。
また、上述した様々なシール構造20やシール構造40ではガイド孔及びブレード部材を2段設けた例で説明しているが、本発明に係るシール構造は、少なくとも2段設けてあればよく、3段以上であっても同様に適用可能である。1段の場合には、水平面上で隣り合うブレード部材同士の隙間を埋めるために、例えば各ブレード部材における光ファイバ母材に当接する面を小さくし、且つその面がブレード部材同士で接するようにブレード部材の数を増やす構成などを採用する必要があり、また、1段だと、上述したように隣接するブレード間に隙間が生じ、また、ブレード部材が当接する位置における光ファイバ母材の真円度によって、光ファイバ母材との隙間も変動するという問題が生じる。
この問題は、ブレード部材を2段以上とすることにより解決することができる。このような2段以上の構造を1セットとし、これを2セット以上重ねるような構造を採用することとしてもよい。
なお、ブレード部材を3段以上とする場合は、2段の場合と同様にブレード部材が上下に隙間が生じないように隣接させ、ブレード部材の隙間を埋め合うようにブレード部材を配置すればよいが、2段に比べると複雑な構造となる。
次に、光ファイバ母材1の中心位置がずれた場合への対処方法について、図6を参照しながら説明する。
図6は、本発明に係るシール構造において、光ファイバ母材が中心位置からずれた場合のシール機構の動作を説明するための図である。図6(A)は、図1のシール構造において、シール機構全体を移動させる移動機構が無い場合の、光ファイバ母材の中心位置がずれた場合のシール機構の動作を説明するための図であって、図4のブレード部材及び収納部を上から見た図である。また、図6(B)は、図1のシール構造において移動機構をさらに設けた場合に、光ファイバ母材の中心位置がずれた場合のシール機構の動作を説明するための上面図である。なお、図1〜図4で説明したシール構造20を挙げて説明するが、図5で説明したシール構造40についても同様に適用できる。
シール構造20が設置された高さでの光ファイバ母材1の中心位置は、母材の形状などの影響により、炉体中心からずれてくることがある。つまり、一般的に線引後の光ファイバ3は、例えば排出孔16の中心にくるように、光ファイバ母材1を水平方向に移動させる制御がなされているため、母材の形状により、光ファイバ3の引き出される位置がずれると、母材の位置も、炉体中心からずれてしまう。
母材の移動に対し、シール構造20が共に移動すれば問題ないが、シール構造20の底面の摩擦力が大きい場合や、シール構造20が上端部11aに固定して設置されていると、図6(A)で例示するように、光ファイバ母材1の中心位置Cが収納部23の中心位置Cや線引炉体の中心位置Cからずることになる。このとき、ブレード部材24,25の押圧方向が光ファイバ母材1の中心位置Cに向かうのではなく、線引炉体の中心位置Cや収納部23の中心位置C1に向かう。このように、中心位置から母材がずれても、ある程度の範囲であればシールすることが可能である。しかしながら、母材位置が中心位置から大きくずれる場合、ブレード部材24,25の一部で光ファイバ母材1の側面との間に目立つ隙間が生じることがある。
従って、本発明に係るシール構造は、内側円筒21の中心軸(つまり収納部23の中心位置C)が光ファイバ母材1の中心位置Cに合うように、複数のブレード部材24,25、支持機構、及び押圧機構を同時に水平面上に移動させる機構を備えることが好ましい。このような移動機構は、シール機構20の底面の摩擦力を調整して、シール機構20自体が上端部11aを移動するようにしても良いが、この移動機構は可動テーブル(ステージとも言う)とし、ブレード部材、支持機構、及び押圧機構が備わったシール機構(上述のシール構造20)をその可動テーブルの上に固定することとしても良い。その場合、上端部11aの上に可動テーブルが載せられ、その可動テーブルの上にシール構造20が固定され、可動テーブルは、光ファイバ母材1の中心位置Cの移動に応じて水平面上に移動可能な状態となっている。なお、この可動テーブルはX−Yテーブルとも呼ばれる。
このような移動機構を備えたシール構造を採用することで、図6(A)のように光ファイバ母材1の中心位置Cがシール構造20の中心位置である収納部23の中心位置Cからずれた場合でも、図6(B)に示すように、収納部23の中心位置Cが母材の中心位置Cにくるように、シール構造20の全体をこの移動機構によりずらすことができる。これにより、母材の中心位置Cと収納部23の中心位置Cとが、線引炉体の中心位置Cとは異なる位置で一致するようになり、ブレード部材24,25の押圧方向も光ファイバ母材1の中心位置Cに向かう。このため、ブレード部材24,25の一部で光ファイバ母材1の側面との間に隙間が生じるようなことはなくなる。
また、光ファイバ母材1の中心位置Cは、シール構造20では基本的にブレード部材24とブレード部材25との境界の高さで検出すればよいが、例えば、その高さ付近での検出結果や、線引後の光ファイバ3の中心の検出結果などで代替させてもよい。また、検出処理自体は既存の様々な技術を用いればよい。
1…光ファイバ母材、2…支持棒、3…光ファイバ、10…線引炉体、11…炉筐体、11a…上端部、12…炉心管、13…ヒータ、14…断熱材、15…隙間、16…排出孔、20,40…シール構造、21,41…内側円筒、22,42…外側円筒、23,43…収納部、24,25,44,45…ブレード部材、26…棒状部材、27…バネ部材、28,48…固定部材、30…蓋体、30a…貫通孔、30b…肩部、46a,46b…ピストンロッドを構成するロッド、47…シリンダチューブ。

Claims (7)

  1. 光ファイバの線引炉体の上端部において、円形断面の光ファイバ母材を前記線引炉体に貫通させるために設けられた貫通孔と、前記光ファイバ母材との間に生じる隙間をシールする光ファイバ母材のシール構造であって、
    上下に互い違いに2段以上で配されている複数のブレード部材と、
    前記複数のブレード部材を支持する支持機構と、
    前記複数のブレード部材の先端を前記光ファイバ母材の側面に当接させるように、前記複数のブレード部材を個別に前記線引炉体の径方向に押圧する押圧機構と、
    を備えたことを特徴とする光ファイバ母材のシール構造。
  2. 前記ブレード部材は、200℃以上の耐熱性をもつことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材のシール構造。
  3. 前記ブレード部材は、カーボンからなることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ母材のシール構造。
  4. 前記押圧機構は、前記複数のブレード部材の後端にそれぞれ一端が固定され、且つ他端が前記支持機構の一部にそれぞれ保持された複数の棒状部材と、前記複数の棒状部材のそれぞれに沿って設けられた複数のバネ部材とを有し、前記複数のバネ部材の弾性力により、前記複数のブレード部材を個別に前記光ファイバ母材に当接させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光ファイバ母材のシール構造。
  5. 前記押圧機構は、前記複数のブレード部材の後端にそれぞれ一端が固定され、且つ他端が前記支持機構の一部にそれぞれ固定された、前記線引炉体の径方向に長さを伸縮可能な複数のエアシリンダとし、前記複数のエアシリンダの付勢力により、前記複数のブレード部材を個別に前記光ファイバ母材に当接させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光ファイバ母材のシール構造。
  6. 前記ブレード部材の先端は、前記光ファイバ母材の半径として想定される最大値に合うような曲率をもつ円弧の形状になっていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の光ファイバ母材のシール構造。
  7. 前記複数のブレード部材、前記支持機構、及び前記押圧機構から構成されるシール機構を載せたステージが前記線引炉体の上部に載置され、前記光ファイバ母材の中心位置の移動に応じて前記ステージが前記線引炉体上を水平面上に移動可能となっていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光ファイバ母材のシール構造。
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